(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。構造に関する図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0014】
蛍光強度及びラマン散乱光強度を増強する方法として、表面増強法がある。本発明の第1の形態として、微少量の低濃度サンプルを濃縮させ分光測定に十分な強度の信号を得るため、撥水性(疎水性)及び表面増強効果を有する領域を基板上に形成した。
【0015】
図1は、本発明の分析用基板の基本的構造を示す断面図である。
図1(a)では、基板1上の分光測定領域Mには、微粒子2上に金属層3が帽子状に形成された金属付着微粒子10が配置されている。一方、基板1の分光測定領域M以外の非測定領域には、撥水処理(疎水化処理)が行われた微粒子2が配置されており、微粒子2の表面は、例えばシランカップリング処理によりシラン分子13が吸着されており、疎水性を有する。なお、金属層4は、金属層3を形成する際に、基板1上に堆積した金属である。
【0016】
このように、分光用基板を構成することにより、サンプルとして基板1上の分光測定領域Mの付近に滴下された水溶液は、分光測定領域M以外の範囲の微粒子2の表面では、はじかれる。他方、金属層3の表面は、非測定領域の微粒子2の表面と比較して相対的に親水性であることから、金属層3が形成された金属付着微粒子10の表面に水溶液が広がる。
【0017】
これにより、滴下された水溶液は、金属付着微粒子10が存在する分光測定領域Mに集まり、球状に近い形を取る。すなわち、サンプルを分光測定領域Mの範囲に濃縮することができる。ここで、金属付着微粒子10が有する金属層3により表面プラズモン共鳴による表面増強効果が得られるので、サンプルが濃縮された金属付着微粒子10表面からは、非常に大きな表面増強効果を得ることができる。
【0018】
また、
図1(c)のように、分光測定領域Mにのみ、基板1上に金属付着微粒子10を形成しておき、分光測定領域M以外の範囲には、微粒子2を吸着させないようにしても良い。この場合、基板1の分光測定領域M以外の範囲では、基板1の表面が疎水化処理されて疎水面となっている。疎水面は、例えばシランカップリング処理によりシラン分子13が吸着される。
図1(c)の場合でも、サンプル濃縮効果及び表面増強効果が得られる。
図1(a)と比較すると、
図1(a)の方が作製が簡単で、疎水性の効果が増強される。
【0019】
一方、本発明の第2の形態として、微少量の低濃度サンプルを濃縮させ分光測定に十分な強度の信号を得るため、親水性及び表面増強効果を有する領域を基板上に形成した。
図1(b)は、サンプルの被検体及び溶媒が油性物質の場合の分析用基板を示す。分光測定領域Mに配置される金属付着微粒子10は、微粒子2上に帽子状に金属層3が形成されているのは、
図1(a)と同じであるが、微粒子2の表面が親水化処理されて、例えば、シラン分子14が吸着しており、親水性を有することが異なる。シラン分子13とシラン分子14とは、結合している官能基が異なるので、疎水化処理にも親水化処理にも使用することができる。
【0020】
これにより、サンプルの被検体及び溶媒が油性物質の場合、油性溶液のサンプルを
図1(b)の基板1上の分光測定領域Mの付近に滴下すると、分光測定領域M以外の範囲の微粒子2の表面では、はじかれる。他方、分光測定領域Mの金属層3の表面は非測定領域と比較して相対的に疎水性15を有することから、金属付着微粒子10の表面は油性溶液が広がる。
【0021】
これにより、滴下された油性溶液のサンプルは、金属付着微粒子10が存在する分光測定領域Mに集まり、球状に近い形を取る。すなわち、サンプルを分光測定領域Mの範囲に濃縮することができる。ここで、金属付着微粒子10が有する金属層3により表面プラズモン共鳴による表面増強効果が得られるので、サンプルが濃縮された金属付着微粒子10表面からは、非常に大きな表面増強効果を得ることができる。
【0022】
なお、
図1(b)の分光測定領域Mの疎水性を増加させる場合は、金属層3の表面に疎水化処理としてチオール分子処理を行う。
図1(b)は、チオール分子処理により、金属層3の表面にチオール分子15が吸着し、疎水性が増加した状態を示す。
