特許第5967984号(P5967984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5967984
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/10 20060101AFI20160728BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20160728BHJP
   F28F 9/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F28D7/10 Z
   F28D7/16 Z
   F28D7/16 A
   F28F9/00 331
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-52094(P2012-52094)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-185771(P2013-185771A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山名 浩史
(72)【発明者】
【氏名】中川 政和
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0149311(US,A1)
【文献】 実開昭62−080161(JP,U)
【文献】 実公昭38−025582(JP,Y1)
【文献】 特開昭59−044582(JP,A)
【文献】 特開昭62−022992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 39/00−39/04
F28D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に延びる外胴と、前記外胴内に配置され高温熱媒体が内部を流れる複数の伝熱管からなる伝熱管群とを備え、高温熱媒体入口より受け入れた前記高温熱媒体が前記伝熱管群内を流れる状態で、前記外胴と前記伝熱管群との間に形成された低温熱媒体移流空間に流入される低温熱媒体を加温して加温ガスとして外部に放出するシェルアンドチューブ式熱交換器として構成され、
前記低温熱媒体移流空間に流入する低温熱媒体量に対応するガス量の前記加温ガスが外部に放出される構成で、
前記低温熱媒体が気液混相状態で前記低温熱媒体移流空間に流入することがある熱交換器であって、
前記伝熱管群の間に、液相状態の低温熱媒体を受け止め、液面を形成する棒状部材が設けられ
前記伝熱管と前記棒状部材とが、前記外胴の軸方向視にて、斜め格子の格子点に相当する箇所に位置させる形態で配置されている熱交換器。
【請求項2】
前記棒状部材に上下方向の貫通孔が複数設けられている請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記棒状部材が、前記複数の伝熱管を支持する管板に支持されている請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記棒状部材が、長手方向視で、上方開口するU字状に形成されたU型樋状部材である請求項1〜3のいずれか一項記載の熱交換器。
【請求項5】
前記棒状部材が、長手方向視で、斜め上方に延びる堰部材を少なくとも一対備え、前記一対の堰部材間に、前記液相状態の低温熱媒体を受け止める液受止め部を形成する請求項1〜3のいずれか一項記載の熱交換器。
【請求項6】
前記外の筒軸方向視で、複数の前記棒状部材が上下及び左右方向に分散配置、または特定の規則に基き分散配置されている請求項1から5のいずれか一項記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水平方向に延びる外胴と、前記外胴内に配置され高温熱媒体が内部を流れる複数の伝熱管からなる伝熱管群とを備え、高温熱媒体入口より受け入れた高温熱媒体が伝熱管群内を流れる状態で、外胴と伝熱管群との間に形成された低温熱媒体移流空間に流入される低温熱媒体を加温して加温ガスとして外部に放出するシェルアンドチューブ式熱交換器として構成され、低温熱媒体移流空間に流入する低温熱媒体量に対応するガス量の加温ガスが外部に放出される構成で、低温熱媒体が気液混相状態で低温熱媒体移流空間に流入することがある熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換器の一例としては、特許文献1に記載の加温器11、特許文献2に記載のガス過熱用熱交換器11がある。これら文献に開示の熱交換器は、蒸発器(気化器)により蒸発・気化された低温熱媒体を高温熱媒体により昇温する構造を有しており、構造上の問題、或は、処理量との関係から横置きシェルアンドチューブ構造とされている。
即ち、水平方向に延びる外胴と、この外胴内に配置され高温熱媒体(海水)が内部を流れる複数の伝熱管からなる伝熱管群とを備え、高温熱媒体入口より受け入れた高温熱媒体(海水)が伝熱管群内を流れる状態で、外胴と伝熱管群との間に形成された低温熱媒体移流空間に流入される低温熱媒体(天然ガス)を加温して加温ガスとして外部に放出する。
従来型シェルアンドチューブ構造の熱交換器を、本願に対応して、図4に示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−269468号公報
