(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968190
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】架台の構築方法
(51)【国際特許分類】
H02S 20/10 20140101AFI20160728BHJP
【FI】
H02S20/10 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-237335(P2012-237335)
(22)【出願日】2012年10月26日
(65)【公開番号】特開2014-84700(P2014-84700A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】安川 真知子
(72)【発明者】
【氏名】藤永 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柴田 宜伸
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第02292877(EP,A1)
【文献】
特開2011−096888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 20/10
F24J 2/04 − 2/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光パネルを支持する架台の構築方法であって、
前記太陽光パネルが載置される面状の枠部と、地表面から上方に延びて前記枠部を支持する単一の支持部と、を備え、
前記枠部は、桁行方向に延びる複数の桁行部材と、当該桁行部材に略直交して梁間方向に延びる複数の梁間部材と、を備え、
前記支持部は、地表に突出して前記枠部に連結される柱状の支柱と、当該支柱から上方に延びて前記枠部に連結される少なくとも2本の方杖と、を備え、
前記支柱および前記方杖と前記枠部との連結点は、多角形状に配置され、
前記支柱の所定の高さ位置には、当該支柱の周囲を囲む環状のリングが取り付けられ、
前記方杖の下端部は、当該リングに連結され、
前記支柱を地盤に打ち込む手順と、
当該支柱に前記リングを取り付ける手順と、
前記リングに前記方杖を取り付けて、当該方杖上に前記枠部を載せて当該方杖と接合する手順と、
当該枠部上に前記太陽光パネルを設置する手順と、を備えることを特徴とする架台の構築方法。
【請求項2】
前記リングには、外周に沿って所定間隔おきに複数の貫通孔が形成されており、
前記方杖の下端部は、前記複数の貫通孔の中から適宜選択したものに挿通されて固定されることを特徴とする請求項1に記載の架台の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架台に関する。詳しくは、太陽光パネルを支持する架台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽光の光エネルギを用いて電気を発生させる太陽光パネルが知られている(特許文献1参照)。この太陽光パネルは、広大な土地に最も発電効率のよい角度で傾斜して設置される。
【0003】
このような太陽光パネルを支持するため、例えば、以下のような架台が提案されている(特許文献1参照)。
すなわち、太陽光パネルが搭載される矩形状の桟と、この桟を支持する複数の支持部と、を備える。
桟は、桁行方向に延びる複数本の横桟と、梁間方向に延びる複数本の縦桟とを格子状に組み合わせて構成される。また、この桟は、桁行方向の横桟が略水平で、かつ、梁間方向の縦桟の一端側が他端側よりも低くなるように傾斜している。
【0004】
支持部は、平坦な敷地に複数並んで設置されている。各支持部は、略鉛直に延びて上端で桟に接続されるH鋼からなる1本の支柱と、この支柱を挟んで設けられて支柱の下端側から斜めに延びて桟に接続される断面ハット形状の鋼材からなる一対のアームと、を備える。ここで、各支持部の支柱および一対のアームは、1本の縦桟に連結される。これにより、支柱および一対のアームは、一直線上に配置されることになる。
【0005】
この架台では、各支持部の支柱および一対のアームならびにこれらが接続される1本の縦残とでトラスが構成されるため、太陽光パネルを安定的に支持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−220096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、以上の架台では複数の支持部が必要となるため、敷地が狭小で不陸が大きい場合には、架台を設置できないおそれがあった。
【0008】
本発明は、敷地が狭小で不陸が大きい場合でも設置可能な架台
