(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の被点検物支持装置は、床面に置かれている被点検物を手で抱えて持ち上げ、所定の高さ位置の架台に載置し、その固定のために何からの押え手段を操作することにより押え、さらに、所定の高さ位置の架台に載置した被点検物が転倒などしないように、ロック手段を手操作により掛けていた。そして、点検などの作業終了後は、再び、押え手段を手で操作して解除し、その被点検物を抱えて架台から床面まで下げていた。
【0007】
したがって、まず、重い被点検物の上げ下げを作業者が手作業で行うので、長期間の作業により腰痛を起こす原因となっている。また、押え手段やロック手段の操作が必要であるので、作業能率の向上に限界がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、作業者による被点検物の上げ下げ作業を不要にするとともに、被点検物の押えおよび解除を自動化した被点検物昇降装置を提供することを目的とする。さらに、ロックの施錠・解錠も自動化した被点検物昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、被点検物昇降装置を
次の台車と電動フォークリフトとから構成したことを特徴とする。すなわち、
台車は、被点検物を載置できる載置部と、その載置部の底面に形成された、電動フォークリフトのフォークを前部から挿入・抜脱可能なフォーク挿入部と、その載置部の前部と後部に設けられた移動用車輪と、その載置部の後端部に設けられ、被点検物の前端を載せて載置部に向けて転動させるためのローラとを有する。電動フォークリフトは、横フレームと、横フレームに立設された支柱と、その支柱に沿って昇降可能に支持された縦フレームと、その縦フレームの下端部から水平方向に突設されたフォークと、縦フレームの上部にフォークと同じ側に延出された腕部材、その腕部材に上下動可能に保持された押え部材、その押え部材を下方に弾力的に付勢する付勢部材を有する被点検物押え手段と、縦フレームを支柱に沿って下限位置から上限位置までの間を昇降させる電動昇降手段と、その電動昇降手段による縦フレームの昇降を制御する制御部とを有する。
【0010】
上記構成により、被点検物の前端底部を台車の載置部後端のローラに乗せて被点検物を載置部上面側に引き上げることにより、重い被点検物を容易に台車に載せることができる。被点検物を載せた台車を移動用車輪で容易に移動して、電動フォークリフトの横フレームの間に走行させ、台車のフォーク挿入部に電動フォークリフトのフォークを挿入させることができる。そして、台車を所定位置まで前進させると、被点検物押え手段の押え部材が被点検物の上面前端に当たり、付勢部材の付勢力に抗して後退された後、その被点検物の上面を押圧する。台車をさらに縦フレームの所定位置まで前進させると、被点検物は台車と押え部材の間に自動的に安定した状態で固定される。制御部を介して電動フォークリフトの電動昇降手段に電源を入れると、縦フレームが被点検物を保持したまま上昇される。被点検物が立ち姿勢で作業し易い高さ位置まで上昇されたとき、制御部を介して電動昇降手段による上昇を止めることができる。
【0011】
被点検物押え手段の腕部材は、縦フレームに対する取付位置が可変であることが望ましい。これにより、高さが異なる被点検物に対応することができる。
【0012】
台車には、載置部の後部側面に足で踏み付けられて作用する台車ストッパが設けられていることが好ましい。この構成により、台車に被点検物を載せる際に、その台車ストッパを踏み付けることにより台車の暴れを抑制し、被点検物を安定化された台車の載置部に円滑に載置することができる。
【0013】
台車の台車ストッパは、載置部の後部側面に軸支された踏み板と、載置部の中間部側面に軸支され、一端が踏み板の端部に係合され、踏み板が踏まれた時に他端が床面に押圧されるレバーとを有するものであることが好ましい。
【0014】
電動フォークリフトの被点検物押え手段の押え部材には、腕部材に軸支されたレバーの一端に回転可能に備えられたローラを用い、付勢部材には一端が腕部材に固定され、他端がレバーの他端に固定されたコイルバネを用いることができる。
【0015】
