特許第5967761号(P5967761)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967761
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 3/26 20060101AFI20160728BHJP
   B65D 85/36 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B65D3/26 A
   B65D85/36 C
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-185939(P2012-185939)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-43256(P2014-43256A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】内田 正守
(72)【発明者】
【氏名】多田 国昭
(72)【発明者】
【氏名】星野 佳奈子
【審査官】 高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−049034(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3007322(JP,U)
【文献】 実開平03−004519(JP,U)
【文献】 西独国特許出願公開第02356138(DE,A)
【文献】 特開2002−019764(JP,A)
【文献】 実開平04−032908(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/00− 3/30
B65D85/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部が紙又は合成樹脂を複数積層してなる素材からなって、胴部の全体又は主要部を引き裂く引裂線を形成したカップ状の包装用容器において、
引裂線が、胴部の下部で容器底面の糸底部に沿って糸底部の全周又は全周から胴部の貼合部を除いた部分に形成された横引裂線と、胴部の上端と前記横引裂線との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線とつながる縦引裂線とからなり、
縦引裂線は、上端から中途位置まで横引裂線の引裂方向と反対方向に傾斜し、中途位置で湾曲して横引裂線の引裂方向に傾斜してなり、
前記引裂線は、胴部の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなることを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
縦引裂線の上端が、胴部の上部に形成されて凹状の切欠部の縁部の中途位置に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の包装用容器。
【請求項3】
縦引裂線が、胴部の貼合部の近傍に配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の包装用容器。
【請求項4】
横引裂線の内面側のハーフカットが糸底部の上端より僅かに上方位置に配置されており、外面側のハーフカットが糸底部の高さの範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1からのいずれに記載の包装用容器。
【請求項5】
胴部の上端に形成される凹状の切欠部が胴部の貼合部を除いて形成されており、上記切欠部を除く胴部の上端の全部又は一部に円形又は円弧状に曲成されて蓋部を係止しうるカール部が形成されていることを特徴とする請求項からのいずれに記載の包装用容器。
【請求項6】
切欠部が凹部からなっており、胴部の上端に等間隔に複数形成されていることを特徴とする請求項からのいずれに記載の包装用容器。
【請求項7】
胴部が紙又は合成樹脂を複数積層してなる素材からなって、胴部の全体又は主要部を引き裂く引裂線を形成したカップ状の包装用容器において、
引裂線が、胴部の下部で容器底面の糸底部に沿って糸底部の全周又は全周から胴部の貼合部を除いた部分に形成された横引裂線と、胴部の上端と前記横引裂線との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線とつながる縦引裂線とからなり、
前記引裂線は、胴部の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなっており、
前記縦引裂線が、胴部の貼合部を挟んで左右一対に設けられており、該一対の縦引裂線の間に、胴部の上端と前記横引裂線との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線とつながる一対の縦引裂中継線を1又は複数組設けてなることを特徴とする包装用容器。
【請求項8】
縦引裂中継線が、横引裂線と連なる下端から引裂方向に向かって湾曲しながら胴部上端にいたる曲線からなっていることを特徴とする請求項に記載の包装用容器。