の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の架台(例えば、後述の架台1)
の構築方法は、太陽光パネル(例えば、後述の太陽光パネル2)を支持する架台であって、前記太陽光パネルが載置される面状の枠部(例えば、後述の枠部10)と、地表面から上方に延びて前記枠部を支持する単一の支持部(例えば、後述の支持部20)と、を備え、前記枠部は、桁行方向に延びる複数の桁行部材(例えば、後述の桁行部材11)と、当該桁行部材に交差して梁間方向に延びる複数の梁間部材(例えば、後述の梁間部材12)と、を備え、前記支持部は、地表に突出して前記枠部に連結される柱状の支柱(例えば、後述の支柱21)と、当該支柱から上方に延びて前記枠部に連結される少なくとも2本の方杖(例えば、後述の方杖22)と、を備え、前記支柱および前記方杖と前記枠部との連結点(例えば、後述の連結点13A、13B)は、多角形状に配置され、前記支柱の所定の高さ位置には、当該支柱の周囲を囲む環状のリング(例えば、後述のリングジョイント23)が取り付けられ、前記方杖の下端部は、当該リングに連結され
、前記支柱を地盤に打ち込む手順と、当該支柱に前記リングを取り付ける手順と、前記リングに前記方杖を取り付けて、当該方杖上に前記枠部を載せて当該方杖と接合する手順と、当該枠部上に前記太陽光パネルを設置する手順と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、各支持部において、枠部、支柱、および方杖で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、リングを頭頂点とし、支柱および方杖と枠部との連結点からなる多角形を底面とする多角錐を構成し、この多角錐を上下逆さにした形状となる。よって、太陽光パネルを安定的に支持できるとともに、梁間方向の荷重のみならず、桁行方向を含めた全ての方向の荷重に対しても、十分に抵抗できる。
また、支持部を単一としたので、敷地が狭小で不陸が大きい場合でも設置可能である。
【0011】
請求項2に記載の架台
の構築方法は、前記リングには、外周に沿って所定間隔おきに複数の貫通孔(例えば、後述の貫通孔231)が形成されており、前記方杖の下端部は、前記複数の貫通孔の中から適宜選択したものに挿通されて固定されることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、リングの外周に沿って貫通孔を所定間隔おきに設けたので、方杖とリングとの連結箇所を適宜変更することで、方杖の本数を自在に増減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各支持部において、枠部、支柱、および方杖で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、リングを頭頂点とし、支柱および方杖と枠部との連結点からなる多角形を底面とする多角錐を構成し、この多角錐を上下逆さにした形状となる。よって、太陽光パネルを安定的に支持できるとともに、梁間方向の荷重のみならず、桁行方向を含めた全ての方向の荷重に対しても、十分に抵抗できる。また、支持部を単一としたので、敷地が狭小で不陸が大きい場合でも設置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る架台の斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る架台の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る架台1の斜視図であり、
図2は、架台1の側面図である。
【0016】
架台1は、太陽光パネル2を支持するものであり、太陽光パネル2が載置される面状の枠部10と、地表面から上方に延びて枠部10を支持する単一の支持部20と、を備える。
【0017】
枠部10は、桁行方向(
図1中X方向)に延びる複数本の桁行部材11と、これら桁行部材11に略直交して梁間方向(
図1、
図2中Y方向)に延びる複数本の梁間部材12と、を備える。桁行部材11と梁間部材12とは、田の字形状に配置されている。
【0018】
各支持部20は、地表面に露出した円筒柱状の支柱21と、この支柱21から上方に延びて枠部10に連結される4本の方杖22と、を備える。
【0019】
支柱21は円筒形状であり、地盤に打ち込まれている。また、この支柱21の上端面は、枠部10の桁行部材11と梁間部材12との交点に連結されている。この支柱21と枠部10との連結箇所を連結点13Aとすると、連結点13Aは、枠部10の中央に位置している。
【0020】