電動昇降手段は、支柱に取付けられたウィンチと、そのウィンチに巻かれ、支柱の上部に取付けられた滑車に巻回され、先端が縦フレームに結合されているロープまたはワイヤと、電源部とで構成し、制御部はウィンチに対する電源の供給を制御するものとすることができる。また、電動昇降手段は、縦フレームに設けられたナットと、支柱に取付けられ、ナットに螺合されたボールネジと、支柱に設けられ、ボールネジを回転させるモータと、電源部とで構成し、制御部はモータへの電源供給を制御するものとすることもできる。
【0016】
電源部は、一つの電源から電動昇降手段と被点検物の電気的点検に分配可能とされていることが好ましい。
【0017】
電動フォークリフトの縦フレームの下部に設けられた係止部材と、台車の前部にその係止部材が係合可能に設けられた被係止部材とからなり、台車のフォーク挿入部に電動フォークリフトのフォークが挿入された状態では、係止部材が被係止部材の下方に位置して係合せず、電動フォークリフトの電動昇降手段により縦フレームが上昇し始めると、係止部材が被係止部材に係合するロック手段を備えることが好ましい。
これにより、台車を電動フォークリフトの所定の位置まで接近させること、および所定の位置から離間することが自由にでき、接近させた状態で電動昇降手段が台車を上昇し始めると同時に台車が、すなわち、被点検物が自動的に縦フレームにロックされる。また、電動昇降手段が台車を所定位置まで下降させると、台車のロックが自動的に解除される。
【0018】
また、台車は、載置部の上面に回転ストッパ付きターンテーブルを回転可能に備えたものとすることができる。この台車を用いる場合は、1つの作業位置で被点検物の正面側と背面側の部品交換・点検等を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、
作業者による被点検物の上げ下げ作業を不要にするとともに、被点検物の押えおよび解除を自動化した被点検物昇降装置を提供することができる。
【0020】
また、本発明によれば、被点検物の前端底部を台車の載置部後端のローラに乗せて被点検物を載置部上面に引き上げることにより、重い被点検物を容易に台車に載せることができ、被点検物を載せた台車を電動フォークリフトの横フレームの間に走行させ、台車のフォーク挿入部に電動フォークリフトのフォークが挿入され、台車を所定位置まで前進させると、被点検物押え手段の押え部材が被点検物の上面を押圧するので、被点検物は台車と押え部材の間に安定した状態で固定され、電動フォークリフトの制御部を介して電動昇降手段に電源を入れると、縦フレームが被点検物を保持したまま上昇され、立ち姿勢で作業し易い高さ位置で上昇を任意に止めることができる。したがって、作業者による被点検物の上げ下げ作業が不要であり、台車を電動フォークリフトの所定の位置に移動するだけで、被点検物の押えおよび解除が自動的に行われるので、作業能率が高い被点検物昇降装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図示される実施の形態は、被点検物がパチンコ機の内枠である場合に、これに適合するように設計されたものである。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る被点検物昇降装置Aは、台車100と電動フォークリフト200とからなる。
【0024】
台車100は、載置部110を有する。載置部110は、鋼板または鉄板を曲げ加工して略箱形に形成され、実質的に平坦な上面壁111と、その上面壁111の幅方向中央に前端から後端または端部付近まで延びる凹部112と、上面壁111の左右両側端部から垂下する側面壁113とを有する。凹部112は、被点検物がパチンコ機の内枠である場合に、その内枠の底部をぐらつきを生じさせることなく嵌合できる大きさと深さを有する。
【0025】
載置部110の左右両側の上面壁111の下面には、その前部(
図1においては右側端部)と後部(
図1においては左側端部)においてそれぞれ1対の下方に突出する車輪121,122が取付けられている。車輪121,122をどのように取付けるかは任意である。後輪122には固定キャスタを用いることができるが、前輪121は、台車の操舵性を良くするため、自在キャスタまたはボール車輪を用いることが良い。
【0026】
図示の例では、後述される電動フォークリフト200の横フレーム210の前脚部212とフォーク233の間の隙間が狭いため、前輪121を自在キャスタにした場合は台車の電動フォークリフト200の所定位置への走行を妨げる虞があるので、それを回避する目的でボール車輪を用いている。
