特許第5967760号(P5967760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967760
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20160728BHJP
   B60H 1/04 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B60H1/22 611C
   B60H1/22 671
   B60H1/04
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-159450(P2012-159450)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-19286(P2014-19286A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【弁理士】
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】酒井 祐典
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田上 真二
【審査官】 岡澤 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−083560(JP,A)
【文献】 特開2001−235033(JP,A)
【文献】 実開昭60−098766(JP,U)
【文献】 実開平06−049721(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/22
B60H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に熱媒体が流れる流路が構成された筐体と、該筐体内の流路中に配設されて前記熱媒体を加熱する発熱体とから成る加熱装置において、
前記熱媒体は、車両暖房用水回路を循環する不凍液であり、
前記筐体は、それぞれ少なくとも一面が開口し、各開口が相互に突き合わされた状態で接続された第1筐体部及び第2筐体部と、これら第1筐体部及び第2筐体部の突き合わせ部分に介設され、両筐体部間をシールする板状のガスケットとを備え、
該ガスケットの少なくとも一部は前記流路中に位置し、当該流路中における熱媒体の流れを制御することを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記ガスケットは、前記流路中に位置する壁部と、該壁部にて開口する通路部を有することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ガスケットは、前記壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状により、前記筐体内で空気が溜まり易い箇所の流路を狭めることを特徴とする請求項2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記ガスケットは、前記流路の上部に位置する前記通路部の上部に突出形成された切欠部を有することを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記ガスケットは、前記壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状により、前記筐体内で熱媒体が流れにくい箇所の流路を広げることを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちの何れかに記載の加熱装置。
【請求項6】
前記ガスケットの壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状は、前記流路中における熱媒体の圧力損失の許容範囲内で設定されることを特徴とする請求項2乃至請求項5のうちの何れかに記載の加熱装置。
【請求項7】
前記発熱体は前記両筐体部間に渡って配設されており、前記ガスケットの壁部に形成された通路部を前記発熱体が貫通することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の加熱装置。
【請求項8】
