【実施例1】
【0009】
図2に示す実施例1の包装用容器1は、カップ状からなっており、胴部2が紙又は合成樹脂を複数積層してなる素材、本実施例では外面側を紙とし、内面側にPETフィルムを貼り合わせた素材からなっており、胴部2の主要部を引き裂いて容器底部の糸底部3と分離する引裂線を設けている。
上記胴部2の素材の一例としては、紙の厚みが0.20〜0.50mm、PETフィルムの厚みが15〜60μmからなっており、紙は単層抄きより多層抄きが好ましいが、この発明では特に限定されない。
【0010】
引裂線は、胴部2の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなっている。
本実施例で、上記引裂線は、胴部2の下部で胴部2の内壁面に接着される容器底面の糸底部3の外周面に沿ってその全周に形成された横引裂線4、5と、胴部2の上端と前記横引裂線4,5との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線4、5と一連につながる縦引裂線6、7とを有している。
上記引裂線は、
図1の胴部2のブランクに示すように、実線が胴部の外面側に形成されるハーフカット、点線が胴部の内面側に形成されるハーフカットである。
【0011】
横引裂線4、5は、胴部2の外面側に形成されるハーフカット5が下方となり、内面側に形成されるハーフカット4が上方に配置されている。
縦引裂線6、7は、胴部2の外面側に形成されるハーフカット6が引裂方向の基端側となり、前記横引裂線の外面側のハーフカット5と連接され、内面側に形成されるハーフカット7が引裂方向の先端側となり前記横引裂線の内面側のハーフカット4と連接されている。
【0012】
この発明では、後述のように、本実施例では、横引裂線4、5と、縦引裂線6、7だけで構成されていてもよいが、本実施例では縦引裂線(説明の便宜上、一方の符号を6、7とし、他方の符号を6’、7’とする)を胴部2の貼合部21を挟んで、その近傍に一対に形成しており、更に、該縦引裂線6、7と6’、7’の間に縦引裂中継線8、9を形成している。
また、ハーフカットは
図5に例示するように、内面側が引裂抵抗の高いPETフィルム側を含めて紙の一部まで含めてカットされた例を図示したが、引裂抵抗が低い樹脂フィルムの場合は、その一部がカットされるものでもよく、カットの深さは素材に応じて引裂できるように適宜設計することができる。
【0013】
縦引裂中継線8、9は、胴部2の外面側に形成されるハーフカット8が引裂方向の先端側となり、前記横引裂線の外面側のハーフカット5と連設されており、胴部2の内面側に形成されるハーフカット9が引裂方向の基端側となり、前記横引裂線の内面側のハーフカット4と連設されている。
この発明では、各引裂線の内面側のハーフカットと外面側のハーフカットの配置は、胴部2の素材に応じて配置でき、図示例では内面側の引裂抵抗が高い場合であるが、外面側の引裂抵抗が高い場合には逆に配置(
図1の実線が内面側、点線が外面側)に形成してもよい。
【0014】
上記横引裂線4、5と、縦引裂線6、7と、引裂中継線8、9とは、それぞれ外面側と内面側に形成される一対のハーフカットの間隔をハーフカット間で引裂可能な間隔に設定する必要があり、図示例では、横引裂線4、5と、縦引裂線6、7は、それぞれ3mm間隔とし、引裂中継線8、9は4mm間隔としているが、前記間隔は、素材に応じて適宜増減することができる。
【0015】
本実施例で、縦引裂線6、7と6’,7’は、胴部2の貼合部21の近傍に配置されており、上端から中途位置までが引裂方向と反対方向に傾斜し、中途位置で湾曲して横引裂線4、5と連なる下端まで引裂方向に傾斜してなる略く字状に形成されている。
【0016】
該縦引裂線6,7と6’、7’との間に形成される縦引裂中継線8,9は、横引裂線4、5と連なる下端から引裂方向に向かって湾曲しながら胴部上端にいたる略ノ字状の曲線からなっている。
これにより縦引裂線6,7から引き裂かれた略半分の胴片部を引裂方向に沿ってスムーズに切り離すことができる。
ここで、例えば、外面側に形成されるハーフカット8の上端は、胴部の上端、図示例では後述の切欠部11の縁部と接することなく、僅かに、例えば2mm程度離しておくことで、内面側のハーフカット9が切欠部の縁部に接していても、容器の上端形状の保形性を維持することができる。
【0017】
また、本実施例では、胴部2の上端には、鍔部10と、切欠部11とが形成されている。