【0027】
そして、載置部110の後壁114の幅方向中央から左右両側の等距離の位置に支持部材131が突設され、その支持部材131に両端を固定した軸にローラ130が回転自在に支持されている。そのローラ130の頂部は凹部112の後端部(
図1の左側端部)を形成している上面壁111の一部111Eと略同一面または、それよりも僅かに高い位置に存在している。
【0028】
ローラ130が設けてあることにより、ローラ130に被点検物の前側底部を乗せ、その被点検物を台車100の前方(
図1においては右方向)に引き上げるようにして移動することにより、被点検物の重量の大半をローラ130に負担させて、被点検物を容易に載置部110に載せて、被点検物の底部を凹部112に嵌合して安定させることができる。
【0029】
台車100は、前後に車輪121,122が設けてあるので、被点検物を載置部110に載置する際に台車100に外力が加わって不要な方向に向きを変える虞がある。これを防止するため、好ましい実施の形態においては、載置部110の左右の側壁113の内、作業者の利き足と同じ側の側壁、
図1の例では左側の側壁、に台車ストッパ140が備えてある。この台車ストッパ140は、作業者が被点検物を載置部110に載置する際に、床面に置かれている被点検物に台車を接近させた時に利き足で踏み付けて台車100が不要に移動しないように固定するためのものである。台車ストッパ140は、両側の側面壁
113に取付けても良い。
【0030】
台車スいときには固定力が不足する虞がある。
図2に示す好ましい例では、台車ストッパ140が、載置部110の側壁113の後部に固着された前後の支持板141の間に踏み板142を軸143により回動可能に支持し、側壁113の前後方向中間の位置に取付けた支持板144に軸145によりシーソー自在に支持したレバー146の一端を踏み板142の内端の上側に位置させ、レバー146の他端に押圧片147を設けて構成されている。台車ストッパ140には、踏み板142を足で踏み付けない状態においては、
図2(a)に示されるように、踏み板142も押圧片147も床面に接触しない状態に保持されるように、例えば、ばね(不図示)で付勢してある。
【0031】
図2に示す台車ストッパ140は、
図2(b)に示すように、踏み板142を踏み付けると、その前端が床面を強く押圧するとともに、踏み板142により回動されるレバー146の先端の押圧片147も床面を強く押圧する。これにより、台車100は床面に安定して固定される。なお、
図2では、側面壁113の一部が削除されている。
【0032】
また、台車100には、載置部110の前壁115の略中央に、後述される電動フォークリフト200の縦フレーム230に設けてある係止部材271とともにロック手段270を構成する、係止部材271に係止される被係止部材272が突設されている(
図9C,9D参照)。
【0033】
さらに、台車100には、載置部110の凹部112の底壁の下面に横断面形状がコ字形の長尺部材を開口面が対向する状態で固着して構成されたフォーク挿入部160が形成されている。このフォーク挿入部160は、前壁115の下側から後壁114まで連続し、台車の前方(
図1においては右方向。
図2においては左方向。)に開口して、その開口から後述される電動フォークリフト200のフォーク233が挿入・抜脱可能である。フォーク挿入部160は、フォーク233が円滑に挿入し、緊密な挿入状態を維持できるように、開口部分は広く形成されることが良い。
【0034】
次に、電動フォークリフト200について説明する。電動フォークリフト200は、横フレーム210と、支柱220と、フォークと被点検物押え手段を備えた縦フレーム230と、その縦フレーム230を動力により昇降させる電動昇降手段240と、その電動昇降手段の昇降を制御する制御部250と、制御部250を介して電動昇降手段240に電源を供給する電源部260とを有している。
【0035】
横フレーム210は、その前後方向中間位置よりもやや後方寄りの位置に幅方向に延在する基部211を有し、その基部の両端部から前方に水平かつ平行に延びる前脚部212と、後方に延出する後脚部213とを有し、それぞれの脚部の先端に車輪214が取付けてある。したがって、電動フォークリフト200は車輪214により移動可能である。
【0036】
