(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967753
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】部品実装機及び転写装置
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20160728BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H05K13/04 B
H05K3/34 503B
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-52085(P2012-52085)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-187410(P2013-187410A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】川合 英俊
(72)【発明者】
【氏名】前田 文隆
【審査官】
筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−298291(JP,A)
【文献】
特開2008−108884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00−13/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドと、前記装着ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、前記吸着ノズルに吸着した部品にフラックス、半田、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物を転写する転写装置とを備えた部品実装機において、
前記転写装置は、供給部から供給される流動物を溜める転写槽と、前記転写槽内の流動物を膜状に広げるスキージング動作を行うスキージと、前記転写槽を上下動させる上下動機構とを備え、
前記供給部は、前記転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽の上昇動作の邪魔にならない退避位置へ移動するように構成され、
前記複数の吸着ノズルに複数の部品を吸着した状態で前記ヘッド移動機構により前記装着ヘッドを前記転写槽の上方に移動させて前記上下動機構により前記転写槽を上昇させることで、前記複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品に一括して前記流動物を転写する一括転写を行うことを特徴とする部品実装機。
【請求項2】
複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドと、前記装着ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、前記吸着ノズルに吸着した部品にフラックス、半田、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物を転写する転写装置とを備えた部品実装機において、
前記転写装置は、供給部から供給される流動物を溜める転写槽と、前記転写槽内の流動物を膜状に広げるスキージング動作を行うスキージと、前記転写槽を上下動させる上下動機構と、前記スキージング動作を行う際に前記転写槽を回転させる回転駆動機構と、前記回転駆動機構と前記転写槽との間の回転伝達経路に設けられたクラッチ機構とを備え、前記クラッチ機構は、前記転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽を前記回転駆動機構から切り離す切断状態となり、該転写槽をスキージング動作位置へ下降させることで該クラッチ機構が前記回転駆動機構と前記転写槽との間を回転伝達可能に接続した接続状態となるように構成され、
前記複数の吸着ノズルに複数の部品を吸着した状態で前記ヘッド移動機構により前記装着ヘッドを前記転写槽の上方に移動させて前記上下動機構により前記転写槽を上昇させることで、前記複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品に一括して前記流動物を転写する一括転写を行うことを特徴とする部品実装機。
【請求項3】
