特許第5967870号(P5967870)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967870中空ラックバー製造装置及び中空ラックバー製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967870
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】中空ラックバー製造装置及び中空ラックバー製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21K 1/76 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B21K1/76 A
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-139531(P2011-139531)
(22)【出願日】2011年6月23日
(65)【公開番号】特開2013-6189(P2013-6189A)
(43)【公開日】2013年1月10日
【審査請求日】2014年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100119976
【弁理士】
【氏名又は名称】幸長 保次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(74)【代理人】
【識別番号】100134290
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 将訓
(72)【発明者】
【氏名】山脇 崇
(72)【発明者】
【氏名】細木 真保
【審査官】 水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−229674(JP,A)
【文献】 特開2000−094082(JP,A)
【文献】 特開平04−284929(JP,A)
【文献】 特開2009−279596(JP,A)
【文献】 特開平09−285813(JP,A)
【文献】 特開平04−333329(JP,A)
【文献】 特開2009−280199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯型を有し、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した金属製中空素材を保持する金型と、
前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金と、
この芯金を、前記金型に保持された中空素材内部に圧入させる圧入機構と、
前記歯型に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与する超音波振動付与機構とを備えていることを特徴とする中空ラックバー製造装置。
【請求項2】
歯型を有し、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した金属製中空素材を保持する金型と、
前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金と、
この芯金を、前記金型に保持された中空素材内部に圧入させる圧入機構と、
前記中空素材に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与する超音波振動付与機構とを備えていることを特徴とする中空ラックバー製造装置。
【請求項3】
前記圧入機構は、前記金型の片側に配置され、前記芯金を支持するとともに、前記金型に保持された中空素材の一端開口に前記芯金を挿入可能とする位置に前記芯金を移動させる芯金ホルダと、
前記芯金ホルダ及び前記中空素材の一端開口を通って前記中空素材内に挿脱され、その挿入により前記芯金を前記中空素材内に圧入する第1の芯金押棒と、
この第1の芯金押棒と反対側から他端開口を通って前記中空素材内に挿脱され、前記芯金を、第1の芯金押棒と挟持した状態で、前記芯金ホルダから前記中空素材内に圧入させるとともに前記芯金ホルダに向けて押戻す第2の芯金押棒とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中空ラックバー製造装置。
【請求項4】
歯型を有した金型に、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した中空素材を保持し、
前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金を圧入し、
前記歯型に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与することを特徴とする中空ラックバー製造方法。
【請求項5】
歯型を有した金型に、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した中空素材を保持し、
前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金を圧入し、
前記中空素材に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与することを特徴とする中空ラックバー製造方法。
【請求項6】
