特許第5967778号(P5967778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967778導電性ポリマー−金属複合体の析出方法、導電性ポリマー−金属複合体、フレキシブル基板上への導電配線パターン形成方法、及びフレキシブル基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967778
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】導電性ポリマー−金属複合体の析出方法、導電性ポリマー−金属複合体、フレキシブル基板上への導電配線パターン形成方法、及びフレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/12 20060101AFI20160728BHJP
   C08G 73/00 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 1/12 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 1/16 20060101ALI20160728BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C08G61/12
   C08G73/00
   H01B1/00 H
   H01B1/12 E
   H01B1/12 F
   H01B1/12 G
   H01B1/16 Z
   H01B13/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-526899(P2013-526899)
(86)(22)【出願日】2012年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2012069236
(87)【国際公開番号】WO2013018732
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】特願2011-168502(P2011-168502)
(32)【優先日】2011年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-197(P2012-197)
(32)【優先日】2012年1月4日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-36899(P2012-36899)
(32)【優先日】2012年2月23日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】川喜多 仁
(72)【発明者】
【氏名】知京 豊裕
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−052043(JP,A)
【文献】 特開2004−359724(JP,A)
【文献】 特開2010−095688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00−61/12
C08G 73/00−73/26
H01B 1/00
H01B 1/12
H01B 1/16
H01B 13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性有機ポリマーの原料となるモノマーとアニオン、金属イオンとを含む溶液に、前記金属イオンを還元可能なエネルギーレベルに電子を励起するに必要なエネルギーを有する光を照射する導電性ポリマー−金属複合体析出方法。
【請求項2】
前記エネルギーを与えるために、光とともに熱又は音を使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モノマーは共役構造を有する直鎖系、芳香族系、複素環式化合物系またはヘテロ原子化合物系の有機ポリマーを与えるモノマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モノマーはピロール、3,4−エチレンジオキシチオフェン及びアニリンからなる群から選ばれる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶液の溶媒はアセトニトリル、エタノール、水からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記金属イオンは、金、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、銀、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、カドミウム、テルル、スズ、鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属のイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記モノマーとしてピロールを使用するとともに、その前記溶液中の濃度を0.1mol/L以上とし、
前記金属イオンとしてAgを使用するとともに、その前記溶液中の濃度を前記ピロールの濃度の5倍以上20倍以下とする、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モノマーとしてピロールを使用するとともに、その前記溶液中の濃度を0.05mol/L以上とし、
前記金属イオンとしてCu2+を使用するとともに、その前記溶液中の濃度を前記ピロールの濃度の等倍以上10倍以下とする、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の方法によって、フレキシブル基板上へ導電性ポリマー−金属複合体を析出させることを特徴とする、フレキシブル基板上への導電配線パターン形成方法。
【請求項10】
有機導電性ポリマーと金属ナノ粒子を含み、アスペクト比が2以上である体を有し、前記金属ナノ粒子の少なくとも一部が前記線体である有機導電性ポリマーの表面に露出している、導電性ポリマー−金属複合体。