支柱220は、横フレーム210の基部211の長手方向中央に垂直に立設されている。支柱220は、被点検物の点検作業等を行う作業者が起立姿勢で挙げた手が届く高さと略等しい高さを有する。また、支柱220は、その上端部から下端部まで前面に開口する溝221を有する。支柱220の頂部にはカバー222が取付けられている。
【0037】
縦フレーム230は、横方向に離間した複数の縦部材231を縦方向に離間した複数の横部材232により結合して堅固に構成されている。そして、縦フレーム230は、支柱220の前側に備えられ、少なくとも2つの横部材232の背面に取付けられた左右1対のローラ(不図示)を支柱220の溝221の中に収容し、各ローラの互いに反対側の面を溝221の対向面に当接させることにより、縦フレーム230は支柱220に沿って昇降自在に案内されている。
【0038】
また、縦フレーム230の下端部には、縦フレーム230の幅方向中央から左右両側に横フレーム210の前脚部212の間隔よりも狭い間隔に離間した位置に、水平かつ平行に前方に延びる2本のフォーク233が設けられている。この2本のフォーク233の長さおよび間隔は、台車100の左右のフォーク挿入部160の奥行き寸法および間隔と略等しく設定されている。すなわち、フォーク233は台車100のフォーク挿入部160に挿入・抜脱可能なように形成されている。
【0039】
さらに、縦フレーム230の上端部には、被点検物押え手段234がフォーク233の上方に位置するように設けられている。被点検物押え手段234は、後述するように、載置部110に被点検物を載置した台車100が電動フォークリフト200の前脚部212の間に進入されたときに、その被点検物を押えつけて固定するものである。被点検物押え手段234は、
図5に示すように、縦フレーム230の上端部の横部材232に固着された腕部材234aと、その腕部材234aの先端部に軸234bにより回転可能に支持されたコ字形の支持部材234cと、その支持部材234cの先端部の中に回転自在に取付けられた押え部材とてのローラ234dと、支持部材234cの基端部と腕部材234aの間に設けられた付勢部材としての引っ張りバネ234eとを有する。
【0040】
上記構成により、ローラ234dは、その下面が取付部材234aの下面から下方に突出するように常に下方に付勢されている。
【0041】
電動昇降手段240は、縦フレーム230をその下端部が横フレーム210に当接して保持されている下限位置から縦フレーム230の上端部が支柱220の上端部のカバー222に接触直前の位置である上限位置までの間を昇降させるものである。このような電動昇降手段240は、一例として、支柱220の背面に取付けた電気ウィンチ(不図示)のロープを支柱220の上端部に取付けた滑車(不図示)に巻回し、そのロープを支柱220の溝221の中に通し、先端を縦フレーム230の上端部に結合した構成とすることができる。
【0042】
電動昇降手段240を制御する制御部250は、支柱220の背面に取付けられた電源部260から与えられる電源の電動昇降手段240への供給と供給停止を司るものである。制御部250は、一例として、
図6に示すように、縦フレーム230が下限位置まで降下した時に動作される下限リミットスイッチ251と、縦フレーム230が上限位置まで上昇した時に動作される上限リミットスイッチ252とを有する。また、制御部250には上昇スイッチ253と下降スイッチ254が設けられている。
【0043】
制御部250は上昇スイッチ253が操作されたときは電動昇降手段240の電気ウィンチに巻き上げ動作をさせて縦フレーム230を上昇させる。上昇される縦フレーム230が、作業者が起立姿勢で被点検物の点検等の作業をするのに好適な高さ位置に達したときに上昇スイッチ253の操作を止めると、電気ウィンチの巻き上げ動作が停止されるようになっている。すなわち、被点検物を作業のし易い任意の位置に止めることができる。また、下降スイッチ254が操作されたときは、制御部250は電動昇降手段240の電気ウィンチに巻き下げ動作をさせて縦フレーム230を下降させる。そして、下降される
縦フレーム230により下限リミットスイッチ251が動作されると、電気ウィンチの巻き下げ動作が停止されるようになっている。
【0044】
進んで、上記構成の被点検物昇降装置を使用するときの作用について説明する。
図7(a)に示すように、台車100に被点検物Mを搭載するときは、床面に置かれている台車100の載置部110の溝112の長手方向を、同じ床面に置かれている被点検物Mの長手方向と合致させ、その被点検物Mの台車100側の肩を押上げて、
