(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
  前記制御手段は、前記2つの平面で形成される頂角の二等分線と前記駆動輪の転動方向を含む面が平行な状態を基準とし、左右両方向に同一角度の範囲で前記相対角度を変更させる、
ことを特徴とする請求項13に記載の自走式掃除機。
  前記制御手段は、前記2つの平面で形成される頂角の二等分線と前記駆動輪の転動方向を含む面が平行な状態を基準とし、左右両方向に45°の範囲で前記相対角度を変更させる、
ことを特徴とする請求項14に記載の自走式掃除機。
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下、本発明の自走式掃除機について、図面を用いて説明する。
  なお、各図において、同一部材、同一部分には同一の符号を付している。また、軸受けや支持部材等の細かい構造については適宜図示を省略している。また、重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
 
【0010】
実施の形態1.
  以下に、実施の形態1に係る自走式掃除機の概略構造を説明する。
(概略構造)
  
図1は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、底面図を示す図である。
  
図1に示すように、実施の形態1に係る自走式掃除機は、中心角度Aが270°の円弧と円弧の両端から延長した2本の接線とによって囲まれる外形の本体1を有する。本体1は、円弧と同心の円によって分割される中央部2と外殻部3とを有する。外殻部3は、直角部4と円弧部5とを有する。外殻部3は、中央部2の周りを、
図1に示す状態から時計回りに45°、反時計回りに45°の合計90°の範囲で回転可能である。また、直角部4は、外殻部3に上下移動可能に支持される。
 
【0011】
  中央部2の内部には、一対の駆動輪6a、6bが設けられる。駆動輪6a、6bは、中央部2の底面に中心線Ba−Bbを挟んで対称に設けられた駆動輪開口部7a、7bから、下面が床面に接地するように突出する。駆動輪6a、6bは、後述する駆動輪モーター8a、8bによってそれぞれ独立に駆動され、複数のギヤを連結したギヤ部9a、9bを介して駆動輪モーター8a、8bの回転力が伝達される。中央部2には、駆動輪6a、6bの中間後方に方向転換自在な従動輪10が設けられ、駆動輪6a、6bと従動輪10とによって本体1を支持する。
 
【0012】
  直角部4は、外周に沿って直角に屈曲する形状(略L字形)の吸込口11を底面前方に有し、後述する送風機28が発生する負圧により塵埃を吸引する。本体1が直角部4の先端を前にして移動すると、吸込口11の通過する範囲の床面にある塵埃が除去される。吸込口11は、幅が5mm〜10mmの狭い開口であるため、吸引風速を上昇させて塵埃を確実に捕集することができる。吸込口11の前方には、床面に接触する長さの毛ブラシ12が設けられる。毛ブラシ12は、床面に接触して、床面に付着した塵埃を吸引しやすくする。毛ブラシ12は、複数のブロックに分かれて列状に並び、各ブロック間には所定の間隔が設けられる。毛ブラシ12は、先端が床面に向かい、且つ、本体1の外側に広がるように植毛される。
 
【0013】
  吸込口11の後方には、シート状の弾性部材、もしくは毛ブラシ列、もしくは布等からなる塵埃受け13が設けられる。塵埃受け13の上下方向の長さは、先端が床面に接触する長さに設定される。塵埃受け13は、塵埃が吸込口11の後方に通り抜けるのを防止し、吸込口11によって吸引されるように導く。
 
【0014】
  直角部4の底面先端部には、前方に向けて傾斜する先端傾斜部14が設けられる。先端傾斜部14には、床面に接触する長さの先端ブラシ15が設けられる。先端ブラシ15は、床面に接触して、床面に付着した塵埃を吸引しやすくする。先端ブラシ15は、複数のブロックに分かれて列状に並び、各ブロック間には所定の間隔が設けられる。先端ブラシ15は、先端が底面に向かい、且つ、本体1の外側に広がるように植毛される。
 
【0015】
  円弧部5の底面外周部には、本体1の前進時に凹状段差を検出する左右一対の前方段差検知センサー16a、16bと後進時に凹状段差を検出する左右一対の後方段差検知センサー17a、17bとが設けられる。各段差検知センサーは、赤外線を出射する発光部と受光部とで構成され、発光部から出射されて床面で反射した赤外線を受光部で受光することにより、凹状段差の深さを検出する。制御部(図示せず)は、所定深さ以上の凹状段差が検出された場合に、本体1の移動方向を転換する。
  なお、各段差検知センサーは、赤外線を出射する発光部と受光部とで構成されるものに限らず、接触式スイッチや超音波送受信器等の他のセンサーでも良い。
 
【0016】
  駆動輪6aと駆動輪6bの間隔は、吸込口11の開口の両端間の距離よりも狭く設定される。このように構成されることで、吸込口11を前方にして駆動輪6a、6bが正方向に転動した際に、駆動輪6a、6bが掃除された床面を通過するため、駆動輪6a、6bに塵埃が付着することを防止することができる。
 
【0017】
  図2は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、平面図を示す図である。また、
図3は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、左側面図を示す図である。
  
図2、3に示すように、直角部4は、平面状の右側面18aと左側面18bを有する。右側面18aと左側面18bが交差する頂角の角度は90°であり、2つの面の結合部は丸く形成される。
 
【0018】
  右側面18aと左側面18bには、それぞれ所定距離だけ離間して配置された2つの右側面近接センサー19a、20aと2つの左側面近接センサー19b、20bが設けられる。各近接センサー19a、20a、19b、20bは、赤外線を出射する発光部と受光部とで構成され、発光部から出射して反射した赤外線を受光部で受光する。制御部(図示せず)は、各近接センサーの信号から壁や障害物までの距離を検出する。また、制御部(図示せず)は、同一平面にある2つの近接センサーの距離出力を比較することにより、右側面18aや左側面18bに対する壁面や障害物の角度を検出する。
  また、円弧部5の側面の左右と左右後方と後方とには、右方近接センサー21aと左方近接センサー21bと右後方近接センサー22aと左後方近接センサー22bと後方近接センサー23とが設けられる。各近接センサーは、それぞれ赤外線を出射する発光部と受光部とで構成され、発光部から出射されて反射した赤外線を受光部で受光する。制御部(図示せず)は、本体1の側方や後方と壁面や障害物の距離を検出する。
  なお、各近接センサーは、赤外線を出射する発光部と受光部とで構成されるものに限らず、接触式スイッチや超音波送受信器等の他のセンサーでも良い。
 
