特許第5967972号(P5967972)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967972エンドエフェクタクランプのための力及び垂直性の検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967972
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】エンドエフェクタクランプのための力及び垂直性の検出
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B25J15/06 S
【請求項の数】14
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-35495(P2012-35495)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2012-171093(P2012-171093A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2015年2月20日
(31)【優先権主張番号】13/032,596
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】サール, ブランコ
(72)【発明者】
【氏名】ガンボア, ジェームズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン, クリス ジェイ.
【審査官】 木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−305608(JP,A)
【文献】 特開平01−257579(JP,A)
【文献】 特開2009−066713(JP,A)
【文献】 特開2000−062980(JP,A)
【文献】 特開平08−217276(JP,A)
【文献】 特開平05−057541(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/010214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 − 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットシステムであって、
電磁クランプ(114、510)を含むエンドエフェクタ(110)と、
前記クランプによって加工対象物表面(S)に加えられる力を測定するための前記エンドエフェクタに取り付けられた力センサー(116、512)と、
前記力センサー(116、512)が前記表面(S)に接触する前に、前記クランプ(114、510)が前記表面(S)に対して垂直であることを判定するため、前記力センサー(116、512)の周囲に配置された複数の垂直センサー(118、514)と
を備えたロボットシステム。
【請求項2】
前記垂直センサー(118)が、前記クランプの第1(R1)及び第2(R2)回転軸についての方向を測定するための少なくとも3個のセンサーを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記エンドエフェクタ(110)を移動するためのロボットマニピュレータ(120)と、
前記垂直センサー(118)の出力に応答して、前記力センサー(116)が前記加工対象物表面(S)に接触可能になることなく、前記クランプ(114)が前記加工対象物表面(S)に対して垂直になるまで、前記エンドエフェクタ(110)を移動させるように、前記ロボットマニピュレータ(120)に指令を出すための制御装置(122)と
をさらに備えた、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御装置(122)が、前記力センサーの出力に応答して締め付け力を発生させるように、前記クランプ(114)に指令を出す、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記垂直センサーの位置を較正するための較正プレート(810)をさらに備え、前記較正プレート(810)は、前記力センサーが載る高い部位(812)、及び前記垂直センサー(118、514)の先端に対する較正面を定義する低い部位(814)を有する、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記制御装置(122)が、前記垂直センサー(118、514)に対する較正面を決定し、
前記クランプ(114、510)を加工対象物表面上に移動させ、前記較正面からピンまでの距離を決定し、且つ
対向する垂直センサーの前記距離が等しくなるように前記クランプの方向を合わせる、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項7】