前記転写槽内の流動物の膜厚を調整する際に前記スキージの高さ位置を位置決めした状態で前記上下動機構により前記転写槽の高さ位置を調整することで前記スキージと前記転写槽との間の隙間寸法を調整して前記流動物の膜厚を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記装着ヘッドは、前記複数の吸着ノズルを円周方向に配列したロータリー型の装着ヘッドであり、前記装着ヘッドの複数の吸着ノズルを保持する複数のホルダ部のうち、一括転写動作時に上昇する前記スキージの上流位置のホルダ部から吸着ノズルを取り外して使用することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の部品実装機。
【請求項5】
前記ヘッド移動機構に取り付ける装着ヘッドは、サイズの異なる別の装着ヘッドと交換可能であり、
前記転写装置に取り付ける前記転写槽及び前記スキージは、前記ヘッド移動機構に取り付けた装着ヘッドのサイズに応じたサイズの前記転写槽及び前記スキージと交換可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の部品実装機。
【請求項6】
前記転写装置を部品実装機の内側にセットしたセット位置と外側に引き出したメンテナンス位置との間を移動できるように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の部品実装機。
【請求項7】
複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドと、前記装着ヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備えた部品実装機に着脱可能にセットされ、前記吸着ノズルに吸着した部品にフラックス、半田、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物を転写する転写装置において、 供給部から供給される流動物を溜める転写槽と、前記転写槽内の流動物を膜状に広げるスキージング動作を行うスキージと、前記転写槽を上下動させる上下動機構とを備え、
前記供給部は、前記転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽の上昇動作の邪魔にならない退避位置へ移動するように構成され、
前記部品実装機の複数の吸着ノズルに複数の部品を吸着した状態で前記ヘッド移動機構により前記装着ヘッドを前記転写槽の上方に移動させて前記上下動機構により前記転写槽を上昇させることで、前記複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品に一括して前記流動物を転写する一括転写を行うことを特徴とする転写装置。
【請求項8】
複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドと、前記装着ヘッドを移動させるヘッド移動機構とを備えた部品実装機に着脱可能にセットされ、前記吸着ノズルに吸着した部品にフラックス、半田、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物を転写する転写装置において、 供給部から供給される流動物を溜める転写槽と、前記転写槽内の流動物を膜状に広げるスキージング動作を行うスキージと、前記転写槽を上下動させる上下動機構と、前記スキージング動作を行う際に前記転写槽を回転させる回転駆動機構と、前記回転駆動機構と前記転写槽との間の回転伝達経路に設けられたクラッチ機構とを備え、前記クラッチ機構は、前記転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽を前記回転駆動機構から切り離す切断状態となり、該転写槽をスキージング動作位置へ下降させることで該クラッチ機構が前記回転駆動機構と前記転写槽との間を回転伝達可能に接続した接続状態となるように構成され、
前記部品実装機の複数の吸着ノズルに複数の部品を吸着した状態で前記ヘッド移動機構により前記装着ヘッドを前記転写槽の上方に移動させて前記上下動機構により前記転写槽を上昇させることで、前記複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品に一括して前記流動物を転写する一括転写を行うことを特徴とする転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装機の吸着ノズルに吸着した部品にフラックス、半田等を転写する転写装置を備えた部品実装機及び転写装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
