【実施例】
【0163】
(実施例1)プラスミド、プライマーおよび株
表1は、ベクター(例えば、発現ベクター)の構築の際に使用したプラスミドおよび本明細書に記載する実験において使用した欠失カセットのすべてのリストを含む。Yarrowia lipolyticaのMTLY60株をこれらの実験において用いた。
【0164】
表2は、以下の実施例において使用したプライマー(それらのプライマー名)およびそれらのプライマーの用役のリストを含む。
【0165】
【表1-1】
【0166】
【表1-2】
【0167】
【表2-1】
【0168】
【表2-2】
(実施例2)Yarrowia lipolytica OCH1およびMNN9破壊
Yarrowia lipolyticaにおけるOCH1(GenB
ank(登録商標)アクセッション番号:AJ563920)とMNN9(GenB
ank(登録商標)アクセッション番号:AF441127)遺伝子の両方をノックアウトする戦略を、LIP2遺伝子についてFickersら((2003)J Microbiol Methods.55(3):727−37)に記載されているように
設定した。OCH1遺伝子について準拠した遺伝子構築戦略を
図5に示す。
【0169】
OCH1 KOフラグメントを制限消化によっておよびPCRによってプラスミドYlOCH1 PUT TOPOから単離し、Yarrowia lipolytica株MTLY60に形質転換した。20のウラシル原栄養株を得、それを、プライマーYloch1 prom fw(配列番号18)およびYloch1 ter rev(配列番号19)を用いるゲノムDNA(gDNA)でのPCRによってスクリーニングして、そのプラスミドのゲノムの組み込みを分析した。試験した20のクローンのうちの2つに関して、適正なサイズ(すなわち、野生型における1894bpに対して2618bp)のフラグメントを増幅した。その構築物のランダム組込みコピー、従って両方のフラグメントを含有する幾つかのクローンを増幅した。
【0170】
URA3遺伝子を除去するために、Creリコンビナーゼについての発現カセットを含有するエピソームプラスミドpRRQ2で2つの陽性クローンを形質転換した。プライマーYloch1 prom fwおよびYloch1 ter rev(上記参照)を用いるgDNAでのPCRによって、URA3遺伝子の除去をスクリーニングした。これらの陽性クローンには、2328bpフラグメント(URA3を含む)は不在であり、1075bpの1075bp(URA3を含まない)フラグメントが存在した。
【0171】
それらの2つの陽性クローンを用いてサザンブロット分析を行って、異所DNA組込みが発生したかどうかを確認した。ゲノムDNA(gDNA)をEcoRV/HindIIIで二重消化し、アガロース−ゲル電気泳動に付し、ニトロセルロース膜に移した。プラスミドYlOCH1 PT TOPOからの500bp SpeI/I−SceIフラグメントでその膜をプローブした。1456bpのフラグメントがΔoch1 PUTに存在し、これに対してΔoch1 PTには2066bpのフラグメント、および野生型株には2893bpのフラグメントが存在した。
【0172】
MNN9を不活性化するための構築戦略を
設定した。それを
図6に示す。
【0173】
破壊フラグメントをNotI/PacI二重消化によってプラスミドYlMNN9PUT TOPOから切り取り、MTLY60およびΔoch1 PTクローン9に形質転換した。幾つかのURA3陽性クローンを両方の株について得、単
一クローンを単離した後、gDNAでのPCRによってそれらを構築物の適正な組込みについてスクリーニングした。プライマーYlMNN9 P fwおよびYlMNN9 T rv.(表2)を使用して、破壊株では2349bpのフラグメントを増幅し、これに対して非形質転換体では、2056bpのフラグメントを増幅した。
【0174】
突然変異株によって合成されたN−グリカン構造を分析するために、マンノプロテインから得たグリカンを用いてDSA−FACEを行った(
図7)。野生型(MTLY60)株は、主コアタイプグリカン構造として、主としてMan
8GlcNAc
2(構造式I;
図4)および相当な量のMan
9GlcNAc
2(構造式II;
図4)を有し、後者は、Och1p活性の結果として追加のマンノースを十中八九ほとんど含有する。さらに、幾つかのより大きな構造を見ることができる。Δoch1株は、主としてMan
8GlcNAc
2(構造式I)および少しばかりのMan
9GlcNAc
2(構造式II;
図4)を有し、これらの両方が、α−1,2−マンノシダーゼ処理に感受性であり(示されているΔoch1 α−1,2−man)、その結果、Man
5GlcNAc
2(構造式IV;
図4)にトリミングされる。Δmnn9株は、Δoch1株より多くのMan
9GlcNAc
2(構造式II;
図4)を蓄積し、これは、Mnn9pが、Och1p活性の結果として生ずるグリカン構造の伸長に関与することを示している。二重突然変異体Δoch1Δmnn9は、Δoch1株からのものに似ているグリコシル化表現型を示す。
【0175】
(実施例3)MNS1の突然変異誘発
MNS1(ER α−1,2−マンノシダーゼ)は、Man
9GlcNAc
2のMan
8GlcNAc
2へのトリミングに関与し、また、中央アームのα−1,3−マンノースに連結されているα−1,2−マンノースをトリミングすることだけができるという意味で厳格な基質特異性を有する(
図2)。MNS1遺伝子を、その基質特異性をゴルジタイプα−1,2−マンノシダーゼのほうにシフトさせるように突然変異誘発できるかどうかを
決定するために、幾つかのERタイプマンノシダーゼの
一次配列をゴルジタイプマンノシダーゼと比較した。これら2クラス間で異なる1つの領域を同定した。加えて、ゴルジタイプマンノシダーゼの触媒部位において酵母MNS1となって晶出したオリゴ糖も分析して、糖とタンパク質の間で起こりうる相互作用を同定した。驚くべきことに、両方の方法を用いて同じ部位が同定された。
【0176】
Saccharomyces cerevisiaeからのMNS1遺伝子(GenB
ank(登録商標)アクセッション番号:Z49631、sgd:YJR131W)を突然変異させて、その基質特異性を変更した。3つの突然変異バージョンを作製した:同じ領域に1つの突然変異を伴う2つ(R273LおよびR273G)および3つの突然変異を有する1つ(R269S/S272G/R273L):
A)R273L(アルギニン273をロイシンへ)
B)R273G(アルギニン273をグリシンへ)
C)R269S/S272G/R273L(アルギニン269をセリンへ/セリン272をグリシンへ/アルギニン273をロイシンへ)。
すべての突然変異は、Quick Change(Stratagene)突然変異誘発キットを使用して行った。強力な構成的TPI1プロモーターの制御下で3つの異なる突然変異遺伝子を発現するように構築物を作製した。野生型遺伝子をテンプレートとして使用することにより、オリゴヌクレオチド
【0177】
【化4】
を使用して、突然変異体R273Lを生成し、ならびにオリゴヌクレオチド
【0178】
【化5】
を使用して、突然変異体R273Gを得た。突然変異体R273LをテンプレートDNAとして使用することにより、オリゴヌクレオチド
【0179】
【化6】
を使用して、突然変異体R269S/S272G/R273Lを得た。オリゴヌクレオチド
【0180】
【化7】
を使用するPCR反応によって、E−tagのコーディング配列をその突然変異体および野生型MNS1オープンリーディングフレームの3’末端に付加させて、発現後にタンパク質を検出できるようにした。この構築戦略の外観を
図8に提示する。
【0181】
前記3つの構築物、ならびに(陰性対照として)非突然変異遺伝子を、XbaIでのプラスミドの消化後にTRP1を選択マーカーとして使用して、S.cerevisiae株XW27(MATα leu2 ura3 trp1 his3 ade2 lys2 och1::LEU2 mnn1::URA3 mnn6::ADE2)に形質転換して、その構築物をS.cerevisiaeゲノム内のTRP1遺伝子座に向けた。後述の株は、(その糖タンパク質を用いて)均一なMan
8GlcNAc
2を合成することができる。前記突然変異酵素が活性であれば、このMan
8GlcNAc
2(構造式I;
図4)は、Man
5GlcNAc
2(構造式IV:
図4)、Man
6GlcNAc
2(構造式V;
図4)および/またはMan
7GlcNAc
2(構造式VI;
図4)にトリミングされるはずである。
【0182】
トリプトファン原栄養株を単離し、液体SDC−trp培地中で増殖させ、マンノプロテインを調製した。マンノプロテインから得たN−グリカンをDSA−FACEによって分析した。
図9からわかるように、R273GおよびR269S/S272G/R273L突然変異を含有する株から少量のMan
8GlcNAc
2(構造式I;
図4)が、Man
5GlcNAc
2(構造式IV:
図4)、Man
6GlcNAc
2(構造式V;
図4)およびMan
7GlcNAc
2(構造式VI;
図4)に転化された。他の突然変異体または野生型遺伝子の発現が改変N−グリコシル化表現型を生じさせる。すべての突然変異体が同等に十分に発現されるかどうかを評価するために、E−tag(MNS1タンパク質に付加された13アミノ酸エピトープ)に特異的な抗体を使用してウエスタンブロット分析を行った。すべての突然変異タンパク質、ならびに野生型MNS1タンパク質が、同等に十分に発現された。
