特許第5968188号(P5968188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968188
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ステータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20160728BHJP
   H02K 1/18 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   H02K15/02 D
   H02K1/18 C
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-235747(P2012-235747)
(22)【出願日】2012年10月25日
(65)【公開番号】特開2014-87202(P2014-87202A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松浦 寿大
(72)【発明者】
【氏名】中川 祥次
(72)【発明者】
【氏名】入江 勝
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−158833(JP,A)
【文献】 特開2011−217488(JP,A)
【文献】 特開2011−172360(JP,A)
【文献】 特開2014−050188(JP,A)
【文献】 特開2004−023872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された継鉄構成部と、前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出されたティース部と、を有するコア構成部を環状に配列させるコア配列工程と、
環状に配列された前記コア構成部を筒状に形成された締付冶具に挿入する冶具挿入工程と、
前記締付冶具が縮径することによって該締付冶具の内周面が環状に配列された前記コア構成部の外周面に当接し、該コア構成部をその周方向に密着させ、かつ環状に配列された前記コア構成部の真円度を保つ保持工程と、
前記締付冶具によって保持された状態の前記コア構成部の外周側に円筒状に形成された金属性のステータケースを配置させるケース配置工程と、
前記ステータケースの外周面の周方向に沿って塑性変形部が形成されることによって、前記ステータケースと前記コア構成部とを一体化させるかしめ工程と、
前記締付冶具が拡径されることによって該締付冶具による前記コア構成部の保持を解除する保持解除工程と、
を有するステータの製造方法。
【請求項2】
前記保持工程において、前記締付冶具が環状に配列された前記コア構成部の軸方向の一方側の端部を保持すると共に、
前記かしめ工程において、環状に配列された前記コア構成部の軸方向の中間部と対向する部位に前記塑性変形部が形成される請求項1記載のステータの製造方法。
【請求項3】
前記ケース配置工程において、環状に配列された前記コア構成部の他端が、前記ステータケースの開放縁部から所定の距離挿入される請求項1記載のステータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、環状に配列された分割コア(コア構成部)の外側に環状のケースを嵌めて、さらにケース外周面をローラ等で内径側に塑性変形させて(ケース外周面に塑性変形溝を形成して)分割コアを固定した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−158833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された構成では、かしめによって塑性変形溝を形成する際に、ケースが分割コアを内径側に押圧するため、環状に配列された分割コア(コア構成部)の真円度はかしめの状態に依存する。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、環状に配列されたコア構成部の真円度を向上させることができるステータの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係るステータの製造方法は、環状の継鉄を構成すると共に前記継鉄の周方向に分割された継鉄構成部と、前記継鉄構成部から前記継鉄の径方向内側に向けて突出されたティース部と、を有するコア構成部を環状に配列させるコア配列工程と、環状に配列された前記コア構成部を筒状に形成された締付冶具に挿入する冶具挿入工程と、前記締付冶具が縮径することによって該締付冶具の内周面が環状に配列された前記コア構成部の外周面に当接し、該コア構成部をその周方向に密着させ、かつ環状に配列された前記コア構成部の真円度を保つ保持工程と、前記締付冶具によって保持された状態の前記コア構成部の外周側に円筒状に形成された金属性のステータケースを配置させるケース配置工程と、前記ステータケースの外周面の周方向に沿って塑性変形部が形成されることによって、前記ステータケースと前記コア構成部とを一体化させるかしめ工程と、前記締付冶具が拡径されることによって該締付冶具による前記コア構成部の保持を解除する保持解除工程と、を有する。
【0007】
