【実施例】
【0025】
つぎに本発明の実施例によるゴムローラーのゴム分離装置1およびそのゴム分離方法を
図1ないし
図7にもとづき説明する。
図1は、ゴムローラーのゴム分離装置1の一部断面平面図であって、ゴムローラー2は、断面円形状の金属シャフト3と、この金属シャフト3の周囲に円筒状かつ一体的に取り付けたゴム材4と、を有する。
ゴムローラー2のゴム分離装置1は、ゴムローラー2におけるゴム材4を金属シャフト3から分離するものであって、ベース台5と、ベース台5に固定した駆動シリンダー6と、駆動シリンダー6の側面部に位置してベース台5に固定したピン取付け台7に取り付けた拡張収縮用ピン8と、第1の可動台9と、第2の可動台10と、円周方向刃11と、径方向刃12と、を有する。
【0026】
駆動シリンダー6は、任意のタイプのシリンダーたとえばエアシリンダーあるいは油圧シリンダーであって、とくにエアシリンダーを採用すれば、コンプレッサー(図示せず)などにより任意の空気圧を確保することができる場所においては電源のない場合であっても、配管への接続のみでこれを容易に設置可能である。
駆動シリンダー6のシリンダー可動部13は、第1の可動部9を有し、ハンドバルブ14の操作によりゴムローラー2の軸方向に第1の可動部9とともにこれを往復動可能としている。
たとえば、ハンドバルブ14のバルブ軸15のまわりにハンドバルブ14を
図1中、時計方向(図中、実線の矢印)に回動操作すれば、シリンダー可動部13は、
図1中、右から左方向に移動(往動)可能である(図中、実線の矢印)。
また、ハンドバルブ14を
図1中、反時計方向(図中、点線の矢印)に回動操作すれば、シリンダー可動部13は、
図1中、左から右方向に移動(復動)可能である(図中、点線の矢印)。
かくして、駆動シリンダー6のシリンダー可動部13は、第1の可動台9を駆動してこれを第2の可動台10方向に往復動可能である。
【0027】
拡張収縮用ピン8は、駆動シリンダー6のシリンダー可動部13とは異なる位置、すなわち、駆動シリンダー6の側面側に位置してベース台5に固定している前記ピン取付け台7に、シリンダー可動部13に対して相対的に固定した状態に配置しているもので、その軸方向を駆動シリンダー6ないしゴムローラー2の軸方向に沿わせて配置している。
【0028】
図2は、ゴムローラーのゴム分離装置1における第1の可動台9の右側面図、
図3は、ゴムローラーのゴム分離装置1における第2の可動台10の左側面図である。
上述のように、第1の可動台9は、駆動シリンダー6のシリンダー可動部13にこれを取り付けており、その先端部に円周方向刃11および径方向刃12を着脱可能に取り付けているとともに、円周方向刃11が拡張収縮用ピン8と係脱するように往復動する。
【0029】
第2の可動台10は、駆動シリンダー6に間を開けて駆動シリンダー6と平行にベース台5に形成したスライド溝16(
図1)に沿ってベース台5の表面上を第1の可動台9に対して往復動可能であって、操作レバー17をそのレバー軸18のまわりに回動操作することにより、スライド溝16に固定および可動可能に切り替えて、ベース台5上の任意の調節位置にセットすることができる。
たとえば、操作レバー17をレバー軸18のまわりに反時計方向に回動操作してその第1の回動位置(
図1中、実線)にセットして第2の可動台10をスライド溝16(駆動シリンダー6)に沿って移動可能とし、時計方向に回動操作してその第2の回動位置(
図1中、仮想線)にセットして第2の可動台10を第1の可動台9(シリンダー可動部13)に対して固定可能とし、第1の可動台9と第2の可動台10との間にセットするゴムローラー2(金属シャフト3)の長さに応じてその位置を調整可能である。
【0030】
さらに述べると、第1の可動台9は、駆動シリンダー6のシリンダー可動部13にこれを取り付けているとともに、金属シャフト3の一端部3Aを着脱可能である。
また、第2の可動台10は、第1の可動台9に対しゴムローラー2の軸方向に往復動して、金属シャフト3の長さに応じてその位置を調節可能であるとともに金属シャフト3の他端部3Bを着脱可能である。
【0031】
図4は、拡張収縮用ピン8、円周方向刃11および径方向刃12の側断面図、
図5は、円周方向刃11および径方向刃12の第2の可動台10側から見た軸方向側面図である。
とくに
図4に示すように、拡張収縮用ピン8は、前記ピン取付け台7に固定する基端固定部19と、ピン本体20と、を有し、拡張収縮用ピン8(ピン本体20)は、第1の可動台9が第2の可動台10に向かう方向において、ピン本体20の先端部20Aをテーパー形状としている。
また、ピン本体20にはシャフト固定穴21を第2の可動台10方向に向けて開放形成してあり、このシャフト固定穴21に金属シャフト3の一端部3Aを挿入固定可能としている。
【0032】
円周方向刃11は、これを第1の可動台9に取り付けるとともに、第1の可動台9の駆動にともなって、その内周面が拡張収縮用ピン8(ピン本体20のテーパー状の先端部20A)に接離することにより、その円周方向の大きさを拡張収縮するように変更可能であってその収縮形態において金属シャフト3の外周に密着可能である。