【0183】
(実施例4)リン酸化増加
Yarrowia lipolyticaMNN4の発現
Man
8GlcNAc
2のリン酸化を増加させるために、Yarrowia lipolytica MNN4(P.pastoris PNO1の相同体)をYarrowia lipolyticaにおいて過
剰発現させて、N−グリカンのコアタイプリン酸化を促進した。
【0184】
プライマー
【0185】
【化8】
を使用して、Yarrowia lipolytica MNN4(XM_503217、YALI0D24101g)遺伝子のコーディング配列を増幅した。このオープンリーディングフレーム(ORF)を
、プラスミドに、BamHIおよびAvrII部位を用いてクローニングし、それによって、そのORFを、選択マーカーとしてのURA3d1遺伝子とランダム組込みを改善するためのゼータ配列とを含有するプラスミドpYlHURA3のhp4dプロモーターの制御下に置く(
図10)。
【0186】
MTLY60Δoch1株における形質転換前に、MNN4発現カセットを含有するプラスミドを、URA3遺伝座での組み込みのためにEco47III、MNN4遺伝子座での組み込みのためにPvuI、またはランダム組込みのためにRsrII/BstBI、いずれかで消化した。URA3およびMNN4遺伝子座にターゲッティングされた形質転換体を、hp4dプロモーター内のプライマーおよびLIP2ターミネーター内のプライマーを使用するPCRによって分析した。その構築物のランダム組込みを伴う形質転換体をサザンブロット分析によって評価した。
【0187】
マンノ−リン酸化が増加されたかどうかを評価するために、本発明者らは、YPD培地中での48時間の培養後、分泌された糖タンパク質から得たN−グリカンをDSA−FACEキャピラリー電気泳動によって分析した(
図11)。Man
8GlcNAc
2(構造式I)の量は、(Man
8GlcNAc
2(構造式I;
図4)と比較して)より早く移動する、ならびに1つ(P)(構造式XまたはXI;
図4)および2つ(PP)(構造式XII;
図4)のリン酸残基をそれぞれ含有する可能性が高い、2つの構造に有利に
劇的に減少した(
図11)。従って、ランダム組込み発現カセットは、URA3遺伝子座またはMNN4遺伝子座に組込まれたカセットより、この順で、良好に動作すると結論付けることができる。MZ2が最高レベルのリン酸化を示した。
【0188】
両方のピークがMan
8GlcNAc
2(構造式I;
図4)ピークに由来すると仮定して、リン酸化グリカンに転化されたMan
8GlcNAc
2の量を定量した(表3)。
【0189】
【表3】
表3の説明:高さおよび面積は、電気泳動図から
決定したピークの高さおよびピーク面積を指す。「シグナル%」は、N−グリカン混合物中のそれぞれのグリカンの割合を指す。アスタリスクによって識別される数値は、リン酸化Man
8Gn
2の割合(上)および非リン酸化Man
8Gn
2の割合(下)を示す。
【0190】
これらの結果は、YlMNN4遺伝子を過
剰発現する株では、親Δoch1中に存在するMan
8GlcNAc
2(構造式I:
図4)の80%より多くがリン酸化されることを示していた。
【0191】
(実施例5)小胞体における脂質結合オリゴ糖修飾によるグリコシル化の修飾
材料および方法
株、培養条件および試薬。Escherichia coli株MC1061またはTOP10またはDH5αを組換えプラスミドDNAの増幅に使用し、使用するプラスミドに依存して100μg/mLのカルベニシリンまたは50μg/mLのカナマイシンを補足したLuira−Broth(LB)培地中、37℃でサーモシェーカーにおいて増殖させた。
Yarrowia lipolytica MTLY60(ura3 leu2)株を親株として使用した。すべての酵母菌株を28℃のインキュベータで培養した。それらを、YPD培地(2%デキストロース、2%バクトペプトンおよび1%酵母抽出物)または合成デキストロース完全(SDC)培地(0.17% YNB(アミノ酸なし、および
硫酸アンモニウムなし)、1%グルコース、0.5% NH
4Cl、50mM リン酸K/Naバッファ pH6.8および0.077% Complete Supplement Mixture(Qbiogene Inc,Morgan Irvine,CA))を用いて増殖させた。Ura+およびLeu+形質転換体の選択のために、それぞれ、0.077% CSM−uraまたはCSM−leuを添加した。
【0192】
標準的遺伝子技術。Yarrowia lipolyticaの形質転換適格細胞を、Boisrameら(1996)J.Biol.Chem.271(20):11668−75(この開示は、その全体が参照により本明細書に援用されている)に記載されているとおりに調製した。出版物に掲載されているプロトコル(Epicenter Kitカタログ番号MPY80200;Epicenter Biotechnologies,Madison,WI)を用いて、すべての酵母菌株からゲノムDNAを単離した。このプロトコルは、65℃での非酵素的細胞溶解、続いて、沈殿によるタンパク質の除去、そして核酸沈殿および再懸濁を含む。5μLの10×緩衝液(200mM Tris−HCl pH8.4および500mM KCl)、可変量のMgCl
2、2.5μM dNTP、50ngのテンプレート、50pmolの適正なプライマーおよび2.5単位のTaqまたはPfuDNAポリメラーゼいずれかを含有する50μLの最終量でPCR増幅を行った。用いたサイクリング条件は、次のとおりであった。94℃で10分間の変性、続いて、ホットスタート、そして
30サイクルの94℃で45秒
間、適するアニーリング温度で45秒間
、および72℃でkbあたり1分間の伸長、続いて、72℃で10分の伸長。ゲルから回収したDNAフラグメント(PCR産物またはフラグメント)を、NucleoSpin extract II(Macherey−Nagel)を使用して精製した。DNA塩基配列決定は、VIB Genetic Service Facility(ベルギーのアントワープ)によって行われた。
【0193】
ベクター構築
(i)ALG3遺伝子のノックアウト(遺伝子置換)。ALG3遺伝子(GenBank(登録商標)アクセッション番号XM_503488、Genolevures:YALI0E03190g)のプロモーターフラグメント(P)を、Taqポリメラーゼ(Invtrogen)を使用し、
【0194】
【化9】
をフォワードおよびリバースプライマーとしてそれぞれ用いるPCRによって、Yarrowia lipolytica MTLY60株のゲノムDNAから増幅した。オーバーハンギングAヌクレオチドをT4 DNAポリメラーゼ(カナダ、オントリオのFermentas)で除去した。そのALG3遺伝子のターミネーターフラグメント(T)を、プルーフリーディングPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)を使用し、
【0195】
【化10】
をフォワードおよびリバースプライマーとしてそれぞれ用いるPCRによって、Yarrowia lipolytica MTLY60株のゲノムDNAから増幅した。ISceI制限部位を含有するプライマー配列のオーバーラップのため、P−フォワードプライマーおよびT−リバースプライマーでのPCRによって両方のフラグメントを連結させることができた。その後、これらのコ・アプリコンをpCR−2.1 TOPO TA(Invitrogen)ベクター内にサブクローニングし、そのコ・アンプリコン配列の正しさを塩基配列決定によって確認した。その後、NotI−PacI部位を用いてそのコ・アンプリコンを中間ベクターにクローニングした。
【0196】
(ii)ALG6遺伝子の過
剰発現。ALG6遺伝子(GenBank(登録商標)アクセッション番号:XM_502922、Genolevures:YALI0D17028g)のターミネーター(415bp下流)と共にALG6 ORF(1725bp)を、プルーフリーディングPfu DNAポリメラーゼ(Fermentas)を使用し、
【0197】
【化11】
をフォワードおよびリバースプライマーとしてそれぞれ用いるPCRによって、Yarrowia lipolytica MTLY60株のゲノムDNAからクローニングした。その配列をpCR−BluntII−TOPO(Invitrogen)内にクローニングし、そのALG6 ORF配列の正しさを塩基配列決定によって確認した(上記のとおり)。次に、hp4dプロモーターを含有するベクター(pYLHmA)内にBamHIおよびAvrIIによってそのALG6 ORFをクローニングし、その後、ALG3のターミネーターフラグメント中に存在する固有制限部位ClaIおよびHindIIIによって中間ベクター内にクローニングした。
【0198】
(iii)選択マーカーカセット。宿主ゲノムDNAから選択可能マーカーURA3を除去するために、例えば、Fickersらによって記載されたような((2003)J.Microbiol.Methods 55(3):727−737、この開示は、その全体が参照により本明細書に援用されている)、Cre−lox組換え系を使用した。プラスミドpRRQ2(hp4d−cre、LEU2)(the Institut National de Recherche Agronomique(INRA)からの寄贈品)からのCreリコンビナーゼの発現
