(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施形態に係る電子機器を示す図である。この図において(a)は平面図であり、(b)は正面図である。以下の説明において、
図1に示すX1及びX2はそれぞれ左方向及び右方向であり、Y1及びY2はそれぞれ前方及び後方であり、Z1及びZ2はそれぞれ上方及び下方である。
【0010】
電子機器1は本体2を有している。本体2は下ハウジング3と上ハウジング20とを含み、これらは上下方向に組み合わされて、電子機器1が備える回路基板等を収容するハウジングを構成している。この例の電子機器1は光ディスクMに格納された動画像データを再生したり、光ディスクMに格納されたプログラムを実行する装置である。上ハウジング20の上側には光ディスクMを載置するためのディスク配置領域(光ディスクMの読み取り位置)が規定されている。例えば、上ハウジング20は光ディスクMに対応した形状の凹部を有し、この凹部がディスク配置領域として機能する。電子機器1はスライドカバー11を有している。この例のスライドカバー11は板状のカバーである。スライドカバー11は、上ハウジング20のディスク配置領域を覆う閉位置(
図1(a)において実線で示されるスライドカバー11の位置)と、ディスク配置領域を露出させる開位置(
図1(a)において二点鎖線で示されるスライドカバー11の位置)との間でスライド可能となっている。この例では、ディスク配置領域は上ハウジング20の右側部分に設けられており、スライドカバー11は上ハウジング20の右側部分を覆っている。電子機器1は、その前部に、フロントカバー4を有している。フロントカバー4は、上ハウジング20の前部に配置された、ユーザがスライドカバー11を開くための操作部材5及び後述するスライドカバー11の駆動機構G(
図8)を覆っている。
【0011】
図2は電子機器1の前部の平面図である。この図においてフロントカバー4は取り外され、操作部材5が示されている。スライドカバー11の駆動機構Gは省略されている。
図3は上ハウジング20の裏側を示す図である。
図4は
図3に示すIV−IV線での断面図である。
図4(b)は
図4(a)のIVBで示す部分の拡大図である。
図5は操作部材5と、スライドカバー11と、回転部材31の位置関係を示す図である。
図6及び
図7は回転部材31の動きを説明するための図である。後述するように、スライドカバー11はユーザの手動操作と操作部材5の操作の双方によって開くことができる。また、スライドカバー11はユーザの手動操作により閉じることができる。この説明で手動操作とは、ユーザがスライドカバー11自体を押してスライドカバー11を開閉する操作である。
図6において(a)及び(b)はユーザが手動でスライドカバー11を開くときの回転部材31の動きを示し、(c)は手動でスライドカバー11を閉じるときの回転部材31の動きを示している。
図7において(a)及び(b)は操作部材5の操作によりスライドカバー11を開くときの回転部材31の動きを示し、(c)は手動でスライドカバー11を閉じるときの動きを示している。
【0012】
図2に示すように、電子機器1は操作部材5を有している。操作部材5はユーザがスライドカバー11を開くための開ボタンとして機能する。操作部材5はその端部に前方に突出する操作部5aを有している。操作部5aは電子機器1の前面に設けられている(
図1参照)。後述するように、ユーザはこの操作部5aを押すことで、スライドカバー11を開くことができる。
【0013】
図2に示すように、この例の操作部材5は平面視で略L字形状を有している。すなわち、操作部材5は、その前部に位置し、左右方向に細長い前延伸部5bと、前延伸部5bの端部から後方に伸びる後延伸部5cとを有している。操作部5aは後延伸部5cとは反対側の端部に設けられている。操作部材5のこの形状により、電子機器1の左右方向の中心からオフセットした位置に設けられた後述する回転部材31を操作部材5により動かすことができ、且つ、操作部5aを電子機器1の左右方向の略中心に位置させることが可能となっている。
【0014】
操作部材5は前後方向に動くようにガイドされている。この例では、
図2に示すように、上ハウジング20にはホルダー6が取り付けられている。ホルダー6は前延伸部5bが間に配置される一対のガイド壁部6aを有している。
図3に示すように、後延伸部5cは上ハウジング20の裏面側まで伸びている。上ハウジング20の裏面(下面)には、後延伸部5cの後端が内側に配置される一対のガイド壁部22が形成されている。操作部材5はガイド壁部6a,22によって前後方向に平行に動くようにガイドされる。ユーザが操作部5aを押すと、操作部材5は後方に動く。なお、上ハウジング20は、後延伸部5cの後方に、操作部材5の可動範囲を規定するストッパ24を有している。
【0015】
この例の上ハウジング20は、
図2に示すように、その前部に、ディスク配置領域が形成された上ハウジング20の後側部分に比して低い位置に形成される前パネル部20bを有している。前パネル部20bは、その左右方向の中央部に、電子機器1の平面視で後方に凹んだ凹部20aを有している。上ハウジング20は、凹部20aの縁から下がり且つ凹部20aの内側の空間を取り囲む前壁部21を有している。ホルダー6はこの前壁部21に取り付けられている。後延伸部5cは前壁部21に形成された穴21aを通って上ハウジング20の裏側まで伸びている(
図4(b)参照)。
【0016】
図3に示すように、上ハウジング20には回転部材31が設けられている。回転部材31は、上ハウジング20の裏面に沿って配置され、スライドカバー11の移動方向(左右方向)に対して直交する方向(上下方向)に沿った軸線回りで回転可能となっている。
図5(a)に示すように、スライドカバー11には当接部12が設けられている。この例の当接部12は、スライドカバー11の前縁から下方に突出している。上述したように、スライドカバー11は開位置と閉位置との間で左右方向にスライド可能となっている。そのため、当接部12は、スライドカバー11の移動に応じて、上ハウジング20及び回転部材31に対して相対的に左右方向に動く。回転部材31は、スライドカバー11が閉位置に配置されている状態で当接部12の移動を規制するように当接部12に当るストッパ部32を有している。ストッパ部32が当接部12に当っている状態では、スライドカバー11は閉位置から開位置に向けた移動が規制される。
【0017】
図3に示すように、ストッパ部32は回転部材31の回転中心C1から離れた位置に形成されている。回転部材31は複数のストッパ部32を有し、これらは回転中心C1を中心とする周方向に等間隔で形成されている。この例の回転部材31は略多角形であり、複数のストッパ部32は多角形の角部にそれぞれ形成されている。特にこの例では、回転部材31は正方形であり、4つのストッパ部32を有している。回転部材31は、ストッパ部32が当接部12によって押されることによって回転し、当接部12の移動すなわちスライドカバー11のスライドを許容する。