前記発熱体は前記各筐体部にそれぞれ配設されており、前記ガスケットは前記各発熱体間に位置することを特徴とする請求項1乃至請求項6のうちの何れかに記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体を用いて流通する熱媒体を加熱する加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題の顕在化により、ハイブリッド自動車や電気自動車の開発が活発化し、その普及が促進されている。このような車両では従来車室内の空調に用いていたエンジンの廃熱を十分に利用できないため、電熱線ヒータを発熱体とした加熱装置が車両に搭載され、ハイブリッド自動車ではエンジンの廃熱を補う補助熱源として、電気自動車の場合にはエンジンに代わる代替熱源として、車両用空調装置の回路を循環する冷却水等の熱媒体の加熱に用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような加熱装置では、筐体内に熱媒体が流れる流路を構成し、この流路中に発熱体を配設して熱媒体を加熱する構成とされる。従って、加熱性能を向上させるためには発熱体と熱媒体との熱交換を活発化させなければならない。
【0004】
そこで、前記特許文献1では発熱体が収容された第1筐体の外面に仕切り(ガイド)を形成し、この仕切りによって流路中における熱媒体の流れを旋回させ、第1筐体を介して発熱体と熱媒体とが熱交換する時間を延長させる工夫が成されている。また、発熱体を平板状に構成して伝熱面積を大きくし、更にこの平板状の発熱体に複数の貫通穴を形成し、順次貫通穴を通過しながら熱媒体と発熱体とを熱交換させるものもあった(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−143781号公報
【特許文献2】特許第3633329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように筐体内に仕切りを形成して熱媒体の流路を制御する方式では、部品点数が増大し、生産コストの高騰に繋がる。また、上記特許文献2のような発熱体はそれ自体コストの高いものとなると共に、流路における熱媒体の圧力損失が増加してしまう。また、流路が複雑化するために空気が出て行き難くなり、流路中に滞留してしまう問題があった。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するためになされたものであり、部品点数を増加させること無く、発熱体と熱媒体との熱交換を効果的に行わせ、更に、空気溜まりや圧力損失の増加も解消することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の加熱装置は、内部に熱媒体が流れる流路が構成された筐体と、この筐体内の流路中に配設されて熱媒体を加熱する発熱体とから成るものであって、熱媒体は、車両暖房用水回路を循環する不凍液であり、筐体は、それぞれ少なくとも一面が開口し、各開口が相互に突き合わされた状態で接続された第1筐体部及び第2筐体部と、これら第1筐体部及び第2筐体部の突き合わせ部分に介設され、両筐体部間をシールする板状のガスケットとを備え、このガスケットの少なくとも一部は流路中に位置し、当該流路中における熱媒体の流れを制御することを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明の加熱装置は、上記発明においてガスケットは、流路中に位置する壁部と、この壁部にて開口する通路部を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明の加熱装置は、上記発明においてガスケットは、壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状により、筐体内で空気が溜まり易い箇所の流路を狭めることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明の加熱装置は、上記発明においてガスケットは、流路の上部に位置する通路部の上部に突出形成された切欠部を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明の加熱装置は、請求項2乃至請求項4の発明においてガスケットは、壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状により、筐体内で熱媒体が流れにくい箇所の流路を広げることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明の加熱装置は、請求項2乃至請求項5の発明においてガスケットの壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状は、流路中における熱媒体の圧力損失の許容範囲内で設定されることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明の加熱装置は、上記各発明において発熱体は両筐体部間に渡って配設されており、ガスケットの壁部に形成された通路部を発熱体が貫通することを