特許第5967881号(P5967881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967881
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】車両のためのルーフアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B60J 7/043 20060101AFI20160728BHJP
   B60J 7/02 20060101ALI20160728BHJP
   B60J 7/057 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B60J7/043
   B60J7/02 A
   B60J7/057 Z
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-184454(P2011-184454)
(22)【出願日】2011年8月26日
(65)【公開番号】特開2012-51556(P2012-51556A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2014年7月22日
(31)【優先権主張番号】10174935.6
(32)【優先日】2010年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503036818
【氏名又は名称】イナルファ・ルーフ・システムズ・グループ・ベーフェー
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・クリスティアーン・レオナルドゥス・ヨハネス・マンダース
(72)【発明者】
【氏名】マルセル・ヨハン・クリスティアーン・ネレン
(72)【発明者】
【氏名】エデュアルデュス・クリスティアヌス・ヘンリクス・ファン・ボクステル
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ヘンリクス・ゲラルドゥス・ファン・デル・ルト
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・リッケルト
【審査官】 常盤 務
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−276995(JP,A)
【文献】 特開平08−011546(JP,A)
【文献】 特開2001−301466(JP,A)
【文献】 特開2004−249779(JP,A)
【文献】 米国特許第06345860(US,B1)
【文献】 米国特許第06830291(US,B2)
【文献】 米国特許第07354103(US,B2)
【文献】 米国特許第06582014(US,B1)
【文献】 特開2010−184698(JP,A)
【文献】 特開平11−278062(JP,A)
【文献】 米国特許第06974183(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0026054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 7/043
B60J 7/02
B60J 7/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のためのルーフアセンブリであって、前記車両はその固定屋根(1)においてルーフ開口(2)を有しており、
前記ルーフアセンブリは、前記ルーフ開口を閉鎖しかつ少なくとも部分的に開放するための可動閉鎖要素(4)を具備してなり、
固定部分(3)が、車両長手方向における前記ルーフ開口の横方向に延在しているガイドレール(5)を具備してなり、
閉作動機構(6)が、
前記固定部に固定された電気モータと、
ガイド手段を通ってかつ前記ガイドレールに沿って移動するために、少なくとも部分的に前記ガイドレール内にありかつ前記電気モータにかみ合う規定の経路を通ってガイド手段(10)にガイドされている、フレキシブル駆動ケーブル(8)と、
