特許第5967974号(P5967974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5967974パイロットノズル、これを備えたガスタービン燃焼器およびガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967974
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】パイロットノズル、これを備えたガスタービン燃焼器およびガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/28 20060101AFI20160728BHJP
   F23R 3/30 20060101ALI20160728BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20160728BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F23R3/28 B
   F23R3/28 D
   F23R3/30
   F02C7/00 C
   F01D25/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-42309(P2012-42309)
(22)【出願日】2012年2月28日
(65)【公開番号】特開2013-178035(P2013-178035A)
(43)【公開日】2013年9月9日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】山内 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】瀧口 智志
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 圭司郎
(72)【発明者】
【氏名】栗村 隆之
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−314300(JP,A)
【文献】 特開2004−360699(JP,A)
【文献】 特開平07−233946(JP,A)
【文献】 特開平08−233271(JP,A)
【文献】 特開2007−155170(JP,A)
【文献】 特開平02−275207(JP,A)
【文献】 特開2005−016733(JP,A)
【文献】 特開2007−170807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D13/00−15/12
23/00−25/36
F02C1/00−9/58
F02G1/00−5/04
F23R3/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に燃料通路を有し、先端付近に前記燃料通路からの燃料を噴射させる噴射孔を有するノズル本体と、
該ノズル本体の外周面および先端部付近を覆い、前記燃料が燃焼することにより生成される燃焼ガスの高熱から前記ノズル本体を保護するノズルキャップと、
を備えたパイロットノズルであって、
前記ノズルキャップがセラミックマトリックス複合材料により形成され
前記ノズルキャップを前記ノズル本体に固定するキャップ固定部は、
前記ノズル本体の外周面に固着される係合筒部材と、
前記ノズルキャップに貫通形成され、前記係合筒部材の外周に密に嵌合し、且つ、前記係合筒部材の軸方向に摺動可能な内径を有する係合穴と、
を具備してなり、
前記係合筒部材は、前記ノズル本体に前記ノズルキャップが装着された後で前記係合穴に挿入されて前記ノズル本体に固着されることを特徴とするパイロットノズル。
【請求項2】
前記ノズルキャップは、前記ノズル本体との間に空隙を持たずに設けられていることを特徴とする請求項1に記載のパイロットノズル。
【請求項3】
内部に燃料通路を有し、先端付近に前記燃料通路からの燃料を噴射させる噴射孔を有するノズル本体と、
該ノズル本体の外周面および先端部付近を覆い、前記燃料が燃焼することにより生成される燃焼ガスの高熱から前記ノズル本体を保護するノズルキャップと、
を備えたパイロットノズルであって、
前記ノズルキャップがセラミックマトリックス複合材料により形成され、
前記ノズルキャップを前記ノズル本体に固定するキャップ固定部は、
前記ノズル本体の外周面に形成されて周方向に延びる外周凹溝と、
前記ノズルキャップの内周面に形成されて周方向に延びる内周凹溝と、
前記外周凹溝と前記内周凹溝とが合わせられて形成されるキー部材挿入通路に挿入される環状のキー部材と、
を具備してなることを特徴とするパイロットノズル。
【請求項4】
前記キー部材として円形断面のワイヤーが用いられたことを特徴とする請求項3に記載のパイロットノズル。
【請求項5】
前記キー部材として角形断面のエキスパンションリングが用いられ、
前記外周凹溝の深さ寸法は、前記キー部材の径方向の厚み寸法以上に設定され、
前記内周凹溝の深さ寸法は、前記キー部材の径方向の厚み寸法よりも小さく設定され、
