(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、実施例1〜実施例3による蓄電モジュール、及び実施例4及び実施例5による作業機械について説明する。
【0012】
[実施例1]
図1に、実施例1による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル35の平面図を示す。蓄電容器10内に、蓄電積層体11が収容されている。蓄電容器10の平面形状は、例えば、頂点がやや丸みを帯びた長方形である。蓄電積層体11は、第1の集電極21、第2の集電極22、セパレータ(電解質層)25、第1の分極性電極27、及び第2の分極性電極28を含む。第1の集電極21と第2の集電極22とは、大部分の領域において相互に重なっている。両者が重なった部分に、第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28が配置されている。
【0013】
第1の分極性電極27と第2の分極性電極28とは、平面視においてほぼ同一の領域に配置される。第1の分極性電極27及び第2の分極性電極28が配置されている領域を「電極領域」29ということとする。電極領域29よりも外側で、蓄電容器10の外周よりも内側の領域を、「額縁領域」30ということとする。額縁領域30は、電極領域29よりも薄い。
【0014】
第1の集電極21及び第2の集電極22は、電極領域29の1つの縁の異なる位置から同一方向(
図1において、上向き)に伸びた延伸部分21A、22Aを有する。セパレータ25の外周線は、第1の集電極21と第2の集電極22とが重なっている領域よりも外側に位置する。延伸部分21A、22Aは、セパレータ25の外周よりも外側まで導出されている。
【0015】
第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13が、それぞれ蓄電容器10の内側から、蓄電容器10の同一の縁と交差して、蓄電容器10の外側まで引き出されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、それぞれ第1の集電極21の延伸部分21A及び第2の集電極22の延伸部分22Aと重なり、第1の集電極21及び第2の集電極22に電気的に接続されている。第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、相互に逆極性の電極として作用する。
【0016】
蓄電容器10の額縁領域30に、ガス抜き孔14が形成されている。ガス抜き孔14は、例えば延伸部分21Aと延伸部分22Aとの間に配置される。ガス抜き構造物15が、ガス抜き孔14に重なる位置に配置される。蓄電容器10内で発生したガスが、ガス抜き構造物15及びガス抜き孔14を通って外部に排出される。ガス抜き構造物15は、外部から蓄電容器10内への水分等の侵入を防止する。
【0017】
図2に、実施例1による蓄電モジュールの一部の分解斜視図を示す。2枚の保護板40の間に、厚さ方向に重ねられた複数(例えば3枚)の蓄電セル35が、挟まれている。蓄電セル35の積み重ね方向(厚さ方向)をz軸方向とするxyz直交座標系を定義する。複数の保護板40は、同一の幾何学的形状を有する。一方の保護板40の第1の主表面41と、他方の保護板40の第2の主表面42とが相互に対向し、両者の間に蓄電セル35が挟まれている。第1の主表面41及び第2の主表面42は、z軸に対して垂直な姿勢を保ち、x軸に平行な一対の縁、及びy軸に平行な一対の縁を有する。
【0018】
第1の主表面41のy軸に平行な一対の縁に、それぞれ第1の段差面(立ち下がり面)43が連続する。さらに、第1の段差面43に、第1の副表面(低い表面)45が連続する。第1の副表面45は第1の主表面41より低い位置に設けられている。第1の段差面43は、x軸に対して垂直であり、第1の副表面45はz軸に対して垂直である。
【0019】
第2の主表面42のy軸に平行な一対の縁に、それぞれ第2の段差面(立ち上がり面)44が連続する。さらに、第2の段差面44に、第2の副表面(高い表面)46が連続する。第2の副表面46は第2の主表面42より高い位置に設けられている。第2の段差面44は、x軸に対して垂直であり、第2の副表面46はz軸に対して垂直である。
【0020】
第1の主表面41のx軸方向の寸法(幅)は、第2の主表面42のx軸方向の寸法(幅)よりもやや小さい。立ち上がり面44の高さ(z軸方向の寸法)は、保護板40の間に挟まれている複数の蓄電セル35の合計の厚さと、立ち下り面43の高さ(z軸方向の寸法)との和よりも