前記各ガイドレールにそれぞれ移動可能にガイドされ、かつ、前記可動閉鎖要素を調節するために前記可動閉鎖要素に対してかつ前記各フレキシブル駆動ケーブルに対して、それらが衝突時を含むすべての車両状態および周囲環境において垂直方向において横方向においてかつ長手方向において前記可動閉鎖要素を実質的に固定するために部品の機械的連結を形成する様式で、接続された可動閉鎖支持部(6’)と、
を具備してなり、
前記ガイド手段(10)は、衝突時に前記可動閉鎖要素(4)によって過度の力が前記フレキシブル駆動ケーブル(8)に掛かったときに、前記可動閉鎖支持部(6’)および前記可動閉鎖要素が制限された長手方向の移動ができるよう、前記各フレキシブル駆動ケーブル(8)が、通常の使用時に前記ガイド手段によって示されている所定の経路から逸脱可能なように構成されていることを特徴とするルーフアセンブリ。
【請求項2】
各ガイド手段(10)は、前記ガイド手段に対して直交しかつ一つの空間に連通した少なくとも1つの出口(11)を有しており、前記フレキシブル駆動ケーブル(8)が前記空間内へ前記出口を通って逃げることができ、それによって、前記可動閉鎖要素によって前記フレキシブル駆動ケーブルに押圧力が掛かる車両衝突時において前記可動閉鎖支持部および前記可動閉鎖要素の限定された移動が可能となることを特徴とする請求項1に記載のルーフアセンブリ。
【請求項3】
前記空間(9)は、少なくとも部分的に包囲された空間であることを特徴とする請求項2に記載のルーフアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも部分的に包囲された空間(9)は、スチール、アルミニウム、またはプラスチックなどからなる壁によって限定されていることを特徴とする請求項3に記載のルーフアセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも部分的に包囲された空間(9)は、変形可能な壁によって限定されていることを特徴とする請求項4に記載のルーフアセンブリ。
【請求項6】
前記変形可能な壁は、折り畳まれたチューブバッファのように成形されていることを特徴とする請求項5に記載のルーフアセンブリ。
【請求項7】
前記少なくとも部分的に包囲された空間は、前記ガイド手段(10)における前記出口(11)に近接した、前記車両における前記ルーフアセンブリ以外の部分によって限定されていることを特徴とする請求項4に記載のルーフアセンブリ。
【請求項8】
前記ガイド手段は、その規定の経路における少なくとも1つの屈曲部を経て前記各フレキシブル駆動ケーブルをガイドし、かつ、前記出口(11)は、前記屈曲部の内側および外側のうちの少なくとも一方において前記ガイド手段に形成された細長状スロットの形状を有していることを特徴とする請求項2に記載のルーフアセンブリ。
【請求項9】
車両におけるルーフアセンブリの可動閉鎖要素の、衝突時に前記車両の長手方向において前記可動閉鎖要素に大きな力を生じる運動エネルギーを吸収する方法であって、
前記可動閉鎖要素は、通常は、規定の経路に従ってガイド手段によってガイドされるフレキシブル駆動ケーブル(8)によって移動させられるものであり、
衝突時に、前記可動閉鎖要素によって前記フレキシブル駆動ケーブルに掛かる力が、前記ガイド手段の前記規定の経路から前記フレキシブル駆動ケーブルを逸脱させ、それによって、前記可動閉鎖要素が限定された長手方向移動ができるようになることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記衝突の方向は、前記可動閉鎖要素が前記フレキシブル駆動ケーブル(8)に押圧力を掛け、かつ前記フレキシブル駆動ケーブルが、前記ガイド手段の少なくとも1つの出口から限定された空間(9)へ押し出されるものであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記衝突の方向は、前記可動閉鎖要素が前記フレキシブル駆動ケーブルに引張力を掛け、かつ前記ガイド手段が、屈曲部において前記ガイド手段によって通常ガイドされるポジションにおいて、前記フレキシブル駆動ケーブルをより直線的な経路へともたらすことが可能であることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記限定された空間(9)は、その容積内に、前記出口(11)を通って前記ガイド手段から出た前記フレキシブル駆動ケーブル(8)を保持し、それによって、前記フレキシブル駆動ケーブルが前記ガイド手段からさらに出てくることが止められることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記限定された空間(9)は、あらかじめ決められた限度まで、前記フレキシブル駆動ケーブル(8)によって塑性変形させられるものであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの出口(11)は、あらかじめ決められた限度まで、前記フレキシブル駆動ケーブル(8)によって変形されるものであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記可動閉鎖要素(4)の長手方向移動の範囲は、前記ガイド手段(10)における少なくとも1つの前記出口(11)のサイズ、前記出口(11)に対する前記限定された空間(9)の容積および形状、変形に対する前記限定された空間の抵抗性、ならびに、前記フレキシブル駆動ケーブル(8)の屈曲可撓性、のうちの少なくとも1つによって決定されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに基づくルーフアセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
そうしたルーフアセンブリは特許文献1によって公知となっている。
【0003】
この従来技術文献に記載された構造体は、プルケーブル駆動というコンセプトにより駆動される閉鎖要素を有するルーフアセンブリである。このコンセプトにおいては閉鎖要素の開閉状態にかかわらず、引っ張り力のみによって、電気モータにより、スチールケーブルに負荷がかけられている。さらに駆動モータが車両の後方に配置されている。オープンルーフシステムの閉鎖要素がその開ポジションにある状況において発生する車両の正面衝突時においては、その開ポジションにおける閉鎖要素の運動エネルギーによって引き起こされる衝撃力によってプルケーブルに負荷がかけられるこの衝撃力は、プルケーブルを破損し、かつ最終的にはケーブルを破壊する可能性があり、その後、車両と閉鎖要素との間の接続部が部分的に失われるようになる。
【0004】
この従来技術文献においては、プルケーブルに接続され、正面衝突時にプルケーブルを破損しないよう衝撃力を吸収可能にするバネ付勢構造体が開示されている。
【0005】
他の関連性のあるルーフアセンブリは特許文献2によって公知となっている。
【0006】
この従来技術文献に記載の構造体は、ガイドにスライド可能に案内されかつ駆動ユニットに接続された閉鎖要素を有するルーフアセンブリであり、それは、閉鎖要素がその開ポジションにありかつ車両が正面衝突する状況において、閉鎖要素を減速させるブレーキシステムを備えている。
【0007】
当該文献に記載のブレーキシステムは、衝撃時に破損し、それによって閉鎖要素と駆動ユニットとの間の接続を遮断するよう構成されている。この破損が原因となって、ブレーキシステムはくさびタイプのブレーキシステムに置換可能であり、このとき、二つのくさび部分が互いに対してスライドするが、この動きは、当該二つの部分がガイドレールのチャネルの内側に突き刺さることが原因となって止まるまで続いている。
【0008】
いずれの従来技術文献の解決法も、閉鎖要素と駆動要素とを備えルーフアセンブリを有する車両の、正面衝突時に閉鎖要素が開ポジションにあるという特定の状況のためのものである。両文献に記載の解決法は、ルーフアセンブリを重くしかつコストを高くする付加的なシステムであり、特許文献2においては、オープンルーフシステムの領域内にシステム(つまり閉鎖移動メカニズム)を追加するものであり、このとき収容空間が非常に制限される。重量、コストおよび空間はともかく、特許文献2に記載の解決法は、実際に、閉鎖要素と駆動ユニットとの間の接続が破損されることによって特徴付けられており、ブレーキシステムが大きな減速力によってそのガイドレールから外れるようにされた場合、車両から閉鎖要素が分離する恐れを招く。
【0009】
特許文献1に開示されたバネ付勢プルケーブルシステムには、閉鎖要素の通常の開閉作動中にも付勢されているという不利な点がある。これは、閉鎖要素がその作動機構における障害物に面する状況において、障害物が原因となってバネがわずかに圧縮されて駆動ユニットに対する閉鎖要素のポジションが変更させられることによって、閉鎖要素のミスアライメントを引き起こすことがある。そうした状況においては、駆動ユニットにおける閉鎖要素のための電子工学的ポジショニングは、閉鎖要素の実際のポジショニングと整合しない。これは、ルーフアセンブリの深刻な機能不全問題を引き起こすことがある。