の際に、前記マーカーは、2つのlox部位間での組換えによって切除される。ALG6過
剰発現カセットを伴うおよび伴わない、両方の構築物において、lox部位に隣接するURA3選択マーカーを、そのベクターのPフラグメントとTフラグメントの間に導入されたI−SceI部位に挿入し、その結果、「PUT」構築物を得た。
【0199】
マンノプロテインの調製。28℃のインキュベータ内で250rpmで回転する50mLファルコンチューブの中の10mLの標準YPD培地において一晩、酵母菌株を増殖させた。その後、それらの細胞を4℃で4000rpmでの遠心によってペレット化した。上清を除去し、それらの細胞を、先ず、2mLの0.9% NaCl溶液で洗浄し、その後、2mLの水で2回洗浄し、その後、微小遠心管内の1.5mLの0.02Mクエン酸ナトリウム(pH7)に再懸濁させた。90分間、121℃のオートクレーブで処理した後、それらの管をボルテックスにかけ、細胞破壊片を遠心によってペレット化した。上清を回収し、4℃の4容量のメタノールを用いて一晩、回転運動させながらマンノプロテインを沈殿させた。その後、そのアルコールで沈殿させた材料を遠心することによって沈殿物を得た。そのペレットを乾燥させ、50μLの水に溶解した。
【0200】
糖分析。Callewaertら(2001;上記)が記載したようにABI3130DNAシーケンサーを用いてDNAシーケンサ援用(DSA)、蛍光体援用炭水化物電気泳動(FACE)を行った。簡単に言うと、1時間、50℃のRCM緩衝液(8M尿素、360mM Tris(pH8.6)および3.2M EDTA)中で糖タンパク質を変性させ、その後、15μL RCMを含有するIPプレートの事前湿潤PVDF膜に固定化する。その膜の事前湿潤を300μLのMeOHで行い、300μLの水および50μLのRCMで3回洗浄し、その後、真空除去した。それらの糖タンパク質を1時間、50μLの0.1Mジチオトレイトールで還元し、300μLの水で3回洗浄した。50μLの0.1Mヨード酢酸との暗所での30分のインキュベーションを用いてそのSH基をカルボキシメチル化し、300μLの水で3回洗浄した。その後、それらのプレートを100μLの1%ポリビニルピロリドン360と共に1時間インキュベートして、その膜上の占有されていない結合部位を飽和し、その後、再び300μLの水で3回洗浄した。次に、50μLの10mM Tris−アセテート(pH8.3)中のペプチド:N−グリコシダーゼF(PNGase F)x Uでの3時間の処理によってN−グリカンを遊離させた。
N−グリカンを回復し、蛍光体8−アミノピレン−1,3,6−トリスルホネート(APTS)を用いて還元アミノ化によ
って誘導体化した。これは、1.2Mクエン酸中の20mMのAPTSとDMSO中の1MのNaCNBH
3の1:1混合物1μLとの37℃での一晩(ON)のインキュベーションおよび4μLの水の添加によるクエンチで達成した。過剰な標識をSephadex G−10樹脂でのサイズ分画によって除去した。その後、残存する標識N−グリカンを蒸発によって濃縮した。RNAse B
のN−グリカンおよびオリゴマルトースラダ
ーをサイズマーカーとして含めた。Genemapper(登録商標)ソフトウェア(Applied Biosystems)を用いてデータ分析を行った。標識された糖に対するグリコシダーゼ消化をON、37℃で100mM NH
4AC(pH5)中で行った。追加のタチナタマメ(JB)マンノシダーゼをON消化後に添加し、さらに24時間、37℃で放置した。
【0201】
Yarrowia lipolyticaにおけるALG3遺伝子の破壊
ALG3遺伝子を破壊するために、ALG3のプロモーターおよびターミネーター
の部分を含み、且つ、URA3選択マーカーカセットを有するベクターを生成し、それをpYLalg3PUTと呼んだ。NotIおよびPacI部位を組込んで、そのベクターを線形化し、それによってE.coli関連DNA
エレメントを除去した。プロモーターおよびターミネーター部位での二重相同組換えを用いて、ALG3をURA3選択可能マーカーで置換し、その結果、alg3::URA3突然変異株を得た。利用したノックアウト戦略は、Fickersら(2003;上記)によって記載されており、効率的なマーカーレスキューを助長するCre−lox組換え系を使用する。ゲノムALG3コンティーグ
における組込み
の際に、Alg3pのα−1,6−マンノシルトランスフェラーゼ活性を失うはずである。これを、幾つかの形質転換体のマンノプロテインのグリコシル化パターンを分析することによって、モニターした。マンノプロテインから得たN−グリカンをDSA−FACE(キャピラリー電気泳動)によって分析し、エキソグリコシダーゼの選択で処理して、それらの構造を明らかにした。24のうちの7つの形質転換体がグリコシル化プロフィールの変化を生じた(それらのうちの3つを
図13に示す)。7つすべての形質転換体において、ゲノムへのノックアウトカセットの正しい組み込みをPCRによって確認することができた。それらのプロフィールを分析することによって、3つの主グリカン構造を見つけた:(i)RNAse BのMan
5GlcNAc
2構造
(これは、構造式IVである;図4)と同じサイズで生じるもの(構造式VII;
図4);(ii)1グルコース単位余分の距離にあるもの;および(iii)2グルコース単位余分の距離にあるもの(
図13)。これらの結果は、ALG3がこれらの細胞において破壊されたことを示す。
【0202】
α−1,6−マンノシルトランスフェラーゼAlg6pの過
剰発現
第一のグルコシルトランスフェラーゼ、すなわちAlg6p、についての構成的活性過
剰発現カセットをalg3遺伝子置換ベクターに組み込む戦略を開発した。このベクターをpYLalg3PUT−ALG6と呼んだ。このベクターのNotI/PacIフラグメントをYarrowia lipolytica MTLY60株に形質転換した。このようにして、hp4dプロモーターの制御下でALG3の破壊およびALG6の過
剰発現が達成される。ゲノムへの正しい組み込みを再びPCRによって確認した。マンノプロテインから得たN−グリカンのDSA−FACE分析は、形質転換体の半分、すなわち24のうち12、がWT株と比較すると、グリコシル化パターンの変化を示した。ALG6の過
剰発現が軽度のクローン的変動をもたらした(
図13)。
【0203】
N−グリカン構造の同定
上で説明した実験からのグリカン構造の性質をさらに解明するために、マンノプロテインから得たグリカンのインビトロ消化(上記のとおり)を、エキソグリコシダーゼの選択で行った。次の酵素を用いてマンノプロテイングリカンを分析した:α−1,2−マンノシダーゼ;α−マンノシダーゼ(JB)およびグルコシダーゼII。観察された3つのグリカン構造は、Man5GlcNAc2(構造式VII;
図4)、GlcMan
5GlcNAc
2(構造式VIII;
図4)および
Glc
2Man
5GlcNAc
2(構造式IX;
図4)であった(
図14)。これらの結果は、α−1,6−マンノシルトランスフェラーゼ(例えば、Och1p)による高マンノース伸長が殆どまたは全くないことを示している。
【0204】
ALG6過
剰発現がN−グリコシル化部位占有を促進するために必要であるかどうかを
決定するために、3つの異なるYarrowia株:MTLY60、MTLY60Δalg3およびMTLY60Δalg3ALG6において、Yarrowia lipolytica
由来のリパーゼ2(LIP2)を発現させた。TEF構成的プロモーターの制御下にあるYarrowia lipolytica LIP2の
ための構築
物をINRAから
得た。その発現カセットを上述の株に形質転換し、そのタンパク質の発現を、それらの形質転換細胞から調製した上清をSDS−PAGE分析に付すことによって検証した(
図28)。Lip2pタンパク質は、2つのグリコシル化部位を有する。alg3欠損(「ノックアウト」)酵母菌株から得たLip2pタンパク質をSDS−PAGEによって3つの異なるバンドに分離し、そのゲルの
クマシ
ーブルー染色を用いてそれらを視覚化した(
図28)。そのゲル中の3つすべての形態のタンパク質が、異なるグリコシル化形態のLip2pタンパク質であることを確認するために、alg3欠損(「ノックアウト」)酵母菌株から得たLip2pをPNGaseF(糖タンパク質からオリゴ糖残基を除去する酵素)での処理に付し、その後、上に記載したとおりSDS−PAGE分析に付した。PNGase FでのLip2pタンパク質の処理は、
クマシ
ーブルー染色後にそのゲル上に単一のバンド(これは、非グリコシル化Lip2pと同じ分子量を有した)を生じさせる結果となり、前に観察された3つすべてのタンパク質が異なるグリコシル化形態の同じLip2p分子であることを示した。これは、alg3ALG6株から得たLip2pについてもあてはまる。しかし、還元グリコシル化形態のタンパク質の量は、減少される。従って、ALG6の過
剰発現はN−グリコシル化部位占有を(少なくとも一部は)回復させることができ、これがalg3ノックアウト突然変異酵母菌株では減少されると結論付けることができる。
【0205】
