(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967823
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】可変指向性コンデンサマイクロホン
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20160728BHJP
H04R 19/04 20060101ALI20160728BHJP
H04R 1/32 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H04R3/00 320
H04R19/04
H04R1/32 320
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-234675(P2012-234675)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-86895(P2014-86895A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】吉野 智
【審査官】
冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−103637(JP,A)
【文献】
実開昭59−057089(JP,U)
【文献】
特開2005−328345(JP,A)
【文献】
実開昭50−075633(JP,U)
【文献】
特開2012−065147(JP,A)
【文献】
米国特許第04414433(US,A)
【文献】
実開昭55−165575(JP,U)
【文献】
実公昭46−031270(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 1/32
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定極を挟んで両面に第1の振動板および第2の振動板が配置されることにより、二つのマイクロホンユニットが備えられ、前記一方のマイクロホンユニットに加える成極電圧に対して他方のマイクロホンユニットに加える成極電圧を変化させることで、指向性を可変させる可変指向性コンデンサマイクロホンであって、
マイクロホン本体には、前記固定極に得られる音声信号をインピーダンス変換する真空管と、前記真空管によりインピーダンス変換された音声信号が、平衡出力されるホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を備えたコネクタとが具備され、
外部電源供給回路から前記いずれかのマイクロホンユニットに加える成極電圧の供給手段として、前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を往路導体にすると共に、前記コネクタに配置されたマイクロホン本体のグランドコネクタ端子を帰路導体にしたことたことを特徴とする可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項2】
前記成極電圧の供給手段になされる往路導体としての前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子には、等しく分割された供給電流を流すように構成されていることを特徴とする請求項1に記載された可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項3】
前記第1の振動板と固定極との間に供給される成極電圧が固定電圧になされると共に、前記第2の振動板と固定極との間に供給される成極電圧が可変電圧になされ、
前記第2の振動板と固定極との間に供給される可変電圧による成極電圧が、前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子およびグランドコネクタ端子を利用して供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項4】
前記真空管によりインピーダンス変換された音声信号が、トランスを介して前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子に平衡出力されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項5】
前記外部電源供給回路より前記マイクロホンユニットに加える成極電圧が、前記トランスの二次側巻線に形成されたセンタータップを介して供給されることを特徴とする請求項4に記載された可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項6】
前記トランスの二次側巻線に形成されたセンタータップと、前記マイクロホンユニットとの間に抵抗素子が挿入されていることを特徴とする請求項5に記載された可変指向性コンデンサマイクロホン。