前記キー部材は、径方向に押し縮められた時には前記外周凹溝の中に完全に埋没し、且つ、前記キー部材挿入通路の内部で径方向に拡張した時には前記内周凹溝の底面に弾接されることを特徴とする請求項3に記載のパイロットノズル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のパイロットノズルと、
該パイロットノズルの外周側に周方向に間隔を空けて配置された予混合燃焼させる複数の予混合ノズルと、
を備えていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービン燃焼器と、
該ガスタービン燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機と、
前記ガスタービン燃焼器からの燃焼ガスによって回転させられるタービンと、
を備えていることを特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を向上させたパイロットノズル、これを備えたガスタービン燃焼器およびガスタービンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器は、中央に拡散燃焼パイロットノズルが1本配置され、その周りに予混合燃焼させる複数本の予混合ノズルが配置された構造となっている。
ガスタービン燃焼器の内壁面は高温の燃焼ガスから自身を守るためにフィルム空気を流し断熱層を形成し、かつ、表面に遮熱コーティング処理するという断熱対策が採られている。
【0003】
しかし、燃焼器中央に位置するパイロットノズルは、高温な燃焼ガスの拡散炎がすぐ近くに形成され、この拡散炎に晒されることで焼損しやすいという問題がある。この対策として、例えば特許文献1,2に示されるように、パイロットノズルのノズル本体の周囲に空隙を介してノズルキャップ(遮熱板)を設け、このノズルキャップとノズル本体との間を空気通路として冷却空気を流し、ノズル本体を高熱から保護するようにしている。ノズルキャップの材質としては、耐熱性の高いニッケル合金ベースの耐熱材料が用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−65750号公報
【特許文献2】特開2009−168397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の構造は、主にパイロットノズルのノズル本体を熱から保護するものであり、ノズルキャップについては耐熱性の高い金属材料が用いられるに留められている。しかしながら、次世代を担うガスタービンでは、燃焼ガスのタービン入口温度が1500℃以上になるように燃焼温度を高めて高効率化を狙っているため、従来のノズルキャップを備えた構造ではノズルキャップの耐熱性が危ぶまれており、燃焼温度を高めて高効率化を図ることが困難であった。
【0006】
また、パイロットノズルのノズル本体の材質と、ノズルキャップの材質とが異なる場合には、熱膨張係数も異なるため、ノズル本体に対するノズルキャップの固定構造如何によっては、1000℃を超える超高温域においてノズルキャップに熱変形が起こり、ひいては破損に至る懸念もあり、信頼性に乏しかった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ノズルキャップの耐熱性を向上させると同時に、熱膨張に起因するノズルキャップの熱変形を防止し、ガスタービンの高効率化に寄与するとともに耐久性および信頼性を高めることのできるパイロットノズル、これを備えたガスタービン燃焼器およびガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
即ち、本発明に係るパイロットノズルは、内部に燃料通路を有し、先端付近に前記燃料通路からの燃料を噴射させる噴射孔を有するノズル本体と、該ノズル本体の外周面および先端部付近を覆い、前記燃料が燃焼することにより生成される燃焼ガスの高熱から前記ノズル本体を保護するノズルキャップと、を備えたパイロットノズルであって、前記ノズルキャップがセラミックマトリックス複合材料(Ceramic Matrix Composites:略してCMCとも呼ぶ)により形成され、前記ノズルキャップを前記ノズル本体に固定するキャップ固定部は、前記ノズル本体の外周面に固着される係合筒部材と、前記ノズルキャップに貫通形成され、前記係合筒部材の外周に密に嵌合し、且つ、前記係合筒部材の軸方向に摺動可能な内径を有する係合穴と、を具備してなり、前記係合筒部材は、前記ノズル本体に前記ノズルキャップが装着された後で前記係合穴に挿入されて前記ノズル本体に固着されることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、セラミックマトリックス複合材料により形成されたノズルキャップの耐熱性が凡そ1300℃以上に向上するため、燃焼ガスのタービン入口温度が1500℃以上となる次世代のガスタービンに適用しても、冷却空気が少なくて済む。また、ノズルキャップが熱変形を起こし難くなるため、パイロットノズルの耐久性および信頼性を高めることができる。これらにより、ガスタービンの高効率化に寄与することができる。
しかも、係合筒部材の内周部をノズル本体の外周面に溶接することができ、簡素な構造によってノズルキャップをノズル本体に固定することができる。特に、ノズル本体とノズルキャップとの間に冷却空気を流す空隙を設ける場合には、両部材間に介在させるスペーサや突起の役割を係合筒部材が果たすので、スペーサや突起類を省略して構造を簡素化することができる。