【請求項9】
縦引裂中継線の上端が、胴部の上部に形成されて凹状の切欠部の縁部の中途位置に形成されていることを特徴とする請求項7または8に記載の包装用容器。
【請求項10】
胴部の上端に形成される凹状の切欠部が胴部の貼合部を除いて形成されており、上記切欠部を除く胴部の上端の全部又は一部に円形又は円弧状に曲成されて蓋部を係止しうるカール部が形成されていることを特徴とする請求項からのいずれに記載の包装用容器。
【請求項11】
切欠部が凹部からなっており、胴部の上端に等間隔に複数形成されていることを特徴とする請求項から10のいずれに記載の包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収納物の取出しに際して容器の胴部分を開封して容易に取り出せるようにしたカップ状の包装用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カップ状の包装用容器から収納物を取り出す際に、例えばケーキ生地などをそのまま焼成して生地が包装用容器に一体に付着している場合や、焼成に限らず包装用容器内に収納物がほぼ隙間無く収納されているような場合には、収納物をきれいに取り出すことができないので、包装用容器の胴部を切り裂いて開封し容器底面の糸底部から切り離すことが望まれる。
包装用容器の胴部を開封する構造としては、例えば実公昭60−20575号公報の半切線付きカップでは、 紙カップの胴貼部の外側の側辺の上端近傍を横外方に若干突出させて摘持片を形成し、該摘持片の下端から斜め下方に螺旋状に進行し最後に胴下方部を略水平に一周する紙層に達する深さの半切線を胴部ブランクの表面側より穿設すると共に前記半切線と略平行に進み、且つ摘持片の下端及び前記側辺上の点において前記半切線と合している紙層に達する深さの半切線を胴部ブランクの内面側より穿設した構造が開示されている。
上記構成では、半切線を設けたところ以外の場所は合成樹脂層により破れ難く、表面と裏面とで半切線をずらしているので内容物が滲み出てくることを防止することができるが、摘持片を形成する必要があり、また半切線は胴部の貼合部を複数回横断させる必要があり、途中で千切れることなく半切線に沿って底部まで一連に切り裂かないと収納物を糸底部からきれいに取り出すことができない。
また、展開線としてミシン目を用いた場合には、包装用容器の素材が紙や合成紙と合成樹脂の積層、または異なる合成樹脂などの複数の積層構造からなる場合には、引裂抵抗が大きくて綺麗に引き裂けない場合がある。
例えば、紙にPETフィルムを被覆した場合には、PETフィルム側の引裂抵抗が強いので、単なるミシン目や一面だけのハーフカットだけでは引き裂いて胴部を開封することが困難となる。
また、ミシン目のピッチを短くしたり、切込みを深くすると、折れ曲がりやすくなり、容器の保形性を維持することができないという不具合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭60−20575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする課題は、包装用容器の胴部の素材が紙又は合成樹脂などの複数の積層構造からなって引き裂きにくい場合であっても、胴部の外面側と内面側に切り裂き可能な間隔を隔てて平行に延びる一対のハーフカットからなる開封線を形成して、胴部の全部又は主要部を容器底面の糸底部から切り離せるようにしたカップ状の包装用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
胴部が紙又は合成樹脂を複数積層してなる素材からなって、胴部の全体又は主要部を引き裂く引裂線を形成したカップ状の包装用容器において、
引裂線が、胴部の下部で容器底面の糸底部に沿って糸底部の全周又は全周から胴部の貼合部を除いた部分に形成された横引裂線と、胴部の上端と前記横引裂線との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線とつながる縦引裂線とからなり、
縦引裂線は、上端から中途位置まで横引裂線の引裂方向と反対方向に傾斜し、中途位置で湾曲して横引裂線の引裂方向に傾斜してなり、
前記引裂線は、胴部の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなることを特徴とする。
請求項2の発明では、
縦引裂線の上端が、胴部の上部に形成されて凹状の切欠部の縁部の中途位置に形成されていることを特徴とする。
請求項の発明では、
縦引裂線が、胴部の貼合部の近傍に配置されてなることを特徴とする。
請求項の発明では、
横引裂線の内面側のハーフカットが糸底部の上端より僅かに上方位置に配置されており、外面側のハーフカットが糸底部の高さの範囲内に配置されていることを特徴とする。
請求項の発明では、
胴部の上端に形成される凹状の切欠部が胴部の貼合部を除いて形成されており、上記切欠部を除く胴部の上端の全部又は一部に円形又は円弧状に曲成されて蓋部を係止しうるカール部が形成されていることを特徴とする。
請求項の発明では、
切欠部が凹部からなっており、胴部の上端に等間隔に複数形成されていることを特徴とする。