キャッピンググルコース構造の除去
次に、モノ
−グリコシル化(構造式VIII;
図4)およびビ−グリコシル化(構造式
IX;
図4)Man
5GlcNAc
2(構造式VII;
図4)構造をインビボで除去するために、酵素グルコシダーゼIIのα−サブユニットを過
剰発現するように細胞を遺伝子操作した。YarrowiaのグルコシダーゼIIのαサブユニット(GenBank(登録商標)アクセッション番号:XM_500574)およびグルコシダーゼIITrypanosoma brucei
のαサブユニット(GenBank(登録商標)アクセッション番号:AJ865333)を2つの戦略として独立してクローニングして、そのタンパク質を過
剰発現させた。グルコシダーゼIITrypanosoma bruceiのαサブユニットを選択した。その天然基質がGlcMan
5GlcNAc
2(構造式VIII;
図4)であるからである。両方の遺伝子を構成的hp4dプロモーターの制御下でクローニングした。それらのプラスミドは、URA3マーカーを含有する。これらの構築物を、alg3突然変異酵母菌株(ALG6過
剰発現を伴うものと伴わないものの両方)に形質転換した。
【0206】
これらの構築物を含有する培養細胞から得た分泌タンパク質からオリゴ糖を調製し、それらのオリゴ糖のプロフィールをDSA−FACE分析によって
決定した。すべての形質転換体から同じDSA−FACEプロフィールが得られた。それぞれのグルコシダーゼIIαの2つの異なるクローンを
図29に示す。これらの結果から、Yarrowiaまたはトリパノソーマ(Trypanosoma)グルコシダーゼII αサブユニットのいずれの過
剰発現も、モノ
−グリコシル化(構造式VIII;
図4)およびビ−グリコシル化(構造式IX;
図4)Man
5GlcNAc
2(構造式VII;
図4)構造の量に対して小さな影響しか及ぼさないと結論付けた。
【0207】
HDEL配列で
タグ付けしたYarrowia lipolyticaおよびTrypanosoma bruceiのグルコシダーゼII α−サブユニットの発現
Man
5GlcNAc
2からのグルコース残基のインビボでの除去に対するYarrowiaまたはトリパノソーマグルコシダーゼII αサブユニットの発現の効果を改善するために、分子生物学技術を用いて、HDELタグをコードする核酸を、2つのGlsII α酵素のそれぞれをコードする核酸の3’末端にインフレームで付加させた。このHDELタグは、ゴルジからERへの取り戻しメカニズムとして役立てるつもりであった。hp4dプロモーターの制御下にある、Yarrowia lipolytica(Y.l.)とTrypanosoma brucei(T.b.)両方からのHDEL
タグ付きグルコシダーゼII配列をコードするプラスミドを、ALG6遺伝子の過
剰発現を伴うおよび伴わないalg3 KO株に形質転換した。
図30においてわかるように、Yarrowia lipolyticaグルコシダーゼII αサブユニットの過
剰発現は、グルコシル化構造の量に対して小さな影響しか及ぼさなかった。対照的に、余分なHDELタグを有するTrypanosoma bruceiαサブユニットのα−グルコシダーゼIIの過
剰発現は、モノ−グルコースピークを縮小させることとなった(
図31参照)。
【0208】
ムタナーゼでのグリコシル化グリカンの処理
上で説明した結果は、モノ−グリコシル化形態のMan
5GlcNAc
2を減少させる1つの具体例としての手段を明示している。糖タンパク質からのビ−グリコシル化形態のMan
5GlcNAc
2を減少させるために、T.harzianumのムタナーゼを1つの可能性の有る
解決策として調査した。酵素調製物をNovozymes(Novozyme 234;デンマークのBagsvaerd)から得、インビトロでオリゴ糖を消化するために使用した。すなわち、alg3ALG6
株から得たオリゴ糖
(グリカン:Man5GlcNAc2、GlcMan5GlcNAc2、およびGlc2Man5GlcNAc2)に、異なる濃度でムタナーゼを添加した。
図32のDSA−FACEプロフィールに示されているように、オリゴ糖において観察されるビ−グルコースピークが効果的に縮小された。
【0209】
次に、T.harzianumのムタナーゼをインビボで過
剰発現させた。
HDEL−配列を含有する
ムタナーゼを、Yarrowia lipolyticaにおける発現用のコドン最適化cDNAとして合成した。その成熟タンパク質を、TEF1プロモーターの制御下でLIP2 preシグナル配列と共にインフレームでクローニングした(
図33)。この構築物をalg3突然変異酵母菌株(ALG6過
剰発現を伴うものと伴わないものの両方)に形質転換する。その構築物を含有する培養細胞からオリゴ糖を調製し、それらのオリゴ糖のプロフィールをDSA−FACE分析によって
決定する。このDSA−FACEプロフィールは、それらのオリゴ糖において観察されるビ−グルコースピークの縮小を示すであろうと予想される。これらの結果から、ムタナーゼのインビボでの過
剰発現は、そのムタナーゼを過
剰発現していない細胞と比較して、オリゴ糖において観察されるビ−グルコースピークを縮小させることに対して有効であると結論付けられるだろう。
【0210】
Yl GlsII α−およびβサブユニットの共発現
グルコシダーゼIIのα−およびβ−サブユニットがヘテロダイマー複合体を形成し、その結果、そのβ−サブユニットが、その複合体のERへの取り戻しに責任を負い、基質認識にも関与し、これに対してそのα−サブユニットが触媒活性を含有することは公知である。グルコシダーゼIIのα−サブユニットだけの過
剰発現は、ビ−グルコースオリゴ糖構造に対して及す影響が小さかったので、α−およびβ−サブユニットを共発現させた。
【0211】
PCRを用いて、MTLY60株から単離したゲノムDNAからβ−サブユニットのオープンリーディングフレーム(YALI0B03652g)を増幅させ、TEF1およびhp4dプロモーターの制御下でクローニングした。選択マーカーとしてLEU2を有し、且つ、TEF1およびhp4dプロモーターの制御下にあるグルコシダーゼII β−サブユニットを有する構築物を作製した。これらを、ALG6過
剰発現を伴うおよび伴わないalg3ノックアウト株に形質転換し、HDEL配列タグを有するおよび有さないYarrowia lipolyticaグルコシダーゼIIαサブユニットを過
剰発現させた。それらの細胞から分泌されたタンパク質からN−グリカンを調製した。それらのN−グリカンのDSA−FACEプロフィールを
図33および34に示す(alg3ノックアウトとALG6の過
剰発現)。これらのプロフィールから、Yarrowia lipolyticaからのグルコシダーゼIIのβサブユニットの過
剰発現は、グリコシル化糖のトリミングに対してポジティブな影響を及ぼしたと結論付けることができる。一般に、グルコシダーゼIIのβサブユニットの効力は、TEF1プロモーターのもとで発現されたときに改善された。それらのグリコシル化構造は、Yarrowia lipolyticaグルコシダーゼIIαサブユニットがHDELタグを含有するとき、さらにいっそう減少された(
図33および34)。
【0212】
ALG6過
剰発現を伴わないalg3欠損細胞については、グルコシル化構造の減少に関して類似した結果が異なる細胞集団それぞれについて観察された(
図35)。
【0213】
Aspergillus GlsII aおよびbサブユニットの発現
alg3欠損バックグランドにおいて発生するグルコース保有構造からグルコース残基を除去するために、Aspergillus niger成熟(シグナルペプチド欠失)グルコシダーゼII αおよびβを、Yarrowia lipolyticaにおける発現用のコドン最適化cDNAとして合成した(α−サブユニット(配列番号7;
図36A−36B)β−サブユニット:(配列番号8;
図37))。Aspergillus niger(An)グルコシダーゼαサブユニットを構成的TEF1およびhp4dプロモーターの制御下でクローニングし、これは、選択マーカーとしてURA3遺伝子を有した。それらの発現カセット(TEF1およびhp4dの制御下のORF)をYarrowia lipolytica alg3ALG6株に形質転換した。形質転換体候補をYPDにおいて増殖させ、分泌されたタンパク質からのグリカンをDSA−FACEによって分析した。2つのグルコシル化構造が形質転換株では非形質転換体(alg3ALG6)と比較してあまり豊富でないことを
図38から
推定することができる。
【0214】
グリコシル化グリカン構造をさらに減少させるために、TEF1プロモーターまたはhp4dプロモーターの制御下にあるAspergillus nigerグルコシダーゼIIのベータサブユニットと選択マーカーとしてのLEU2を有する構築物を作製する。この構築物を、
AnグルコシダーゼII α−サブユニットを発現するYarrowia lipolytica alg3ALG6株に形質転換
する。Aspergillus nigerグルコシダーゼIIのβ−サブユニットの発現は、そのYarrowia lipolytica細胞におけるグルコシル化構造を減少させる結果になると予想される。
【0215】
(実施例6)HAC1イントロンの同定ならびにHAC1遺伝子のクローニングおよび単離
