特許第5967811号(P5967811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967811
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】飛沫抑制具及びそれを収納する収納容器
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/00 20060101AFI20160728BHJP
   A47K 17/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   E03D9/00 F
   A47K17/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-142662(P2012-142662)
(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2014-5671(P2014-5671A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】512167460
【氏名又は名称】豊嶋 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 康司
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−008527(JP,A)
【文献】 特開2002−112919(JP,A)
【文献】 特開2004−097298(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3016225(JP,U)
【文献】 実公昭43−004774(JP,Y1)
【文献】 実開昭62−038872(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00−13/00
A47K 13/00−17/02
B65D 83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式便器の溜まり水に浮かべて小水及び溜まり水の飛沫を抑制する、水解性を有する不織布からなる飛沫抑制具であって、複数枚の花弁状部と、前記複数枚の花弁状部の中心下部に位置しこれらの複数枚の花弁状部の端部を束ねた結束部とを有することを特徴とする飛沫抑制具。
【請求項2】
前記複数枚の花弁状部が八重花状である請求項1記載の飛沫抑制具。
【請求項3】
前記不織布が、5g/m〜50g/mの範囲の坪量である請求項1又は2記載の飛沫抑制具。
【請求項4】
前記不織布が芳香剤及び消臭剤の少なくとも一方を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の飛沫抑制具。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の飛沫抑制具を複数個収納する収納容器であって、容器本体と、容器本体に対して着脱自在のカートリッジとを有し、
前記容器本体は、前記カートリッジを着脱するための開口と、飛沫抑制具を取り出すための取り出し口とを有し、
前記カートリッジは、複数個の前記飛沫抑制具、結束部が同軸上に位置するように積み重ね収納可能であり
前記飛沫抑制具は、前記取り出し口から突出した結束部を持って取り出し可能であることを特徴とする収納容器。
【請求項6】
前記取り出し口の内周面に、ゴム部材が取り付けられている請求項5記載の収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器において小便をする際の小水及び溜まり水の飛沫を抑制する飛沫抑制具及びそれを収納する収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水洗洋式便器の洗浄方式は、吐出された水勢のみで汚物を排出する洗い落とし式と、屈曲した排水路により管内を満水させ、サイホン作用を起こさせることによって汚物を吸引して排出するサイホン式とに大別される。どちらの方式でも、量の違いはあるが、便器には封水が溜まるようになっている。
【0003】
男性が小便をする場合には、通常、洋式便器の便座を持ち上げた状態で用を足す。このとき、便器に溜まっている水や小便の飛沫が生じ、男性本人や便器蓋裏、便座裏にかかったり、便器の周囲に飛散する。特に、封水量の多いサイホン式の便器では放尿時の飛沫が清掃面や衛生面などの点で大きな課題とされていた。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、表面に突起や毛羽立ちを形成したペーパーを洋式便器の水面に浮かべて小水等の飛沫を防止する技術が提案されている。また、特許文献2では、便座を持ち上げたときに便器の左右を囲うように飛散軽減板を設ける技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-131030号公報