低い。このため、保護板40及び蓄電セル35に積層方向(z軸方向)の圧縮力を印加すると、一方の保護板40の第1の主表面41が、他方の保護板40の高い表面46よりも深い位置まで侵入する。これにより、一方の保護板40の立ち上がり面44と、他方の保護板40の立ち下がり面43とが、部分的に対向するようになる。
【0021】
第1の主表面41及び第2の主表面42の幅の差を極僅かにしておくと、相互に対向する立ち下り面43と立ち上がり面44とが接触する。両者が接触すると、2枚の保護板40のx軸方向(位置拘束方向)に関する相対的な位置が拘束される。立ち下がり面43及び立ち上がり面44を、「位置拘束形状」ということとする。
【0022】
保護板40の低い表面45に第1の溝47が形成されており、高い表面46に第2の溝48が形成されている。第1の溝47及び第2の溝48は、y軸方向に延在する。
【0023】
保護板40の各々の、第1の主表面41と第2の主表面42との間の領域に、y軸方向に延在する複数の流路50が形成されている。さらに、保護板40の各々の低い表面45から高い表面46まで貫通する複数の貫通孔51が形成されている。
【0024】
貫通孔51を除くと、保護板40のy軸に垂直な断面は、どの位置においても同一の形状を有する。このため、保護板40は、Al等の金属の押し出し成型により容易に作製することができる。貫通孔51は、押し出し成型後に、穴開け加工を行うことにより形成される。
【0025】
図3に、実施例1による蓄電モジュールの断面図を示す。保護板40と、3枚の蓄電セル35とが、z軸方向に交互に積み重ねられている。相互に隣り合う2枚の保護板40のうち一方の保護板40の立ち上がり面44と、他方の保護板40の立ち下がり面43とが部分的に重なり、両者は、接触するか、または微小な間隙を挟んで対向する。なお、
図3では、相対位置関係を把握しやすくするために、両者の間に間隙が画定されているように示されている。
【0026】
立ち上がり面44及び立ち下がり面43(位置拘束構造)により、保護板40のx軸方向に関する相対位置が拘束される。このため、保護板40及び蓄電セル35を積み重ねる際の位置決めを容易に行うことができる。これにより、組立作業を簡便に行うことが可能になる。
【0027】
蓄電モジュールは、保護板40と蓄電セル35との積層体に、z軸方向の圧縮力を印加する加圧構造体を含む。蓄電セル35は、積層体に印加される圧縮力により保護板40の間に支持される。加圧構造体は、一対の端板55、56、及び複数のタイロッド57を含む。端板55、56は、積層体の両端に配置されている。一方の端板55は、一方の端に位置する保護板40の外側の表面(第1の主表面41)に接触し、他方の端板56は、他方の端に位置する保護板40の外側の表面(第2の主表面42)に接触する。
【0028】
タイロッド57は、一方の端板55から、保護板40の貫通孔51内を通過して、他方の端板56まで達する。端板55、56は、積層体に圧縮力を印加するために、保護板40よりも大きな剛性を有することが好ましい。例えば、端板55、56は、保護板40よりもヤング率の大きな材料で形成することが好ましい。または、端板55、56に、保護板40と同一の材料を用いる場合には、端板55、56の幾何学的形状を、保護板40の形状に比べて、より剛性の高い形状にすることが好ましい。
【0029】
蓄電モジュールの組み立て後には、x軸方向の加速度が加わったときに、保護板40の位置ずれが生じにくいという効果が得られる。
【0030】
保護板40と蓄電セル35との積層体に圧縮力を印加すると、蓄電セル35が変形して、保護板40の間隔が狭まる。このため、保護板40同士のz軸方向の相対位置は、自由に変化できることが好ましい。実施例1では、立ち上がり面44及び立ち下がり面43の姿勢が、x軸に対して垂直、すなわちz軸に対して平行に保たれている。このため、圧縮力に応じて、保護板40の間隔の変動が許容される。
【0031】
保護板40と蓄電セル35との積層体に圧縮力を印加する方法として、定圧予圧及び定位置予圧のいずれの方法を採用してもよい。定圧予圧を与える場合には、締め付けトルクを管理することにより、積層体に一定の大きさの圧縮力が印加される。定位置予圧を与える場合には、積層体の圧縮量が管理される。実施例1においては、相互に対向する低い表面45と高い表面46とが接触するまで、加圧機構によって圧縮力を印加することにより、圧縮量を管理することができる。この場合には、締め付けトルクを管理する必要はない。
【0032】
蓄電セル20に電気二重層キャパシタを用いる場合には、加圧機構による圧縮力は、蓄電セル20を機械的に支持するとともに、蓄電セル20の電気的特性の低下を防止する。蓄電セル20に、例えばリチウムイオンキャパシタ等を用いる場合には、電気的特性を維持するための圧縮力は必須ではない。このため、蓄電セル20を機械的に支持するための圧縮力で十分である。