前記力センサーが前記クランプの表面に配置されており、且つ
各垂直センサー(118、514)が、ピン及び前記ピンの位置を決定するためのリニア変位センサーを含み、
前記クランプの前記表面を越えて各ピンの先端が延びるよう可動になっている、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記力センサー及び前記垂直センサーが前記クランプと一体化されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
請求項1または3に記載のシステムであって、
前記電磁クランプが、
磁心(516)と、
前記磁心の周囲に巻かれた巻き線(526)とを有し、
前記力センサーが前記電磁クランプの締め付け面の位置にあり、
前記力センサー(512)の周囲に配置された前記複数の垂直センサー(514)が、前記締め付け面から前記力センサー(512)よりも遠くへ延びる先端を有するリニア変位センサーを備え、前記力センサー(512)が前記加工対象物表面(S)に接触することなく、前記加工対象物表面(S)に対する前記クランプの垂直性を判定可能とする、システム。
【請求項10】
4個のリニア変位センサーが前記力センサー(512)の周囲に配置された、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
各リニア変位センサーが、前記磁心(516)に埋め込まれた線形可変差動変圧器(LVDT)及び前記LVDTから延びるピンを含む、請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記力センサー(512)を前記磁心(516)に固定するための軸受筒(524)をさらに備え、前記軸受筒(524)が前記締め付け面を提供する、請求項9ないし11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載のシステムにおけるクランプの使用方法であって、
前記リニア変位センサーのための較正面の決定(710)と、
前記加工対象物表面に接触するすべての垂直センサーの先端を用いた、加工対象物上での前記クランプの位置決め(720)と、
前記較正面から各先端までの距離の決定(730)と、
対向するセンサーの距離が等しくなるまでの前記クランプの再方向設定(750)と、
距離を維持しつつ前記締め付け面が前記加工対象物表面に接触するまでの、前記加工対象物表面へ向けた前記クランプの移動(760)と、
め付け力の適用(770)と
からなる、クランプの使用方法。
【請求項14】
前記加工対象物上での製造作業の実施をさらに備えた、請求項13に記載の方法であって、
前記磁心の軸開口部へのドリルの挿入と、
前記力センサーの読み取り中に、前記加工対象物に孔を穿孔するための前記ドリルの使用、及び穿孔中の前記巻き線の制御と
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
商用航空機の組み立て中、一部の作業は、限られた空間の内側と外側から同期を取って実施される。主翼ボックスのパネルにスパーを固定する作業について考えてみる。主翼ボックスの外側の組立てシステムは、パネルの片側に穿孔作業、皿取り加工作業、締め具挿入作業を行う。パネルの反対側にある主翼ボックスの内側で作業員又はシステムが、挿入した締め具にスリーブとナットを配置する。
【0002】
穿孔作業中、組み立てシステムは、パネルに対して適切な締め付け力を加えることが必要となる。電磁石を使用して締め付け力を加える場合には、電磁石のコイルに供給される電流に応じて、締め付け力を推定することができる。しかしながら、その推定値は常に正しいわけではない。推定値が正しくない場合には、締め付け力が不十分になる可能性がある。
【0003】
穿孔作業中の締め付け力が不十分な場合には、ドリルが移動することがある。その結果、穿孔された孔の位置が許容誤差範囲を超える可能性がある。したがって、商用航空機で正確に穿孔しなければならない孔の数を考慮した場合、許容誤差範囲を超えた孔による損失はきわめて大きくなる可能性がある。
【0004】
締め付け力を推定するのではなく、穿孔中に締め付け力を正確に測定することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本明細書のある観点によれば、ロボットシステムは、電磁クランプを含むエンドエフェクタ、クランプによって加工対象物表面に与えられる力を測定するためエンドエフェクタに取り付けられた力センサー、及び複数の垂直センサーを備えている。本垂直センサーは、力センサーの周囲に配置されており、力センサーが加工対象物表面に接触する前に、クランプが当該表面に対して垂直かどうかを判定する。
【0006】