また、ノズルキャップに貫通形成された係合穴が、ノズル本体の外周面に固着された係合筒部材に係合し、係合筒部材の軸方向に摺動可能であるため、例えばノズル本体がノズルキャップに対して熱膨張または熱収縮して外径が変化しても、その変位が係合筒部材と係合穴との相対移動によって吸収され、ノズルキャップに熱変形が起こりにくい。このため、パイロットノズルの耐久性と信頼性を高めることができる。
【0010】
前記構成において、前記ノズルキャップは、前記ノズル本体との間に空隙を持たずに設けられていてもよい。
【0011】
前述のように、セラミックマトリックス複合材料により形成されたノズルキャップは、その耐熱性が従来も向上することにより、ノズル本体とノズルキャップとの間に冷却空気を流す空隙を設けないようにすることもできる。これにより、パイロットノズルの構造を簡素化して信頼性を高めるとともに、コンパクト化を図ることができる。
【0025】
本発明に係るパイロットノズルは、内部に燃料通路を有し、先端付近に前記燃料通路からの燃料を噴射させる噴射孔を有するノズル本体と、該ノズル本体の外周面および先端部付近を覆い、前記燃料が燃焼することにより生成される燃焼ガスの高熱から前記ノズル本体を保護するノズルキャップと、を備えたパイロットノズルであって、前記ノズルキャップがセラミックマトリックス複合材料により形成され、前記ノズルキャップを前記ノズル本体に固定するキャップ固定部は、前記ノズル本体の外周面に形成されて周方向に延びる外周凹溝と、前記ノズルキャップの内周面に形成されて周方向に延びる内周凹溝と、前記外周凹溝と前記内周凹溝とが合わせられて形成されるキー部材挿入通路に挿入される環状のキー部材と、を具備することを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、ノズル本体の外周面に形成された外周凹溝と、ノズルキャップの内周面に形成された内周凹溝との間にキー部材が介在することによってノズルキャップがノズル本体に固定される。この場合、キャップ固定部が、ノズル本体およびノズルキャップの周囲全周に亘って形成されるため、ボルト等を用いてノズルキャップをノズル本体に対してポイント的に固定する場合に比べて、キャップ固定部に加わる熱応力を分散させることができる。したがって、ノズルキャップに熱変形や破損が起こることを防止して、パイロットノズルの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0027】
上記構成において、前記キー部材として円形断面のワイヤーを用いてもよい。
【0028】
上記構成によれば、ワイヤーの持つ弾力性により、ノズル本体とノズルキャップとの間に相対移動可能な余裕が生まれる。このため、ノズル本体またはノズルキャップの熱膨張および熱収縮に起因する熱変形や破損が起こりにくくなり、パイロットノズルの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0029】
あるいは、前記キー部材として角形断面のエキスパンションリングを用い、前記外周凹溝の深さ寸法を、前記キー部材の径方向の厚み寸法以上に設定し、前記内周凹溝の深さ寸法を、前記キー部材の径方向の厚み寸法よりも小さく設定し、前記キー部材を、径方向に押し縮められた時には前記外周凹溝の中に完全に埋没し、且つ、前記キー部材挿入通路の内部で径方向に拡張した時には前記内周凹溝の底面に弾接されるようにしてもよい。
【0030】
上記構成によれば、キャップ固定部に加わる熱応力を分散させながら、ノズルキャップをノズル本体に確実に固定することができる。したがって、ノズルキャップに熱変形や破損が起こることを防止して、パイロットノズルの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0031】
また、本発明に係るガスタービン燃焼器は、前記のパイロットノズルと、該パイロットノズルの外周側に周方向に間隔を空けて配置された予混合燃焼させる複数の予混合ノズルと、を備えていることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、ノズルキャップの耐熱性を向上させ、熱膨張に起因するノズルキャップの熱変形を防止し得るパイロットノズルを備えることによって、ガスタービンの高効率化に寄与するとともに、耐久性および信頼性の高いガスタービン燃焼器を提供することができる。
【0033】
また、本発明に係るガスタービンは、前記ガスタービン燃焼器と、該ガスタービン燃焼器に圧縮空気を供給する圧縮機と、前記ガスタービン燃焼器からの燃焼ガスによって回転させられるタービンと、を備えていることを特徴とする。
【0034】
上記構成のガスタービンによれば、耐熱性が向上したガスタービン燃焼器を備えることにより、燃焼温度を高くしてタービン入口における燃焼ガス温度を増大させ、高効率なガスタービンを提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