部品実装機においては、特許文献1(特開2003−298291号公報)、特許文献2(特開2010−74029号公報)に記載されているように、部品実装機に転写装置をセットして、吸着ノズルに吸着した部品を、転写槽内に溜めたフラックス、半田等に浸して該部品にフラックス、半田等を転写してから、該部品を回路基板に実装するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−298291号公報
【特許文献2】特開2010−74029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2の部品実装機は、1本の吸着ノズルに部品を吸着する毎に、該吸着ノズルを転写槽の上方に移動させて該吸着ノズル(又は転写槽)を上下動させて該吸着ノズルに吸着した部品に転写槽内のフラックス等を転写するようにしているため、1つの装着ヘッドに複数の吸着ノズルを保持した構成の部品実装機では、複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品にフラックス等を転写する転写工程で、吸着ノズル(又は転写槽)の上下動作を吸着ノズルの本数分繰り返さなければならず、転写工程の時間が長くなってしまい、生産性が低下するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品にフラックス等の流動物を転写するのに要する時間を大幅に短縮できて生産性を向上できる部品実装機及び転写装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドと、前記装着ヘッドを移動させるヘッド移動機構と、前記吸着ノズルに吸着した部品にフラックス、半田、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物を転写する転写装置とを備えた部品実装機において、前記転写装置は、供給部から供給される流動物を溜める転写槽と、前記転写槽内の流動物を膜状に広げるスキージング動作を行うスキージと、前記転写槽を上下動させる上下動機構とを備え、
前記供給部は、前記転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽の上昇動作の邪魔にならない退避位置へ移動するように構成され、前記複数の吸着ノズルに複数の部品を吸着した状態で前記ヘッド移動機構により前記装着ヘッドを前記転写槽の上方に移動させて前記上下動機構により前記転写槽を上昇させることで、前記複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品に一括して前記流動物を転写する一括転写を行うようにしたものである。この構成では、複数の吸着ノズルに吸着した複数の部品に対して転写槽を上昇させて一括して流動物を転写するため、複数の部品に流動物を転写するのに要する時間を大幅に短縮できて生産性を向上できる。
更に、本発明では、転写槽内に流動物を供給する供給部の吐出口側の部分が転写槽の上方に位置することを考慮して、転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽の上昇動作の邪魔にならない退避位置へ供給部を移動させるため、供給部が転写槽の上昇動作の邪魔になることはない。
【0007】
この場合、請求項
3のように、転写槽内の流動物の膜厚を調整する際にスキージの高さ位置を位置決めした状態で上下動機構により転写槽の高さ位置を調整することでスキージと転写槽との間の隙間寸法を調整して流動物の膜厚を調整するように構成しても良い。このようにすれば、転写槽を上下動させる上下動機構を利用して流動物の膜厚を調整することができ、膜厚調整作業を自動化することができる。
【0009】
また、請求項
2のように、転写装置は、スキージング動作を行う際に転写槽を回転させる回転駆動機構と、この回転駆動機構と転写槽との間の回転伝達経路に設けられたクラッチ機構とを備え、前記クラッチ機構は、転写槽を一括転写位置へ上昇させる際に該転写槽を前記回転駆動機構から切り離す切断状態となり、該転写槽をスキージング動作位置へ下降させることで該クラッチ機構が前記回転駆動機構と前記転写槽との間を回転伝達可能に接続した接続状態となるように構成しても良い。このようにすれば、転写槽を一括転写位置へ上昇させる際にクラッチ機構により転写槽を回転駆動機構から切り離して上昇させることができ、転写槽を上昇させる上下動機構に加わる荷重を軽減することができて、上下動機構のコンパクト化、軽量化、低コスト化等に貢献できる。
【0010】
本発明は、複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドを備えた部品実装機であれば、どの様なタイプの装着ヘッドを備えた部品実装機であっても適用可能であるが、請求項
