(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体を用いた青色発光素子が開発されたことから、該発光素子から出力される光の一部を吸収して異なる波長の光を出力する蛍光体と組み合わせることにより、種々の色調の発光色を有するLED発光装置を作製することが可能となった。一般的に、発光素子と蛍光体とを組み合わせた発光装置は、発光素子を蛍光体を含む透光性樹脂によって覆うことにより構成される。周知のように封止樹脂を形成する方法には、ポッティングによる方法と、トランスファーモールドよる方法がある。
(1)ポッティングによる方法は、ディスペンサを用いて液状樹脂を回路基板上に滴下する。これにより、滴下された液状樹脂は、その液状樹脂の有する粘性等に基づいて、回路基板上に広がり、発光素子、表面実装部品、及びワイヤーは液状樹脂内に埋設された状態となる。そして、この状態で熱硬化処理が実施され、封止樹脂が形成される。
(2)トランスファーモールドにより封止樹脂を成形する方法は、発光素子、表面実装部品、及びワイヤーが配設された基板表面に封止樹脂をトランスファーモールドにより成形する。
【0003】
しかしながら、発光素子と蛍光体とを組み合わせたLED発光装置は、液状樹脂の含有する蛍光体の含有量のバラツキにより、色調がバラツクという課題があった。このようなLED発光装置において、色度のバラツキを発生させる理由は2つある。
(1)1つは、各発光素子を埋設している透光性樹脂の形状にバラツキが生じるからである。発光素子が形成された基板上に透光性樹脂をポッティングにより供給するときに、透光性樹脂量を定量に制御することは難しい。
(2)もう一つの理由は、各発光素子を埋設している透光性樹脂内の蛍光体粒子の含有量または分布にバラツキが生じるからである。トランスファーモールドなどにより、各発光素子を埋設している透光性樹脂の形状を均一に形成することができたとしても、蛍光体粒子の沈降などにより、透光性樹脂内の蛍光体粒子の量または分布にバラツキが生じる。
【0004】
つまり、各発光素子を埋設している透光性樹脂の形状を均一に形成し、かつ、透光性樹脂内部の蛍光体粒子の量および分布を均一に保つことは非常に難しいため、以上のような色度のバラツキをなくすことは難しい。そこで、従来のLED発光装置では、例えば、透光性樹脂は、硬化されるまでの間に表層部に比べて前記発光素子の周りに多くの蛍光体粒子が沈降するようにその粘度が調整されて、前記透光性樹脂を硬化させた後に、前記透光性樹脂のうちの前記蛍光体粒子を実質的に含んでいない非波長変換層の表面を研磨する。これにより前記透光性樹脂に対する前記蛍光体粒子の比率を変化させて、色度を調整することで色度ばらつきを極力小さくする色度調整方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
また、白色発光型のLED発光装置において、発光素子を覆う蛍光体を含む樹脂が半硬化(仮硬化)状態で色度を測定し、測定で得られた色度測定データに基づき決定された再加熱条件で加熱することにより、封止樹脂を軟化させる。そして、色度測定データに基づき決定された押圧量で押圧して、封止樹脂の厚みを調整する。その状態を保ったまま完全に硬化することで、目的の厚みの樹脂形状を得る方法も知られている(例えば、特許文献2)。この特許文献2の色度調整方法によれば、特許文献1の手法で行っていた封止樹脂の研磨の手間を省いて製造工程を簡素化し、色度のバラツキが小さいLED発光装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1〜
図8を参照して実施の形態1のLED発光装置100の製造方法を説明する。
図1は、LED発光装置100の製造工程を示すフローチャートである。
図2は、発光素子1の実装工程を示すLED発光装置100の断面図(封止樹脂が滴下されていない状態)である。
図3は、ポッティング工程(後述のM2)における、液状の封止樹脂が滴下された状態のLED発光装置100の断面を示している。
【0014】
まず