請求項の発明では、
胴部が紙又は合成樹脂を複数積層してなる素材からなって、胴部の全体又は主要部を引き裂く引裂線を形成したカップ状の包装用容器において、
引裂線が、胴部の下部で容器底面の糸底部に沿って糸底部の全周又は全周から胴部の貼合部を除いた部分に形成された横引裂線と、胴部の上端と前記横引裂線との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線とつながる縦引裂線とからなり、
前記引裂線は、胴部の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなっており、
前記縦引裂線が、胴部の貼合部を挟んで左右一対に設けられており、該一対の縦引裂線の間に、胴部の上端と前記横引裂線との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線とつながる一対の縦引裂中継線を1又は複数組設けてなることを特徴とする。
請求項の発明では、
縦引裂中継線が、横引裂線と連なる下端から引裂方向に向かって湾曲しながら胴部上端にいたる曲線からなっていることを特徴とする。
請求項の発明では、
縦引裂中継線の上端が、胴部の上部に形成されて凹状の切欠部の縁部の中途位置に形成されていることを特徴とする。
請求項10の発明では、
胴部の上端に形成される凹状の切欠部が胴部の貼合部を除いて形成されており、上記切欠部を除く胴部の上端の全部又は一部に円形又は円弧状に曲成されて蓋部を係止しうるカール部が形成されていることを特徴とする。
請求項11の発明では、
切欠部が凹部からなっており、胴部の上端に等間隔に複数形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明の包装用容器は、以下の効果を奏することができる。
(1)引裂線が胴部の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなっているので、胴部の内表面側又は外表面側に引裂抵抗の高い樹脂フィルムが使用されている場合でミシン目や1本のハーフカットだけでは引き裂くことができない素材であっても、それぞれがハーフカットされているので胴部の全部又は主要部を容器底部の糸底部から分離して容器内の収納物を損なわずに取り出すことができる。
(2)縦引裂線は、上端から中途位置まで横引裂線の引裂方向と反対方向に傾斜し、中途位置で湾曲して横引裂線の引裂方向に傾斜して横引裂線と連なることで、カール成形時に上からかかる圧力に耐え座屈しにくくなり、また引裂時に途中で途切れることなく横引裂線につなげることができる。
(3)前記縦引裂線の上端を、胴部の上部に形成された凹状の切欠部の縁部の中途位置に形成することで、きっかけ片を形成せずに引裂をはじめることができる。
(4)縦引裂線は、胴部の貼合部の近傍に配置することで、貼合部の強度により容器の保形性を維持しながら、引裂を容易におこなうことができる。
(5)横引裂線は、内面側のハーフカットを糸底部の上端より僅かに上方位置に配置し、外面側のハーフカットを糸底部の上端より下方位置に配置することで、胴部を引き裂いて収納物を取出す際に切り裂いた残りの部分が邪魔にならない。
(6)縦引裂線を、胴部の貼合部を挟んで左右一対に設け、その縦引裂線の間に胴部の上端と横引裂線とにつながる縦引裂中継線を1又は複数設けることで、胴部を複数回に分けて確実に引裂くことができる。
(7)縦引裂中継線を、下端から引裂方向に向かって湾曲しながら胴部上端にいたる曲線に形成することで、胴部を中途位置できれいに引き裂くことができる、
(8)縦引裂中継線の上端も、胴部の上部に形成された凹状の切欠部の縁部の中途位置に形成することで、確実に引き裂くことができる。
(9)切欠部を除く胴部の上端に鍔部を形成することで、容器の上部開口を覆う蓋部を掛止めることができ、鍔部にハーフカットを形成することがないので、鍔部にひび割れなどが生じることもない。
(10)切欠部を凹部とし、等間隔に複数形成することで、外観上の美感だけでなく保形性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の包装用容器の胴部のブランクを示す展開図である。
図2】実施例1の包装用容器の斜視図である。
図3】胴部の半分を引き裂いた状態の斜視図である。
図4】胴部の主要部を引き裂いた状態の斜視図である。
図5】胴部に形成される引裂線を模式的に示す部分断面図である。
図6】(a)(b)は胴部と容器底面の糸底部における横引裂線と接着個所を模式的に示す部分断面図である。
図7】横引裂線が両端の縦引裂線間に形成された異なる実施例の胴部のブランクを示す展開図である。
図8】貼合部の両側に一対の縦引裂線を設けた別の実施例の包装用容器の展開図である。
図9】縦引裂線と横引裂線とからなる更に別の実施例の包装用容器の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明は、胴部の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなる引裂線を設けて、胴部の全部又は主要部を容器底部の糸底部から分離して引き離すことを実現した。