図7(b)に示すように、被点検物Mの底面と床面の間に楔形の隙間を作り、その状態を保持しながら台車100をその隙間に向けて床面上を移動させ、
図8(c)に示すように、台車100の端部のローラ130の頂面を被点検物Mの底面に当接させる。次に、台車ストッパ140を踏
み付けて台車100の不要な移動を抑制しながら、
図7(d)に示すように、被点検物Mの重量の大半をローラ130に負担させつつ、被点検物Mを台車100上側に押上げ、
図8(e)に示すように、被点検物Mの底部を載置部110の溝112に嵌合させて案内させながらさらに前方に移動し、
図7(f)に示すように、被点検物Mの底部を溝112に嵌合させる。これにより、被点検物Mは台車100に安定した状態で保持される。
【0045】
次に、被点検物Mを載置した台車100を床面上を走行させて、
図8に示すように、電動フォークリフト200の前脚部212の間のフォーク233に向けて真っ直ぐな向きで前進させる。台車100の前輪121と後輪122が全て固定車輪(首振りをしない車輪)である場合は、台車100を電動フォークリフト200の前脚部212の間のフォーク233に向けて真っ直ぐな向きで前進させることは容易ではなく、台車100の載置部110の前部側面などを前脚部212やフォーク233に衝突させて円滑に所定の位置まで進行させることができない。しかし、好ましい実施の形態では、台車100の前輪121
を自在車(首振りをする車輪)としてあるので、台車100の操舵が容易であ
り、台車100を電動フォークリフト200の前脚部212の間のフォーク233に向けて真っ直ぐに前進させることが容易にできる。
【0046】
電動フォークリフト200の前脚部212とフォーク233の間の間隔が
図1に示すように狭い場合は、前輪121が自在キャスタである場合は、その自在キャスタが前脚部212やフォーク233に接触して円滑に進入できない虞がある。しかし、前輪121にボール車を用いる場合は、そのような難点も解消される。
【0047】
台車100が電動フォークリフト200の前脚部212の間の所定の位置まで進行する際の被点検物押え手段234の作用を
図9A〜
図9Dを参照しながら説明する。台車100が電動フォークリフト200の前脚部212の間を前進し、所定の位置に到達すると、前進する被点検物Mの正面壁と上面壁が連続する前角部が押えローラ234dの中心よりもやや下側の周面に当接する。そのため、押えローラ234dは回転されながら付勢部材234eの付勢力に抗して押上げられ、台車100がさらに前進されるに連れて、
図9Bに示すように、被点検物Mの上面壁に乗り上がり、被点検物Mに押圧力を加える。そして
、台車100がさらに前進され、台車100の前端部が所定の位置まで前進されると、
図9Cに示すように、電動フォークリフト200の縦フレーム230に当たって止められる。この時は、押えローラ234dが付勢部材234eにより被点検物Mの上面壁の前角部から後角部に寄った位置で被点検物Mを押えるので、被点検物Mは押えローラ234dと台車100との間に安定した状態で固定される。
【0048】
続いて、電動フォークリフト200の制御部250の上昇スイッチ253が操作されて電動昇降手段240が稼働し、台車100が上昇されることとなるが、この上昇中に台車100が電動フォークリフト200から、より詳細には縦フレーム230から離間する方向に不要に移動することを予防する手段を備えることが望ましい。そこで、本発明の好ましい実施の形態においては、台車100の上昇中の電動フォークリフト200から不要に移動することを防止し、かつ、自動的に台車100の電動フォークリフト200へのロックおよびロック解除ができるロック手段270を備えてある。
【0049】
図9C,9Dに示すように、ロック手段270は、電動フォークリフト200の縦フレーム230の下端部の縦フレームの幅方向中央に台車前進方向と対向する方向に突設された係止部材271、例えばフックと、台車100の載置部111の前端に設けられた被係止部材272、例えば角型Cチャンネルとからなっている。
【0050】
図9Cに示すように、フック271は、縦フレーム230が下限位置に存在するときは、台車100の角型Cチャンネル272の開口と同じ高さに存在するように取付けられている。したがって、台車100の電動フォークリフト200の所定位置までの前進および後退が自由にできるが、電動昇降手段240により縦フレーム230が上昇され始めると、