【0018】
当接部12は、スライドカバー11がスライドすることにより、スライドカバー11のスライド方向(左右方向)に沿った直線L1に沿って移動する(
図5(a)参照)。後において詳説するように、回転部材31は、当接部12の移動方向と回転部材31の回転中心C1を通る軸線とに直交する方向に移動可能となっている。この例の回転部材31は前後方向に移動可能となっている。
図4に示すように、上ハウジング20の裏面側にはばね7が配置されている。回転部材31はこのばね7によってその回転が抑えられている。詳細には、ばね7は引張ばねであり、回転部材31を前方に付勢している。操作部材5は、回転部材31の前方に位置し、回転部材31に対向するストッパ押圧面(当接面)5dを有している。ストッパ押圧面5dは、後方に向くとともに、左右方向に沿って形成された平らな面である。回転部材31は、
図3に示すように、ばね7の弾性力によってストッパ押圧面5dに押し付けられる平らな面(以下において被押圧面)31aを有している。被押圧面31aがばね7の弾性力によってストッパ押圧面5dに押し付けられることによって、回転部材31の回転は抑えられている。
【0019】
この例では、回転部材31の複数の辺(この例では4つの辺)のそれぞれが被押圧面31aとして機能している。被押圧面31aがストッパ押圧面5dに当っている状態で、ストッパ部32は直線L1に沿った当接部12の軌道に位置している。被押圧面31aの両端部にストッパ部32が形成されている。そのため、直線L1に沿った当接部12の軌道上には、ストッパ部32が配置される2つの位置(
図5(a)においてP1及びP2で示す位置)が規定される。被押圧面31aがストッパ押圧面5dに押し付けられている状態では複数のストッパ部32のうち2つが2つの位置P1,P2にそれぞれ配置される。
【0020】
図5(a)に示すように、被押圧面31aがストッパ押圧面5dに押し付けられている状態において、回転中心C1から被押圧面31aの端部(この例ではストッパ部32)までの距離は、回転中心C1からストッパ押圧面5dまでの距離よりも大きい。そのため、ユーザが手動でスライドカバー11を閉位置から開位置に向けて動かそうとすると、
図6(a)に示すように、回転部材31は、回転しながらばね7の弾性力に抗して後方に動く。すなわち、当接部12はばね7の弾性力に抗して回転部材31を回転させる。回転部材31が回転すると、ストッパ部32による当接部12の移動規制、すなわちスライドカバー11のロックが解消され、スライドカバー11は開位置まで移動する(
図6(b))。
【0021】
当接部12に係合する位置(
図6においてP1で示す位置)に配置されていたストッパ部32は、回転部材31の回転により、当接部12の軌道上のもう一方の位置(
図6においてP2で示す位置)まで移動する(以下において、P1を第1のストッパ位置とし、P2を第2のストッパ位置とする)。ストッパ部32が第1のストッパ位置P1と第2のストッパ位置P2の中間の位置(
図6(a)で示すストッパ部32の位置)に達するまでは、被押圧面31aの端部とストッパ押圧面5dとの当接により回転部材31は後方に変位するため、ばね7の弾性力は回転部材31の回転に抗する力として作用する。ストッパ部32が中間の位置を過ぎると、ばね7の弾性力は回転部材31の回転を促す力として作用する。この例の回転部材31は4つのストッパ部32を有しており、回転部材31はスライドカバー11の1回の移動によって、90度回転する。そのため、回転部材31の回転が45度に達するまでは、ばね7の弾性力は回転部材31の回転に抗する力として作用する。そして、回転部材31の回転が45度を超えると、ばね7の弾性力は回転部材31の回転を促す力として作用する。そして、その力により、当接部12はストッパ部32によってその移動方向に押し出される。
【0022】
図5(b)に示すように、ストッパ部32はスライドカバー11の当接部12に当る当接面32aを有している。この例のストッパ部32は回転部材31の角部に形成された凹部であり、この凹部の内面がストッパ部32として機能している。回転可能な回転部材31によってスライドカバー11の移動を規制する本実施形態の構造によれば、当接部12の移動方向(左右方向)に対する当接面32aの角度を大きくできる。この例では、ストッパ部32の当接面32aは、スライドカバー11の当接部12の移動方向に対して垂直に形成されている。その結果、スライドカバー11が安定的に閉位置に保持され得る。後において詳説するように、スライドカバー11が開位置から閉位置に戻るときにもばね7の弾性力が作用するように、各ストッパ部32は2つの当接面32a,32bを有している。第1の当接面32aは、スライドカバー11が閉位置から開位置に移動する時にスライドカバー11の当接部12に当り、第2の当接面32bは、スライドカバー11が開位置から閉位置に移動するときに当接部12に当る。第2の当接面32bも、スライドカバー11の当接部12の移動方向に対して垂直になるように形成されている。
【0023】
上述したように、回転部材31は、直線L1に沿った当接部12の軌道に対して、当接部12の移動方向に対して直交する方向(この例では、後方)に相対移動可能である。すなわち、回転部材31は当接部12の軌道から外れる方向に移動可能である。上ハウジング20は、回転部材31の回転を許容するとともに、回転部材31を前後方向に案内するガイドを有している。詳細には、
図4(a)に示すように、回転部材31はその回転中心C1に軸部33を有している。軸部33は回転部材31から上ハウジング20に向けて突出している。
図3及び
図4(a)に示すように、上ハウジング20は、上ハウジング20の裏面から突出するガイド23を有している。ガイド23は軸部33を取り囲むとともに前後方向に細長い。その結果、回転部材31はガイド23に沿って前後方向に移動する。
【0024】
上述したように、操作部材5はユーザの操作により後方に動くように、換言すると、回転部材31が当接部12の軌道から外れる方向に動く。操作部材5は、操作部5aがユーザによって押されると、ストッパ押圧面5dによって回転部材31を後方に動かす。スライドカバー11は、後述する駆動機構Gに設けられたばね59(
図8)によって開位置に付勢されている。この構造により、ユーザは手動操作だけでなく、操作部材5の操作によっても、スライドカバー11を開けることができる。すなわち、
図7(a)に示すように、操作部材5は、操作部5aが押されると、当接部12の軌道から回転部材31を後方に移動させる。その結果、ストッパ部32による当接部12の移動規制が解消される。そして、スライドカバー11はばね59の作用により開位置に向けて移動する。なお、
図4(b)に示すように、操作部材5のストッパ押圧面5dが形成された部分とスライドカバー11の当接部12の位置は、上下方向においてずれている。
図4(b)においては、当接部12はストッパ押圧面5dよりも低い位置に位置している。そのため、操作部材5が押され後方に移動した場合であっても、当接部12は操作部材5に干渉しない。