【0033】
図4に、実施例1による蓄電モジュールの部分平面図を示す。
図5A及び
図5Bに、それぞれ
図4の一点鎖線5A−5A、及び一点鎖線5B−5Bにおける断面図を示す。保護板40と蓄電セル35とが、z軸方向に積み重ねられている。
【0034】
図4及び
図5Aに示すように、相互に隣り合う保護板40の流路50が、配管58により相互に接続されている。一例として、配管58の両端の外側の表面、及び流路50の両端の内側の表面に、ねじ溝を形成することにより、配管58と流路50とが相互に接続される。
図5Aでは、複数の保護板40の流路50が直列に接続された例を示したが、流路50を並列に接続にしてもよい。
【0035】
図4及び
図5Bに示すように、相互に隣り合う2枚の蓄電セル35の集電極タブ12、13を相互に接続することにより、複数の蓄電セル35が電気的に直列接続されている。保護板40を介して隣り合う蓄電セル35の集電極タブ12、13は、保護板40の外側(
図5Bにおいて上方)の空間において、相互に接続される。
【0036】
図4に示すように、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13は、x軸方向に関して、流路50と重ならない位置に設けられている。このため、配管58を、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13と重ならないように配置することができる。
【0037】
図6A及び
図6Bに、それぞれ蓄電セル35及び保護板40を一時的に保管する際の1ユニットの平面図及び正面図を示す。1ユニットは、一対の保護板40と、この間に挟まれた1枚または複数枚の蓄電セル35とで構成される。一方の保護板40の外側の表面に形成された第1の溝47と、他方の保護板40の外側の表面に形成された第2の溝48とに、クランプ60の両端が嵌合することにより、一対の保護板40の相対位置が仮固定される。
【0038】
蓄電セル35の蓄電容器10(
図1)は、ラミネートフィルムで構成されているため、ゴミ等による損傷を受けやすい。
図6A及び
図6Bに示すように、保護板40で挟んで保管することにより、蓄電セル35の損傷を防止することができる。さらに、蓄電セル35は、保護板40に比べて剛性が低い。蓄電セル35を保護板40で挟むことにより、剛性が高くなる。このため、一時保管用のユニットの取り扱いは、単体の蓄電セル35の取り扱いよりも容易である。これにより、作業性を高めることができる。
【0039】
図7に、クランプ60の変形例を示す。長方形の平板状部分60Bの四隅に、第1の溝47及び第2の溝48(
図6A、
図6B)に嵌合する突出部60Aが形成されている。このクランプ60を、一対の保護板40に嵌合させたとき、平板状部分60Bが、一対の保護板40の間の蓄電セル35が挟み込まれた空間を塞ぐ。このため、蓄電セル35が収容されている空間にゴミ等の異物が侵入しにくくなる。
【0040】
[実施例2]
図8Aに、実施例2による蓄電モジュールに用いられる1つのユニットの断面図を示す。以下の説明では、
図6Aに示した実施例1のユニットとの相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0041】
実施例1では、保護板40が、クランプ60で相互に仮固定されていたが、実施例2では、ボルトとナットからなる締結具63により、保護板40Aと40Bとが相互に固定されている。一方の保護板40Aの第2の主表面42Aと、他方の保護板40Bの第1の主表面41Bとが対向している。
【0042】
一方の保護板40Aに、低い表面45Aから高い表面46Aまで達する貫通孔64が形成されている。他方の保護板40Bにも、低い表面45Bから高い表面46Bまで達する貫通孔64が形成されている。締結具63のボルトは、一方の保護板40Aの貫通孔64、及び他方の保護板40Bの貫通孔64を通過する。貫通孔64の開口部には、ボルトの頭部、及びナットを収容するための凹部が形成されている。このため、締結具63は、一方の保護板40Aの低い表面45A及び他方の保護板40Bの高い表面46Bから突出しない。
【0043】
実施例1では、すべての保護板40の幾何学的形状が同一であった。実施例2では、保護板40Bの立ち上がり面44Bの高さが、保護板40Aの立ち上がり面44Aの高さより低く、保護板40Aの立ち下がり面43Aの高さと等しいか、それよりも低い。このため、1つのユニットに他のユニットを重ねたとき、一方のユニットの第2の主表面42Bに、他方のユニットの第1の主表面41Aが接触する。
【0044】
実施例2の一方の保護板40Aと他方の保護板40Bとは、異なる形状のノズルを用いて押し出し成型により作製することができる。
