特許第5968214号(P5968214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968214
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ジハロ多環芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 307/91 20060101AFI20160728BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20160728BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20160728BHJP
   C07D 333/76 20060101ALI20160728BHJP
   C07D 405/04 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   C07D307/91
   C07B61/00 300
   C07D209/88
   C07D333/76
   C07D405/04
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-273015(P2012-273015)
(22)【出願日】2012年12月14日
(62)【分割の表示】特願2007-212807(P2007-212807)の分割
【原出願日】2007年8月17日
(65)【公開番号】特開2013-79263(P2013-79263A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2012年12月14日
【審判番号】不服2015-2619(P2015-2619/J1)
【審判請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 修一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 栄作
【合議体】
【審判長】 中田 とし子
【審判官】 冨永 保
【審判官】 瀬良 聡機
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/128800(WO,A1)
【文献】 特開昭60−56928(JP,A)
【文献】 Elli S.Hand et al.,Magnesium Methyl Carbonate−Activated Alkylation of Methyl Ketones with an ω−Halo Nitrile,Esters, and Amides,Journal of Organic Chemistry,1997年,Vol.62,No.5,p.1348−1355
【文献】 Sergio M.Bonesi et al.,Synthesis and isolation of iodocarbazoles. Direct iodination of carbazoles by N−iodosuccinimide and N−iodosuccinimide−silica gel system,Journal of Heterocyclic Chemistry,2001年,Vol.38,No.1,p.77−87
【文献】 G.W.Sovocool et al.,Electrophilic bromination of dibenzofuran,Chemosphere,1987年,Vol.16,No.1,p.221−224
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D307/91
CAplus,REGISTRY,CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式〔3〕で表される化合物をブロム化することにより一般式〔2〕で表される化合物を製造することを特徴とするジハロ多環芳香族化合物の製造方法。
(式中、R1、R2は置換基を表し、n1、n2は0〜3の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子またはN−C、N−CHを表す。)
(式中、R1、R2は置換基を表し、n1、n2は0〜3の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子またはN−C、N−CHを表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成化合物の中間体、特に有機エレクトロルミネッセンス材料の中間体として有用なジハロ多環芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルバゾイル基が二つ置換した対称形を有するジカルバゾリル多環芳香族化合物を合成する方法において、有用な中間体が知られている。