特許第5967846号(P5967846)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967846木材における揮発性有機化合物の放散を減少させるための変性ナノ粒子の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967846
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】木材における揮発性有機化合物の放散を減少させるための変性ナノ粒子の使用
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/50 20060101AFI20160728BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20160728BHJP
   B27N 3/02 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B27K3/50 Z
   C08J5/00CEP
   B27N3/02 B
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-551562(P2014-551562)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-504796(P2015-504796A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2012076578
(87)【国際公開番号】WO2013107599
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年11月14日
(31)【優先権主張番号】12151240.4
(32)【優先日】2012年1月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501206633
【氏名又は名称】スイス・クロノ・テック・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】SWISS KRONO Tec AG
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(72)【発明者】
【氏名】ギール・アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ボローカ・ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ハッシュ・ヨアヒム
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−504403(JP,A)
【文献】 特表2011−506122(JP,A)
【文献】 特開2010−064306(JP,A)
【文献】 特開昭51−136803(JP,A)
【文献】 特表2001−507085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00 − 9/00
C08J 5/00
B27N 1/00 − 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質パネルにおいて、揮発性有機化合物(VOC)の放散を減少させるために使用される変性ナノ粒子であって、
前記変性ナノ粒子は、下記の一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物によって修飾されたナノ粒子。
SiX(4−a) (I)
[式中、
−Xは、H、OH、あるいは加水分解性部位であり、前記加水分解性部位は、ハロゲン基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、およびアルキルカルボニル基からなる群から選択され、
−Rは、非加水分解性有機部位Rであり、前記非加水分解性有機部位は、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、および置換または非置換のシクロアルケニル基からなる群から選択され、任意で、この非加水分解性有機部位R中に−O−又は−NH−が介在していてもよく、
前記Rは、エポキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、置換または非置換のアニリン基、アミド基、カルボキシ基、アルキニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、シアノ基、アルコキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、酸無水物基、およびリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基Qを有しており、
−aは、1、2または3である。]
【請求項2】