【0010】
いくつかの車両の製造者(メーカー)は、閉鎖要素がその開ポジションにある場合に、衝突時に閉鎖要素が長手方向において短い距離だけを移動するルーフアセンブリを求めている。この要求は、衝突時の閉鎖要素の運動エネルギーを吸収すると同時に閉鎖要素と駆動ユニットとガイドレールとの間の完全な接続を保持し、一方でなんらかの物体が閉鎖要素と固定ルーフの開口との間に挟まる状況を避ける方向へむかっている。これは、耐はさみ検出および閉鎖要素の反転動作が、衝突時に閉鎖要素の長手方向動作において機能しないという事実によって必要とされている。衝突時に閉鎖要素の動作に関して要求される長手方向の距離は、さまざまな車両製造者によって異なっている。
【0011】
さらに、車両製造者は、閉鎖要素がその開ポジションにあるときに、車両がいわゆる都市事故に遭った後でもその通常機能が維持されるルーフアセンブリを要求している。この都市事故の定義は、減速度が約15m/sの平均値以下である低速車両による軽い衝突を意味するよう使用される。この減速度以上である場合には、その要求は妥当ではなくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−301466号公報
【特許文献2】独国特許第10325327号明細書(DE 10325327)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、車両製造者の要求を満たす、導入部に記載された種類の改良されたルーフアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この問題を解決するために、本発明に基づくルーフアセンブリは、請求項1に記載された特徴部を含んでいる。好ましい実施形態が従属請求項に記載されている。
【0015】
本発明の目的は、車両の衝突時にその開ポジションにあるルーフアセンブリの閉鎖要素の運動エネルギーを、閉鎖要素が特定のあらかじめ決められた長手方向移動量まで到達すると同時に閉鎖要素と駆動ユニットとガイドレールとの間の機械的連結(mechanical chain)を維持することによって、吸収するという解決法を獲得することである。
【0016】
ルーフアセンブリを有し、その閉鎖要素が開ポジションにある状態の車両において、正面衝突または後方衝突が起こる可能性は、車両の耐用期間内でルーフアセンブリが実際に使用されかつ機能する期間と比較すると、相対的に低いことに留意されたい。それゆえ、車両製造者が、閉鎖要素の運動エネルギーを吸収し、かつ、通常の方法で閉鎖要素を作動させるのに必要な機械部品を、その通常作動に必要な機械部品よりも、高価で重くかつ/または複雑なものとなるように製造しない解決法を要求することが重要となる。
【0017】
また、本発明に使用される部品は、オープンルーフシステムを適所に配置する空間である領域内に配置される。これは、部品が、閉鎖要素を直接的に作動させる機構部品の収容空間には配置されないことを意味する。なぜなら、これら部品が占める空間は当該空間を減らすような連続的な作用を受けるからである。
【0018】
多くのルーフアセンブリにおいて、車両の固定屋根のルーフ開口を開閉する閉鎖要素は、車両の本体にしっかりと固定された固定部に連結されている。電気モータが、ガイド手段内をスライドするように駆動ケーブルを駆動し、続いて駆動ケーブルは、機械的に接続された機構部品の集合体を駆動する。それは主にガイドレール内をスライドし、かつ最終的には閉鎖要素を作動させる。
【0019】
ガイド手段はその中を駆動ケーブルがスライドし、かつガイド手段は、スチールチューブ、またはアルミニウムチューブであってもよく、あるいは実質的にプラスチックチューブであってもよく、またガイド手段はガイドレールの少なくとも一部であってもよい。
【0020】
衝突時において、車両の長手方向において閉鎖要素に掛かる運動エネルギーは、機構部品を介してもたらされ、さらに実質的には駆動ケーブルを介して電気モータへもたらされる。電気モータは、その内歯車比およびその電気ブレーキ特性により堅固なストッパーとなる。駆動ケーブルにかみ合うモータの駆動歯車は、通常、駆動ケーブルに衝撃力が作用したときには回転しない。