請求項1記載の本発明では、先ずコア構成部を環状に配列させる。次いで、環状に配列されたコア構成部が筒状に形成された締付冶具に挿入される。そして、締付冶具が縮径することによってコア構成部が締付冶具に保持される。また、締付冶具が縮径すると、コア構成部がその周方向に密着し、環状に配列されたコア構成部の真円度が確保される。次いで、円筒状に形成された金属性のステータケースが締付冶具によって保持されたコア構成部の外周側に配置される。そして、ステータケースの外周面の周方向に沿って塑性変形部が形成されることによって、ステータケースとコア構成部とが一体化され、コア構成部の締付冶具による保持が解除される。
【0008】
ここで、本発明では、環状に配列されたコア構成部の真円度が締付冶具によって確保された状態でステータケースの外周面に塑性変形部が形成される。そのため、塑性変形部をステータケースの外周面に形成するための外力が環状に配列されたコア構成部に伝達されたとしても、環状に配列されたコア構成部の配列が崩れない。すなわち、本発明では、環状に配列されたコア構成部の真円度を向上させることができる。
【0009】
請求項2記載の本発明に係るステータの製造方法は、請求項1記載のステータの製造方法の前記保持工程において、前記締付冶具が環状に配列された前記コア構成部の軸方向の一方側の端部を保持すると共に、前記かしめ工程において、環状に配列された前記コア構成部の軸方向の中間部と対向する部位に前記塑性変形部が形成される。
【0010】
請求項2記載の本発明では、締付冶具が環状に配列されたコア構成部の軸方向の一方側の端部を保持した状態で、環状に配列されたコア構成部の軸方向の中間部と対向する部位に塑性変形部が形成される。換言すると、ステータケースに塑性変形部が形成されると、該ステータケースが環状に配列されたコア構成部の軸方向の中間部を押圧する。そのため、該押圧力による各々のコア構成部の傾きが抑制される。その結果、本発明では、環状に配列されたコア構成部の真円度をより一層向上させることができる。
【0011】
請求項3記載の本発明に係るステータの製造方法は、請求項1記載のステータの製造方法の前記ケース配置工程において、環状に配列された前記コア構成部の他端が、前記ステータケースの開放縁部から所定の距離挿入される。
【0012】
請求項3記載の本発明では、環状に配列されたコア構成部の他端がステータケースの開放縁部から所定の距離挿入された状態でコア構成部とステータケースとが一体化される。
【0013】
ところで、ステータの出力は、環状に配列されたコア構成部の軸方向の厚みが増すごとに大きくなる。そのため、所定の厚みのコア構成部及びこの厚みを超えるコア構成部を用いてステータの出力を調整することが考えられる。このように、コア構成部の厚みを変えることによってステータの出力を調整する場合、各々の厚みごとにステータケースの設定を変更することが考えられる。しかしながら、本発明では、厚みの異なるコア構成部を用いたとしても、このコア構成部のステータケースへの挿入距離が所定の距離とされているため、ステータの出力に関わらずステータケースを共用することができる。また、コア構成部の厚みに関わらず、塑性変形部を同じ位置に形成することで、コア構成部とステータケースとを一体化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るステータの斜視図である。
図2A図1に示されるU相のステータ構成部の斜視図である。
図2B図1に示されるV相のステータ構成部の斜視図である。
図2C図1に示されるW相のステータ構成部の斜視図である。
図3A図1に示される複数のステータ構成部が互いに組み付けられる過程を示す斜視図である。
図3B図3Aよりも組み付けが進行した状態を示す斜視図である。
図3C】環状に配置されたコア構成部及びステータケースを示す斜視図である。
図4】コア構成部に形成された凹部及びステータケースを拡大して示す拡大平断面図である。
図5】フライヤ装置によって巻線を巻回する様子を説明する図である。
図6A】締付冶具によって保持されたコア構成部の外周側にモータハウジングが配置される工程を示す側断面図である。
図6B】塑性変形溝がモータハウジングの外周面に形成される工程を示す平断面図である。
図6C】塑性変形溝がモータハウジングの外周面に形成される工程を示す平断面図である。
図6D】塑性変形溝がモータハウジングの外周面に形成された後の状態を示す図6Cに相当する平断面図である。
図6E】締付冶具によるコア構成部の保持が解除される工程を示す側断面図である。
図6F】本実施形態の製造工程により製造されたステータを示す側断面図である。
図7】本実施形態の電動ポンプを示す側断面図である。
図8】他の実施形態に係るステータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0018】
図1に示される本発明の一実施形態に係るステータ10は、インナロータタイプのブラシレスモータに用いられるものであり、ステータケース70、図2A図2Cに示されるU相のステータ構成部12U、V相のステータ構成部12V、W相のステータ構成部12Wによって構成されている。
【0019】