【0045】
図8Bに、実施例2による蓄電モジュールの断面図を示す。以下の説明では、
図3に示した実施例1の蓄電モジュールとの相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0046】
実施例2では、
図8Aに示したユニット70がz軸方向に積み重ねられている。相互に隣り合う2つのユニット70のうち一方のユニット70の保護板40Aの第1の主表面41Aと、他方のユニット70の保護板40Bの第2の主表面42Bとが接触している。端板55、56、及びタイロッド57により圧縮力が印加された状態でも、各ユニット70の保護板40A、40Bは、締結具63により相対位置が固定されたままである。
【0047】
実施例2では、ユニット70の状態で一時的に保管することができ、ユニット70を積み重ねることにより、蓄電モジュールを組み立てることができる。このため、実施例1に比べて、組立作業の簡便性が高まる。また、蓄電モジュールの分解及び再組み立てが容易である。このため、一部の蓄電セル35が故障した場合、故障した蓄電セル35を含むユニット70を、新しいユニット70に容易に交換することができる。
【0048】
図8Cに、実施例2の変形例による蓄電モジュールの断面図を示す。この変形例においては、保護板40A、40Bに冷却媒体用の流路が形成されていない。ユニット70の積層体の側方に、側板53、54が配置されている。側板53、54には、冷却媒体用の流路52が形成されている。側板53、54は、ボルト等で端板55、56に固定される。
【0049】
側板53、54は、保護板40A,40Bの側面に接する。保護板40A、40Bが、伝熱板として機能し、蓄電セル35で発生した熱が、保護板40A、40Bを通って側板53、54まで伝達される。保護板40A、40Bの側面の位置が揃っているため、保護板40A、40Bの各々と、側板53、54との安定的な接触を図り、良好な熱伝達効率を確保することが可能である。
【0050】
[実施例3]
図9に、実施例3による蓄電モジュールに用いられる蓄電セル35の平面図を示す。以下の説明では、
図1に示した実施例1の蓄電セル35との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0051】
実施例1の蓄電セルにおいては、第1の集電極タブ12と第2の集電極タブ13とが、蓄電容器10の1つの縁から同一方向に引き出されていた。実施例3の蓄電セル35においては、第1の集電極タブ12と第2の集電極タブ13とが、相互に反対側の縁から、反対方向に引き出されている。
【0052】
図10A及び
図10Bに、それぞれ実施例3による蓄電モジュールの一部の平面図及び断面図を示す。以下の説明では、
図4及び
図5Bに示した実施例1の蓄電モジュールとの相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0053】
実施例1では、
図5Bに示したように、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13が、保護板40の上方の空間のみを通過していたが、実施例3では、保護板40の上方の空間及び下方の空間を通過する。配管58は、x軸方向に関して、第1の集電極タブ12及び第2の集電極タブ13とは異なる位置に配置される。
【0054】
実施例3においても、実施例1と同様の効果が得られる。
【0055】
[実施例4]
図11〜
図14を参照して、実施例4による作業機械について説明する。実施例4では、実施例1〜実施例3のいずれかの蓄電モジュールの少なくとも1つが搭載される作業機械として、ハイブリッド型ショベルが例示される。
【0056】
図11は、実施例4によるハイブリッド型ショベルの概略平面図である。上部旋回体70に、旋回軸受け73を介して、下部走行体(走行装置)71が取り付けられている。上部旋回体70に、エンジン74、メインポンプ75、旋回用電動モータ76、油タンク77、冷却ファン78、座席79、蓄電モジュール80、及び電動発電機83が搭載されている。エンジン74は、燃料の燃焼により動力を発生する。エンジン74、メインポンプ75、及び電動発電機83が、トルク伝達機構81を介して相互にトルクの送受を行う。メインポンプ75は、ブーム82等の油圧シリンダに圧油を供給する。
【0057】
電動発電機83は、エンジン74の動力によって駆動され、発電を行う(発電運転)。発電された電力は、蓄電モジュール80に供給され、蓄電モジュール80が充電される。また、電動発電機83は、蓄電モジュール80からの電力によって駆動され、エンジン74をアシストするための動力を発生する(アシスト運転)。油タンク77は、油圧回路の油を貯蔵する。冷却ファン78は、油圧回路の油温の上昇を抑制する。操作者は、座席79に着座して、ハイブリッド型ショベルを操作する。