請求項1に記載の変性ナノ粒子において、前記Xが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C〜Cアルコキシ基、C〜C10アリールオキシ基、C〜Cアシルオキシ基、C〜Cアルキルカルボニル基、モノC〜C12アルキルアミノ基、およびジC〜C12アルキルアミノ基からなる群から選択されることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の変性ナノ粒子において、前記Rが、置換または非置換のC〜C30アルキル基、置換または非置換のC〜Cアルケニル基、置換または非置換のC〜Cシクロアルキル基、および置換または非置換のC〜Cシクロアルケニル基からなる群から選択されることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、前記Rが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチルエニル基、プロパルギル基、置換または非置換のブタジエニル基、および置換または非置換のシクロヘキサジエニル基からなる群から選択されることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、前記官能基Qが、アミノ基、モノアルキルアミノ基、アリール基、ヒドロキシ基、アクリル基、アクリルオキシ基、メタクリル基、メタクリルオキシ基、エポキシ基、およびイソシアノ基、のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、前記官能基Qが、アミノ基、ヒドロキシ基、およびフェニル基のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、前記ナノ粒子の粒径が、2〜400nmであることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、前記ナノ粒子の比表面積が、50〜500m/gであることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、前記ナノ粒子は、酸化物ナノ粒子、水酸化物ナノ粒子またはオキシ水酸化物ナノ粒子であることを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、木質パネルに用いられる木削片から放出されるアルデヒド類のレベルを減少させるために、前記変性ナノ粒子を使用することを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子において、木質パネルに用いられた木削片から放出されるテルペン類のレベルを減少させるために、前記変性ナノ粒子を使用することを特徴とする、変性ナノ粒子。
【請求項12】
揮発性有機化合物(VOC)の放散が減少した木質パネルを製造する方法であって:
a)適切な木から木質チップを製作する工程と、
b)前記木質チップを木削片に変換する工程と、
c)前記木削片を中間貯蔵する工程と、
d)前記木削片を乾燥させる工程と、
e)前記木削片を、その大きさに応じて分別または選別する工程と、
f)必要に応じて、さらに、前記木削片を破砕する工程と、
g)前記木削片を、風力選別および/または落下選別を介して搬送ベルト上に配することにより、材料が散りばめられたマット状体を形成する工程と、
h)前記搬送ベルト上に配置された前記木削片を加圧する工程と、
を含む、木質パネルの製造方法において、
請求項1から11のいずれか一項に記載の変性ナノ粒子を含む少なくとも1つの懸濁液を、前記工程b)〜h)のうちの1つの工程前および/または工程中および/または工程後に添加し、前記懸濁液が、変性ナノ粒子を20重量%以上含有するナノ粒子含有水溶液の形態である、木質パネルの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の木質パネルの製造方法において、前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、少なくとも1種のグルーと予め混ぜあわせるか;前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、前記グルーと同時に前記木削片に適用するか;前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、前記木削片に対して当該木削片が乾燥する前に吹き付けるか;または前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、木削片が散りばめられた前記マット状体に対して加圧前に吹き付けることを特徴とする、木質パネルの製造方法。
【請求項14】
請求項12または13に記載の木質パネルの製造方法において、変性ナノ粒子を40重量%以上含有する水溶液の形態の懸濁液を使用することを特徴とする、木質パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、変性ナノ粒子の使用に関し、請求項12に記載の、変性ナノ粒子を用いて木質パネル(wood based panel)を製造する方法に関し、請求項15に記載の、上記製造方法によって製造可能な木質パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、木質パネルは、リグノセルロースまたはリグノセルロースを含有する材料(例えば、木質繊維、木削片など)で構成される。リグノセルロースには、その成分としてセルロース、ヘミセルロースおよびリグニンが含まれる。セルロースは、グルコース単位によって構成された長鎖高分子である。ヘミセルロースは、ペントースによって構成された短鎖分岐高分子である。リグニンは、メトキシフェニルプロパン単位によって構成された三次元高分子である。セルロースとヘミセルロースとが細胞壁の構造物質を形成する。リグニンは細胞構造内部を満たす物質であり、木質化を引き起こす。
【0003】
木質パネルの製造過程では、特に、木削片の製作過程において、大量の揮発性有機化合物が生成又は放出される。直ぐに気化する揮発性有機物質や、低温で(例えば、室温で)既に気体として存在する揮発性有機物質は、VOCと称される揮発性有機化合物に分類される。
【0004】
より具体的には、高揮発性、または低温で既に気体として存在する化合物は、すべて高揮発性有機化合物に分類される。典型的に、上記VOCに分類される有機化合物の沸点は50〜260℃の範囲内である。ただし、VOCの定義は各国特有のものなので、各国間で異なる。