【0023】
また、
図1(d)のように、分光測定領域Mにのみ、基板1上に金属付着微粒子10を形成しておき、分光測定領域M以外の範囲には、微粒子2を吸着させないようにしても良い。この場合、基板1の分光測定領域M以外の範囲では、基板1の表面が親水化処理されて親水面となっている。親水面は、例えばシランカップリング処理によりシラン分子14が吸着される。
図1(d)の場合でも、サンプル濃縮効果及び表面増強効果が得られる。
図1(b)と比較すると、
図1(b)の方が作製が簡単で、親水性の効果が増強される。
【0024】
基板1は、ガラス、石英、シリコン等の材料が用いられる。また、微粒子2には、シリカ、ポリスチレン、酸化チタン等によるナノ粒子が用いられる。金属層3は、金や銀、白金、アルミ、銅等の金属材料を用いることできるが、金属材料としては貴金属である金、銀、白金が望ましい。
【0025】
次に、疎水面(撥水面)の特性と作製方法について
図3により説明する。化学修飾により金属や樹脂表面を撥水性にする試薬は、様々な分野で用いられている。その際、
図3(a)に示すように、基板1の平坦な表面よりも、
図3(b)に示すように、数十ナノメートルからミクロン程度の凹凸構造を有する表面を化学修飾する方が、接触角が増すことが知られている(「超撥水と超親水」辻井 薫 著、米田出版、2009)。
【0026】
ここで、
図3(a)は基板1の平坦な表面に撥水処理を行って、水溶液20を滴下した状態を示す。θ1は液滴の接触角を示す。
図3(b)は、基板1の平坦な表面に微粒子2を吸着させた後、微粒子2の表面を撥水処理し、水溶液20を滴下した状態を示す。θ2は液滴の接触角を示す。このように、
図3(b)の方が、接触角が大きくなる(θ1<θ2)。
【0027】
そこで、本発明においては基板表面を粒径数十ナノメートルからミクロン程度の粒子で被覆してから、化学修飾を行う。具体的には、
図3(c)に示すように、シリカ、酸化チタン等の微粒子2を基板1に吸着させる。次に、シラン分子のSi−OR基がOH基と反応することを利用して微粒子2の表面にシランカップリング処理を施す(
図3(d))。
図3(d)は、
図3(c)のA1の範囲を拡大表示した図である。微粒子2の表面に吸着されたシラン分子13が、長鎖の炭化水素やフッ化炭素基あるいはシリコン基を有すると、表面の接触角は120度以上の超撥水面となり、疎水性を有することになる。
【0028】
一方、水酸基もしくはカルボキシル基またはアミノ基を有するシラン分子14によるシランカップリング処理を行うと、
図1(b)で説明したように、微粒子2の表面は親水性を有することになる。
【0029】
次に、表面増強領域の作製方法を
図4で説明する。
図4(a)は、
図3(c)に示すように形成された微粒子2の表面を、厚さ5nm〜1000nmの銀もしくは金の貴金属で被覆する。これにより、表面増強が実現可能であることが知られている(T. Yamaguchi, T. Kaya, M. Aoyama, H. Takei, Analyst, 134, 776-783, 2009)。このように、金属層3には貴金属を用いることが望ましい。
図4(b)は、
図4(a)のA2の領域を拡大した図を示す。微粒子2上に帽子状に金属層3が堆積される。このとき、微粒子間における基板1の表面にも、金属層4が堆積する。このようにして、
図4(c)に示すように、微粒子2上に金属層3が形成された金属付着微粒子10が、基板1上に形成される。
【0030】
また、
図4(d)に示すように、基板1上の微粒子2をすべて覆うように、基板1の表面上に金属層3を堆積するようにしても良い。金属層3は、微粒子2をすべて埋包(内包)するように形成されるが、微粒子2が基板1に吸着したときの配置による凹凸が、そのまま堆積した金属層3の突起部41として現れる。金属層3は所定の厚みを持って形成される。金属層3を連続的に形成しているので、伝播型表面プラズモン共鳴よる表面増強効果を得ることができる。また、連続的に形成された金属層3は突起部41を複数有しているので、局在型プラズモン共鳴による表面増強効果を得ることができる。このように、伝播型表面プラズモン共鳴と局在型表面プラズモン共鳴のカップリングを可能とする構造を用いることにより、増強率の増大および構造の強靭性が得られる。