図1のフローチャートを参照してLED発光装置100の製造方法の概要を説明し、その後、各工程を詳しく説明する。
【0015】
(M1:発光素子実装工程)
図1のフローチャートでは、
図2に示すように、まず、平板状の基板2の表面に発光素子1(LED素子1ともいう)を固着し、発光素子1をワイヤー3を用いてワイヤーボンディングなどによって基板2の電極部(配線部材7)と電気的に接続する発光素子実装工程を行う(M1)。
【0016】
(M2:ポッティング工程)
次に、蛍光体(蛍光体粒子)を含有する樹脂部材(液状の封止樹脂)で、基板2上に実装した発光素子1を被覆するポッティング工程(封止工程)を実施する(M2)。尚、本実施の形態1で使用する液状の封止樹脂は、熱硬化型樹脂である。光の照射度合によってM3の仮硬化状態及びM6の本硬化状態を作ることができる光硬化性樹脂でもよい。尚、以下では、液状の封止樹脂を「封止樹脂5−2」、仮硬化状態(M3)の封止樹脂を「封止樹脂5−1」、本硬化状態(M6)の封止樹脂を「封止樹脂5−0」と表記して、符号で区別する。また、液状、仮硬化、本硬化等を区別する必要がない場合は、封止樹脂5と表記する。
【0017】
(M3:樹脂仮硬化工程)
次に、基板2を含む封止樹脂5−2全体を加熱し、封止樹脂5−2を仮硬化状態となるまで加熱する樹脂仮硬化工程(仮硬化工程、沈降工程)を実施する(M3)。ここで、実施の形態1における「仮硬化状態」とは、封止樹脂5−1の表面が硬化しており、その内部が未硬化もしくはゲル状となっている状態のことを指す。M3工程では、蛍光体の沈降が表層部方向になるように、後述の
図4(b)のように基板2の実装面側を下向きにするが、詳細は後述する。
【0018】
(M4:色度測定工程)
次に、封止樹脂5が仮硬化状態のままLED素子1を発光させて、LED発光装置100の色度測定データを取得する色度測定工程を行う(M4)。
【0019】
(M5:色度調整工程)
色度測定工程において取得したLED発光装置100の色度測定データが、予め決められた目標の色度範囲内に属さない場合は、色度調整工程(再沈降工程)を実施する(M5)。
【0020】
(M6:樹脂本硬化工程)
その後、樹脂本硬化工程(M6)を行い、色度バラツキが小さく、かつ信頼性の高いLED発光装置100が完成する。
【0021】
なお、色度測定工程(M4)において取得したLED発光装置100の色度測定データが目標色度範囲内である場合は、色度調整工程(M5)を行わず、そのまま加熱して封止樹脂5−1を完全に硬化させる樹脂本硬化工程M6)を経て、目的のLED発光装置100が完成する。
【0022】
(発光素子実装工程(M1)の詳細)
次に、発光素子実装工程(M1)の詳細を、
図2を用いて説明する。
図2は、発光素子1の実装工程後の状態を示す断面図である。
【0023】
図2に示す様に、発光素子1を、接着剤等(図示せず)によって基板2に固着して実装する。なおここで、発光素子1は、基板2上の電極(図示せず)に、2本のワイヤー3を介して電気的に接続される。
図2では2本のワイヤー3は配線部材7に接続された状態を示している。また、基板2上には発光素子1やワイヤー3を囲う、樹脂ポッティング用の「堰き止め部4」を配置する。堰き止め部4は、例えば基板2のレジストの段差を利用する方法が開示されている(特開2010−3994)。堰き止め部4は基板2と密着しており、封止樹脂5−2をポッティングした際に、外側に樹脂が流れ出さない様にするためのものである。ここで、発光素子1は、本実施の形態1においては、一例として発光中心波長が450nm程度の青色ダイオードを用いるものとする。
【0024】
(ポッティング工程(M2)の詳細)
次に、ポッティング工程(M2)の詳細を、
図3を用いて説明する。
図3は、ポッティング工程を説明するための断面図である。