【0021】
衝撃時の閉鎖パネルのあらかじめ決められた長手方向移動量の要求および機械的接続部を閉鎖要素と車両との間に常に保持するという要求を満たすために、駆動ケーブルは、衝突時に閉鎖要素によってもたらされる運動エネルギーを吸収するべく使用される。言い換えると、駆動ケーブルは、衝突時の閉鎖要素の長手方向移動量の長さに実質的に等しい距離を介して運動エネルギーを吸収する。そうした事象において、ガイド手段にガイドされる駆動ケーブルは、1つ以上の相対的に小さな出口を通ってガイド手段から突出してもよい。出口に非常に近接して、限定された内部空間を有する部品がガイド手段に連結される。突出する駆動ケーブルは出口から押し出され、そして出口に隣接する限定された空間内に受け止められる。この方法において、駆動ケーブルは、ガイド手段の規定の経路から逸脱するが、徐々にガイド手段からさらに出て行くことは防止されている。
【0022】
運動エネルギーは、少なくとも1つの出口を通って突出した駆動ケーブルによって部分的に吸収される。それによって出口は、部分的には駆動ケーブルがガイド手段からさらに突出することを止める限定された空間によって、塑性変形してもよく、それにより、限定された空間の壁も、部分的には駆動ケーブル自体の屈曲および/または変形の防止により、塑性変形しうる。
【0023】
1つ以上の出口および限定された空間の位置は、ルーフアセンブリの、収容空間が利用可能な領域内であってもよい。
【0024】
これによって、衝突時の閉鎖要素の長さ方向移動量のさまざまな要求、すなわち、さまざまな長手方向移動量、安全性、安さ、および軽量であるという要求のための製品を製造できる解決法が提供され、かつさらに、上記要求を満たすための方法が開示される。
【0025】
限定された空間は部分的に包囲された(取り囲まれた)空間でもよく、それによって1つ以上の壁が省略されるが、それは駆動ケーブルの移動を制限するのに役立つものではない。それゆえ、この空間は、駆動ケーブルが出口を通って移動する方向においておおむね包囲される(取り囲まれる)ようになっている。
【0026】
この限定された空間は、スチール、アルミニウム、またはプラスチックなどからなる壁によって規定されていてもよい。
【0027】
この限定された空間は、1つ以上の変形された壁によって規定されてもよく、それによって1つ以上の壁は蛇腹または折り畳まれたチューブバッファのように成形されてもよい。
【0028】
この限定された空間は、車両におけるルーフアセンブリ以外の部分によって、あるいはルーフアセンブリ部品と車両におけるルーフアセンブリ以外の部分との組み合わせによって限定された、包囲された空間であってもよい。
【0029】
ガイド手段は、その経路において少なくとも1つの屈曲部を有していてもよく、このものにおいて、少なくとも1つの出口が当該屈曲部の内側および外側のいずれか一方に配置されている。
【0030】
(電気モータ、駆動ケーブルおよび閉鎖要素の位置に対する)衝突または衝撃の方向は、押圧力の代わりに引っ張り力が駆動ケーブルに作用するようなものであってもよい。そうした場合において、少なくとも1つの出口が、駆動ケーブルが機械的部品とのその接続部と電気モータとの間にまっすぐな経路がもたらされるように、ガイド手段に配置されている。これは、駆動ケーブルの引っ張り端部の、ひいては閉鎖要素の限定的な移動が可能となる。
【0031】
以下、本発明について、本発明に基づくルーフアセンブリの一例である実施形態を示す図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】固定屋根において、本発明に基づくルーフアセンブリが設けられた車両の等角図である。
図2】別の状況では見えない部分を明確に示すために、前方閉鎖要素が省略されたルーフアセンブリの平面図である。
図3】明瞭にするために、ガイドレールおよび機構部分の左右対称の一側のみが示され、閉鎖要素がより小さなスケールで示された、ルーフアセンブリの一部の分解図である。
図4】ガイドレールの前部、ガイド手段の一部、駆動ケーブルおよび限定された空間が示された、本発明の第一実施形態の部分的な透視等角図である。
図5】右側におけるガイド手段を有するガイドレールとかつ左側におけるガイド手段を有する固定部との間の限定された空間を示し、かつ破線でガイド手段内にガイドされる駆動ケーブルが示された第二実施形態の平面図である。