【請求項11】
前記線体の直径は1μm以下である、請求項10に記載の導電性ポリマー−金属複合体。
【請求項12】
前記線体の直径は0.1μm以上である、請求項11に記載の導電性ポリマー−金属複合体。
【請求項13】
前記線体のアスペクト比は10以下である、請求項10に記載の導電性ポリマー−金属複合体。
【請求項14】
前記金属ナノ粒子の直径は10〜200nmである、請求項10〜13の何れか1項に記載の導電性ポリマー−金属複合体。
【請求項15】
請求項10〜14の何れか1項に記載の導電性ポリマー−金属複合体を用いて導電配線パターンを形成したフレキシブル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ポリマーと金属との同時析出による導電性ポリマー−金属複合体析出方法に関し、特に高導電率の上記複合体を短時間で得る方法に関する。本発明はまたこの析出方法によって作製された導電性ポリマー−金属複合体に関する。本発明は更にこの導電性ポリマー−金属複合体を用いた、フレキシブル基板上への導電配線パターン形成方法、及びフレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI製造プロセスにおける素子微細化の限界が見え始めた今、一層の高集積化のための手法の一つとして三次元実装技術が注目されている。三次元実装技術においては、LSIチップを縦方向に積層していくことで、単位面積当たりの素子数を増加させる。この三次元実装を実現するためには、積層されたLSIチップ間の電気信号をいかに接続するかという電気的な実装技術が重要である。これまでに提案されまた実現されたLSIチップ間の電気的接続は、金属細線を使って接続を行うワイヤボンディング法であった。
【0003】
ワイヤボンディングは二次元実装において長期間使用され、多くの技術的蓄積があることから、三次元実装技術に応用することは比較的容易である。しかしながら、ワイヤボンディング法でLSIチップ間の信号接続を行うには、先ず信号をLSIチップの周辺部まで引き出し、そこから金属細線を使って行き先のLSIの周辺部まで接続し、更に行き先LSI内部で当該信号を必要とする場所までLSIチップ内の配線を使って引き込む必要がある。従って、ワイヤボンディング法ではLSIチップ周辺にワイヤボンディング用の領域を確保する必要があるため、実装面積が大きくなると共に、LSIチップ間の信号伝送経路が長くなると言う問題がある。更に、LSIチップ間の信号経路数がLSIチップ周囲に設置できるボンディング用端子数によって制限されてしまう。
【0004】
近年、LSIチップ間の電気接続のための他の手段としてシリコン貫通電極(TSV(Through silicon via))法が注目されている(非特許文献1参照)。TSV法では、電気信号をLSIチップ外でワイヤボンディングを経由させることで電気接続を図る代わりに、積層されたLSIチップを貫通する縦方向の配線であるTSVを用いてLSIチップ間の回路を直接接続する。TSVを使用してLSIチップ間の配線を行うことにより、ワイヤボンディング法について上述した問題が解消されることが期待されている。
【0005】
TSV法を実用的なものにするための重要な課題の一つとして、微細で高アスペクト比の孔(ビア)に高導電率の導電材料を短時間で埋め込むことが挙げられる。TSVのための高導電率埋め込み材料として銅を使用することが検討されている(非特許文献2参照)が、銅メッキによりこれを実現しようとすると2時間以上の長時間を要するため、これを大幅に短くすることが求められている。埋め込み材料として、銅以外にもポリシリコン、タングステン、銀などが検討されている(例えば、特許文献1、非特許文献3参照)。これらの埋め込み材料間の比較を表1に示す。
【0006】
【表1】
【0007】
これ以外に埋め込み材料として検討されているものに導電性ポリマーがある。導電性ポリマーは資源が豊富であり、また塗布などの常温・常圧プロセスで利用可能であるため、低コストであるという利点があるが、他方、導電率が低いという問題がある。
【0008】
ところで、触媒担体、免疫診断用マーカー粒子などへの応用を意図して、以下に示す反応機構により、銀と導電性ポリマーの一種であるホリピロール(polypyrrole)とを同時に析出させる方法が報告されている(非特許文献4、5参照)。
【0009】
【化1】
【0010】
この方法によれば、導電性ポリマーに比較して導電率が高い材料を簡単な手順でビアに充填できる可能性がある。
【0011】
しかしながら、この方法によって得られる材料もTSV用充填材料として必要とされる十分に高い導電率を達成することはできず、また銅などの比較的卑な金属を使用することができないため、製造コストが依然として高いという問題がある。
【0012】
また、特許文献2及び3は導電性高分子−金属複合体の別の製造方法を開示しているが、これらの特許文献は何れも光等の照射のアシストによる複合体の析出については何の示唆も与えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−225697
【特許文献2】特許第3743801号
【特許文献3】特開2004−87427
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】吉永孝司他、「3次元LSI実装のためのTSV技術の研究開発動向」、Science & Technology Trends April 2010、pp.23-34
【非特許文献2】「ビルド・アップ工法に適した無電解銅めっき浴」橋本滋雄他、ファインプレーティング、No.55,Page51−58 (1999年9月)
【非特許文献3】「非線形の表面反応を示す径に対するカバレッジのシミュレーション」、金炳勲他、九州大学機能物質科学研究所報告、第12巻第1号(1998)、Page15−19
【非特許文献4】S. Fujii et al., J. Mater. Chem., 178(2007) 3777.
【非特許文献5】Yeon Jae Jung et al., Synth. Met., 161(2011) 1991.