鍔部10は容器1に蓋部を掛止めるために形成されるが、鍔部10にハーフカットを形成すると鍔部10が割れて保形性が維持できない虞れがあるため、本実施例では胴部2の上端に切欠部11を形成している。
ここで鍔部10は、円形状にカールされたものでも、円弧状にカールされたものでも、外方へ突出するフランジ片であってもよく、要するに蓋部に掛止可能な構造であればよい。
【0018】
切欠部11は、図示例の場合、円弧状の切欠からなっており、両端の角部も湾曲形成しており、該切欠部11の縁部にハーフカットの上端が配置されている。
図1に示すように、縦引裂線6、7の上端は前記切欠部11の中央から引裂方向側にずれた位置に設定することが引裂しやすく好適である。
【0019】
また、縦引裂中継線8,9の上端の位置は切欠部11の中途位置でよいが、前述のように、外面側に形成されるハーフカット8の上端は切欠部11の縁部と僅かに離れて終わっており、引き裂く際の力で切り裂くようになっている。
これにより、成形時に切欠部11に負荷がかかっても前記縦引裂中継線8,9によって切欠部11が破損したり変形したりすることがなく、容器の保形性を維持することができる。
【0020】
本実施例で、横引裂線の内面側のハーフカット4は、糸底部3の上端より僅かに上方位置、例えば1mm以内に配置されており、外面側のハーフカット5は糸底部3の上端より下方位置に配置されている。
これにより、横引裂線4、5に沿って引き裂かれた残りの部分は、糸底部3の底面より僅かに突出する程度であれば、収納物を糸底部3から取り出す際の障害にならない。
【0021】
この発明では、横引裂線4、5は図示例に限定されず、糸底部3の上端より下方位置に配置されていてもよい。
図6は、胴部2に形成される横引裂線4、5と糸底部3との位置関係を模式的に示している。
即ち、
図6(a)は、糸底部3の上端から中途位置までを胴部2と糸底部3との無接着部31とし、無接着部31を除く下部を接着部32としている。
そして、前記無接着部31の領域4x中の任意の位置を横引裂線の内面側のハーフカット4の配置可能範囲とし、外面側のハーフカット5は、前記内面側のハーフカット4より引裂可能な間隔に離間した位置で、前記接着部32を含めた領域5xを限度として配置することができる。
また、胴部2の下端の折返し部分と糸底部3の内面とだけを接着面33とすれば、横引裂線4、5は、糸底下端までの領域xの任意の位置に配置することができる(
図6(b)参照)。
【0022】
上記構成からなっているので、まず一方の縦引裂線6、7に沿って胴部2を縦に開き、連接される横引裂線4、5に沿って引裂方向(
図2の反時計方向)に縦引裂中継線8,9までを切り離す(
図3参照)。
次いで、他方の縦引裂線6’、7’に沿って残りの胴部2を縦に開き、連接される横引裂線4、5に沿って逆方向(
図3の時計方向)に切り離す(
図4参照)。
【0023】
これにより、貼合部21近傍を残して、胴部2を取り去ることができ、糸底部3上から収納物を取り出すことができる。
本実施例では、残った貼合部21近傍を、横引裂4、5に沿って糸底部3から完全に切り離してもよいが、そのまま残しておいて、把手として利用してもよい。
【実施例4】
【0026】
図9に示す実施例4の包装用容器1は、縦引裂線6、7と、横引裂線4、5とを形成した構造からなっている。
上記構成の場合には、縦引裂線6、7と横引裂線4、5とで胴部2を少なくとも縦引裂線6、7から貼合部21の近傍まで切り開くことができるので、糸底部3から収納物を取り出すことができる。
横引裂線4、5は、少なくとも縦引裂線6、7の下端の連接位置から貼合部21近傍まで延びていればよいが、無端となるように環状に形成しておけば残った貼合部21と共に胴部2を切り離すこともできる(図示せず)。
【0027】
この発明は、胴部の素材として、紙とPETフィルムの積層構造を例示したが、PEフィルムその他の合成樹脂フィルムとの積層構造、あるいは合成紙と合成樹脂フィルムとの積層構造、合成樹脂フィルムの積層構造であっても適用することができる。
積層構造は2層に限らず、3層以上の複数層であってもよい。
また、カップ状の包装容器の形状として、截頭円錐形状を例示したが、筒形状であれば、断面が、円形、楕円形、多角形など任意の筒形状のカップに適用することができる。
【0028】
また、前記実施例では、縦引裂線を胴部の貼合部を避けた位置に配置した場合を示したが、この発明では、縦引裂線は胴部の貼合部と重なる位置に配置されていてもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。