(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(D)有機溶剤が、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトンおよびイソプロピルアルコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
前記非イオン性界面活性剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのエステル化誘導体、ポリプロピレングリコールおよびポリプロピレングリコールのエステル化誘導体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
(A)ポリアミド樹脂100質量部に対し、(B)メタリック着色顔料の含有量が0.1〜20質量部、(C)液状添加剤の含有量が0.01〜2質量部である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリアミド樹脂組成物からなる成形品。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0012】
≪ポリアミド樹脂組成物≫
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、
(A)ポリアミド樹脂と、
(B)メタリック着色顔料と、
(C)ミネラルオイル、流動パラフィンおよび非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の液状添加剤と、
(D)有機溶剤と、を含むポリアミド樹脂組成物であって、
該ポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量が500ppm以下である。
【0013】
<(A)ポリアミド樹脂>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物を構成する(A)ポリアミド樹脂(以下「ポリアミド樹脂(A)」または「(A)成分」と記載する場合もある。)は、特に制限はなく、従来公知のポリアミドを使用することができる。
【0014】
(A)ポリアミド樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ε−カプロラクタム、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、2−、メチルペンタメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタン等のポリアミド形成性モノマーを適宜組み合わせて得られるホモポリマー単独、共重合体単独、ホモポリマー同士の混合物、共重合体同士の混合物、共重合体とホモポリマーとの混合物等を用いることができる。
【0015】
(A)ポリアミド樹脂の具体例としては、以下の例に限定されるものではないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD6、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸とを重合してなるポリアミド(ポリアミド6I)、イソフタル酸とビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンとを重合してなるポリアミド(ポリアミドPACMI)等のホモポリマー、アジピン酸とイソフタル酸とへキサメチレンジアミンとを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6I共重合体)、アジピン酸とテレフタル酸とへキサメチレンジアミンとを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6T共重合体)、アジピン酸とシクロヘキ酸とへキサメチレンジアミンとを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6C共重合体)、イソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとを重合してなるポリアミド(ポリアミド6I/6T共重合体)、アジピン酸とイソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとを重合してなるポリアミド(ポリアミド66/6I/6T共重合体)、テレフタル酸と2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンとを重合してなるポリアミド(ポリアミドTMDT共重合体)、イソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンとを重合してなる共重合ポリアミド、およびイソフタル酸とテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとビス(3−メチル−4アミノシクロヘキシル)メタンとを重合してなる共重合ポリアミドとポリアミド6との混合物、ポリアミドMXD6とポリアミド66との混合物等が挙げられる。
【0016】
上述した各種ポリアミドの中でも、特に、ポリアミド66やポリアミド66/6C共重合体、ポリアミド66/6C/6I共重合体、ポリアミド66/6T共重合体、ポリアミド66/6T/6I共重合体等の半芳香族ポリアミドは、融点が高く、より耐熱性の必要な部品を得る場合の材料として好適である。
【0017】
また、ポリアミド66/6I共重合体や、ポリアミドMXD6等の半芳香族ポリアミドや、これらの半芳香族ポリアミドと他の脂肪族ポリアミドとの混合物は、その共重合比、混合比により結晶化温度を適宜制御することができるため、結晶化温度を低下させることにより金型転写性が良好なものとなる。このような結晶化温度を低下させた(A)成分を含むポリアミド樹脂組成物を用いて成形した成形品は外観に優れた成形品となる。
