(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968058
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】レール固定構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/00 20060101AFI20160728BHJP
E04D 13/18 20140101ALI20160728BHJP
H02S 20/23 20140101ALI20160728BHJP
【FI】
E04D13/00 J
E04D13/18ETD
H02S20/23 A
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-103193(P2012-103193)
(22)【出願日】2012年4月27日
(65)【公開番号】特開2013-231294(P2013-231294A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2014年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】504288535
【氏名又は名称】ホリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104776
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100119194
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 明夫
(72)【発明者】
【氏名】立花 秀男
(72)【発明者】
【氏名】大野 仁司
【審査官】
五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−261230(JP,A)
【文献】
特開2003−343058(JP,A)
【文献】
特開2012−002044(JP,A)
【文献】
特開2003−253827(JP,A)
【文献】
特開2011−236590(JP,A)
【文献】
特開2006−322233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04D 13/18
H02S 20/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上設置物を支持するレールをレール固定具で屋根に固定するレール固定構造において、
該レール固定具が、
前記屋根上に固定される、1個のつなぎ材受けブラケットと、
該つなぎ材受けブラケット上に固定される、1個のレール受けつなぎ材と、
前記レールの長手方向に沿って配設された状態で前記レール受けつなぎ材にそれぞれ固定され、それぞれが個別に前記レールを支持する、少なくとも2個のレール受け部と、
を備え、
1個の前記レール受けつなぎ材に固定された少なくとも2個の前記レール受け部で、1本の前記レールの長手方向の2カ所以上を同時に支持することにより、1本の該レールを1個の前記レール固定具のみで前記屋根に固定することを特徴とするレール固定構造。
【請求項2】
前記つなぎ材受けブラケットは凸状の折り曲げ形状を呈し、その中央部分の凸面が前記レール受けつなぎ材を載置するための載置面であり、
該載置面の傾斜角によって、前記レールの設置角度が設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載のレール固定構造。
【請求項3】
前記屋根上に屋根瓦が敷設され、該屋根瓦上に前記つなぎ材受けブラケットが配設され、該屋根瓦と該つなぎ材受けブラケットとが同一のネジで前記屋根に固定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のレール固定構造。
【請求項4】
前記レール受けつなぎ材は、少なくとも一箇所で屋根瓦に固定されると共に、少なくとも他の一箇所で前記つなぎ材受けブラケットに固定されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレール固定構造。
【請求項5】
前記レール受け部は、前記レールの任意の位置で該レールを支持・固定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のレール固定構造。
【請求項6】
前記屋上設置物が太陽電池モジュールであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のレール固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュール等の屋上設置物を寄棟屋根等の屋根に設置する場合に使用される、レール固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅用の太陽光発電システムとして、家屋の傾斜屋根にレールを敷設・固定し、これらのレール上に複数の太陽電池モジュールを並べて設置したものが知られている。
【0003】