図1に示されるように、ステータケース70は、薄肉の円筒状に形成されていると共に、軟磁性金属(一例として「鉄」等)を用いてその周方向に沿って一体に形成されている。また、図3Cに示されるように、ステータケース70の内径D1は、後に詳述する環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの外径D2を超える内径とされている。さらに、図1に示されるように、ステータケース70の外周面には、該ステータケース70の周方向に沿って連続して形成された塑性変形部としての塑性変形溝72が形成されている(本実施形態では、ステータケース70の周方向に沿って1本の塑性変形溝72が形成されている)。また、塑性変形溝72が形成されることによって、ステータケース70における塑性変形溝72が形成された部位の内径が減少している(内径D1よりも小さくなっている)。その結果、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14W(ステータ構成部12U,12V,12W)がステータケース70と一体化する構成である。
【0020】
図2Aに示されるように、U相のステータ構成部12Uは、複数のコア構成部14Uと、巻線16Uと、インシュレータ18Uを有して構成されている。複数のコア構成部14Uは、後述するV相の複数のコア構成部14Vと、W相の複数のコア構成部14Wとでコア20(いずれも図1参照)を構成するものであり、それぞれ複数の継鉄構成部22Uと、複数のティース部24Uとを有している。
【0021】
複数の継鉄構成部22Uは、後述するV相の複数の継鉄構成部22Vと、W相の複数の継鉄構成部22Wとで環状の継鉄40(いずれも図1参照)を構成するものであり、それぞれ円弧状に形成されている。複数のティース部24Uは、それぞれ継鉄構成部22Uに一体に形成されており、この継鉄構成部22Uから継鉄40(図1参照)の径方向内側に向けて突出されている。
【0022】
また、継鉄構成部22Uにおけるティース部24Uと対向する部位には、継鉄構成部22Uの径方向外側に向けて開放され、かつ継鉄構成部22Uの軸方向に沿って延びるU字溝状の凹部80Uが形成されている。図4に示されるように、この凹部80Uは、継鉄構成部22Uの径方向外側に向けて面を臨む底面82と、底面82における継鉄構成部22Uの周方向の両端部から継鉄構成部22Uの径方向に沿って延びる一対の側面84を有して構成されている。また、凹部80Uの深さは、塑性変形溝72が形成されたステータケース70(塑性変形溝72が形成された部位)が底面82に当接しないように設定されている。さらに、凹部80Uの周方向幅Wは塑性変形溝72が形成される前のステータケース70の肉厚Tよりも小さく設定されている。
【0023】
図2Aに示されるように、巻線16Uは、U相を構成しており、複数の巻回部26Uと、複数の渡り線28Uとを有している。複数の巻回部26Uは、それぞれ後述する絶縁部32Uを介してティース部24Uに集中的に巻回されており、複数の渡り線28Uによって互いに接続されている。渡り線28Uは、後述するインシュレータ18Uに形成された連結部34Uの外周面に沿って配線されている(巻き付けられている)。また、巻線16Uの両端側の端末部30Uは、ティース部24Uからステータ10の軸方向一方側(矢印Z1側)に導出されている。
【0024】
インシュレータ18Uは、樹脂製とされており、複数の絶縁部32Uと、連結部34Uとを一体に有している。複数の絶縁部32Uは、上述の複数のティース部24Uと同数設けられている。この複数の絶縁部32Uは、絶縁本体部32U1と延出部32U2を有している。絶縁本体部32U1は、上述の複数のコア構成部14Uの表面にそれぞれ一体成形や装着嵌合される等により一体化されており、コア構成部14Uに形成されたティース部24Uと巻回部26Uとを絶縁している。延出部32U2は、コア構成部14Uよりも径方向内側に位置されると共に、絶縁本体部32U1から継鉄40の軸方向一方側(Z1側)に沿って延出されている。
【0025】
連結部34Uは、複数の絶縁部32Uの軸方向一方側(Z1側)に設けられている。この連結部34Uは、リング状に形成されており、複数の絶縁部32U(より具体的には、複数の絶縁部32Uにおける延出部32U2の延出端部(Z1側の端部))を連結しており、コア構成部14Uよりも径方向内側に位置されている。この連結部34Uの外周面における複数の絶縁部32Uの間には、突起状の保持部36Uが径方向外側に向けて複数突出されている。この保持部36Uは、上述の渡り線28Uを連結部34Uの軸方向他方側(矢印Z2側)から保持している。また、連結部34Uにおける複数の絶縁部32Uの間には、軸方向他方側(矢印Z2側)に開口する切欠き38Uが複数形成されている。
【0026】
図2Bに示されるV相のステータ構成部12Vは、上述のU相のステータ構成部12Uと基本的な構成は同一とされている。つまり、このV相のステータ構成部12Vは、複数の継鉄構成部22Vと、複数のティース部24Vと、巻線16Vと、インシュレータ18Vを有して構成されている。複数の継鉄構成部22Vと、複数のティース部24Vと、巻線16Vと、インシュレータ18Vは、上述の複数の継鉄構成部22Uと、複数のティース部24Uと、巻線16Uと、インシュレータ18U(いずれも図2A参照)に相当するものである。また、凹部80Vは、上述の凹部80Uに相当するものである。なお、このV相のステータ構成部12Vにおいて、連結部34Vは、リング状に形成されると共に、上述のU相の連結部34U(図2A参照)よりも小径に形成されている。また、保持部36Vは、渡り線28Vを連結部34Vの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持しており、且つ、コア構成部14Vよりも径方向内側に位置されている。