図3に示すように、基板2上の堰き止め部4で囲われた部分に、封止樹脂5−2をディスペンサ20によって定量塗布する。この工程により、発光素子1やワイヤー3が封止樹脂5−2によって被覆される。ここで本実施の形態1においては、封止樹脂5−2は蛍光体(蛍光体粒子)を含有した透光性のある液状の材質であり、この蛍光体が封止樹脂5−2中に均一になる様に混ぜられているものとする。また、本実施の形態1における蛍光体は、発光素子1の発光光を吸収し、この吸収した光と異なる波長の光を発光する。本実施の形態1の蛍光体は、発光素子1からの青色光を黄色光に波長変換する蛍光体とする。また封止樹脂5−2は、熱エネルギーによって硬化する熱硬化型のシリコーン樹脂によって成るものを用いる。この封止樹脂5−2は、上記蛍光体の他に散乱材を含有していても良い。
【0025】
(樹脂仮硬化工程(M3)の詳細)
次に、樹脂仮硬化工程(M3)について説明する。
図4(a)、(b)は、樹脂仮硬化工程(M3)を説明するための図であり、
図5は、本実施の形態1で用いる熱硬化性樹脂の特性を示す図である。
図4(a)に示す様に、ポッティング工程によって定量ポッティングされた封止樹脂5−2は、堰き止め部4に沿った形状となり、加熱することで、封止樹脂5−2を仮硬化の状態(封止樹脂5−1)にする。封止樹脂5−2を仮硬化状態にする加熱条件は、使用する熱硬化性樹脂の種類によって異なる。一例としては150℃、3時間で完全硬化するシリコーン樹脂を用いた場合は、60℃で1時間、もしくは80℃で15分程度加熱した後に加熱を止めることにより行う。ここで、封止樹脂5−2を仮硬化状態とするための熱硬化性樹脂の特性について説明する。
図5は、実施の形態1の封止樹脂5−2を異なる温度で加熱した場合の特性曲線を示す。特性曲線40は、封止樹脂5−2を150℃で加熱した場合の樹脂粘度変化を示し、特性曲線41は、封止樹脂5−2を80℃で加熱した場合の樹脂粘度変化を示し、特性曲線42は、封止樹脂5−2を常温に近い30℃で加熱した場合の樹脂の粘度変化を示している。
図5において、横軸は加熱時間であり、縦軸は樹脂の粘度を示している。
図5における点線の特性曲線41−1は、特性曲線41において、加熱(80℃)により樹脂粘度が低下した状態で一旦加熱を止めて、常温に戻したときのプロファイルを示している。上述の「仮硬化状態」とは、特性曲線41−1における点Yの状態のことを示している。
【0026】
この仮硬化状態(点Y)の封止樹脂5−1においては、初期状態の樹脂(封止樹脂5−2)に、ある程度の熱エネルギーが加えられているため、初期状態よりも粘度が高い状態である。つまり、仮硬化状態(点Y)の状態では、未だ樹脂が完全に硬化しておらず樹脂の表面のみが硬化して、内部が未硬化の状態となっている。この様な作用を受けて、樹脂が仮硬化状態であれば、樹脂の外形形状を保つことが可能となる。
【0027】
(沈降工程)
封止樹脂が仮硬化状態になった後、
図4(b)のように、製造途中のLED発光装置100の天地を反転することで、蛍光体の沈降方向を、発光素子1の方向から発光素子1と反対の表層部方向にする。つまり、
図4(b)のように、基板2の実装面2Aを下側に向けると共に裏面2Bを上側に向けることで、封止樹脂5−1の含有する蛍光体粒子の少なくとも一
部を、封止樹脂5−1の内部で重力の方向に沈降させる。つまり基板2を反転させることで、空気と接する封止樹脂5−1の表面5Aに向けて、蛍光体粒子の少なくとも一部を沈降させる。
【0028】
また、本実施の形態1では、完成状態のLED発光装置100の封止樹脂5−0(封止部)は、発光素子1に設定した特定の基準箇所から離れるに従って、徐々に蛍光体の含有量(蛍光体の濃度)が増える構成であればよい。あるいは、発光素子1の発光光が封止樹脂5−0の表面5Aに至る光路長に、濃度(例えばその光路における平均濃度)を掛けた値が、ほぼ一定となるように分布させる。つまり
図4(b)に記載した光路L1,L2,L3の光路長をL1,L2,L3とし、各光路における平均濃度をC1,C2,C3としたときに、
L1・C1≒L2・C2≒L3・C3
が成立するように蛍光体を分布させる(この場合の
図4(b)は、封止樹脂5−0の状態である)。これにより、光路長が短い場合は平均濃度が高く、光路長が長い場合は平均濃度が低くなるので、発光色が均一化する効果が得られる。
【0029】