【非特許文献6】「三菱化学の抵抗率計シリーズ ラインアップカタログ」http://www.dins.jp/dins_j/6data/pdf/catalog/Lineup_catalog_J0408-LP.3000US.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解消し、TSV用の充填材料として使用できる高導電率の導電性ポリマー−金属複合体を短時間で析出する方法及びそのような導電性ポリマー−金属複合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の一側面によれば、導電性有機ポリマーの原料となるモノマーと金属イオン、アニオンとを含む溶液に、前記金属イオンを還元可能なエネルギーレベルに電子を励起するに必要なエネルギーを有する光を照射する導電性ポリマー−金属複合体析出方法が与えられる。
前記エネルギーを与えるために、光とともに熱又は音を使用してもよい。
また、前記モノマーは共役構造を有する直鎖系、芳香族系、複素環式化合物系またはヘテロ原子化合物系の有機ポリマーを与えるモノマーであってよい。
また、前記モノマーはピロール、3,4−エチレンジオキシチオフェン及びアニリンからなる群から選ばれてよい。
また、前記溶液の溶媒はアセトニトリル、エタノール、水からなる群から選択されてよい。
また、前記金属イオンは、金、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、銀、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、カドミウム、テルル、スズ、鉛からなる群から選ばれた少なくとも一つの金属のイオンであってよい。
また、前記モノマーとしてピロールを使用するとともに、その前記溶液中の濃度を0.1mol/L以上とし、前記金属イオンとしてAgを使用するとともに、その前記溶液中の濃度を前記ピロールの濃度の5倍以上20倍以下としてよい。
また、前記モノマーとしてピロールを使用するとともに、その前記溶液中の濃度を0.05mol/L以上とし、前記金属イオンとしてCu2+を使用するとともに、その前記溶液中の濃度を前記ピロールの濃度の等倍以上10倍以下としてよい。
本発明の他の側面によれば、前記何れかの方法によって析出した導電性ポリマー−金属複合体が与えられる。
本発明の更に他の側面によれば、有機導電性ポリマーと金属ナノ粒子を含む線体を有し、前記金属ナノ粒子の少なくとも一部が前記線体である有機導電性ポリマーの表面に露出している、導電性ポリマー−金属複合体が与えられる。
ここで、前記線体の直径は1μm以下であってよい。
また、前記線体の直径は0.1μm以上であってよい。
また、前記線体のアスペクト比は2〜10であってよい。
また、前記金属ナノ粒子の直径は10〜200nmであってよい。
【0017】
本発明によれば、導電性ポリマーと金属との複合体を簡単な操作で高速に析出させることができ、しかも銅などの比較的卑な金属でも使用することができるため、製造コスト低減や希少資源の節約の面でも有益である。また、本導電性ポリマー−金属複合体では金属ナノ粒子がポリマーの表面に析出した状態で複合体を形成する傾向が大きいので、導電性の高い複合体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の反応機構を説明する図。
図2】導電性ポリマー−金属複合体が析出することができる条件を説明する図。
図3】導電性ポリマー−金属複合体を析出させた基材の外観を示す写真。
図4】析出した導電性ポリマー−金属複合体の顕微鏡写真。
図5】析出した導電性ポリマー−金属複合体の4種類の倍率によるSEM像。
図6】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたABS樹脂基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図7】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたポリプロピレン基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図8】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたテフロン基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図9】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたポリ塩化ビニル基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図10】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたオレフィン樹脂基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図11】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたポリカーボネート基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図12】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたポリエチレン基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図13】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたアクリル樹脂基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図14】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたシリコーンゴム基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図15】導電性ポリマー−金属複合体を析出させた普通紙の基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図16】導電性ポリマー−金属複合体を析出させた光沢紙の基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図17】導電性ポリマー−金属複合体を析出させた金属チタン基材についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図18】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたガラス基材(表面ブラスト処理)についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図19】導電性ポリマー−金属複合体を析出させたガラス基材(表面未処理)についてテープ剥離試験の結果を示す写真。
図20】埋込法によるテフロン基材上の導電材料の断面を示す顕微鏡写真。
図21】導電性ポリマー−金属複合体付き基材とその複合体の抵抗値の測定方法を示す写真。
図22】導電性ポリマー−金属複合体付き基材の折り曲げ試験の結果を示す写真。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明では、光アシストにより、金属と導電性ポリマーの複合体を高速に析出させる。具体的には、導電性有機ポリマーの原料となるモノマー(ピロール(pyrrole)等)と金属イオンとを含む溶液(アセトニトリル、エタノール、水等)に、基材(シリコン、ゲルマニウム、III-V族半導体、酸化物半導体、ガラス板等)を入れ、金属イオンを還元可能なエネルギーレベルに電子を励起するに必要なエネルギーを有する光を照射する。この光照射により、有機モノマーとドーピングアニオンからの導電性ポリマーの酸化重合と金属カチオンからの金属の還元析出とが同時に進行する化学反応が加速、つまり光アシストされる。実施例ではこのような照射を紫外光(波長400nm以下)で行ったが、必要な励起エネルギーによっては、より長波長の光でもよい。更には、電子に対して同等な励起を行うことができる刺激であれば、熱や音などでも併用してもよいことは明らかであろう。所定時間経過後、機材をその上の析出物とともに溶液より取り出し、乾燥させる。
【0020】
上述したように、本発明は光等の照射によるアシストにより、金属と導電性ポリマーの高速同時析出を実現するものであり、この新規な析出方法を使用することで、導電性ポリマーを高速に生成すること、及び比較的「卑」な金属を利用することができることが、非特許文献4に示される従来技術に比べて有利な点である。
【0021】
本発明の反応機構はまだ完全に解明できているわけではないが、本願発明者の研究によれば、導電性ポリマーとしてポリピロールを例に挙げて図1に示すように、光等による励起により導電性高分子内に正孔と電子が発生し、強い酸化反応と還元反応が進行することに基く、これまで知られていなかった現象であると考えられる。具体的には、正孔および電子により酸化反応と還元反応が促進される。正孔による酸化反応では、ピロールの酸化重合とアニオンのドーピングが起こる。電子による還元反応では、金属の析出が起こる。
上で説明した反応機構によれば、図2に示すようにポリマー中の電子が励起され到達し得る高いエネルギー順位(たとえばLUMO)よりも金属のRedox電位が低いエネルギー位置にある場合、ポリマーと金属との複合材料が析出し得ることがわかる。
上述の反応機構の説明及び以下の実施例から、以下にあげるモノマー及び金属を本発明の原料に使用することができることがわかる。
・モノマー:共役構造を有する直鎖系、芳香族系、複素環式化合物系、ヘテロ原子化合物系の有機ポリマーを得ることができるモノマー。
・金属:金、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、銀、銅、ニッケル、鉄、クロム、亜鉛、カドミウム、テルル、スズ、鉛、およびそれらの合金。
【0022】
本発明は有機材料を主体としていることから、本質的にフレキシブル基板上への導電配線パターンや導電性接着剤などの用途が期待できる。そのため、プラスチックを含む各種基板との密着性は重要な特性の一つである。また、背景技術に記載した三次元配線への利用に関しても、基材との密着性は重要である。そこで、後述する実施例においては、密着性試験(テープ剥離試験)や折り曲げ試験を行い、そのデータを取得した。