【0027】
図2Cに示されるW相のステータ構成部12Wも、上述のU相のステータ構成部12Uと基本的な構成は同一とされている。つまり、このW相のステータ構成部12Wは、複数の継鉄構成部22Wと、複数のティース部24Wと、巻線16Wと、インシュレータ18Wを有して構成されている。複数の継鉄構成部22Wと、複数のティース部24Wと、巻線16Wと、インシュレータ18Wは、上述の複数の継鉄構成部22Uと、複数のティース部24Uと、巻線16Uと、インシュレータ18U(いずれも図2A参照)に相当するものである。また、凹部80Wは、上述の凹部80Uに相当するものである。なお、このW相のステータ構成部12Wにおいて、連結部34Wは、リング状に形成されると共に、上述のV相の連結部34V(図2B参照)よりも小径に形成されている。また、連結部34Wからは上述の切欠き(図2Aの切欠き38U参照)が省かれている。また、保持部36Wは、渡り線28Wを連結部34Wの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持しており、且つ、コア構成部14Wよりも径方向内側に位置されている。
【0028】
そして、図1に示されるように、この複数のステータ構成部12U,12V,12Wは、後に詳述する如く、互いに組み付けられた後に、その外周部からステータケース70に保持されることによってステータ10を構成している。また、このステータ10では、複数の継鉄構成部22U,22V,22Wによって環状の継鉄40が形成されている。つまり、換言すれば、継鉄40は、周方向に複数の継鉄構成部22U,22V,22Wに分割されている。この複数の継鉄構成部22U,22V,22Wは、それぞれ両側に隣り合う一対の継鉄構成部の間に嵌合されている。
【0029】
また、複数の連結部34U,34V,34Wは、継鉄40の径方向内側に径方向に間隙を有して配置されると共に、継鉄40と同軸上に設けられている。また、V相の保持部36Vは、U相の連結部34Uの内周面と嵌合されており、W相の保持部36Wは、V相の連結部34Vの内周面と嵌合されている。そして、これにより、複数の連結部34U,34V,34Wは、互いに径方向に離間した状態で保持されている。つまり、保持部36U,36V,36Wは、複数の連結部34U,34V,34Wの径方向間に設けられ、複数の連結部34U,34V,34Wを互いに径方向に離間した状態で保持する突起状のスペーサの役割も果たしている。
【0030】
さらに、上述のように、複数の連結部34U,34V,34Wが継鉄40の径方向に間隙を有して配置された状態では、V相の渡り線28Vは、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uの内側を通過しており(切欠き38Uに収容されており)、W相の渡り線28Wは、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uと、V相の連結部34Vに形成された切欠き38Vの内側を通過している(切欠き38Uと切欠き38Vとに収容されている(図3Bも参照))。
【0031】
(ステータ10の製造方法)
次に、上記構成からなるステータ10の製造方法について説明する。
【0032】
図2Aに示されるように、先ずインシュレータ18Uの絶縁部32Uにコア構成部14Uを一体化して、インシュレータ18U及び複数のコア構成部14UからなるU相のサブアッセンブリ42Uを形成する。同様に、図2Bに示されるように、インシュレータ18Vの絶縁部32Vにコア構成部14Vを一体化して、インシュレータ18V及び複数のコア構成部14VからなるV相のサブアッセンブリ42Vを形成する。また、図2Cに示されるように、インシュレータ18Wの絶縁部32Wにコア構成部14Wを一体化して、インシュレータ18U及び複数のコア構成部14VからなるW相のサブアッセンブリ42Wを形成する。そして、このようにして、U相、V相、W相毎にサブアッセンブリ42U,42V,42Wを形成する(サブアッセンブリ形成工程)。
【0033】
続いて、図2Aに示されるように、U相のサブアッセンブリ42Uの各ティース部24Uに径方向外側から巻線16Uをフライヤ装置100(図5参照)を用いて巻回して、サブアッセンブリ42Uに複数の巻回部26Uが形成されたU相のステータ構成部12Uを形成する。なお、フライヤ装置100は、図5に示されるように、ティース部24の周囲を旋回するように円運動して巻線16を巻回するフライヤ101と、ティース部24に巻回された巻線16を整列させる可変フォーマ102と、これらを制御する駆動回路103とを有している。
【0034】
同様に、図2Bに示されるように、V相のサブアッセンブリ42Vの各ティース部24Vに径方向外側から巻線16Vを上述のフライヤ装置100を用いて巻回して、サブアッセンブリ42Vに複数の巻回部26Vが形成されたV相のステータ構成部12Vを形成する。また、図2Cに示されるように、W相のサブアッセンブリ42Wの各ティース部24Wに径方向外側から巻線16Wを上述のフライヤ装置100を用いて巻回して、サブアッセンブリ42Wに複数の巻回部26Wが形成されたW相のステータ構成部12Wを形成する。