すなわち、円周方向刃11は、拡張収縮用ピン8の外周に位置可能な円筒状の基底部22と、この基底部22の先端方向において円周方向に分割している複数枚(図示の例では、四枚)の単位円周刃23と、を有する。
図5に図示した例では、単位円周刃23は、互いに円周方向に等角度間隔に四分割した状態で、それぞれ隣り合う境界部24で、円周方向刃11自体の金属材料の固有の弾性により開放および閉鎖状態に移行可能である。もちろん、任意の角度間隔で、かつ任意の数の単位円周刃23に分割しておくこともできる。
【0033】
すなわち、円周方向刃11は、拡張収縮用ピン8と係合する係合状態となる第1の位置では、単位円周刃23が開放状態となって金属シャフト3の直径より大きく拡張し、円周方向刃11は、拡張収縮用ピン8をその内方部に嵌合可能である。また、拡張収縮用ピン8から離脱する離脱状態となる第2の位置では、単位円周刃23が閉鎖状態となって金属シャフト3の直径とほぼ同じ径(厳密には、金属シャフト3の外周部に摺接することにより、外周側のゴム材4を金属シャフト3から分離してゆくことができるだけの径)に収縮する。
【0034】
この単位円周刃23の外周においてその中央部に、ゴムローラー2(金属シャフト3)の径方向に延びる径方向刃12を位置させている。
すなわち径方向刃12は、これを第1の可動台9に取り付けるとともに、金属シャフト3の径方向においてその外方に、少なくともゴム材の厚さ方向を切り裂くだけの長さをもって放射状(図示の例では、互いに直角な四枚による放射状)に、かつ円周方向刃11の基底部22方向に迫り上がるようにやや傾斜した状態で延びている。
径方向刃12は、円周方向刃11(単位円周刃23)と一体的にこれを形成しているとともに、その先端部の刃先は円周方向刃11の先端部の刃先と一致しており、ゴムローラー2の軸方向においてゴム材4の側端面に対して円周方向刃11と同じ位置に位置する。
かくして、円周方向刃11および径方向刃12は、ゴムローラー2におけるゴム材4の側端面側からこれに対向することができるもので、この対向姿勢においてゴム材4を切断分離可能としている。
具体的には、円周方向刃11が金属シャフト3の表面からゴム材4を剥離するように切り取るとともに、径方向刃12がゴム材4を金属シャフト3の軸方向に四本の筋状部材として分けながら切り裂いてゆくもので、円周方向刃11によりゴム材4を金属シャフト3の外表面から押しのけてゆく応力を開放し、両者による切断作用が協働して金属シャフト3からのゴム材4の円滑な切断分離を実現する。
なお、円周方向刃11および径方向刃12の材質としては、全体的に靱性があるとともに、その先端部(刃先)のみが所定の切れ味ないし剛性があるものが好ましい。
【0035】
また、
図2に示すように、第1の可動台9の先端部に形成した二股状のヨーク部25に円周方向刃11の基底部22を差し込み、取付けボルト26によってヨーク部25を緊締解除可能としてあることにより、円周方向刃11を第1の可動台9に着脱可能としている。
拡張収縮用ピン8もピン取付け台7に着脱可能とすることができるので、必要であれば、拡張収縮用ピン8もあわせて、ピン取付け台7および第1の可動台9における拡張収縮用ピン8、円周方向刃11および径方向刃12を金属シャフト3の直径に合わせたものに交換することができる。
【0036】
さらに、
図1および
図3に示すように、第2の可動台10の頂部に取付けボルト27により着脱可能に取り付ける軸取付け部材28(
図1における仮想線による斜視図を参照)のシャフト受け部29の直径を変えたものを交換することにより、ゴムローラー2のとくに金属シャフト3の直径が異なる場合に、第2の可動台10における軸取付部材28をその直径に合わせたものに交換することができる。
ゴムローラー2のサイズ、たとえば、それぞれのゴムローラー2の長さが異なる場合には、第1の可動台9に対する第2の可動台10の相対的位置を調整することにより、ゴムローラー2を第1の可動台9および第2の可動台10の間にセット可能である。
【0037】
なお本発明においては、径方向刃12は、第1の可動台9に取り付けるに当たって、円周方向刃11と別体的にこれを形成することもできる。
【0038】
さらに
図6は、円周方向刃11および径方向刃12の互いの相対的位置関係の変形例を示す要部側断面図であって、図示のように、径方向刃12は、ゴムローラー2の軸方向においてゴム材4に対して円周方向刃11より、図中の刃先間隔D分だけわずかに近く位置するようにゴム材4の方向にこれを突出させることにより、円周方向刃11に先立って径方向刃12がまずゴム材4を径方向に切り開き、円周方向刃11によるゴム材4の切断分離作用を容易化することもできる。
【0039】
こうした構成のゴムローラーのゴム分離装置1において、ゴムローラー2の金属シャフト3からゴム材4を分離して取り除く操作について、とくに
図1および
図7にもとづき説明する。