【0058】
図12に、実施例4によるハイブリッド型ショベルの側面図を示す。下部走行体71に、旋回軸受け73を介して上部旋回体70が搭載されている。旋回用電動モータ76(
図11)が、その駆動対象である上部旋回体70を、下部走行体71に対して、時計回り、または反時計周りに旋回させる。上部旋回体70に、ブーム82が取り付けられている。ブーム82は、油圧駆動されるブームシリンダ107により、上部旋回体70に対して上下方向に揺動する。ブーム82の先端に、アーム85が取り付けられている。アーム85は、油圧駆動されるアームシリンダ108により、ブーム82に対して前後方向に揺動する。アーム85の先端にバケット86が取り付けられている。バケット86は、油圧駆動されるバケットシリンダ109により、アーム85に対して上下方向に揺動する。
【0059】
蓄電モジュール80が、蓄電モジュール用マウント90及びダンパ(防振装置)91を介して、上部旋回体70に搭載されている。蓄電モジュール80には、上記実施例1〜3による蓄電モジュールが用いられる。蓄電モジュール80から供給される電力によって、旋回用電動モータ76(
図11)が駆動される。また、旋回用電動モータ76は、運動エネルギを電気エネルギに変換することによって回生電力を発生する。発生した回生電力によって、蓄電モジュール80が充電される。
【0060】
図13に、実施例4によるハイブリッド型ショベルのブロック図を示す。
図13において、機械的動力系を二重線で表し、高圧油圧ラインを太い実線で表し、電気系統を細い実線で表し、パイロットラインを破線で表す。
【0061】
エンジン74の駆動軸がトルク伝達機構81の入力軸に連結されている。エンジン74には、電気以外の燃料によって駆動力を発生するエンジン、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関が用いられる。エンジン74は、作業機械の運転中は、常時駆動されている。
【0062】
電動発電機83の駆動軸が、トルク伝達機構81の他の入力軸に連結されている。電動発電機83は、電動(アシスト)運転と、発電運転との双方の運転動作を行うことができる。電動発電機83には、例えば磁石がロータ内部に埋め込まれた内部磁石埋込型(IPM)モータが用いられる。
【0063】
トルク伝達機構81は、2つの入力軸と1つの出力軸とを有する。この出力軸には、メインポンプ75の駆動軸が連結されている。
【0064】
エンジン74に加わる負荷が大きい場合には、電動発電機83がアシスト運転を行い、電動発電機83の駆動力がトルク伝達機構81を介してメインポンプ75に伝達される。これにより、エンジン74に加わる負荷が軽減される。一方、エンジン74に加わる負荷が小さい場合には、エンジン74の駆動力がトルク伝達機構81を介して電動発電機83に伝達されることにより、電動発電機83が発電運転される。電動発電機83のアシスト運転と発電運転との切り替えは、電動発電機83に接続されたインバータ118により行われる。インバータ118は、制御装置130により制御される。
【0065】
制御装置130は、中央処理装置(CPU)130A及び内部メモリ130Bを含む。CPU130Aは、内部メモリ130Bに格納されている駆動制御用プログラムを実行する。制御装置130は、表示装置135に、各種装置の劣化状態等を表示することにより、運転者の注意を喚起する。
【0066】
メインポンプ75は、高圧油圧ライン116を介して、コントロールバルブ117に油圧を供給する。コントロールバルブ117は、運転者からの指令により、油圧モータ101A、101B、ブームシリンダ107、アームシリンダ108、及びバケットシリンダ109に油圧を分配する。油圧モータ101A及び101Bは、それぞれ
図11、12に示した下部走行体71に備えられた左右の2本のクローラを駆動する。
【0067】
電動発電機83の電気系統の入出力端子が、インバータ118を介して蓄電回路190に接続されている。インバータ118は、制御装置130からの指令に基づき、電動発電機83の運転制御を行う。蓄電回路190には、さらに、他のインバータ120を介して旋回用電動モータ76が接続されている。蓄電回路190及びインバータ120は、制御装置130により制御される。
【0068】
電動発電機83がアシスト運転されている期間は、必要な電力が、蓄電回路190から電動発電機83に供給される。電動発電機83が発電運転されている期間は、電動発電機83によって発電された電力が、蓄電回路190に供給される。
【0069】