【特許文献2】実登3148227号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に提案の技術では、用を足している間ペーパーを浮いた状態にしておくには、ペーパーを軽く(薄く)しておく必要があるが、ペーパーを軽くすると、放尿によってペーパーが破れ所期の効果が得られないおそれがある。また、特許文献2に提案の技術では、便器の構造が複雑となり便器が大型化するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、便器の構造を複雑化・大型化させることなく、放尿の際の小水等の飛沫を確実に抑制できる飛沫抑制具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、洋式便器の溜まり水に浮かべて小水及び溜まり水の飛沫を抑制する、水解性を有する不織布からなる飛沫抑制具であって、複数枚の花弁状部と、前記複数枚の花弁状部の中心下部に位置しこれらの複数枚の花弁状部の端部を束ねた結束部とを有することを特徴とする飛沫抑制具が提供される。なお、1枚の不織布から作製した飛沫抑制具であっても、最終形態として複数枚の花弁状部が形成されているものは、本発明に係る飛沫抑制具に含まれる。
【0009】
ここで、放尿時の小水等の飛沫発生を一層抑える観点からは、前記複数枚の花弁状部は八重花状であるのが好ましい。
【0010】
また、放尿の間、飛沫抑制具を溜まり水に浮かんだ状態としておく観点からは、前記不織布は、5g/m〜50g/mの範囲の坪量であるのが好ましい。
【0011】
そしてまた、前記不織布は、芳香剤及び消臭剤の少なくとも一方を含有していてもよい。
【0012】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載の飛沫抑制具を複数個収納する収納容器であって、容器本体と、容器本体に対して着脱自在のカートリッジとを有し、前記容器本体は、前記カートリッジを着脱するための開口と、飛沫抑制具を取り出すための取り出し口とを有し、前記カートリッジは、複数個の前記飛沫抑制具、結束部が同軸上に位置するように積み重ね収納可能であり前記飛沫抑制具は、前記取り出し口から突出した結束部を持って取り出し可能であることを特徴とする収納容器が提供される。
【0013】
ここで、飛沫抑制具が1個ずつ確実に取り出されるようにする観点からは、前記取り出し口の内周面にゴム部材を取り付けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の飛沫抑制具によれば、便器の構造を複雑化・大型化させることなく、放尿の際の小水等の飛沫を確実に抑制できる。
【0015】
また本発明の収納容器によれば、本発明の飛沫抑制具を複数個効率的に収納することができ、また1個づつ簡単に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る飛沫抑制具の一例を示す斜視図である。
図2図1の飛沫抑制具を作製する工程図である。
図3図1の飛沫抑制具を作製する工程図である。
図4】サイホン式の洋式便器に飛沫抑制具を投下したときの状態図である。
図5】洗い落とし式の洋式便器に飛沫抑制具を投下したときの状態図である。
図6】本発明に係る収納容器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る飛沫抑制具について図に基づいてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0018】
図1に、本発明に係る飛沫抑制具の一例を示す斜視図を示す。図1に示す飛沫抑制具1は、八重花状に重なり合った複数枚の花弁状部11と、これらの花弁状部11の端部を束ねた結束部12とを有する。この飛沫抑制具1は、例えば、次のようにして作製される。図2及び図3に、飛沫抑制具1の作製工程図を示す。
【0019】
まず、水解性を有する四角形状の不織布10を複数枚重ね合わせる(図2(a))。重ね合わせる不織布10の枚数に制限はなく、不織布10の坪量等を考慮して適宜決定すればよい。通常、4枚重ねから10枚重ねの範囲が好ましい。なお、前述のように、最終形態として複数枚の花弁状部11が形成されれば不織布10は1枚であっても構わない。また、不織布10の大きさ及び形状に特に限定はなく、飛沫抑制具1を投入する便器の大きさを考慮して適宜決定すればよい。通常、不織布10は、一辺の長さが8cm〜25cmの範囲の四角形状のものが好ましい。
【0020】
ここで使用する水解性を有する不織布10は、水中に投じた際、不織布10を構成する繊維が水中に分散されるものであれば特に制限はなく、従来公知のものが使用できる。不織布10の坪量に特に限定はないが、通常、5g/m〜50g/mの範囲が好ましい。不織布10の坪量が5g/m未満であると、強度が低下し放尿中に破れ易くなる一方、坪量が50g/mを超えると、不織布10の水解性が低下し、便器からの流れ出しが悪くなりやすい。
【0021】
不織布10には、芳香剤及び消臭剤の少なくとも一方を含有させてもよい。その他、必要により抗菌剤や殺菌剤、汚れ防止剤など従来公知の添加剤を含有させても構わない。
【0022】
次に、重ね合わせた不織布10を所定間隔で山折りと谷折りを繰り返し、蛇腹状に折り曲げる(図2(b))。山折りと谷折りの間隔に特に限定はないが、通常、小水等の飛散を抑制する観点からは、10mm間隔〜20mm間隔程度が好適である。
【0023】