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明の加熱装置は、請求項1乃至請求項6の発明において発熱体は各筐体部にそれぞれ配設されており、ガスケットは各発熱体間に位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、内部に熱媒体が流れる流路が構成された筐体と、この筐体内の流路中に配設されて熱媒体を加熱する発熱体とから成る加熱装置において、熱媒体は、車両暖房用水回路を循環する不凍液であり、筐体は、それぞれ少なくとも一面が開口し、各開口が相互に突き合わされた状態で接続された第1筐体部及び第2筐体部と、これら第1筐体部及び第2筐体部の突き合わせ部分に介設され、両筐体部間をシールする板状のガスケットとを備え、このガスケットの少なくとも一部は流路中に位置し、当該流路中における熱媒体の流れを制御するので、筐体内に格別な仕切りを設けること無く、或いは、発熱体に格別な加工を施すこと無く、第1筐体部と第2筐体部間をシールするガスケットにより、筐体内を流れる熱媒体の流れを制御することができるようになる。
【0017】
このように、各筐体部間のシールを行うガスケットを利用して熱媒体の流れを制御できるので、部品点数やコストの削減を図りながら、発熱体と熱媒体との熱交換を効果的に行わせることができるようになる。
【0018】
特に、熱媒体は車両暖房用水回路を循環する不凍液であるので、本発明の加熱装置を不凍液が循環する車両暖房用水回路に設け、熱媒体である当該不凍液を加熱することにより、エンジンの補助熱源や代替熱源として用ることで、冷却水回路が設けられる空調装置やそれが搭載される車両の空調性能を改善し、且つ、コストの低減も図ることが可能となるものである。
【0019】
この場合、例えば請求項2の発明の如くガスケットに、流路中に位置する壁部と、この壁部にて開口する通路部を設け、例えば請求項3の発明の如くガスケットの壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状により、筐体内で空気が溜まり易い箇所の流路を狭めるようにすれば、筐体内の空気が溜まり易い箇所の熱媒体の流速を速くして、流路内に滞留しようとする空気を円滑に押し流すことができるようになる。これにより、筐体内の流路中における空気溜まりの発生を効果的に防止若しくは抑制することが可能となる。
【0020】
ここで、流路の上部は熱媒体が流れ難くなる箇所であり、且つ、空気も溜まり易い箇所である。上記のように空気を押し出すためにこの部分の流路を狭くすると、より熱媒体が流れ難くなってしまうが、請求項4の発明の如く流路の上部に位置する通路部の上部に、切欠部を突出形成すれば、係る流路の上部を熱媒体が通過し易くし、発熱体と熱交換しずらくなる箇所を少なくすることができる。更に、切欠部は熱媒体の圧力損失の低減効果もある。
【0021】
また、例えば請求項5の発明の如くガスケットの壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状により、筐体内で熱媒体が流れにくい箇所の流路を広げれば、筐体内で熱媒体が流れにくい箇所を流れ易くし、熱媒体の流量を均一化して、発熱体による熱媒体の加熱を効率的に行わせることが可能となり、発熱体の異常温度上昇も回避することが可能となる。
【0022】
このとき請求項6の発明の如くガスケットの壁部に形成された通路部の開口寸法及び又は形状を、流路中における熱媒体の圧力損失の許容範囲内で設定するようにすれば、熱媒体の流れの制御のために筐体内における熱媒体の圧力損失を過剰に増大させる不都合も防止できるようになる。
【0023】
ここで、請求項7の発明の如く発熱体が両筐体部間に渡って配設される場合は、ガスケットの壁部に形成された通路部を発熱体が貫通するようにすることで、ガスケットによる熱媒体の流れ制御を支障なく行わせることが可能となる。
【0024】
また、請求項8の発明の如く発熱体が各筐体部にそれぞれ配設される場合には、ガスケットが各発熱体間に位置するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明を適用した実施例1の加熱装置の平面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図2のB−B線断面図である。
図4図1の加熱装置の第1筐体部の側面図である。
図5図1の加熱装置のガスケットの正面図である。
図6図4の第2筐体部の端面に図5のガスケットを対応させた図である。
図7】本発明を適用した実施例2の加熱装置の第1筐体部の側面図である。
図8】同じく実施例2のガスケットの正面図である。
図9図7の第2筐体部の端面に図8のガスケットを対応させた図である。
図10】本発明を適用した実施例3の加熱装置のガスケットの正面図である。