前記圧入は、中空素材の一端開口を通って前記中空素材に挿脱される第1の芯金押棒と前記中空素材の他端開口を通ってこの素材に挿脱される第2の芯金押棒とで、前記金型に対して前記第1の芯金押棒が挿脱される側のみに配置された芯金を挟持するとともに、この芯金を少なくとも前記第1の芯金押棒で回り止めし、この回り止め状態を維持したまま前記両芯金押棒により前記芯金を前記中空素材内に前記一端開口から導入した後、前記芯金を前記第1の芯金押棒で回り止めしつつ前記中空素材内に圧入してから前記第2の芯金押棒で前記芯金を前記第1の芯金押棒との間に挟持した状態で押戻すことを特徴とする請求項4又は5に記載の中空ラックバー製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーステーリング装置等に使用される中空ラックバーを製造するための中空ラックバー製造装置及び中空ラックバー製造方法に関し、特に生産性を向上できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のパワーステアリング装置に使用される中空ラックバーの製造方法としては従来は丸棒からの切削によるものが多かった。しかしながら、複雑な形状及び軽量化に対応するため、パイプ材から転写鍛造によって製造するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、まず、パイプ材を冷間鍛造金型によって加圧することにより歯成形工程の第一工程として上面が平坦に形成され、その後、ボンデ処理を施し、次工程でパイプ材の空洞に芯金が圧入される。芯金はテーパ状の突起部を有しており、突起部がパイプ材の平坦部に内周側において係合することにより平坦部の肉は成形型の歯列に向けて塑性変形的に流動することにより張出され、パイプ材の外周平坦部に成形型の歯列に対応した形状の直線方向の歯列が転写方式にて付与され、中空ラックバーとすることができる。なお、歯の成形性を向上させるために、成形型とパイプ材との間に加工油を塗布することもあった。
【0003】
一方、芯金の圧入時にパイプ材との摩擦等により加工中にビビリ振動等の不規則な振動が発生し、この振動が加工品(パイプ材)に対し悪影響を及ぼして品質の低下を招くという問題があった。このため、芯金の基部に超音波発生装置を接続し、この芯金に所要の微振動を付与するようにしてビビリ振動の発生を防止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平3−5892号公報
【特許文献2】特開2000−94082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した中空ラックバーの製造方法では、次のような問題があった。すなわち、中空ラックバーに形成される歯部(ラック)として十分な歯幅や歯丈を確保しようとすると、成形時に無理がかかる。例えば、芯金の通し本数が多くなり生産効率が低下する。また、成形型の寿命が短くなり、製造コストが上昇する。また、歯部のファイバーフローに乱れが生じ強度や耐久性が低下する。
【0006】
そこで本発明は、歯部として十分な歯幅や歯丈を確保しつつ、生産性を低下させずに中空ラックバーを製造するための中空ラックバー製造装置及び中空ラックバー製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の中空ラックバー製造装置及び中空ラックバー製造方法は次のように構成されている。
【0008】
歯型を有し、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した金属製中空素材を保持する金型と、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金と、この芯金を、前記金型に保持された中空素材内部に圧入させる圧入機構と、前記歯型に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与する超音波振動付与機構とを備えている。
【0009】
歯型を有し、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した金属製中空素材を保持する金型と、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金と、この芯金を、前記金型に保持された中空素材内部に圧入させる圧入機構と、前記中空素材に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与する超音波振動付与機構とを備えている。
【0010】
歯型を有した金型に、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した中空素材を保持し、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金を圧入し、前記歯型に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与する。
【0011】
歯型を有した金型に、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した中空素材を保持し、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金を圧入し、前記中空素材に前記芯金の圧入方向と平行に超音波振動を付与する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歯部として十分な歯幅や歯丈を確保しつつ、生産性を低下させずに中空ラックバーを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施の形態に係る中空ラックバー製造装置を示す縦断面図。
図2A】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図2B】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図2C】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図2D】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図2E】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図2F】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図2G】同中空ラックバー製造装置による製造工程を示す縦断面図。
図3】本発明の第2実施の形態に係る中空ラックバー製造装置を示す縦断面図。