Y.lipolytica HAC1スプライス部位。Yarrowia lipolyticaにおけるHAC1のイントロン領域と真菌Trichoderma resseiおよびAspergillus nidulansにおけるHAC1のイントロン領域の間の配列相同性に基づいて、Yarrowia lipolytica HAC1(Genbank:XM_500811、Genolevures:Yali0B12716g)の可能性の有るスプライス部位を同定した。その5’および3’スプライス部位は、
特徴的なループ構造内に局在すると予測され、そのイントロンは29bp長であると算出された。
【0216】
そのスプライス部位の周囲でプライマーを
開発して、イントロンを同定した。遺伝子特異的プライマーを用いて、UPR(小胞体ストレス反応)誘導(ジチオトレイトール(DTT)中での増殖による)および非誘導培養物(陰性対照)からの単離されたmRNAから、
第一鎖cDNAを合成した。その後、プライマーHAC1FW06−003およびHAC1Rv06−001を使用して、その
第一鎖に関するPCRを行った。増幅産物を1.5%アガロースゲルで分析した。
【0217】
非誘導細胞については+/−400bpのフラグメントが増幅されると予想され;誘導細胞については29b
p小さ
いフラグメントが増幅されると予想された。非誘導細胞およびUPR誘導細胞から、適正なサイズのフラグメントを得た。UPR誘導培養物については、2つ以上の増幅産物が得られた。中間のフラグメントは非誘導培地について得られたバンドと同じサイズであり、これをスプライスされていないHAC1であると解釈した。より下位の、最も顕著なバンドをそのゲルから精製し、シーケンスベクターにクローニングした。その構築物の塩基配列を決定した後、配列アラインメントを行ってスプライス部位を同定した(
図15)。その配列アラインメントから、スプライス部位が、Yarrowia lipolytica HAC1配列と真菌(Trichoderma reeseiおよびAspergillus nidulans)HAC1配列の比較から予測された位置にあることがわかる。このスプライス
部位は29bp長である。
【0218】
その活性完全長HAC1配列を単離するために、発現ベクターへのクローニングに適する制限部位を有するようにプライマー
を操作した。プライマー配列は、次のとおりであった:Hac1ylRv07−018:
【0219】
【化12】
10mL培養物の酵母細胞を5mMのDTTの存在下で1.5時間インキュベートして、UPR反応を誘発した。インキュベーション後、RNAをそのDTT処理細胞から単離し、その単離されたRNAから逆転写酵素を用いて
第一鎖cDNAを調製し、そのcDNAをテンプレートとして使用し、上記プライマーを使用してPCRを行った。そのスプライスされたHAC1を含有するPCR増幅配列を、標準的な分子生物学技術を用いてpCR−blunt−TOPOクローングベクターに挿入し、塩基配列を決定した。
【0220】
Pichia pastoris HAC1スプライス部位。Pichia pastorisおよびSaccharomyces cerevisiae HAC1遺伝子のイントロン領域の配列相同性に基づき、Pichia pastoris HAC1遺伝子における可能性の有るスプライス部位を同定した(
図16)。その5’および3’スプライス部位は、
特徴的なループ構造内に局在すると予測され、そのイントロンは322bpの長さであると算出された。
【0221】
その予測スプライス部位の周囲でプライマー(HAC1Fw06−004およびHAC1Rv06−005)を
開発して、イントロンを同定した(表4参照)。そのイントロンを除去すると257ヌクレオチドのフラグメントが増幅されると予想され、イントロンが依然として存在すると579bpフラグメントが増幅されると予測された。UPR誘導および非誘導培養物からの単離されたmRNAから
第一鎖cDNAを合成した。このUPRは、指数増殖細胞の10mL培養物に5mMのDTTを添加することによって誘導した。それらの細胞をDTTの存在下で1.5時間培養した。その増幅産物を1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析した。およそ257bpのフラグメントを非誘導細胞と誘導細胞の両方からのcDNAから得た。
【0222】
【表4】
スプライスされていないP.pastoris HAC1遺伝子の長さを検証するために、プライマーHAC1−KarlおよびHAC1Rv06−005を使用してゲノムDNAでのPCRを行った。得られたフラグメントの長さを、誘導細胞培養物からのcDNAから得たPCR産物の長さと比較した。そのゲノムDNAからの増幅フラグメントは、同じプライマーを使用してそのcDNAから得たアンプリコンより約300bp長く、これは、そのイントロンがゲノムDNA配列中に存在し、スプライスされたmRNAが不在であることを示す。
【0223】
257bpのcDNAフラグメントをそのゲルから単離し、シーケンシングベクター内にクローニングした。そのフラグメントの塩基配列を決定し、アラインメントを行ってスプライス部位を同定した(
図17)。スプライスされたP.pastoris HAC1遺伝子を単離しクローニングするために、発現ベクターへのクローニングのための制限酵素部位を伴うPCRプライマーを開発した(HAC1−KarlおよびHAC1Rv06−009)。5mMのDTTで1.5時間、10mLの培養物をUPR誘導した。単離されたRNAから逆転写酵素を使用して
第一鎖cDNAを調製し、その後、上記プライマーを使用してそのcDNAテンプレートDNAを用いてPCRを行った。スプライスされたHAC1を単離し、塩基配列決定のためにpCR−blunt−TOPOクローニングベクター内にクローニングした。スプライスされた遺伝子もメタノール誘導性AOX1プロモーターの制御下で発現ベクターpBLHIS IX内にクローニングして、ベクターpBLHIS IX ppHAC1スプライス型を得た。そのHAC1遺伝子の発現ベクターへの正しい挿入を、PCRおよび制限酵素分析を用いて確認した。
【0224】
Saccharomyces cerevisiaeでは、スプライシングにより、スプライスされていな
いmRNA内のC末端の10アミノ酸のコーディング配列が、18アミノ酸のコーディング配列で置換される。
一致して、Pichia pastorisでは、スプライシングにより、スプライスされていないHAC1内のC末端の45アミノ酸のコーディング配列もまた18アミノ酸のコーディング配列(これは、S.cerevisiae配列からのものと相同である)によって置換されることを明らかにした(
図18)。
【0225】
(実施例7)スプライスされたHAC1遺伝子のYarrowia lipolyticaへの形質転換および誘導
Yarrowia lipolytica細胞(MTLY60株)を、hp4dプロモーターの発現制御下にあるスプライスされたHAC1 cDNAと選択マーカーとしてURA3遺伝子とを含有するベクター「PYHMAXHAC1ylスプライス型」(上記)を用いて形質転換した。酵母ゲノムへのこのベクターの組み込みをPCRを用いて検証した。そのPYHMAXHAC1ylスプライス型で形質転換されたMTLY60株をYPG中の2mLの培養物で、28℃で24時間増殖させた。それらの培養細胞をYNBで2回洗浄し、OD
600 0.6に希釈し、50mMのリン酸緩衝液(pH:6.8)で緩衝したYTG中で24時間増殖させた。その後、それらの細胞をOD
600 0.2に希釈し、さらに3世代増殖させて、中間指数期でそれらの細胞を回収した。そのペレットに、1mLのRNApure(商標)溶液を1gのガラスビーズと共にそれらの細胞に添加した。激しく振盪することによって細胞を破壊した。150μLのクロロホルムの添加によってそれらの破壊細胞からRNAを抽出し、イソプロパノールでRNAを沈殿させた。抽出されたRNAをDNAseででも処理して、一切の共沈DNA不純物を除去した。
【0226】
iScriptTMcDNA Synthesis Kit(カリフォルニア州、ハーキュリーズのBio−Rad Laboratories)を使用して、20μL総容量反応で800ngのRNAから
第一鎖cDNAを調製した。20ng RNA当量を実時間PCR分析に用いて、それらの細胞中のHAC1 mRNAの量を決定した。実時間PCRは、SYBR(登録商標)グリーン(蛍光性)(Eurogentec)を検出試薬として使用して実行した。それらの細胞中のHAC1 mRNAの量を検出するためのプライマーを設計することに加えて、実時間PCRのための対照としてACT1遺伝子(ハウスホールド遺伝子)およびKAR2遺伝子(UPR反応性遺伝子)の量を定量するためのプライマーも設計した。それらの細胞中のそれぞれの遺伝子のmRNAの相対量を、発現対照としてActin(ハウスキーピング遺伝子)を使用して比較閾サイクル値から算出した。それらの細胞によるUPR反応の誘導を、UPRの発現を測定することによって確認した。HAC1ばかりでなくKAR2の発現レベルは、野生型株MTLY60と比較して、構成的プロモーターの制御下でHAC1を発現する株におけるほうが高い(
図39)。
【0227】
(実施例8)スプライスされたHAC1遺伝子のPichia pastorisへの形質転換および誘導