【0031】
次に、
図5のように、表面上に何も形成されていない、すなわち表面増強領域を持たない基板1を用意し、これを用いてラマン分光を行った結果と、
図4(c)の金属付着微粒子が形成された基板1を用いてラマン分光を行った結果とを比較した。
【0032】
図4(c)の基板を用い、基板を1mMのローダミン6G溶液に浸漬し、波長514.5nmの励起光でラマン分光を行った結果を
図6のXのグラフに示す。ここで、基板1上の微粒子の粒径は100nm、金属層3には銀を用い、その蒸着厚は160nmとした。一方、
図5の基板を用い、基板を1mMのローダミン6G溶液に浸漬し、波長514.5nmの励起光でラマン分光を行った結果を
図6のYのグラフに示す。
図6のラマンスペクトルは、横軸がラマンシフト(cm
−1)を、縦軸はラマン強度(任意単位)を示す。
【0033】
図6のXからわかるように、
図4(c)の基板からは顕著な散乱光が観察される。しかし、
図6のYからわかるように、
図5の基板からは信号が観察されない。
【0034】
上記
図3、4に基づけば、分光用基板の作製方法及び分光測定方法の基本的な工程の例は、以下のようになる。
【0035】
(1)基板にシリカ微粒子を吸着させ、(2)シランカップリング処理により撥水処理を施したシリカ粒子被覆表面を作製し、(3)分光測定領域内のシリカ粒子を銀ないし金でコーティングすることにより表面増強領域を作製する。次に、(4)表面増強領域をチオール処理により親水性にする。(5)被検体を含む水溶性液滴を表面増強領域に滴下すると、表面増強領域を中心に球状液体が形成される。(6)サンプルを乾燥することにより、被検体は表面増強領域のみに濃縮される。(7)被検体からの信号を表面増強効果で増幅して検出する。このような方法で、サンプルが濃縮されるとともに、濃縮された領域が表面増強効果を有するので、分光測定に十分な強度の受光信号を得ることができる。
【0036】
以下に、本発明の分光用基板作製の実施例を示す。
(実施例1)
図2は、分光用基板の具体的な作製方法を示す。まず、基板としてガラス基板11を用い、ガラス基板11の上に微粒子としてシリカナノ粒子12を吸着させる。このために、ガラス基板11表面の化学修飾を行う。アミノプロピルトリメトキシシランもしくはアミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング試薬の水溶液を重量比で0.1%〜10%のものを用意し、ガラス基板11を水溶液中に10秒から1分の間浸漬する。
【0037】
次にガラス基板11を精製水で洗浄し乾燥させる。重量比で0.1%〜5%の粒径100nmのシリカナノ粒子12の懸濁液を用意し、表面修飾された上記のガラス基板11をシリカナノ粒子12の懸濁液に浸漬する。10秒〜5分経過したら、ガラス基板を懸濁液から精製水に移し、ガラス基板11の表面から過剰量のナノ粒子を洗い流す。
【0038】
ガラス基板11を室温で十分に乾燥させたら、次にシランカップリング処理を行う。試薬としては、メチルトリメトキシシランやトリフルオロプロピルトリメトキシシラン等を使う。官能基は炭化水素基、フッ化炭素基、シリコン基であることが望ましい。
【0039】
シランカップリング処理が行われたガラス基板11の状態を示すのが、
図2(a)である。また、
図2(a)の上段に記載されたガラス基板11の一部を拡大したものが、下段に示されている。ガラス基板11上のシリカナノ粒子12の表面は、シランカップリング処理により、シラン分子13が吸着し、疎水性を有するようになる。
【0040】
ここで、
図7(a)は、シランカップリング処理が施されたシリカナノ粒子12が表面に配置された構造を有するガラス基板11上に滴下された水滴20の状態を、
図7(b)は、全く処理が施されていないガラス基板11上に滴下された水滴20の状態を模式図的に示す。
図3(a)、(b)で説明したように、
図6(a)の場合は、接触角が非常に大きくなる。
【0041】
また、
図7(c)はメチルトリメトキシシランで処理された粒径100nmのシリカナノ粒子12を有するガラス基板11の上に滴下された水滴の状態を示す画像であり、
図7(d)は、全く処理が施されていないガラス基板表面に滴下された水滴の状態を示す画像である。