以上のように、本発明に係るパイロットノズル、これを備えたガスタービン燃焼器およびガスタービンによれば、パイロットノズルにおけるノズルキャップの耐熱性を向上させ、且つ、熱膨張に起因するノズルキャップの熱変形を防止できるため、燃焼温度を高くしてタービン入口における燃焼ガス温度を増大させ、ガスタービンの高効率化に寄与するとともに耐久性および信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明を適用可能なガスタービンの概略構成を示した部分断面側面図である。
図2図1中に示すガスタービンにおける、ガスタービン燃焼器の部分を拡大した縦断面図である。
図3】本発明の第1実施形態を示すパイロットノズルの先端部分の縦断面図である。
図4】(a)は図3のIVa矢視によるキャップ固定部の平面図であり、(b)は(a)に示す係合穴をノズルキャップの軸方向に延びる長穴状にした例を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態を示すパイロットノズルの先端部分の縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態を示すパイロットノズルの先端部分の縦断面図である。
図7図6におけるキャップ固定部の部分を拡大した縦断面図である。
図8】本発明の第4実施形態を示すパイロットノズルの先端部分の縦断面図である。
図9】本発明の第5実施形態を示すパイロットノズルの先端部分の縦断面図である。
図10図9におけるキャップ固定部の部分を拡大した縦断面図である。
図11】本発明の第6実施形態を示すパイロットノズルの先端部分の縦断面図である。
図12図11におけるキャップ固定部の部分を拡大した縦断面図である。
図13図12に示すキャップ固定部の作用を示す縦断面図である。
図14図12に示すキャップ固定部の変形例を示す縦断面図である。
図15図14に示すキャップ固定部の作用を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るガスタービン1の全体概略構成を示す部分断面側面図である。このガスタービン1は、例えば発電用であり、圧縮機3と、燃焼器(ガスタービン燃焼器)5と、タービン7とにより構成され、このタービン7に図示しない発電機が連結される。
【0038】
圧縮機3は、空気を取り込む空気取入口9を有するとともに、圧縮機車室11内に複数の静翼13と動翼15が交互に配設されてなり、その外側に抽気マニホールド17が設けられている。燃焼器5は、圧縮機3で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、バーナで点火することで燃焼可能となっている。タービン7は、タービン車室19内に複数の静翼21と動翼23が交互に設けられている。
【0039】
タービン7のタービン車室19には、排気室25が連続して設けられており、この排気室25は、タービン7に連続する排気ディフューザ27を有している。また、圧縮機3、燃焼器5、タービン7および排気室25の中心部を貫通するようにロータ29が軸支されており、圧縮機3側の端部が軸受部31により回転自在に支持される一方、排気室25側の端部が軸受部33により回転自在に支持されている。ロータ29には複数のディスクプレートが固定されており、各動翼15,23が連結されると共に、排気室25側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0040】
上記構成により、圧縮機3の空気取入口9から取り込まれた空気が、複数の静翼13と動翼15を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器5にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給されることで燃焼する。そして、この燃焼器5で生成された高温・高圧の燃焼ガスが、タービン7を構成する複数の静翼21と動翼23を通過することでロータ29を駆動回転し、このロータ29に連結された発電機に回転動力を付与することで発電を行う一方、排気ガスは排気室25の排気ディフューザ27で静圧に変換されてから大気に放出される。
【0041】
図2に示すように、燃焼器5では、燃焼器外筒35に燃焼器内筒37が支持され、この燃焼器内筒37の先端部に燃焼器尾筒39が連結されて燃焼器ケーシングが構成されている。そして、燃焼器内筒37によって囲まれた空間内に燃焼ガスの流れが形成される。燃焼器内筒37内には、その中心部にパイロットノズル41が設けられると共に、燃焼器内筒37の内周面に周方向に沿ってパイロットノズル41を取り囲むように複数の予混合ノズル43が設けられている。パイロットノズル41の先端部にはパイロットコーン45が装着されている。
【0042】
従って、圧縮機3における圧縮機車室11から高温・高圧の圧縮空気が燃焼器5に流れこむと、各予混合ノズル43内では、この圧縮空気がメイン燃料棒から噴射された燃料と混合され、予混合気の旋回流となって燃焼器内筒37内に流れ込む。一方、パイロットノズル41内では、圧縮空気がパイロット燃料棒から噴射された燃料と混合され、この混合気は図示しない種火により着火されて燃焼し、燃焼ガスとなって燃焼器内筒37内に噴出する。そして、燃焼ガスの一部が燃焼器内筒37内に火炎を伴って周囲に拡散するように噴出することで、各予混合ノズル43から燃焼器内筒37および燃焼器尾筒39に流れ込んだ予混合気に着火されて燃焼する。
