(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テスタ側のプローブカード基板に支持されて被試験回路の電極パッドへ延出され、上記テスタ側と上記被試験回路の電極パッドとを電気的に接続するコンタクトプローブであって、
基端部に位置して上記テスタ側のプローブカード基板に取り付けられる取付部と、先端部に位置して上記被試験回路の電極パッドに接触される接触部と、これらの間に位置して上記接触部を弾性的に支持するアーム部とを備え、
上記接触部は、上記アーム部の先端部に一体的に取り付けられた台座部の下端部に設けられ、
上記アーム部は、上記台座部を支持して当該台座部の上下動を許容する一側アーム片と、上記台座部を支持して当該台座部の傾斜角度を、上記接触部のスクラブ量を小さくするように調整する他側アーム片とを備え、
上記他側アーム片は、先端部側から延びる先端側湾曲アーム片と、基端部側から延びる基端側湾曲アーム片と、上記先端側湾曲アーム片と上記基端側湾曲アーム片とが互いに接続して形成された環状の膨出部とから構成された
ことを特徴とするコンタクトプローブ。
【背景技術】
【0002】
昨今の技術開発によって半導体集積回路が高密度化、高集積化し、これに伴って、半導体集積回路の電極パッドも小さくなっている。これに対して、半導体集積回路の安定した通電試験を行うためには、電極パッドの大きさに合わせてコンタクトプローブの先端を小さくする必要がある。さらに、コンタクトプローブに荷重をかけた際(電極パッド側からの反力によってコンタクトプローブ先端部が持ち上げられるオーバードライブの際)の先端スクラブ量も少なくする必要がある。
【0003】
従来、回路の高密度化等により小さくなった電極パッドに対応して、スクラブ量を少なくした技術としては、例えば、特許文献1に記載のカンチレバー型のコンタクトプローブや、特許文献2に記載の垂直型のコンタクトプローブがある。
【0004】
垂直型のコンタクトプローブ(垂直型プローブ)の場合は、プローブカード側に接続されて支持されている支点部(フット部)と、回路側の電極パッドに接触する先端部とが、XY方向(水平方向)に離れていないため、スクラブはほとんど発生しない。しかし、垂直型プローブの場合は、プローブカード組立時において、プローブのプローブカードへの接続が難しく、また原理上各プローブ間のピッチに制約があるため、回路の高密度化等により小さくなった電極パッドに対応することが難しい。
【0005】
これに対して、上記カンチレバー型のコンタクトプローブの場合は、回路の高密度化等により小さくなった電極パッドに対応することができる。さらに、上記カンチレバー型のコンタクトプローブの場合は、フット部と先端部とがXY方向で離れているが、オーバードライブ(以下「OD」という)をかけた際に、このODに応じて上記電極パッドの大きさの範囲内でスクラブが発生するように設定されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るコンタクトプローブ及びプローブカードについて、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態のコンタクトプローブは、検査対象となる半導体デバイスの数および、各デバイスの電極パッドの数に応じてプローブカードに組み込まれる。即ち、複数のコンタクトプローブがプローブカードに取り付けられる。このプローブカードは、複数のコンタクトプローブを支持して、半導体デバイス等を試験するテスタに取り付けられる。プローブカードとしては、例えば特許文献1の
図1に示されるプローブカードがあるが、本実施形態に係るコンタクトプローブを取り付けることができるすべてのプローブカードに本発明を適用することができる。このため、プローブカード自体の説明は特許文献1等に委ね、以下ではこのようなプローブカードに取り付けられるコンタクトプローブを中心に説明する。
【0016】
本実施形態のコンタクトプローブは、
図1〜4に示すように、カンチレバー型のコンタクトプローブである。このコンタクトプローブ1は、
例えば金属材料のメッキによって形成される。このコンタクトプローブ1の寸法は、数mm程度である。コンタクトプローブ1は主に、基端部(
図1中の右上の端部)に位置する取付部2と、先端部(
図1中の左下の端部)に位置する接触部3と、これらの間に位置するアーム部4とを備えて構成されている。
【0017】