【0018】
また、ポリアミド66とポリアミド612やポリアミド610等のエチレン基の長いポリアミドとの混合物は、高温高湿度下での耐加水分解性に優れることから、高温多湿な環境で使用される部品を得る場合のポリアミド樹脂組成物の構成成分として好適である。
【0019】
上記ポリアミド66の混合物の中でも、成形性、高温度下での機械的特性の観点から、ポリアミド66成分を50質量%以上含有する混合物がより好ましく、70質量%以上含有する混合物がさらに好ましい。
【0020】
前記(A)ポリアミド樹脂は、従来公知の方法により重合できる。前記(A)ポリアミド樹脂の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、熱溶融法、ジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分とを用いた溶液法等が挙げられる。特に、熱溶融法が好ましい。重合形態としてはバッチ式でも連続式でもよい。重合装置も特に制限されるものではなく、公知の装置、例えば、連続型反応器、オートクレーブ型反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器がいずれも使用できる。
【0021】
ポリアミド樹脂(A)には、酸化防止剤として、銅化合物が添加されていてもよい。また、ポリアミド樹脂(A)には、銅化合物に加えてヨウ素化合物が添加されていることが好ましい。
【0022】
前記銅化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅等が挙げられる。その中でもヨウ化銅および酢酸銅が好ましく、特にヨウ化銅がより好ましい。
【0023】
ヨウ素化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化アンモニウム等が挙げられ、その中でもヨウ化カリウムが好ましい。
【0024】
これらの銅化合物、ヨウ素化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
ポリアミド樹脂(A)中の銅化合物の含有量は、銅に換算した濃度として、耐熱変色性の観点から、好ましくは40ppm以上200ppm以下とし、より好ましくは50ppm以上175ppm以下であり、さらに好ましくは60ppm以上150ppm以下である。
【0026】
銅化合物の含有量が40ppmを下回ると耐熱変色性が悪化し、銅化合物の含有量が200ppmを超えても耐熱変色性の改善効果は変化しない。
【0027】
また、銅化合物とヨウ素化合物とに含まれるヨウ素と銅とのモル比(ヨウ素/銅)は、ポリアミド樹脂(A)の溶融時の銅金属析出抑制の観点から、5<ヨウ素/銅≦30が好ましい。これにより、射出成形後の成形品からのヨウ素溶出を抑え、さらに、射出成形機スクリューの腐食発生を抑えることが可能である。
【0028】
より好ましい範囲は13≦ヨウ素/銅≦25であり、さらに好ましい範囲は15≦ヨウ素/銅≦22である。
【0029】
ポリアミド樹脂(A)中の銅の濃度は、以下の方法により定量できる。なお、以下の方法において用いた数値は具体例であり、以下に限定されるものではない。
【0030】
まず、ポリアミド樹脂(A)を0.5g秤量し濃硫酸を20mL加え、ヒーター上で湿式分解し冷却した後、過酸化水素5mLを加え、ヒーター上で加熱し、全量が2〜3mLになるまで濃縮する。
【0031】
得られた濃縮液を再び冷却し、純水で希釈して500mLとする。
【0032】
得られた水溶液から試料を精秤し、該試料について、測定装置としてThermoJarrellAsh製IRIS/IPを用いて、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析により波長でポリアミド樹脂(A)中の銅の濃度を定量する。
【0033】
具体的には、融合結合プラズマ(ICP)発光分析法、高周波誘導結合法により得られるアルゴプラズマ中に試料を噴霧導入し、高温の熱エネルギーにより励起された原子による発光スペクトル(原子発光スペクトル)の波長および強度を測定して、元素の同定や定量分析を行うことによりポリアミド樹脂(A)中の銅の濃度を定量できる。
【0034】
また、ポリアミド樹脂(A)中のヨウ素の濃度は、以下の方法により定量できる。試料を精秤し、吸収液、例えば亜硝酸塩溶液中に入れ、その後、酸素リッチなフラスコ中で燃焼分解し、さらに当該吸収液を定浴し、ダイオネクス製ICS−2000、カラム:IonPacAG18AS18、検出器:電気伝導度検出器を用い、イオンクロマトグラフ法にてポリアミド樹脂(A)中のヨウ素の濃度を定量する。
【0035】
ポリアミド樹脂(A)中のペレット水分率は、特に限定しないが、コンパウンド原料のポリアミド溶融時の分子量上昇を抑えるため、0.1質量%以上であることが好ましく、ポリアミド溶融時の加水分解を抑えるため、0.5質量%以下であることが好ましい。
【0036】
ペレット水分率はカールフィッシャー法水分計を用いて、JIS K7251に準じて求めることができる。
【0037】
<(B)メタリック着色顔料>
(B)メタリック着色顔料の材料としては特に制限されるものではないが、例えば、アルミニウム、アルミフレーク、着色アルミニウム、パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラスフレーク、スチール、銀、すず、ニッケル等が挙げられ、特に、アルミニウム、アルミフレークが好ましく、アルミフレークがより好ましい。
【0038】
(B)メタリック着色顔料は、入手しやすさ、コスト面、耐熱変色性の観点から、平均厚みを0.05〜0.4μmとすることが好ましい。
【0039】
