(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術に係る医療用針における第2係合手段は、ハブに設けられた凸部と、プロテクタに設けられた弾性係合片とから構成されており、ハブがプロテクタに対して軸線方向に移動することを阻止することにより、針体をプロテクタに収納した後に、針体がプロテクタから再び突出することを防止するものである。
【0006】
しかしながら、当該従来技術において、弾性係合片は、樹脂材料によりプロテクタの一部として一体形成されており、ハブから弾性係合片に対して過大な荷重がかかった場合、弾性係合片が、弾性限度を超えて変形することにより破断する可能性がある。弾性係合片が破断すると、針体を支持するハブと、プロテクタとの軸線方向のロック機能が失われるため、針体が再びプロテクタから突出することが起こり得る。
【0007】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、使用後に針体をプロテクタ内に収容可能な医療用針において、針体の収納後にプロテクタから針体が再突出することを確実に防止できる医療用針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る医療用針は、先端に針先を有する針体と、前記針体の基端に設けられたシャフトと、前記シャフトを囲み、内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された収容筒と、前記収容筒に固定され、前記シャフトに係合可能な係合部を有するロック部材と、を備え、前記シャフトは、前記収容筒に対して、前記針体の先端が前記収容筒から所定長突出する第1の位置から、前記針体の先端が前記収容筒内に収容される第2の位置までスライド可能であり、前記シャフトが前記第2の位置に移動したときに、前記ロック部材の前記係合部が前記シャフトに係合することにより、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第2の位置に係止され
、前記ロック部材は、前記収容筒の内周部に固定される基体を備え、前記係合部は、前記基体の一端側から他端側に向かって前記収容筒の内方に寄るように傾斜する係合片を有することを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、プロテクタとして機能する収容筒に対してシャフトを第2の位置に係止するロック部材が、収容筒とは別部材として構成されることで、ロック部材の材料として、収容筒よりも高強度の材料を採用することができる。従って、ロック部材に必要な強度を持たせることで、針体を収容筒内に収容した後にロック部材が破損することを防止又は抑制でき、これにより、針体が再び収容筒(プロテクタ)から突出する可能性を大幅に低減することができる。
【0010】
上記の医療用針において、前記ロック部材は、金属製であるとよい。
【0011】
上記の構成によれば、シャフトから過大な荷重がロック部材の係合部にかかり、仮にロック部材の係合部が弾性限度を超えて変形した場合でも、係合部が破断することがないため、針体を収容筒内に確実に保持することができる。
【0012】
また、本発明の医療用針
は、先端に針先を有する針体と、前記針体の基端に設けられたシャフトと、前記シャフトを囲み、内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された収容筒と、前記収容筒に固定され、前記シャフトに係合可能な係合部を有するロック部材と、を備え、前記シャフトは、前記収容筒に対して、前記針体の先端が前記収容筒から所定長突出する第1の位置から、前記針体の先端が前記収容筒内に収容される第2の位置までスライド可能であり、前記シャフトが前記第2の位置に移動したときに、前記ロック部材の前記係合部が前記シャフトに係合することにより、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第2の位置に係止され、前記ロック部材は、前記収容筒の内周部に固定される基体を備え、前記係合部は、前記基体の一端側から他端側に向かって延出し弾性変形可能な第1係合片と、前記基体の他端側から一端側に向かって延出し弾性変形可能な第2係合片とを有し、前記基体と前記係合部のうち、少なくとも前記基体は、軸線方向に対称形状に構成され、前記シャフトが前記第2の位置に移動した際、前記第1係合片と前記第2係合片の間に、前記シャフトに設けられた突起部が入り込むように構成され
ることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、係合部が弾性変形可能な第1係合片と第2係合片とにより構成され、且つ基体が軸線方向に対称形状に構成されることから、ロック部材の前後の方向性を問わずに、ロック部材を収容筒に装着することができるため、組立作業性に優れる。