図11図7の第2筐体部の端面に図10のガスケットを対応させた図である。
図12】本発明を適用した実施例4の加熱装置の平面図である。
図13図12のC−C線断面図である。
図14図13のD−D線断面図である。
図15図12の加熱装置の第2筐体部の側面図である。
図16図12の加熱装置のガスケットの正面図である。
図17図15の第2筐体部の端面に図16のガスケットを対応させた図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0027】
図1乃至図6は本発明の実施例1の加熱装置1を示している。各図に示すように加熱装置1は、内部に熱媒体の流路3が構成された筐体2と、この筐体2内の流路3中に設けられた発熱体としての二本の電熱線ヒータ4とから構成されている。
【0028】
実施例の加熱装置1は、例えばハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載され、ハイブリッド自動車の場合には、エンジン(熱源)の不足する廃熱を補うようにして熱を供給する熱源として、電気自動車の場合には、存在しないエンジンに代わって熱を供給する代替熱源として、車両用空調装置の水回路(図示せず)を循環する不凍液(熱媒体)等の加熱に用いられるものである。
【0029】
具体的には、ハイブリッド自動車の場合には、流路3にエンジンを冷却すべく冷却水回路を循環するLLC(冷却水、不凍液)が熱媒体として流れて電熱線ヒータ4により加熱される。この冷却水回路は車両用空調装置に設けられ、エンジン及び加熱装置1で加熱されたLLCにより車室内の暖房が可能となる。
【0030】
一方、電気自動車の場合には、流路3に水回路を循環するLLCが熱媒体として流れて電熱線ヒータ4により加熱される。この水回路は上記と同様に車両用空調装置に設けられ、加熱装置1で加熱された冷媒の熱によって車室内の暖房が可能となる。また、流路3には熱媒体としての水を流通させ、水を電熱線ヒータ4により温水にし、この温水をエンジンの代替熱源として車両用空調装置の暖房用回路を循環するLLCを加熱するための熱源として利用してもよい。
【0031】
更に、ハイブリッド自動車、電気自動車の何れの場合にも、不凍液が循環する暖房用回路に図示しないヒータコアと共に加熱装置1を設け、加熱装置1を不凍液の熱源の一つとして利用し、ヒータコアで暖房された空気を送風することも考えられる。
【0032】
次に、実施例の加熱装置1の筐体2は、それぞれ一側面が開口した金属製の矩形容器形状の第1筐体部6及び第2筐体部7と、これらの間に介設された金属ガスケット8とから成り、このガスケット8を介して第1筐体部6の開口と第2筐体部7の開口を相互に突き合わせ、図示しないボルトにて各筐体部6及び7を相互に固定することにより組み立てられている。尚、各電熱線ヒータ4は何れか一方の筐体部の他側面に形成された図示しない開口から流路3内に挿入され、その開口は図示しないカバーにて封止される。
【0033】
この状態でガスケット8は各筐体部6、7間をシールする。また、図5に示すようにガスケット8の壁部9には実施例ではそれぞれ貫通孔から成る上下二つの通路部11、12が開口形成されている。各電熱線ヒータ4はこのガスケット8の通路部11、12内を所定の間隔を存して貫通し、第1筐体部6と第2筐体部7間に渡って設けられる。
【0034】
更に、第1筐体部6の上面には熱媒体の流入口13が形成されており、第2筐体部7の上面には熱媒体の流出口14が形成されている。また、各筐体部6、7にて構成される筐体2内の流路3は、図4に示すように二つの略円筒状の空間部3Aの中央を狭幅部3Bで連結した形状を呈しており、ガスケット8の通路部11、12を貫通した状態の各電熱線ヒータ4がこれら空間部3A内にそれぞれ位置する。更に上側の空間部3Aの上面及び下側の空間部3Aの下面は、断面半円弧状にそれぞれ拡張されて拡幅部3Cとされている。
【0035】
ここで、実施例でガスケット8は取り付けられた状態で流入口13と流出口14間の略中央に位置しており、下側の通路部12は下側の空間部3Aより少許小さい円形状を呈し、更に下側の拡幅部3Cと同様の形状で半円弧状に拡幅された拡幅部12Aを有している。また、流路3の上部に位置する上側の通路部11も上側の空間部3Aより少許小さい円形状を呈しているが、その上部、例えば、上半分の位置には空間部3Aの円弧まで達する幅狭の切欠部11Aが複数突出形成されている。また、各通路部11、12の円形状の部分の内径寸法は、前述したように電熱線ヒータ4と所定の間隔を構成するために、電熱線ヒータ4の金属パイプ21の外径よりも当該所定間隔分大きく設定されている。
【0036】