【0025】
上述したように、上ハウジング20の裏面側には、回転部材31を前方に付勢するばね7が配置されている。
図4に示すように、回転部材31は、その回転中心C1に、軸部33とは反対側に突出する軸部34を有している。ばね7の一端は軸部34に引っ掛かっている。ばね7の他端は上ハウジング20の前壁部21に引っ掛かっている。この例では、前壁部21には穴21bが形成され、ばね7の他端はこの穴21bの縁に引っ掛かっている。ばね7は軸部34を前壁部21に向けて引っ張っている。その結果、回転部材31は前方に付勢され、操作部材5を初期位置に付勢している(ここで初期位置はユーザによって操作部5aが押されない状態での操作部材5の位置である)。そのため、ユーザが操作部材5の操作部5aの押圧を解除すると、操作部材5は初期位置に復帰する。なお、操作部材5には、軸部34と当該操作部材5との干渉を避けるための凹部5eが形成されている(
図5参照)。
【0026】
回転部材31に形成された複数のストッパ部32は、回転部材31の回転中心C1を中心とする周方向に沿って等間隔で配置されている。回転部材31は回転中心C1に対して回転対称な多角形であり、複数のストッパ部32は多角形の角部にそれぞれ形成されている。この例の回転部材31は正方形であり、4つの角部のそれぞれにストッパ部32を有している。正方形の4つの辺のそれぞれは上述した被押圧面31aとして機能している。各被押圧面31aの両端にストッパ部32が位置している。そのため、スライドカバー11の直線L1に沿った当接部12の軌道上には、ストッパ部32が配置される位置として、2つの位置(すなわち、第1ストッパ位置P1及び第2ストッパ位置P2)が規定され、各ストッパ部32は、回転部材31の回転により、この2つの位置に移動する。
図5(a)では、閉位置に配置されているスライドカバー11の当接部12に当接する位置が第1のストッパ位置P1として示されている。第2のストッパ位置P2は、スライドカバー11の閉位置から開位置への移動に伴って回転部材31が回転した後に配置されるストッパ部32の位置である。
【0027】
回転部材31が複数のストッパ部32を有し、当接部12の軌道上に2つのストッパ位置P1,P2が規定されることにより、スライドカバー11を手動で開けた後に手動で閉じる場合と、操作部材5を押してスライドカバー11を開けた後に手動でスライドカバー11を閉じる場合のいずれにおいても、ばね7の弾性力はスライドカバー11の開位置から閉位置への移動に抗する力として作用する。
【0028】
図6を参照して、ユーザがスライドカバー11を手動で開けた後に手動で閉じる場合について説明する。
図6(a)及び(b)に示すように、当初第1のストッパ位置P1に配置されていたストッパ部(
図6において符号32−1で示すストッパ部)は、当接部12に押され、回転部材31の反時計回りの回転により第2のストッパ位置P2に移動する。ライドカバー11は開位置に移動する。その後、
図6(c)に示すように、スライドカバー11が開位置から閉位置に移動しようとすると、当接部12は再びストッパ部32−1を押し、回転部材31を時計回りに回転させる。この時、回転部材31はストッパ押圧面5dの作用により、ばね7の弾性力に抗して一時的に後方に移動する。すなわち、ばね7の弾性力がスライドカバー11の閉位置への移動に抗する力として作用する。回転部材31がばね7の弾性力に抗して回転すると、ストッパ部32−1は第1のストッパ位置P1に復帰する。なお、ストッパ部32−1が第1のストッパ位置P1と第2のストッパ位置P2の中間の位置を越えると、ばね7の弾性力は回転部材31の時計回りの回転を促す力として作用する。
【0029】
図7を参照して、ユーザが操作部材5を押してスライドカバー11を開けた後に手動操作でスライドカバー11を閉じる場合について説明する。この場合、
図7(a)及び(b)に示すように、回転部材31の後方への移動によりスライドカバー11の移動は許容される。そのため、第1のストッパ位置P1に当初配置されていたストッパ部(
図7において符号32−1で示すストッパ部)は、スライドカバー11が開位置に移動した後も、第1のストッパ位置P1の位置に留まる。
図7(c)に示すように、スライドカバー11が開位置から閉位置に移動しようとすると、当接部12は、第2のストッパ位置P2に当初配置されていたストッパ部(
図7において符号32−2で示すストッパ部)を押し、回転部材31を時計回りに回転させる。この時、回転部材31はストッパ押圧面5dの作用により、ばね7の弾性力に抗して一時的に後方に移動する。その後、ストッパ部32−2は第1のストッパ位置P1に配置される。操作部材5の操作によるスライドカバー11の開きと、手動操作によるスライドカバー11の閉じとが繰り返される場合、回転部材31は同一方向(この例では時計回り方向)に回転する。その結果、第1のストッパ位置P1と第2のストッパ位置P2に配置されるストッパ部32は順番に入れ替わる。
【0030】
回転部材31は回転中心C1に対して回転対称な形状を有している。そのため、各ストッパ部32は、
図5(b)に示すように、2つの当接面32a,32bを有している。スライドカバー11が開位置から閉位置に移動する際には、当接部12は第2の当接面32bに当る。回転可能な回転部材31によってスライドカバー11の移動を規制する本実施形態の構造によれば、第1の当接面32aと同様に、ストッパ部32が第2のストッパ位置P2に配置されている状態での第2の当接面32bに対する当接部12の移動方向(左右方向)に対する角度を大きくできる。
【0031】
スライドカバー11を動かす駆動機構について説明する。
図8は電子機器1の前部の平面図である。この図においてはフロントカバー4が取り外され、スライドカバー11の駆動機構Gが示されている。
図9は上ハウジング20の裏側から駆動機構Gを臨む図である。
図10から
図13は駆動機構Gの正面図である。
【0032】
電子機器1は縦置きと横置きの双方が可能である。上述の
図1(b)では横置きされた電子機器1が示されている。この例の電子機器1は、縦置き時には、スライドカバー11が覆うディスク配置領域が電子機器1の上部に位置するように配置される。この例の電子機器1は、その右側部分にディスク配置領域を有しているため、縦置き時には左側面が下側に位置する。後述するように、駆動機構Gはダンパー55を有している。
図10は電子機器1が縦置きされ且つスライドカバー11が閉位置にある状態でのダンパー55が示されている。
図11は電子機器1が横置きされ且つスライドカバー11が閉位置にある状態でのダンパー55が示されている。
図12は電子機器1が縦置きされ且つスライドカバー11が閉位置と開位置との間にある状態が示され、
図13は電子機器1が横置きされ且つスライドカバー11が閉位置と開位置との間にある状態が示されている。なお、
図10及び
図12ではX1が重力の向きであり、
図11及び
図13ではZ2が重力の向きである。
【0033】