【0035】
このとき、図2Aに示されるように、複数の渡り線28Uについては、連結部34Uの外周面に沿って配線する。また、この複数の渡り線28Uを突起状の保持部36Uによって連結部34Uの軸方向他方側(矢印Z2側)から保持する。同様に、図2Bに示されるように、複数の渡り線28Vについては、連結部34Vの外周面に沿って配線する。また、この複数の渡り線28Vを突起状の保持部36Vによって連結部34Vの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持する。また、図2Cに示されるように、複数の渡り線28Wについては、連結部34Wの外周面に沿って配線する。また、この複数の渡り線28Wを突起状の保持部36Wによって連結部34Wの軸方向一方側(矢印Z1側)から保持する。
【0036】
また、図2Aに示されるように、巻線16Uの両端側の端末部30Uについては、ティース部24Uからステータ10の軸方向一方側(矢印Z1側)に導出させる。同様に、図2Bに示されるように、巻線16Vの両端側の端末部30Vについては、ティース部24Vからステータ10の軸方向一方側に導出させる。また、図2Cに示されるように、巻線16Wの両端側の端末部30Wについては、ティース部24Wからステータ10の軸方向一方側に導出させる。そして、このようにして、U相、V相、W相毎にステータ構成部12U,12V,12Wを形成する(ステータ構成部形成工程)。
【0037】
続いて、図3A図3Bに示されるように、W相のステータ構成部12Wに対し、V相のステータ構成部12Vを周方向に所定の角度ずらした状態で、V相のステータ構成部12Vを軸方向一方側(矢印Z1側)からW相のステータ構成部12Wに組み付ける。また、V相のステータ構成部12Vに対し、U相のステータ構成部12Uを周方向に所定の角度ずらした状態で、U相のステータ構成部12Uを軸方向一方側(矢印Z1側)からV相のステータ構成部12V及びW相のステータ構成部12Wに組み付ける。このとき、複数のコア構成部14U,14V,14Wが環状に配列される(コア配列工程)。
【0038】
また、図3A図3Bに示されるように、V相の保持部36Vについては、U相の連結部34Uの内周面に嵌合し、W相の保持部36Wについては、V相の連結部34Vの内周面に嵌合する。そして、このようにして、複数の連結部34U,34V,34Wを突起状の保持部36U,36V,36Wによって互いに径方向に離間した状態で保持する。
【0039】
さらに、このときには、V相の渡り線28Vを、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uの内側に通過させ、W相の渡り線28Wを、U相の連結部34Uに形成された切欠き38Uと、V相の連結部34Vに形成された切欠き38Vの内側に通過させる。
【0040】
図6Aに示されるように、コア配列工程を経ることによって環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wは、締付冶具106によって保持される。この締付冶具106は円筒状に形成されていると共に、その周方向に沿って分割構造とされることによって径方向内側及び外側にそれぞれ縮径及び拡径することが可能となっている。また、締付冶具106はその周方向に沿って配列された12個の冶具構成片108を含んで構成されており、各々の冶具構成片108の内周面108Aの形状は、コア構成部14U,14V,14Wの外周面(継鉄構成部22U,22V,22Wの外周面)の形状に対応している。以上説明した締付冶具106の内周側に環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wが挿入される(冶具挿入工程)。そして、締付冶具106が縮径することによって該締付冶具106を構成する各々の冶具構成片108の内周面108Aが環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの外周面に当接し、コア構成部14U,14V,14Wが締付冶具106に保持される(保持工程)。また、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの軸方向一方側の端部が締付冶具106によって保持される。さらに、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wが締付冶具106によって保持されると、コア構成部14U,14V,14Wがその周方向に密着すると共に、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの真円度が保たれる。
【0041】
図6A及び図6Bに示されるように、締付冶具106によって保持された状態のコア構成部14U,14V,14Wの他方側の端部がステータケース70に挿入されることによって、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの外周側にステータケース70が配置される(ケース配置工程)。また、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの他端が、ステータケース70の開放縁部Eから距離Lだけ挿入されるように設定されている。なお、本実施形態では、ステータケース70が後に詳述する電動ポンプ112の外郭を構成するモータハウジング118とされている。また、ステータケース70におけるコア構成部14U,14V,14Wが挿入される側と反対側の端部はベース冶具110によって支持されている。