培地:以下の実験のために3タイプの培地を用いた:BMY(酵母用緩衝培地:100mMリン酸カリウム(pH:6.0)/アミノ酸を伴わない1.34% YNB/1%酵母抽出物/2%ペプトン);BGMY(酵母用緩衝グリセロール−複合培地:100mMリン酸カリウム(pH:6.0)/アミノ酸を伴わない1.34% YNB/1%酵母抽出物/2%ペプトン/1%グリセロール);およびBMMY(酵母用緩衝メタノール−複合培地:100mMリン酸カリウム(pH:6.0)/アミノ酸を伴わない1.34% YNB/1%酵母抽出物/2%ペプトン/0.5%グリセロール)。
【0228】
Pichia Expression kit(Invitrogen Cat.No.K1710−01)からのエレクトロポレーションプロトコルに従って、Pichia pastoris細胞を形質転換した。ベクターpBLHIS IX ppHAC1スプライス型をHIS4遺伝子内で線形化して、その構築物を組み込みのためのHIS4遺伝子座にターゲッティングした。10マイクログラムのDNAを酵母細胞に形質転換した。その構築物の正しい組み込みを、単一コロニーの単離後のゲノムDNAでのPCR(プライマーHAC1−KarlおよびHAC1Rv06−005)を用いて検証した。形質転換細胞から得たDNAから915kbおよび1237kbのフラグメントが増幅され、これに対して非形質転換体(その構築物が組み込まれていない細胞)では1237kbのフラグメントが増幅された。プラスミドの組み込みについて陽性であると同定されたクローンを誘導前に24時間、10mLのBMGY培地中で増殖させた。細胞をBMYで1回洗浄した。誘導培
養物にBMYを添加した一方で、非誘導培
養物にはBMGYを添加した。12時間ごとに、誘導培養物に0.5%メタノール(最終濃度)を供給した。24時間、誘導を行い、その後、細胞を遠心によって回収した。RNAを調製するために、細胞を1mLのRNApure(商標)(ニューヨーク州、ナッシュビルのGenhanter Corporation)および1gのガラスビーズと併せ、激しく振盪させることによって溶解した。150μLのクロロホルムの添加によってRNAを抽出し、イソプロパノールで沈殿させた。抽出し、沈殿させたRNAを、Qiagenから入手したRNAse不含DNAse(Cat No.79254)でDNAse処理した。400ngの全RNAを、oligodTプライマーおよびSuperscript II逆転写酵素(Invitrogen、Cat.No.18064−014)を使用する逆転写酵素反応に付した。20ng RNA当量を実時間PCR反応に用いた。プライマー配列は、Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)によって設計した(配列についてはプライマー表を参照のこと)。SYBRグリーン蛍光試薬(Eurogentec)を利用する実時間PCRを、BioRadからのiCyclerマシーンで実行した。ハウスキーピング遺伝子アクチンを対照として用いて比較閾サイクル値からmRNAの相対量を算出した。UPRの定量は、UPR−ターゲット遺伝子KAR2の発現分析によって行う。メタノールで誘導した同じクローンと比較して誘導しなかったクローンを比較すると、KAR2の3から7倍高い発現が達成された(
図19)。
【0229】
2つの追加のクローン6およびクローン8からのHAC1 mRNAの相対量を定量的PCRによって決定し、Kar2のmRNAの相対量と比較した。HAC1の強い誘導が両方のクローンにおいて観察された。KAR2 mRNAの相対量は、HAC1 mRNAの相対量と相関するようであった。HAC1の発現レベルが高いほど高いKAR2の発現量がもたらされる(
図20)。
【0230】
蛍光フローサイトメトリー(FFC)を用いてメタノール誘導培養物の細胞死の調査を行い、非誘導細胞の細胞死と比較した。分析1回につき1万個の細胞を測定した。12、36および48時間の誘導後に、FACScalibur(商標)(Becton Dickinson)で細胞を分析した。細胞死は観察されなかった。GlycoSwitchM5(GSM5)株は、主コアタイプグリカン構造として主としてMan
5GlcNAc
2(構造式IV;
図4)を有する。Hac1p誘導がN−グリカン構造に対して影響を及ぼすかどうかを確認するために、1mLの培養基のDSA−FACE分析を行った。スプライスされたHac1pの48時間の誘導後に得られるグリカンプロフィールは、親GSM5株のプロフィールに類似している。
【0231】
Hac1pの誘導がP.pastorisの増殖を損なわせるかどうかを確認するために増殖曲線を作成した。空ベクター形質転換株と比較してHac1p誘導株の増殖
欠陥は見られなかった(
図22)。
【0232】
(実施例9)Y
lMNN6の発現
S.cerevisiaeにおいて、MNN6は、ホスホマンノース残基をN−グリカンに転移させる。従って、Y.lipolyticaにおけるYlMNN6の過
剰発現は、リン酸化増加をもたらすことができる。さらに、YlMNN4およびYlMNN6の過
剰発現によって、Y.lipolyticaのリン酸化に対する追加効果を得ることができる。YlMNN6コーディング領域(Genbank(登録商標)アクセッション番号XM_499811、Genolevures Ref:YALI0A06589g)を、PCRプライマー
【0233】
【化13】
を使用してそのゲノムからPCR増幅し、hp4dプロモーターの制御下での発現のためにpYHmAX発現ベクター内にクローニングした(
図21)。ランダム組込みを向上させるためにゼータ配列を使用してそのプラスミドをY.lipolytica株MTLY60に
形質転換させた。ウラシルを伴わない培地で増殖させた細胞クローンから分泌された糖タンパク質を回収し、DSA−FACEを用いて、それらの糖タンパク質を合成したグリカンの組成を分析した。しかし、リン酸化増加は観察されなかった(
図22)。
【0234】
(実施例10)Hac1p発現の影響
異種タンパク質の分泌に対するHac1p過
剰発現の評価
ヒグロマイシン耐性マーカーと、誘導性AOX1プロモータ
ーの制御下
にあるスプライスされたHAC1 cDNAとを含有するベクター(pPIChygppHAC1スプライス型)または
ヒグロマイシン耐性マーカーと、構成的GAPプロモータ
ーの制御下にあるスプライスされたHAC1 cDNAとを含有するベクター
(pGAPhygHAC1ppスプライス型)を
、誘導性AOX1プロモーターの制御下でmIL−10タンパク質を発現するGS115株に形質転換
した。Pichia Expression kit(Invitrogen Cat.No.K1710−01、カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen)からのエレクトロポレーションプロトコルに従って、P.pastoris細胞を形質転換した。それらのベクターを前記AOX1またはGAPプロモーター内で線形化して、Hac1p遺伝子の組み込みをそれぞれそのAOX1またはGAP遺伝子座にターゲッティングした。そのプラスミドの宿主ゲノムへの組み込みをPCRを用いて確認した。
【0235】
陽性同定クローンからの前培養物(5mL)を24時間、YPD中で増殖させた。それらの培養物中の細胞の600nmの波長での濃度(OD)(OD
600)を測定し、培養物を、24ウエルプレートのそれぞれのウエルの2mLのBMGY培地中、1のOD
600に希釈した。48時間、BMGY中で培養物を増殖させ、BMYで2回洗浄し、その後、BMMY中で24時間誘導した。8から12時間ごとに、1%メタノール(最終濃度)を含有する培地を培養物に再供給した。誘導後、細胞の上清を回収し、トリクロロ酢酸(TCA)を使用して、1mLの上清からタンパク質を沈殿させた。その沈殿したタンパク質を15%SDS−PAGEに付した。
【0236】
そのSDS−PAGEから、少なくとも1つのタンパク質−mIL−10−の発現に関するクローン的変動を異なるクローン間で観察した。例えば、Hac1pタンパク質を(GAPプロモーターの制御下で)構成的に発現するクローンについては、発現レベルの改善が観察されず、これに対してHac1pを誘導(AOX1プロモーター)により発現するクローンについては、より高いmIL−10タンパク質発現レベルを示す2つのクローンを同定することができた(
図40および
図41)。それらのクローンのそれぞれによるmIL−10の発現を、
参照GS115 mIL−10発現株が生じさせるmIL−10の発現と比較した。
【0237】
これらのクローンについて新たな誘導を行った。24時間増殖させた前培養物をバッフル
付きフラスコ内で20mL BMGY中、OD 1に希釈した。細胞をBMGY中で48時間増殖させ、2回洗浄し、その後、BMMYで誘導した。1%メタノールを含有する培地を8〜12時間ごとに培養物に再供給した。誘導後、細胞の上清を回収し、TCAを使用して1mLの上清からタンパク質を沈殿させた。その沈殿したタンパク質を15%SDS−PAGEに付す前に、すべてのグリコシル化を除去する(またはしない)ようにそのタンパク質をPNGase Fで処理した(
図41)。Hac1p発現株の上清からのSDS−PAGE分離タンパク質は、75kDaの顕著なバンドを含んでいた。これは、
参照株中には存在しない。このバンドは、質量分析により、最も顕著なUPRターゲット遺伝子であるKar2pであると同定された。サイトカインビーズアレイ(CBA)を用いて、Hac1pおよびmIL−10タンパク質の