【0014】
上記の医療用針において、前記基体は、軸線方向の両端部を構成する2つのリング部と、前記2つのリング部の間に、周方向に間隔を置いて軸線方向に沿って延在する複数の中間部とを有し、前記第1係合片と前記第2係合片は、前記複数の中間部の間に配置されてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、複数の係合片を有するロック部材を単一の部品としてコンパクトに構成することができる。
【0016】
また、本発明の医療用針
は、先端に針先を有する針体と、前記針体の基端に設けられたシャフトと、前記シャフトを囲み、内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された収容筒と、前記収容筒に固定され、前記シャフトに係合可能な係合部を有するロック部材と、を備え、前記シャフトは、前記収容筒に対して、前記針体の先端が前記収容筒から所定長突出する第1の位置から、前記針体の先端が前記収容筒内に収容される第2の位置までスライド可能であり、前記シャフトが前記第2の位置に移動したときに、前記ロック部材の前記係合部が前記シャフトに係合することにより、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第2の位置に係止され、前記収容筒は、第1管部と、前記第1管部の基端に設けられ且つ内側に前記シャフトが軸線方向に変位可能に配置された第2管部とを有し、前記シャフトが前記収容筒に対して前記第1の位置にあるとき、前記シャフトの先端が前記第2管部内に配置され
ることを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、シャフトが可動範囲の最も先端側に来たときのシャフトの先端が、収容筒の第1管部よりも基端側の第2管部内にあるため、収容筒の第1管部を細く構成し易い。すなわち、収容筒の先端側を構成する第1管部には、シャフトが挿通されないため、その分、第1管部の外径を小さく設定することが可能である。このため、医療用針の胴体部を容易に細径化することができる。細径化した胴体部は、使用者が手指により摘み易いため、操作性に優れた医療用針を提供することができる。
【0018】
上記の医療用針において、前記医療用針は、前記第1管部を囲むウイング軸部と、前記ウイング軸部から互いに反対方向に突出した一対のウイングと、を有する翼状針として構成されてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、第1管部を細くできることから、第1管部を囲むウイング軸部も細く構成することが可能である。ウイング軸部が細いと、折り畳んだウイングの根元部を介してウイング軸部を摘み、針体を生体に穿刺する操作時に、針体の針先が安定し易い。従って、操作性に優れた医療用針を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用針によれば、針体の収納後にプロテクタから針体が再突出することを確実に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る医療用針について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る医療用針10の構成を示す全体斜視図である。
図2は、針体12が収容筒16の先端から所定長突出した状態の医療用針10の軸線方向に沿った縦断面図である。
図3は、針体12の針先12aが収容筒16内に収容された状態の医療用針10の軸線方向に沿った縦断面図である。
図4は、医療用針10の分解斜視図である。
【0024】
本実施形態において、医療用針10は、採血、輸血、輸液等に際し、患者の皮膚に穿刺した状態で固定して使用される翼状針として構成されている。なお、本発明は、翼状針に限らず、他の種類の医療用針10、例えば、持続的な点滴静注を行う際に用いられる留置針等にも適用可能である。
【0025】
翼状針として構成された医療用針10は、生体に穿刺可能な針体12と、針体12を支持するハブ14と、ハブ14を摺動可能に保持する収容筒16と、ハブを収容筒16に対して所定位置で係止させるロック部材18と、収容筒16の先端寄りの箇所に固定された翼部材20とを備える。
【0026】
針体12は、採血、輸血、輸液等の処置を受ける患者の皮膚に穿刺される部分であり、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料で構成され、その先端部には、鋭利な針先12aが形成されている。この針体12は、血液等の体液或いは輸液等の流路となる中空部を有する円管状に構成されている。針体12の先端部には、液体の出入口として機能する開口12bが形成されている。
【0027】