例えば、ジベンゾフランの場合、2,7−ジブロモジベンゾフランまたは2,7−ジヨードジベンゾフランを合成中間体として用いることが可能である(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、非対称形を有するジカルバゾリル多環芳香族化合物を合成する際に、これらの中間体を用いると反応制御が困難であり、一つのカルバゾイル基のみが置換した2−カルバゾリル−7−ハロジベンゾフランと同時にカルバゾイル基が二つ置換したものが副生してしまい収率が大きく低下すること、また精製時にカラム等の煩雑な処理が必要であり大量生産に不適であること等の問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kryska Anna et al.,J.Chem.Res. Miniprint.10;2501−2517(1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、高収率、且つ量合成適合性のあるジハロ多環芳香族化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の構成により解決することができた。
【0007】
1.下記一般式〔3〕で表される化合物をブロム化することにより一般式〔2〕で表される化合物を製造することを特徴とするジハロ多環芳香族化合物の製造方法。
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R1、R2は置換基を表し、n1、n2は0〜3の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子またはN−C、N−CHを表す。)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中、R1、R2は置換基を表し、n1、n2は0〜3の整数を表す。Xは酸素原子、硫黄原子またはN−C、N−CHを表す。)
【発明の効果】
【0018】
有機合成化合物の中間体、特に有機エレクトロルミネッセンス材料の中間体として有用なジハロ多環芳香族化合物は、本発明の製造方法により高収率で得られ、量合成適合性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を更に詳細に述べる。
【0020】
一般式〔1〕、一般式〔2〕、一般式〔3〕、一般式〔4〕及び一般式〔5〕において、R1、R2で表される置換基として、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン原子、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル等の各基が挙げられる。
【0021】
Xは酸素原子、硫黄原子またはイミノ基を表す。これらの内、好ましいものは酸素原子である。
【0022】
1、Z2で表される芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つが更に窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
【0023】
1、Z2で表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。
【0024】
上記の基はいずれも、更に置換基によって置換されていてもよく、置換基として、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、ハロゲン原子、複素環、スルホニル、スルフィニル、ホスホニル、アシル、カルバモイル、スルファモイル、シアノ、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アシルオキシ、カルバモイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、カルボキシル等の各基が挙げられる。
【0025】
以下、本発明に係る一般式〔1〕、一般式〔2〕、一般式〔3〕、一般式〔4〕及び一般式〔5〕で表される化合物の代表的具体例を示すが、本発明はこれらに限定されものではない。
【0026】
【化5】
【0027】
【化6】
【0028】
【化7】
【0029】
【化8】
【0030】
【化9】
【0031】
一般式〔2〕で表される化合物は、一般式〔1〕とヨウ素化剤及び臭素化剤との反応で得ることができる。順序として特に制限はないが、ヨウ素化した後に、臭素化することが好ましい。
【0032】
ヨウ素化剤としては、例えば、ヨウ素、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化水素酸、ヨウ化ベンゼンジアセテート、ヨードシルベンゼン、ヨージルベンゼン、Dess−Martinペルヨージナン、ヨウ素酸塩等が挙げられる。これらの内で、好ましいものはヨウ化ベンゼンジアセテート、ヨウ素酸塩であり、更に好ましくはヨウ化ベンゼンジアセテートである。
【0033】
臭素化剤としては、例えば、臭素、臭素酸塩、過臭素酸塩、三臭化りん、過臭化ピリジニウム、N−ブロモスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン等が挙げられる。これらの内で、好ましいものは臭素、臭素酸塩であり、更に好ましくは臭素である。
【0034】
一般式〔5〕で表される化合物は、遷移金属触媒の存在下一般式〔2〕で表される化合物と一般式〔4〕で表される化合物との反応で得ることができる。一般式〔4〕で表される化合物の添加量は、一般式〔2〕で表される化合物1molに対して0.8〜11molの範囲で用いることが好ましいが、0.85〜0.95molの範囲で用いることが特に好ましい。
【0035】