【0019】
  円弧部5は、上面後方に操作表示部24を有する。操作表示部24には、電源や動作モード等の機能を切り替える複数の操作ボタン25と表示部26とが設けられる。
  また、本体1の上面には、直角部4と円弧部5に亘る集塵部カバー27が設けられる。集塵部カバー27は、後述する集塵部31を本体1に着脱する際、後方を支点に回転して開閉する。
 
【0020】
  以下に、実施の形態1に係る自走式掃除機の集塵部の構造を説明する。
(集塵部の構造)
  
図4は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、
図1に記載されたBa−Bb線での、断面図を示す図である。
  
図4に示すように、円弧部5の中心には、送風機28が設けられる。送風機28は、水平回転する複数の回転翼で構成されるファン29を有し、ファン29を回転させることにより負圧を発生する。空気は、ファン29によって発生する負圧によりファン29の軸方向上側から流入し、ファン29の半径方向に設けられた排気ダクト30から排出される。
 
【0021】
  送風機28の上部には、着脱可能な集塵部31が設けられる。集塵部31は、円筒状に構成され、送風機28側に開口部を設けた集塵部蓋32を有する。集塵部蓋32は、ヒンジ部33を支点にして開閉可能である。開口部には、吸込口11より吸引された含塵空気から塵埃を分離して空気のみを通過させるフィルター34が設けられる。また、送風機28の開口部には、格子35が設けられ、集塵部31を取り外したときに異物が侵入することを防止する。
 
【0022】
  集塵部蓋32の開口部には、集塵部31と送風機28の気密を確保する輪状のシール部材36が設けられる。シール部材36は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性部材に潤滑性を有するフッ素樹脂を配合した素材で構成され、断面がV字状である。集塵部蓋32の開口部と送風機28の開口部は、シール部材36のV字を形成する異なる面にそれぞれ接する。このように構成することで、集塵部31と送風機28は、気密を確保した状態で水平方向に摺動可能である。
 
【0023】
  図5は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、集塵部カバー27等を取り外した状態での、平面図を示す図である。
  吸込口11には、集塵部31に連通する吸込風路37と自在連結部38が接続される。送風機28の発生する負圧によって吸込口11から吸引された含塵空気は、吸込風路37で合流し、自在連結部38を介して集塵部31に吸引される。吸引された含塵空気はフィルター34によって塵埃が集塵部31内に捕集される。そして、フィルター34でろ過された空気のみが送風機28に吸引される。なお、自在連結部38は、ゴムやエラストマー樹脂等の弾性部材で構成された蛇腹構造であり、吸込風路37と集塵部31が近接及び離間した際も気密を確保する。
 
【0024】
  図6は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、集塵部31を取り外した状態での、平面図を示す図である。また、
図7は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、集塵部31と自在連結部38等を取り外した状態での、
図1に記載されたBa−Bb線での、断面図を示す図である。
図8は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、
図1に記載されたDa−Db線での、断面図を示す図である。
  
図6、7、8に示すように、集塵部31と自在連結部38等は、集塵部カバー27を開くことで、本体1から分離して取り外すことができる(
図6は、集塵部31のみを取り外した状態を示している。)。集塵部蓋32は、ヒンジ部33を支点に開くことができ、フィルター34を分離して取り外すことができる。集塵部蓋32と集塵部31の接触面には、輪状のシール部材(図示せず)が設けられ、気密を確保する。また、集塵部蓋32には、係止爪(図示せず)が設けられ、集塵部31に係合して集塵部蓋32を閉じた状態に維持する。
 
【0025】
  以下に、実施の形態1に係る自走式掃除機の電気系統の配置を説明する。
(電気系統の配置)
  
図4、5に示すように、円弧部5の後方部には、複数の円筒型の蓄電池39を一体化して樹脂ケースに収納した組電池40が設けられる。複数の蓄電池39は円弧部5の外形に沿って円弧状に配列される。蓄電池39を円弧状に配列することにより、本体1を小型化することができる。
 
【0026】
  中央部2には、電気回路基板41が設けられ、電気回路基板41には、制御回路やセンサー等の電気部品が搭載される。円弧部5の後方側面部には、複数の本体排気口42が設けられる。送風機28から排出された排気風は、中央部2と円弧部5の内部を通過し、電気回路基板41の電気部品や蓄電池39等の発熱体を冷却して、本体排気口42から排出される。
 
【0027】
  以下に、実施の形態1に係る自走式掃除機の各駆動系の構造を説明する。
 
【0028】
(外殻部の駆動系)
  
図4、5に示すように、外殻部3は、中央部2に対して回転可能に連結される。中央部2は、外殻部3の内部に配置され、外殻部3との連結部には複数の円柱状の転がり部材43が設けられる。外殻部3の中央部2に対する回転可能角度は、90°であり、外殻部3は、中央部2の周りを、
図5に示す状態に対して時計回り、反時計回りにそれぞれ45°の範囲で回転する。
 
【0029】
  円弧部5の後方部には、角度調節モーター44と角度調節モーター44の回転力を伝達するピニオンギヤ45が設けられる。中央部2には、ラックギヤ46が設けられる。ラックギヤ46は、ピニオンギヤ45と歯合し、角度調節モーター44の回転力がピニオンギヤ45を介して伝達される。制御部(図示せず)は、本体1の動作中に、角度調節モーター44を回転させることにより外殻部3を中央部2に対して回転させる。
 
【0030】
  円弧部5には、ラックギヤ46の位置を検知して、外殻部3の回転角度を検知する角度検知センサー(図示せず)が設けられる。制御部(図示せず)は、角度検知センサーの信号によって外殻部3の回転角度を制御する。
 