厚みが0.05μm未満であると入手しにくく、かつ高価であり、0.4μmを上回るとポリアミド樹脂組成物の耐熱変色性が悪化する。
【0040】
これは、(B)メタリック着色顔料は、樹脂の熱変色を隠蔽する効果も有しているが、(B)メタリック着色顔料の厚みが大きくなり過ぎると、成形品の表面部分に存在する(B)メタリック着色顔料の数が減少し、これにより、当該(B)メタリック着色顔料の隠蔽効果が減少してしまい、外観上の熱変色性が悪化する傾向があるためである。
【0041】
(B)メタリック着色顔料の平均厚みは、0.05〜0.4μmが好ましく、0.08〜0.35mがより好ましい。
【0042】
また、(B)メタリック着色顔料の平均厚み(t)は、1g当たりの水面拡散面積:WCA(m
2/g)を用いて次式により算出できる。
【0044】
なお、水面拡散面積は、一定の予備処理、具体的には、メタリック着色顔料1gに、5質量%ステアリン酸のミネラルスピリット溶液を1〜2ml加え予備分散後、石油ベンジン50ml加え混合し、40〜45℃で2時間加温後、フィルターで吸引濾過し、パウダー化したのち、JIS−K−5906−1991に従って求めることができる。
【0045】
また、(B)メタリック着色顔料の好ましい形状は、本実施形態のポリアミド樹脂組成物のメタリック感や、見た目の高級感の観点から、平均粒径5〜40μmのコイン状である。
【0046】
平均粒径5μmを下回るとメタリック感が消失し、40μmを上回るとラメ調となり高級感が失われてしまう。
【0047】
(B)メタリック着色顔料の平均粒径は、セイシン企業株式会社製レーザーミクロンサイザーLMS−24を用いて測定することができる。
【0048】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、(B)メタリック着色顔料の含有量は、成形品の輝度の観点から、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量部、さらに好ましくは1〜5質量部である。
【0049】
前記(B)メタリック着色顔料は、平均表面粗さRaが20nm以下であることが好ましい。
【0050】
(B)メタリック着色顔料の平均表面粗さは、以下の方法により測定できる。
【0051】
(B)メタリック着色顔料の表面形態観察装置としては、原子間力顕微鏡、Topometrix製、TMX−2010を使用することができる。
【0052】
先ず、前処理として、測定用試料の(B)メタリック着色顔料を過剰のメタノール、またはクロロホルムで超音波洗浄し、その後、真空乾燥し、再度アセトンに分散、Siウェハー上に滴下し、自然乾燥を行う。
【0053】
次に、上記原子間力顕微鏡で測定を行うが、このとき、表面粗さの定量は、(B)メタリック着色顔料が他の(B)メタリック着色顔料と重なり合っていないものを選択し、5μm四方の視野につき表面粗さ曲線を300スキャンにより測定し、粗さ曲線の算出術平均粗さ(基準長さ5μm内での標高の絶対値の算術平均)を求める。
【0054】
通常、測定に用いる基準長さは、平均粒径によるが、本実施形態のポリアミド樹脂組成物に含有されている(B)メタリック着色顔料においては、5μmを選択することが好適である。
【0055】
(B)メタリック着色顔料の平均表面粗さRaは20nm以下が好ましく、より好ましくは15nm以下である。
【0056】
(B)メタリック着色顔料の平均粗さRaが20nm以下のとき、本実施形態のポリアミド樹脂組成物を用いて成形された成形品表面での正反射率、すなわち表面光沢度が大きくなり、極めて優れた輝度、メタリック感が得られる。
【0057】
(B)メタリック着色顔料の中には、アルミニウムのように消防法により危険物第2類の金属粉Aに指定されているものがある。特にドライアルミニウムは粉塵爆発の危険性があるが、後述の(C)液状添加剤または(D)有機溶剤によって濡らすことによりこの粉塵爆発の危険性を大幅に低減することができる。
【0058】
<(C)液状添加剤>
本実施形態に用いる(C)液状添加剤は、ミネラルオイル、流動パラフィンおよび非イオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0059】
ここでいう非イオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールのエステル化誘導体、ポリプロピレングリコール、およびポリプロピレングリコールのエステル化誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。(C)液状添加剤としては、流動パラフィンや、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコールが溶融混練時の耐熱安定性や入手の容易性から好ましい。
【0060】
(C)液状添加剤の性状については、1気圧かつ0℃以上100℃以下の条件で液状であることが好ましく、1気圧かつ5℃以上40℃以下の条件で液状であることがより好ましい。
【0061】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物において、液状添加剤(C)の含有量は、外観の観点から、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.01〜2質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.5質量部である。
【0062】
<(D)有機溶剤>
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量は500ppm以下である。
【0063】