上記取付部2は、上記テスタ側のプローブカードに取り付けられる部分である。取付部2は、略四角板状に形成されている。この取付部2には支持棒部6が形成されている。支持棒部6は、取付部2から下方に延びた棒材で構成されている。上記アーム部4の基端部は、この支持棒部6に一体的に取り付けられている。
【0018】
上記接触部3は、被試験回路の電極パッド(図示せず)と接触する部分である。上記接触部3は、台座部7の先端部(下端部)に設けられている。この台座部7は、上記アーム部4の先端部に一体的に取り付けられている。台座部7は、上記アーム部4に支持されて、上下動する部材である。後述する理由により、ODをかけた際に、台座部7が上下動して、接触部3のスクラブ量を、電極パッドの寸法以内に収めるようになっている。
【0019】
上記アーム部4は、上記接触部3を弾性的に支持するための部材である。上記アーム部4は、上記金属材料等によって構成されることで、弾性的に変形するようになっている。上記アーム部4は、下側アーム片8と、上側アーム片9とから構成されている。
【0020】
下側アーム片8は、上記台座部7(接触部3)を支持して、ODに伴う台座部7(接触部3)の上下動を許容するための一側アーム片である。下側アーム片8は、直線状の棒材で構成されている。下側アーム片8は、取付部2側の支持棒部6と、接触部3側の台座部7とに一体的に取り付けられている。これにより、下側アーム片8は、ODをかけた際に、その先端部に固定された上記台座部7(接触部3)を、その基端部(取付部2側の支持棒部6との接続部)を回転中心にした円弧を描くように支持する。
【0021】
一方、上側アーム片9は、上記台座部7(接触部3)を支持して、接触部3のスクラブ量を小さくするように傾斜角度を調整するための他側アーム片である。上側アーム片9は、湾曲した棒材で構成されている。具体的には、上側アーム片9は、先端部(接触部3)側から延びる先端側湾曲アーム片11と、基端部(取付部2)側から延びる基端側湾曲アーム片12とから構成されている。先端側湾曲アーム片11は、上方へ突出した(下方に曲率中心が位置する)湾曲棒材で構成されている。基端側湾曲アーム片12は、下方へ突出した(上方に曲率中心が位置する)湾曲棒材で構成されている。この先端側湾曲アーム片11と基端側湾曲アーム片12とが、その先端位置と中間位置とで互いに一体的に接続して、上側アーム片9を構成している。
【0022】
ここで、先端側湾曲アーム片11のうち、基端側湾曲アーム片12の接触部側端部13との接続部分14を境に、基端部11a及び先端部11b(
図4参照)とする。そして、これらが以下に述べる比率になっている。また、基端側湾曲アーム片12のうち、先端側湾曲アーム片11の基端部側端部15との接続部分16を境に、基端部12c及び先端部12d(
図4参照)とする。そして、これらが以下に述べる比率になっている。
【0023】
さらに、先端側湾曲アーム片11の先端部11bと、基端側湾曲アーム片12の先端部12dとが互いに環状に接続して、膨出部18を構成している。この膨出部18は、略楕円状に形成されている。この環状の膨出部18の内部は空洞である。
【0024】
このような膨出部18を備えた上側アーム片9は、調整機能を備えている。この調整機能とは、具体的には、外力(接触部3が上記被試験回路の電極パッドに接触するときの反力)によって先端側湾曲アーム片11及び基端側湾曲アーム片12が撓んで(弾性変形して)、それらの曲率を変えることで、上側アーム片9が伸縮して、直接的に上記台座部7の傾斜角度を調整し、この台座部7の傾斜角度の調整によって間接的に接触部3の先端角度を調整するものである。ここで、先端角度とは、接触部3の先端(下端)の平坦面3a(
図8参照)と電極パッドの表面20(
図8参照)とのなす角度である。接触部3の平坦面3aが電極パッドの表面20に整合した状態(台座部7の傾斜角度が0度で、接触部3の平坦面3aと電極パッドの表面20との間に隙間がない
図8の状態)が先端角度0度である。そして、台座部7が傾斜して、接触部3の平坦面3aが電極パッドの表面20に対して傾斜すると、先端角度が大きくなる(
図9参照)。
【0025】
上記台座部7の傾斜角度の調整は、接触部3のずれ(電極パッド外へはみ出すずれ)を吸収するためである。接触部3の先端角度の調整は、この先端角度を小さくすることで、接触部3の平坦面3aと電極パッドの表面20とを極力広い面積で良好に接触させるためである。このとき、上記台座部7の傾斜角度の調整は、接触部3の先端角度の調整に優先して行われる。具体的には、まず、接触部3が電極パッド外へはみ出さないように台座部7の傾斜角度が調整され、次いで、接触部3が電極パッド外からはみ出さない範囲で、接触部3の先端角度が極力小さくなるように調整される。