【0031】
  図9は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、集塵部カバー27等を取り外した状態での、平面図を示す図であり、
図5に示す状態から外殻部3が中央部2に対して反時計回りに45°回転した状態を示す図である。
  
図5に示す状態において、制御部(図示せず)が角度調節モーター44を反時計回りに回転させると、ピニオンギヤ45は、反時計回りに回転し、歯合するラックギヤ46のギヤ部を転がりながらラックギヤ46の右方向に移動する。ピニオンギヤ45の移動に伴い、角度調節モーター44の固定されている外殻部3は、中央部2に対して反時計回りに回転する。そして、外殻部3が中央部2に対して反時計回りに45°回転すると、角度検知センサー(図示せず)がこれを検知し、制御部(図示せず)に信号を出力する。制御部(図示せず)は、その信号を受けて角度調節モーター44を停止する。
 
【0032】
  このとき、駆動輪6a、6bの軸Fa−Fbは、左側面18bに対して直角になる。この状態にすることにより、左側面18bを壁面Gに接触させることができ、壁面Gに沿って本体1を移動させることで、壁際の床面Eを連続的に掃除することが可能である。また、右側面18a側の吸込口11によって壁面Gから離れた領域も同時に掃除することができ、壁際の床面Eの掃除の効率をより向上することが可能である。
 
【0033】
  図10は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、集塵部カバー27等を取り外した状態での、平面図を示す図であり、
図5に示す状態から外殻部3が中央部2に対して時計回りに45°回転した状態を示す図である。
  
図5に示す状態において、制御部(図示せず)が角度調節モーター44を時計回りに回転させると、ピニオンギヤ45は、時計回りに回転し、歯合するラックギヤ46のギヤ部を転がりながらラックギヤ46の左方向に移動する。ピニオンギヤ45の移動に伴い、角度調節モーター44の固定されている外殻部3は、中央部2に対して時計回りに回転する。そして、外殻部3が中央部2に対して時計回りに45°回転すると、角度検知センサー(図示せず)がこれを検知し、制御部(図示せず)に信号を出力する。制御部(図示せず)は、その信号を受けて角度調節モーター44を停止する。
 
【0034】
  このとき、駆動輪6a、6bの軸Fa−Fbは、右側面18aに対して直角になる。この状態にすることにより、右側面18aを壁面Hに接触させることができ、壁面Hに沿って本体1を移動させることで、壁際の床面Eを連続的に掃除することが可能である。また、左側面18b側の吸込口11によって壁面Hから離れた領域も同時に掃除することができ、壁際の床面Eの掃除の効率をより向上することが可能である。
 
【0035】
  図11は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、壁面に接触又は近接している状態での、
図1に記載されたDa−Db線での、断面図を示す図である。なお、
図11では、左側面18bが接触又は近接している状態を示しているが、右側面18aが接触又は近接している状態でも同様である。
  
図11に示すように、本体1の左側面18bは、壁面Gに接触又は近接する。左側面18bが壁面Gに接触又は近接する状態において、毛ブラシ12と先端ブラシ15は、壁際の床面Eに達する。毛ブラシ12と先端ブラシ15が壁際の床面Eに達した状態で本体1が移動することで、壁際の床面Eに付着した塵埃が除去され、壁際まで確実に掃除することができる。また、毛ブラシ12や先端ブラシ15がブロックに分かれて設けられているため、ブロック間の隙間から大きな塵埃を吸引することができる。
 
【0036】
(駆動輪の駆動系)
  
図4、5に示すように、一対の駆動輪6a、6bには、それぞれ駆動輪モーター8a、8bがギヤ部9a、9bを介して連結され、一体化した駆動部ユニットが構成される。一対の駆動輪6a、6bは、本体後方側に設けられたヒンジ部(図示せず)を支点に回転可能に支持される。この駆動部ユニットは、バネ(図示せず)により、駆動輪6a、6bを駆動輪開口部7a、7bから突出する方向に力を受ける。本体1が床面Eから持ち上げられると、駆動部ユニットはバネにより力を受けるため、駆動輪開口部7a、7bからの駆動輪6a、6bの突出量が増加する。
 
【0037】
  各駆動輪ユニットには、変位を検知する駆動輪接地センサー(図示せず)が設けられる。制御部(図示せず)は、駆動輪接地センサーの出力を監視することにより、駆動輪6a、6bと床面Eの接触状態を認識する。
 
【0038】
  以下に、実施の形態1に係る自走式掃除機の直角部の動作を説明する。
(直角部の動作)
  
図4に示すように、直角部4は、外殻部3に上下移動可能に支持される。外殻部3には複数のガイド47が設けられ、直角部4は、ガイド47に沿って上下移動する。また、直角部4は、底面先端部に傾斜面を有し、凸状段差にさしかかった際には、傾斜面が凸状段差により力を受けて、直角部4を上方向に移動する。
 
【0039】
  直角部4の後方には、直角部4の上下方向の変位量を検知する変位量検知センサー48が設けられる。変位量検知センサー48は、赤外線の発光部と受光部とで構成される。制御部(図示せず)は、境界部に出射された赤外線の反射光を受光部で検知することにより、直角部4の変位を検出する。制御部(図示せず)は、直角部4が凸状段差に乗り上げたときは、これを乗り越えるように駆動輪6a、6bを制御する。また、凹状段差に落ちたときは、駆動輪6a、6bを停止した後に反転させて、凹状段差からの脱出動作を行うように制御する。
 
【0040】
  図12は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、絨毯上を移動する状態での、
図1に記載されたBa−Bb線での、断面図を示す図である。
  
図12に示すように、本体1が柔らかい毛が植毛された絨毯I上を移動すると、駆動輪6a、6bと従動輪10は、本体1の重量を狭い接触面積によって支持するため、絨毯Iの中に沈み込む。一方、直角部4は、絨毯Iとの接触面積が広いため、絨毯Iに沈み込まず、絨毯Iの表面に接して安定する。このように、本体1が絨毯I上を移動すると、直角部4は、駆動輪6a、6b及び外殻部3に対して上方向に移動する。このような構成により、絨毯I上を移動する状態でも絨毯I上の塵埃を掃除することができる。
 