図10に示すように、駆動機構Gは駆動ギア51を含んでいる。駆動ギア51にはばね59が取り付けられている。ばね59はねじりばねであり、スライドカバー11を開位置に向けて付勢する弾性力(回転力)を発揮している。ばね59の一端は駆動ギア51に係合し、他端は上述したホルダー6に引っ掛かっている。ばね59はスライドカバー11が閉位置にある状態で駆動ギア51をその回転方向(時計回り方向)に付勢している。スライドカバー11の前縁にはラック13が形成されている。駆動機構Gはラック13に係合する最終ギア54を含んでいる。最終ギア54は駆動ギア51の回転力を受けて、スライドカバー11を開位置に向けて付勢している。
【0034】
この例の駆動機構Gは2つのアイドルギア52,53を含んでいる。駆動ギア51の回転力はこの2つのアイドルギア52,53を通して最終ギア54に伝えられる。詳細には、駆動ギア51の回転力は次のようにして最終ギア54に伝えられる。
図9に示すように、アイドルギア52は、同軸上に配置され一体的に回転する第1ギア部52aと第2ギア部52bとを含んでいる。この例では、第2ギア部52bは第1ギア部52aよりも大径である。また、アイドルギア53は、同軸上に配置され一体的に回転する第1ギア部53aと第2ギア部53bとを含んでいる。第2ギア部52bは第1ギア部52aよりも大径である。アイドルギア52の第1ギア部52aは駆動ギア51の第1ギア部51aに係合し、アイドルギア52の第2ギア部52bはアイドルギア53の第1ギア部53aに係合している。最終ギア54は、アイドルギア53の第2ギア部53bと係合する第1ギア部54aと、第1ギア部54aと同軸上に配置され第1ギア部54aと一体的に回転する第2ギア部54bとを含んでいる。第2ギア部54bはスライドカバー11のラック13に係合している。第2ギア部54bは第1ギア部54aよりも大径である。なお、駆動機構Gは上ハウジング20の前部に形成された凹部20aに配置されている(
図8参照)。ギア51〜54をそれぞれ支持する軸部51d,52d,53d,54dはハウジング20に形成された前壁部21と、ホルダー6とによって支持されている。
【0035】
各ギア部51a,52a,52b,53a,53b,54a,54bの歯数は、最終ギア54の回転速度が駆動ギア51の回転速度よりも速くなるように設定されている。すなわち、各ギア部51a,52a,52b,53a,53b,54a,54bの歯数は、スライドカバー11の単位移動距離に対する最終ギア54の回転数が、当該単位移動距離に対する駆動ギア51の回転数よりも多くなるように設定されている。
【0036】
駆動機構Gはさらにダンパー55を含んでいる。ダンパー55はロータリダンパーであり、例えば、オイルが封入された本体55aと、本体55a内で回転する回転体とを含んでいる。なお、ダンパー55の構成はこれに限られない。例えば、ダンパー55は、本体55a内に、本体55aの内面に押し付けられた摩擦部を含む回転体を含んでもよい。ダンパー55は本体55a内の回転体の回転速度に応じた抵抗力を発揮する。
【0037】
上述したように、最終ギア54はスライドカバー11のラック13に係合しており、スライドカバー11の移動にともなって回転する。ダンパー55は2つの位置の間を移動するように支持されている(以下、第1のダンパー位置及び第2のダンパー位置とする)。第1のダンパー位置は、
図10及び
図12に示すように、ダンパー55が最終ギア54に係合し最終ギア54の回転の抵抗(負荷)となる位置である。第2のダンパー位置は、
図11及び
図12に示すように、ダンパー55と最終ギア54との係合が解消される位置である。
図9に示すように、最終ギア54は上述したギア部54a,54bに加えて第3ギア部54cを含んでいる。ダンパー55は本体55a内の回転体と連動するギア部55bを含んでいる。ギア部55bは最終ギア54の第3ギア部54cに係合している。これにより、ダンパー55は第1のダンパー位置では最終ギア54の回転の抵抗となる。この例では、ギア部55bと回転体はいずれも軸部55dを中心に回転する。
【0038】
電子機器1は上述したように縦置きされる場合と横置きされる場合とがある。ダンパー55は第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間を電子機器1の姿勢変化に応じて移動するように支持されている。具体的には、ダンパー55は、縦置き状態でその自重により(すなわちX1方向の重力により)第1のダンパー位置に配置され、横置き状態でその自重により(すなわちZ2方向の重力により)第2のダンパー位置に配置される。ダンパー55は、ギア部55bを回転可能に支持する軸部55dから半径方向に離れた位置に軸部55eを有している。ダンパー55の本体55aは軸部55eによって回転(揺動)可能に支持され、第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間を移動する(以下、軸部55eを揺動軸部と称する)。揺動軸部55eの位置は、電子機器1が横置きされている状態で軸部55dの上側であり、電子機器1が縦置きされている状態で軸部55dよりも上方である。揺動軸部55eのこのレイアウトにより、電子機器1が横置きされている状態では、ダンパー55はその自重により
図11に示す第2のダンパー位置に配置される。また、電子機器1が縦置きされている状態では、ダンパー55はその自重により
図10に示す第1のダンパー位置に配置される。その結果、電子機器1が縦置きされている状態でスライドカバー11が開かれるときに、スライドカバー11の移動速度を抑えることができ、スライドカバー11の緩やかな開きが実現され得る。
【0039】
この例のダンパー55は、
図11に示すように、第2のダンパー位置では駆動ギア51に係合している。この例では、駆動ギア51は第1ギア部51aに加えて第2ギア部51bを含んでいる。ダンパー55のギア部55bは、第2のダンパー位置では、第2ギア部51bに係合している。
【0040】
ダンパー55は本体55aが収容する回転体の回転速度、すなわちギア部55bの回転速度に応じた大きさの抵抗力を発揮する。上述したように、各ギア部51a,52a,52b,53a,53b,54a,54bの歯数は、スライドカバー11の単位移動距離に対する最終ギア54の回転数が、当該単位移動距離に対する駆動ギア51の回転数よりも多くなるように設定されている。換言すると、駆動ギア51の回転速度は最終ギア54の回転速度よりも小さい。この構造によれば、電子機器1が縦置きされている場合と横置きされている場合のいずれにおいても、スライドカバー11の緩やかな開きが実現され得る。
【0041】
最終ギア54はばね59が発揮する回転力をスライドカバー11に伝える経路の最終に位置するギアであり、駆動ギア51は経路の最初に位置するギアである。そのため、スライドカバー11の単位移動距離に対する最終ギア54の回転数と、当該単位移動距離に対する駆動ギア51の回転数との差を大きくすることが容易となっている。
【0042】