封止樹脂5−2に分散される蛍光体粒子は、通常、透光性樹脂より比重の大きいものであり、また熱硬化性樹脂は、加熱硬化時、粘度が大きく低下することから、これらのことを利用すれば容易に形成することができる(仮硬化)。すなわち、透光性樹脂は、硬化されるまでの間に発光素子1の周りに比べて表層部に多くの蛍光体粒子が沈降するように、その粘度が調整されていればよい。つまり、仮硬化は、封止樹脂5−2を、硬化処理によって表面を硬化させると共に、その内部が未硬化もしくはゲル状であり、含有する蛍光体粒子の少なくとも一部が封止樹脂5−1の内部を沈降する程度の硬化状態であって、本硬化(LED発光装置100の使用状態の硬化状態)に至る前の仮の硬化状態である。
図5から、樹脂を硬化させるためには一定量の熱エネルギーが必要であるため、高温で加熱すれば短時間で樹脂が硬化し(特性曲線40)、低温で加熱すれば樹脂が硬化するまで長時間の加熱が必要となる(特性曲線42)。また、樹脂を加熱することにより、時間の経過と共に樹脂の粘度が初期粘度に対して一度低下するが、この粘度の低下量は加熱温度によって異なる。つまり、熱硬化性樹脂は、樹脂を高温で加熱した場合、粘度が大きく低下して最下点に至った後に急峻に粘度が高くなり(特性曲線40)、樹脂を30℃程度の常温に近い温度で加熱した場合は、樹脂の粘度が初期から殆ど低下しないまま粘度が最下点に至り、その後はゆっくりと上昇する特性(特性曲線42)を有していることが判る。
【0030】
ここで、上述した仮硬化状態(点Y)から、その後続けて常温に近い低温(30℃)で樹脂を再加熱すると、
図5の点Y、点Zを結ぶ曲線のように、樹脂の粘度はそこ(点Y)から極端には低下しないまま最下点に至り、その後徐々に粘度が高くなる。そして、この条件で樹脂を再加熱すれば(樹脂本硬化工程(M6))、樹脂の粘度が殆ど低下しないので、仮硬化時の蛍光体の沈降状態で、樹脂を完全に硬化させることができる。
【0031】
(色度測定工程(M4)の詳細)
次に、色度測定工程(M4)について説明する。
図6は、色度測定工程を示す図である。
図6に示すように、色度測定工程(M4)では、封止樹脂5が仮硬化の状態で発光素子1を発光させて、LED発光装置100の色度測定データを取得する。ここで、LED発光装置100の色度は、発光素子1から発光された青色光と、青色光の一部が封止樹脂5−1中の蛍光体に入射して波長変換された黄色光の割合により決定される。従って、封止樹脂5−1中の蛍光体濃度や蛍光体分散状態、あるいは封止樹脂5−1の厚みなどが色度に影響を及ぼす。このため、同じ工程で作製されたLED発光装置100であっても、色度のバラツキが起こり得る。
【0032】
そこで、この色度測定工程(M4)において、LED発光装置100の色度が所望の色度範囲内に入っているかどうかを測定する。
図6は色度測定方法を示す。
図6においては、LED発光装置100からの発光光30を色度測定器50に接続されたカバー32付きの光ファイバ31に入射させることにより、LED発光装置100の色度測定を行う。ここで、LED発光装置100の色度が所望の色度範囲に入っている場合は、封止樹脂5−1をそのまま再度加熱する樹脂本硬化工程(M6)を行う。この樹脂本硬化工程は、封止樹脂5−1が完全硬化するまで加熱するもので、シリコーン樹脂の一例においては、150℃、3時間の加熱で、封止樹脂5が完全に硬化する。
【0033】
(色度調整工程(M5)の詳細)
ここで、上述の色度測定工程(M4)において、LED発光装置100の色度が所望の範囲内に入っていない場合、色度調整工程(M5)を実施する(再沈降工程)。
図7は、LED発光装置100を色度調整する方向を示す色度図である。LED発光装置100の色度が所望の範囲内に入っていない場合、色度が所望の範囲に対して青色方向もしく黄色方向のどちらの方向にずれているかを判断する。すなわち、
図7に示すように、測定したLED発光装置100の色度(点Eもしくは点F)が、所望の色度範囲(範囲G)に対して、青色方向(点F側)もしく黄色方向(点E側)にずれている場合についてそれぞれの色度調整工程を行う。
図8(a)は、測定色度が青色方向にずれている場合についての遠心分離機の動作概念図を示す。