同時誘導性発現が、mIL−10タンパク
質の2倍高い発現をもたらすことができることを証明することができた
(クローン1、図41)。CBAは、endoH処理mIL−10タンパク質を用いて行った。
【0238】
異種タンパク質
の表面発現に関するHac1p過
剰発現の評価
ヒグロマイシン耐性マーカーと誘導性AOX1プロモータ
ーの制御下
にあるスプライスされたHAC1 cDNAとを含有するベクター(pPIChygppHAC1スプライス型)または
ヒグロマイシン耐性マーカーと構成的GAPプロモータ
ーの制御下にあるスプライスされたHAC1 cDNAとを含有するベクター
(pGAPhygHAC1ppスプライス型)を
、成熟ヒトインターフェロン−ベータ/アルファ−アグルチニン融合タンパク質、成熟マウスインターフェロンガンマ/アルファ−アグルチニン融合タンパク質、成熟ヒトエリスロポエチン/アルファ−アグルチニン融合タンパク質、またはアルファ−アグルチニンとマウストロンボモジュリンのレクチン様ドメインとの融合タンパク質(これらのそれぞれが、誘導性AOX1プロモーターの制御下にある)を発現するGlycoswitchMan5株に形質転換し
た。Pichia Expression kit(Invitrogen Cat.No.K1710−01)からのエレクトロポレーションプロトコルに従って、P.pastoris細胞を形質転換した。それらのベクターを前記AOX1またはGAPプロモーター内で線形化して、組み込みのためにHac1p遺伝子をそれぞれそのAOX1またはGAP遺伝子座にターゲッティングした。そのプラスミドの宿主ゲノムへの組み込みをPCRを用いて確認した。
【0239】
陽性同定クローンからの前培養物(5mL)を24時間、YPD中で増殖させた。そのOD
600を測定し、培養物を、24ウエルプレートのそれぞれのウエル内の2mLのBMG
Y中、1のOD
600に希釈した。24時間、BMGY中で培養物を増殖させ、脱イオン水で2回洗浄し、その後、BMMY中で24時間(1%メタノールを含有する培養基を使用して)誘導した。V
HHコーディング配列にC末端融合するV5−エピトープに特異的な抗体での間接免疫染色によって表面発現を立証した。誘導後、0.1%ウシ血清アルブミンを補足した1mLのPBS(pH7.2)(PBS/BSA)中の10
7個の細胞を1μL/mLの抗V5抗体(1μg/μL;Invitrogen)と共にインキュベートし、PBS/BSAで洗浄し、1μL/mLのAlexa fluor 488標識ヤギ抗マウスIgG(1μg/μL;Molecular Probes)と共にインキュベートした。PBS/BSAで2回洗浄した後、それらの細胞をフローサイトメトリーによって分析した(表5)。
【0240】
【表5】
MFI=フローサイトメトリー分析によって得られた平均蛍光強度
Hac1pタンパク質を構成的に発現する株については、表面タンパク質のみを発現する
参照株と比較して、4つすべてのタンパク質について表面発現レベルの改善をまったく観察することができ
ないか、また、該発現レベルのはるかに小さな差しか観察することができなかった。ヒトインターフェロンベータを発現する細胞において、表面発現レベルの有意な減少が観察された。誘導性Hac1pを
過剰発現する株(表5)については、次のことを観察することができた:1)ヒトインターフェロン−ガンマ表面発現株では、ヒトインターフェロン−ベータa−アグルチニン融合体のみを発現する
参照株と比較して、表面発現レベル
が1.8
分の1になったことを観察することができ;2)ヒトエリスロポエチンa−アグルチニン融合タンパク質を表面発現する株については、前記
参照株と比較して、表面発現レベル
が1.3
分の1になったことを観察することができ;3)ヒトインターフェロン−ベータを表面発現する株では、前記
参照株と比較して、表面発現の差を観察することができず;および4)マウストロンボモジュリンレクチン様ドメインを表面発現する株では、前記
参照株と比較して、表面発現レベル
が1.9倍
になったことを観察することができた。
【0241】
リン脂質合成に対するHac1pの過
剰発現の影響
(スプライスされたHAC1 cDNAから生産される)Hac1p産物の過
剰発現が、P.pastorisにおける脂質代謝に影響を及ぼすかどうかを
決定するために、上で説明したスプライスされたHAC1 cDNAで細胞を形質転換し、それらの細胞における脂質代謝に対するHac1pの影響を電子顕微鏡分析によって
決定した。細胞をBMGYで48時間増殖させ、PBSで1回洗浄し、その後、BMMYでさらに48時間増殖させた。次に、8から12時間ごとに1%メタノールを含有する培地でそれらの細胞を培養した。その後、Baharaeenの方法(Baharaeenら(2004)Mycopathologia)による電子顕微鏡検査のためにそれらの細胞を
調製した。簡単に言うと、グルタルアルデヒド(3%)とパラ−ホルムアルデヒド(pH7.2の0.05Mのカコジル酸ナトリウム中で緩衝された1.5%)とを含有する第一固定液を氷上で2時間、それらの細胞と接触させる。その後、それらの細胞を20分間、0.05Mのカコジル酸ナトリウムで3回洗浄した。洗浄後、それらの細胞を6%過マンガン酸カリウム溶液と1時間、室温で接触させ、その後、20分間、0.05Mのカコジル酸ナトリウムで3回洗浄した。実験結果を
図54に提示する。P.pastorisにおける(スプライスされたHAC1 cDNAから生産される)Hac1p産物の過
剰発現は、
図54に示す電子顕微鏡写真(EM)において見ることができるような離散した積層膜領域の形成をもたらす。これらの結果は、脂質代謝に関与する遺伝子のその転写活性化経由でのHac1pの過
剰発現が、P.pastorisにおける脂質代謝に対して強い影響を
確かに及ぼすことを明示している。
【0242】
(実施例11)ManHDELの発現
Δoch1株によって発現される糖タンパク質に結合するMan
5GlcNAc
2の場合、α−1,2−マンノシダーゼを発現して、Man
8GlcNAc
2をMan
5GlcNAc
2へと切断することができる(すなわち、ゴルジ型α−1,2−マンノシダーゼ活性)。このマンノシダーゼは、分泌系にターゲッティングされるはずである。S.cerevisiae prepro接合因子に融合しており、H
DEL配列で
タグ付けされたTrichoderma reesei α−1,2−マンノシダーゼ(GenBank(登録商標)アクセッション番号:AF212153)は、Trichoderma reeseiおよびAspergillus nigerにおいてばかりでなくPichia pastorisにおいてもインビボでMan
8GlcNAc
2をMan
5GlcNAc
2へとトリミングすることができる。構成的hp4dプロモーターの制御下でY.lypolyticaにおいてMFManHDEL(HDEL配列で
タグ付けしたTrichoderma reesei α−1,2−マンノシダーゼ
に融合したS.cerevisiaeα−接合因子
prepro)を過
剰発現する発現構築物を作製した(
図23)。制限酵素NotIでのプラスミドpYHmAXManHDELの消化、それに続くアガロースゲル電気泳動を用いる所望のフラグメントの単離後、その発現カセットをそれらの細胞に形質転換した。
【0243】
それらの形質転換細胞からのマンノプロテインから得たグリカンを、DSA−FACEを用いて分析した。Man
8GlcNAc
2のほんの少しの
割合しかMan
5GlcNAc
2に転化されなかった(
図24)。Man
8GlcNAc
2からMan
5GlcNAc
2への不完全な転化は、最適でない分泌シグナルに起因した。従って、そのSaccharomyces cerevisiae分泌シグナルを、十分に発現されるYarrowia lipolytica LIP2から得た分泌シグナル(LIP2pre)で置換した。このLIP2pre配列を、合成オリゴヌクレオチドLIP2pre fw GATCCATGAAGCTTTCCACCATCCTCTTCACAGCCTGCGCTACCCTGGCCGCGGTAC(配列番号66)およびLip2prepro rv GTACCGGCCGGCCGCTTCTGGAGAACTGCGGCCTCAGAAGGAGTGATGGGGGAAGGGAGGGCGGC(配列番号67)をハイブリダイズすることによって作製し、そのDNAをpYLHmAベクター(BamHI/AvrII部位)にクローニングして、以下の構築物を得た:pYLHUdL2pre。そのManHDELコーディング配列を、オリゴヌクレオチドManHDEL Eco47IIIfw(GGCAGCGCTACAAAACGTGGATCTCCCAAC(配列番号68))およびManHDEL AvrII rv(GGCCCTAGGTTACAACTCGTCGTGAGCAAG(配列番号69))を使用してpGAPZMFManHDELからPCR増幅し、pYLHUdL2pre内にクローニングした。この構築戦略を
図25に示す。そのプラスミドのNotIでの消化および適正なフラグメントの単離(上記参照)後、(構成的プロモーターhp4dの制御下にあるL2preManHDELを伴う)その発現カセットをYarrowia lipolytica Δoch1株に形質転換した。分泌されたタンパク質から得たグリカンをDSA FACEによって分析した。Man