図7は、本発明によるゴムローラーのゴム分離方法の手順を示すフローチャート図であって、ステップS1においてハンドバルブ14(
図1)を反時計方向に回動操作し、駆動シリンダー6におけるシリンダー可動部13の第1の可動台9をその左端位置に初期セットする。
この初期セットにより、第1の可動台9における円周方向刃11の基底部22(
図4)に拡張収縮用ピン8のピン本体20が嵌入し、ピン本体20のテーパー状の先端部20Aが円周方向刃11のそれぞれの単位円周刃23を押しのける結果、その境界部24が開いて単位円周刃23が解放状態となり、円周方向刃11がゴムローラー2の金属シャフト3の一端部3Aを受け入れ可能な状態となる。
【0040】
すなわち、ステップS2において、金属シャフト3の一端部3Aを円周方向刃11を介して拡張収縮用ピン8のシャフト固定穴21に挿入セットして取り付ける。
ステップS3において、操作レバー17(
図1)を
図1中、実線で示す状態に回動操作して、ベース台5のスライド溝16で第2の可動台10を移動可能状態として、第2の可動台10を金属シャフト3の他端部3B方向(
図1中、右方向)に移動し、金属シャフト3の他端部3Bを軸取付け部材28のシャフト受け部29に挿入し、この挿入位置で操作レバー17を
図1中、仮想線で示す状態に回動操作して、この固定位置に取り付け固定する。
【0041】
ついで、ステップS4において、ハンドバルブ14を時計方向に回動操作すると、駆動シリンダー6のシリンダー可動部13が
図1中、左方向すなわち、ゴムローラー2の軸方向に沿って第2の可動台10方向に移動を開始し(
図1中、実線の矢印)、駆動シリンダー6におけるシリンダー可動部13の第2の可動台10方向への駆動にともなって、拡張収縮用ピン8の先端部20Aから離脱した円周方向刃11(四枚の単位円周刃23)を収縮させることにより金属シャフト3の外周に密着させる。
さらに、ステップS5において、第1の可動台9の第2の可動台10方向への移動にともなって、円周方向刃11および径方向刃12により、ゴム材4を金属シャフト3から切断分離する。
【0042】
この円周方向刃11および径方向刃12によるゴム材4の切断は、金属シャフト3の円周方向における円周方向刃11によるゴム材4の分離ないしは切断、および金属シャフト3の径方向における径方向刃12によるゴム材4の切裂きないしは切断を同時に進行して行うことになるので、駆動シリンダー6におけるシリンダー可動部13のゴムローラー2の軸方向に沿わせた駆動にともなって、円周方向刃11および径方向刃12により、ゴム材4を金属シャフト3から機械的かつ確実に分離可能である。
【0043】
第1の可動台9が第2の可動台10まで到達し、ゴムローラー2のゴム材4をその長さすべてについて切断分離が終了すると、ステップS6において円周方向刃11および径方向刃12を有する第1の可動台9は、第2の可動台10における軸取付け部材28の当接側面28A(第1の可動台9側の側面)に当接して停止する。
したがって、軸取付け部材28は円周方向刃11および径方向刃12の金属材料とは異なる、たとえば硬質ウレタンなどの硬質合成樹脂によりこれを構成しておくことが望ましい。
もちろん、ゴムローラー2(金属シャフト3)の長さに応じて、第1の可動台9の設定位置までの移動を検出するリミットスイッチ(図示せず)による制御、あるいはあらかじめ上記設定位置を設定するなどのその他の電気的な制御も可能である。
【0044】
ステップS7において、ハンドバルブ14を反時計方向に回動操作することにより、駆動シリンダー6を駆動して第1の可動台9を元位置(
図1中、右端位置)に復帰移動させるとともに、操作レバー17を回動操作して第2の可動台10を第1の可動台9に対して
図1中、左方向位置に移動復帰させることにより、ゴムローラー2の金属シャフト3を第1の可動台9および第2の可動台10から取り外して、ゴム材4の分離作業を終了する。
【0045】
かくして、ハンドバルブ14による駆動シリンダー6の駆動操作、および操作レバー17による第2の可動台10の調節セットのみの操作で、ゴムローラー2のゴム材4を金属シャフト3から機械的かつ確実に切断分離することができる。
【0046】
なお、
図7のフローチャート図において、ステップS2およびステップS3の順序は、どちらが先でもかまわない。
すなわち、先に金属シャフト3の他端部3Bをシャフト受け部29に挿入し、ついで、金属シャフト3の一端部3Aをシャフト固定穴21に挿入するように操作することもできる。
【0047】
上述のように、金属シャフト3からのゴム材4の剥離ないし分離作業を、従来の手作業とは異なり、円周方向刃11および径方向刃12を用いて、短時間に安全かつ迅速に処理可能であり、プラテンローラーその他のゴムローラー2の製造工程内において不具合品のリサイクル処理を迅速に実施することができて、金属シャフト3に無駄が生ずることがない。
さらに、駆動シリンダー6としてエアシリンダーを採用すれば、電源を使用することなく、簡易な分離処理を実行可能である。