このようなレールの取付構造を開示する文献としては、例えば、下記特許文献1が知られている。特許文献1の取付構造では、二種類のレール(特許文献1では第1支持材2及び第2支持材4)を格子状に敷設し、その上に太陽電池モジュールを設置している。
【0004】
具体的には、特許文献1の取付構造では、屋根板7の上に持出部材1を固定し、この持出部材1から上方の突出する縦杆(ボルト材)13を用いて第1支持材2が固定されている。そして、この第1支持材2の溝状空間23に連結具3を嵌め込み、この連結具3から上方に突出するボルト33を用いて、第2支持材4が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−174360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
家屋の屋根構造の一つとして、寄棟造りが知られている。寄棟造りとは、四方向に傾斜する屋根面を持つ屋根構造である。通常、寄棟造りでは、各屋根面の形状が台形又は三角形となる。
【0007】
太陽光発電システムにおいて、発電能力を高めるためには、太陽電池の設置面積を可能な限り大きくすることが望まれる。また、家屋の美観を確保するためには、屋根面の形状と太陽電池の全体形状とを、略相似なものとすることが望ましい。従って、上述のような寄棟造りの屋根構造においては、太陽電池も、全体形状を台形又は三角形とすることが望まれる。
【0008】
その一方で、家屋の美観を確保するためには、取付構造のレールが太陽電池モジュールに覆われて、地上から眺めたときに見えないことが望ましい。
【0009】
これに対して、上記特許文献1の取付構造は、二種類のレール(特許文献1では第1支持材2及び第2支持材4)を格子状に敷設している。このため、太陽電池モジュールの全体形状が台形や三角形の場合に、このような太陽電池モジュールを安定して取り付けることや、レールが地上から見えないようにすることは、非常に困難である。
【0010】
本発明は、屋上設置物の全体形状に拘わらず、美観を損なうこと無しに該屋上設置物を安定して支持・固定するレール固定構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るレール固定構造は、屋上設置物を支持するレールをレール固定具で屋根に固定するレール固定構造において、該レール固定具が、前記屋根上に固定される
、1個のつなぎ材受けブラケットと、該つなぎ材受けブラケット上に固定される
、1個のレール受けつなぎ材と、
前記レールの長手方向に沿って配設された
状態で前記レール受けつなぎ材にそれぞれ固定され、それぞれが個別に前記レールを支持する、少なくとも2個のレール受け
部と、を備え
、1個の前記レール受けつなぎ材に固定された少なくとも2個の前記レール受け部で、1本の前記レールの長手方向の2カ所以上を同時に支持することにより、1本の該レールを1個の前記レール固定具のみで前記屋根に固定することを特徴とする。
本発明においては、前記つなぎ材受けブラケットは凸状の折り曲げ形状を呈し、その中央部分の凸面が前記レール受けつなぎ材を載置するための載置面であり、該載置面の傾斜角によって、前記レールの設置角度が設定されることが望ましい。
【0012】
本発明においては、前記屋根上に屋根瓦が敷設され、該屋根瓦上に前記つなぎ材受けブラケットが配設され、該屋根瓦と該つなぎ材受けブラケットとが同一のネジで前記屋根に固定されることが望ましい。
【0013】
本発明においては、前記レール受けつなぎ材は、少なくとも一箇所で屋根瓦に固定されると共に、少なくとも他の一箇所で前記つなぎ材受けブラケットに固定されることが望ましい。
【0014】
本発明においては、前記レール受け部は、前記レールの任意の位置で該レールを支持・固定することが望ましい。
【0015】
本発明においては、前記屋上設置物を太陽電池モジュールとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレール固定構造によれば、屋根上につなぎ材受けブラケットを固定し、該つなぎ材受けブラケット上にレール受けつなぎ材を固定し、少なくとも2個のレール受け部を用いて該レール受けつなぎ材にレールを固定することとしたので、1個のレール固定具のみでレールを屋根に固定することができる。このようなレール固定具を適宜使用することにより、美観を損なうこと無しに該屋上設置物を安定して支持・固定することが可能になる。
また、本発明において、つなぎ材受けブラケットの中央部分の凸面をレール受けつなぎ材の載置面とすることで、この載置面の傾斜角によってレールの設置角度を設定することができる。
【0017】
本発明において、屋根瓦とつなぎ材受けブラケットとを同一のネジで屋根に固定することにより、つなぎ材受けブラケットを瓦付の屋根に簡単に固定することができる。
【0018】
本発明において、レール受けつなぎ材を屋根瓦及びつなぎ材受けブラケットの両方に固定することにより、該レール受けつなぎ材を安定的且つ強固に屋根上に固定することが容易になる。
【0019】
本発明において、レールを任意の位置で支持・固定できるようにレール受け部を構成することにより、レールの長手方向の位置調整を容易に行うことができる。
【0020】