【0042】
図6B図6C及び図6Dに示されるように、コア構成部14U,14V,14Wが締付冶具106によって保持された状態で、ステータケース70の外周面に塑性変形溝72が形成される。この塑性変形溝72は、ローラ体104を所定の圧力でステータケース70の外周面に押圧させると共に、ローラ体104をステータケース70の周方向に沿って転動させることによって形成されている。また、塑性変形溝72は、ローラ体104がステータケース70の周方向に沿って複数回転(複数回)転動することによって徐々に溝深さが深くなるように形成されている。さらに、塑性変形溝72が形成されることによって、ステータケース70における塑性変形溝72が形成された部位の内径が減少する。その結果、ステータケース70と環状に配列された複数のコア構成部14U,14V,14Wとが一体化する(複数のコア構成部14U,14V,14Wがステータケース70に保持される)(かしめ工程)。また、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの軸方向の中間部と対向する部位に塑性変形溝72が形成される。
【0043】
図6Eに示されるように、かしめ工程を経た後に締付冶具106が拡径されることによって該締付冶具106によるコア構成部14U,14V,14Wの保持が解除される(保持解除工程)。以上の工程を経て図6Fに示されるステータ10が製造される。
【0044】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0045】
図6Bに示されるように、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの真円度が締付冶具106によって確保された状態でステータケース70の外周面に塑性変形溝72が形成される。そのため、塑性変形溝72をステータケース70の外周面に形成するための外力が環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wに伝達されたとしても、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの配列が崩れない。すなわち、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの真円度を向上させることができる。
【0046】
また、本実施形態では、締付冶具106が環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの軸方向の一方側の端部を保持した状態で、コア構成部14U,14V,14Wの軸方向の中間部と対向する部位に塑性変形溝72が形成される。換言すると、ステータケース70に塑性変形溝72が形成されると、該ステータケース70が環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの軸方向の中間部を押圧する。そのため、該押圧力による各々のコア構成部14U,14V,14Wの傾きが抑制される。その結果、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの真円度をより一層向上させることができる。
【0047】
ところで、ステータ10の出力は、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの軸方向の厚みが増すごとに大きくなる。そのため、所定の厚みのコア構成部14U,14V,14W及びこの厚みを超えるコア構成部14U,14V,14Wを用いてステータ10の出力を調整することが考えられる。このように、コア構成部14U,14V,14Wの厚みを変えることによってステータ10の出力を調整する場合、各々の厚みごとにステータケース70の設定を変更することが考えられる。しかしながら、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの他端が、ステータケース70の開放縁部Eから距離Lだけ挿入されるように設定されているため、ステータ10の出力に関わらずステータケース70を共用することができる。また、コア構成部14U,14V,14Wの厚みに関わらず、塑性変形溝72を同じ位置に形成することで、コア構成部14U,14V,14Wとステータケース70とを一体化させることができる。
【0048】
なお、本実施形態では、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの他端が、ステータケース70の開放縁部Eから距離Lだけ挿入されるように設定された例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ステータケース70を共用しない場合、コア構成部14U,14V,14Wのステータケース70への挿入距離を該コア構成部14U,14V,14Wの厚みに応じて変更してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、締付冶具106が環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの軸方向の一方側の端部を保持した状態で、コア構成部14U,14V,14Wの軸方向の中間部と対向する部位に塑性変形溝72が形成される例について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。コア構成部14U,14V,14Wが締付冶具106によって保持される位置、及び塑性変形溝72が形成される位置は、塑性変形溝72が形成された後のコア構成部14U,14V,14Wの真円度等を考慮して適宜設定すればよい。