例えば、アルミを含むポリアミド樹脂組成物において、有機溶剤は、通常、アルミペーストの原料であるアルミ粉を湿潤させて粉塵爆発の危険性を大幅に低減させるために使用される。しかしながら、ポリアミド樹脂組成物中に有機溶剤が一定量以上残留していると成形時の滞留安定性が悪いといった問題点や、成形品としたときにシルバーストリークのような外観不良が見られることがある。また使用者がポリアミド樹脂組成物から揮発した有機溶剤を吸引すると健康被害を引き起こすことが考えられる。
【0064】
以上の観点から本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上述したとおり、(C)液状添加剤を用いることにより、ポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量を低減させ、上述の問題を改善している。
【0065】
本実施形態のポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量は、500ppm以下であり、300ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下である。ポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量の下限は、小さい方が好ましいが、例えば、0.1ppm以上である。なお、本実施形態において、ポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0066】
本実施形態に用いる(D)有機溶剤としては、一般的に工業的に使用される有機溶剤であれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、スチレン、クロルベンゼン、オルト−クロルベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロルエタン、1,1,1−トリクロルエタン、1,2−ジクロルエチレン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ノルマループロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルーブチル、酢酸イソブチル、酢酸ノルマルーペンチル、酢酸イソペンチル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、メチルーノルマルーブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコールーモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノーノルマルーブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘキサノール、ノルマルヘキサン、コールタールナフサ、石油エーテル、ソルベントナフサ、石油ベンジン、テレビン油、ミネラルスピリット、クレゾール等が挙げられる。中でも(D)有機溶剤としては、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、キシレン、トルエン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコールであることが好ましい。これらの(D)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0067】
〔添加剤〕
本実施形態のポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で慣用的に用いられる添加剤を加えることができる。当該添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、すず酸亜鉛、ヒドロキシすず酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、シアヌル酸メラミン、サクシノグアナミン、ポリリン酸メラミン、硫酸メラミン、フタル酸メラミン、リン酸アルミニウム等の難燃剤;チタンホワイト、カーボンブラック等の顔料や着色剤;ヒンダードフェノールやヒンダードアミンに代表される熱安定剤;高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等の滑剤;種々の可塑剤;帯電防止剤等が挙げられる。
【0068】
≪ポリアミド樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分を含む原料成分を溶融混練することにより製造することができる。当該溶融混練を行う装置としては、一般に実用されている混練機が適用できる。例えば、一軸または多軸混練押出機、バンバリーミキサー、ロール等が用いられる。当該溶融混練の方法は、全原料成分を同時に混練する方法、あらかじめ原料成分を予備混練したブレンド物を用いて混練する方法、更に押出し機の途中から逐次、各原料成分をフィードし、混練する方法のいずれでもよい。当該溶融混練の温度は、(A)〜(D)成分のいずれかのうちで最も高い融点あるいは軟化点より1〜100℃高い温度が好ましく、10〜60℃高い温度がより好ましく、20〜50℃高い温度がさらに好ましい。すなわち、本実施形態では、製造時にすべての樹脂を溶融し混合することが好ましい。融点または軟化点はJIS K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求めることができる。ポリアミド樹脂組成物の引張伸度および生産性の観点から、当該溶融混練の温度は、前記温度範囲が好ましい。
【0069】
≪成形品≫
本実施形態のポリアミド樹脂成形品は、上述のポリアミド樹脂組成物を成形して得られる。
【0070】
当該成形方法としては、特に限定されないが、例えばプレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形、及び溶融紡糸など、一般に知られているプラスチック成形方法が挙げられる。