図1に示すように、医療用針10の使用前において、医療用針10にはキャップ22が装着されている。このキャップ22は、その内部に針体12を収納可能な中空筒状に構成され、基端側において翼部材20の先端側と嵌合することで、針体12を覆った状態で医療用針10に装着可能に構成されている。医療用針10を使用する際は、キャップ22を先端方向に引っ張ることで、翼部材20から離脱し、針体12を露出させることができる。
【0028】
ハブ14は、針体12の基端に連結され、針体12を支持するものである。本実施形態において、ハブ14は、針体12の基端に針体12と同軸状に接続されその中空部が針体12のルーメンと連通する中空状のシャフト24と、シャフト24の基端に固定された操作部26とを備える。
【0029】
図2及び
図3に示すように、シャフト24には、軸線方向に沿って、針体12のルーメンと連通する内腔24aが貫通形成され、当該内腔24aの先端寄りの箇所には、径方向内方に膨出する縮径部24bが設けられる。針体12の基端は、シャフト24の先端に挿入され、針体12の基端面と縮径部24bの先端面とが当接することにより針体12とシャフト24とが軸線方向に位置決めされ、その位置で、針体12とシャフト24とが相互固定されている。シャフト24は、針体12よりも大径に構成される。
【0030】
図2〜
図4に示すように、シャフト24の先端部には、半径方向外方に膨出し且つ周方向に一周に渡って延在する環状の突起部28が設けられている。当該突起部28は、シャフト24が収容筒16に対して後退位置(後述する第2の位置)に来たときに、収容筒16の内側に固定状態で配置されたロック部材18の係合部62(
図4及び
図5参照)に係合する部分である。なお、環状の突起部28に代えて、シャフト24の周方向の一部の範囲で、シャフト24の軸線に対して直交する方向に突出する別形状の突起部が設けられてもよい。また、突起部28又は別形状の突起部は、シャフト24の先端ではなく、シャフト24の先端に対してやや基端側にずれた位置に設けられてもよい。
【0031】
操作部26は、使用者が手指で摘んで後退操作する部分である。操作部26は、基部44と、基部44から先端方向に延出した中空状の筒部46とを有する。本実施形態において、基部44は、基端方向に向かって幅広となる形状を有するとともに、左右両側には、操作者が手指で摘んで後退操作する際の滑り止めとして機能する凹凸形状45が設けられる。
【0032】
図3に示すように、筒部46は、シャフト24の基端部を囲むように構成され、筒部46とシャフト24との間には、先端方向に開口する環状の凹部43が形成される。
図3及び
図4に示すように、筒部46の内周部には、内方に突出する複数の突起47が周方向に間隔をおいて設けられている。図示例では、筒部46の内周部における左右両側に、互いに平行な内側平坦面46aが設けられ、当該内側平坦面46aの各々に突起47が設けられる。なお、突起47は1つでもよい。
【0033】
操作部26の基端には、輸液バッグ、血液バッグ等に連結された図示しないチューブと接続可能な凹状のチューブ接続部38が設けられている。なお、凹状のチューブ接続部に代えて、操作部26の基端から基端方向に突出した別形態のチューブ接続部が設けられてもよい。あるいは、シャフト24及び操作部26は、シャフト24の基端が操作部26の基端から突出するように構成され、当該シャフト24の基端に、輸液バッグ等に連結された図示しないチューブと接続可能な、さらに別形態のチューブ接続部が設けられてもよい。
【0034】
シャフト24及び操作部26の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリアミド(例えば、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン6・10、ナイロン12)等が挙げられる。
【0035】
図1及び
図2に示すように、収容筒16は、収容筒16の先端側を構成する第1管部48と、第1管部48の基端に設けられ第1管部48よりも太く(大径に)構成され且つ内側にシャフト24が軸線方向に変位可能に配置された第2管部50とを有する。収容筒16は、シャフト24を収容筒16に対して所定位置まで後退させた際、針体12の針先12aを覆うように構成されている。すなわち、収容筒16は、医療用針10の使用後に、針体12の針先12aを覆うプロテクタとして機能する。
【0036】
収容筒16は、先端寄りの所定範囲(本実施形態では、第1管部48の部分)が翼部材20のウイング軸部88の内側に嵌合されることにより、翼部材20に固定される。
図2及び
図3に示すように、収容筒16の内部には、軸線方向に貫通し針体12が挿通可能な内腔53が形成される。収容筒16に設けられた内腔53は、第1管部48に形成された第1内腔53aと、第2管部50に形成された第2内腔53bとからなる。第2内腔53bの内径は、第1内腔53aの内径よりも大きい。