4のように、複数の吸着ノズルを円周方向に配列したロータリー型の装着ヘッドを備えた部品実装機に適用する場合は、装着ヘッドの複数の吸着ノズルを保持する複数のホルダ部のうち、一括転写動作時に上昇するスキージの上流位置のホルダ部から吸着ノズルを取り外して使用するようにすれば良い。このようにすれば、吸着ノズルの本数が多いロータリー型の装着ヘッドで吸着ノズル間の間隔が狭い場合でも、転写槽内にスキージによる流動物の溜まりスペースを確保できる。
【0011】
また、請求項
5のように、部品実装機のヘッド移動機構に取り付ける装着ヘッドがサイズの異なる別の装着ヘッドと交換可能である場合は、転写装置に取り付ける転写槽及びスキージは、ヘッド移動機構に取り付けた装着ヘッドのサイズに応じたサイズの転写槽及びスキージと交換可能に構成すると良い。このようにすれば、どの様なサイズの装着ヘッドに交換されても対応できる。
【0012】
更に、請求項
6のように、転写装置を部品実装機の内側にセットしたセット位置と外側に引き出したメンテナンス位置との間を移動できるように構成すると良い。このようにすれば、転写装置を部品実装機の外側のメンテナンス位置に引き出すことで、転写装置のクリーニング作業等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0013】
尚、請求項
7,8に係る発明は、請求項1
,2に記載の「部品実装機」の発明と実質的に同じ技術思想を「転写装置」の発明として記載したものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の一実施例を示す転写装置の斜視図である。
【
図2】
図2は部品実装機のフィーダ装着台の斜視図である。
【
図3】
図3は転写装置のスキージング動作時の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は転写装置のスキージング動作時の状態を部分的に破断して示す正面図である。
【
図5】
図5は転写装置のスキージング動作時の主要部の状態を部分的に破断して示す正面図である。
【
図6】
図6は転写装置の一括転写動作時の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は転写装置の一括転写時の状態を部分的に破断して示す正面図である。
【
図8】
図8は転写装置の一括転写時の主要部の状態を部分的に破断して示す正面図である。
【
図9】
図9は転写装置の一括転写動作時の状態を示す背面図である。
【
図10】
図10はクラッチ機構の係止ピンとその周辺部分の構成を示す斜視図である。
【
図11】
図11は一括転写動作時の主要部の状態を示す正面図である。
【
図12】
図12(a),(b)は一括転写動作時のスキージと吸着ノズルとの位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を図面を用いて説明する。
まず、転写装置11の構成を説明する。
転写装置11は、部品実装機のフィーダ装着台12(
図2参照)にテープフィーダ(図示せず)と付け替え可能に装着される。転写装置11の横幅寸法は、テープフィーダの横幅寸法のほぼ整数倍となっており、フィーダ装着台12上のテープフィーダ整数台分のスペースに転写装置11が着脱可能にセットされる。
【0016】
図1に示すように、転写装置11の取付ベース13は、部品実装機のフィーダ装着台12への着脱方向である前後方向に長く延びる形状に形成されている。この取付ベース13上に2本のスライドレール14が前後方向に沿って平行に設けられ、該スライドレール14上に転写装置11が前後方向にスライド移動可能に支持されている。これにより、転写装置11を部品実装機の内側にセットしたセット位置と外側に引き出したメンテナンス位置との間を移動できるように構成されている。
【0017】
図3乃至
図9に示すように、転写装置11は、フラックス、半田、導体ペースト、接着剤のいずれかの流動物を溜める転写槽15と、転写槽15内に流動物を供給する供給部16と、転写槽15内の流動物を膜状に広げるスキージング動作を行うスキージ17と、転写槽15を上下動させる上下動機構18(
図9参照)と、スキージング動作を行う際に転写槽15を回転させる回転駆動機構19(
図3参照)と、この回転駆動機構19と転写槽15との間の回転伝達経路に設けられたクラッチ機構20と、これら各機構を組み付けた断面L字形の本体ベース21等を備えた構成となっている。
【0018】
本発明は、複数の吸着ノズルを保持する装着ヘッドを備えた部品実装機であれば、どの様なタイプの装着ヘッドを備えた部品実装機であっても適用可能であるが、本実施例では、複数本の吸着ノズル22(