【特許文献2】特開2002−309276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の設備は、液化天然ガス(LNG)から気化天然ガス(NG)及び熱量調整された都市ガスを得るための設備であるが、一般的に気液混相状態にある或はほぼ気化された状態にある昇温対象の低温熱媒体を高温熱媒体により昇温する熱交換器にあっては、熱交換器の上流の運転状態が変化する、或は、周囲環境の温度条件等の変化によって、設計条件として予定される以上の液相状態にある低温熱媒体が熱交換器に流入することがある。
このような状態にあっては、その熱負荷が大きくなり、低温熱媒体が熱交換器外胴底部に溜まり、一部伝熱管内の高温熱媒体を凍結させたり、運転状態を不安定化する虞がある。このような異常状態が発生すると、熱交換器を含むシステム全体の運転状態が多大に影響を受け好ましくない。
【0005】
本発明の目的は、横置きシェルアンドチューブ構造を有する熱交換器であって、昇温対象の低温熱媒体が、気液混相状態で熱交換器内に流入することがある熱交換器において、熱交換器内において、低温熱媒体を外銅底部に溜めることなく、熱交換器から送出される低温熱媒体を確実に気相の状態とすることができる熱交換器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、
水平方向に延びる外胴と、前記外胴内に配置され高温熱媒体が内部を流れる複数の伝熱管からなる伝熱管群とを備え、高温熱媒体入口より受け入れた前記高温熱媒体が前記伝熱管群内を流れる状態で、前記外胴と前記伝熱管群との間に形成された低温熱媒体移流空間に流入される低温熱媒体を加温して加温ガスとして外部に放出するシェルアンドチューブ式熱交換器として構成され、
前記低温熱媒体移流空間に流入する低温熱媒体量に対応するガス量の前記加温ガスが外部に放出される構成で、
前記低温熱媒体が気液混相状態で前記低温熱媒体移流空間に流入することがある熱交換器の特徴構成は、
前記伝熱管群の間に、液相状態の低温熱媒体を受け止め、液面を形成する棒状部材が設けられ
前記伝熱管と前記棒状部材とが、前記外胴の軸方向視にて、斜め格子の格子点に相当する箇所に位置させる形態で配置されていることにある。
【0007】
この構成の熱交換器では、液相状態の低温熱媒体の低温熱媒体が低温熱媒体移流空間に進入した場合、棒状部材により当該液が受止められ、棒状部材に受止められた状態で、液面が形成される。一方、主に、気相状態の低温熱媒体は、伝熱管内を流れる高温熱媒体と熱交換し、順次、昇温される。従って、このようにして形成される加温ガスは、棒状部材の上に形態された低温熱媒体液の表面に接触する状態で移流することとなり、結果的に、液相状態の低温熱媒体の気化(蒸発)が促進される。
結果、低温熱媒体の気化を確実に行い、熱交換器から送出される低温熱媒体を確実に気相の状態とすることができる熱交換器を得ることができた。
【0008】
この熱交換器において、当該棒状部材に上下方向の貫通孔が複数設けられていることが好ましい。
ここで、上下方向とは、完全に鉛直方向に形成された貫通孔を意味するものではなく、
棒状部材の上側に形成される液相状態の低温熱媒体の液溜りから、同棒状部材の下側に低温熱媒体液が下降、滴下する程度の貫通孔を意味に、同一の貫通孔でみて、液溜りから低温熱媒体液が流入する貫通孔入口が、その流出する貫通孔出口より上側に位置していればよい。貫通孔の大きさ及び間隔は、熱交換器の運転状態を考慮して設計することが望ましい。
【0009】
このような貫通孔を設けることにより、液相状態にある低温熱媒体を上側に位置される棒状部材から下側に位置される棒状部材に順次移動させて、逐次、液面を形成しながら、気化(蒸発)を促進できる。
【0010】
この種の熱交換器において、前記棒状部材が、前記複数の伝熱管を支持する管板に支持されていることが好ましい。
横置き、シェルアンドチューブ式の熱交換器にあっては、基本的に、気相状態の低温熱媒体は低温熱媒体移流空間内を、また高温熱媒体は伝熱管群内を、ともに、水平方向に(一方の管板から他方の管板に向かって)移流する構造が採用される。このように水平方向に移流するに際して、外胴軸方向に対して垂直な方向に複数のバッフルが設けられている構造では、低温熱媒体は、上下方向及び水平方向の移流を繰り返すジグザグ経路を流れ、全体として水平方向に移流する場合もある。従って、気相状態の低温熱媒体は、基本的に水平方向の移流に伴って加温ガスとなる。
そこで、前記棒状部材を、管板間に渡って設けておくことにより、加温ガスと液相状態の低温熱媒体との接触機会を確実に確保でき、また、低温熱媒体が入口ノズルより離れた位置にある伝熱管にも分散して接触できるため、良好に気化(蒸発)を実現できる。
【0011】
ここで、前記棒状部材は、長手方向視で、断面形状が上方開口するU字状に形成されたU型樋状部材とすることが好ましい。
U型樋状部材の上側の凹部を液相状態の低温熱媒体の貯留部として、良好に液面を形成できる。
【0012】
前記棒状部材が、長手方向視で、斜め上方に延びる堰部材を少なくとも一対備え、前記一対の堰部材間に、前記液相状態の低温熱媒体を受け止める液受止め部を形成することも好ましい。
少なくとも一対の堰部材を少なくとも一対備え、これら一対の堰部材間に、液相状態の低温熱媒体を受け止める液受止め部を形成することで、当該液受止め部を液相状態の低温熱媒体の貯留部として、良好に液面を形成できる。