【0041】
  以下に、実施の形態1に係る自走式掃除機の動作を説明する。
(自走式掃除機の動作)
  
図13〜
図33は、実施の形態1に係る自走式掃除機の、動作を示す図である。
  
図13〜
図33において、破線は、本体1の動作前の状態を示す。
  操作者が本体1の掃除動作を設定すると、制御部(図示せず)は、送風機28を動作させて、吸込口11から吸引を開始する。また、制御部(図示せず)は、所定の動作アルゴリズムに基づいて駆動輪モーター8a、8bをそれぞれ駆動して、本体1を移動させる。
  なお、
図13〜
図33では、床面Eを上方から見た際に、壁面Kが壁面Jに対して右側にある場合を示しているが、壁面Kが壁面Jに対して左側にある場合でも、同様に動作することが可能である。
 
【0042】
  図13は、本体1が壁面Jに向かって斜めに移動する状態を示す。この時点では、本体1は壁面Jから30cm程度離れた位置にあり、右側面近接センサー19a、20aと左側面近接センサー19b、20bは、壁面Jへの近接を検知しない。各近接センサーは、壁面Jとの距離が20cm以下である場合に近接を検知するように設定すると良い。
 
【0043】
  図14は、本体1が直進し、壁面Jに10cm程度まで近接した状態を示す。このとき、前側の左側面近接センサー19bと後側の左側面近接センサー20bと前側の右側面近接センサー19aが、壁面Jへの近接を検知する。制御部(図示せず)は、これら3つの近接センサーの信号から、前側の左側面近接センサー19bが最も近接していることを認識する。また、制御部(図示せず)は、前側の左側面近接センサー19bと後側の左側面近接センサー20bの距離出力の差から、左側面18bが壁面Jに対して傾斜していることを認識する。
 
【0044】
  図15は、本体1が左側面18bを壁面Jに接触させた状態を示す。制御部(図示せず)は、
図14の時点で左側面18bが壁面Jに対して傾斜していることを認識した後、本体1を右方向に旋回しつつ移動しながら、前側の左側面近接センサー19bと後側の左側面近接センサー20bの距離出力を比較する。そして、制御部(図示せず)は、両近接センサーの距離出力の差が0で且つ両近接センサーが接触を検知するように駆動輪6a、6bを転動させて、左側面18bを壁面Jに接触させる。左側面18bが壁面Jと接触すると、吸込口11は壁際の床面Eに堆積した塵埃を吸引する。
 
【0045】
  図16は、駆動輪6a、6bの転動方向を壁面Jに対して平行にした状態を示す。制御部(図示せず)は、
図15の状態、つまり左側面18bが壁面Jに接触した状態で、本体1を壁面Jに沿って移動するために、駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Jに対して平行になるように、中央部2と外殻部3を回転させる。
 
【0046】
  このとき、制御部(図示せず)は、右側の駆動輪6aを負方向に転動(後退方向に転動)し、左側の駆動輪6bを正方向に転動(前進方向に転動)することで、中央部2を時計回りに信地回転する。また、それと同時に、角度調節モーター44を反時計回りに回転して、外殻部3を中央部2に対して反時計回りに回転する。ここで、中央部2の信地回転の速度と外殻部3の回転の速度を同一にすることにより、左側面18bが壁面Jと接触しながら、駆動輪6a、6bの転動方向を変更することができる。
 
【0047】
  図17は、本体1が壁面J沿いを移動している状態を示す。制御部(図示せず)は、
図16の状態、つまり、左側面18bが壁面Jに接触し且つ駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Jに対して平行の状態で、駆動輪6a、6bを正方向に転動(前進方向に転動)する。本体1は、左側面18bを壁面Jに接触させながら、壁面Jに沿って本体1の略全長に相当する距離だけ移動する。このように移動することで、毛ブラシ12が床面Eと壁面Jの境界部に押し当てられ、壁際の床面Eの塵埃を掻き出して捕集することができる。
 
【0048】
  図18は、本体1が壁面J沿いを戻る方向に移動している状態を示す。制御部(図示せず)は、
図17の状態、つまり、本体1が壁面Jに沿って本体1の略全長に相当する距離だけ移動した状態で、駆動輪6a、6bを負方向に転動(後退方向に転動)する。本体1は、左側面18bを壁面Jに接触させながら、壁面Jに沿って本体1の全長の略半分に相当する距離だけ戻る方向に移動する。特に、壁面に沿って掃除する際に、本体1がこのように前進と後退を繰り返しながら移動することで、毛ブラシ12が壁際の床面Eの塵埃を掻き出して吸込口11が捕集することをより確実に行うことができる。
 
【0049】
  図19、20は、本体1が前進と後退を繰り返しながら移動して、壁面J沿いを掃除している状態を示す。
図19は前進した状態を示し、
図20は後退した状態を示す。
 
【0050】
  図21は、本体1が壁面J沿いを移動して隅部Lに到達した状態を示す。制御部(図示せず)は、
図20の状態、つまり、左側面18bが壁面Jに接触し且つ駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Jに対して平行の状態で、駆動輪6a、6bを正方向に転動(前進方向に転動)する。
 
【0051】
  本体1が壁面Kに近接すると、前側の右側面近接センサー19aと後側の右側面近接センサー20aが同時に、壁面Kへの近接を検知する。このとき、制御部(図示せず)は、前側の右側面近接センサー19aと後側の右側面近接センサー20aの距離出力を比較することにより、右側面18aの壁面Kに対する角度を認識する。制御部(図示せず)は、両近接センサーが、同じ距離出力である場合は、壁面Kが壁面Jに対して直角であると認識することができる。壁面Kが壁面Jに対して直角でないと認識した場合は、制御部(図示せず)は、掃除漏れが発生する可能性があることを警告する信号を出力する。また、壁面Jと壁面Kの角度に応じた動作アルゴリズムに切り替えて、掃除を続行する。
 