【実施例1】
【0009】
図2に示す実施例1の包装用容器1は、カップ状からなっており、胴部2が紙又は合成樹脂を複数積層してなる素材、本実施例では外面側を紙とし、内面側にPETフィルムを貼り合わせた素材からなっており、胴部2の主要部を引き裂いて容器底部の糸底部3と分離する引裂線を設けている。
上記胴部2の素材の一例としては、紙の厚みが0.20〜0.50mm、PETフィルムの厚みが15〜60μmからなっており、紙は単層抄きより多層抄きが好ましいが、この発明では特に限定されない。
【0010】
引裂線は、胴部2の外面側と内面側にそれぞれ引裂可能な間隔を隔てて形成された一対のハーフカットからなっている。
本実施例で、上記引裂線は、胴部2の下部で胴部2の内壁面に接着される容器底面の糸底部3の外周面に沿ってその全周に形成された横引裂線4、5と、胴部2の上端と前記横引裂線4,5との間に掛け渡されると共に下端で同一面側の横引裂線4、5と一連につながる縦引裂線6、7とを有している。
上記引裂線は、図1の胴部2のブランクに示すように、実線が胴部の外面側に形成されるハーフカット、点線が胴部の内面側に形成されるハーフカットである。
【0011】
横引裂線4、5は、胴部2の外面側に形成されるハーフカット5が下方となり、内面側に形成されるハーフカット4が上方に配置されている。
縦引裂線6、7は、胴部2の外面側に形成されるハーフカット6が引裂方向の基端側となり、前記横引裂線の外面側のハーフカット5と連接され、内面側に形成されるハーフカット7が引裂方向の先端側となり前記横引裂線の内面側のハーフカット4と連接されている。
【0012】
この発明では、後述のように、本実施例では、横引裂線4、5と、縦引裂線6、7だけで構成されていてもよいが、本実施例では縦引裂線(説明の便宜上、一方の符号を6、7とし、他方の符号を6’、7’とする)を胴部2の貼合部21を挟んで、その近傍に一対に形成しており、更に、該縦引裂線6、7と6’、7’の間に縦引裂中継線8、9を形成している。
また、ハーフカットは図5に例示するように、内面側が引裂抵抗の高いPETフィルム側を含めて紙の一部まで含めてカットされた例を図示したが、引裂抵抗が低い樹脂フィルムの場合は、その一部がカットされるものでもよく、カットの深さは素材に応じて引裂できるように適宜設計することができる。
【0013】
縦引裂中継線8、9は、胴部2の外面側に形成されるハーフカット8が引裂方向の先端側となり、前記横引裂線の外面側のハーフカット5と連設されており、胴部2の内面側に形成されるハーフカット9が引裂方向の基端側となり、前記横引裂線の内面側のハーフカット4と連設されている。
この発明では、各引裂線の内面側のハーフカットと外面側のハーフカットの配置は、胴部2の素材に応じて配置でき、図示例では内面側の引裂抵抗が高い場合であるが、外面側の引裂抵抗が高い場合には逆に配置(図1の実線が内面側、点線が外面側)に形成してもよい。
【0014】
上記横引裂線4、5と、縦引裂線6、7と、引裂中継線8、9とは、それぞれ外面側と内面側に形成される一対のハーフカットの間隔をハーフカット間で引裂可能な間隔に設定する必要があり、図示例では、横引裂線4、5と、縦引裂線6、7は、それぞれ3mm間隔とし、引裂中継線8、9は4mm間隔としているが、前記間隔は、素材に応じて適宜増減することができる。
【0015】
本実施例で、縦引裂線6、7と6’,7’は、胴部2の貼合部21の近傍に配置されており、上端から中途位置までが引裂方向と反対方向に傾斜し、中途位置で湾曲して横引裂線4、5と連なる下端まで引裂方向に傾斜してなる略く字状に形成されている。
【0016】
該縦引裂線6,7と6’、7’との間に形成される縦引裂中継線8,9は、横引裂線4、5と連なる下端から引裂方向に向かって湾曲しながら胴部上端にいたる略ノ字状の曲線からなっている。
これにより縦引裂線6,7から引き裂かれた略半分の胴片部を引裂方向に沿ってスムーズに切り離すことができる。
ここで、例えば、外面側に形成されるハーフカット8の上端は、胴部の上端、図示例では後述の切欠部11の縁部と接することなく、僅かに、例えば2mm程度離しておくことで、内面側のハーフカット9が切欠部の縁部に接していても、容器の上端形状の保形性を維持することができる。
【0017】
また、本実施例では、胴部2の上端には、鍔部10と、切欠部11とが形成されている。
鍔部10は容器1に蓋部を掛止めるために形成されるが、鍔部10にハーフカットを形成すると鍔部10が割れて保形性が維持できない虞れがあるため、本実施例では胴部2の上端に切欠部11を形成している。
ここで鍔部10は、円形状にカールされたものでも、円弧状にカールされたものでも、外方へ突出するフランジ片であってもよく、要するに蓋部に掛止可能な構造であればよい。
【0018】
切欠部11は、図示例の場合、円弧状の切欠からなっており、両端の角部も湾曲形成しており、該切欠部11の縁部にハーフカットの上端が配置されている。
図1に示すように、縦引裂線6、7の上端は前記切欠部11の中央から引裂方向側にずれた位置に設定することが引裂しやすく好適である。
【0019】