【0037】
第1管部48は、ウイング軸部88の内側に配置される比較的細い部分である。第2管部50には、シャフト24が軸線方向に変位可能に配置される。シャフト24は、収容筒16に対して、針体12の先端が収容筒16から所定長突出し且つ当該シャフト24の先端が第2管部50内に配置される第1の位置(
図2参照)から、針体12の先端が収容筒16内に収容される第2の位置(
図3参照)までスライド可能である。
【0038】
図3及び
図4に示すように、本実施形態において、第2管部50の基端部には、軸線方向の所定範囲に渡って、その先端側の部分よりもやや拡径した基端拡径部51が設けられる。基端拡径部51の外周部の左右両側には、互いに平行な外側平坦面51aが設けられ、当該外側平坦面51aに、操作部26の筒部46の内周部に設けられた突起47と係合可能な複数の係合孔49が設けられる。図示例の係合孔49は、基端拡径部51の壁部を貫通している。なお、操作部26において突起47が1つだけ設けられる場合、係合孔49は1つだけ設けられればよい。
【0039】
図2に示す初期状態(シャフト24が収容筒16に対する可動範囲の最先端位置にあり、針体12が収容筒16の先端から所定長突出した状態)において、突起47と係合孔49とは係合する。シャフト24を収容筒16に対して基端方向に移動させようとする力が所定未満の場合には、突起47と係合孔49との係合状態が維持されるため、シャフト24の収容筒16に対する軸線方向の移動が阻止される。一方、シャフト24を収容筒16に対して基端方向に移動させようとする力が所定以上となった場合、突起47と係合孔49との係合が解除され、シャフト24の収容筒16に対する軸線方向の移動が許容される。
【0040】
このように、本実施形態では、操作部26に設けられた突起47と、収容筒16に設けられた係合孔49とにより、シャフト24を収容筒16に対して第1の位置に解除可能に係止させる第1ロック手段39(
図6参照)が構成される。なお、収容筒16に設けられる、突起47と係合可能な対象構造は、係合孔49に限らず、収容筒16の外周部に設けられた凹部(溝)であってもよい。
【0041】
第1ロック手段39は、図示した構成に限らず、係合構造のオスメスの配置が、
図6に示した構成とは逆の構成であってもよい。すなわち、操作部26において、突起47に代えて溝部又は孔部が設けられるとともに、収容筒16において、係合孔49又は凹部に代えて外方に突出する突起が設けられ、操作部26側の当該溝部又は孔部と、収容筒16側の当該突起とが係合する構成を採用してもよい。
【0042】
収容筒16の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、上述したシャフト24及び操作部26の構成材料として例示したものから選択した一種以上の材料を採用し得る。
【0043】
図6に示すように、ロック部材18は、収容筒16(第2管部50)の内周部における基端寄りの箇所に配置される。そのため、収容筒16(第2管部50)の内周部における基端寄りの箇所には、ロック部材18を配置するための配置部52が設けられる。本実施形態において、配置部52は、その先端側の部位よりも大径に形成される。配置部52の先端寄りの箇所には、ロック部材18の一部が係合する複数の溝部55が設けられる。図示例において、溝部55は収容筒16の内周部における略正反対位置(位相が180度ずれた位置)に2つ設けられるが、1つ又は3つ以上設けられてもよい。図示例において、配置部52の基端寄りの箇所の内周面には、周方向における略正反対位置(位相が180度ずれた位置)において係合孔49の内端が開口し、当該係合孔49に、ロック部材18の一部が係合する。
【0044】
図5に示すように、ロック部材18は、収容筒16の内周部(上述した配置部52)に固定される基体60と、シャフト24に係合可能な係合部62とを有し、全体として略中空円筒状を呈する。本実施形態において、基体60は、軸線方向の両端部を構成する2つのリング部65と、2つのリング部65の間に、周方向に間隔を置いて軸線方向に沿って延在する複数の中間部67とを有する。
【0045】
一端側と他端側のリング部65の外周部には、それぞれ、外方に突出した係合突起68が周方向に間隔をおいて複数設けられる。一端側の係合突起68は、図示例では一端側のリング部65における周方向の略正反対位置に設けられ、
図6に示すように、配置部52に設けられた溝部55に係合する。溝部55の代わりに、収容筒16の壁部を貫通する複数の孔部が設けられ、当該孔部に、ロック部材18の一端側の係合突起68が係合してもよい。
【0046】
ロック部材18の他端側の係合突起68は、図示例では他端側のリング部65における周方向の略正反対位置に設けられ、