【0052】
  本体1が隅部Lに到達すると、制御部(図示せず)は、右側面18aを壁面Kに接触させた状態で駆動輪6a、6bの駆動を停止する。そして、所定時間隅部Lに留まる。このとき、吸込口11は、左側面18b側に加えて右側面18a側も壁面に沿い、壁面Jと壁面Kと床面Eによって形成される3つの境界部に沿って含塵空気が吸引され、隅部L周辺の床面Eに堆積した塵埃が捕集される。隅部Lに留まる時間は、2〜3秒程度が好ましい。このように、隅部Lに所定時間留まることで、隅部Lの塵埃をより確実に捕集することができる。
 
【0053】
  図22、23は、本体1が隅部Lに到達した後に後退及び前進して、隅部Lの周辺を掃除している状態を示す。制御部(図示せず)は、
図21の状態、つまり、本体1が隅部Lに到達した状態で、駆動輪6a、6bを負方向に転動(後退方向に転動)し、その後正方向に転動(前進方向に転動)し、壁面Jに沿って本体1の全長の略半分に相当する距離を往復する。このように、壁面Jに沿って往復動作することにより、毛ブラシ12及び先端ブラシ15による隅部Lの周辺に付着した塵埃の捕集をより確実にすることができる。
 
【0054】
  図24は、本体1が隅部Lに到達した状態で、駆動輪6a、6bの転動方向を壁面J及び壁面Kに対して45°にした状態を示す。制御部(図示せず)は、
図23の状態、つまり、右側面18aが壁面Kに接触し、左側面18bが壁面Jに接触した状態で、中央部2を反時計回りに45°回転し、それと同時に外殻部3を時計回りに45°回転する。
 
【0055】
  このとき、制御部(図示せず)は、右側の駆動輪6aを正方向に転動(前進方向に転動)し、左側の駆動輪6bを負方向に転動(後退方向に転動)することで、中央部2を反時計回りに信地回転する。また、それと同時に、角度調節モーター44を時計回りに回転して、外殻部3を中央部2に対して時計回りに回転する。ここで、中央部2の信地回転の速度と外殻部3の回転の速度を同一にすることにより、右側面18aが壁面Kと接触しながら、駆動輪6a、6bの転動方向を変更することができる。つまり、本体1を隅部Lに留めた状態で、駆動輪6a、6bの転動方向を変更することができる。
 
【0056】
  図25、26は、本体1が駆動輪6a、6bの転動方向を変更した後に後退及び前進して、隅部Lの周辺を掃除している状態を示す。制御部(図示せず)は、
図24の状態、つまり、駆動輪6a、6bの転動方向が壁面J及び壁面Kに対して45°になった状態で、駆動輪6a、6bを負方向に転動(後退方向に転動)し、その後正方向に転動(前進方向に転動)し、本体1の全長の略半分に相当する距離を往復する。このように、壁面Jに沿った往復動作の後に異なる方向の往復動作を行うことにより、毛ブラシ12及び先端ブラシ15による隅部Lの周辺に付着した塵埃の捕集をより確実にすることができる。
 
【0057】
  図27は、駆動輪6a、6bの転動方向を壁面Kに対して平行にした状態を示す。制御部(図示せず)は、右側面18aが壁面Kに接触した状態で、駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Kに対して平行になるように、中央部2を反時計回りに45°回転し、それと同時に外殻部3を時計回りに45°回転する。
 
【0058】
  このとき、制御部(図示せず)は、右側の駆動輪6aを正方向に転動(前進方向に転動)し、左側の駆動輪6bを負方向に転動(後退方向に転動)することで、中央部2を反時計回りに信地回転する。また、それと同時に、角度調節モーター44を時計回りに回転して、外殻部3を中央部2に対して時計回りに回転する。ここで、中央部2の信地回転の速度と外殻部3の回転の速度を同一にすることにより、右側面18aが壁面Kと接触しながら、駆動輪6a、6bの転動方向を変更することができる。つまり、本体1を隅部Lに留めた状態で、駆動輪6a、6bの転動方向を変更することができる。
 
【0059】
  図28、29は、駆動輪6a、6bの転動方向を変更した後に後退と前進を繰り返して、隅部Lの周辺を掃除している状態を示す。制御部(図示せず)は、
図27の状態、つまり、駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Kに対して平行の状態で、駆動輪6a、6bを負方向に転動(後退方向に転動)し、その後正方向に転動(前進方向に転動)し、本体1の全長の略半分に相当する距離を往復する。このように、壁面Jに沿った往復動作の後に異なる方向の往復動作を複数の方向で行うことにより、毛ブラシ12及び先端ブラシ15による隅部Lの周辺に付着した塵埃の捕集をより確実にすることができる。
 
【0060】
  図30は、本体1が壁面K沿いを隅部Lから遠ざかる方向に移動した状態を示す。制御部(図示せず)は、
図29の状態、つまり、右側面18aが壁面Kに接触し且つ駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Kに対して平行の状態で、駆動輪6a、6bを転動する。本体1は、右側面18aを壁面Kに接触させながら、壁面Kに沿って移動する。このとき、吸込口11は、駆動輪6a、6bに対して後方に位置するため、駆動輪6a、6bは、掃除の済んでいない床面Eを移動することになる。そこで、制御部(図示せず)は、本体1を隅部Lから約50cm程度壁面Kに沿って移動させた後に一時停止し、以下の手順で、吸込口11が駆動輪6a、6bに対して前方に位置するように、吸込口11と駆動輪6a、6bの位置関係を変更する。
 
【0061】
  図31は、本体1が壁面K沿いを移動して隅部L側に戻った状態を示す。制御部(図示せず)は、
図30の状態において、左側面18b側の吸込口11が掃除した範囲を外殻部3が十分通過する位置まで、本体1を隅部L側に向けて移動する。これは、次に行う吸込口11と駆動輪6a、6bの位置関係の変更によって掃除漏れとなる床面Eが発生することを防止するための動作である。
 