本明細書の別の観点によれば、電磁クランプは、磁心、磁心の周囲に巻かれた巻き線、締め付け面の力センサー、及び力センサーの周囲に配置された複数のリニア変位センサーを備えている。本リニア変位センサーは、締め付け面から、力センサーよりも遠くまで延びるチップを有し、これにより力センサーが表面に触れることなく、加工対象物表面に対するクランプの垂直性を判定することができる。
【0007】
本明細書の別の観点によれば、方法は、加工対象物での製造作業を実施するためのクランプの使用からなり、クランプには、加工対象物表面に対するクランプの締め付け力を測定するための力センサーが含まれる。加工対象物表面に最も近いクランプの締め付け面の位置決めを含むクランプの使用、締め付け面が加工対象物表面に接触する前の加工対象物表面に関する締め付け面の垂直性の判定、締め付け面の垂直性を維持しつつ行う加工対象物表面への締め付け面の移動、及び加工対象物表面に対するクランプの固定からなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1はエンドエフェクタを含むロボットシステムの図である。
図2図2は加工対象物表面に対してエンドエフェクタを固定するロボットシステムの制御方法の図である。
図3図3はエンドエフェクタの軸に関する力センサー及び垂直センサーの図である。
図4A図4Aは垂直センサーの図である。
図4B図4Bは較正面に関する2個の垂直センサーのチップの図である。
図5図5は磁心に力センサー及び垂直センサーが埋め込まれた電磁クランプの磁心の図である。
図6図6図5の磁心を含む電磁クランプの図である。
図7図7図6の電磁クランプの制御方法の図である。
図8図8のA〜Dは較正、位置決め、及び締め付け中の図6の電磁クランプの図である。
図9図9は製造作業中の電磁クランプの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照して、締め付け力を測定した加工対象物表面に対して、エンドエフェクタ110を締め付けるためのロボットシステム100について説明する。エンドエフェクタ110は、本体112及び電磁クランプ114を含む。一部の実施形態では、本体112及びクランプ114が一体化されることがある。他の実施形態では、本体112及びクランプ114は別個の要素となることがある。
【0010】
システム100の操作中、エンドエフェクタ110の締め付け面(C)は、加工対象物表面(S)とは反対の方向に移動する。エンドエフェクタ110はさらに、加工対象物表面(S)に対して、クランプ114によって与えられる力を測定するための力センサー116を含む。例えば、力センサー116は、歪みゲージ、油圧センサー、又は形状記憶センサーを含むことができる。加工対象物表面に対して締め付け面(C)が垂直になると、測定値はきわめて正確になる。
【0011】
エンドエフェクタ110はさらに、力センサー116の周囲に配置される、複数の垂直センサー118を含む。一部の実施形態では、垂直センサー118は、リニア変位センサーにしてもよい。他の実施形態では、垂直センサー118は、近接センサーにしてもよい。垂直センサー118は、力センサー116が加工対象物表面(S)に接触する前に、加工対象物表面(S)に対して締め付け面(C)が垂直かどうかを判定することができる。この配置により、加工対象物表面(S)に対して締め付け力が垂直になるように、力センサー116から垂直センサー118を分離する動作が可能になる。力の測定は、力センサー116が加工対象物表面に対して垂直になるときに、より正確になる。動作を分離することにより、精度はさらに改善される。仮に、垂直性を判定する際に、力センサー116が加工対象物表面に接触していたとする。その場合、力センサーが加工対象物表面(S)に接触する際にクランプを回転させるため、エンドエフェクタ110には、力センサーとエンドエフェクタとの間の球面軸受を含む、より複雑な設計が必要となることがある。その結果、反作用力が球面軸受を摩耗させ、クランプのずれを引き起こすことがある。この問題は動作を分離することで回避される。高い精度での締め付け力の測定に加えて、システム100は球面軸受を必要としない、より単純な設計を有している。
【0012】
ロボットシステム100はさらに、エンドエフェクタ110を移動するためのロボットマニピュレータ120を含んでいる。ロボットマニピュレータ120は、例えばロボットアームを含むことができる。
【0013】
ロボットシステム100はさらに、エンドエフェクタ110を移動するようにロボットマニピュレータ120に指令を出す、制御装置122を含む。制御装置122は又、力センサー116及び垂直センサー118を読み取り、クランプ114を制御して締め付け力を発生させる。制御装置122は、マイクロプロセッサを用いたものにしてもよい。
【0014】