【0023】
本発明により、TSV内部に高伝導率の導電性ポリマー−金属複合体を緻密に充填することができるため、LSIチップ間に、信頼性が高く、また高密度実装が可能な電気接続を容易に構成することができる。また、本発明では導電性ポリマーと金属との複合体をビア内部だけではなく多様な面に析出させることができ、またそのようにして析出した複合体は柔軟性を持つようにできるので、本発明を用いることによって、たとえば太陽電池やEL照明用などの多様な分野のフレキシブル電極などを形成することができる。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
導電性ポリマーを得るためのモノマーとしてピロール、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、アニリンを、金属イオンとしてCu2+、Agを、またアニオンとしてCu2+の場合には塩化物イオン(Cl)を、Agに対しては硝酸イオン(NO)を使用して、紫外線照射による導電性ポリマー−金属複合体の析出を行った。モノマーの種類と濃度、金属イオンの種類と濃度を変化させて30通りの実験を行った。もちろん、これらの実施例は単なる例示であって、特許請求の範囲に定義される本発明の技術的範囲を限定するものでないことに注意すべきである。これらの実験の際の実験条件、測定条件は以下の通りである。
【0025】
○具体的な実験条件
温度:室温
溶媒:アセトニトリル、エタノール、水
基材:ガラス
紫外光の強度:50mW/cm
波長:436nm・405nm・365nm(輝線)
析出時間:0.5〜240min
○抵抗値の測定方法
三菱化学製Loresta AP MCP−T400を用いた4探針法
(測定原理は良く知られているので省略するが、必要であれば非特許文献6を参照されたい)
【0026】
容器の底に上記の基材を置き、その上に試料(導電性ポリマー−金属複合体)を沈殿(析出)させる方法で、表2の実験番号1〜30の導電性ポリマー−金属複合体を作製した。
このようにして行った実験の結果を表2に示す。
【0027】
【表2】
【0028】
ここで金属イオン(Agイオン、Cu2+イオン)とアニオンは実際にはCuCl、AgNOの形で与えた。また、表1の抵抗欄で「OL」と表記されているのは、抵抗値が測定可能範囲よりも大きいため測定不能であったことを示す。
【0029】
上述のようにして導電性ポリマー−金属複合体を析出させた基材の例の外観写真を図3に示す。この写真の例は下の表2中の実験No.3に対応する。また、このようにして析出した導電性ポリマー−金属複合体の顕微鏡写真を図4に示す。図4に示されるように、黒色に見える導電性有機ポリマーの間に明るい(元の写真ではオレンジ色)斑点状に見える金属の微粒子が分散している。図3及び図4を観察するに、導電性ポリマー−金属複合体は、大小の穴や鬆などが見られない状態で析出している。
【0030】
(実施例2)
本発明と非特許文献4の比較実験を行った。実験条件、測定条件は以下の通りであった。
ピロール濃度:0.1mol/L
金属イオン濃度:0.1mol/L
アニオン:NO、アニオン濃度:0.1mol/L
溶媒:アセトニトリル
基材:ガラス
反応時間:60min
【0031】
その結果、モノマーとしてピロールを、また金属イオンとしてAgを使用した場合、非特許文献4の方法では約1時間析出を行うことによって得られた析出物の抵抗値は10〜10Ωとかなり高い値を示した。また、Agの代わりにCu2+を使用した場合には、導電性高分子−金属複合体の析出は見られなかった。
【0032】
これに対して、本発明に基いてピロールとAgの組合せを処理した場合には、紫外線を照射しながら20分未満の析出を行うことで0.3〜0.6×10−1Ωの抵抗値を示す導電性高分子−金属複合体が得られた。また、Agの代わりにCu2+を使用した場合は10分未満の紫外線照射・析出時間で0.2〜0.3×10Ωの抵抗値となった。
なお、比較対照実験の結果、導電性ポリピロール単体(PTSアニオンドープ)の抵抗は0.2×10Ωであった。
【0033】
表2に示した実験結果などに基き、モノマーとしてピロールを、また金属イオンとしてAgまたはCu2+を使用した場合の好適なモノマー濃度及び金属イオン濃度の範囲を表3に示す。表3には、比較対照のため、従来の導電性ポリマー、無電解めっきで形成したCu、及びCVDによって形成したWの抵抗率を示す。
【0034】
また、本発明は導電性高分子−金属複合体の成長速度が、従来技術の他の導電体よりも大きいことも特徴とする。それを示すために、表3には更に、成長速度として膜成長速度(つまり、膜厚方向への成長速度)も示す。
【0035】
【表3】
【0036】
注1: 実測データ(抵抗率については実施例と同じ方法で測定した抵抗を抵抗率に換算した)
注2:非特許文献2からのデータ
注3:特許文献1及び非特許文献3からのデータ
【0037】