【0062】
  図32は、吸込口11が駆動輪6a、6bに対して前方に位置するように、吸込口11と駆動輪6a、6bの位置関係を変更した状態を示す。制御部(図示せず)は、
図31の状態、つまり、外殻部3が中央部2に対して時計回りに45°回転した状態から、外殻部3が中央部2に対して反時計回りに45°回転した状態になるまで、外殻部3を回転する。また、それと同時に、右側の駆動輪6aを正方向に転動(前進方向に転動)し、左側の駆動輪6bを負方向に転動(後退方向に転動)することで、中央部2を反時計回りに180°信地回転する。この動作により、
図31における本体1の位置する場所と同じ場所で、吸込口11を駆動輪6a、6bよりも前側、つまり隅部Lから遠ざかる側に配置することができる。また、壁面K沿いを更に移動した後に現れる次の隅部での掃除に対応することができる。なお、外殻部3の回転と中央部2の信地回転は、同時でなくても構わないが、同時である方が吸込口11と駆動輪6a、6bの位置関係の変更に要する時間を節約できるため好ましい。
 
【0063】
  図33は、本体1が壁面K沿いを隅部Lから遠ざかる方向に本体1の略全長に相当する距離だけ移動した状態を示す。制御部(図示せず)は、
図32の状態、つまり、左側面18bが壁面Kに接触し且つ駆動輪6a、6bの転動方向が壁面Kに対して平行の状態で、駆動輪6a、6bを転動する。本体1は、左側面18bを壁面Kに接触させながら、壁面Kに沿って隅部Lから遠ざかる方向に本体1の略全長に相当する距離だけ移動する。このように移動することで、毛ブラシ12が床面Eと壁面Kの境界部に押し当てられ、壁際の床面Eの塵埃を掻き出して捕集することができる。
 
【0064】
  制御部(図示せず)は、
図33の状態、つまり、本体1が壁面Kに沿って本体1の略全長に相当する距離だけ移動した状態で、駆動輪6a、6bを負方向に転動(後退方向に転動)する。本体1は、左側面18bを壁面Kに接触させながら、壁面Kに沿って本体1の全長の略半分に相当する距離だけ戻る方向に移動する。特に、壁面に沿って掃除する際に、本体1がこのように前進と後退を繰り返しながら移動することで、毛ブラシ12が壁際の床面Eの塵埃を掻き出して吸込口11が捕集することをより確実に行うことができる。
 
【0065】
  このように、実施の形態1に係る自走式掃除機は、外殻部3の側面に平面を備え且つ床面の隅部の壁面交差角度に応じた角部を備えることで、壁際の床面Eや床面の隅部Lに吸込口11を近接することができ、又、吸込口11を壁面に沿わせて走行できるため、掃除漏れを低減することが可能となる。
  また、駆動輪の転動方向と外殻部3の側面の平面の相対角度が変更可能であるため、狭い空間で移動方向を転換する際に前進及び後退を繰り返す必要がなくなり、掃除効率を向上することが可能となる。
 
【0066】
  また、吸込口11を直角部4の外周に沿う略L字状の形状とすることで、壁際の床面Eと壁面近くの床面Eを同時に掃除することができるため、掃除効率を向上することが可能となる。
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、吸込口11の前側に設けられた毛ブラシ12と先端傾斜部14に設けられた先端ブラシ15によって、床面Eに付着した塵埃も掻き出すことができ、塵埃をより確実に捕集することができる。
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、壁際の床面Eを掃除する際や床面の隅部Lの周辺を掃除している際に、前進と後退を繰り返すことによって、塵埃をより確実に捕集することができる。
 
【0067】
  なお、実施の形態1に係る自走式掃除機は、外殻部が中央部に対して±45°の範囲で回転するものであるが、このような形態に限定されない。例えば、外殻部3を中央部2に対して360°回転するものでも、実施の形態1に係る自走式掃除機と同様の効果を得られることは、言うまでもない。実施の形態1に係る自走式掃除機のように、外殻部3が回転する範囲を制限することで、集塵部の後方に蓄電池39等を設けることができ、自走式掃除機を小型化することが可能となる。
 
【0068】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、中央部2の回転中心を通る直線上に2つの駆動輪を備えたものであるが、このような形態に限定されない。例えば、中央部2を移動する駆動輪とは別に中央部2を信地回転する機構を備えたものでも、実施の形態1に係る自走式掃除機と同様の効果を得られることは、言うまでもない。実施の形態1に係る自走式掃除機のように、中央部2の回転中心を通る直線上に2つの駆動輪を備えたことで、中央部を移動する機構と中央部2を信地回転する機構を兼用することができ、自走式掃除機を小型化することが可能となる。
 
【0069】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、直角部4が外殻部3に上下移動可能に支持されるものであるが、このような形態に限定されない。例えば、直角部4を固定したり、直角部4の底面を前方が高くなるように傾斜させたものでも、実施の形態1と同様の効果を得られることは、言うまでもない。実施の形態1に係る自走式掃除機のように、直角部4を上下移動することで、確実に凸状段差を乗り越えることが可能となる。また、実施の形態1に係る自走式掃除機のように、直角部4を上下移動することで、絨毯I上も掃除することができ、掃除漏れを更に少なくすることが可能となる。
 
【0070】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、壁際の床面Eを掃除する際に、右側面18aや左側面18bを壁面に接触させるように動作させているが、壁面から数mm離して極近接させた状態で動作させても良い。このように動作させることにより、壁面に傷をつけることなく壁際の床面Eを掃除することができる。
 
【0071】
  また、右側面18aと左側面18bのそれぞれに、フッ素樹脂等の素材で構成された滑り性能の高い緩衝部材を設けても良い。このように構成することにより、右側面18aと左側面18bを壁面に接触させた際に、壁面に傷をつけることを防止することができる。
 