次に図2を参照して、制御装置122によって実行されるある種の機能について説明する。ブロック210では、制御装置122は、締め付け面(C)が加工対象物表面(S)に対して垂直になっていることを垂直センサー118が示すまで、エンドエフェクタ110を加工対象物表面(S)とは反対の方向に移動するように、ロボットマニピュレータ120に指令を出す。この移動中に、力センサー116は加工対象物表面(S)に接触しない。
【0015】
ブロック220では、制御装置122は、エンドエフェクタ110を加工対象物表面(S)の方向に移動するように、ロボットマニピュレータ120に指令を出す。制御装置122は又、締め付け面(C)が加工対象物表面(S)に対して垂直のまま維持されることを保証するため、垂直センサー118を使用する。
【0016】
ブロック230では、制御装置122は、エンドエフェクタ110が加工対象物表面(S)に接触する場合を判定するため、力センサー116の値を読み取る。クランプが加工対象物表面(S)に対して垂直な状態で、制御装置122は、締め付け力を発生させるように、クランプ114に指令を出す。締め付け力により、エンドエフェクタ110は加工対象物表面(S)に対して固定される。制御装置122は、力センサー116の値を読み取り、正確な締め付け力が確実に加えられるように、クランプ114を制御する。
【0017】
次に図3を参照して、4個の垂直センサー118が力センサー116の周囲に配置されている実施形態を示す。垂直センサー118のうち、N1及びN2で指定した対向する第1のセンサー対118は、第1の回転軸(R1)に沿って配置される。N3及びN4で指定した対向する第2のセンサー対は、第2の回転軸(R2)に沿って配置される。4個の垂直センサー118は、平面及び非平面上で使用することができる。一部の実施形態では、平面上で3個の垂直センサー118が使用されることがある。
【0018】
次に図4Aを参照して、垂直センサー410の実施形態を説明する。図4の垂直センサー410は、線形可変差動変圧器(LVDT)などのリニア変位センサー412としてもよい。垂直センサー410は、ピン414及びコイル(図示せず)を含む。ピン414のチップ416は、加工対象物表面に接触するように構成されている。作業中、ピン414はコイルに対して移動し、電圧を検出する。電圧の変化は、ピン414の変位に比例している。
【0019】
一部の実施形態では、力センサー116及び/又は垂直センサー118は、クランプ114から切り離して、エンドエフェクタ110に取り付けることができる。他の実施形態では、1又は複数のセンサー116及び118を、クランプ114と一体化することもできる。
【0020】
次に図5及び6を参照して、力センサー512及び垂直センサー514を一体化した電磁クランプ510の実施形態について説明する。クランプ510は、ハブ518及びプレート520を有する磁心516を含む。軸路522は、ハブ518及びプレート520を通って延びる。
【0021】
力センサー512はドーナッツ形状を有し、ハブ518に埋め込まれ、軸路522を取り囲んでいる。軸受筒524は、ハブ518内の力センサー512を保持し、ハブ518から外側へ延びる。軸受筒524は、締め付け面(C)を提供する。軸受筒524の締め付け面(C)のみが、加工対象物表面(S)に接触する。一部の実施形態では、軸受筒524と力センサー512は、別々の構成要素になることがある。他の実施形態では、軸受筒524と力センサー512は一体化されることがある。
【0022】
図4Aに示した種類の4個の垂直センサー514は、軸路522の周囲に配置される。各リニア変位センサーは、対応する可動ピンと共にハブ518に埋め込まれる。ピンは移動可能なため、締め付け面(C)を越えてチップを延ばすことができる。ピンは移動可能なため、チップを締め付け面(C)からわずかに露出又は隠れるようにすることができる。
【0023】
垂直センサー514は、図3に示すように配置される。2個の対向する垂直センサー514(N1及びN2)は、第1の軸R1に沿って配置される。他の2個の対向する垂直センサー514(N3及びN4)は、第2の軸R2に沿って配置される。
【0024】
巻き線526は、ハブ518の周囲に巻かれる。通電されると、巻き線526は電磁場を発生させる。シェル528は巻き線526を覆う。
【0025】
図5及び6の磁心510は、穿孔作業に特有ないくつかの機能を有する。軸路522は、その中にドリルビットを挿入することができる。切削屑排出ポート530により、穿孔中に切削屑を取り除くことができる。
【0026】
次に図7をさらに参照して、電磁クランプ510の作業を説明する。作業はセンサーの較正から始まる。高い部位812及び低い部位814を有する較正プレート810を使用することができる。
【0027】
ブロック710では、垂直センサー514に対する較正面を決定する。軸受筒524を高い部位812に、4個の垂直センサー514をすべて低い部位814に載せた状態で、較正プレート810に対してクランプ510を位置決めする(図8Aを参照)。各垂直センサー514の位置を読み取り、保存する。保存されたこれらの位置が較正面を決定する。