【0071】
本実施形態のポリアミド樹脂成形品は、上述のポリアミド樹脂組成物から得られるので、特に表面外観に優れる。したがって、本実施形態のポリアミド樹脂成形品は、自動車部品、電気及び電子部品、家電部品、OA機器部品、携帯機器部品、産業機器部品、建材、日用品及び家庭品などの各種部品として好適に用いることができる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において行った物性評価は以下のように行った。
【0073】
(1)押出特性
実施例および比較例においてポリアミド樹脂組成物を、押出機を用いて製造した際に、(a)押出機周辺での有機溶剤臭による環境悪化、(b)押出機のダイス部での異物発生、の2点について評価を行った。評価のランクは以下に記載の通りとし、数字が少ないほど良好であった。
【0074】
(a)環境悪化
1:溶剤臭はほとんどなく、問題なく作業できた。
2:溶剤臭はあるが、問題なく作業できた。
3:溶剤臭があり、作業に支障があった。
【0075】
(b)異物発生
1:異物発生はほとんどなく、連続して生産可能であった。
2:異物が発生し、ストランドのロープ切れが見られた。
3:異物が多く発生し、ストランドのロープ切れが多く発生した。
【0076】
(2)ポリアミド樹脂組成物中の(D)有機溶剤の含有量
実施例および比較例において得られたポリアミド樹脂組成物のペレットを凍結粉砕し、粉砕物を得た。ねじ付三角フラスコに前記粉砕物1gを入れて、10mlのクロロホルムで熱抽出(50度、1時間)を行い、試料溶液を作成した。この試料溶液をガスクロマトグラフで分析を行い、外部標準法にて有機溶剤の定量を行った。
【0077】
(3)成形時の滞留安定性
射出成形機(住友重工業株式会社製、SE50D)を用いて、シリンダー設定温度290℃、金型温度80℃、スクリュー回転数250rpm、射出時間10秒、冷却時間15秒、背圧20%の条件で、実施例および比較例において得られたポリアミド樹脂組成物を射出成形し、幅60mm長さ90mm厚さ1mmの平板を得た。連続成形の際に5分間中断時間を設け、その間にノズルから噴出がない場合を○、噴出があった場合を×として、成形時の滞留安定性を評価した。
【0078】
(4)外観特性
上記(3)で得られた平板の表面に、シルバーストリークが発生しているか否かにより外観特性を評価した。シルバーストリークが発生していない場合を○、発生した場合を×とした。
【0079】
実施例および比較例で用いた各成分は、以下のものを用いた。
【0080】
・ポリアミド樹脂
(A1)ポリアミド66(旭化成ケミカルズ株式会社製レオナ1300)
【0081】
・アルミペースト
アルミペースト1:(B1)平均粒径20μmのアルミフレーク100質量部、(C1)流動パラフィン10質量部、(D1)ミネラルスピリット1質量部からなる。
アルミペースト2:(B1)平均粒径20μmのアルミフレーク100質量部、(C2)ポリエチレングリコール10質量部、(D1)ミネラルスピリット1質量部からなる。
アルミペースト3:(B1)平均粒径20μmのアルミフレーク100質量部、(D1)ミネラルスピリット10質量部からなる。
【0082】
なお、アルミフレークの平均粒径は、セイシン企業株式会社製レーザーミクロンサイザーLMS−24を用いて測定した。また、上記ポリエチレングリコールは、株式会社ADEKA製 アデカPEG400を使用した。
【0083】
[実施例1]
(A1)ポリアミド66を100質量部と、アルミペースト1を11.1質量部と、を混合し、混合物を得た。単軸押出機(田辺プラスチック機械製VS65−36)を用いて、290℃、スクリュー回転数100rpm、吐出量100kg/h、真空ベントを用いない条件下で、前記混合物の溶融混練を行い、ポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0084】
[実施例2]
アルミペースト1をアルミペースト2に変更した以外は、実施例1と同様にして溶融混練を行い、ポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0085】
[比較例1]
原料として、(A1)ポリアミド66を100質量部と、アルミペースト3を11質量部と、を用いた以外は、実施例1と同様にして溶融混練を行い、ポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0086】
[実施例3]
真空ベントを−800hpaの条件で用いた以外は、実施例1と同様にして溶融混練を行い、ポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0087】
[比較例2]
原料として、(A1)ポリアミド66を100質量部と、アルミペースト3を11質量部と、を用いた以外は、実施例3と同様にして溶融混練を行い、ポリアミド樹脂組成物を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の評価結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例1〜3で得られたポリアミド樹脂組成物は、押出特性、成形時の滞留安定性および外観特性のいずれもが優れていた。また、実施例1〜3で得られたポリアミド樹脂組成物は、有機溶剤の含有量も少なく良好であった。一方、比較例1および2で得られたポリアミド樹脂組成物は、押出特性、滞留安定性および外観特性の少なくともいずれかが劣っていた。さらに比較例2で得られたポリアミド樹脂組成物は、有機溶剤の含有量は少ないものの押出特性が悪いことが明らかとなった。以上より、本実施形態のポリアミド樹脂組成物は、押出特性、滞留安定性および外観特性に優れ、有機溶剤の含有量が低減されていることが確認された。