【0050】
さらに、本実施形態では、ステータケース70の周方向に沿って塑性変形溝72を形成した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば図8に示されるように、ステータケース70の軸方向に沿って塑性変形溝72を形成した構成としてもよい。この塑性変形溝72は、継鉄構成部22U,22V,22Wに形成された各々の凹部80U,80V,80Wと対向する部位に形成されている。
【0051】
(電動ポンプ112)
次に、前述の製造方法により製造されたステータ10を用いた電動ポンプ112について説明する。
【0052】
図7に示されるように、本実施形態の電動ポンプ112は、ステータ10と、ステータ10の回転磁界によってその軸線回りに回転されるロータ114と、ロータ114によって駆動されるポンプ部としてのポンプロータ116と、を備えている。また、本実施形態では、ステータ10のステータケース70は、電動ポンプ112の外郭を構成するモータハウジング118とされている。
【0053】
モータハウジング118は、ロータ114の軸方向に沿って延びる筒状部118Aと、筒状部118Aの一端が該筒状部118Aの径方向外側に折り曲げられることによって形成されたフランジ部118Bと、を備えている。また、フランジ部118Bには、外部電源等が接続されるコネクタ部120Aを備えたコネクタベース120が取付けられている。さらに、フランジ部118Bには、スペーサ122及び支持部材124を介して回路装置126が取付けられている。また、回路装置126は、円盤状に形成された回路基板126Aと、回路基板126A上に取付けられた複数の回路素子126Bと、を主要な要素として構成されている。この回路装置126によってロータ114の回転が制御される構成である。また、回路装置126は、カバー128によって被われている。なお、回路装置126には、コネクタ部120Aを介して電源が供給される。
【0054】
ロータ114は、円筒状に形成されたロータ部114Aが出力軸114Bの一端に取付けられることによって構成されている。具体的には、出力軸114Bは、円柱状の鋼材に浸炭処理等の表面処理が施されることにより構成されており、また、出力軸114Bの他端及び中間部はそれぞれポンプハウジング130及びポンプホルダ132に軸支されている。また、出力軸114Bの一端に取付けられたロータ部114Aは環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの径方向内側に配置されている。さらに、ロータ部114Aには、その周方向に沿って複数のマグネットが設けられている。
【0055】
ポンプロータ116は、有底円筒状に形成されたポンプハウジング130及びポンプハウジング130の開放縁部に取付けられたポンプホルダ132に囲まれたポンプ室P内に配置されている。このポンプロータ116がロータ114の出力軸114Bに回転駆動されることによって、ポンプ室P内に導入された液体の圧力が昇圧される構成である。なお、ポンプロータ116は、インナロータ及びアウタロータを有するトロコイドポンプとされている。
【0056】
以上説明した電動ポンプ112は、環状に配列されたコア構成部14U,14V,14Wの他端がステータケース70の開放縁部Eから距離Lだけ挿入されるように設定されたステータ10(図6F参照)を用いて構成されている。そのため、コア構成部14U,14V,14Wの厚みを調整することによって、出力の異なる複数のバリエーションの電動ポンプ112を製造した場合にモータハウジング118(ステータケース70)を共用することができる。
【0057】
なお、本実施形態では、ポンプロータ116をロータ114によって回転駆動した例について説明してきたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ポンプ部を構成する羽根車等をロータ114によって回転駆動させた構成とすることもできる。このように、ロータによって回転駆動されるポンプ部の構成は、圧送する液体の粘度等を考慮して適宜設定すればよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10…ステータ,14U…コア構成部,14V…コア構成部,14W…コア構成部,22U…継鉄構成部,22V…継鉄構成部,22W…継鉄構成部,24U…ティース部,24V…ティース部,24W…ティース部,40…継鉄,70…ステータケース,72…塑性変形溝(塑性変形部),106…締付冶具,112…電動ポンプ,114…ロータ,116…ポンプロータ(ポンプ部),E…開放縁部,L…距離
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7
図8