このような寸法関係により、ガスケット8の壁部9は各筐体部6、7の開口端面より筐体2内の流路3中に張り出して位置し、通路部11、12と電熱線ヒータ4、4間の流路3は、図6にハッチングで示す如き断面形状となる。即ち、下側の通路部12で構成される流路3の断面は、電熱線ヒータ4の周囲を所定間隔で囲繞し、且つ、下側に拡幅(拡幅部12A)した形状を呈する。また、上側の通路部11で構成される流路3の断面は、同様に電熱線ヒータ4の周囲を所定間隔で囲繞し、且つ、上半分が複数箇所で狭く外側に飛び出した形状を呈する。これにより、流入口13から第1筐体部6と電熱線ヒータ4間を通り、ガスケット8の各通路部11、12を経て第2筐体7と電熱線ヒータ4間から流出口14に至る熱媒体の流路3が筐体2内に構成される。
【0037】
以上の構成で、熱媒体は図示しないポンプ等により流入口13から図2中矢印の如く筐体2内の流路3に流入し、流路3内を通過して流出口14から流出する。このとき、上方から流入する熱媒体は、その流勢で大部分は第1筐体部6内の各電線線ヒータ4周囲を上から下に通過し、第1筐体部6の下部の拡幅部3Cに至る。その後、ガスケット8方向に向きを変え、下側の電熱線ヒータ4の周囲をガスケット8方向に向かい、ガスケット8の通路部12の拡幅部12Aを経て第2筐体部7に流入し、各電熱線ヒータ4の周囲を下から上に流れて最終的に流出口14から出て行く。従って、流入した熱媒体の多くの部分は広げられたガスケット8の拡幅部12Aを円滑に通過していくことになる。
【0038】
また、流入口13から流入した残りの熱媒体は、各電熱線ヒータ4に衝突すること等でガスケット8方向に向きを変え、各電熱線ヒータ4周囲を経てガスケット8の通路部11、12に至り、それと各電熱線ヒータ4との間の間隔から第2筐体部7に流入し、同様に流出口14から出て行く。このように熱媒体はその流勢で流入口13から流入した後、下方に通過して行こうとするので、流路3の上部は熱媒体が流れ難くなるが、ガスケット8の上側の通路部11の上部(上半分)には複数の切欠部11Aが突出して形成されているので、熱媒体が通過し易くなり、熱交換しずらい箇所が少なくなる。更に切欠部11Aは、圧力損失の低減効果もある。
【0039】
このように、本発明の加熱装置1によれば、筐体2を構成する第1筐体部6と第2筐体部7間をシールするガスケット8により流路3中における熱媒体の流れが制御されることになる。従って、流路3中の熱媒体の流れを制御するために格別な仕切りを設けたり、或いは、電熱線ヒータ4に格別な加工を施したりする必要が無くなる。
【0040】
即ち、各筐体部6、7間のシールを行うガスケット8を利用して熱媒体の流れを制御できるので、部品点数やコストの削減を図りながら、電熱線ヒータ4と熱媒体との熱交換を効果的に行わせることができるようになる。
【0041】
また、電熱線ヒータ4は両筐体部6、7間に渡って配設され、ガスケット8の壁部9に形成された通路部11、12を貫通しているので、ガスケット8による熱媒体の流れ制御は支障なく行われることになる。
【0042】
更に、上記実施例ではガスケット8に、流路3中に位置する壁部9と、この壁部9にて開口する通路部11、12を設け、大部分の熱媒体が流れようとする下側の通路部12の下部に拡幅部12Aを形成して開口寸法を大きくし、熱媒体が流れ易いようにして流路3中における熱媒体の圧力損失を低減している。尚、この拡幅部12Aの寸法は流路3中における熱媒体の圧力損失が許容範囲内になるように設定する。
【0043】
これにより、ガスケット8による熱媒体の流れの制御のために筐体2内における熱媒体の圧力損失を過剰に増大させる不都合も防止できるようになる。
【0044】
また、筐体2内の流路3の上部(図2中に破線円Xで示す部分)は空気が溜まり易いが、上側の通路部11の水路幅を狭くして熱媒体の流速を速くしているので、この部分の流路3内に滞留しようとする空気を円滑に押し流すことができるようになる。これにより、筐体2内の流路3中における空気溜まりの発生を効果的に防止若しくは抑制することが可能となる。尚、前述したように通路部11の上部には切欠部11Aが複数突出形成されているので、熱媒体が通過し易くなり、電熱線ヒータ4との熱交換も促進される。更に、水路幅を狭くしたことによる熱媒体の圧力損失も低減される。
【実施例2】
【0045】
次に、図7図9は本発明の加熱装置1の他の実施例(実施例2)を示している。尚、各図において図1乃至図6と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。この場合、各筐体部6、7内の流路3の形状は、図7に示すように略長円形を呈している。
【0046】