【0005】
このような木質パネルを建材に使用した場合、高揮発性有機化合物が屋内空間に放散されてしまい、健康に多大な影響を及ぼす。
【0006】
ドイツでは、建材健康評価委員会(AgBB)が、建物の屋内空間における揮発性有機化合物放散が与える健康評価を行っている。上記委員会が定めた基準によれば、揮発性有機化合物(VOC)とは保持範囲C〜C16の物質であり、低揮発性有機化合物(SVOC)とは保持範囲C16超〜C22の物質である。したがって高揮発性有機化合物(VOC)は、単独の物質が考慮される場合もあれば、複数の物質によるTVOC(総揮発性有機化合物)が考慮される場合もある。
【0007】
典型的に、建材のVOC放散は、試験チャンバーを用いて調べる。上記AgBBの基準によれば、建材のTVOC値は、3日後で10mg/m以下、28日後で1mg/m以下であるのが望ましいとされる(AgBBによる木質建材のVOC評価スキーム、2010年)。
【0008】
ドイツ環境庁も、同様のガイドラインを定めている。このガイドラインによると、300μg/m未満のVOC放散であれば、衛生的に無害である(Umweltbundesamt 2007, Bundesgesundheitsblatt 7, pages 999-1005)。
【0009】
木材加工産業では、高揮発性の有機アルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒド、ヘキサナールなど)や高揮発性のテルペン類への対策が特に重要である。
【0010】
以上に鑑みて、本発明は、アルデヒド類やテルペン類(特に、モノテルペン類)を減少させる技術に関する。アルデヒド(例えば、ヘキサナールなど)は、木の天然成分に由来するか、あるいは、天然油脂の酸化分解によって生成される。テルペン類は、木の天然成分である樹脂に含まれている。
【0011】
一般的に、揮発性有機化合物は、製品の製造工程において副生成物として生じるか、あるいは、製品を使用するにつれて徐々に周囲の空気に放出される。いずれの場合も、製造工程全体のコストの増加、木質繊維パネルを使用した際の悪臭などといった具体的な問題を生じる。
【0012】
揮発性有機化合物(VOC)は、木材中に既に存在しているか、加工時に放出されるか、あるいは、現在の知識によれば、木の分解生成物である不飽和脂肪酸がさらに分解されることで形成される。加工時に生じる典型的な変換生成物としては、例えば、ペンタナールやヘキサナールだけでなく、オクタナール、オクテナール、1−ヘプテナールなども挙げられる。特に、中密度ファイバーパネルやOSBパネル(構造用木質ボード)の製造に主に使用される針葉樹は、揮発性有機テルペン化合物やアルデヒド類の発生原因となる樹脂や油脂を大量に含有する。また、木材の製造時に特定のグルー(または接着剤)を使用した場合にも、VOCやアルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒドなど)が生じることがある。
【0013】
このような木に関連する放出のみによるVOC放散は、木の高揮発性成分(例えば、テルペン類など)や木の化学分解生成物(例えば、酢酸など)の一次放散と、例えば高級アルデヒド類(例えば、ペンタナールなど)や高級カルボン酸類などのいわゆる二次放散とに分類することができる。
【0014】
また、上記VOC放散は、木質パネル(例えば、OSBパネルなど)をどのように使用するのかによって、そして、当該木質パネルが空間中のどの程度を占めるのかによって、重大な問題となり得る。その他にも、上記VOC放散は、他種の断熱材(例えば、鉱物系断熱材など)に比べて環境に優しいとされる木質繊維断熱材の短所になる。
【0015】
以上の理由により、木質パネルからの揮発性有機化合物の放出を減少させるのが望ましい。
【0016】
従来、様々な解決方法が試みられてきた。特許文献1には、木材を製造する方法であって、加圧前の木質繊維にグルテン含有接着剤、乳タンパク質含有接着剤、植物性タンパク質含有接着剤またはこれらの誘導体を添加する、木材の製造方法が記載されている。上記グルテン含有接着剤は例えば、皮膠、骨膠、革膠などであり、上記乳タンパク質含有接着剤は特にカゼイン系接着剤であり、上記植物性タンパク質含有接着剤は特に大豆系接着剤である。
【0017】
特許文献2では、木材またはバインダー材にアルデヒド除去剤を添加する。同文献には、典型的なアルデヒド除去剤として、ビスルファイト類やピロスルファイト類(例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムなど)、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、およびジチオナイト類が記載されている。
【0018】
特許文献3では、木材製品の製造時に、木質繊維と接着剤との混合物に、アルデヒド除去剤としてゼオライトを添加する。しかし、アルデヒド除去剤としてゼオライトを使用する構成には、短所が幾つかある。例えば、全乾木材に対して約5%に相当する、比較的大量のゼオライトを添加する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許出願公開第102007050935号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0130474号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/136106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の技術的課題は、上記したような放散、すなわち、木質パネル(例えば、OSBパネルなど)からの高揮発性有機化合物(例えば、アルデヒド類、テルペン類など)の長期的な放散を、最小限に抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題は、請求項1の構成に従って変性ナノ粒子を使用することにより解決される。
【0022】
すなわち、本発明では、下記の一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物によって修飾されたナノ粒子である変性ナノ粒子が、木質パネル(特に、OSBパネル)からの揮発性有機化合物(VOC)の放散を減少させるために使用される。
SiX(4−a) (I)
【0023】
[式中、
−Xは、H、OH、あるいは加水分解性部位(加水分解性基)であり、前記加水分解性部位は、ハロゲン基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、およびアルキルカルボニル基からなる群から選択され、
−Rは、非加水分解性有機部位(非加水分解性有機基)Rであり、前記非加水分解性有機部位は、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、および置換または非置換のシクロアルケニル基からなる群から選択され、任意で、この非加水分解性有機部位R中に−O−又は−NH−が介在していてもよく、
前記Rは、エポキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、置換または非置換のアニリン基、アミド基、カルボキシ基、アルキニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、シアノ基、アルコキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、酸無水物基、およびリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基Qを有しており、
−aは、1、2または3(特に、1または2)である。]
【0024】
使用される前記ナノ粒子(特に、SiO系、Al系、ZrO系、TiO系またはSnO系の、酸化物ナノ粒子、水酸化物ナノ粒子またはオキシ水酸化物ナノ粒子)は、ヒドロキシ基によって生じた親水性表面を有するので、縮合反応で木質繊維のマトリクスと化学的に一体化することができる。また、そのような親水性表面により、様々な前記シラン化合物と化学結合又は化学的にカップリングすることもできる。
【0025】
官能基を有する前記シラン化合物は、水の存在下で酸又は塩基を用いた上流加水分解・縮合工程(upstream hydrolysis and condensation process)により、前記ナノ粒子の前記親水性表面と予め結合される。
【0026】
好ましくは、前記ナノ粒子を適切な触媒(特に、酸又は塩基)を含有する水溶液に投入した後、適切な前記シラン化合物を50〜80℃で添加することにより、前記変性ナノ粒子が作製される。この構成により、前記シラン化合物が加水分解を受けて前記ナノ粒子の表面に対して縮合し、約90%のシラン化合物が当該ナノ粒子の表面と結合する。
【0027】
好ましくは、前記変性ナノ粒子の作製時に、シラン層(シラン単分子層)を表面上に有するナノ粒子と、加水分解を受けたシラン単量体(未だ縮合していないシラン単量体も含み得る)とを含有する水溶液が得られる。
【0028】
TEMによって測定した場合、シラン濃度を0.1〜0.8mmolシラン/g粒子、好ましくは0.4〜0.6mmolシラン/g粒子とすることにより、前記ナノ粒子の表面上にシラン層(シラン単分子層)を形成することができる。
【0029】
好ましくは、前記Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C〜Cアルコキシ基(特に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、ブトキシ基)、C6〜C10アリールオキシ基(特に、フェノキシ基)、C〜Cアシルオキシ基(特に、アセトキシ基、プロピオノキシ基)、C〜Cアルキルカルボニル基(特に、アセチル基)、モノC〜C12アルキルアミノ基(特に、モノC〜Cアルキルアミノ基)、およびジC〜C12アルキルアミノ基(特に、ジC〜Cアルキルアミノ基)からなる群から選択される。特に好ましい加水分解性基は、C〜Cアルコキシ基(特に、メトキシ基、エトキシ基)である。
【0030】
好ましくは、前記非加水分解性有機部位Rは、置換または非置換のC〜C30アルキル基(特に、置換C〜C25アルキル基)、置換または非置換のC〜Cアルケニル基、置換または非置換のC〜Cシクロアルキル基、および、置換または非置換のC〜Cシクロアルケニル基からなる群から選択される。シクロアルキル部位またはシクロアルケニル部位が使用される場合、好ましくは、当該シクロアルキル部位またはシクロアルケニル部位は、C〜C10アルキルリンカー(特に、C〜Cアルキルリンカー)を介してSi原子と結合される。また、前記部位Rとしてアルケニル基またはシクロアルケニル基が使用される場合、当該アルケニル基またはシクロアルケニル基は、必ずしも官能基Qを有していなくてもよい。よって、このような場合の前記QはHとなる。
【0031】
一実施形態において、前記非加水分解性部位Rは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチルエニル基(エチニル基)、プロパルギル基、置換または非置換のブタジエニル基、および置換または非置換のシクロヘキサジエニル基からなる群から選択される。
【0032】