【0072】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、本体1の底面に従動輪10を備えるものであるが、従動輪10を備えなくても良い。その場合には、毛ブラシ12が床面Eに接して本体1の前方を支持するため、本体1は床面Eに対して水平に支持される。また、従動輪10に代えて摺動性の高いクッション部材を備えても良い。その場合には、本体1の前方が持ち上がった際に、クッション部材が床面Eに当接し、本体1の底面が損傷することが防止される。
 
【0073】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、送風機28と集塵部31が、シール部材36によって送風機28と集塵部31の間の風路の気密が確保された状態で、水平方向に摺動可能に構成されるものであるが、送風機28と集塵部31の両者が、外殻部3に設けられてもよい。その場合には、外殻部3が中央部2に対して回転する際に、送風機28の排気ダクト30が駆動輪モーター8a、8b等と干渉しないように構成される。
 
【0074】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、直角部4が、外殻部3に設けられた複数のガイド47に沿って上下移動可能に構成されるものであるが、直角部4が、直角部4の一部を中心にして上下方向に回転可能に構成されても良い。
 
【0075】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、壁面沿いを掃除している際、本体1が本体1の略全長に相当する距離だけ前進し、本体1の全長の略半分に相当する距離だけ戻る方向に後退するものであるが、前進及び後退時の移動距離は本体1の略全長及び本体1の全長の略半分に限定されるわけではない。例えば、本体1の略全長に相当する距離だけ前進し、本体1の全長の略3/4に相当する距離だけ後退しても良い。また、塵埃が堆積している部分や付着している部分では、前進及び後退時の移動距離を同一にして往復動作を繰り返しても良い。前進及び後退時の移動距離や繰り返し回数は、操作者が選択した掃除時間や掃除性能に応じて設定されても良く、また、センサー(図示せず)等が検知した塵埃の量や状態に応じて自動的に設定されても良い。
 
【0076】
  また、実施の形態1に係る自走式掃除機は、隅部Lの周辺を掃除している際、本体1が隅部Lに到達した後、本体1が壁面Jに沿って本体1の全長の略半分に相当する距離だけ後退及び前進を行い、本体1が壁面J及び壁面Kに対して45°の方向に本体1の全長の略半分に相当する距離だけ後退及び前進を行い、本体1が壁面Kに沿って本体1の全長の略半分に相当する距離だけ後退及び前進を行うものであるが、後退及び前進時の移動距離は本体1の全長の略半分に限定されるわけではない。また、各方向への後退及び前進の繰り返し回数は1回でも複数回でも良い。また、本体1が壁面J及び壁面Kに対して45°の方向に後退及び前進を行う場合に限られず、例えば、壁面Jに対して30°で壁面Kに対して60°の方向と壁面Jに対して60°で壁面Kに対して30°の方向に後退及び前進を行っても良い。また、壁面J及び壁面Kに対して45°の方向に後退及び前進を行うことを省略し、本体1が隅部Lに到達して所定時間経過した後に、駆動輪6a、6bの転動方向が90°変更され、壁面Kに沿って移動するように動作してもよい。後退及び前進時の移動距離や各方向への後退及び前進の繰り返し回数や後退及び前進を行う方向は、操作者が選択した掃除時間や掃除性能に応じて設定されても良く、また、センサー(図示せず)等が検知した塵埃の量や状態に応じて自動的に設定されても良い。
 
【0077】
実施の形態2.
  以下に、実施の形態2に係る自走式掃除機の構造を説明する。なお、実施の形態1に係る自走式掃除機と重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
  
図34は、実施の形態2に係る自走式掃除機の、底面図を示す図である。
  
図34に示すように、実施の形態2に係る自走式掃除機は、本体1の底面の駆動輪6a、6bの両輪間及び前後に亘って、拭き掃除シート49が設けられる。拭き掃除シート49は、不織布等の繊維材料で構成され、本体1の底面に着脱自在である。拭き掃除シート49は、本体1が床面E上を移動する際に床面Eに接する。拭き掃除シート49は、駆動輪6a、6bが床面Eで空転しない程度の圧力で、床面Eに押し当てられる。拭き掃除シート49と本体1の底面の間には、発泡樹脂などのクッション材料(図示せず)が設けられ、拭き掃除シート49が床面Eに均一の圧力で押し当てられる。
 
【0078】
  また、拭き掃除シート49は、駆動輪6a、6bの間に、且つ、本体1の重心Mの位置に重なる位置に設けられる。重心から離れた位置に拭き掃除シート49が設けられた状態で拭き掃除シート49から床面Eへの圧力を高めると、駆動輪6a、6bが空転し易くなって床面Eの掃除効果を低下させてしまうが、本体1の重心Mの位置に重なる位置に拭き掃除シート49が設けられた状態で拭き掃除シート49から床面Eへの圧力を高めた場合には、拭き掃除シート49が本体1の重量によってより押さえ付けられることで、駆動輪6a、6bが空転することを抑制でき、床面Eの掃除効果を向上することができる。また、拭き掃除シート49は、駆動輪6a、6bの前後に亘って設けられるため、床面Eの塵埃が駆動輪6a、6bに付着することが抑制される。
 
【0079】
実施の形態3.
  以下に、実施の形態3に係る自走式掃除機の構造を説明する。なお、実施の形態1、実施の形態2に係る自走式掃除機と重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
  
図35は、実施の形態3に係る自走式掃除機の、底面図を示す図である。
  
図35に示すように、実施の形態3に係る自走式掃除機は、中央部2の底面の駆動輪開口部7a、7bを除く略全面に亘って、拭き掃除シート50が設けられる。拭き掃除シート50は、本体1が床面E上を移動する際に床面Eに接する。拭き掃除シート50は、駆動輪6a、6bが床面Eで空転しない程度の圧力で、床面Eに押し当てられる。拭き掃除シート50と本体1の底面の間には、発泡樹脂などのクッション材料(図示せず)が設けられ、拭き掃除シート50が床面Eに均一の圧力で押し当てられる。本体1の底面に従動輪10が設けられなくても良く、従動輪10が設けられなかった場合でも、本体1は拭き掃除シート50によって水平に支持される。
 