図6に示すように、配置部52の基端寄りの箇所で配置部52の内面に開口する係合孔49に係合する。ロック部材18の他端側の係合突起68が係合する対象構造は、係合孔49に限らず、収容筒16の内周部(配置部52の内周部)に設けられた凹部(溝)であってもよい。
【0047】
ロック部材18の一端側と他端側の係合突起68が、それぞれ収容筒16の配置部52に設けられた溝部55と係合孔49とに係合とに係合することにより、ロック部材18が、配置部52内で位置決めされ、収容筒16に対して固定される。なお、係合突起68は、一端側のリング部65と他端側のリング部65のいずれか一方のみに設けられてもよく、あるいは、リング部65ではなく中間部67に設けられてもよい。この場合、係合突起68に係合する溝部又は孔部が、配置部52の内周部の対応する位置に設けられる。
【0048】
各リング部65において、周方向に設けられる係合突起68は1つでもよい。
図5に示すように、本実施形態において、2つのリング部65は同一形状であり、一端側と他端側の係合突起68は周方向の同一位相に同じ数だけ設けられている。すなわち、基端は、軸線方向に対称形状に構成される。
【0049】
本実施形態において、係合部62は、基体60の一端側から他端側に向かって延出し、ロック部材18の径方向に弾性変形可能な第1係合片63と、基体60の他端側から一端側に向かって延出し、ロック部材18の径方向に弾性変形可能な第2係合片64を有する。第1係合片63は、周方向に間隔をおいて複数(図示例では、4つ)設けられる。第2係合片64は、周方向に間隔をおいて複数(図示例では、4つ)設けられる。第1係合片63及び第2係合片64は、複数の中間部67の間に配置される。第1係合片63及び第2係合片64は、支持端側から自由端側に向かって、筒状のロック部材18の内方(半径方向内方)に寄るように傾斜する。リング部65、中間部67、係合突起68、第1係合片63及び第2係合片64は、これらが一体成型されて単一のロック部材18を構成する。
【0050】
本実施形態において、基体60は、軸線方向に対称形状に構成され、且つ第1係合片63及び第2係合片64は周方向の同一位相に同じ数だけ設けられる。従って、本実施形態におけるロック部材18は、全体として、軸線方向に対称形状に構成されていることから、ロック部材18は、収容筒16に対して、
図6等に示した向きとは前後逆向きに配置することもできる。このため、医療用針10の組立時において、ロック部材18の前後の方向性を問わずに、ロック部材18を収容筒16に装着することができ、組立作業性に優れる。
【0051】
なお、本実施形態におけるロック部材18は、第1係合片63と第2係合片64をそれぞれ複数個ずつ有するが、第1係合片63と第2係合片64をそれぞれ1つずつ有する構成でもよい。
【0052】
収容筒16に対してシャフト24が第1の位置から第2の位置に向かって移動する際、シャフト24に設けられた突起部28が、第1係合片63を外方に押圧することにより、第1係合片63が外方(径方向外方)に弾性変形し、これにより突起部28が第1係合片63を乗り越える。なお、ロック部材18が、収容筒16に対して
図2等に示した向きとは前後逆向きに配置された場合には、収容筒16に対してシャフト24が第1の位置から第2の位置に向かって移動する際、シャフト24に設けられた突起部28が、第2係合片64を外方に押圧することにより、第2係合片64が外方(径方向外方)に弾性変形し、これにより突起部28が第2係合片64を乗り越える。
【0053】
シャフト24は、収容筒16に対して最も基端側に変位した第2の位置において、
図7に示すように、シャフト24に設けられた突起部28が、第1係合片63と第2係合片64との間に入り込むことで、収容筒16に対するシャフト24の軸線方向の移動が阻止される。本実施形態では、ロック部材18と、シャフト24に設けられた突起部28とにより、シャフト24を収容筒16に対して第2の位置に実質的に解除不能に係止させる第2ロック手段41が構成される。
【0054】
ロック部材18の構成材料としては、例えば、上述したシャフト24及び操作部26の構成材料として例示したものから選択した一種以上の樹脂材料、又は金属材料を採用し得るが、本実施形態では、ロック部材18は、収容筒16よりも機械的強度を高めるべく、金属材料により構成される。ロック部材18が金属製であると、シャフト24から過大な荷重がロック部材18の第1係合片63又は第2係合片64にかかった場合でも第1係合片63又は第2係合片64の破断を防止できる。ロック部材18を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅系合金、タンタル、コバルト合金等が挙げられる。
【0055】
図1〜