また、導電性ポリマー−金属複合体の抵抗率欄はピロールの濃度及び金属イオン濃度に従って変化する。表3の抵抗値欄は対応するピロール濃度範囲及び金属イオン濃度範囲内の実施例のうちで最良のものを記載した。なお、本発明で使用できるアニオンとしては、上の実施例で使用したNO、Cl以外に、I、BFなどがある。更には、プロトン酸イオン(NO以外にも、SO2−やClO等)、ハロゲン化物イオン(上記ClやIの他にも、FやBr、更にそれらの混合物)、ルイス酸イオン(上記BFの他にも、PF、AsF等)、遷移金属ハロゲン化物(FeClやMoClがおそらくFeClやMoClの形になったアニオン)有機化合物(PTS以外にも、PSSなどの有機化合物の置換基をSOのようなアニオン性のものに変えた形のものやTCNQやTCNE、DDQ等)等、多様なアニオンを使用することが可能である。
【0038】
表3から判るように、従来の方法で形成したCuあるいはWからなる金属導電体は、抵抗率は非常に低い。しかし、その成長が非常に遅いために、実用的なTSV形成等には全く不十分である。
【0039】
導電性ポリピロール単体の場合は、金属としてAgを使用した導電性ポリマー−金属複合体に比べるとかなり高い抵抗率を示す。Cuを使用した複合体に対して抵抗率は1/5になっているが、成長速度も1/5と非常に成長が遅いため、TSV形成に採用するのは現実的ではない。
【0040】
これに対して、本発明で得られた導電性ポリマー−金属複合体は、実用に耐える抵抗率を持つ一方で、成長速度が従来のこの種の導電材料に比べてはるかに大きいため、実用的な速度でTSV形成その他の導電体形成を行うことができる。
【0041】
なお、表3で導電性ポリピロール単体の抵抗率(0.36Ωm)が金属として銅を使用した場合の本発明の導電性ポリマー−金属複合体(ポリピロール−銅複合体)の抵抗率(1.8Ωcm)よりも小さいことについては以下のように説明される。
【0042】
ポリピロールの抵抗率はドープされるアニオンの種類と濃度によって変わる。PTSドープが最も低い抵抗率を示すことが報告されているため、今回の比較例として採用した。
【0043】
一方、本発明の導電性ポリマー−金属複合体の導電率(抵抗率)は、ポリピロール自体の導電率と金属の含有量とによって決定されると考えられる。本実施例のポリピロール−銅複合体では、ポリピロールには塩化物イオンがドープされたと推測される。塩化物イオンではPTSアニオンほどの導電性は得られず、また本実施例ではドープ量が小さかったと考えられる。さらに、金属に銅を用いた上記実施例では銅の含有量(析出量)が少なかったことも、複合体としての導電率がポリピロール(PTSドープ)よりも小さくなった原因の一つであると考えられる。いずれにせよ、以上の実施例によれば、本発明では原料や析出条件等を十分に最適化する前に既に上に示す良好な導電性及び成長速度が達成されていることがわかる。
【0044】
更に、本発明の導電性ポリマー−金属複合体のナノレベルの構造を明らかにするため、析出した導電性ポリマー−金属複合体表面のSEM像を調べた。図5は、もちろんこれに限定する意図はないが、一例として表2中の実験番号3の条件、つまりモノマーとして濃度0.2mol/Lのポリピロールを、金属イオンとしては硝酸銀の形態で1mol/LのAgをアセトニトリルに溶解した溶液により析出した導電性ポリマー−金属複合体の表面の4種類の倍率のSEM像を示す。なお、ここで析出のための光照射時間は120分とした。図5において、低倍率のSEM像(図5(a))では、直径が5〜20μmの粒子が析出物の表面上に観察される。もう一段高倍率のSEM像(図5(b))ではいくつかの顆粒状の粒子が観察されるが、これらの粒子は、サブミクロンサイズである更に小さな粒子から構成されている。顆粒状の粒子の表面の大部分はこれら更に小さな粒子で覆われている。更に高倍率のSEM像(図5(c))では、上述の更に小さな粒子は輝度の高い顆粒状の凝集体の形状として見えていて、また、これらは暗く見える太さが0.1〜1μmで互いに連結している円筒状物体の上にある。図5中の最大倍率のSEM像(図5(d))では、10〜200nmサイズである、上述した更に小さな高輝度の粒子が、暗い円筒状物体の上に見える。高輝度の粒子および暗い円筒状物体は夫々金属銀およびポリマーであると考えられる。
【0045】
これらの顕微鏡を用いた観察により、本発明の導電性ポリマー−金属複合体の成長機構が示唆される。ポリマーは一次元方向に成長する傾向があり、他方、金属(ここでの具体的な実験では銀)はポリマー表面に析出して三次元方向に成長する。すなわち、金属のナノ粒子はポリマー内部に埋没してポリマーに被覆されるのではなく、これらの一部はポリマー内部に閉じ込められることもありえるが、傾向としてはポリマー塊の表面を覆うような形で表面に偏在する(図5(c)、(d)などを参照)。その結果、本発明の導電性ポリマー−金属複合体においては、複合体を構成する諸要素の内の導電率が高い方の要素の少なくとも一部が外部に対して露出した(つまり、ポリマーに被覆されていない)状態で複合体表面に集まるため、複合体全体の導電率が高くなる。更には、ポリマーが一次元方向に成長する傾向があるため、棒状、紐状などの高アスペクト比の構造物(以下、線体とする)が表面に現れ、従って同じ体積でも表面積が大きくなる。本実施例においては、この様な線体のアスペクト比は2〜10程度である。このような構造により、電流の流れやすい高導電率の経路が増加して、複合体の導電率は更に大きくなる。
【0046】