【0043】
このように構成されたガスタービン1では、圧縮機3で圧縮した圧縮空気の一部を圧縮機車室11から抽気マニホールド17により抽気して昇圧し、燃焼器5に冷却媒体として供給するようになっている。また、燃焼器5には、予混合ノズル35にメイン燃料を供給する燃料供給ライン47およびパイロットノズル41にパイロット燃料を供給する燃料供給ライン49が連結されている。
【0044】
[第1実施形態]
次に、本発明に係るパイロットノズルの第1実施形態について、図3および図4を参照して説明する。
図3は、発明の第1実施形態を示すパイロットノズル41Aの先端部分の縦断面図である。
【0045】
パイロットノズル41Aの先端部分は、燃料供給ライン49から供給されるパイロット燃料が通る燃料通路51を内部に有し、先端付近に燃料通路51からの燃料を噴射させる噴射孔52を備えた略中空円筒形状をしたノズル本体53を備えている。
【0046】
また、ノズル本体53の外周面53aおよび先端部53b付近を、間隔を空けて覆う略中空円筒形状のノズルキャップ55Aが設置されている。このノズルキャップ55Aは、ノズル本体53の外周面53aの周囲を覆う円筒部55aと、ノズル本体53の先端部53b付近を覆う端面部55bとが一体に形成されている。端面部55bにはノズル本体53の噴射孔52の位置に整合する複数の噴射開口部55cが形成されるとともに、ノズル本体53の先端部53bの中央部を外部に露呈させる1つの先端開口部55dが形成されている。
【0047】
ノズルキャップ55Aは、燃料が燃焼することにより生成される燃焼ガスの高熱からノズル本体53を保護する遮熱板であり、セラミックマトリックス複合材料(CMC)により形成されていて、その耐熱温度は概ね1300℃程度である。このノズルキャップ55Aは、ノズル本体53の周方向に間隔を空けて設けられた複数のスペーサ57によってノズル本体53の外周面53aおよび先端部53bから所定の間隔を保持するように取り付けられている。スペーサ57には、ノズル本体53の噴射孔52およびノズルキャップ55Aの噴射開口部55cの位置に整合する開口部57aが形成されている。
【0048】
ノズル本体53とノズルキャップ55Aとの間に形成される空気通路59には、抽気マニホールド17によって圧縮機3の圧縮機車室11から抽気された圧縮空気が供給され、この圧縮空気が冷却媒体として空気通路59内を先端側に向かって流れ、ノズル本体53の過熱を防止するようになっている。空気通路59を流れた圧縮空気はノズルキャップ55Aの先端開口部55dから排出され、その際にノズル本体53の先端部53bに沿う空気層を形成して先端部53bを熱から保護する。
【0049】
図4(a)にも示すように、ノズルキャップ55Aをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Aは、ノズル本体53の外周面53aに固着される係合筒部材62と、ノズルキャップ55Aに貫通形成された円孔状の係合穴63とを具備してなる。
【0050】
係合筒部材62は、その内周部が、ノズル本体53の外周面53aに形成された短い円柱状の係合凸部64の外周部に嵌合し、係合筒部材62の内周部が溶接部65によって係合凸部64に固着される。一方、ノズルキャップ55Aの係合穴63は、ノズル本体53の係合凸部64の位置に整合する位置に形成され、その内径が係合筒部材62の外周に密に嵌合し、且つ、係合筒部材62の軸方向に摺動可能な寸法に設定されている(熱膨張吸収構造)。図4(b)に示すように、係合穴63をノズルキャップ55Aの軸方向に延びる長穴状にしてもよい(熱膨張吸収構造)。
【0051】
係合筒部材62は、ノズル本体53にノズルキャップ55Aが装着された後で係合穴63に挿入され、ノズル本体53の係合凸部64に溶接されて溶接部65が形成される。
なお、係合凸部64を省略して係合筒部材62をノズル本体53の外周面53aに直接溶接するようにしてもよい。
また、変形例として、係合筒部材62を係合穴63側に固定し、係合筒部材62を係合凸部64に対して摺動可能にしてもよい。
【0052】
以上のように構成されたパイロットノズル41Aによれば、セラミックマトリックス複合材料により形成されたノズルキャップ55Aの耐熱性が凡そ1300℃に向上するため、ノズル本体53の噴射孔52から噴射される図示しない混合気(燃料)が燃焼して生成される燃焼ガスの温度が1500℃以上になっても、冷却空気が少なくて済む。
【0053】
しかも、ノズルキャップ55Aが熱変形を起こし難くなるため、パイロットノズル41Aの耐久性および信頼性を高めることができる。これらにより、ガスタービン1の燃焼ガス温度を高くして高効率化に寄与することができる。
【0054】
また、ノズルキャップ55Aをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Aにおいては、係合筒部材62の内周部をノズル本体53の外周面に溶接することができ、簡素な構造によってノズルキャップ55Aをノズル本体53に固定することができる。
【0055】
係合筒部材62は、ノズル本体53とノズルキャップ55Aとの間に空気通路59内を形成するためのスペーサとしての役割も果たすため、スペーサや突起類を省略して構造を簡素化することができる。
【0056】