図4に示すように、翼部材20は、中空状のウイング軸部88と、このウイング軸部88から左右にそれぞれ突出する一対のウイング90a、90bとを有する。ウイング90a、90bは、根元部においてウイング軸部88と結合し、根元部から外端に向かって幅広になる板状に形成されている。ウイング90a、90bは、可撓性を有し、根元部付近が屈曲又は湾曲することにより、開閉可能に構成されている。ウイング90a、90bの根元部付近には、開閉を容易にするため、ウイング軸部88の軸線方向に沿った薄肉部92a、92bが形成されている。
【0056】
一方のウイング90aの上面には、複数(図示例では2つ)の凸部94が設けられ、他方のウイング90bの上面には、凸部94と同数の複数(図示例で2つ)の凹部96が設けられており、一対のウイング90a、90bが閉じられた(畳まれた)際に、凸部94と凹部96とが嵌合するようになっている。凸部94と凹部96は、それぞれ1つずつ設けられてもよい。
【0057】
図示例のウイング軸部88とウイング90a、90bとは、一体的に形成されているが、ウイング軸部88とウイング90a、90bとを別々に形成し、それらを結合して翼部材20としてもよい。ウイング軸部88とウイング90a、90bの構成材料としては、特に限定されないが、例えば、上述したシャフト24等の構成材料として例示したものから選択した一種以上の材料を採用し得る。
【0058】
ウイング軸部88は、使用時に撓まないように剛性の高い材料で構成し、ウイング90a、90bは、根元部が屈曲して容易に開閉可能な適度の可撓性を有すように柔軟な材料で構成してもよい。ウイング軸部88とウイング90a、90bとが一体的に形成された翼部材20は、例えば、比較的剛性の高い樹脂材料と、比較的剛性の低い樹脂材料を用いた二色成型により製作できる。
【0059】
本実施形態に係る医療用針10は、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、その作用及び効果について説明する。
【0060】
上記のように構成された医療用針10を用いて採血、輸血、輸液等を行うには、先ず、医療用針10からキャップ22を取り外し、針体12を露出させる。次に、一対のウイング90a、90bを指で摘んで閉じた(畳んだ)状態とする。具体的には、両ウイング90a、90bの根元部を屈曲させて一方のウイング90aと他方のウイング90bを重ね合わせるようにして閉じる。このとき、一方のウイング90aに設けられた凸部94と他方のウイング90bに設けられた凹部96とが嵌合し、互いのずれが防止される。
【0061】
ウイング90a、90bを閉じた状態としたら、次に、閉じられたウイング90a、90bを指で摘んで保持しつつ、針体12を生体に対して穿刺する。このとき、
図6に示すように、収容筒16に設けられた係合孔49と、操作部26に設けられた突起47とが係合しているため、収容筒16に対するシャフト24の軸線方向の移動が阻止された状態となっている。すなわち、係合孔49と突起47との係合力は、針体12を生体に穿刺する際にシャフト24が収容筒16に対して基端方向に移動しようとする力より大きいため、収容筒16及びこれに固定された翼部材20に対して針体12が後退することが阻止された状態となっている。このため、翼部材20を指で摘んで針体12を生体に対して穿刺する際の穿刺抵抗で針体12が収容筒16に対して後退することがない。
【0062】
針体12を生体に対して穿刺した状態で留置する際には、ウイング90a、90bを開いた状態に戻し、ウイング90a、90bを粘着テープ等により皮膚に固定する。
【0063】
採血、輸血、輸液等が終了したら、粘着テープ等による皮膚に対するウイング90a、90bの固定を解除し、針体12を生体から抜き取る。このようにして、医療用針10の使用が終わったら、当該医療用針10を廃棄する者等の医療従事者が針体12に不用意に触れることを防止するために、プロテクタとして機能する収容筒16により針体12を覆って収納する「収納操作」を行う。
【0064】
この収納操作では、先ず、突起47と係合孔49との係合を解除し、シャフト24が収容筒16に対して基端方向に移動可能な状態とする。具体的には、操作部26を摘んで収容筒16に対して基端方向に引っ張り、その引っ張り力が、突起47と係合孔49との係合力を超えると、突起47と係合孔49との係合が外れ、シャフト24が収容筒16に対して基端方向に移動可能となる。
【0065】
そこで、操作部26をさらに引っ張ることにより、シャフト24を収容筒16に対して基端方向に移動させていく。ハブ14を収容筒16に対して最も基端側に移動させた状態では、針体12は収容筒16の内部(具体的には、第1管部48の内部)に位置する。
図3に示すように、シャフト24が所定の後退位置(第2の位置)まで移動すると、ロック部材18を含む第2ロック手段41(
図7参照)の作用により、収容筒16に対するシャフト24の前方への移動が阻止される。従って、針体12が再び収容筒16の先端から突出することはない。また、第2ロック手段41の作用により、収容筒16に対するシャフト24の後方への移動も阻止されるため、針体12が収容筒16の基端から抜き取られることが有効に防止される。