8GlcNAc
2からMan
5GlcNAc
2への多少の転化が発生したが、その反応は不完全であった(Man
8GlcNAc
2ばかりでなく中間
産物Man
7GlcNAc
2およびMan
6GlcNAc
2も存在した;
図26)。
【0244】
Man
8GlcNAc
2、Man
7GlcNAc
2およびMan
6GlcNAc
2のMan
5GlcNAc
2へのトリミングをさらに改善するために、Trichoderma reesei α−1,2−マンノシダーゼのコドンをYarrowia lipolyticaでの発現のために最適化し(配列番号9;
図42)、LIP2 preシグナル配列に融合させた。この融合構築物は、4つの異なるプロモーター:(i)hp4d、(ii)GAP(配列番号10;
図43)、(iii)POX2、および(iv)TEF1の制御下で発現させた。最終発現プラスミドをpYLHUXdL2preManHDEL(配列番号11;
図44A−C)pYLGUXdL2preManHDEL(配列番号12;
図45A−)pYLPUXdL2preManHDEL(配列番号13;
図46A−C)pYLTUXdL2preManHDEL(配列番号14;
図47A−C)と名づけた。NotIでのプラスミドの切断、そしてManHDEL発現カセットを含有するフラグメントの単離後、4つすべてのプラスミドをYarrowia lipolytica MTLY60 Δoch1株(実施例2に記載)に形質転換した。hp4d、GAPおよびTEFプロモーターの制御下にあるManHDELを有する形質転換株(プラスミドpYLHUXdL2preManHDEL、pYLGUXdL2preManHDELおよびpYLTUXdL2preManHDEL)をYPD中で増殖させた。
【0245】
形質転換株の分泌タンパク質から得たグリカンをDSA FACEによって分析した。結果を
図48に提示する。あるいは、形質転換体(pYLPUXdL2preManHDELプラスミドが組み込まれた形質転換体を含む)を、オレイン酸を含有する培地(タンパク質生産条件)で増殖させ、グリカンをDSA−FACEによって分析した。ベクターのうちの1つ、pYLTUXdL2preManHDEL、についてのデータを
図49に提示する。このデータから結論付けることができることとして、48時間の培養により、ほぼすべてのグリカンがMan
5GlcNAc
2に転化される。
【0246】
(実施例12)POX2プロモーター制御遺伝子発現のための培養条件
新しいプレートの単一コロニーから培養を開始し、250rpmのオービタルシェーカー内の50m
L管の中の28℃の10mL YPDにおいて一晩増殖させた。次に、22mLの生産培地(2.5mLのオレイン酸エマルジョンを含む)が入っている250mL振盪フラスコにその前培養物を0.2の最終OD600で接種した。この培養物を250rpmのオービタルシェーカーの中で28℃でインキュベートした。その培養物のサンプルを、96時間培養を通して様々な時点で採取した。
【0247】
オレイン酸エマルジョン(20%)は、次のような方法で作製した:
滅菌50mLベッセルに、
20mLの滅菌水;
5mLのオレイン酸;および
125μLのTween 40
を添加する。
75Hzで1分間、超音波処理を行って、エマルジョンを形成させる。
【0248】
生産培地は、以下のものから成った:
1%酵母抽出物;
2%トリプトン;
1%グルコース;および
50mM ホスフェート pH6.8。
【0249】
(実施例13)ヒトグルコセレブロシダーゼの発現
ヒトグルコセレブロシダーゼ(GLCM、Swiss Prot entry nr:P04061)を、Yarrowia lipolyticaでの発現用のコドン最適化cDNAとして化学合成した(配列番号15、
図50)。
【0250】
成熟タンパク質についてのコーディング配列を、LIP2 preシグナル配列のコーディング配列に融合させた。この融合構築物をオレイン酸誘導性POX2プロモーターの制御下でクローニングした。結果として生じたプラスミドをpYLPUXL2preGLCM(=pRAN21)と名づけた。形質転換前に、そのプラスミドをNotIで消化し、発現カセットを含有するフラグメントを単離し、Yarrowia lipolytica株MTLY60、MTLY60Δoch1(上の実施例2に記載)、およびMTLY60Δoch1ManHDEL(実施例11に記載)に形質転換した。これらの3つの株から得た形質転換体を、実施例12において記載したとおり増殖させた。上に記載したとおりその上清からタンパク質を沈殿させ、SDS−PAGEに付し、そしてラットモノクローナル抗グルコセレブロシダーゼ抗体(Allessandriniら(2004)J.Invest.Dermatol 23(6):1030−6)を使用して免疫ブロットした。具体例としての免疫ブロット分析を
図51に示す。och1破壊株ではスミアリングが発生せず(レーン1、2および3)、これに対してWT細胞ではタンパク質の異質性がスミアとして見られる(レーン4および6)ことが
図51からわかる。ManHDELを発現する酵母の株から得たタンパク質では、タンパク質のスミアリングが観察されなかった。これらの結果は、遺伝子操作したYarrowia lipolytica細胞MTLY60Δoch1およびMTLY60Δoch1ManHDELを使用すると、ターゲットタンパク質のより
均一な集団を得ることができることを明示している。
【0251】
(実施例14)ヒトエリスロポエチンの発現:
ヒトエリスロポエチン(Epo、Swiss Prot entry nr:P01588)をコードするcDNAを化学合成し、Yarrowia lipolyticaにおける発現のためにコドンを最適化した(配列番号16;
図52)。その成熟タンパク質についてのcDNAコーディング配列をLIP2 preシグナル配列のコーディング配列に融合させた。この融合構築物を、オレイン酸誘導性POX2プロモーターの制御下でクローニングした。結果として生じたプラスミドをpYLPUXL2prehuEPOと名づけた。形質転換前に、そのプラスミドをNotIで切断し、発現カセットを含有するフラグメントを単離し、Yarrowia lipolytica株MTLY60Δoch1(実施例2に記載)に形質転換した。形質転換体候補を、実施例12に記載したとおり増殖させ、分泌されたタンパク質を、SDS PAGE後、R&D systemsから入手したモノクローナルマウス抗ヒトEpo抗体(クローンAE7A5)を使用するウエスタンブロットによって分析した。それらの細胞から得たEPO産物は、非常に均一なグリコシル化を示した。
【0252】
(実施例15)ヒトα−ガラクトシダーゼAの発現:
ヒトα−ガラクトシダーゼA(AGAL、Swiss Prot entry nr:P06280)をコードするcDNAを、Yarrowia lipolyticaにおける発現用のコドン最適化cDNAとして化学合成した(配列番号17;
図53)。
【0253】
その成熟タンパク質についてのcDNAコーディング配列をLIP2 preシグナル配列のコーディング配列に融合させた。この融合構築物を、オレイン酸誘導性POX2プロモーターの制御下でクローニングした。結果として得られたプラスミドをpYLPUXL2preaGalaseと名づけた。形質転換前に、そのプラスミドをNotIで切断し、発現カセットを含有するフラグメントを単離し、Yarrowia lipolytica株MTLY60およびMTLY60Δoch1MNN4(実施例4に記載)に形質転換した。これら2つの株において得た形質転換体を、実施例12に記載したとおり増殖させた。形質転換体から得た細胞外タンパク質を、SDS PAGE後、免疫ブロットによって分析した。α−ガラクトシダーゼAに特異的な2つの抗体(Abcamから入手したニワトリポリクローナル抗体(ab28962)およびSanta Cruz Biotechnologyから入手したウサギポリクローナル抗体(sc−25823))を使用して、それらの発現されたヒトα−ガラクトシダーゼAタンパク質を検出した。
【0254】
(実施例16)WT Yarrowia lipolyticaにおけるマンノシダーゼの発現
マンノシダーゼHDELのみの(すなわち、機能性OCH1遺伝子を含有する細胞における)発現が、真菌細胞によって発現されるタンパク質のより均一なグリコシル化をもたらすことができるかどうかを
決定するために、マンノシダーゼHDELをコードする核酸を含有する発現カセット(実施例11参照)を野生型Yarrowia lipolytica po1d細胞に形質転換した。それらの細胞から得た分泌タンパク質から
得られたグリカンをDSA−FACEによって分析した(
図55)。分析したグリカンは、主として、Man
5GlcNAc
2および
少ない部分
であるMan
6GlcNAc
2から成った。これらの結果は、OCH1遺伝子の破壊が一切ない、マンノシダーゼHDELのみの発現が、Yarrowia lipolyticaによって発現されるタンパク質のより均一なグリコシル化をもたらすことを明示している。
【0255】
他の実施形態
本発明を「発明を実施するための形態」に関連して説明したが、上述の説明は、本発明を例証するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点および変形は、以下の特許請求の範囲の範囲内である。