本発明において、屋上設置物を太陽電池モジュールとすることにより、美観を損なうこと無しに該太陽電池モジュールを安定して支持・固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態に係る太陽電池モジュールの設置構造の一例を概念的に示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係るレール固定構造を概略的に示す斜視図である。
【
図3】実施の形態に係るレール固定構造を概略的に示す分解斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るレール固定構造を概略的に示す断面図である。
【
図5】他のレール固定構造の例を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[発明の実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、この実施の形態1に係る太陽電池モジュールの設置構造を概念的に示す斜視図である。
【0024】
図1に示したように、台形の傾斜屋根100には、多数枚の屋根瓦110,111が敷設されている。ここで、屋根瓦110は通常の屋根瓦、屋根瓦111はレール固定具120,130を取り付けるための屋根瓦である。
【0025】
レール固定具120,130は、レール141,142を支持・固定するために使用される。ここで、短尺のレール141は、1個のレール固定具120によって支持・固定される。一方、長尺のレール142は、2個のレール固定具130によって支持・固定される。
【0026】
レール141,142上には、複数の太陽電池150が配設される。
図1に示したように、この実施の形態1では、長辺形の太陽電池モジュール151と台形の太陽電池モジュール152とを組み合わせて、全体として台形の太陽電池150を形成している。
【0027】
図2乃至
図4は、レール固定具120を用いたレール固定構造を示す図であり、
図2は斜視図、
図3は分解斜視図、
図4は断面図である。
【0028】
上述のように、レール固定具120は、屋根瓦111に固定される。屋根瓦111は、
図2乃至
図4に示したように、ボルト貫通孔111aと、4個のネジ貫通孔111bとを備えている。
【0029】
レール固定具120は、つなぎ材受けブラケット121と、レール受けつなぎ材122と、2個のレール受け部123とを備えている。2個のレール受け部123は、レール141を安定して保持できるように、十分に離間させて配置される。このため、つなぎ材受けブラケット121も、レール141の長手方向の寸法を、2個のレール受け部123を十分に離間させることができるような長さに設定する。
【0030】
つなぎ材受けブラケット121は、凸状の折り曲げ形状を呈しており、中央部分121aが両端部分121bよりも高くなっている。中央部分121aには、レール141の設定角度等に応じて、適宜傾斜を設けることができる(
図3参照)。そして、中央部分121aには、屋根瓦111のボルト貫通孔111aを露出させる開口121cと、ボルト貫通孔121dとが設けられている。また、両端部分121bには、屋根瓦111のネジ貫通孔111bに対応する位置に、それぞれネジ貫通孔121eが設けられている。そして、つなぎ材受けブラケット121は、ネジ貫通孔121e,111bを介してネジ121fを屋根板(図示せず)にねじ込むことにより、屋根瓦111上に固定される。
【0031】
レール受けつなぎ材122は、凹状の折り曲げ形状を呈しており、底面122aと側面122bとを有している(
図3、
図4参照)。底面122aには、屋根瓦111のボルト貫通孔111aに対応させてボルト貫通孔122cが設けられると共に、つなぎ材受けブラケット121のボルト貫通孔121dに対応させてボルト貫通孔122dが設けられている。レール受けつなぎ材122は、ボルト122e及びナット122fを用いてつなぎ材受けブラケット121に固定されると共に、ボルト122g及びナット122hを用いて屋根瓦111に固定される。
【0032】
レール受けつなぎ材122には、レール141の長尺方向に沿って、2個のレール受け部123が取り付けられる(
図2、
図3参照)。レール受け部123は、レール受けつなぎ材122の側面122bに外側から当接する一対の脚部123aを備えている。脚部123aは、ボルト122i及びナット122jを用いて、レール受けつなぎ材122の側面122bに固定される。
【0033】
更に、レール受け部123は、支持部123bを備えている(
図3、
図4参照)。支持部123bは、2個のボルト123cでレール141の両側面を外側から押圧することにより、レール141を支持・固定する。このために、支持部123bは、レール141の両側面にそれぞれ対向させて、ナット収容部123dと補助材123eとを備えている(
図4参照)。ナット収容部123dは、脚部123aと一体に形成されており、それぞれ、ナット123eを回転不能に収容する。補助材123eは、ナット収容部123dと略相似形となるように形成され、このナット収容部123dに外側から嵌め込まれる。ボルト123cは、ナット収容部123d及び補助材123eに設けられたボルト貫通孔(図示せず)を貫通して、ナット123eに螺合される。
【0034】