【請求項7】
前記第1の振動板と固定極との間に供給される固定電圧による成極電圧が、前記真空管のプレート電圧として利用されていることを特徴とする請求項3に記載された可変指向性コンデンサマイクロホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固定極を中央にしてその前後に背中合わせに2つのコンデンサ型マイクロホンユニットを備えた可変指向性コンデンサマイクロホンに関し、特にインピーダンス変換器として真空管を用いた可変指向性コンデンサマイクロホンに関する。
【背景技術】
【0002】
指向性を可変できるマイクロホンとして、固定極を中央にして背中合わせに2つのコンデンサ型マイクロホンユニットを備えたものが知られている。
この場合、前記2つのマイクロホンユニットはそれぞれカージオイドの指向特性を有し、各ユニットに加える成極電圧を加減することによって、もしくは各ユニットの音声出力信号の加算度合いを制御することで可変指向性を実現しており、これは特許文献1および特許文献2などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−143595号公報
【特許文献2】特開2012−65147号公報
【0004】
一方、コンデンサ型マイクロホンユニットは、出力インピーダンスが極めて高いために、インピーダンス変換器としてFET(電界効果トランジスタ)や、真空管が用いられる。インピーダンス変換器として後者の真空管を用いる場合には、通常においては専用電源を用意する必要がある。
すなわち、前記真空管を動作させるには、真空管のヒータを加熱するための通称A電源と呼ばれるものと、真空管のプレートに高電圧を供給するための通称B電源と呼ばれるものが必要とされる。
【0005】
一般的に、インピーダンス変換器として利用される真空管においては、前記A電源に6.3V、前記B電源に120V程度の直流電源が必要である。このためにインピーダンス変換器として前記したFETを利用する場合に多用される直流48Vのファントム(Phantom)電源は、前記真空管を駆動させる電力を賄うことができないことから、真空管専用の外部電源が用いられる。
【0006】
図2は、従来の回路構成図の一例を示したものであり、これにはインピーダンス変換器として真空管が用いられており、外部電源回路から前記真空管等に対して駆動電源が供給されるように構成されている。
【0007】
図2において、マイクロホン本体1には符号2で示したコネクタを介して、破線で囲まれた外部電源回路3が接続されており、またコネクタ2におけるそれぞれ丸で囲まれた端子番号1,2,3が、平衡シールドケーブルを介して、図示せぬミキサーアンプ等に接続され、音声信号として出力される。
すなわち、コネクタ2の端子番号1が、マイクロホン本体1のグランド(GND)コネクタ端子であり、端子番号2が音声信号のホット(HOT)側コネクタ端子、端子番号3が音声信号のコールド(COLD)側コネクタ端子となる。
【0008】
また、符号MCはコンデンサ型マイクロホンユニットを示しており、このマイクロホンユニットMCは、固定極BPを中央にして、その前側および後側に前面振動板FD(第1の振動板ともいう。)および背面振動板RD(第2の振動板ともいう。)が配置されている。すなわち、固定極BPと前面振動板FDとにより第1のマイクロホンユニットを構成しており、固定極BPと背面振動板RDとにより第2のマイクロホンユニットを構成している。そして、前記第1と第2のマイクロホンユニットはそれぞれカージオイドの指向特性を有している。
【0009】
前記した中央の固定極BPは、抵抗素子R1を介してマイクロホン本体1の基準電位点、すなわちコネクタ2のグランド(GND)コネクタ端子(端子番号1)に接続されている。また第1のマイクロホンユニットを構成する前面振動板FDには、コネクタ2の端子番号5を介して外部電源回路3から一定の成極電圧、例えば直流120Vが印加されている。 さらに、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDには、コネクタ2の端子番号6を介して外部電源回路3から正負の可変直流電圧が供給されるように構成されている。
【0010】
前記した外部電源回路3には、一端が前記基準電位点にそれぞれ接続された正負の直流電源E1,E2が備えられ、直流電源E1の正極端子と直流電源E2の負極端子の間にポテンションメータVRの両端が接続されている。そして、ポテンションメータVRの摺動端子が、前記したコネクタ2の端子番号6に接続されている。
前記した正負の直流電源E1,E2は、共に120Vに設定されており、この結果、ポテンションメータVRの摺動端子の操作により、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDには、+120Vから−120Vの範囲で可変される成極電圧を印加することができる。
【0011】