図7(c)における接触角が、
図7(d)に対して大幅に増加しているのが分かる。
【0042】
また、
図7(e)は、3μlの10μMローダミン6G液滴を、
図7(a)のように構成されたガラス基板11の撥水面に滴下し乾燥させた状態を示す画像である。
図7(f)は、3μlの10μMローダミン6G液滴を、
図7(b)のように構成されたガラス基板11の未処理表面に滴下し、乾燥させた状態を示す画像である。各画像ともに、5mmのスケールが示されている。
【0043】
図7(e)の円形の点線内に描かれた白い円形状の部分は、ローダミン6G液滴がガラス基板11の撥水面により凝集されて球状液体となり、乾固した領域である。一方、
図7(f)の円形の点線内に描かれた白い円形状の部分はローダミン6Gが乾固した領域を示す。
図7(f)の乾固した領域よりも
図7(e)の乾固した領域の方が小さい。このように、
図7(e)は
図7(f)と比較してローダミン6Gが濃縮されていることがわかる。
【0044】
次に、基板上に表面増強領域を形成する。
図2(a)のように、シリカナノ粒子12にシランカップリング処理が施されたガラス基板11を用いる。
図2(b)のように、蒸着マスク41がシリカナノ粒子12に接触した状態、または近傍に配置された状態で金属蒸着を行う。この金属には、例えば、貴金属である銀を用いる。
【0045】
ガラス基板11を蒸着装置内に設置し、内部の圧力を1×10
−3パスカル程度まで減衰させる。銀ペレットを含む蒸着用ボートに電流を流し、銀の金属ガスを発生させ、銀を毎秒0.1から5nmの割合で蒸着する。銀からなる金属層3の厚さが80nmから500nmに到達したら蒸着を終了する。このようにして、シリカナノ粒子12上に帽子状に金属層3が堆積された金属付着微粒子10が作製される。走査型電子顕微鏡により撮影した金属付着微粒子10の画像を
図9に示す。
図9(a)〜
図9(c)は、金属層の蒸着厚が異なる。
【0046】
この結果、蒸着マスク41の開口部41aに存在するシリカナノ粒子12の表面は銀からなる金属層3でコーティングされ、銀がコーティングされていない周辺領域には、疎水性領域が形成される。この状態で、適量の水溶性サンプルを滴下すると、金属付着微粒子10の表面は、周辺領域のシリカナノ粒子表面と比較して相対的に親水性であることから、サンプルは球状の液滴を形成する。
【0047】
サンプルを乾燥させると、サンプル内部の被検体分子は、表面増強法に適した金属付着微粒子10の表面上に濃縮される。金属付着微粒子10の表面の親水性を増加させる必要がある場合には、金属層3の表面を水酸基もしくはカルボキシル基またはアミノ基を有するチオール分子による処理を行う。
【0048】
なお、チオール分子処理は、疎水化処理として用いることもできる。これは、チオール分子の官能基によって親水性の効果を発揮したり、疎水性の効果を発揮したりするものであるからである。上記のように官能基として、水酸基(OH)、カルボキシル基(COOH)、アミノ基(NH
2)等を有する場合は、親水化処理に用いることができる。一方、フッ化チオール(HS−(CH
2)11−O−(CH
2)
2−(CF
2)
5−CF
3)のように、官能基としてフッ素基を有する場合は、疎水化処理に用いることができる。また、チオール分子処理により、親水性又は疎水性の化学修飾を行う場合は、化学修飾される対象が金属である必要がある。
【0049】
また、チオール分子は、金属表面にしか結合しないので、分光用基板の全体にチオール分子処理を行っても、誘電体等からなる微粒子2の表面への影響はなく、微粒子2の表面の疎水性や親水性の特性が変化することはない。
【0050】
図8に、蒸着マスク41の形状パターン例を示す。
図8(a)は円形の開口部41Aを有する蒸着マスク、
図8(b)は3つの円形開口部41Bを有する蒸着マスク、
図8(c)は矩形状の開口部41Cを有する蒸着マスク、
図8(d)は十字形状の開口部41Dを有する蒸着マスクである。このような蒸着マスクを用いれば、蒸着マスクの開口部の形状に対応した分光測定領域の形状が形成される。同じ容量の液滴を基板表面に保持するに際し、分光測定領域の形状を適宜選択することができる。
【0051】
(実施例2)