図12参照)を円周方向に等ピッチで配列したロータリー型の装着ヘッド23(
図11参照)を備えた部品実装機に転写装置11をセットしている。尚、図示はしないが、本実施例の部品実装機は、装着ヘッド23をX−Y方向に移動させるヘッド移動機構と、該装着ヘッド23をその中心軸の回りに回転させるヘッド回転機構と、部品吸着時及び部品実装時に装着ヘッド23に保持した複数本の吸着ノズル22を1本ずつ個別に昇降させるノズル昇降機構とを備え、装着ヘッド23の中心軸の下部には、吸着ノズル22の側方からの照明光を反射するためのミラー部24が吸着ノズル22の配列の内側に位置するように設けられている。
【0019】
転写装置11の転写槽15は、ロータリー型の装着ヘッド23の吸着ノズル22の配列に合わせてドーナツ形状(円環状)に形成され、中心部分に逃げ凹部25が形成されている。これにより、転写槽15を後述する一括転写位置へ上昇させたときに、各吸着ノズル22に吸着した部品が転写槽15のドーナツ形状の底面に接触又は近接して該転写槽15内の流動物に浸った状態になるが、この際、装着ヘッド23の中心のミラー部24が転写槽15の中心部分の逃げ凹部25内に逃げて該ミラー部24と該転写槽15との衝突が回避されるようになっている。
【0020】
次に、転写槽15を上下動させる上下動機構18の構成を説明する。
図9に示すように、上下動機構18の駆動源となるZ軸モータ27は、回転軸28を下向きにした状態で本体ベース21側に固定され、このZ軸モータ27の回転力がベルト伝達機構26を介してZ軸用送りねじ29に伝達され、Z軸モータ27の回転運動がZ軸送りねじ29によってZ軸方向(上下方向)の直線運動に変換される。Z軸送りねじ29の近傍には、2本のZ軸ガイド30(
図5、
図12参照)が本体ベース21に固定され、各Z軸ガイド30にZ軸スライド31の支持部31aがZ軸方向(上下方向)にスライド自在に嵌合され、該Z軸スライド31に転写槽15が軸受33を介して回転可能に支持されている。Z軸スライド31は、Z軸送りねじ29に螺合されたZ軸ナット部材32に連結され、Z軸送りねじ29の回転によってZ軸ナット部材32とZ軸スライド31と転写槽15が一体的にZ軸方向(上下方向)にスライドするようになっている。
【0021】
図8に示すように、スキージ17を支持する昇降シャフト35は、支持部材36によって上下動可能に支持され、該昇降シャフト35がスプリング(図示せず)等のばね力によって下方に付勢されている。昇降シャフト35の下方には、ストッパ37が設けられ、転写槽15をスキージング動作位置へ下降させる際に、その途中で昇降シャフト35の下端がストッパ37に突き当たってスキージ17の下降が停止され、以後、転写槽15のみが下降するようになっている。これにより、転写槽15内の流動物の膜厚を調整する際に、スキージ17の高さ位置(下限位置)をストッパ37で位置決めした状態で、上下動機構18により転写槽15の高さ位置(停止位置)を調整することで、スキージ17と転写槽15との間の隙間寸法を調整して流動物の膜厚を調整できるようになっている。転写槽15を一括転写位置へ上昇させる場合は、転写槽15によってスキージ17がスプリング(図示せず)の押し下げ力に抗して引き上げられる。
【0022】
また、
図12(a)に示すように、装着ヘッド23の複数の吸着ノズル22を保持する複数のホルダ部のうち、一括転写動作時に上昇するスキージ17の上流位置のホルダ部から該吸着ノズル22を取り外して使用するようにしており、これにより、スキージ17による流動物の溜まりスペースも確保できる。
【0023】
また、転写槽15内に流動物を供給する供給部16の吐出口側の部分は、転写槽15の上方に位置するため、供給部16の位置が固定されていると、供給部16が転写槽15の上昇動作の邪魔になる。
【0024】
そこで、本実施例では、供給部16は、その下部に貫通された回動軸39を支点にして
図3〜
図5に示す供給位置と
図6〜
図8に示す退避位置との間を回動できるように支持され、ねじりコイルばね(図示せず)等のばね力によって供給位置側へ回動付勢されている。この供給部16のうちの転写槽15側の端面部には、カム面40が形成され、このカム面40がZ軸スライド31に固定されたカムローラ41に当接してカム機構42が構成され、このカム面40とカムローラ41との当接状態がばね力によって維持されている。
【0025】
転写槽15がスキージング動作位置へ下降する過程で、転写槽15と一体的にカムローラ41が下降することで、カム機構42により供給部16が
図3〜
図5に示す供給位置へ回動して供給部16の吐出口側の部分が転写槽15の上方に突出した状態となり、一方、転写槽15が一括転写位置へ上昇する過程で、転写槽15側のカムローラ41が上昇することで、カム機構42により供給部16が