【0028】
センサーの較正が完了したら、クランプ510を較正プレート810から取り外す。クランプ510を取り外すと、ピンのチップは較正面の先まで延びている。
【0029】
次にクランプ510を加工対象物820の表面(S)の上に配置する。ブロック720では、クランプ510は、垂直センサー514の延びたピンが表面(S)に接触するように配置される(図8Bを参照)。ブロック730では、較正面から各チップまでの距離φを決定するため、垂直センサー514の値を読み取る。図4Bは、垂直センサーN1及びN2に対する距離φN1及びφN2を示す。
【0030】
ブロック740では、オフセットΔAがφN1−φN2として決定される。同様にして、オフセットΔBがφN3−φN4として決定される。
【0031】
ブロック750では、対向するセンサーのチップが較正面から等距離になるまで、クランプ510を操作する。すなわち、ΔA=0かつΔB=0になるまでクランプを移動する(図8Cを参照)。ΔA=0かつΔB=0となったとき、締め付け面(C)は加工対象物表面(S)に対して垂直であるとみなされる。
【0032】
ブロック760では、ΔA及びΔBがΔA=0かつΔB=0の状態にあることを確認しつつ、加工対象物表面(S)に向かってクランプ510を移動する。このようにして、締め付け面(C)は加工対象物表面(S)に向かって移動するため、締め付け面(C)は垂直な状態を維持する。力センサー512を監視し、軸受筒524が加工対象物表面(S)にいつ接触するかを決定する。
【0033】
クランプ510の移動は、軸受筒524が加工対象物表面(S)に接触したことを力センサー512が示したとき、停止される(図8Dを参照)。この時点では、クランプ510は表面(S)に対して垂直になっているが、締め付け力は加えられていない。
【0034】
ブロック770では、締め付け力を発生させるため、巻き線526に通電を行う。ブロック780では、締め付け力が加えられている間に製造作業を実施する。ブロック770及びブロック780では、力センサー512を連続的に読み取り、加えられている実際の締め付け力を確定し、又、製造作業中に正確な締め付け力が加えられることを保証するため、巻き線526への電流を調整する。
【0035】
次に図9を参照して、複合材料又は他の非金属材料でできた加工対象物910での製造作業中のクランプ510を説明する。クランプ510は較正が行われた後、加工対象物910の片側に配置され、又、鋼板などの金属製裏当て板920は、加工対象物910の反対側に配置される。クランプ510の巻き線に通電が行われると、加工対象物910はクランプ510と金属製裏当て板920の間に固定される。軸受筒は、穿孔される位置の周囲に高い締め付け力を与える。
【0036】
製造作業には、クランプ510の軸路へのドリルの挿入、及び加工対象物910での穿孔が含まれることがある。孔の穿孔時には、切削屑を取り除くため排出ポートで吸い取りが行われる。孔が穿孔されると、ドリルが取り除かれ、軸路522及び穿孔した孔の中に締め具が挿入される。締め付け力を開放し、裏当て板920を取り除き、締め具にナットを取り付ける。
【0037】
図9の製造作業は、航空機の組み立て中に使用することができる。例えば、この製造作業は、主翼ボックスのパネルへのスパーの固定に使用することができる。クランプ510は、パネルの片側での穿孔、皿取り加工及び締め具挿入作業の実施に使用される。パネルの反対側にある主翼ボックスの内側で作業員又はシステムが、挿入した締め具の上にスリーブとナットを配置する。米国特許出願公開第2009/0287352号は、アクセスポートを通じてのみアクセス可能な限られた空間内で、締め具の上にスリーブ又はナットを配置することが可能なロボットシステムについて記載している。
また、本願は以下に記載する態様を含む。
(態様1)
ロボットシステムであって、
電磁クランプを含むエンドエフェクタと、
前記クランプによって加工対象物表面に加えられる力を測定するための前記エンドエフェクタに取り付けられた力センサーと、
前記力センサーが前記表面に接触する前に、前記クランプが前記表面に対して垂直であることを判定するため、前記力センサーの周囲に配置された複数の垂直センサーと
を備えたロボットシステム。
(態様2)
前記垂直センサーが、前記クランプの第1及び第2回転軸についての方向を測定するための少なくとも3個のセンサーを含む、態様1に記載のシステム。
(態様3)
前記エンドエフェクタを移動するためのロボットマニピュレータと、
前記垂直センサーの出力に応答して、前記力センサーが前記加工対象物表面に接触可能になることなく、前記クランプが前記加工対象物表面に対して垂直になるまで、前記エンドエフェクタを移動させるように、前記ロボットマニピュレータに指令を出すための制御装置と
をさらに備えた、態様1又は2に記載のシステム。