【0026】
このとき、膨出部18は、外力により弾性変形して、細長い略楕円形の状態から、OD量に応じて円形に近づく方向へ膨らむようになっている。これにより、台座部7の傾斜角度(接触部3の先端角度)を矯正して、接触部3のスクラブ量を小さくするように(少なくとも電極パッドの寸法以内におさめるように)調整する。即ち、垂直型プローブと同等のロッキングモーション量になるように、台座部7の傾きを膨出部18で矯正するようになっている。
【0027】
[解析例]
次に、上記構成の先端側湾曲アーム片11の基端部11a及び先端部11b並びに基端側湾曲アーム片12の基端部12c及び先端部12dの比率(11a:11b、12c:12d)を変えて、接触部3のスクラブ量を解析した。この解析にはFEM解析法を用いた。
【0028】
ここでは、11a:11b=3:7、12c:12d=3:7の比率のアームを、実際に試作して評価を行うと共に、これを適宜変更して解析を実施した。即ち、12c:12d=3:7を固定し、11a:11bを変更して解析を実施した。また、11a:11b=3:7を固定し、12c:12dを変更して解析を実施した。この結果、以下の表1のようになった。
【表1】
【0029】
なお、上記表1において、一方を3:7で固定した場合の他方の比率(11a:11b、12c:12d)を1:9〜6:4までとしたのは、これらの比率よりも大きい場合(7:3、8:2、9:1の場合)、膨出部18を形成できない形状となるためである。
【0030】
これらの組み合わせで解析を行った結果を
図5,
図6のグラフ1およびグラフ2にそれぞれ示す。
図5に示すグラフ1は、従来品及び上記表1の1〜6の比率のコンタクトプローブ1の結果を示す。
図6に示すグラフ2は、従来品及び上記表1の7〜12の比率のコンタクトプローブ1の結果を示す。
【0031】
図5のグラフ1では、従来品が、OD量の増加にほぼ比例してスクラブ量がほぼ線形的に増加しているのに対して、上記表1の1〜6の比率のコンタクトプローブ1では、OD量の増加にかかわらず、スクラブ量の変化は小さかった。一方、
図6のグラフ2では、上記表1の12の比率(a:b=3:7、c:d=6:4)のコンタクトプローブ1のとき、従来品と同様に、OD量にほぼ比例してスクラブ量がほぼ線形的に増加した。他の比率のコンタクトプローブ1は、OD量の増加にかかわらず、スクラブ量の変化は小さかった。即ち、上記表1の1〜11の比率のコンタクトプローブ1は、OD量30μm〜180μm程度の範囲で、スクラブ量の変化がほとんどなかった。これは、OD量を30μm〜180μmの幅で変えても、スクラブ量は変わらずに安定していることを示している。
【0032】
また、OD量と接触部3の先端角度との関係を
図7のグラフに示す。このグラフから分かるように、従来品も本発明品(図示の例では11a:11b=3:7、12c:12d=3:7)も共に、OD量の増加に伴って、接触部3の先端角度が大きくなっているが、この先端角度の変化量は、本発明品が、従来品に比べて小さくなっている。即ち、ロッキングモーションが小さくなっていることを示している。例えば、OD量100μmでは、本発明品の先端角度の変化量は、従来品の25%程度になっている。この先端角度の違いは、上記比率の上側アーム片9の調整機能によるものである。
【0033】
仮に、アーム部4が通常の平行リンク機構で構成されている場合は、台座部7は、円弧を描きながら平行移動することとなる。即ち、台座部7は、その傾斜角度を変えることなく、アーム部4と支持棒部6との接合部を回転中心とし、アーム部4の全長を半径とする円弧を描きながら平行移動する。この結果、接触部3が電極パッド外にはみ出してしまう。
【0034】
しかし、上記アーム部4の上側アーム片9は、膨出部18を備えた特殊な形状を有して伸縮し、
図7のグラフのように、接触部3の先端角度をOD量に合わせて、従来よりも小さい角度で傾斜させる。この角度は、接触部3の上記電極パッド外へのはみ出しを解消する角度である。即ち、上記台座部7の平行移動(円弧を描く平行移動)による、接触部3のずれ(電極パッド外へはみ出すずれ)を吸収して、
図5及び
図6のように、接触部3のスクラブ量がほとんど変わらないように調整するための角度である。
【0035】
これにより、台座部7は、アーム部4の下側アーム片8の全長を半径とする円弧を描きながら平行移動する際に、上側アーム片9が撓み、膨出部18が変形して、設定角度だけ傾いて上記平行移動によるずれを吸収して、接触部3のスクラブ量がほとんど変わらないようにしている。