図4】本発明の第3実施の形態に係る中空ラックバー製造装置を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1実施の形態に係る中空ラックバー製造装置10を示す縦断面図である。中空ラックバー製造装置10は、鋼管(中空素材)1Aから中空ラックバー1を製造する。鋼管1Aは、図1中左端に位置する一端開口2と図1中右端に位置する他端開口3とを有している。鋼管1Aには、予め中央部位に加工壁部5が形成されている。この加工壁部5の外面にラック4が形成される。加工壁部5は、鋼管1Aの管壁の一部を、平坦面となるように鋼管1Aの内側方向にプレス加工で押し潰して設けられる。
【0015】
中空ラックバー製造装置10は、金型20と、芯金ホルダ30と、芯金駆動機構(圧入機構)40と、芯金ガイド50と、後述する歯型24に超音波振動を付与する超音波発生部(超音波振動付与機構)60とを備えている。
【0016】
金型20は、上型21と下型22とを備え、型締め機構23とを備えている。下型22は上面に鋼管1Aを載置するためのセット溝22aが設けられている。型締め機構23により上型21は下型22に対して上方から型締め及び型開きされる。
【0017】
上型21は下面に鋼管1Aを挟持するためのセット溝21aが設けられている。また、セット溝21aの凹部21bが設けられ、歯型24が取外し可能に装着されている。この歯型24の下端部に凹凸をなした下向きの歯部24aが形成されている。さらに、上型21には、後述するホーン63が側面側から挿入される孔部21cが形成されている。
【0018】
型締めされた状態で、セット溝21a,22aは互いに合わさって鋼管1Aを上下から挟持するとともに、歯型24の歯部24aが突出され、鋼管1Aの加工壁部5に当接している。
【0019】
芯金ホルダ30には、複数の保持孔31が設けられ、これらの保持孔31はセット溝21a,22aが延びる方向に芯金ホルダ30を貫通していて、その内部に芯金Mが個別に収容されている。芯金ホルダ30に支持された各芯金Mは、金型20に対して後述する第1の芯金押棒41が挿脱される側に位置されている。
【0020】
芯金ホルダ30は図1中上下方向に移動する。この移動が行われるたびに、複数の保持孔31の内の一つが順次選択されて互いに合わさったセット溝21a,22aがつくる孔の一端に対向される。そのため、芯金ホルダ30に支持された芯金Mを順次鋼管1A内に出し入れすることが可能である。
【0021】
各芯金Mは金属で作られている。芯金Mにはその硬度と耐摩耗性を鋼管1Aより高くするための処理が施されている。芯金Mの長さは、歯型24の歯部24aの長さの半分以下と短く設定されている。また、芯金Mの高さはいずれも異なっている。加工時の芯金ホルダ30に対する芯金Mの出し入れは、相対的に低い芯金Mから順次なされる。
【0022】
芯金駆動機構40は、第1の芯金押棒41及び第1の押棒駆動部42と、第2の芯金押棒43及び第2の押棒駆動部44とを備えている。第1の芯金押棒41は芯金Mの図1中左端に当接し、第1の押棒駆動部42により鋼管1A内に圧入する機能を有している。第2の芯金押棒43は芯金Mの図1中右端に当接し、第2の押棒駆動部44により鋼管1A内に圧入する機能を有している。
【0023】
超音波発生部60は、円筒状の筐体61と、この筐体61内部に収容された振動子62と、この振動子62の端部に取り付けられたホーン63とを備えている。ホーン63の先端側は上型21の孔部21cから挿入し、先端が歯型24に当接している。これにより、超音波発生部60は、歯型24に周波数20KHz〜60KHz、振幅1〜10μmの振動を付与する。
【0024】
上述した中空ラックバー製造装置10を用いて鋼管1Aから中空のラックバー1を製造する手順を説明する。
【0025】
図2Aに示すように金型20を開く。図2Bに示すように、金型20を型開きした状態で鋼管1Aをその加工壁部5を上向きにしてセットする。セットされた鋼管1Aの一端開口2は金型20内に配置され、鋼管1Aの他端側は金型20から図1中右方へ突出される。又、図2Cに示すように、型締めによって、加工壁部5の両側の部位5a,5bは上下方向から夫々上型21と下型22とで挟持されるとともに、加工壁部5の外面に歯型24が当接される。
【0026】
次に、超音波発生部60により歯型24に振動を与える。この振動は次の芯金Mの圧入が終わるまで継続する。
【0027】
次に、図2Dに示すように、芯金ホルダ30を動作させて、それに収容された複数の芯金Mの内の一つを、芯金ガイド50に対向した状態に保持する。これとともに、芯金ガイド50に対向した芯金Mの一端に第1の芯金押棒41の先端を当接させる。
【0028】
次に、第2の押棒駆動部44を動作させて第2の芯金押棒43が鋼管1Aの他端開口3を通って鋼管1A内に挿入される。これに伴い、第2の芯金押棒43の先端が鋼管1Aの一端開口2及び芯金ガイド50を挿通して、芯金ホルダ30内の芯金Mの他端に当たるようになる。したがって、芯金Mがその軸方向両端からこれら両端に接した第1の芯金押棒41と第2の芯金押棒43とで挟持される。
【0029】
この後、図2Eに示すように、第1の駆動部42及び第2の駆動部44を動作させて、芯金Mは、第1の芯金押棒41と第2の芯金押棒43とで挟持された状態のままで、第1の芯金押棒41により押圧されて鋼管1A内に圧入される。この時、芯金Mに超音波振動が与えられているので、鋼管1Aとの摩擦によるきしみが生じず、これによりビビリ振動の発生が防がれてスムーズに圧入される。さらに、図1に示す第1の位置P1と第2の位置P2とにわたって往復移動させる。
【0030】
金型20に向けて第1の位置P1から第2の位置P2に芯金Mが往復移動されることにより、芯金Mが、鋼管1Aの加工壁部5の肉を、鋼管1Aの内側から外側の歯型24に向けて押込むように塑性流動させる。
【0031】
次に、図2Fに示すように、第1の芯金押棒41が引き戻される。この時、第2の芯金押棒43が芯金ホルダ30に向けて移動される。これにより、芯金Mは、この芯金Mの両端に接した第1の芯金押棒41と第2の芯金押棒43とで挟持された状態のまま、第2の芯金押棒43により押圧されて芯金ガイド50を通って芯金ホルダ30に内に押し戻される。
【0032】