図6〜
図8に示す退避位置へ回動して、供給部16が転写槽15の上昇動作の邪魔にならないようにしている。
【0026】
供給部16の吐出口側の部分には、転写槽15内の流動物の残量を監視する光センサ等の残量検出センサ(図示せず)が取り付けられ、供給部16が
図3〜
図5に示す供給位置に位置するときに、転写槽15内の流動物の残量を残量検出センサで監視して、流動物の残量が所定値以下に減ってきたときに、自動的に転写槽15内に流動物を補給するようになっている。尚、供給部16に設けられた継手43には、流動物貯留タンク(図示せず)につながるホース(図示せず)が接続され、該流動物貯留タンク内に貯留された流動物が該ホースを通して供給部16に供給されるようになっている。
【0027】
次に、スキージング動作を行う際に転写槽15を回転させる回転駆動機構19と、回転駆動機構19と転写槽15との間の回転伝達経路に設けられたクラッチ機構20の構成を説明する。
【0028】
図3に示すように、回転駆動機構19の駆動源となるQ軸モータ46は、回転軸を下向きにした状態で本体ベース21側に固定され、このQ軸モータ46の回転力が歯車機構47を介してクラッチ機構20の駆動歯車50に伝達される。
【0029】
図4、
図7に示すように、クラッチ機構20の駆動歯車50は、本体ベース21に上向きに設けられた支持軸51に軸受52を介して回転可能に嵌着されている。駆動歯車50上には、カップリング部材54が設けられ、このカップリング部材54にQ軸クラッチ凸部55が連結されている。Q軸クラッチ凸部55は、Q軸部55aの上端にテーパ状の雄コーン部55bが形成された円錐クラッチ部品であり、Q軸部55aがカップリング部材54に上下動可能に挿通され、且つ、Q軸部55aに貫通した係止ピン56の両端部がカップリング部材54の内周部に形成された縦溝57に上下動可能に嵌合することによって、Q軸部55aがカップリング部材54に対して回り止めされると共に、Q軸部55aの係止ピン56の上下動範囲がカップリング部材54内の縦溝57の上下方向の幅によって規制されている。Q軸クラッチ凸部55は、スプリング58等のばね力によって押し上げられている。
【0030】
一方、転写槽15の下面部には、Q軸クラッチ凹部59が下向きに固定され、このQ軸クラッチ凹部59の内周部にテーパ状の雌コーン部59aが形成されている。このQ軸クラッチ凹部59とQ軸クラッチ凸部55とによってクラッチ機構20が構成され、転写槽15をスキージング動作位置へ下降させることで、Q軸クラッチ凹部59がQ軸クラッチ凸部55に嵌合して押し付けられた状態がスプリング58のばね力によって保持される。これにより、Q軸クラッチ凹部59とQ軸クラッチ凸部55との間が回転伝達可能に接続された状態となり、Q軸モータ46によって転写槽15を回転駆動可能な状態となる。一方、転写槽15を一括転写位置へ上昇させると、その過程で、転写槽15下側のQ軸クラッチ凹部59がQ軸クラッチ凸部55から切り離されて上昇し、転写槽15が回転駆動機構19から切り離された状態となる。
【0031】
また、本実施例では、部品実装機のヘッド移動機構に取り付ける装着ヘッド23がサイズの異なる別の装着ヘッドと交換可能であることを考慮して、転写装置11に取り付ける転写槽15及びスキージ17は、ヘッド移動機構に取り付けた装着ヘッド23のサイズに応じたサイズの転写槽15及びスキージ17と交換可能に構成されている。
【0032】
また、
図1に示すように、転写装置11の取付ベース13の前端面(取付方向側の端面)には、転写装置11の信号線や電源線を部品実装機のフィーダ装着台12のコネクタ61(
図2参照)に接続するためのコネクタ62と、2本の位置決めピン63,64が設けられ、2本の位置決めピン63,64を部品実装機のフィーダ装着台12の位置決め穴65,66(
図2参照)に差し込むことで、フィーダ装着台12上で転写槽15の取付位置が位置決めされると共に、転写装置11のコネクタ62がフィーダ装着台12のコネクタ61に差し込み接続される。これにより、転写装置11の各電気部品(Z軸モータ27とQ軸モータ46等)に部品実装機の電源部から電源が供給され、部品実装機の制御装置(図示せず)によって転写装置11の各機構を制御して一括転写動作とスキージング動作を実行できる状態となる。
【0033】
以上説明した転写装置11の使用方法を説明する。