また、この場合のガスケット8の通路部11、12は、何れも電熱線ヒータ4との間に所定間隔を存するようにその外径より大きい円形状を呈しており、図8に示すように上側の通路部11の上部には外側に飛び出す切欠部11Bが複数形成され、下側の通路部12の下部にも外側に飛び出す切欠部12Bが複数形成されている。これら切欠部11B、12Bは流路3の上下の円弧まで達する。また、各通路部11、12間には小径の通路部15が実施例では三個形成され、それらによりガスケット8は中央の水平線に対して上下が対称な形状を呈している。
【0047】
このような形状・寸法関係により、ガスケット8の壁部9は各筐体部6、7の開口端面より筐体2内の流路3中に張り出して位置し、通路部11、12と電熱線ヒータ4、4間の流路3は、図9にハッチングで示す如き断面形状となる。即ち、下側の通路部12で構成される流路3の断面は、電熱線ヒータ4の周囲を所定間隔で囲繞し、且つ、下部が複数箇所で外側に飛び出した形状を呈する。また、上側の通路部11で構成される流路3の断面も、電熱線ヒータ4の周囲を所定間隔で囲繞し、且つ、上部が複数箇所で外側に飛び出した形状を呈する。そして、通路部15はそれらの間で開口するかたちとなる。
【0048】
ガスケット8をこのように上下対称形状とすることで、筐体2内の流路3を流れる熱媒体の流量を、上下で均一化を推進することが可能となる。また、前述同様に通路部11の切欠部11Bは熱媒体の流速を速くし、空気を押し出す機能を奏する。但し、この場合の流路3内における熱媒体の圧力損失は許容範囲内に抑える必要がある。上記通路部15にも熱媒体は流れるため、通路部15の寸法や数は圧力損失を許容範囲内に抑えられるように設定されることになる。
【0049】
また、ガスケット8を上下対称形状としたことで、組み付け時にガスケット8の上下を気にする必要がなくなり、生産性が向上する効果もある。
【実施例3】
【0050】
次に、図10図11は本発明の加熱装置1の更に他の実施例(実施例3)を示している。尚、各図において図1乃至図9と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。また、この場合も各筐体部6、7内の流路3の形状は、図7に示すように略長円形を呈しているものとする。
【0051】
また、この場合のガスケット8の通路部11、12は、何れも電熱線ヒータ4との間に所定間隔を存するようにその外径より大きい円形状を呈しているが、上側の通路部11のみは図10に示すように上部には外側に飛び出す切欠部11Cが複数形成され、下側の通路部12は円形状のままとされている。そして、切欠部11Cは流路3の上側の円弧まで達する。
【0052】
このような形状・寸法関係により、ガスケット8の壁部9は各筐体部6、7の開口端面より筐体2内の流路3中に張り出して位置し、通路部11、12と電熱線ヒータ4、4間の流路3は、図11にハッチングで示す如き断面形状となる。即ち、下側の通路部12で構成される流路3の断面は、電熱線ヒータ4の周囲を所定間隔で囲繞する環状を呈する。一方、上側の通路部11で構成される流路3の断面は、電熱線ヒータ4の周囲を所定間隔で囲繞し、且つ、上部が切欠部11Cにて複数箇所外側に飛び出した形状を呈することになる。
【0053】
ガスケット8をこのような形状とすることで、上側の通路部11上部の開口寸法が拡張されるので、前述したような流勢によって下部よりも熱媒体が流れにくくなる流路3内上部が流れ易くなる。このような方法によっても熱媒体の流量を均一化し、電熱線ヒータ4による熱媒体の加熱を効率的に行わせることが可能となる。但し、この場合も流路3内における熱媒体の圧力損失が許容範囲内に抑えられるように、特に通路部12と電熱線ヒータ4との間隔は設定されるものとする。
【実施例4】
【0054】
次に、図12図17は本発明の加熱装置1の更に他の実施例(実施例4)を示している。尚、各図において図1乃至図11と同一符号で示すものは同一若しくは同様の機能を奏するものとする。この場合も筐体2を構成する各筐体部6、7は一側面が開口し、各開口がガスケット8を介して突き合わされてボルト固定されているが、各筐体部6、7の他側面中央からは周囲に間隔を存して開口まで突出した突壁部36、37がそれぞれ形成され、相互に突き合わされている。
【0055】
また、各電熱線ヒータ4は各突壁部36、37を貫通するかたちで各筐体部6、7内にそれぞれ配置されている。更に、流入口13は第1筐体部6の他側面の一方に寄った位置に形成され、流出口14は第2筐体部7の他側面の他方に寄った位置に形成されている。また、ガスケット8は各電熱線ヒータ4間に位置することになり、その壁部9には突壁部36及び37の突き合わせ部分が貫通する角形の通路部41と、その左右に形成された丸孔から成る通路部42、43が貫通形成されている。
【0056】
この場合、図16に示す如くガスケット8の通路部41と突壁部36、37間には所定の間隔が形成されており、更に、通路部41の四辺には半円形の切欠部41A、41Bが形成され、流出口14側に位置する切欠部41Aは他の切欠部41Bよりも大きく(開口寸法大)形成されている。また、流出口14側に位置する通路部42は流入口13側に位置する通路部43よりも大径(開口寸法大)に構成されている。