(実施例3)
導電性ポリマー−金属複合体を析出させる際に与えるエネルギーとして光と熱の両者を使用した場合の反応系の挙動の例について以下に示す。
【0047】
基材にはシリカガラス(8×8×0.9mm)を用い、この基材を金属カチオンとドーピングアニオンのソースとなる硝酸銀(1.0mol−dm−3)、有機モノマーとしてのピロール(0.5mol−dm−3)を含むアセトニトリル溶液に浸漬した。反応系に対する光照射は超高圧水銀ランプ(輝線波長:436nm、405nm、365nm)を使用し、設定強度を30mW・cm−2または60mW・cm−2とした。また反応系の加熱にはホットプレートを使用し、設定温度は50℃または70℃とした。なお、加熱しない場合の反応系の温度は30℃であった。
【0048】
光照射を行わず、加熱温度を変えた場合、30℃及び50℃においては、時間経過によらず溶液は透明なままであった。光照射せずに70℃に加熱した場合には黒色の析出物が得られ、時間経過とともにその生成量が増加した。これは、黒色であるポリピロールに覆われた銀粒子の集合体が生成するとした報告(非特許文献5)と一致している。
【0049】
他方、非加熱状態(30℃)で光照射高度を変化させた場合、光照射を行わなかった場合には時間の経過によらず溶液は透明のままであった。光照射強度が30mW・cm−2においては、事件経過とともに溶液が黄色透明になり、反応時間30分以降は変化が見られなかった。照射強度60mW・cm−2場合は、黄色が濃くなるまでの時間が短く、10分経過後は黒色と銀色が混合した析出物が観測され、その生成量は60分経過時点まで増加し、その後は変化がなかった。
【0050】
光照射強度と加熱温度をともに変化させた場合には、黒色と銀色が混合した析出物が観測され、光照射強度及び/または温度を上げることにより、その生成量の増加速度が大きくなる傾向が観測された。光照射下において得られる析出物は導電性ポリマーの表面を金属銀の微粒子が覆う構造を有していることから、銀色の析出物はそのような微粒子の集合体であると考えられる。
【0051】
上述した反応系の挙動から、導電性ポリピロールと金属銀と金属の複合体の形成反応において、光を照射することにより、銀がポリピロール表面を被覆した構造が現れやすくなることが明らかとなった。また、光照射下で加熱することにより、主として析出反応速度を向上させることが出来ることも明らかになった。
【0052】
上記の実施例では、導電性ポリマー−金属複合体を析出させる際に与えるエネルギーとして光と熱の両者を使用したが、光と音の両者を使用することもできる。音一般を併用することができるが、周波数が20kHz以上の超音波を併用することが好ましい。また、超音波としては例えば超音波洗浄装置などで使用される20kHz〜100kHz程度の範囲のものを使用することができる。このように超音波などの音の照射により、得られる粒子を構成するポリマーの長さやアスペクト比、金属粒子の粒子径を制御できる。これは、エマルジョンの分散や粉末の液体への溶解の際に超音波を用いることでよく見られる現象であるところの、粒子のサイズを小さくすることができるという作用を利用するものである。
【0053】
(実施例4)
本発明の導電性ポリマー−金属複合体と基材との密着性を調べるために、以下の条件で、テープ剥離試験を行った。
膜厚の薄い試料を作るために、あらかじめ溶液中に分散した状態の複合体(おそらく従来よりも粒子サイズが小さい)を作製し、その溶液をテープ剥離試験対象の各種の基材上に滴下・乾燥させた。
より詳細な実験条件は以下の通りであった。
○用意した溶液
ピロール濃度:0.2mol/L
金属(Ag)イオン濃度:1.0mol/L
アニオン:NO、アニオン濃度:1.0mol/L
溶媒:アセトニトリル(ピロールをアセトニトリル10mlに溶解)
○重合処理
上記溶液を以下の構造のセル(小さく薄い容器)に収容し、輝線波長436nm、405nm又は365nm、強度60mW/cmの光で10分間、室温で重合を行った。
セル構造:厚さ1mmのSiシートを切り抜き、周りを厚さ1mmの光学ガ ラスで挟み込んだもの。
○試験対象基材への複合体の付着処理
重合処理後の複合体が分散した溶液を、マイクロピペットを用いて試験対象基材上に滴下した。滴下量は50μLに固定した。溶液滴下後の基材をドラフト中で自然乾燥させた。自然乾燥時の証明条件は、全暗黒ではなく、通常の室内作業時の照明条件(蛍光灯)下で行った。乾燥中の照明光の照射量は積算光量計で1mW以下であった。
○テープ剥離試験
テープ剥離試験は、めっきの密着性試験方法(JIS-H8504)の中の引きはがし試験方法の1つである。この試験は、めっき面に粘着性のあるテープをはり付け、これを急速にかつ強く引きはがすことによって、めっきの密着性を調べるものである。テープ剥離試験は一般には貴金属のめっき等、比較的薄いめっきに適しており、厚いめっきには適さない。しかし、密着性が良好な場合には、非破壊試験となることから完成品の確認検査として用いられるので、本発明の導電性ポリマー−金属複合体と基材との密着性を調べるために、このテープ剥離試験を用いた。
【0054】
上記のようにして行った試験の結果を表4及び図6図19に示す。
【0055】
【表4】
【0056】