また、ノズルキャップ55Aに貫通形成された係合穴63が、ノズル本体53の外周面53aに固着された係合筒部材62に係合し、係合筒部材62の軸方向に摺動可能であるため、この部分が熱膨張吸収構造となっている。したがって、ノズル本体53がノズルキャップ55Aに対して熱膨張または熱収縮して外径が変化しても、その変位が係合筒部材62と係合穴63との相対移動によって吸収される。
【0057】
さらに、図4(b)に示すように、係合穴63をノズルキャップ55Aの軸方向に延びる長穴状に形成した熱膨張吸収構造とすれば、ノズル本体53がノズルキャップ55Aに対して軸方向に熱膨張または熱収縮した場合においても、その変位は係合穴63内で係合筒部材62が軸方向に相対移動することによって吸収される。
【0058】
これらの熱膨張吸収構造を備えることにより、ノズル本体53の熱膨張に起因してノズルキャップ55Aが熱変形することを防止し、パイロットノズル41Aの耐久性と信頼性を高めることができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、本発明に係るパイロットノズルの第2実施形態について、図5を参照して説明する。
ここに示すパイロットノズル41Bは、第1実施形態のパイロットノズル41Aと同じく、ノズル本体53の外周面53aおよび先端部53bが、セラミックマトリックス複合材料(CMC)により形成されたノズルキャップ55Bによって覆われている。しかし、第1実施形態のノズルキャップ55Aと異なり、ノズルキャップ55Bはノズル本体53との間に空隙を持たずに設けられている。
【0060】
このノズルキャップ55Bは、ノズル本体53の外周面53aの周囲を覆う円筒部55aと、ノズル本体53の先端部53b付近を覆う端面部55bとが一体に形成されており、端面部55bにはノズル本体53の噴射孔52の位置に整合する噴射開口部55cが形成されている。なお、第1実施形態と異なり、端面部55bにはノズル本体53の先端部53bを露呈させる開口部が形成されていない。
【0061】
ノズルキャップ55Bをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Bは、第1実施形態におけるキャップ固定部61Aと同様に、ノズル本体53の外周面53aに固着される係合筒部材62と、ノズルキャップ55Bに貫通形成された円孔状の係合穴63とを具備してなる。係合筒部材62の長さは、第1実施形態におけるキャップ固定部61Aのものよりも短く、ノズルキャップ55Bの肉厚に等しい。また、ノズル本体53の外周面53aには係合凸部が形成されていない。
【0062】
係合筒部材62は、ノズル本体53にノズルキャップ55Bが装着された後で係合穴63に挿入され、ノズル本体53の外周面53aに対して溶接部65により溶接されて固定される。このキャップ固定部61Bの機能は第1実施形態のキャップ固定部61Aと同様である。
【0063】
セラミックマトリックス複合材料により形成されたノズルキャップ55Bは、その耐熱性が従来も格段に向上したことにより、このようにノズル本体53との間に冷却空気を流す空隙を設けないようにすることもできる。これにより、パイロットノズル41Bの構造を簡素化して信頼性を高めるとともに、コンパクト化を図ることができる。
【0064】
[第3実施形態]
次に、本発明に係るパイロットノズルの第3実施形態について、図6および図7を参照して説明する。
このパイロットノズル41Cは、そのノズルキャップ55Cをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Cの部分以外の構成については、第1実施形態のパイロットノズル41Aと同様であるため、各部に同一符号を付して説明を省略する。ノズルキャップ55Cは、第1実施形態のノズルキャップ55Aと同じく、セラミックマトリックス複合材料により形成されて耐熱性が高められている。
【0065】
図7にも示すように、キャップ固定部61Cは、ノズル本体53の外周面53aに突設された締結ボス68に形成された雌ネジ部69に、ノズルキャップ55Cに貫通形成されたボルト挿通穴70が重ねられ、固定ボルト71がスプリングワッシャ72を介してボルト挿通穴70に挿通されて雌ネジ部69に締結される構造である。固定ボルト71はセラミックマトリックス複合材料により形成するのが好ましい。こうすれば、固定ボルト71の耐熱性が向上するため、熱による焼損や材質劣化等の懸念を排除し、パイロットノズル41Cの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0066】
ボルト挿通穴70の内径寸法は、固定ボルト71が径方向に相対移動できるように、固定ボルト71の外径寸法よりも十分に大きく設定されている。また、固定ボルト71の長さは、雌ネジ部69の底部まで締め込まれた状態で、固定ボルト71の頭部71aがノズルキャップ55Cの外周面55fに対して所定の寸法Sだけ浮き上がるように設定されている。さらに、スプリングワッシャ72は、固定ボルト71の頭部71aとノズルキャップ55Cの外周面55fとの間に弾装されている。上記の所定の寸法Sは、スプリングワッシャ72の最圧時における厚さ寸法よりも大きく、且つ該スプリングワッシャ72の自由時における厚さ寸法よりも小さく設定されている。