(態様4)
前記制御装置が、前記力センサーの出力に応答して締め付け力を発生させるように、前記クランプに指令を出す、態様3に記載のシステム。
(態様5)
前記垂直センサーの位置を較正するための較正プレートと、
前記力センサーが載る高い部位、及び前記垂直センサーの前記チップに対する較正面を定義する低い部位を有する較正プレートと
をさらに備えた、態様3又は4に記載のシステム。
(態様6)
前記制御装置が、前記垂直センサーに対する較正面を決定し、
前記クランプを加工対象物表面上に移動させ、前記較正面からピンまでの距離を決定し、且つ
対向する垂直センサーの前記距離が等しくなるように前記クランプの方向を合わせる、態様3又は4に記載のシステム。
(態様7)
前記力センサーが前記クランプの表面に配置されており、且つ
各垂直センサーが、ピン及び前記ピンの位置を決定するためのリニア変位センサーを含み、
前記締め付け面を越えて前記チップが延びるように各ピンが可動になっている、態様1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
(態様8)
前記力センサー及び前記垂直センサーが前記クランプと一体化されている、態様1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
(態様9)
電磁クランプであって、
磁心と、
前記磁心の周囲に巻かれた巻き線と、
締め付け面の位置にある力センサーと、
前記力センサーの周囲に配置された複数のリニア変位センサーであって、これによって前記力センサーが前記表面に接触することなく、加工対象物表面に対する前記クランプの垂直性を判定することができる、前記締め付け面から前記力センサーよりも遠くへ延びるチップを有するリニア変位センサーと
からなる、電磁クランプ。
(態様10)
4個のリニア変位センサーが前記力センサーの周囲に配置された、態様9に記載のクランプ。
(態様11)
各リニア変位センサーが、前記磁心に埋め込まれた線形可変差動変圧器(LVDT)及び前記LVDTから延びるピンを含む、態様9又は10に記載のクランプ。
(態様12)
前記力センサーを前記磁心に固定するための軸受筒をさらに備え、前記軸受筒が前記締め付け面を提供する、態様9、10、又は11のいずれか一項に記載のクランプ。
(態様13)
態様9〜12のいずれか一項に記載のクランプの使用方法であって、
前記リニア変位センサーのための較正面の決定と、
前記加工対象物表面に接触するすべての垂直センサーの前記チップを用いた、加工対象物上での前記クランプの位置決めと、
前記較正面から各チップまでの距離の決定と、
対向するセンサーの距離が等しくなるまでのクランプの再方向設定と、
距離を維持しつつ前記締め付け面が前記加工対象物表面に接触するまでの、前記加工対象物表面方向への前記クランプの移動と、
前記締め付け力の適用と
からなる、クランプの使用方法。
(態様14)
前記加工対象物上での製造作業の実施をさらに備えた、態様13に記載のクランプの使用方法であって、
前記磁心の軸開口部へのドリルの挿入と、
前記力センサーの読み取り中に、前記加工対象物に孔を穿孔するための前記ドリルの使用、及び穿孔中に正確な締め付け力が加えられることを保証するための前記巻き線の制御と
を含む、方法。
(態様15)
加工対象物上で製造作業を実施するためのクランプの使用と、
前記加工対象物表面に対する前記クランプの締め付け力を測定するための力センサーを含む前期クランプと、からなる方法であって、
前記クランプの使用が、
前記加工対象物に隣接する前記クランプの締め付け面の位置決めと、
前記締め付け面が前記加工対象物表面に接触する前の、前記加工対象物表面に対する前記締め付け面の垂直性の決定と、
前記締め付け面の垂直性を保ちつつ行う、前期加工対象物表面の方向への前記締め付け面の移動と、
前記加工対象物表面に対する前記クランプの固定と
を含む、方法。
(態様16)
前記製造作業が穿孔作業を含む、態様15に記載の方法。
(態様17)
前記加工対象物が複合航空機パネルを含み、前記方法がさらに複合パネル後方への金属製裏当てパネルの配置からなる、態様15又は16に記載の方法。
【符号の説明】
【0038】
100 ロボットシステム
110 エンドエフェクタ
112 本体
114 クランプ
116 力センサー
118 垂直センサー
120 ロボットマニピュレータ
122 制御装置
410 垂直センサー
412 リニア変位センサー
414 ピン
416 チップ
510 電磁クランプ
512 力センサー
514 垂直センサー
516 磁心
518 ハブ
520 プレート
522 軸路
524 軸受筒
526 巻き線
528 シェル
530 切削屑排出ポート
810 較正プレート
812 高い部位
814 低い部位
820 加工対象物
910 加工対象物
920 金属製裏当て板
図1
図2
図3
図4A
図4B
図6
図7
図8
図9
図5