図6】その中で駆動ケーブルがガイドされるチューブを備えて左側において駆動手段に接続され、かつガイド手段を備えて右側においてガイドレールに接続された限定された空間を示す第三実施形態の等角図である。
図7】固定部にガイド手段を備えた限定された空間の第四実施形態の等角図(駆動ケーブルは示されていない)である。
図8】対角から見た、図7の同一第四実施形態の詳細を示す等角図である。
図9】駆動チューブを備えたガイド手段を伴う、限定された空間の第五実施形態の分解図である。
図10】出口に隣接したガイド手段に接続した限定された空間を示す、第五実施形態の断面図である。
図11a】蛇腹としての限定された空間を示す第六実施形態の等角図である。
図11b】ガイド手段に接続された限定された空間と出口を示す第六実施形態の断面図である。
図12】固定部を伴う、限定された空間の第七実施形態分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1を参照すると、車両、特に乗用車のためのルーフアセンブリが示されている。車両またはルーフアセンブリのいずれかが、ルーフ開口2を有する固定屋根1を備えている。ルーフアセンブリの閉鎖要素4は、ルーフ開口2の選択的な開閉を可能にする。固定部3(ここではフレーム)が固定屋根1に取り付けられており、かつ以下に詳細に述べる様式で閉鎖要素4を支持している。図示された実施形態は、いわゆる2つの閉鎖要素4および4’を備えたスライディング傾斜ルーフであり、2つの閉鎖要素4および4’の一方(前方要素4)のみが、ルーフ開口2を開閉可能である。上記可動閉鎖要素4は硬質なパネルであり、ルーフ開口2の閉ポジションから通気ポジションまで移動可能であり(この場合においてパネルは前端から後端にかけて上方に傾斜している(傾斜状態、図示せず))、かつ固定屋根1上のポジションまでさらに後方に移動可能である(スライド状態、図示せず)。
【0034】
図2において、閉鎖要素4の下に取り付けられているいくつかの部品を明瞭に示すために、ルーフアセンブリはその可動閉鎖要素4を伴わない状態で示されている。図面の左側(車両の前側)において、固定部3に対して、特にフレームの横方向ビームに対して、電気モータ7が固定可能に連結されている。モータ7の駆動ホイール(図示せず)が2つの駆動ケーブル8とかみ合っており、この駆動ケーブル8は、ガイド手段10にガイドされている。ガイド手段10は、図示された実施形態においては、固定部3(ここでは前方横方向ビーム)におけるチャネルによって形成されており、かつカバープレート10’がチャネルをカバーしており、それによって、駆動ケーブル8が車両の横方向の他に車両の長手方向に移動できる閉鎖部分が形成される。ルーフアセンブリの横方向側部のそれぞれにおいて、左右対称のガイドレール5が設けられており、ガイドレール5は、また、車両の長手方向に駆動ケーブル8をガイドするためにガイド手段10を備えている。さらにこれらガイドレール5は、可動閉機構6をスライド可能に収容するための1つ以上のチャネルをそれぞれ備えている。各駆動ケーブル8は、その一端が各可動閉機構6に接続されるようになっており、この機構は、一側部(側部)においては駆動ケーブル8とガイドレール5との間及び反対の側部(上側部)においては駆動ケーブル8と閉鎖要素4との間に機械的連結を形成する可動閉鎖支持部6’を備えている。
【0035】
図3において、ルーフアセンブリは部分的に、かつ分解された状態で示されており、固定部3に連結される電気モータ7と、固定部にガイド手段10を形成するチャネルと、固定部3においてチャネルをカバーするカバープレート10’とがより詳細に示されている。さらに、ガイドレール5(ここではガイドレールの一方しか図示しない)がどのように固定部3の前方横方向ビームに接続されるかが明確にされている。さらに、いくつかの可動閉鎖支持部6’、および、それらがどのようにガイドレール5にスライド可能に接続でき、駆動ケーブル8および閉鎖要素4に接続できるのかが詳細に示されており、かつ、一端においては駆動ケーブル8とガイドレール5との間に、他端においては駆動ケーブル8と閉鎖要素4との間に、機械的連結を形成するために、それらがどのように相互作用するのかが示されている。
【0036】