本発明において「非加水分解性有機部位」という用語は、水の存在下で、Si原子に連結されたOH−基やNH−基が形成されない有機部位のことを指す。
【0033】
好ましくは、前記非加水分解性有機部位が有する前記少なくとも1種の官能基Qは、アミノ基、モノアルキルアミノ基、アリール基(特に、フェニル基)、ヒドロキシ基、アクリル基、アクリルオキシ基、メタクリル基、メタクリルオキシ基、エポキシ基(特に、グリシジル基またはグリシジルオキシ基)、およびイソシアノ基のうちの少なくとも1種である。官能基Qとして特に好ましいのは、アミノ基、ヒドロキシ基、およびフェニル基のうちの少なくとも1種である。
【0034】
既述したように、前記非加水分解性部位Rは、少なくとも1種の官能基Qを有している。前記部位Rは、それ以外にも、さらなる部位によって置換されていてもよい。
【0035】
なお、「置換アルキル…」、「置換アルケニル…」、「置換アリール…」などの表現は、これらの基の中の1つ又は複数の原子(通常、H原子)が、次に述べる1種又は複数種の置換基(好ましくは、次に述べる1種又は2種の置換基)によって置換されていることを指す:ハロゲン原子、ヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、オキソ基、保護オキソ基、C〜Cシクロアルキル基、二環式アルキル基、フェニル基、ナフチル基、アミノ基、保護アミノ基、モノ置換アミノ基、保護モノ置換アミノ基、ジ置換アミノ基、グアニジノ基、保護グアニジノ基、複素環基、保護複素環基、イミダゾリル基、インドリル基、ピロリジニル基、C〜C12アルコキシ基、C〜C12アシル基、C〜C12アシルオキシ基、アクリロイルオキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、保護カルボキシ基、カルバモイル基、シアノ基、メチルスルホニルアミノ基、チオール基、C〜C10アルキルチオール基、およびC〜C10アルキルスルホニル基。置換アルキル基および/または置換アリール基および/または置換アルケニル基は、同一又は異なる置換基によって1箇所又は複数箇所が置換されていてもよく、好ましくは、同一又は異なる置換基によって1箇所又は2箇所が置換されていてもよい。
【0036】
好ましくは、本明細書において「アルキニル」という用語は、式:C≡Cで表される部位を有することを指し、特に、「C〜Cアルキニル」のことを指す。C〜C12アルキニルの例には:エチニル、プロピニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、ビニル、直鎖または分岐アルキル鎖のジイン、直鎖または分岐アルキル鎖のトリインが含まれる。
【0037】
好ましくは、本明細書において「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ナフチル、アントリルなどの芳香族炭化水素のことを指す。置換アリール基とは、前述した1種又は複数種の置換基によって置換されたアリール基のことをいう。
【0038】
好ましくは、「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロヘプチル基の意味を含む。
【0039】
好ましくは、「シクロアルケニル」という用語は、置換または非置換の環式基(例えば、置換または非置換のシクロペンテニル基、置換または非置換のシクロヘキセニル基など)の意味を含む。「シクロアルケニル」という用語は、さらに、共役二重結合を有する環式基(例えば、シクロヘキサジエン基など)の意味も含む。
【0040】
本明細書において「アルケニル」という用語は、1つ又は複数の二重結合を有する基の意味を含み、さらに、その二重結合が共役形態のもの(例えば、ブタジエン基)も含む。
【0041】
具体的には、前記官能基Qは、アルデヒド基と反応可能な基である。一例として、アミノ基は、アルデヒド基と反応することによってシッフ塩基を形成し得る。また、ヒドロキシ基は、アルデヒド基と反応することによってアセタール又はヘミアセタールを形成し得る。
【0042】
アリール基(例えば、フェニル基など)を前記官能基Qとした場合、この芳香族基は、木材加工時に形成されるラジカル、特に、アルデヒドラジカルおよびテルペンラジカルを捕捉するラジカル捕捉剤として機能し得るので、高揮発性のアルデヒドおよびテルペンを捕捉することができる。
【0043】
アルケニル、特に、共役二重結合を有するアルケニル{例えば、置換または非置換のブタジエニルなど)、置換または非置換のシクロアルケニル[特に、共役二重結合を有するシクロアルケニル(例えば、置換または非置換のシクロヘキサジエニルなど)]}は、熱ディールスアルダー反応によって高揮発性テルペン類を変換することができる。適切なジエン化合物を選択することにより、分子量の大きい環式化合物が形成されるので、揮発性を消失させて木の内部に留めておくことができる。
【0044】
使用され得る特に好ましい前記シラン化合物は、アミノエチルアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、およびフェニルトリエトキシシランである。
【0045】
好ましくは、使用される前記ナノ粒子の粒径は、2〜400nm、より好ましくは2〜100nm、特に好ましくは2〜50nmである。特に、前記ナノ粒子は、酸化物ナノ粒子、水酸化物ナノ粒子またはオキシ水酸化物ナノ粒子であり得る。このようなナノ粒子は、様々な方法、例えば、イオン交換法、プラズマ法、ゾルゲル法、粉砕法、火炎分離法(flame separation)などによって合成することができる。好ましい一実施形態では、前記ナノ粒子として、SiO系、Al系、ZrO系、TiO系およびSnO系のナノ粒子が使用される。特に好ましいのは、SiO系のナノ粒子である。
【0046】