駆動ギア51と最終ギア54は左右方向に離れて配置され、それらの間にダンパー55のギア部55bは配置されている。電子機器1が縦置きされている場合に駆動ギア51は最終ギア54から上方に離れて位置し、電子機器1が横置きされている場合に駆動ギア51は最終ギア54よりも下方に位置する。ギア部55bは駆動ギア51と最終ギア54との間に位置し、電子機器1が横置きされている状態で揺動軸部55eはギア部55bの上側に位置する。ギア部55bと揺動軸部55eのこのレイアウトにより、ダンパー55は、電子機器1の姿勢変化におうじて揺動軸部55eを中心として回転し、駆動ギア51と最終ギア54とに選択的に係合する。
【0043】
図12に示すように、最終ギア54が回転する時、最終ギア54に係合しているギア部55bの歯(最終ギア54との接点T1)には最終ギア54が回転する方向に応じた方向の力F1,F2が作用する。この例では、スライドカバー11が閉位置から開位置に向けて移動するとき、最終ギア54は反時計回り方向に回転し、ギア部55bは力F1を受ける。反対に、スライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するとき、最終ギア54は時計回り方向に回転し、ギア部55bは力F1とは反対方向の力F2を受ける。この力F2はギア部55bを最終ギア54から離す方向の力としてダンパー55に作用する。すなわち、力F2は、ダンパー55の揺動軸部55eの回転中心と接点T1とを結ぶ直線G1に対して垂直な方向の力成分F2aを含む。この力成分F2aはギア部55bを最終ギア54から離す方向(この例では反時計回り方向)にダンパー55を回転させる力となる。なお、力F1は直線G1に対して垂直な方向の力成分F1aを含む。この力成分F1aは、ギア部55bを最終ギア54に近づける方向(この例では時計回り方向)に揺動軸部55eを中心にダンパー55を回転させる力となる。
【0044】
図12に示すように、スライドカバー11はストッパ部14を含んでいる。ストッパ部14は、スライドカバー11が開位置と閉位置との間にあるときにダンパー55に当接し、第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間でのダンパー55の移動を規制する。すなわち、ストッパ部14は、ダンパー55が第1のダンパー位置に配置されているときにギア部55bが最終ギア54から離れる方向へのダンパー55の移動を抑える。この例では、ストッパ部14は、スライドカバー11の前縁にラック13に沿って形成され、左右方向(スライドカバー11の移動方向)に伸びている。ダンパー55は揺動軸部55eの半径方向に伸びる被ストッパアーム55fを有している。この例の被ストッパアーム55fは上方に伸びるとともに最終ギア54側に傾斜している。被ストッパアーム55fは、その端部に、ストッパ部14に向かって屈曲した被係止部55gを有している(
図8参照)。ストッパ部14は、スライドカバー11が閉位置から開位置に移動するときに、ダンパー55が第1のダンパー位置に配置されているときの被係止部55gの位置と、ダンパー55が第2のダンパー位置に配置されているときの被係止部55gの位置との間に進入する。ダンパー55が、
図12に示す第1のダンパー位置に配置されている場合、ストッパ部14は被係止部55gの下側に位置する。すなわち、被係止部55gはストッパ部14の上面に配置される。ダンパー55が力F2を受けて最終ギア54から離れる方向に回転しようとするとき、すなわちスライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するとき、被係止部55gは
図12に示すD2方向に動こうとしてストッパ部14の上面に当る。その結果、ダンパー55のその回転はストッパ部14によって規制される。反対に、ダンパー55が力F1を受けて最終ギア54に近づく方向に回転しようとするとき、すなわちスライドカバー11が閉位置から開位置に向けて移動するとき、力F1は、被係止部55gをストッパ部14の上面から離す力(
図12に示すD1方向の力)として作用する。そのため、ストッパ部14による回転の規制は作用しない。
【0045】
ストッパ部14はスライドカバー11が閉位置にあるときにダンパー55に当らないように形成されている。すなわち、
図8及び
図10に示すように、スライドカバー11が閉位置にあるときに被ストッパアーム55fの被係止部55gとストッパ部14とが干渉しないように、ストッパ部14の長さL3及びストッパ部14の位置は設定されている。これにより、ダンパー55は、スライドカバー11が閉位置にあるときには第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間での移動が許容される。スライドカバー11が閉位置と開位置との間にあるときには、ギア部55bが最終ギア54から離れる方向の回転、すなわち第2のダンパー位置に向けたダンパー55の移動が規制される。
【0046】
また、スライドカバー11が開位置にあるときにも、被ストッパアーム55fとストッパ部14とが干渉しないように、ストッパ部14の長さL3及び位置は設定されている。これにより、ダンパー55は、スライドカバー11が開位置にあるときには第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間での移動が許容される。
【0047】
上述したように、最終ギア54は、スライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するとき、時計回り方向に回転する。ダンパー55は、最終ギア54が時計回り方向に回転する時に、ギア部55bが最終ギア54から離れる方向の力F2を受ける。このようにスライドカバー11が開位置から閉位置に移動するときにギア部55bを最終ギア54から離す力F2が生じるように、ダンパー55は配置されている。具体的には、
図12に示すように、ダンパー55の揺動軸部55eは、接点T1でのギア部55bと最終ギア54との共通接線Lc1に対してギア部55b側に位置し、且つ、ギア部55bと最終ギア54の回転中心を通るH1に対して力F2の向きとは反対側に位置している。揺動軸部55eのこのレイアウトにより、スライドカバー11が開位置から閉位置に移動するときに力F2が生じる。操作部材5が押された場合、スライドカバー11はばね59の回転力を受けて閉位置から開位置に向けて移動する。スライドカバー11を閉位置に移動するときに力F2が生じるようにダンパー55を配置することで、ストッパ部14とダンパー55の被ストッパアーム55fとの摩擦によりばね59の回転力が減殺されることを抑えることができる。
【0048】
図13に示すように、ダンパー55が第2のダンパー位置に配置されるとき、被ストッパアーム55fの被係止部55gはストッパ部14の下面側に位置する。すなわち、第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間でのダンパー55の回転角度は、被ストッパアーム55fの被係止部55gがスライドカバー11のストッパ部14の上面側と下面側とに移動する大きさに設定されている。これにより、