レール受け部123にレール141が嵌め込まれると、かかるレール141の逆L字型凸部141aに、ナット収容部123dの上端部分が嵌合される(
図4参照)。その後、ボルト123cを回転させると、補助材123eがナット収容部123d及び逆L字型凸部141aに嵌合した状態になる。そして、ボルト123cをさらに回転させると、このボルト123cの先端がレール141の側面を両側から押圧して、このレール141をレール受け部123に固定する。このような構成により、レール受け部123は、レール141を、長手方向の任意の位置で保持するすることができ、従って、レール141の位置調整が簡単である。
【0035】
図5は、レール固定具130を用いたレール固定構造を示す斜視図である。上述のように、レール固定具130は、長尺のレール142を二箇所(すなわち、2個のレール固定具)で支持・固定するときに使用される(
図1参照)。
【0036】
レール固定具120と同様、レール固定具130は、屋根瓦111に固定される。すなわち、この実施の形態1では、レール固定具120及び130の取付に、同じ屋根瓦111を使用することができる。
【0037】
レール固定具130は、レール受けつなぎ材131と、1個のレール受け部123とを備えている。すなわち、この実施の形態1では、レール固定具120とレール固定具130とで、同じ構造のレール受け部123を使用することができる。
【0038】
レール受けつなぎ材131は、凹状の折り曲げ形状を呈している。レール受けつなぎ材131は、底部の貫通孔(図示せず)と屋根瓦111のボルト貫通孔111aとを用いて、かかる屋根瓦111にボルト固定される。
【0039】
また、レール受けつなぎ材131の側面には、ボルト131aを用いて、レール受け部123の一対の脚部123aがそれぞれ固定される。
【0040】
レール受け部123は、レール固定具120の場合と同様にして、レール142を固定する。
【0041】
以上説明したように、この実施の形態1に係るレール固定構造によれば、レール固定具120を用いて、傾斜屋根100上につなぎ材受けブラケット121を固定し、該つなぎ材受けブラケット121上にレール受けつなぎ材122を固定し、且つ、2個のレール受け部123を用いて該レール受けつなぎ材122にレール141を固定することとした。これにより、この実施の形態1では、1個のレール固定具120のみを用いて、レール141を傾斜屋根100に固定することができる。そして、このようなレール固定具120を太陽電池モジュール152の固定に適宜使用することで、レール141を露出させること無しに太陽電池モジュール152を安定して支持・固定することが容易になる。従って、この実施の形態1によれば、太陽電池150の全体形状が例えば台形や三角形等の場合であっても、美観を損なうこと無しに、太陽電池モジュール152を安定して支持・固定することができる。
【0042】
また、この実施の形態1のレール固定具120は、レール固定具130(すなわち、レール142を二箇所で支持・固定するためのレール固定具)と同一の屋根瓦111及びレール受け部123を使用することができる。すなわち、この実施の形態1に係るレール固定構造は、二箇所固定用のレール固定構造に、つなぎ材受けブラケット121を追加すると共に、レール受けつなぎ材122を交換するだけで、実現することができる。従って、この実施の形態1によれば、1箇所固定のレール固定構造を、安価に提供することができる。
【0043】
この実施の形態1によれば、屋根瓦111とつなぎ材受けブラケット121とを同一のネジ121fで傾斜屋根100に固定することで、つなぎ材受けブラケット121を固定することができる。従って、この実施の形態1によれば、つなぎ材受けブラケット121の固定作業が簡単である。
【0044】
この実施の形態1によれば、レール受けつなぎ材122を、屋根瓦111及びつなぎ材受けブラケット121の両方に固定することができる。従って、この実施の形態1によれば、レール受けつなぎ材121を、安定的且つ強固に、傾斜屋根100上に固定できる。
【0045】
この実施の形態1によれば、レール141を任意の位置で支持・固定できるようにレール受け部123を構成したので、レール141の長手方向の位置調整を容易に行うことができる。
【0046】
なお、この実施の形態1では、屋根上に太陽電池モジュール140を設置する場合を例に採って説明したが、他の屋上設置物についても本発明を適用できることはもちろんである。
【0047】
また、この実施の形態1では、レール受け部123を2個とした場合を例に採って説明したが、3個以上であっても良いことはもちろんである。
【符号の説明】
【0048】
100 傾斜屋根
110,111 屋根瓦
111a,121d,122c ボルト貫通孔
111b,121e ネジ貫通孔
120,130 レール固定具
121 つなぎ材受けブラケット
121a 中央部分
121b 両端部分
121c 開口
121f ネジ
122 レール受けつなぎ材
122a 底面
122b 側面
122e,122g,123c ボルト
122f,122h ナット
123 レール受け部
123a 脚部
123b 支持部
123d ナット収容部
123e 補助材
141,142 レール
141a 逆L時型凸部
150 太陽電池
151,152 太陽電池モジュール