使用される前記ナノ粒子の比表面積は、50〜500m/gであってもよく、好ましくは100〜400m/g、特に好ましくは200〜300m/gである。この比表面積の測定は、Brunauer, Emmett及びTellerによるBET法に準拠して、窒素の吸着を計測することで行われる。
【0047】
特に好ましくは、前記変性ナノ粒子は、木質パネルに用いられた木削片から放出されるアルデヒド類、特にC〜C10アルデヒド類、より特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナールなどを減少させるために使用される。上記の説明から分かるように、アルデヒド類は、木材加工時に特に放出される。
【0048】
好ましくは、前記変性ナノ粒子は、木質パネルに用いられた木削片から放出されるテルペン類、特にC10モノテルペン類およびC15セスキテルペン類、より特に環式または非環式モノテルペン類を減少させるために使用される。
【0049】
典型的な非環式テルペン類としては、例えば、ミルセン;グラニオール、リナロール、イプセノールなどのテルペンアルコール類;シトラールなどのテルペンアルデヒド類などのテルペン系炭化水素が挙げられる。典型的な単環式テルペン類としては、p−メンタン、テルピネン、リモネン、カルボンが挙げられる。典型的な二環式テルペン類としては、カラン、ピナン、ボルナンに加え、特に、3−カレンおよびα−ピネンが重要である。テルペン類は樹脂の成分なので、マツやトウヒなどの大量に樹脂を含有する樹種に特に多く含まれている。
【0050】
前記変性ナノ粒子は、揮発性有機化合物(VOC)の放散が減少した木質パネル(特に、OSBパネル)を製造する方法に使用される。この製造方法は:
a)適切な木から木質チップを製作する工程と、
b)前記木質チップを木削片に変換する工程と、
c)前記木削片を(特に、サイロ又はバンカーに)中間貯蔵する工程と、
d)前記木削片を乾燥させる工程と、
e)前記木削片を、その大きさに応じて分別または選別する工程と、
f)必要に応じて、さらに、前記木削片を破砕する工程と、
g)前記木削片を、風選別(wind-sifting)および/または落下選別(throw-sifting)を介して搬送ベルト上に配することにより、材料が散りばめられたマット状体を形成する工程と、
h)前記搬送ベルト上に配置された前記木削片を加圧する工程と、
を含み、
前記変性ナノ粒子を含有する少なくとも1つの懸濁液を、前記工程b)〜h)のうちの少なくとも1つの工程前および/または工程中および/または工程後に添加する。
【0051】
すなわち、本発明にかかる製造方法では、前記変性ナノ粒子を含有した懸濁液を使用する。具体的には、前記変性ナノ粒子を20重量%以上、好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上含有する水溶液の形態の懸濁液を使用する。
【0052】
前記製造方法において、前記変性ナノ粒子は、木質パネルの製造時のどの時点で前記木削片と混ぜられてもよい。また、前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液は、前記製造方法中、複数の位置で前記木削片に適用されてもよい。
【0053】
適切なグルーまたは接着剤は、前記製造方法のどの時点でも、前記木削片と混ぜられてもよいし、前記木削片に対して吹き付けられてもよい。
【0054】
前述した工程に加えて、前記木削片の不純物を例えば乾式洗浄、湿式洗浄などで除去するようにしてもよい。好ましくは、この不純物の除去工程は、その木削片の破砕工程よりも前に行われる。
【0055】
前記製造方法の一実施形態では、形成された前記木削片を上層と中間層とに分ける工程を行う。この工程は、ふるいによって実行され、工程中、前記木削片はその大きさに応じて選別される。好ましくは、前記中間層が小さい木削片を含み、前記上層が大きい木削片を含む。
【0056】
他の実施形態では、上記工程の後、前記上層の糊付けおよび前記中間層の糊付けが、適切なグルーを高圧で吹き付けて管状物中で混ぜ合わせることによって行われる。このような糊付け・混合は、前記上層と前記中間層とで別々に実行される。
【0057】
OSBパネルの製造方法は、パーティクルボード(shipboard)の製造方法やファイバーボードの製造方法と比べて、特に、使用する木削片の大きさ及び性質ならびに適用する圧力及び温度が異なる。しかしながら、基本的な工程手順、つまり、工程の順番については、どの種類のパネル/ボードを製造する場合も同じであり、当業者に公知である。
【0058】
前記製造方法において、前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液は、様々な方法で木質パネルに導入することが可能である。
【0059】
前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液は、グルーまたは接着剤と予め混ぜておいてもよいし、グルーまたは接着剤と同時に前記木削片に適用してもよいし、前記木削片に対して当該木削片が乾燥する前に吹き付けて適用してもよいし、木削片が散りばめられた前記マット状体に対して加圧前に吹き付けてもよい。
【0060】
一実施形態において、純水性溶液とナノ粒子との前記懸濁液の添加は、前記上層の糊付けおよび/または前記中間層の糊付けと同時に行われる。
【0061】
一変形例では、まず、ナノ粒子含有純水溶液をグルーに添加するか又はグルーと混ぜた後、このナノ粒子とグルーとの混合物によって前記木削片ののり付けを行う。したがって、別の構成として、前記ナノ粒子含有水溶液をグルーの製造時に添加することも考えられる。
【0062】
本発明にかかる製造方法では、前記ナノ粒子含有純水溶液である懸濁液を、前記木削片を乾燥させる(すなわち、前記木削片を散りばめる)前に、例えば吹き付け等(スプレー)によって、当該木削片に添加するようにしてもよい。