【0013】
このような棒状部材の外胴内での配置は、外胴の筒軸方向視で、複数の前記棒状部材が上下及び左右方向に分散配置、又は特定の規則に基づいて分散配置されている構成を採用することで、外胴内の空間を有効に利用して低温熱媒体の気化(蒸発)を良好に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る熱交換器の構成を示す伝熱管の長手方向に沿った縦断面図。
図2】実施形態に係る熱交換器の構成を示す伝熱管に直交する方向の縦断面図。
図3】樋状部材の詳細構造を示す縦断面図。
図4】従来型シェルアンドチューブ構造の熱交換器の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願に係る熱交換器100について、以下、図面を参照して説明する。
【0016】
図1に示すように、本願に係る熱交換器100は、水平方向に延びる外胴3と、この外胴3内に配置され高温熱媒体が内部を流れる複数の伝熱管4からなる伝熱管群40とを備え、高温熱媒体入口5より受け入れた高温熱媒体が伝熱管群40内を流れる状態で、外胴3と伝熱管群40との間に形成された低温熱媒体移流空間50に流入される構造が採用されている。
【0017】
これらの図において、外胴3の左右両端側には一対の管板6が設けられており、管板6より横方向端部側に、それぞれ高温熱媒体入口5に接続される高温熱媒体室7、及び高温熱媒体出口8に接続される高温熱媒体室9が設けられている。さらに、一対の管板6間には、伝熱管群40が設けられている。従って、高温熱媒体入口5から高温熱媒体室7に流入する高温熱媒体hは、伝熱管群40内を流れ、高温熱媒体室9に流入し、高温熱媒体出口8から流出する。
【0018】
前記外胴3内で、一対の管板6及び伝熱管群40の外側に形成される空間が低温熱媒体移流空間50として構成されている。このような低温熱媒体cの一例は、気液混相状態にある天然ガスとなる。
外胴3上部に低温熱媒体入口10及び加温ガス放出口11を設けている。
低温熱媒体移流空間50内を媒体が移流するに伴って、当該低温熱媒体cが伝熱管4内を流れる高温熱媒体hにより昇温、加温され、加温ガスwとして加温ガス放出口11から外部に放出される。
【0019】
低温熱媒体移流空間50に流入する低温熱媒体cの総量に対応するガス量の加温ガスwが外部に放出される。
即ち、単位時間当り低温熱媒体移流空間50に送り込まれる低温熱媒体cの量に対応する加温ガスwが、当該単位時間で熱交換器100から送り出される。
【0020】
本願に係る熱交換器100は、伝熱管群40の間に、前記管板6に渡って設けられた樋状部材30(棒状部材の一例)が備えられている。
【0021】
以下、さらに詳細に、本願に係る熱交換器の特徴構成に関して説明する。
図1図2からも判明するように、本願に係る熱交換器100では、伝熱管群40の間に、液相状態の低温熱媒体cを受け止め液面を形成する樋状部材30が設けられている。
この樋状部材30は、図2に示すように、外胴3内に適宜分散して配置されており、伝熱管4の外周表面、或は別の樋状部材30から滴下する液相状態の低温熱媒体cを受止めるように構成されている。
図3には、これら樋状部材30の断面形状を示しているが、図3(a)に示す例は、樋状部材30が、長手方向視(外胴3の軸方向視)で、上方開口するU字状に形成されたU型樋状部材30aとして構成されている。樋状部材30aに上下方向の貫通孔31が複数設けられている。
【0022】
図3(b)に示す例は、樋状部材30が、長手方向視(外胴3の軸方向視)で、星型断面を呈する星型樋状部材30bとして構成されている。具体的には、この例における星型樋状部材30bは、棒状の部材本体35の周部に放射状に板状部材36を分散配置して、上側に位置する板状部材36aを堰部材として、これら板状部材36a間に、液受止め部38を形成する構成である。
【0023】
〔別実施形態〕
(1)これま説明してきた実施形態では、高温熱媒体は右から左に流れる例を示したが、無論、高温熱媒体が左から右に流れる構造を採用してもよい。
(2)図3(a)では、U字状樋状部材30aに、上下方向の貫通孔31が下向き放射状に設けられている例を示している。無論、図3(b)に示す星型樋状部材30b(棒状部材の一例)においても、堰部材を成す板状部材36に貫通孔を設けておいてもよい。
従って、本願にいう棒状部材としては、伝熱管とは別に、液が外胴底部に落下するまでの気液接触時間を増加させ、外胴内での液分散機能を高める機能を持つ形状であれば、特に形状が限定されず、長手軸を有する棒状に構成されていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
横置きシェルアンドチューブ構造を有する熱交換器であって、昇温対象の低温熱媒体が、気液混相状態で熱交換器内に流入するある熱交換器において、熱交換器内において、熱交換器内の外胴底部に液溜まりを発生させずに、熱交換器から送出される低温熱媒体を確実に気相の状態とすることができる熱交換器を得ることができた。
【符号の説明】
【0025】
外胴
4 伝熱管
10 低温熱媒体流入口
11 加温ガス放出口
30 樋状部材(棒状部材)
30a U字状樋状部材(棒状部材)
30b 星型樋状部材(棒状部材)
31 貫通孔
35 棒状の部材本体
36 板状部材(堰部材)
38 液受止め部
40 伝熱管群
50 低温熱媒体移流空間
図1
図2
図3
図4