図9Dに示すように、フック271が角型Cチャンネル272に係合するため、台車100は電動フォークリフト200から離間することなく、確実に保持される。したがって、その後は、被点検物Mを所定の高さ位置まで安全に上昇させることができる。なお、特許第4580098号公報には、被点検物を底辺部分のみで固定する方法が記載されているが、被点検物が縦長かつ重量物である場合は安全性の保持が困難である。
【0051】
台車100が電動昇降手段240により所定の高さ位置まで上昇されたときに作業者が上昇スイッチ253の操作を止めると、制御部250が電動昇降手段240による上昇を停止する。これにより、
図10に示すように、被点検物Mは作業者が起立姿勢で作業し易い高さ位置に保持される。したがって、作業者は、その被点検物Mに対する部品の組付、交換または点検等を容易に行うことができるとともに、腰痛等の発生が予防される。
【0052】
被点検物Mが電気部品を有するものである場合は、電動フォークリフト200に電動昇降手段用電源のほかに点検等用電源を備える必要がある。各別の電源を備えることも可能であるが、その場合は、設置スペース確保、電源コスト低減において問題がある。そこで、本発明の好ましい実施の形態においては、1つの電源部260に例えば100Vの電動昇降手段用電源261と、例えば24Vの点検等用電源262とを備えている。これにより、設置スペースの確保と電源コストの低減の両方の利点が得られている。
【0053】
本発明の他の実施の形態について説明する。
電動昇降手段240は、図示を省略するが、縦フレーム230に設けられたナットと、支柱220に取付けられ、ナットに螺合されたボールネジと、支柱220に設けられ、ボールネジを回転させるモータと、モータへの電源供給を制御する制御部250とで構成することもできる。
【0054】
台車100は、載置部111の上面に回転ストッパ付きターンテーブル(不図示)を回転可能に備えたものとすることができる。ターンテーブルは、一例として、180度回転させる度に回転ストッパによりその角度に停止することができる。したがって、この台車を用いる場合は、1つの作業位置において被点検物の正面側と背面側で部品交換および点検等を行うことができる。
【0055】
台車100のローラ130を支持する支持部材131を筒状に形成し、
図11に例示するように、倒立U字形の把持部材301の下端部付近にストッパ302を設けたハンドル300の下端部をその支持部材131に差し込んで固定することを可能にした場合は、台車100に被点検物Mを載せた後、ハンドル300を支持部材131に差し込んで固定し、そのハンドル300を把持して押すことにより、被点検物Mを載せた台車100を、手押し車同様に、より容易に床面上で移動させることができる。ハンドル300は被点検物Mが直接手で押しにくい場合などに好適である。
【0056】
ハンドル300の倒立U字形把持部材301は、軽量化のため、パイプを湾曲加工して作られることが好ましい。ストッパ302は、ハンドル300を把持部材131に挿入する際の位置決め作用をする。したがって、短いものでもよいが、図示の例のようにU字形部材301の両側の垂直部分の間を連続するものとした場合は、強度確保の機能を有する。しかし、支持部材131を上方に開口する有底筒状に形成した場合は、ハンドル300の下端部付近のストッパ302は不要である。しかし、パイプで作られたU字形の把持部材301の台車100に対する装着・取り外しの容易化のため、および、把持部材301の補強のためには、把持部材301の両側の垂直部分の高さ方向中間位置に水平で細い補強部材を連結することが望ましい。
【0057】
被点検物の高さ寸法は一定とは限らない。したがって、被点検物昇降装置Aを高さの異なる被点検物にも適用可能にするため、被点検物押え手段234の縦フレーム230に対する取付位置を周知の取付手段により可変にすることが望ましい。
【0058】
また、台車100のフォーク挿入部を形成する部材の形状、電動フォークリフト200のフォーク233の本数及び形状は、図示の例に限定されず、任意である。
【0059】
さらに、被点検物昇降装置は、上記の台車100を不可欠の要素とするものではない。電動フォークリフト200のみで構成し、被点検物を直接、フォーク233上に滑らせて載せてもよい。あるいは、台車100の代替品として、車輪を有しないパレットを用いてもよい。