【0057】
このような寸法関係により、この場合のガスケット8の壁部9も各筐体部6、7の開口端面より筐体2内の流路3中に張り出して位置し、各通路部41〜43と突壁部36、37間の流路3は、図17にハッチングで示す如き断面形状となる。即ち、流入口13側より流出口14側の方が広くなる形状を呈する。これにより、流入口13から入り、第1筐体部6の上下壁と電熱線ヒータ4及び突壁部36との間からガスケット8の各通路部41〜43を経て第2筐体部7の上下壁と電熱線ヒータ4及び突壁部37との間より流出口14に至る熱媒体の流路3が筐体2内に構成される。
【0058】
以上の構成で、熱媒体は図示しないポンプ等により流入口13から図13中矢印の如く筐体2内の流路3に流入し、流路3内を通過して流出口14から流出する。このとき、流入口13から第1筐体部6に流入した熱媒体は、その流勢で大部分はガスケット8の通路部43や通路部41の切欠部41Bを通過しようとするが、この通路部43や通路部41Bは流出口14側の通路部42や切欠部41Aより開口寸法が小さいので、半分程は通過できず、その通過できない熱媒体は通路部42や切欠部41A側に向かう。
【0059】
そして、第1筐体部6内の電熱線ヒータ4の周囲を通過し、これら通路部41〜43(突壁部36、37とガスケット8の間隔を含む)を経て第2筐体部7に入り、第2筐体部7内の電熱線ヒータ4の周囲を経て最終的に流出口14から出て行くことになる。
【0060】
このように、この場合の加熱装置1によっても筐体2を構成する第1筐体部6と第2筐体部7間をシールするガスケット8により流路3中における熱媒体の流れが制御されることになる。従って、流路3中の熱媒体の流れを制御するために格別な仕切りを設けたり、或いは、電熱線ヒータ4に格別な加工を施す必要が無くなる。
【0061】
即ち、各筐体部6、7間のシールを行うガスケット8を利用して熱媒体の流れを制御できるので、部品点数やコストの削減を図りながら、電熱線ヒータ4と熱媒体との熱交換を効果的に行わせることができるようになる。特に、実施例では熱媒体の流勢で流れ易くなる流入口13側の通路部43や切欠部41Bの開口寸法を流出口14側の通路部42や切欠部41Aより大きくしているので、流路3中における熱媒体の流れを均一化し、各電熱線ヒータ4と熱媒体との熱交換を効率的に行わせることが可能となる。結果的に電熱線ヒータ4の表面温度が局所的に上昇するのを避け、電熱線ヒータ4の寿命を長くすることができる。また、この実施例では各電熱線ヒータ4が各筐体部6、7にそれぞれ配設されているが、ガスケット8は各電熱線ヒータ4間に位置するので支障無く筐体部6、7間をシールし、熱媒体の流れの制御も実現することが可能となる。
【0062】
尚、上記各実施例ではガスケット8の壁部9を流路3中に位置させ、即ち、壁部9により一旦流路3を第1筐体部6側と第2筐体部7側とに仕切り、この壁部9に熱媒体が通過する通路部11、12、15、41〜43を形成し、それらの開口寸法や形状によって熱媒体の流れを制御するようにしたが、それに限らず、ガスケット8の壁部9の一部が筐体部6、7の端面から流路3中に張り出して位置するようにしてもよい。その場合は、張り出したガスケット8の壁部9の一部分以外の部分が通路部の役割を果たすことになる。
【0063】
また、この張り出した一部分を熱媒体の流れ方向に対して傾斜させ、流れやすさを調整することで制御してもよい。即ち、通路部の形状には係るガスケット8の壁部9の一部分の傾斜等も含むものとする。
【0064】
更に、電熱線ヒータ4の数やガスケット8の各通路部の数、形状は上記各実施例に限定されるものでは無く、また、発熱体としては実施例の電熱線ヒータ以外の発熱体を適用することも可能であり、水以外の流体を熱媒体としてもよい。但し、安価な汎用の電熱線ヒータ4を用いることで、加熱装置1の製造コストを低減することが可能となると共に、その信頼性も高めることができる。
【0065】
更にまた、本発明の加熱装置1をハイブリッド自動車や電気自動車の車両用空調装置に組み込むことにより、冷却水回路が設けられた空調装置、それが搭載される車両の性能改善を図ることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 加熱装置
2 筐体
3 流路
3C 拡幅部
4 電熱線ヒータ(発熱体)
6 第1筐体部
7 第2筐体部
8 ガスケット
9 壁部
11、12、15、41、42、43 通路部
11A、11B、11C、41A、41B 切欠部
12A 拡幅部
13 流入口
14 流出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17