【0080】
  拭き掃除シート50は、中央部2の底面の駆動輪開口部7a、7bを除く略全面に亘って、且つ、本体1の重心Mの位置にも重なるように配置されるため、拭き掃除シート50が本体1の重量によってより押さえ付けられ、床面Eの掃除効果を高めることができる。また、広い面積での拭き掃除が可能となるため、掃除効率を高めることができる。また、拭き掃除シート50は、駆動輪6a、6bの前後に亘って設けられるため、床面Eの塵埃が駆動輪6a、6bに付着することが抑制される。
 
【0081】
実施の形態4.
  以下に、実施の形態4に係る自走式掃除機の構造を説明する。なお、実施の形態1乃至実施の形態3に係る自走式掃除機と重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
  
図36は、実施の形態4に係る自走式掃除機の、底面図を示す図である。
  
図36に示すように、実施の形態4に係る自走式掃除機は、実施の形態1に係る自走式掃除機の吸込口11が、右吸込口51aと左吸込口51bと先端吸込口52とで構成される。
 
【0082】
  吸込風路37は、右吸込口51aと左吸込口51bと先端吸込口52に分岐する。制御部(図示せず)は、本体1が床面の隅部L以外を掃除している際は、含塵空気が全ての吸込口から吸引され、本体1が床面の隅部Lを掃除している際は、含塵空気が先端吸込口52のみから吸引されるように、切り替え弁(図示せず)を制御する。このように構成されることで、本体1が隅部Lを掃除している際に、先端吸込口52に強い負圧を発生することができ、床面の隅部Lに堆積或いは付着した塵埃をより確実に捕集することが可能となる。
 
【0083】
実施の形態5.
  以下に、実施の形態5に係る自走式掃除機の構造を説明する。なお、実施の形態1乃至実施の形態4に係る自走式掃除機と重複する説明については、適宜簡略化或いは省略している。
  
図37は、実施の形態5に係る自走式掃除機の、斜視図を示す図である。
  
図37に示すように、実施の形態5に係る自走式掃除機は、本体1の直角部4の上面に巾木ブラシ53が設けられる。巾木ブラシ53は、直角部4の上面の右側面18aの近傍及び左側面18bの近傍に設けられた固定溝54a、54bに、それぞれ着脱可能に設けられる。また、巾木ブラシ53は、固定時に高さ調節が可能である。部屋の壁面下部に設けられる巾木の高さは6cm、7.5cm、10cmが主流であるため、これらの高さに対応できるように、例えば、5cm〜12cmの巾木に対応できるように、巾木ブラシ53の高さが調節可能であれば良い。また、主流となる各巾木の高さに対応する複数の巾木ブラシ53、例えば、巾木の高さが6cmの場合の巾木ブラシ53と巾木の高さが7.5cmの場合の巾木ブラシ53と巾木の高さが10cmの場合の巾木ブラシ53とが交換可能に設けられても良い。
 
【0084】
  巾木ブラシ53の固定溝54a、54bに挿入されない側の先端には、毛ブラシ55が設けられる。毛ブラシ55は、複数のブロックに分かれて列状に並び、各ブロック間には所定の間隔が設けられる。毛ブラシ55は、先端が下を向き、且つ、直角部4の右側面18a及び左側面18bの外側に向かうように植毛される。このように構成されることで、本体1が壁面に沿って掃除する際に、毛ブラシ55が巾木の上に接触し、巾木の上に堆積或いは付着した塵埃を床面Eに掻き落とす。そして、床面Eに掻き落とされた塵埃は、壁面に沿って往復動作しながら移動する本体1の吸込口11により捕集される。
 
【0085】
  以上のように構成されているため、壁際の床面掃除と同時に、巾木の上も掃除することが可能となり、効率よく部屋を掃除することができる。
  なお、巾木ブラシ53は、直角部4の頂部に近い位置まで毛ブラシ55が設けられるように構成されると良い。このように構成されることで、壁面J及び壁面Kが交差する隅部Lの巾木の上も掃除することができる。
 
【0086】
  図38及び
図39は、実施の形態5に係る自走式掃除機の、変形例の斜視図を示す図である。
図38に示すように、直角部4の頂部に巾木ブラシ56が設けられても良い。巾木ブラシ56は、直角部4の上面の頂部の近傍に設けられた固定溝57に、それぞれ着脱可能に設けられる。巾木ブラシ56には、毛ブラシ58が、先端が下を向き、且つ、頂部を中心とする90°の範囲で本体1の外側に放射状に広がるように植毛される。頂部の近傍に設けられた巾木ブラシ56と右側面18a及び左側面18bの近傍に設けられた巾木ブラシ53が共用されても共用されなくても良い。また、
図39に示すように、毛ブラシ58の先端の軌道が巾木の上面を接触しつつ通過するように、頂部に設けられた巾木ブラシ56をモーター(図示せず)等により回転駆動しても良い。
 
【0087】
  以上、実施の形態1乃至実施の形態5に係る自走式掃除機について説明したが、本発明は各実施の形態の説明に限定されない。
  例えば、各実施の形態や各変形例が組み合わされてもよい。
  また、実施の形態1乃至実施の形態5に係る自走式掃除機は、角度調節モーター44を回転させて、2つの平面、つまり右側面18aと左側面18bで形成される頂角の二等分線と駆動輪6a、6bの転動方向の相対角度を変更するものであるが、頂角の二等分線と転動方向が平行の状態で固定されても良い。角度調節モーター44を制御して平行の状態に固定しても良く、中央部2と外殻部3を回転不能に固定又は一体化しても良い。中央部2と外殻部3を回転不能に固定又は一体化する場合は、角度調節モーター44やそれに付随するギヤ等の外殻部3を中央部2に対して回転するための部材が設けられなくても良い。このような場合でも、
図25及び
図26に示すように動作させることで、床面の隅部等の狭い空間に吸込口11を到達させることができ、掃除漏れを少なくすることができる。また、前進と後退を繰り返すことで、間欠的に壁沿いを掃除することも可能である。