この後、図2Gに示すように、芯金ホルダ30を動かして、次に突起部の突起量が大きい芯金Mを芯金ガイド50を通して鋼管1Aの開口部に対向させる。そして、次に使用する芯金Mを挟持した状態とした後に、同様にして、芯金Mは、第1の芯金押棒41と第2の芯金押棒43とで挟持された状態のままで、第1の芯金押棒41により押圧されて鋼管1A内に圧入し、一往復させる。こうした手順を順次繰り返すことによって、鋼管1Aに金型20の歯型24に対応したラックを有した中空ラックバーを製造する。
【0033】
最後に、使用した最後の芯金Mを芯金ホルダ30に戻した後に、第2の芯金押棒43を鋼管1Aから抜出してから、金型20を開く。
【0034】
上述したように微振動が与えられているので、歯部として十分な歯幅や歯丈を確保する場合であっても、圧入に伴い鋼管1Aに過大な負荷を生じることがなくなるので、生産性を低下させずに中空ラックバー1を製造することが可能となる。また、中空ラックバー1のラック4のファイバーフローに乱れが生じず、強度や耐久性が向上する。
【0035】
図2は本発明の第2の実施の形態に係る中空ラックバー製造装置10Aを示す図である。なお、図2において図1と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
中空ラックバー製造装置10Aにおいては、超音波発生部60が設けられる位置が中空ラックバー製造装置10と異なっている。すなわち、上型21のセット溝21aと上面とを貫く孔部21dが設けられ、超音波発生部60のホーン63が歯型24の上面に当接している。これにより、超音波発生部60により歯型24に微振動が付与される。
【0037】
このように構成された中空ラックバー製造装置10Aにおいても、中空ラックバー製造装置10と同様に生産性を低下させずに中空ラックバー1を製造することが可能となる。
【0038】
図3は本発明の第3の実施の形態に係る中空ラックバー製造装置10Bを示す図である。なお、図2において図1と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0039】
中空ラックバー製造装置10Bにおいては、超音波発生部60が設けられる位置が中空ラックバー製造装置10と異なっている。すなわち、下型22のセット溝22aと下面とを貫く孔部22bが設けられ、超音波発生部60のホーン63が鋼管1Aの下面に当接している。これにより、超音波発生部60により鋼管1Aに微振動が付与される。
【0040】
このように構成された中空ラックバー製造装置10Bにおいても、中空ラックバー製造装置10と同様に生産性を低下させずに中空ラックバー1を製造することが可能となる。
【0041】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]歯型を有し、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した金属製中空素材を保持する金型と、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金と、この芯金を、前記金型に保持された中空素材内部に圧入させる圧入機構と、前記歯型に超音波振動を付与する超音波振動付与機構とを備えている中空ラックバー製造装置。
[2]歯型を有し、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した金属製中空素材を保持する金型と、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金と、この芯金を、前記金型に保持された中空素材内部に圧入させる圧入機構と、前記中空素材に超音波振動を付与する超音波振動付与機構とを備えている中空ラックバー製造装置。
[3]前記芯金往復動機構は、前記金型の片側に配置され、前記芯金を支持するとともに、前記金型に保持された中空素材の一端開口に前記芯金を挿入可能とする位置に前記芯金を移動させる芯金ホルダと、前記芯金ホルダ及び前記中空素材の一端開口を通って前記中空素材内に挿脱され、その挿入により前記芯金を前記中空素材内に圧入する第1の芯金押棒と、この第1の芯金押棒と反対側から前記他端開口を通って前記中空素材内に挿脱され、前記芯金を、第1の芯金押棒と挟持した状態で、前記芯金ホルダから前記中空素材内に圧入させるとともに前記芯金ホルダに向けて押戻す第2の芯金押棒とを備えている[1]又は[2]に記載の中空ラックバー製造装置。
[4]歯型を有した金型に、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した中空素材を保持し、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金を圧入し、前記歯型に超音波振動を付与する中空ラックバー製造方法。
[5]歯型を有した金型に、両端が開口されるとともに前記歯型によりラックが形成される加工壁部を有した中空素材を保持し、前記中空素材内に圧入されることにより前記歯型に接した前記加工壁部を前記中空素材の内側から外側に塑性流動させて前記歯型に応じたラックを形成させる芯金を圧入し、前記中空素材に超音波振動を付与する中空ラックバー製造方法。
[6]前記圧入は、中空素材の一端開口を通って前記中空素材に挿脱される第1の芯金押棒と前記中空素材の他端開口を通ってこの素材に挿脱される第2の芯金押棒とで、前記金型に対して前記第1の芯金押棒が挿脱される側のみに配置された芯金を挟持するとともに、この芯金を少なくとも前記第1の芯金押棒で回り止めし、この回り止め状態を維持したまま前記両芯金押棒により前記芯金を前記中空素材内に前記一端開口から導入した後、前記芯金を前記第1の芯金押棒で回り止めしつつ前記中空素材内に圧入してから前記第2の芯金押棒で前記芯金を前記第1の芯金押棒との間に挟持した状態で押戻す[4]又は[5]に記載の中空ラックバー製造方法。
【符号の説明】
【0042】
1…中空ラックバー、1A…鋼管(中空素材)、2…一端開口、3…他端開口、4…ラック、5…加工壁部、10…中空ラックバー製造装置、20…金型、21…上型、21a…セット溝、21c…孔部、22…下型、22a…セット溝、23…型締め機構、24…歯型、30…芯金ホルダ、31…保持孔、40…芯金駆動機構、50…芯金ガイド、60…超音波発生部、63…ホーン、M…芯金。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4