図8(b)は測定色度が黄色方向にずれている場合の遠心分離機の動作概念図を示す。青色方向にずれている場合(
図8(a))は蛍光体粒子を発光素子1に近づける。黄色方向にずれている場合(
図8(b))は蛍光体粒子を発光素子1から遠ざける。青色方向にずれている
図8(a)の場合、蛍光体粒子を発光素子1の方向に沈降加速させ、黄色方向にずれている
図8(b)の場合は、表層部方向に沈降加速させることにより色度を調整する。
【0034】
ここで、上述の通り、発光素子1は、発光する青色光の強度分布が一様ではなく、放射角度によって発光強度に差があり、発光素子1の直上方向の光強度は強く、横方向の光強度は弱い。そのため、発光素子1の上部近くに蛍光体が多くなれば、LED発光装置100の色度は蛍光体の発光色である黄色方向に変化し、発光素子1の上部近くに蛍光体が少なくなれば、LED発光装置100の色度は発光素子1の発光色である青色方向に変化する。上記作用を利用し、封止樹脂5の仮硬化状態で遠心分離機を用い、蛍光体を強制沈降させることにより、LED発光装置100の色度を変化させることが可能となる。
【0035】
例えば、重力と遠心力との合力が常時、発光素子1の上面の法線方向33に向く様に構成されたスイング式の遠心分離機を用いて、1000rpmの回転速度で数秒間、蛍光体粒子に強制的に遠心力を与える。これによって、自然沈降では樹脂の硬化により実現できない濃度で、蛍光体粒子を堆積させることができる。スイング式の遠心分離機では、処理物支持面(発光素子1の発光面)の法線方向33は、常に重力と遠心力との合力34の方向と一致する様に構成される。上記の1000rpmの様な高速回転時には、その合力と回転軸とが成す角θは略直角になる。即ち、その合力の方向は、回転軸上にある図中のスイング中心Cを中心として回動し、回転数が小さい時には角θも小さくなる。ただし、図中のスイング中心Cは、必ずしも回転軸上にある必要はなく、回転軸からずれた位置にあっても、同様の作用を得ることができる。
【0036】
回転速度×回転時間=回転数と、蛍光体の沈降加速度合い強いては、色度の変化量を把握しておくことで、任意の色度変化を実現できる。遠心力は、mrω
2であり、mは蛍光体粒子の質量、rは回転半径、ωは角速度である。つまり、色度の測定結果と、目標色度範囲に入れるための回転数(ωに対応)との対応関係をデータとして予め準備しておき、色度の測定結果に応じた回転数(つまり遠心力)を加えることで色度を調整できる。このように色度調整工程(M5)では、蛍光体粒子に遠心力を加え、この遠心力に基づいて、蛍光体粒子を「所定の方向」(
図8の(a)あるいは(b)の方向)に沈降させる。 この場合、色度調整工程(M5)では、色度測定工程(M4)で測定された色度に応じて、蛍光体粒子に加える遠心力の大きさと方向とを決めることができる。
【0037】
この様に、LED発光装置100の色度測定工程(M4)において、色度測定データが所望の色度範囲内に入っているか否か、また、入っていない場合は所望の色度範囲に対して青色側と黄色側のどちら側にずれているかを測定する。その上で、色度調整工程(M5)を行う場合は、
図8の(a),(b)のうちの何れの色度調整工程を行うかを判断し、併せて色度調整量に関しても判断する。その上で、最適な色度調整を行うことによって、LED発光装置100の色度を所望の範囲内に収めることが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態1に記載の色度調整方法(M5)を用いることで、LED発光装置100の色度が、例えば発光素子1のばらつきの影響で、所望の色度範囲からずれてしまった場合であっても、その色度を測定し、目標の色度とのずれ量を取得することで、その値(ずれ量)に応じた回転数により沈降加速度合いをコントロールすることが出来る。そのため、色度にバラツキが生じ得るLED発光装置100を、予め決められた目標範囲内に収めることが可能となる。従って、色度ばらつきの小さいLED発光装置100を提供することが可能となる。
【0039】