図12に示すように、ダンパー55が第1のダンパー位置に配置されるときには、被係止部55gはストッパ部14の上面側に位置し、
図13に示すようにダンパー55が第2のダンパー位置に配置されるときには、被係止部55gはストッパ部14の下面側に位置する。
【0049】
図13に示すように、ダンパー55が第2のダンパー位置に配置された状態で駆動ギア51が回転する時、駆動ギア51に係合しているギア部55bの歯(駆動ギア51との接点T2)には駆動ギア51の回転方向に応じた方向の力F3,F4が作用する。この例では、スライドカバー11が閉位置から開位置に向けて移動するとき、駆動ギア51は時計回り方向に回転し、ギア部55bは力F3を受ける。反対に、スライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するとき、駆動ギア51は反時計回り方向に回転し、ギア部55bは力F3とは反対方向の力F4を受ける。力F4はギア部55bを駆動ギア51から離す方向の力としてダンパー55に作用する。すなわち、力F4は、ダンパー55の揺動軸部55eの回転中心と接点T2とを結ぶ直線G2に対して垂直な方向の力成分F4aを含む。この力成分F4aはギア部55bを駆動ギア51から離す方向(この例では時計回り方向)に揺動軸部55eを中心にダンパー55を回転させる力となる。ダンパー55が第2のダンパー位置に配置された状態では被ストッパアーム55fの被係止部55gはストッパ部14の下面側に位置している。そのため、力成分F4aにより被係止部55gは
図13のD4方向に動こうとしストッパ部14に押し付けられる。その結果、ダンパー55の時計回り方向の回転は、ストッパ部14の下面により規制される。なお、力F3は直線G2に対して垂直な方向の力成分F3aを含む。この力成分F3aは、ギア部55bを駆動ギア51に近づける方向(この例では反時計回り方向)に揺動軸部55eを中心にダンパー55を回転させる。その結果、被係止部55gは
図13のD3方向に動こうとするため、ストッパ部14による回転の規制は作用しない。
【0050】
上述したように、ダンパー55が第1のダンパー位置にある状態でスライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するとき、ダンパー55を最終ギア54から離す力成分F2aがダンパー55に作用する。また、ダンパー55が第2のダンパー位置に配置されている状態でスライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するとき、ダンパー55を駆動ギア51から離す力成分F4aがダンパー55に作用する。この力成分F4aがダンパー55に作用する方向と力成分F2aがダンパー55に作用する方向は、互いに反対方向となっている。また、ダンパー55が第2のダンパー位置に配置されている状態での被ストッパアーム55fの被係止部55gの位置は、ダンパー55が第1のダンパー位置に配置されている状態での被係止部55gの位置とは、ストッパ部14を挟んで反対側である。この構造により、力成分F4aによるダンパー55の回転はストッパ部14の一方の面(この例では下面)で規制され、力成分F2aによるダンパー55の回転はストッパ部14の他方の面(この例では上面)で規制される。この例では、上述したように、力成分F2aはダンパー55を反時計回り方向に回転させようとする力であり、力成分F2aによるダンパー55の回転はストッパ部14の上面で規制されている。また、力成分F4aはダンパー55を時計回り方向に回転させようとする力であり、力成分F4aによるダンパー55の回転はストッパ部14の下面で規制されている。本実施形態では、力成分F4aと力成分F2aとが互いに反対方向にダンパー55を回転させる力となるように、駆動ギア51の回転方向と最終ギア54の回転方向とが設定されている。具体的には、駆動ギア51の回転方向と最終ギア54の回転方向とが互いに反対方向となるように、駆動ギア51から最終ギア54に至る回転力の伝達経路に2つのアイドルギア52,53が配置されている。その結果、スライドカバー11が開位置から閉位置に向けて移動するときに、最終ギア54は反時計回り方向に回転し、アイドルギア53は時計回り方向に回転し、アイドルギア52は反時計回り方向に回転する。その結果、駆動ギア51は時計回り方向に回転する。
【0051】
以上説明したように、回転部材31は、スライドカバー11が閉位置にある状態でスライドカバー11の当接部12の相対移動を規制するように当接部12に当接するストッパ部32を有している。ストッパ部32は回転部材31の回転中心から離れた位置に形成され、回転部材31はストッパ部32が当接部12によって押されることにより回転し当接部12の相対移動を許容している。これにより、ストッパ部32に形成された当接面32aが有する、当接部12の移動方向(左右方向)に対する角度を大きくできる。その結果、スライドカバー11を閉位置に安定的に保持できる。また、ユーザは必要に応じてスライドカバー11を開くことができる。
【0052】
当接部12は左右方向において回転部材31に対して相対移動可能であり、回転部材31は、当接部12の軌道に対して、当接部12の移動方向に対して交差する方向(以上の例では、後方)に相対移動可能であり、後方に移動して当接部12の軌道から外れる。また、操作部材5は回転部材31を後方に動かすように設けられ、ばね59は、スライドカバー11を開位置に向けて付勢している。この構造によれば、ユーザは操作部材5の操作と手動の双方でスライドカバー11を開けることができる。
【0053】
回転部材31のストッパ部32は、当接部12の相対移動を許容する回転部材31の回転により、第1のストッパ位置P1と第2のストッパ位置P2とに移動可能である。第1のストッパ位置P1と第2のストッパ位置P2は当接部12の軌道に設定されている。回転部材31は、当該回転部材31の回転中心を中心とする周方向に、複数のストッパ部32を有している。これによれば、操作部材5の操作によるスライドカバー11の開きと手動によるスライドカバー11の閉じの双方を可能とし、且つ、スライドカバー11を手動で閉じるときにも回転部材31とばね7とを作用させることができる。
【0054】
当接部12は左右方向において回転部材31に対して相対移動可能であり、回転部材31のストッパ部32は、当接部12の相対移動を許容する回転部材31の回転により第1のストッパ位置P1から第2のストッパ位置P2に移動可能であり、第1のストッパ位置P1と第2のストッパ位置P2の双方は、左右方向に沿った当接部12の軌道に設定されている。これによれば、スライドカバー11を手動で閉じるときにも回転部材31とばね7とを作用させることができる。
【0055】
ばね7は当接部12の移動方向と回転部材31の回転中心を通る軸線とに対して直交する方向(以上の例では前方)に回転部材31を付勢し、操作部材5は回転部材31に対して前方に位置するストッパ押圧面5d(当接面)を有し、回転部材31は、あるストッパ部32(例えば