図4において、限定された空間9の第一実施形態が示されており、空間9はこの実施形態においては包囲された空間(上壁や側壁などによって取り囲まれた空間)でありかつガイド手段10に接続されている。限定された空間9の部分的な透視図によって、ガイドレール5のガイド手段10における出口11を見ることができ、それは駆動ケーブル8の一部である。出口11は、ガイドレール5のガイド部材10をミーリングまたはドリル加工した孔によって形成されてもよい。それは、駆動ケーブル8の直径の少なくとも2倍の大きさの、好ましくはより大きなものである。限定された空間9は、出口11上にわたって配置されており、かつガイド手段10において開放状態で配置されかつ固定されたボックスによって規定されてもよい。好ましくは、出口11および付随する限定された空間9は、ガイドレール5の前端または後端に近接して配置されている。衝突時に、押圧力が閉鎖要素4によって駆動ケーブル8に掛かり、そしてこのケーブルは出口11のポジションへと横向きに押圧され、それゆえ、それに対して直交する方向におけるガイド手段10内に突出する。続いてケーブルは、ループ状に変形する変形駆動ケーブル8の限定された長さを受容可能な包囲された空間9へ進入し、それによって、閉鎖要素4の限定された動作によって、その運動エネルギーを吸収することが可能となる。
【0037】
図5には、限定された空間9の第二実施形態が示されており、この空間9は部分的に包囲された空間である。固定フレーム部3はガイドレール5に接続されており、かつ固定部3におけるガイド手段10とガイドレール5におけるガイド手段10とは実質的に整列されており、それによって駆動ケーブル8が固定部3からガイドレール5へスライドできるようになっている。部分的に包囲された空間9を規定する部品は、その一端において固定部3に接続されており、かつその他端において各ガイドレール5に接続されている。出口11は、包囲された空間9の領域における固定部3と各ガイドレール5との間の間隙によって形成されている。上方向における間隙は下方向における間隙よりも大きなものであり、それゆえ、駆動ケーブルが上方向におけるガイドレール5から逃げる(抜ける)ことだけができるようになる。部分的に包囲された空間9を規定する部品は、ケーブルが当該部品に出会いかつ最終的にはガイド手段さらに出ることが防止されるように駆動ケーブル8が出口11を通り過ぎるように配置され、それによって閉鎖要素4の制限された移動だけが可能となる。
【0038】
図6には限定された空間の第三実施形態が示されており、このものにおいて、限定された空間9は部分的に包囲された空間である。この限定された空間9は、その一端において、駆動ケーブル8を案内する駆動チューブであるガイド手段10に接続されており、他端においてガイドレール5に接続されている。ここでは、出口11は、駆動チューブであるガイド手段10の端部と、ガイドレール5の端部との間の間隙によって形成されている。さらに駆動チューブの出口部分はガイドレール5におけるガイド手段10の入口部と整列されており、それによって、駆動ケーブル8は、通常使用時に、駆動チューブからガイドレール5へと容易にスライドでき、かつ衝突時に押圧力によって駆動ケーブル8に負荷がかけられる場合にガイド手段を通過できるようになっている。
【0039】
図7および図8には限定された空間の第四実施形態が示されている。固定部3は、駆動ケーブル8(図示せず)をガイドするためのガイド手段(ここでは一体化されたチャネル)を有するよう示されている。さらに、カバー10’であるガイド手段10の上部も示されている。このカバー10’は、固定部3に接続されたときに、閉断面を備えるチャネルを形成する。固定部におけるガイド手段10は、図8に明確に示されるように、少なくともチャネルの外壁遮断することによって形成された出口11を有する。これら遮断部のポジションは、好ましくはガイド手段の屈曲部の外側にある。これら遮断部の間のチャネルの壁部分は変形可能であり、そのため駆動ケーブル8が、駆動ケーブルがガイド手段10を通過できるようにする出口同士の間の壁部分に対して押し付けられたときに、大きな出口が形成される。限定された空間9は、ここでは部分的に包囲された空間であり、それによって、この限定された空間の壁は、ルーフアセンブリ部でないものによって、少なくとも部分的に形成されている。
【0040】