【0067】
以上のようにキャップ固定部61Cを構成したことにより、非常に簡素な構造によってノズルキャップ55Cをノズル本体53に取り付けることができ、ノズルキャップ55Cの着脱性を向上させることができる。しかも、スプリングワッシャ72が設けられていることにより、固定ボルト71の弛みを防止することができる。
【0068】
さらに、ボルト挿通穴70の内径寸法が固定ボルト71の外径寸法よりも十分に大きい上に、固定ボルト71が締め込まれた状態で、固定ボルト71の頭部71aがノズルキャップ55Cの外周面55fに対して所定の寸法Sだけ浮き上がり、この寸法Sは、固定ボルト71の頭部71aとノズルキャップ55Cの外周面55fとの間に弾装されるスプリングワッシャ72の最圧時における厚さ寸法よりも大きく、且つ該スプリングワッシャ72の自由時における厚さ寸法よりも小さく設定されているため、固定ボルト71を確実に締結して弛みを防止しつつ、熱膨張吸収構造を構築することができる。
【0069】
したがって、例えばノズル本体53がノズルキャップ55Cに対して熱膨張または熱収縮しても、ノズルキャップ55Cが面方向に相対移動することによってその変位が吸収され、ノズルキャップ55Cには熱変形が起こりにくい。また、スプリングワッシャ72の弾力により、ノズルキャップ55Cがノズル本体53側に押さえ付けられて振動が防止される。これらによって、パイロットノズル41Cの耐久性と信頼性を高めることができる。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明に係るパイロットノズルの第4実施形態について、図8を参照して説明する。
このパイロットノズル41Dは、そのノズルキャップ55Dをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Dの部分以外の構成については、第1実施形態のパイロットノズル41Aと同様であるため、各部に同一符号を付して説明を省略する。ノズルキャップ55Dはセラミックマトリックス複合材料により形成されている。
【0071】
キャップ固定部61Dは、ノズルキャップ55Dがノズル本体53に対してブラインドリベット75で固定される構造である。ブラインドリベット75は、周知のように、ノズルキャップ55Dの外側から締結することができるリベットである。
【0072】
ノズルキャップ55Dには、周方向に所定の間隔で複数のすり鉢状の凹部76が形成されており、これらの凹部76の位置でブラインドリベット75による接合が行われ、接合後はブラインドリベット75の頭部75aが凹部76の中に埋没し、この頭部75aの高さがノズルキャップ55Dの外周面55fよりも低くなるようにされている。
【0073】
以上のようにキャップ固定部61Dを構成したことにより、ノズル本体53にネジ部を加工する必要を無くして構成を簡素化するとともに、ノズルキャップ55Dをノズル本体53に固定する作業を容易にすることができる。また、ブラインドリベット75の頭部75aが凹部76の中に埋没されるため、燃焼ガスの高温から頭部75aを保護することができる。
【0074】
[第5実施形態]
次に、本発明に係るパイロットノズルの第5実施形態について、図9および図10を参照して説明する。
このパイロットノズル41Eは、そのノズルキャップ55Eをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Eの部分以外の構成については、第1実施形態のパイロットノズル41Aと同様であるため、各部に同一符号を付して説明を省略する。ノズルキャップ55Eはセラミックマトリックス複合材料により形成されている。
【0075】
図10に拡大して示すように、キャップ固定部61Eは、ノズル本体53の外周面に形成されて周方向に延びる外周凹溝78と、ノズルキャップ55Eの内周面に形成されて周方向に延びる内周凹溝79と、これらの外周凹溝78と内周凹溝79と合わせられて形成されるキー部材挿入通路80に挿入される環状のキー部材81とを備えて構成されている。外周凹溝78は、ノズル本体53の外周面53aに溶接82等によって固着されたスペーサ83の外周面に形成されている。
【0076】
キー部材81としてはワイヤーが用いられている。このワイヤーを用いたキー部材81は、その断面積がキー部材挿入通路80の断面積にほぼ等しく、キー部材挿入通路80の内部に密に、且つ、スムーズに挿入することができる。なお、ノズルキャップ55Eには、キー部材挿入通路80にキー部材81を挿入するための図示しない開口部が形成されている。
【0077】
以上のようにキャップ固定部61Eを構成したことにより、外周凹溝78と内周凹溝79との間にキー部材81が介在することによってノズルキャップ55Eがノズル本体53に固定される。この場合、キャップ固定部61Eが、ノズル本体53およびノズルキャップ55Eの周囲全周に亘って形成されるため、ボルト等を用いてノズルキャップをノズル本体53に対してポイント的に固定する場合に比べて、キャップ固定部61Eに加わる熱応力を分散させることができる。したがって、ノズルキャップ55Eに熱変形や破損が起こることを防止することができる。
【0078】