図6で示すストッパ部32−1)が第1のストッパ位置P1にある状態でストッパ押圧面5dに押し付けられる被押圧面31aと、当該ストッパ部32が第2のストッパ位置P2にある状態でストッパ押圧面5dに押し付けられる被押圧面31aとを有している。これによれば、回転部材31は、あるストッパ部32が第1のストッパ位置P1にある状態と当該ストッパ部32が第2のストッパ位置P2にある状態の双方において保持され得る。
【0056】
電子機器1はダンパー55を備えている。ダンパー55は、最終ギア54に係合し最終ギア54の回転の抵抗となる第1のダンパー位置(
図10)と、最終ギア54との係合が解消される第2のダンパー位置(
図11)との間を、電子機器の姿勢変化に応じて移動するように支持されている。これによれば、電子機器の姿勢変化によることなくスライドカバー11の緩やかな開きを実現できる。
【0057】
電子機器1はスライドカバー11の移動に連動し、且つスライドカバー11の単位移動距離に対する回転量が最終ギア54よりも小さい駆動ギア51を備え、ダンパー55は第2のダンパー位置において駆動ギア51に係合している。これによれば、電子機器1が縦置きされている場合と横置きされている場合のいずれにおいても、スライドカバー11の開きが緩やかになる。
【0058】
ダンパー55が係合する最終ギア54と駆動ギア51は、スライドカバー11を移動させる弾性力を発揮するばね59の力をスライドカバー11に伝えるギアである。これによれば、電子機器1の部品数を低減できる。
【0059】
ダンパー55は、最終ギア54と駆動ギア51との間に配置され、ダンパー55が第1のダンパー位置にあるときに最終ギア54に係合し、第2のダンパー位置にあるときに駆動ギア51に係合するギア部55bを有している。ダンパー55は、ギア部55bが最終ギア54と駆動ギア51との間で移動するように、ギア部55bから離れて位置する揺動軸部55eによって支持されている。これによれば、第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間でのダンパー55の移動を可能とする構造が比較的簡単に実現され得る。
【0060】
ダンパー55は最終ギア54に係合するギア部55bを有し、第1のダンパー位置と第2のダンパー位置との間で移動するようにギア部55bから離れて位置する揺動軸部55eによって支持され、スライドカバー11は、ダンパー55に当接しギア部55bが最終ギア54から離れる方向にダンパー55が回転するのを抑えるストッパ部14を含み、ストッパ部14は、スライドカバー11が閉位置にあるときにはダンパー55に当らないように形成されている。これによれば、スライドカバー11が閉位置にあるときにはダンパー55の移動が許容され、スライドカバー11が閉位置と開位置との間にあるときには最終ギア54とダンパー55との係合が維持される。
【0061】
最終ギア54は閉位置から開位置に向けたスライドカバー11の移動によって反時計回り方向に回転し、ダンパー55は、最終ギア54の反時計回り方向の回転によって最終ギア54から離れる方向の力を受けるように配置されている。これによれば、スライドカバー11を開けるときにスライドカバー11を開く方向に付勢するばね59の弾性力が減殺されることを、抑えることができる。
【0062】
図14はダンパー55の変形例であるダンパー55Aを示す図である。
図14において、これまで説明した箇所と同一箇所には同一符号を付している。同図(a)はダンパー55A、及び駆動ギア51等の正面図である。同図(b)はダンパー55Aが備える被係止部55g及びストッパ部14の断面図である。
【0063】
図14(a)に示すように、ダンパー55Aは、ダンパー55Aを揺動可能に支持する揺動軸部55eから離れた位置に、錘部55hを有している。錘部55hは、その自重により、ダンパー55Aを最終ギア54又は駆動ギア51に近づける。すなわち、ダンパー55Aが第1のダンパー位置にあるとき、すなわち、電子機器1が縦置きされているとき、ダンパー55Aには錘部55hの重さにより力F5bが作用する。力F5bはダンパー55Aを最終ギア54に近づける力となる。また、ダンパー55Aが第2のダンパー位置にあるとき、すなわち電子機器1が横置きされているとき、ダンパー55Aには錘部55hの重さにより力F5aが作用する。力F5aは、ダンパー55Aを駆動ギア51に近づける力となる。錘部55hの存在により、ダンパー55Aの動きがストッパ部14によって規制されない状態、具体的には、スライドカバー11が閉位置にある状態で、ダンパー55Aが駆動ギア51又は最終ギア54から離れることを抑えることができる。
【0064】
錘部55hは揺動軸部55eからダンパー55Aの重心位置を遠ざける位置に形成されている。具体的には、
図14(a)に示すように、揺動軸部55eから錘部55hの重心までの距離D5は、揺動軸部55eからダンパー55Aの回転体(具体的にはギア55b)の回転中心である軸部55dまでの距離D6よりも大きい。また、この例では、錘部55hは、軸部55dと同様に、揺動軸部55eよりも下方に位置している。
【0065】
ダンパー55Aは、軸部55dを挟んで互いに側に位置する突出部55i,55jを有している。
図14(a)に示すように、錘部55hは一方の突出部55jの端部に形成されている。ダンパー55Aの重心位置は錘部55hの存在により一方の突出部55j側にずれている。この例では、錘部55hは、最終ギア54の下方の位置に向けて突出する突出部55jの端部から張り出している。より具体的には、錘部55hは突出部55jの端部の上側部分から張り出している。なお、錘部55hは、ダンパー55Aの他の部分と同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。また、錘部55hには、その重さを増すために、金属などで形成された別の部材(例えば螺子)が取り付けられてもよい。
【0066】
錘部55hを突出部55jの端部の上側部分に形成することにより、電子機器1を横置きしているとき、すなわち、ダンパー55Aが、
図14(a)に示すように、第2のダンパー位置にあるときにダンパー55Aに作用するモーメントを大きくできる。その結果、ダンパー55Aが駆動ギア51から離れることをより効果的に抑えることができる。例えば、電子機器1を横置きしている状態でスライドカバー11を閉位置に移動した直後にスライドカバー11を再び開位置に向けて移動させる場合、
図13に示す力成分F4aによりダンパー55Aが駆動ギア51から離れ、ダンパー55Aの被係止部55gがストッパ部14の上面に乗り上げる場合がある。錘部55hの存在により、ダンパー55Aのそのような動きを抑えることが可能となる。
【0067】