また、本実施の形態1における樹脂部材内の蛍光体の沈降分散を変化させる方法(
図8)においては、樹脂部材に対して過度な圧力を掛けずに色度調整を行っている。このため、樹脂部材中の発光素子1やワイヤー3に余分な力が加わることがなく、発光素子1やワイヤー3へのダメージがない。
【0040】
上述のLED発光装置100の色度調整方法(
図8)においては、実施の形態1において、青色ダイオードと、青色ダイオードの青色光を黄色光に波長変換する蛍光体とで白色光を発光することを前提に説明した。しかし、これに限定されるものではなく、他の発光素子1と蛍光体との組み合わせや、白色以外の光を発光するLED発光装置100であっても良い。また、本実施の形態1の製造方法によって製造されるLED発光装置100は、ワイヤーボンディングによる実装に限定されず、例えば、フリップチップ実装等によるLED発光装置100にも適用される。また、上述の仮硬化工程や色度調整工程における加熱条件は一例であり、これに限るものではない。
【0041】
また、上述の実施の形態1においては、ポッティングを使用し樹脂部材の形状を形成していたが、これに限るものではない。例えばトランスファーモールドなどにより樹脂で発光素子1を覆っても、目的のLED発光装置を製造可能である。
【0042】
本実施の形態1のLED発光装置100の色度調整方法(
図8)によれば、色度ばらつきが小さいLED発光装置100を提供出来る。このため、照明用の発光装置のほか、液晶カラーテレビや携帯型電子機器等のバックライト用発光装置などに広く適用することができる。
【0043】
実施の形態1のLED発光装置100の製造方法(
図1)によれば、発光素子1から放出される光の光路長に合わせて蛍光体の濃度を調整することによりLED発光装置100の色調むらを低減させることができる。また、蛍光体が発熱源である発光素子1から離れた位置に配設されるので、熱による蛍光体の劣化を抑えることが出来る。そのため、長時間の使用においても発光輝度の低下が少ない均一光が発光可能なLED発光装置とすることができる。
【0044】
また、色度調整工程(M5)により、透光性樹脂を仮硬化させた後に色度調整するので、精度よく色度を調整できる。また、強制的な遠心力によって沈降させることにより、自然沈降と比較し、短時間で狙いの色度に調整することができる。
【0045】
また、発光素子1から放出される光が当たる確率が低い場所の蛍光体が結果的に減る事で封止樹脂に占める蛍光体の含有量を減らすことができる。
【0046】
なお、色度ばらつきを抑えた光源モジュールを製作できるので、色ずれによる不良率を軽減する事ができ、歩留まりが改善する効果もある。
【0047】
以上の実施の形態1では、以下の色度を安定させる方法を説明した。発光素子1と、蛍光体粒子を含み発光素子1を覆うように形成させた透光性封止樹脂とを備えたLED発光装置100の色度を安定させる方法であって、透光性樹脂は硬化されるまでの間に発光素子1の周りに比べて表層部に多くの蛍光体粒子が沈降するようにその粘度が調整(仮硬化)されており、透光性樹脂を仮硬化させた後に、蛍光体粒子を含む波長変換層を、発光素子1から離れた表層部の位置に多く分散させる。その結果、発光素子1の発光光が透光性樹脂の表面5Aに至る光路長に蛍光体粒子の濃度を掛けた値が、ほぼ一定となるように分布させることによる色度を安定させる方法。
【0048】
以上の実施の形態1では、以下のLED発光装置の製造方法を説明した。発光素子1と、蛍光体粒子を含み発光素子1を覆うように形成して透光性樹脂とを備えたLED発光装置100の製造方法であって、透光性樹脂は蛍光体粒子を含む波長変換層が、発光素子から離れた表層部の位置に多く分散しており、透光性樹脂を仮硬化させた後に、発光装置の色度を測定する初期色度測定工程と、目標色度と測定色度との差に応じて予め設定量が設定されており、この設定量だけ、強制的な遠心力により透光性樹脂の含有する蛍光体の沈降具合を変化させることによって透光性樹脂内での蛍光体粒子への発光光の衝突確率を変化させて色度を調整する工程と、本硬化の工程(第2の硬化工程)と、を備えたLED発光装置の製造方法。