図9および図10には、限定された空間9の第五実施形態が示されている。ガイド手段10(ここでは駆動チューブ)は、ガイドレール5のガイド手段入口に接続されている。出口11(ここではスロット状孔)は、駆動チューブにおける屈曲部の外側の側壁に配置されている。駆動ケーブル8は、駆動チューブであるガイド手段10を通過して、ガイドレールのガイド手段へとスライドする。この実施形態において、限定された空間9は、ガイド手段10に接続されかつ実質的に球根形状の断面を有する部品によって形成された、部分的に包囲された空間である。当該部品は、出口11を形成するスロット状の孔を含む屈曲部の外側の側壁において膨らむようになっている。
【0041】
図11aおよび図11bには、限定された空間9の第六実施形態が示されている。ここで限定された空間は包囲された空間であり、そのため壁は、蛇腹形状または折り畳まれたチューブバッファを有する。限定された空間9を形成する部品は、ガイド手段10に接続されており、それによって、この実施形態においてはガイド手段10は、駆動ケーブル8をガイドする駆動チューブである。この駆動チューブは、少なくとも二つの整列された部品によって形成される。出口11は駆動チューブの二つの部品の間の間隙である。衝突時に駆動チューブ部品の一方は、蛇腹部が延伸するように、かつ出口が、ケーブルが包囲された空間9に進入できるほど大きくなるように、圧縮されるかまたは移動させられるようになる。
【0042】
図12には、限定された空間9の第七実施形態が示されている。ここで限定された空間は包囲された空間である。固定部3は、ガイド手段10の一部を形成する一体的なチャネルを有しており、固定部3は、駆動ケーブル8を通過させてスライドさせるため、チャネルを覆いかつチャネルの閉断面を形成するためのカバー10’を収容する。出口11はカバー10’に形成されており、かつカバー10’の下側のガイド手段に実質的に平行に延在するスロット状の孔として形状付けられている。限定された空間は、衝突時に閉鎖要素によって大きな押圧力が駆動ケーブルに作用した際に出口11から突出した駆動ケーブル8を止めるためにカバー10’に固定されかつ出口11上に位置するブラケットによって形成される。
【0043】
本発明は図面に示されかつ上述された上記実施形態に限定されず、特許請求の範囲から逸脱せずに、さまざまな方法で変更することができる。
【0044】
それゆえ、本発明は他のタイプのルーフアセンブリ、例えばルーフ開口が開放された際に閉鎖要素が垂直方向に下降しかつ固定屋根の後方下側に移動するルーフ、閉鎖要素が傾斜のみ可能でありかつルーフアセンブリが1つ以上の可動および/または固定閉鎖要素を備えるルーフにも使用することができる。さらに、電気モータをルーフアセンブリのさまざまな場所に、例えば固定部の後方に配置することも考えられる。この場合において車両が正面衝突した際にはケーブルには大きな引っ張り力が掛けられるようになる。そうした運動エネルギーを吸収するために、ガイド手段は、形成された屈曲通路からよりまっすぐな通路へとケーブルを変更させることを可能にする。例えばガイド手段は、屈曲部の内側にスリットを有することができ、そのスリットは駆動ケーブルが、閉鎖要素によって伸張されたときに開くようになり、閉鎖要素が限定された移動をできるようにするために駆動ケーブルがガイド手段の一部を通過可能となる。またガイド手段は規定された一部において正弦波形状などの平均的な蛇行形状とすることも考えられる。こうしたガイド手段は、閉鎖要素によってケーブルが伸張されたときによりまっすぐな形状へと変形可能であり、それによって、ケーブル端部のおよびそれに取り付けられた閉鎖要素の限定された移動ができるようになる。反対に、駆動ケーブルおよびガイド手段は、衝突時において駆動ケーブルにおける閉鎖要素によって圧縮力が作用したときに、規定されたポジションにおいてかつ制御された様式で、よりまっすぐな形状からより蛇行した形状へと変形してもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 固定屋根
2 ルーフ開口
3 固定部
4,4' 閉鎖要素
5 ガイドレール
6,6' 可動閉鎖支持部
7 電気モータ
8 駆動ケーブル
9 限定された空間
10 ガイド手段
10’ カバー
11 出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図9
図10
図11a
図11b
図8
図12