図14(b)に示すように、ストッパ部14は、その端部側の上面に、ガイド面14aを有している。ガイド面14aは、ダンパー55Aの被係止部55gをストッパ部14の上面側に案内するよう傾斜している。具体的には、ガイド面14aはストッパ部14の端部14_に向けて下がるように傾斜している。特にこの例では、ガイド面14aの高さは、ダンパー55Aが第1のダンパー位置と第2のダンパー位置の中間位置に配置されている場合であっても、ダンパー55Aがストッパ部14の上面側に案内されるように設定されている。そのため、電子機器1が縦置きされている状態では、ダンパー55Aはより確実に第1のダンパー位置に配置される。
【0068】
また、ダンパー55Aの被係止部55gの下面には被ガイド面55mが形成されている。被ガイド面55mはストッパ部14に向けて上昇するように傾斜している。このため、電子機器1が縦置きされている状態では、ダンパー55Aはストッパ部14に乗り上げやすくなり、より確実に第1のダンパー位置に配置される。
【0069】
図15はスライドカバー11の変形例であるスライドカバー11Aを示す図である。スライドカバー11Aはガイド機構Mを有している。
図16及び
図17はガイド機構Mの動作を説明するための図であり、これらの図にはスライドカバー11Aと上述のダンパー55Aとが示されている。
図16には、スライドカバー11Aが開位置に達する直前の状態にあるダンパー55A及びガイド機構Mが示されている。
図17にはスライドカバー11Aが開位置に配置されている状態のダンパー55A及びガイド機構Mが示されている。
図16(a)及び
図17(a)は正面図であり、
図16(b)及び
図17(b)は平面図であり、
図16(c)及び
図17(c)は、
図16(b)及び
図17(b)に示すc−c線での断面図である。これらの図では、これまで説明した箇所と同一箇所には同一符号を付している。
【0070】
ガイド機構Mは、ダンパー55Aが第1のダンパー位置に配置され(すなわち、電子機器1が縦置きされ)、且つ、スライドカバー11Aが開位置にあるときに、ダンパー55Aを重力に抗して第1のダンパー位置から第2のダンパー位置に案内する機構である。より具体的には、ガイド機構Mは、ダンパー55Aの被係止部55gを、ダンパー55Aが第1のダンパー位置に配置されているときの位置(以下、第1被係止位置、この例ではストッパ部14Aの上面)から、ダンパー55Aが第2のダンパー位置に配置されているときの位置(以下、第2被係止位置、この例ではストッパ部14Aの下面)に案内する機構である。ガイド機構Mにより、スライドカバー11Aが開位置から閉位置に移動するときに、ダンパー55Aは第2のダンパー位置に配置される。上述したように、ダンパー55Aによる作用は、第2のダンパー位置よりも第1のダンパー位置で大きく働く。そのため、ダンパー55Aが第2のダンパー位置に配置されることにより、ユーザは比較的小さな力でスライドカバー11Aを閉じることができる。
【0071】
図15に示すように、スライドカバー11Aは、スライドカバー11Aの移動方向に延びるストッパ部14Aを有している。ストッパ部14Aは、スライドカバー11Aが開位置に近い位置にあるときに被係止部55gが当る部分に、弾性アーム14bを有している。弾性アーム14bはガイド機構Mを構成している。弾性アーム14bは、第1被係止位置に配置されている被係止部55gによって押されて第2被係止位置に向けて弾性変形する。この例では、弾性アーム14bの上面は、ストッパ部14Aの端部14dに向けて高くなるように傾斜し、また、弾性アーム14bは下方に弾性変形可能となっている。そのため、ダンパー55Aの被係止部55gがストッパ部14Aの上面に配置されているとき、すなわち、ダンパー55Aが第1のダンパー位置に配置されているとき、弾性アーム14bは被係止部55gによって第2被係止位置に向けて押し下げられる。すなわち、弾性アーム14bは、
図16(a)及び(c)に示すD7の方向に弾性変形する。
【0072】
また、弾性アーム14bの下面は、ストッパ部14Aの端部14dにむけて上昇するように傾斜している。そのため、スライドカバー11Aが開位置に達し、被係止部55gがストッパ部14Aの端部14dの位置を越えたとき、それまで被係止部55gによって押し下げられていた弾性アーム14bは上方に復帰し、被係止部55gは弾性アーム14bの下面側に位置することとなる(
図17(a)及び(c)参照)。その結果、
図17(a)に示すように、ダンパー55Aは第1のダンパー位置から離れる。すなわち、ダンパー55Aのギア部55bは最終ギア54のギア部54cから離れる。そして、スライドカバー11Aが開位置から閉位置に向けた移動を開始するとき、被係止部55gは弾性アーム14bの下面側に位置することとなる。すなわち、被係止部55gは第2被係止位置に位置し、ダンパー55Aは第2のダンパー位置に配置される。
【0073】
図15に示すように、この例のガイド機構Mはさらにガイド15を含んでいる。ガイド15は、ストッパ部14Aに対してストッパ部14Aの延伸方向に位置している。すなわち、ガイド15は、ストッパ部14に対してスライドカバー11の移動方向に位置している。
図17(c)に示すように、ガイド15は、ストッパ部14Aの端部14dを越えた被係止部55gに当接するガイド面15aを有している。ガイド面15aは第1被係止位置にある被係止部55gを第2被係止位置に案内するよう傾斜している。すなわち、ガイド面15aは被係止部55gを弾性アーム14bの下面側に案内するよう傾斜している。この例では、ガイド面15aは、弾性アーム14b寄りの端部から反対側の端部に向けて下がるように傾斜している。スライドカバー11Aが開位置に達し、被係止部55gがストッパ部14Aの端部14dを越えガイド面15aに当ると、被係止部55gはこのガイド面15aによって確実に弾性アーム14bの下面側に案内され得る。
【0074】
図16(c)に示すように、被係止部55gは、その上面に、被ガイド面55kを有している。被ガイド面55kはガイド15寄りの端部に向けて下がるように傾斜している。これにより、ガイド面15aによる被係止部55gのガイドがより円滑に行われ得る。
【0075】
なお、
図15から
図17に示すガイド機構Mは弾性アーム14bとガイド15とによって構成されているが、ガイド機構Mは必ずしも双方を備えていなくてもよい。例えば、弾性アーム14bを備えていない場合でも、ガイド15のガイド面15aをストッパ部14Aの下面側に湾曲させることにより、被係止部55gをストッパ部14Aの下面側に案内できる。また、ガイド15を備えていない場合でも、弾性アーム14bの下方への弾性変形量を増すことにより、被係止部55gを弾性アーム14bの下面側に案内できる。
【0076】
なお、本発明は以上説明した実施形態に限られず、種々の変更が可能である。
【0077】
例えば、回転部材31はスライドカバー11に設けられ、当接部12は上ハウジング20に形成されてもよい。この場合、操作部材5は、当接部12を回転部材31に対して相対移動させてもよい。
【0078】
また、ダンパー55,55Aはスライドカバー11に形成されたラック13に直接係合してもよい。また、ダンパー55は最終ギア54に替えて、他のギア、アイドルギア52,53に係合してもよい。また、ダンパー55は必ずしも駆動ギア51に係合しなくてもよい。