【0063】
他の変形例では、前記ナノ粒子含有水溶液を、木削片が散りばめられた前記マット状体の表面に対して吹き付けてもよい。
【0064】
本発明の他の目的は、前述した製造方法によって製造可能な木質パネル(特に、OSB木質パネル)を提供することである。
【0065】
本発明にかかる製造方法によって製造可能な木質パネルは、アルデヒドの放散、特にヘキサナールの放散が、1,000μg/m未満、特に800μg/m未満、特に好ましくは500μg/m未満であり、かつ、テルペンの放散、特に3−カレンの放散が、2,000μg/m未満、特に1,500μg/m未満である。これらの数値は、いずれも、上市されているマイクロチャンバーを用いた測定値である。
【0066】
以下では、複数の実施例を用いて、本発明をより詳しく説明する。
【実施例】
【0067】
(実施例)
複数のOSBの実施例について、それらのVOC放散を、マイクロチャンバーを用いて調べた。試料0は、対照用の試料である。それ以外の試料1〜3には、それぞれ異なる変性ナノ粒子を添加した。以下の表1に示すように、各ナノ粒子の表面は、それぞれ異なる官能基で修飾されている。
【0068】
【表1】
【0069】
(試験パネルの製作)
複数のOSB試験パネルが、試験プレス機により、寸法:12mm×300mm×300mmおよび嵩比重:650kg/mとなるように製作された。第1のパネル0に対しては、添加剤(変性ナノ粒子)を添加しなかった。添加剤を添加したものに関しては、その上層のみに添加を行った。これは、糊付け後のストランド(12%MUPF)を製作ラインから取り出し、対応する添加剤(変性ナノ粒子)と均等に混ぜ合わせた後、そのストランドを散りばめることによって行った。(試料0を除いて)添加内容は、のり付け後の上層140gに対して、変性ナノ粒子を40g配合するものであった。中間層については、製作ラインから取り出したが(PMDIによって糊付け)、変性ナノ粒子は添加しなかった。
【0070】
(結果)
以下では、上記OSBパネルからの放散を、放散量(μg/m)で表現する。なお、表面積あたりの換気量q=1m/(m・h)として考えている。
【0071】
以下では、アルデヒド類の代表例としてn−ヘキサナールを選択し、単環式テルペン類の代表例として3−カレンを選択した上で、VOC物質に対する前記変性ナノ粒子の効果を説明する。
【0072】
以下の表2に、各変性ナノ粒子を用いた場合のヘキサナールおよび3−カレンの減少量をまとめる。
【0073】
【表2】
【0074】
対照用の試料と比較した場合、試料1によるn−ヘキサナールの減少量が約66%、試料2によるn−ヘキサナールの減少量が約50%、試料3によるn−ヘキサナールの減少量が約16%であることが分かる。さらに、対照用の試料と比較した場合、試料2による3−カレンの減少量が約45%、試料3による3−カレンの減少量が約31%であることが分かる。
【0075】
以上から、ナノ粒子がシラン化合物で修飾された変性ナノ粒子を使用することにより、ヘキサナールの放散および3−カレンの放散が減少する。前記変性ナノ粒子を使用したときのヘキサナールの減少量および3−カレンの減少量の違いが、シランの官能基の違いに起因することは明らかである。試料1および試料2の場合のヘキサナールの大きな減少量は、変性ナノ粒子の遊離アミノ基とヘキサナールのアルデヒド基とが反応してシッフ塩基が形成されたことで説明がつく。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
木質パネル(特に、OSBパネル)からの揮発性有機化合物(VOC)の放散を減少させるための変性ナノ粒子の使用であって、
前記変性ナノ粒子は、下記の一般式(I)で表される少なくとも1種の化合物によって修飾されたナノ粒子である。
SiX(4−a) (I)
[式中、
−Xは、H、OH、あるいは加水分解性部位であり、前記加水分解性部位は、ハロゲン基、アルコキシ基、カルボキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、およびアルキルカルボニル基からなる群から選択され、
−Rは、非加水分解性有機部位Rであり、前記非加水分解性有機部位は、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアリール基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のシクロアルキル基、および置換または非置換のシクロアルケニル基からなる群から選択され、任意で、この非加水分解性有機部位R中に−O−又は−NH−が介在していてもよく、
前記Rは、エポキシ基、ヒドロキシ基、エーテル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、置換または非置換のアニリン基、アミド基、カルボキシ基、アルキニル基、アクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイル基、メタクリロイルオキシ基、メルカプト基、シアノ基、アルコキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アルキルカルボニル基、酸無水物基、およびリン酸基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基Qを有しており、
−aは、1、2または3(特に、1または2)である。]
〔態様2〕