そして、蛇腹状に折り曲げた不織布の稜線方向中央部を押圧して圧縮部13を形成する(図2(c))。そして、圧縮部13の長手方向中央で、不織布10を二つ折りにし、次いで、二つ折りにした圧縮部13に、水解性を有する帯状の不織布14を巻き付けて結束部12を形成する(図2(d))。なお、帯状の不織布14を巻き付けることなく、二つ折りにした圧縮部同士を接着剤で貼り合わせて結束部12としてももちろん構わない。
【0024】
次いで、二つ折りした不織布10の両端の蛇腹状の部分をそれぞれ約90度ねじるとともに、重ね合った蛇腹状の不織布10をそれぞれ離れるように外方に広げる(図3(e))。そして、不織布10の端部を八重花状にし、本発明の飛沫抑制具1とする(図3(f))。八重花状にした飛沫抑制具1の最大直径は、便器の溜まり水の水面の大半を覆う長さであればよく、通常、10cm〜15cm程度にするのが好ましい。
【0025】
以上説明した実施形態では、複数枚の四角形の不織布10を重ね合わせて蛇腹状に折った後、二つ折りにし両端部を広げて本発明の飛沫抑制具としたが、例えば、花弁状部11を構成する複数枚の不織布を用意し、これらの一方端を束ねて帯状部材や接着剤など固定し、他方端を外方に広げて八重花状にして本発明の飛沫抑制具としてもよい。
【0026】
本発明に係る飛沫抑制具の使用例について説明する。男性が便器の前に立った状態で手の届く位置に、本発明の飛沫抑制具が複数個収納された収納容器を設置しておく。収納用については後述する。男性が用を足す前に、収納容器から飛沫抑制具を取り出し、必要により花弁状部11を外方に広げた後、結束部12が下になるようにして便器の溜まり水に投下する。
【0027】
図4に、溜まり水の多いサイホン式の洋式便器に飛沫抑制具1を投下した場合の状態図を示す。この図から理解されるように、花弁状部11よりも比重の大きい結束部12は水面下に沈み、花弁状部11が水面に浮かんだ状態となる。そして、飛沫抑制具1の花弁状部11に向けて放尿される。放出された小水は、飛沫抑制具1の花弁状部11によってその勢いが弱められ、小水および溜まり水Wの飛沫の発生が効果的に抑制される。また、花弁状部11は複数枚が重なっているため、小水によって一部が破れても他の花弁状部11によって溜まり水Wの波立ちや飛沫は抑制される。また、花弁状部11の中心下部に位置する結束部12が錘の役割を果たすため、花弁状部11に小水が当たっても飛沫抑制具1が大きく移動することはない。小水による飛沫抑制具1の移動を一層抑えるために、結束部12を上下方向に長くしたり、花弁状部11の直径を大きくして、飛沫抑制具1の一部が便器の内周壁に接触するようにしてもよい。
【0028】
放尿後、溜まり水Wを流すと、飛沫抑制具1は溜まり水Wと一緒に流し出される。本発明の飛沫抑制具1は水解性を有するので、溜まり水Wと一緒に流出する際に繊維に分解し配水管等に詰まることはない。
【0029】
図5に、洗い落とし式の洋式便器に飛沫抑制具を投下した場合の図を示す。洗い落とし式の洋式便器は、前記のサイホン式の洋式便器よりも溜まり水Wの量が少ないので、飛沫抑制具1の最大径を小さくして、すなわち花弁状部11を外方に広げる量を小さくする、あるいは内方にすぼめるようにして使用するのが望ましい。放尿後は、便鉢に吐出される水によって飛沫抑制具1は流し出され、流出する際に繊維に分解する。その他の使用方法及び効果は、前述のサイホン式の洋式便器の場合と同じである。
【0030】
図6に、本発明に係る飛沫抑制具を収納する容器の一例を示す。図6の収納容器3は、筒状の容器本体4と、容器本体4に対して着脱自在の筒状のカートリッジ5とを有する。図6(a)に示すように、容器本体4の上面には、カートリッジ5を着脱するための開口41が形成され、底面には飛沫抑制具1を引っ張り出すための取り出し口42が形成されている。そして、取り出し口42の内周面には、ゴム部材43が取り付けられている。一方、カートリッジ5内には、複数個の飛沫抑制具1が積み重なった状態で収納され、最も下の飛沫抑制具1の結束部12がカートリッジ5の先端開口51から突出した状態となっている。
【0031】
図6(b)に示すように、カートリッジ5を容器本体4に装着すると、カートリッジ5の先端開口51から突出した最も下の飛沫抑制具1の結束部12は、容器本体4の取り出し口42からも突出した状態となる。収納容器3から飛沫抑制具1を取り出す場合には、取り出し口42から突出した結束部12を持って飛沫抑制具1を引っ張り出す。このとき、容器本体4の取り出し口42に設けられたゴム部材43によって、最も下の飛沫抑制具1だけが引き出され、複数個の飛沫抑制具1が収納容器3から一度に引き出されるのが防止される。カートリッジ5内に飛沫抑制具1がなくなると、カートリッジ5を容器本体4から取り出し、新しいカートリッジ5と交換する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の飛沫抑制具によれば、便器の構造を複雑化・大型化させることなく、放尿の際の小水等の飛沫を確実に抑制でき有用である。
【符号の説明】
【0033】
1 飛沫抑制具
3 収納容器
4 容器本体
5 カートリッジ
W 溜まり水
10 不織布
11 花弁状部
12 結束部
41 開口
42 取り出し口
43 ゴム部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6