【0036】
このため、11a:11bが1:9〜6:4の範囲、12c:12dが1:9〜5:5の範囲にあるものを、本実施形態の上側アーム片9の最適な構成とする。
【0037】
[効果]
プローブカードの歪み等により各コンタクトプローブ1にかかる実効OD量にばらつきが生じても、各コンタクトプローブ1でのスクラブ量を一定範囲内に収めることができるようになる。即ち、OD量の違いにかかわらず、スクラブ量が略一定でほとんど変化しないため、複数のコンタクトプローブ1間に高さのばらつきがあったり、プローブカードに歪みがあったりして、各接触部3の間に高さのばらつきがあっても、各接触部3のスクラブ量にはほとんど違いがない。
【0038】
この結果、複数のコンタクトプローブ1間に高さのばらつき等があった場合、それを調整しなくても、均一なスクラブマークを得ることができる。これにより、各接触部3を各電極パッドに正確にコンタクトさせることができるため、検査精度が向上すると共にテスタに対する信頼性が向上する。
【0039】
さらに、均一なスクラブマークを得ることができると共に、ロッキングモーションも小さいため、各接触部3の先端クリーニング時の先端摩耗量が小さくなり、各接触部3の寿命を延ばすことができる。
【0040】
また、
図7のグラフのように、各接触部3のロッキングモーションが小さい点は垂直型プローブと近似するため、垂直型プローブに代えて本実施形態のコンタクトプローブ1を用いることができる。即ち、上記各接触部3の先端形状及びスクラブ痕を、上記垂直型プローブの先端形状及びスクラブ痕と同一にすることで、これまで垂直型プローブを使用して検査を行っていた被検査物(例えば、ハンダバンプ等)にも本実施形態のコンタクトプローブ1を用いることができる。
【0041】
この結果、垂直型プローブに代えて本実施形態のコンタクトプローブ1を用いることで、狭ピッチに配置することが可能となるため、垂直型プローブでは困難であった、狭ピッチの電極パッドへのコンタクト測定検査が可能となる。
【0042】
また、電極パッドに対する接触部3の先端寸法は、以下の表2のようになっている。
【表2】
【0043】
ここで、電極パッドに対する接触部3の先端占有率は、先端大きさ÷電極パッド面積で計算する。また、電極パッドに対するスクラブマーク占有率は、スクラブマーク大きさ÷電極パッド面積で計算する。
【0044】
表2のように、電極パッド寸法は、年々小さくなってきており、今後もその傾向が続くと予想される。これに対して従来は、電極パッド寸法に応じて先端大きさを小さくしてきたが、先端強度もサイズに応じて減少するため、現状以上に小さくすることは難しい。このため、電極パッド寸法が小さくなっていけば、電極パッドに対する接触部3の先端占有率は、大きくなっていく一方である。
【0045】
また、電極パッドに対するスクラブマーク占有率は、パッドのエッジマージンを考慮すると、5%以下が望ましいが、ロードマップ上では2013年から6%を超える。
【0046】
これに対して、本発明品では、先端の大きさを変更せずに、電極パッドに対するスクラブマーク占有率を減少させることができ、対応できる電極パッド寸法も最小で27×37μm
2まで小さくすることが可能となる。
【0047】
これにより、本発明のコンタクトプローブ1は、電極パッドの更なる小型化に対応することができるようになる。
【0048】
[変形例]
上記実施形態では、膨出部18をアーム部4の上側アーム片9に設けたが、膨出部18を下側アーム片8に設ける場合もある。上記実施形態では、アーム部4は水平に配設されているため、オーバードライブがかかると、先端の台座部7は上方の基端側(
図1中の上方の右側)へ円弧を描くように移動する。しかし、アーム部4が水平よりも下方へ配置されている場合は、アーム部4が水平になるまでは、上記と逆に、先端の台座部7は上方の先端側(
図1中の上方の左側)へ円弧を描くように移動する。この場合は、膨出部18をアーム部4の下側アーム片8に設けて、台座部7を上記実施形態の場合と逆の方向に傾斜するように制御する。
【0049】
これによっても上記実施形態と同様の作用、効果を奏することができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することが可能である。また、上記実施形態や変形例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。