態様1に記載の使用において、前記Xが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、C〜Cアルコキシ基(特に、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基およびブトキシ基)、C〜C10アリールオキシ基(特に、フェノキシ基)、C〜Cアシルオキシ基(特に、アセトキシ基またはプロピオノキシ基)、C〜Cアルキルカルボニル基(特に、アセチル基)、モノC〜C12アルキルアミノ基(特に、モノC〜Cアルキルアミノ基))、およびジC〜C12アルキルアミノ基(特に、ジC〜Cアルキルアミノ基)からなる群から選択されることを特徴とする、使用。
〔態様3〕
態様1または2に記載の使用において、前記Rが、置換または非置換のC〜C30アルキル基(特に、置換または非置換のC〜C25アルキル基)、置換または非置換のC〜Cアルケニル基、置換または非置換のC〜Cシクロアルキル基、および置換または非置換のC〜Cシクロアルケニル基からなる群から選択されることを特徴とする、使用。
〔態様4〕
態様1から3のいずれか一態様に記載の使用において、前記Rが、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、ブテニル基、アセチルエニル基、プロパルギル基、置換または非置換のブタジエニル基、および置換または非置換のシクロヘキサジエニル基からなる群から選択されることを特徴とする、使用。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一態様に記載の使用において、前記官能基Qが、アミノ基、モノアルキルアミノ基、アリール基(特に、フェニル基)、ヒドロキシ基、アクリル基、アクリルオキシ基、メタクリル基、メタクリルオキシ基、エポキシ基(特に、グリシジル基またはグリシジルオキシ基)、およびイソシアノ基、のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、使用。
〔態様6〕
態様1から5のいずれか一態様に記載の使用において、前記官能基Qが、アミノ基、ヒドロキシ基、およびフェニル基のうちの少なくとも1種であることを特徴とする、使用。
〔態様7〕
態様1から6のいずれか一態様に記載の使用において、前記ナノ粒子の粒径が、2〜400nm(好ましくは2〜100nm、特に好ましくは2〜50nm)であることを特徴とする、使用。
〔態様8〕
態様1から7のいずれか一態様に記載の使用において、前記ナノ粒子の比表面積が、50〜500m/g(好ましくは100〜400m/g、特に好ましくは200〜300m/g)であることを特徴とする、使用。
〔態様9〕
態様1から8のいずれか一態様に記載の使用において、前記ナノ粒子は、酸化物ナノ粒子、水酸化物ナノ粒子またはオキシ水酸化物ナノ粒子(特に、SiO系、Al系、ZrO系、TiO系またはSnO系の、酸化物ナノ粒子、水酸化物ナノ粒子またはオキシ水酸化物ナノ粒子)であることを特徴とする、使用。
〔態様10〕
態様1から9のいずれか一態様に記載の使用において、木質パネルに用いられる木削片から放出されるアルデヒド類(特にC〜C10アルデヒド類、より特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ペンタナールまたはヘキサナール)のレベルを減少させるために、前記変性ナノ粒子を使用することを特徴とする、使用。
〔態様11〕
態様1から10のいずれか一態様に記載の使用において、木質パネルに用いられた木削片から放出されるテルペン類(特にC10モノテルペン類またはC15セスキテルペン類、より特に非環式モノテルペン類または環式モノテルペン類)のレベルを減少させるために、前記変性ナノ粒子を使用することを特徴とする、使用。
〔態様12〕
揮発性有機化合物(VOC)の放散が減少した木質パネル(特に、OSBパネル)を製造する方法であって:
a)適切な木から木質チップを製作する工程と、
b)前記木質チップを木削片に変換する工程と、
c)前記木削片を中間貯蔵する工程と、
d)前記木削片を乾燥させる工程と、
e)前記木削片を、その大きさに応じて分別または選別する工程と、
f)必要に応じて、さらに、前記木削片を破砕する工程と、
g)前記木削片を、風力選別および/または落下選別を介して搬送ベルト上に配することにより、材料が散りばめられたマット状体を形成する工程と、
h)前記搬送ベルト上に配置された前記木削片を加圧する工程と、
を含む、木質パネルの製造方法において、
態様1から11のいずれか一態様に記載の変性ナノ粒子を含む少なくとも1つの懸濁液を、前記工程b)〜h)のうちの1つの工程前および/または工程中および/または工程後に添加し、前記懸濁液が、変性ナノ粒子を20重量%以上含有するナノ粒子含有水溶液の形態である、木質パネルの製造方法。
〔態様13〕
態様12に記載の木質パネルの製造方法において、前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、少なくとも1種のグルーと予め混ぜあわせるか;前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、前記グルーと同時に前記木削片に適用するか;前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、前記木削片に対して当該木削片が乾燥する前に吹き付けるか;または前記変性ナノ粒子を含有する前記懸濁液を、木削片が散りばめられた前記マット状体に対して加圧前に吹き付けることを特徴とする、木質パネルの製造方法。
〔態様14〕
態様12または13に記載の木質パネルの製造方法において、変性ナノ粒子を40重量%以上(好ましくは変性ナノ粒子を50重量%以上)含有する水溶液の形態の懸濁液を使用することを特徴とする、木質パネルの製造方法。
〔態様15〕
態様12から14のいずれか一態様に記載の製造方法によって製造可能な木質パネル(特に、OSBパネル)。