一方、前記したマイクロホンユニットMCを構成する固定極BPは、真空管(三極管)Q1のグリッドに接続されており、また真空管Q1のプレートには、プレート抵抗R2を介して前記した前面振動板FDに成極電圧として供給される120Vが印加されている。
また、前記真空管Q1のカソードと基準電位点との間には、カソード抵抗R3およびコンデンサ素子C1が並列接続されてカソードバイアス回路を構成しており、これにより前記した抵抗素子R1を介して真空管Q1のグリッドに、負バイアスが印加されるように構成されている。
【0012】
前記真空管Q1のプレートには、カップリングコンデンサC2を介してトランスT1の一次側巻線の一端部が接続されており、この一次側巻線の他端部は基準電位点に接続されている。また、前記トランスT1の二次側巻線の各端部は、コネクタ2の端子番号2および3にそれぞれ接続され、前記端子番号2および3を介して、マイクロホン本体1からの音声信号として、前記したミキサーアンプ等に平衡出力される。
なお、
図2に示すように真空管Q1のヒータH1には、コネクタ2の端子番号4を介してA電源(6.3V)が外部電源回路3より供給されるように構成されている。
【0013】
図2に示した構成において、第1のマイクロホンユニットを構成する前面振動板FDには、前記したとおり120Vの成極電圧が常時印加されている。また第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDには、外部電源回路3に備えられたポテンションメータVRを調整することにより、+120Vから−120Vの範囲の任意の成極電圧を印加することができる。
【0014】
したがって、外部電源回路3に備えられたポテンションメータVRを調整して、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDに、例えば+120Vを加えた場合には、第1のマイクロホンユニットの出力に、第2のマイクロホンユニットの出力が同相で加算された指向特性、すなわち無指向の特性を得ることができる。
【0015】
また、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDに加える成極電圧が0Vの場合には、第2のマイクロホンユニットからの出力は発生しない状態となる。これにより、第1のマイクロホンユニットのみの出力、すなわちカージオイドの指向特性を得ることができる。
さらに、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDに加える成極電圧が−120Vの場合には、第1のマイクロホンユニットの出力から、第2のマイクロホンユニットの出力を減算した指向特性、すなわち双指向特性を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、
図2に示した可変指向性コンデンサマイクロホンによると、マイクロホン本体1のコネクタ2を介して、外部電源回路3から前記真空管Q1に対してA電源およびB電源が供給されると共に、マイクロホンユニットMCの各振動板FD,RDに対する成極電圧も供給される。なお、
図2に示す回路構成においては、真空管Q1のプレートに加える前記したB電源を、前面振動板FDに加える成極電圧に兼用した構成が採用されているものの、背面振動板RDに加える成極電圧も、前記コネクタ2に備えたいずれかの端子、すなわち
図2においては端子番号6を介して供給する必要がある。
【0017】
このために、真空管をインピーダンス変換手段に利用するこの種のコンデンサマイクロホンによると、マイクロホン本体1側に備えるコネクタ2と外部電源回路3との間における接続配線数が多く、前記したコネクタに備える端子数の増大および外部電源回路側との接続配線数の増大が動作の信頼性を低下させる要因にもなる。
したがって、前記したコネクタにおいて利用される端子数の削減および外部電源回路側との間の接続配線の簡素化を図ることは技術的に重要な課題であり、この発明は前記課題を解決することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホンは、固定極を挟んで両面に第1の振動板および第2の振動板が配置されることにより、二つのマイクロホンユニットが備えられ、前記一方のマイクロホンユニットに加える成極電圧に対して他方のマイクロホンユニットに加える成極電圧を変化させることで、指向性を可変させる可変指向性コンデンサマイクロホンであって、マイクロホン本体には、前記固定極に得られる音声信号をインピーダンス変換する真空管と、前記真空管によりインピーダンス変換された音声信号が、平衡出力されるホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を備えたコネクタとが具備され、外部電源供給回路から前記いずれかのマイクロホンユニットに加える成極電圧の供給手段として、前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を往路導体にすると共に、前記コネクタに配置されたマイクロホン本体のグランドコネクタ端子を帰路導体にしたことたことを特徴とする。