遷移金属触媒として好ましいものとして、例えば、銅粉末、酸化第一銅、酢酸第一銅、ヨウ化第二銅、塩化ニッケル、酢酸パラジウムが挙げられる。更に好ましいものは銅粉末である。添加量は一般式〔2〕で表される化合物1molに対して0.1〜10molの範囲で用いることが好ましいが、0.5〜3molの範囲で用いることが特に好ましい。
【0036】
用いられる反応溶媒としては、例えば、アルコール、アセトン、水、非プロトン性溶媒等が挙げられる。これらの内で好ましいものはDMF、DMAcである。
【0037】
反応温度は通常100〜160℃で行われるのが好ましく、130〜150℃で行われるのが特に好ましい。
【0038】
本発明の一般式〔2〕で表されるジハロ多環芳香族化合物、一般式〔5〕で表されるピロリル多環芳香族化合物は有機エレクトロルミネッセンス材料の中間体として、特に有用である。請求項5に記載のように、一般式〔2〕で表されるジハロ多環芳香族化合物は一般式〔5〕で表されるピロリル多環芳香族化合物の中間体でもある。一般式〔2〕で表されるジハロ多環芳香族化合物、一般式〔5〕で表されるピロリル多環芳香族化合物を中間体は、より具体的には有機エレクトロルミネッセンス材料の内、発光層、正孔阻止層で用いられるホスト化合物の中間体として有用である。
【0039】
以下に、一般式〔5〕で表されるピロリル多環芳香族化合物を中間体とするホスト化合物の合成例を示す。
【0040】
【化10】
【0041】
例示化合物5−1、12g(0.0291mol)、化合物A、10.8g(×1.0mol)、微粉炭酸カリウム6.0g(×1.5mol)、DMSO、200mlを混合した後、系内を窒素気流で20分置換した。続いて、PdCl2dppf、1.19g(×0.05mol)を投入し加熱攪拌2時間行った(内温75〜80℃)。室温まで冷却し井水4mlを加えた。室温で攪拌し析出した結晶を減圧濾過した。
【0042】
トルエン200mlに溶解し、シリカゲルを充填したフラッシュカラムを通し、不溶分を除去した。続いて、減圧蒸留で溶媒を除去した。得られた結晶に酢酸エチルを加え、懸濁液を30分還流した。氷水冷下1時間攪拌した後減圧濾過した。更に同様の操作を繰り返し、化合物B、12.5gを得た。(収率75.0%)
【実施例】
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0044】
実施例1
《例示化合物5−1の合成》:比較
【0045】
【化11】
【0046】
2,7−ジブロモジベンゾフラン6.29g(0.0193mol)、カルバゾール2.9g(×0.9mol)、炭酸カリウム4.0g(×1.5mol)、Cu粉3.68g(×3mol)、乾燥DMAc75mlを混合し、窒素気流下、16時間攪拌した(内温135〜137℃)。
【0047】
不溶分を減圧濾過し、濾液をTHFで抽出した後減圧蒸留で溶媒を除去した。カラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開液:トルエン/n−ヘキサン)で精製し、例示化合物5−1を1.2g得た。(収率15%)
《例示化合物5−1の合成》:本発明
【0048】
【化12】
【0049】
例示化合物2−1、7.9g(0.0212mol)、カルバゾール2.9g(×0.9mol)、炭酸カリウム4.0g(×1.5mol)、Cu粉3.68g(×3mol)、乾燥DMAc75mlを混合し、窒素気流下、16時間攪拌した(内温135〜137℃)。
【0050】
不溶分を減圧濾過した。濾液に井水15mlを加え、析出した結晶を減圧濾過した。得られた結晶にトルエン11ml、アセトニトリル22mlの混合液を投入し、油浴上で懸濁液を30分還流した。更に氷水冷下1時間攪拌した後、減圧濾過し、例示化合物5−1、3.7gを得た。(収率51.2%)
比較の製造方法では、カルバゾイル基が2つ置換したものも生成し、その為に精製も面倒であり、更にその合成収率も低い。一方、本発明の製造方法では、カルバゾイル基が2つ置換したものの生成もなく、精製が容易であり、高収率である。
【0051】
実施例2
《例示化合物3−1の合成》
【0052】
【化13】
【0053】
例示化合物1−1、30g(0.178mol)、酢酸340ml、無水酢酸60ml、ヨードベンゼンジアセテート26.1g(×0.455mol)を混合し、攪拌溶解した。この溶液にヨウ素20.6g(×0.455mol)、硫酸0.5mlを交互に10分で添加した。更に2時間攪拌した。
【0054】
析出した結晶を減圧濾過した。得られた結晶にエタノール100mlを加えて30分間懸濁還流した。室温で1時間攪拌した後、減圧濾過し、例示化合物3−1、15.9gを得た。(収率30.4%
《例示化合物2−1の合成》
【0055】
【化14】
【0056】
例示化合物3−1、10g(0.034mol)、酢酸200mlを混合し、50℃付近で臭素10.9g(×2mol)を10分で滴下し、更に16時間攪拌した。(内温65〜66℃)室温で1時間攪拌した後減圧濾過した。
【0057】
得られた結晶をTHF/メタノール混液に加え、30分間懸濁還流した。室温で1時間攪拌した後、減圧濾過し、例示化合物2−1、7.9gを得た。(収率62.2%)
実施例中の各化合物の同定はMASS及びNMRスペクトルで行い、それぞれ目的化合物であることを確認した。その他の一般式〔2〕、〔5〕に係る例示化合物も、上記の方法に準じて合成することができる。