次に、被検体及び溶媒が油性物質の場合の分光用基板の作製例を以下に示す。水と油とは混ざらない性質があるので、分光測定領域となる表面増強領域を疎水性、表面増強領域以外の周辺の領域を親水性にすることで、油性サンプルを滴下すると、サンプルは球状の液滴を形成する。
【0052】
まず、表面にシリカナノ粒子12が吸着されたガラス基板11を用意する。これは、
図2(a)の構造と同じであるが、シリカナノ粒子12の表面を親水化処理する点が異なる。親水化処理には、例えば、前述したように、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のいずれかの官能基を有するシラン分子によるシランカップリング処理を用いる。
【0053】
次に、
図2(b)と同様な方法により、蒸着マスク41を用いて、金属層3を分光測定領域に存在するシリカナノ粒子11に蒸着させる。シリカナノ粒子12上に帽子状に金属層3が堆積された金属付着微粒子10が作製される。金属層3の表面は、表面増強領域となり、周辺領域のシリカナノ粒子表面と比較して相対的に疎水性であることから、油性のサンプルは球状の液滴を形成する。さらに、表面増強領域の疎水性を増加させる場合は、金属層3の表面にフッ化チオール処理を行う。
図2(c)は、金属層3の表面にチオール分子15が吸着しており、疎水性が増加した状態を示す。
【0054】
次に、表面増強領域の周辺領域の疎水性又は親水性をさらに向上させる必要がある場合には、チオール分子処理を行っても良い。この場合は、微粒子吸着後、微粒子形成の全範囲に渡って、厚さ5nm〜10nmの金を蒸着しておく必要がある。
【0055】
金薄膜を微粒子上に形成後、疎水性又は親水性の効果を向上させるために、チオール分子による表面改質処理を行う。例えば、親水化処理を行う場合は、金薄膜の表面を水酸基もしくはカルボキシル基またはアミノ基を有するチオール分子による処理を行う。また、疎水化処理を行う場合は、金薄膜表面にフッ化チオール処理を行う。
【0056】
シランカップリング処理により、疎水化処理又は親水化処理を行う場合は、金薄膜等の金属を微粒子の全範囲に渡って形成する必要はなく、コストは安い。しかし、シランカップリング処理されたシリカ粒子と比較して、チオール分子処理された金コートシリカ粒子の方が、より顕著な表面処理効果が現れる。次に、蒸着マスクを使用して分光測定領域(表面増強領域)のみに、5nmから1000nmの銀ないしは金を蒸着する。励起波長にも依存するが、一般的には銀の方が表面増強用金属として望ましい。
【0057】
図10は、分光測定の一例を示す。
図10(a)は、基板1上に濃縮されている被検体51を含む水溶性の液滴32に励起光を照射し、分光学的に測定している例を示す。
図10(b)は、被検体51を含む液滴32が、疎水化処理された基板1の表面に滴下された状態を示す。ここで、実線で描かれた53は疎水性領域を、点線で描かれた52は親水性領域を示す。親水性領域52は分光測定領域に相当する。
【0058】
すなわち、
図1(a)、
図2(b)に示される基板1やガラス基板11と同様、基板上には微粒子2が吸着されており、金属層3が形成されている金属付着微粒子10が存在する領域が親水性領域52を示し、金属層3が形成されていない微粒子2が存在する領域が疎水性領域53を示す。これにより、
図10(b)に示すように、液滴32が親水性領域52に濃縮される。液滴32が乾燥すると、
図10(c)に示すように、被検体51が親水性領域52に集約される。親水性領域52は、表面増強領域でもあるので、濃縮された被検体51からは、強度の大きい受光信号を得ることができる。このように、微少量の低濃度サンプルであっても、このサンプルを濃縮させ、分光測定に十分な強度の信号を得ることができる。
【0059】
図10(d)、(e)は比較例を示す。
図10(d)では、表面処理が何もされていない基板31を用いている。このため、液滴51は、基板31上で広がり濃縮されなくなる。液滴51が乾燥すると、
図10(e)に示すように、被検体51が分散した状態で、基板31上に配置される。また、基板31には表面増強領域は形成されていないので、分散配置された被検体51からは、分光測定に十分な強度の受光信号を得ることができない。