4本の方杖22は、同一の断面形状であり、これら方杖22の上端部は、枠部10の桁行部材11と梁間部材12との交点に連結されている。この方杖22と枠部10との連結箇所を連結点13Bとすると、連結点13Bは、枠部10の四隅に位置している。
一方、方杖22の下端部は、支柱21の所定の高さ位置に連結されている。
【0021】
支柱21の所定の高さ位置には、この支柱21の周囲を囲む円環状のリングジョイント23が取り付けられている。方杖22の下端部は、リングジョイント23の外周に沿って等間隔おきに連結されている。
具体的には、リングジョイント23には、外周に沿って所定間隔おきに複数の貫通孔231が形成されており、方杖22の下端部は、これら複数の貫通孔231の中から適宜選択したものに挿通されて固定されている。
【0022】
また、桁行部材11、梁間部材12、支柱21、およびこれら4本の方杖22で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、リングジョイント23を頭頂点とし、方杖22の連結点13Bからなる長方形を底面とする四角錐を構成して、この四角錐を上下逆さにした形状となる。
【0023】
以上の架台1は、例えば以下の手順で構築される。
まず、支柱21を地盤に打ち込んで、その後、この支柱21にリングジョイント23を取り付ける。次に、リングジョイント23に4本の方杖22を取り付けて、これら方杖22上に枠部10を載せて方杖22と接合し、その後、枠部10上に太陽光パネル2を設置する。
【0024】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)各支持部20において、枠部10、支柱21、および4本の方杖22で立体トラスを構成する。よって、太陽光パネルを安定的に支持できるとともに、梁間方向の荷重のみならず、桁行方向を含めた全ての方向の荷重に対しても、十分に抵抗できる。
また、支持部20を単一としたので、敷地が狭小で不陸が大きい場合でも設置可能である。
【0025】
(2)リングジョイント23の外周に沿って貫通孔231を所定間隔おきに設けたので、方杖22とリングジョイント23との連結箇所を適宜変更することで、方杖22の本数を自在に増減できる。
【0026】
(3)支柱21および各方杖22を桁行部材11と梁間部材12との交点である連結点13Bに連結したので、架台1の剛性を向上できる。
【0027】
(4)各支持部20における4本の方杖22の断面形状を略同一とした。よって、方杖22の部材の種類を少なくできるから、施工コストを低減できるうえに、方杖に用いる部材の品質管理が容易となる。
また、各支持部の4本の方杖22について、枠部10に連結される仕口の形状を統一でき、製作コストをさらに低減できる。
【0028】
〔第2実施形態〕
図3は、本発明の第2実施形態に係る架台1Aの斜視図であり、
図2は、架台1Aの側面図である。
【0029】
本実施形態では、方杖の本数が2本である点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、支柱21の上端面は、枠部10の桁行部材11と梁間部材12との交点に連結されている。この支柱21と枠部10との連結箇所を連結点13Aとすると、連結点13Aは、枠部10の外周の四辺のうちの一辺の中央に位置している。
【0030】
また、方杖22の上端部は、枠部10の桁行部材11と梁間部材12との交点に連結されている。この方杖22と枠部10との連結箇所を連結点13Bとすると、連結点13Bは、枠部10の連結点13Aから離れた2つの角部に位置している。
【0031】
本実施形態においても、桁行部材11、梁間部材12、支柱21、およびこれら2本の方杖22で立体トラスを構成する。すなわち、この立体トラスは、リングジョイント23を頭頂点とし、支柱21の連結点13Aおよび方杖22の連結点13Bからなる三角形を底面とする三角錐を構成して、この三角錐を上下逆さにした形状となる。
【0032】
本実施形態によれば、上述の(1)〜(4)と同様の効果がある。
【0033】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、支持部20を構成する方杖22の本数を4本あるいは2本としたが、これに限らず、3本としてもよいし、あるいは5本以上としてもよい。
【0034】
また、上述の各実施形態では、支柱21を円筒柱状としたが、これに限らず、支柱の断面形状は特に限定されない。
また、桁行部材11、梁間部材12、および方杖22について、断面形状は特に限定されない。
【符号の説明】
【0035】
1、1A…架台
2…太陽光パネル
10…枠部
11…桁行部材
12…梁間部材
13A、13B…連結点
20…支持部
21…支柱
22…方杖
23…リングジョイント(リング)
231…貫通孔