キー部材81はワイヤーであるため、ワイヤーの持つ弾力性により、ノズル本体53とノズルキャップ55Eとの間に相対移動可能な余裕が生まれる。このため、ノズル本体53またはノズルキャップ55Eの熱膨張および熱収縮に起因する熱変形や破損が起こりにくくなる。さらに、ノズルキャップ55Eをノズル本体53に対して防振的に保持することができる。これらにより、パイロットノズル41Eの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0079】
[第6実施形態]
次に、本発明に係るパイロットノズルの第6実施形態について、図11図15を参照して説明する。
このパイロットノズル41Fは、そのノズルキャップ55Fをノズル本体53に固定するキャップ固定部61Fの部分以外の構成については、第1実施形態のパイロットノズル41Aと同様であるため、各部に同一符号を付して説明を省略する。ノズルキャップ55Fはセラミックマトリックス複合材料により形成されている。
【0080】
図12にも示すように、キャップ固定部61Fは、図9に示す第4実施形態のキャップ固定部61Eと同様に、ノズル本体53の外周面に形成されて周方向に延びる外周凹溝85と、ノズルキャップ55Fの内周面に形成されて周方向に延びる内周凹溝86と、これらの外周凹溝85と内周凹溝86と合わせられて形成されるキー部材挿入通路87に挿入される環状のキー部材88とを備えて構成されている。外周凹溝85は、ノズル本体53の外周面53aに溶接89等によって固着されたスペーサ90に形成されている。
【0081】
キー部材88としてはエキスパンションリングが用いられている。図12に示すように、外周凹溝85の深さ寸法H1は、キー部材88の径方向の厚み寸法T以上に設定され、内周凹溝86の深さ寸法H2は、キー部材88の厚み寸法Tよりも小さく設定されている。
【0082】
また、エキスパンションリングであるキー部材88は、径方向に押し縮められた時には外周凹溝85の中に完全に埋没し、且つ、キー部材挿入通路87の内部で径方向に拡張した時には内周凹溝86の底面に弾接されるようになっている。
【0083】
ノズルキャップ55Fをノズル本体53に装着する時には、図13に示すように、キー部材88を径方向に押し縮めて外周凹溝85の中に完全に埋没させた状態で、ノズルキャップ55Fを軸方向にスライドさせて装着する。そして、ノズルキャップ55Fの内周凹溝86がノズル本体53の外周凹溝85の位置に整合すると同時にキー部材88が径方向に拡張して内周凹溝86に嵌り込む(図12の状態となる)。すると、キー部材88が外周凹溝85と内周凹溝86との間に跨るように位置するため、ノズルキャップ55Fがノズル本体53に対して軸方向に移動できなくなる。
【0084】
上記構成によれば、キャップ固定部61Eに加わる熱応力を分散させながら、ノズルキャップ55Fをノズル本体53に確実に固定することができる。したがって、ノズルキャップ55Fに熱変形や破損が起こることを防止して、パイロットノズル41Fの耐久性および信頼性を高めることができる。
【0085】
ところで、図14に示すように、ノズルキャップ55Fの外周面から内周凹溝86に連通する複数の雌ネジ穴92を周方向に間隔を空けて形成しておくことにより、ノズルキャップ55Fをノズル本体53から取り外す時に、これらの雌ネジ穴92にボルト93を捩じ込んでキー部材88をその拡張力に抗して内周凹溝86から追い出し、ノズルキャップ55Fを容易に取り外すことができる。
【0086】
以上の各実施形態に示したように、ノズルキャップ55A〜55Fをセラミックマトリックス複合材料により形成してその耐熱性を向上させ、熱膨張に起因する熱変形を防止し得るパイロットノズル41A〜41Fをガスタービン燃焼器5に備えることにより、ガスタービン1の高効率化に寄与するとともに、耐久性および信頼性の高いガスタービン燃焼器5を提供することができる。特に、燃焼温度を高くしてタービン入口における燃焼ガス温度を増大させ、高効率化を図ることができる。
【0087】
なお、本発明は上記第1〜第6実施形態の構成のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更や改良を加えることができ、このように変更や改良を加えた実施形態も本発明の権利範囲に含まれるものとする。例えば、上記第1〜第6実施形態の構成を組み合わせる等してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 ガスタービン
3 圧縮機
5 ガスタービン燃焼器
7 タービン
41,41A〜41F パイロットノズル
43 予混合ノズル
51 燃料通路
52 噴射孔
53 ノズル本体
53a ノズル本体の外周面
53b ノズル本体の先端部
55A〜55F ノズルキャップ
55f ノズルキャップの外周面
61A〜61F キャップ固定部
62 係合筒部材
63 係合穴
69 雌ネジ部
70 ボルト挿通穴
71 固定ボルト
71a 固定ボルトの頭部
72 スプリングワッシャ
75 ブラインドリベット
78,85 外周凹溝
79,86 内周凹溝
80,87 キー部材挿入通路
81,88 キー部材
H1 外周凹溝の深さ寸法
H2 内周凹溝の深さ寸法
S 固定ボルト頭部の、ノズルキャップの外周面からの浮き上がり寸法
T キー部材の径方向の厚み寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15