表4及び図6図10図14図18に示されるように、基材として、ABS樹脂、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)、ポリ塩化ビニル、オレフィン樹脂、シリコーンゴム、ガラス(表面ブラスト処理)を用いた場合には、本発明の導電性ポリマー−金属複合体と基材との密着性は良好(○)であった。
一部の基材については密着性が不十分(×)、あるいはかなり低い(△)という実験結果が出た(図11図13図15図17図19)が、これは本発明の複合体が必ずしも当該基材一般に適合しないことを意味するものではない。基材として表面未処理のガラス(つまり非常に平滑なガラス:図19)と表面ブラスト処理(表面にブラスト剤を噴射して粗面化)したガラス(図18)では密着性が大きく異なるというテープ剥離試験結果からわかるように、基材表面の物理的状態(表面粗さなど)が密着性に大きな影響を与える。従って、実施例のテープ剥離試験の結果が十分でなかった基材についても、同種の別の特定の基材を使用した場合には、基材の製造に実際に使用する原料や製造方法、あるいはその後の処理方法の違いから、良好な密着性が得られる可能性があると考えられる。
何れにせよ、重合処理が終わった後の複合体が分散している溶液を単に滴下して乾燥させるという単純でかつ広範な状況に簡単に適用可能な付着方法を使用するだけで、通常密着性が非常に低いテフロンでさえ高い密着性を得ることができる本発明の複合体の実用性は非常に高いと考えられる。
【0057】
密着性試験(テープ剥離試験)の結果において、特にテフロンやポリプロピレンを基材として用いた際の高い密着性は注目すべきであると考える。これは、テフロンやポリプロピレンの表面エネルギーが小さく、一般的に異種材料との密着性が低いとされているからである。そこで、テフロンの密着性を示すため、断面像について検討した。
密着性試験で接着剤、各種塗布剤などの通常の材料との密着性が非常に低いことで知られているテフロンに対して、本発明の導電性ポリマー−金属複合体が高い密着性を示したことに着目して、密着状態にある両者の断面を作成し、これを顕微鏡で観察した写真を図20に示す。
なお、写真中で「埋込樹脂」と表示しているものは、サンプルをエポキシなどの「樹脂」に「埋込」み、研磨によって、観察する断面を露出させる際に用いるものである。また、小倍率と大倍率の写真を二組示しているが、この理由は以下の通りである。ここで観察した材料は新規な材料であるため、断面調整法が確立されておらず、視野全体に渡ってきれいな平滑面が出ていない(視野全体にわたって焦点があっていない)。そこで、2箇所の観察視野のそれぞれについて、断面作成や撮影についてできるだけ条件を揃えた上で小倍率と大倍率の写真を示し、これらが同様な断面状態になっているように見えることを示した。
断面写真中で、本発明の導電性ポリマー−金属複合体である導電材料とテフロン製の基材との界面を見ると、大倍率側の断面写真である右側の写真で見ても、基材の非常に細かな凹凸にまで導電材料が入り込んでいて、剥離することなく、ほとんど一体化していると言えるまでに密着していることが判る。また、2箇所の断面の何れでも全く同じ密着状況が観察されたことにより、他の任意の断面においても同様な状態になっていることの蓋然性が高い。
テフロンが通常の溶剤に溶解しないことは周知の事項であり、またこの導電材料を基材上に塗布・形成する際に使用した溶媒も当然テフロンを溶解するものではない。それにもかかわらず、両者の間に全く隙間が認められない程度まで両者が密着していることは注目すべきことである。
【0058】
(実施例5)
本発明の導電性ポリマー−金属複合体付き基材を折り曲げ試験をした結果を図21及び図22に示す。
本発明の導電性ポリマー−金属複合体を柔軟な材料の上に形成しても、本複合体がそのような基材の変形に対して剥離することなく十分追随し、かつ大きく変形した状態でも導電性を維持することを示すため、紙製の基材上に本発明の導電性ポリマー−金属複合体を形成して実際に基材を変形させる実験を行った。なお、ここで、基材上に形成した本発明の導電性ポリマー−金属複合体は「テープ剥離試験」に使用したポリマー及び金属と同じものを使用した。
1枚目の図21の写真はそのようにして作製した複合体付き基材である。この複合体が低い抵抗値を有することをテスターで測定した(測定された抵抗値:約340Ω)。
これを基材の左右片がほぼ90度程度の角度をなす程度まで大きく折り曲げてみたが、2枚目の図22の写真に示すように、剥離などは全く見られなかった。また、この状態における抵抗値を測定したところ、測定点や測定時のプローブの押圧力を無変形時と変形(折り曲げ)時で同一とすることが困難であったため、両者の測定値を直ちに比較することはできないが、それでも測定された抵抗値は2kΩと、十分に低い値を示し、折り曲げによっても導電性が失われないことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上説明したように、本発明によればTSV用の導電性充填材料、フレキシブル電極その他に利用して好適な、高導電率の導電性高分子−金属複合体を得ることができるので、産業上、大いに利用されることが期待される。
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