転写槽15内の流動物をスキージ17で膜状に広げるスキージング動作を行う場合は、上下動機構18のZ軸モータ27を起動して転写槽15をスキージング動作位置へ下降させる。この転写槽15の下降動作の途中で昇降シャフト35の下端がストッパ37に突き当たってスキージ17の下降が停止され、以後、転写槽15のみが下降することで、スキージ17と転写槽15との間に隙間が出来る。この隙間で流動物の膜厚が決まるため、流動物の膜厚を調整する場合は、上下動機構18により転写槽15の高さ位置(停止位置)を調整することで、スキージ17と転写槽15との間の隙間寸法を調整して流動物の膜厚を調整する。
【0034】
転写槽15がスキージング動作位置へ下降する過程で、転写槽15と一体的にカムローラ41が下降することで、カム機構42により供給部16が
図3〜
図5に示す供給位置へ回動して供給部16の吐出口側の部分が転写槽15の上方に突出した状態となると共に、クラッチ機構20のQ軸クラッチ凹部59がQ軸クラッチ凸部55に嵌合して両者が回転伝達可能に接続された状態となる。
【0035】
この状態で、供給部16の吐出口から転写槽15内に流動物を吐出しながら、回転駆動機構19のQ軸モータ46を回転させて転写槽15を回転させることで、転写槽15内の流動物をスキージ17で膜状に広げる。このスキージング動作終了後に、Q軸モータ46を停止させて転写槽15の回転を停止させる。
【0036】
吸着ノズル22に吸着した部品に流動物を転写する場合は、予め、装着ヘッド23の複数の吸着ノズル22にそれぞれ部品を吸着した後、部品実装機のヘッド移動機構により装着ヘッド23を転写槽15の上方に移動させる。この後、上下動機構18のZ軸モータ27をスキージング動作時とは逆方向に回転させて転写槽15を一括転写位置へ上昇させる。この際、転写槽15下側のQ軸クラッチ凹部59がQ軸クラッチ凸部55から切り離されて上昇し、転写槽15が回転駆動機構19から切り離された状態となる。
【0037】
転写槽15が一括転写位置へ上昇する過程で、転写槽15と一体的にカムローラ41が上昇することで、カム機構42により供給部16が
図5〜
図7に示す退避位置へ回動して、供給部16が転写槽15の上昇動作の邪魔にならない状態となる。
【0038】
転写槽15が一括転写位置へ上昇すると、装着ヘッド23の複数の吸着ノズル22に吸着した複数の部品を同時に転写槽15内の流動物に浸して、複数の吸着ノズル22に吸着した複数の部品に一括して流動物を転写する。
【0039】
以上説明した本実施例では、複数の吸着ノズル22に吸着した複数の部品に対して転写槽15を上昇させて一括して流動物を転写するように構成しているため、複数の部品にフラックス等を転写するのに要する時間を大幅に短縮できて生産性を向上できる。
【0040】
しかも、本実施例では、転写槽15内の流動物の膜厚を調整する際に、スキージ17の高さ位置をストッパ37で位置決めした状態で上下動機構18により転写槽15の高さ位置を調整することで、スキージ17と転写槽15との間の隙間寸法を調整して流動物の膜厚を調整するようにしたので、転写槽15を上下動させる上下動機構18を利用して流動物の膜厚を調整することができ、膜厚調整作業を自動化することができる。
【0041】
また、本実施例では、転写槽15を一括転写位置へ上昇させる際に、クラッチ機構20により転写槽15を回転駆動機構19から切り離して上昇させることができ、転写槽15を上昇させる上下動機構18に加わる荷重を軽減することができて、上下動機構18のコンパクト化、軽量化、低コスト化等に貢献できる。
【0042】
また、本実施例では、転写装置11を部品実装機の内側にセットしたセット位置と外側に引き出したメンテナンス位置との間を移動できるように構成したので、転写装置11を部品実装機の外側のメンテナンス位置に引き出すことで、転写装置11のクリーニング作業等のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0043】
尚、本実施例では、スキージング動作時にスキージ17を固定して転写槽15を回転させるようにしたが、転写槽を固定してスキージを移動させるようにしても良い。
【0044】
その他、本発明は、上下動機構18、回転駆動機構19、クラッチ機構20等の構成を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0045】
11…転写装置、12…フィーダ装着台、13…取付ベース、15…転写槽、16…供給部、17…スキージ、18…上下動機構、19…回転駆動機構、20…クラッチ機構、21…本体ベース、22…吸着ノズル、23…装着ヘッド、27…Z軸モータ、29…Z軸用送りねじ、31…Z軸スライド、40…カム面、41…カムローラ、42…カム機構、46…Q軸モータ、47…歯車機構、55…Q軸クラッチ凸部、56…係止ピン、59…Q軸クラッチ凹部、61,62…コネクタ、63,64…位置決めピン、46,66…位置決め穴