【0066】
上述したように、本発明に係る医療用針10によれば、シャフト24を収容筒16に対して第2の位置に係止するロック部材18が、収容筒16とは別部材として構成されることで、ロック部材18の材料として、収容筒16よりも高強度の材料(破損しにくい材料)を採用することができる。従って、ロック部材18に必要な強度を持たせることで、針体12を収容筒16内に収容した後にロック部材18が破損(破断)することを防止又は抑制でき、これにより、針体12が再び収容筒16から突出する可能性を大幅に低減することができる。
【0067】
本実施形態の場合、ロック部材18は、金属製であるため、シャフト24から過大な荷重がロック部材18の係合部62にかかり、仮にロック部材18の係合部62が弾性限度を超えて変形した場合でも、係合部62が破断することがない。従って、針体12を収容筒16内に確実に保持することができる。
【0068】
本実施形態の場合、ロック部材18は、収容筒16の内周部に固定される基体60と、係合部62を構成する弾性変形可能な第1係合片63及び第2係合片64とを有し、全体として軸線方向(前後方向)に対称形状に構成され、シャフト24が第2の位置に移動した際、第1係合片63と第2係合片64の間に、シャフト24に設けられた突起部28が入り込むように構成される。このように、係合部62が弾性変形可能な第1係合片63と第2係合片64とにより構成され、且つロック部材18が軸線方向に対称形状に構成されることから、ロック部材18の前後の方向性を問わずに、ロック部材18を収容筒16に装着することができ、組立作業性に優れる。なお、ロック部材18は、少なくとも、収容筒16に固定される基体60が軸線方向に対称形状であり、基体60の一端側から他端側に延出する弾性変形可能な第1係合片63と、基体60の他端側から一端側に延出する第2係合片64とを有する構成であれば、第1係合片63と第2係合片64の数や周方向の位相がずれた構成であっても、ロック部材18の前後の方向性を問わずに、ロック部材18を収容筒16に装着することができる。
【0069】
本実施形態の場合、ロック部材18において、基体60は、軸線方向の両端部を構成する2つのリング部65と、2つのリング部65の間に、周方向に間隔を置いて軸線方向に沿って延在する複数の中間部67とを有し、第1係合片63及び第2係合片64は、複数の中間部67の間に配置されるため、複数の弾性係合片を有するロック部材18を単一の部品としてコンパクトに構成することができる。
【0070】
なお、ロック部材18は、本実施形態で示した構造に限らず、シャフト24に係合可能な構造であればよい。例えば、ロック部材18が前後の方向性を有することを許容できる場合には、図示しないが、以下のような変形例に係るロック部材を採用してもよい。当該変形例に係るロック部材は、一端側に弾性係合片を有し、他端側に実質的に弾性変形しない固定係合壁を有し、弾性係合片が相対的に先端側、固定係合壁が相対的に基端側に配置されるように収容筒16に配置される。この構成の場合、収容筒16に対してシャフト24が第2の位置に移動したとき、弾性係合片と固定係合壁との間に、シャフト24に設けられた突起部28が入り込むことで、収容筒16に対するシャフト24の軸線方向の移動が阻止される。
【0071】
本実施形態の場合、収容筒16は、第1管部48と第2管部50とを有し、シャフト24が収容筒16に対して第1の位置にあるとき、シャフト24の先端が第2管部50内に配置されるように構成される。この構成によれば、シャフト24が可動範囲の最も先端側に移動したときのシャフト24の先端が、収容筒16の第1管部48よりも基端側の第2管部50内にあるため、収容筒16の第1管部48を細く構成し易い。すなわち、収容筒16の先端側を構成する第1管部48には、シャフト24が挿通されないため、その分、第1管部48の外径を小さく設定することが可能である。このため、医療用針10の胴体部を容易に細径化することができる。細径化した胴体部は、使用者が手指により摘み易いため、操作性に優れた医療用針10を提供することができる。
【0072】
本実施形態の場合、医療用針10は、ウイング軸部88と一対のウイング90a、90bとを有する翼状針として構成される。上述したように、第1管部48を細くできることから、第1管部48を囲むウイング軸部88も細く構成することが可能である。ウイング軸部88が細いと、折り畳んだウイング90a、90bの根元部越しにウイング軸部88を摘み、針体12を生体に穿刺する操作時に、針体12の針先12aが安定し易い。従って、操作性に優れた翼状針を提供することができる。
【0073】
上記において、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。