【0019】
この場合、前記成極電圧の供給手段になされる往路導体としての前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子には、等しく分割された供給電流を流すように構成されていることが望ましい。
【0020】
また、一つの好ましい形態においては、前記第1の振動板と固定極との間に供給される成極電圧が固定電圧になされると共に、前記第2の振動板と固定極との間に供給される成極電圧が可変電圧になされ、前記第2の振動板と固定極との間に供給される可変電圧による成極電圧が、前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子およびグランドコネクタ端子を利用して供給するように構成される。
加えて好ましくは、前記第1の振動板と固定極との間に供給される固定電圧による成極電圧を、前記真空管のプレート電圧として利用した構成にされる。
【0021】
さらに、前記真空管によりインピーダンス変換された音声信号が、トランスを介して前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子に平衡出力される構成も好適に採用することができる。
この場合、前記外部電源供給回路より前記マイクロホンユニットに加える成極電圧が、前記トランスの二次側巻線に形成されたセンタータップを介して供給する構成にすることが望ましく、さらに前記トランスの二次側巻線に形成されたセンタータップと、前記マイクロホンユニットとの間には抵抗素子が挿入されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る前記した可変指向性コンデンサマイクロホンによると、真空管によりインピーダンス変換された音声信号が、ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を利用して平衡出力するように構成すると共に、外部電源供給回路から供給される一方のマイクロホンユニットに加える成極電圧の往路導体として、前記ホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を利用するように構成したので、マイクロホン本体と外部電源供給回路との接続構成を簡素化させることが可能となる。
【0023】
加えて外部電源供給回路から供給される他方の成極電圧を、前記真空管に供給するプレート電圧と共用する構成にしたことで、マイクロホン本体と外部電源供給回路との接続構成をより簡素化させることに寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホンの回路構成図である。
【
図2】従来における可変指向性コンデンサマイクロホンの一例を示した回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホンについて、
図1に示す実施の形態に基づいて説明する。
なお以下に説明する
図1においては、すでに説明した
図2に示した各部と同一の機能を果たす部分を同一符号で示している。したがって、その詳細な説明は適宜省略する。
【0026】
図1に示されているように、この発明に係る可変指向性コンデンサマイクロホンにおいても、マイクロホン本体1に備えられた符号2で示すコネクタを介して、破線で囲まれた外部電源回路3が接続された構成が採用されている。またコネクタ2におけるそれぞれ丸で囲まれた端子番号1,2,3が、平衡シールドケーブルを介して、図示せぬミキサーアンプ等に接続されて、音声信号として出力される。
すなわち、コネクタ2の端子番号1が、マイクロホン本体1のグランド(GND)コネクタ端子であり、端子番号2が音声信号のホット(HOT)側コネクタ端子、端子番号3が音声信号のコールド(COLD)側コネクタ端子となる。
【0027】
また、コンデンサ型マイクロホンユニットMCについても、固定極BPを中央にして、その前側および後側に前面振動板FD(第1の振動板)および背面振動板RD(第2の振動板)が配置されている。すなわち、固定極BPと前面振動板FDとにより第1のマイクロホンユニットを構成しており、固定極BPと背面振動板RDとにより第2のマイクロホンユニットを構成している。そして、前記第1と第2のマイクロホンユニットはそれぞれカージオイドの指向特性を有している。
【0028】
前記したマイクロホンユニットMCにおける中央の固定極BPは、抵抗素子R1を介してマイクロホン本体1の基準電位点、すなわちコネクタ2のグランド(GND)コネクタ端子に接続されている。また第1のマイクロホンユニットを構成する前面振動板FDには、コネクタ2の端子番号5を介して外部電源回路3から一定の成極電圧、例えば直流120Vが印加されており、この直流120Vが、抵抗素子R2を介して真空管Q1のプレート電圧として印加されている。
【0029】