また、縦引裂中継線8,9の上端の位置は切欠部11の中途位置でよいが、前述のように、外面側に形成されるハーフカット8の上端は切欠部11の縁部と僅かに離れて終わっており、引き裂く際の力で切り裂くようになっている。
これにより、成形時に切欠部11に負荷がかかっても前記縦引裂中継線8,9によって切欠部11が破損したり変形したりすることがなく、容器の保形性を維持することができる。
【0020】
本実施例で、横引裂線の内面側のハーフカット4は、糸底部3の上端より僅かに上方位置、例えば1mm以内に配置されており、外面側のハーフカット5は糸底部3の上端より下方位置に配置されている。
これにより、横引裂線4、5に沿って引き裂かれた残りの部分は、糸底部3の底面より僅かに突出する程度であれば、収納物を糸底部3から取り出す際の障害にならない。
【0021】
この発明では、横引裂線4、5は図示例に限定されず、糸底部3の上端より下方位置に配置されていてもよい。
図6は、胴部2に形成される横引裂線4、5と糸底部3との位置関係を模式的に示している。
即ち、図6(a)は、糸底部3の上端から中途位置までを胴部2と糸底部3との無接着部31とし、無接着部31を除く下部を接着部32としている。
そして、前記無接着部31の領域4x中の任意の位置を横引裂線の内面側のハーフカット4の配置可能範囲とし、外面側のハーフカット5は、前記内面側のハーフカット4より引裂可能な間隔に離間した位置で、前記接着部32を含めた領域5xを限度として配置することができる。
また、胴部2の下端の折返し部分と糸底部3の内面とだけを接着面33とすれば、横引裂線4、5は、糸底下端までの領域xの任意の位置に配置することができる(図6(b)参照)。
【0022】
上記構成からなっているので、まず一方の縦引裂線6、7に沿って胴部2を縦に開き、連接される横引裂線4、5に沿って引裂方向(図2の反時計方向)に縦引裂中継線8,9までを切り離す(図3参照)。
次いで、他方の縦引裂線6’、7’に沿って残りの胴部2を縦に開き、連接される横引裂線4、5に沿って逆方向(図3の時計方向)に切り離す(図4参照)。
【0023】
これにより、貼合部21近傍を残して、胴部2を取り去ることができ、糸底部3上から収納物を取り出すことができる。
本実施例では、残った貼合部21近傍を、横引裂4、5に沿って糸底部3から完全に切り離してもよいが、そのまま残しておいて、把手として利用してもよい。
【実施例2】
【0024】
図7は、横引裂線4、5の異なる実施例を示す胴部のブランクの展開図である。
この横引裂線4、5は前記実施例のように胴部の全長に亘って形成されるものではなく、縦引裂線6、7、6’、7’と接続される個所に亘って延びており、胴部2の貼合部21を横断していない。
その他の構造は前記実施例と同様であるので、その説明を省略する。
この実施例でも、図2の状態の容器1の胴部2を、図3の状態に切り離すことができる。
【実施例3】
【0025】
図8に示す実施例3の包装用容器1は、縦引裂線6、7と6’、7’と横引裂線4、5とを形成し、縦引裂中継線8,9を省略した構造からなっている。
その他の構造は前記実施例と同様である。
この場合、それぞれの縦引裂線から胴部2を切り裂いて、中央側まで切り離す方法、あるいは一方の縦引裂線6,7から他方の縦引裂線6’,7まで一連に切り裂く方法などにより、胴部を切り離すことができる。
また、この実施例では、縦引裂線6、7と6’、7’を用いたが、一方を縦引裂中継線8,9としてもよい。
【実施例4】
【0026】
図9に示す実施例4の包装用容器1は、縦引裂線6、7と、横引裂線4、5とを形成した構造からなっている。
上記構成の場合には、縦引裂線6、7と横引裂線4、5とで胴部2を少なくとも縦引裂線6、7から貼合部21の近傍まで切り開くことができるので、糸底部3から収納物を取り出すことができる。
横引裂線4、5は、少なくとも縦引裂線6、7の下端の連接位置から貼合部21近傍まで延びていればよいが、無端となるように環状に形成しておけば残った貼合部21と共に胴部2を切り離すこともできる(図示せず)。
【0027】
この発明は、胴部の素材として、紙とPETフィルムの積層構造を例示したが、PEフィルムその他の合成樹脂フィルムとの積層構造、あるいは合成紙と合成樹脂フィルムとの積層構造、合成樹脂フィルムの積層構造であっても適用することができる。
積層構造は2層に限らず、3層以上の複数層であってもよい。
また、カップ状の包装容器の形状として、截頭円錐形状を例示したが、筒形状であれば、断面が、円形、楕円形、多角形など任意の筒形状のカップに適用することができる。
【0028】
また、前記実施例では、縦引裂線を胴部の貼合部を避けた位置に配置した場合を示したが、この発明では、縦引裂線は胴部の貼合部と重なる位置に配置されていてもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1 包装用容器
2 胴部
3 糸底部
4、5 横引裂線(4は内面側、5は外面側のハーフカット)
6、7 縦引裂線(6は外面側、7は内面側のハーフカット)
8,9 縦引裂中継線(8は外面側、9は内面側のハーフカット)
10 鍔部
11 切欠部
21 貼合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9