さらに、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDには、トランスT1の二次側巻線に形成されたセンタータップCtより、数十MΩ程度の抵抗値を有する抵抗素子R4を介して、成極電圧が印加されるように構成されている。
この第2のマイクロホンユニットの背面振動板RDに加える成極電圧は、前記したとおり外部電源回路3において生成される。
【0030】
すなわち、外部電源回路3には一端が基準電位点(コネクタ2の端子番号1)にそれぞれ接続された正負の直流電源E1,E2が備えられ、一方の直流電源E1の正極端子と他方の直流電源E2の負極端子の間にポテンションメータVRの両端が接続されている。
そして、前記ポテンションメータVRの摺動端子が、ほぼ同一の抵抗値を有する抵抗素子R5,R6をそれぞれ介して、前記したコネクタ2の端子番号2および3に供給されるように構成されている。
【0031】
前記した正負の直流電源E1,E2は、共に120Vに設定されており、この結果、ポテンションメータVRの摺動端子の操作により、+120Vから−120Vの範囲で可変される直流電圧が、コネクタ2の端子番号2および3に供給される。
この可変直流電圧は、前記したトランスT1の二次側巻線に形成されたセンタータップCtを介して、前記第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDに成極電圧として供給される。
【0032】
したがって、前記外部電源回路3に備えられたポテンションメータVRを調整することにより、マイクロホン本体1の指向特性を、すでに説明したとおり無指向性、ワイドカージオイド特性、カージオイド特性、ハイパーカージオイド特性、双指向性などの各特性を選択することができる。
【0033】
前記トランスT1は、
図2に基づいてすでに説明したとおり、その一次側巻線の一端部がカップリングコンデンサC2を介して前記真空管Q1のプレートに接続され、一次側巻線の他端部は基準電位点に接続されている。
したがって、前記マイクロホンユニットMCの固定極BPに生成される音声信号は、真空管Q1によりインピーダンス変換されて、前記トランスT1の二次側巻線を介して、前記したコネクタ2の端子番号2および3にそれぞれ供給され、音声信号として平衡出力されることは、すでに説明した
図2に示した構成と同様である。
【0034】
なお、前記トランスT1の二次側巻線におけるセンタータップCtと、第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDとの間に挿入された比較的高抵抗の抵抗素子R4は、背面振動板RDとトランスT1の二次側巻線に接続される信号線との間で、交流的な影響が生ずるのを阻止するように作用する。
【0035】
図1に示した実施の形態においては、トランスT1の二次側巻線の各端部を音声信号の平衡出力端子、すなわちホット側コネクタ端子(端子番号2)およびコールド側コネクタ端子(端子番号3)にすると共に、このホット側コネクタ端子とコールド側コネクタ端子を、前記した第2のマイクロホンユニットを構成する背面振動板RDに成極電圧を加える手段に利用している。
【0036】
すなわち、外部電源回路3におけるポテンションメータVRよりもたらされる成極電圧は、ほぼ同一の抵抗値を有する抵抗素子R5,R6をそれぞれ介して、前記したコネクタ2の端子番号2および3に供給され、前記トランスの二次側巻線のセンタータップCtから第2のマイクロホンユニットの背面振動板RDに対して成極電圧として加えるようになされる。
【0037】
したがって、第2のマイクロホンユニットへの成極電圧の供給経路は、前記したホット側コネクタ端子(端子番号2)とコールド側コネクタ端子(端子番号3)に等しく分割されて供給電流が流れる往路導体を構成し、前記コネクタ2に配置されたマイクロホン本体1のグランドコネクタ端子(端子番号1)が帰路導体になされる。
【0038】
これは、いわゆるファントム電源をコンデンサマイクロホンの成極電圧の供給手段に利用したものとなり、真空管をインピーダンス変換器として利用するこの種の可変指向性コンデンサマイクロホンにおいて、マイクロホン本体1と外部電源回路3との間における接続配線数を削減することに効果的に寄与することができる。
【0039】
加えて、前記した実施の形態においては、外部電源回路3から供給される他の1つの成極電圧についても、真空管に加えるプレート電圧と兼用した構成が採用されており、この構成を採用することによってもマイクロホン本体と外部電源回路との間における接続配線数をさらに削減することに寄与できる。これにより、前記した発明の効果の欄に記載したとおりの作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0040】
1 マイクロホン本体
2 コネクタ
3 外部電源回路
BP 固定極
C1,C2 コンデンサ素子
Ct センタータップ
E1,E2 直流電源
FD 前面振動板
H1 ヒータ
MC マイクロホンユニット
Q1 真空管
RD 背面振動板
R1〜R6 抵抗素子
T1 トランス
VR ポテンションメータ