旋回用電動モータ76は、インバータ120からのパルス幅変調(PWM)制御信号により交流駆動され、力行動作及び回生動作の双方の運転を行うことができる。旋回用電動モータ76には、例えばIPMモータが用いられる。IPMモータは、回生時に大きな誘導起電力を発生する。
【0070】
旋回用電動モータ76の力行動作中は、旋回用電動モータ76が、減速機124を介して、上部旋回体70を旋回させる。この際、減速機124は、回転速度を遅くする。これにより、旋回用電動モータ76で発生した回転力が増大する。また、回生運転時には、上部旋回体70の回転運動が、減速機124を介して旋回用電動モータ76に伝達されることにより、旋回用電動モータ76が回生電力を発生する。この際、減速機124は、力行運転の時とは逆に、回転速度を速める。これにより、旋回用電動モータ76の回転数を上昇させることができる。
【0071】
レゾルバ122が、旋回用電動モータ76の回転軸の回転方向の位置を検出する。検出結果は、制御装置130に入力される。旋回用電動モータ76の運転前と運転後における回転軸の回転方向の位置を検出することにより、旋回角度及び旋回方向が導出される。
【0072】
メカニカルブレーキ123が、旋回用電動モータ76の回転軸に連結されており、機械的な制動力を発生する。メカニカルブレーキ123の制動状態と解除状態とは、制御装置130からの制御を受け、電磁的スイッチにより切り替えられる。
【0073】
パイロットポンプ115が、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生する。発生したパイロット圧は、パイロットライン125を介して操作装置126に供給される。操作装置126は、レバーやペダルを含み、運転者によって操作される。操作装置126は、パイロットライン125から供給される1次側の油圧を、運転者の操作に応じて、2次側の油圧に変換する。2次側の油圧は、油圧ライン127を介してコントロールバルブ117に伝達されると共に、他の油圧ライン128を介して圧力センサ129に伝達される。
【0074】
圧力センサ129で検出された圧力の検出結果が、制御装置130に入力される。これにより、制御装置130は、下部走行体71、旋回用電動モータ76、ブーム82、アーム85、及びバケット86の操作の状況を検知することができる。
【0075】
図14に、蓄電回路190の等価回路図を示す。蓄電回路190は、蓄電モジュール80、コンバータ200、及びDCバスライン210を含む。コンバータ200の一対の電源接続端子203A、203Bに蓄電モジュール80が接続されており、一対の出力端子204A、204BにDCバスライン210が接続されている。一方の電源接続端子203B、及び一方の出力端子204Bは接地されている。蓄電モジュール80には、上記実施例1〜実施例3による蓄電モジュールが用いられる。
【0076】
DCバスライン210は、インバータ118、120を介して、電動発電機83及び旋回用電動モータ76に接続されている。DCバスライン210に発生している電圧が、電圧計211により測定され、測定結果が制御装置130に入力される。
【0077】
昇圧用の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)202Aのコレクタと、降圧用のIGBT202Bのエミッタとが相互に接続された直列回路が、出力端子204Aと204Bとの間に接続されている。昇圧用IGBT202Aのエミッタが接地され、降圧用IGBT202Bのコレクタが、高圧側の出力端子204Aに接続されている。昇圧用IGBT202Aと降圧用IGBT202Bの相互接続点が、リアクトル201を介して、高圧側の電源接続端子203Aに接続されている。
【0078】
昇圧用IGBT202A及び降圧用IGBT202Bに、それぞれダイオード202a、202bが、エミッタからコレクタに向かう向きが順方向になる向きで並列接続されている。出力端子204Aと204Bとの間に、平滑用のコンデンサ205が挿入されている。
【0079】
電源接続端子203Aと203Bとの間に接続された電圧計206が、蓄電モジュール80の端子間電圧を測定する。リアクトル201に直列に挿入された電流計207が、蓄電モジュール80の充放電電流を測定する。電圧及び電流の測定結果は、制御装置130に入力される。
【0080】
温度検出器136が、蓄電モジュール80の温度を検出する。検出された温度データは、制御装置130に入力される。温度検出器136は、例えば蓄電モジュール80を構成する複数の蓄電セルから選択された4個の蓄電セルに対応して準備された4個の温度計を含む。制御装置130は、例えば、4個の温度計で取得された4個の温度データの平均を算出し、平均値を蓄電モジュール80の温度とする。なお、キャパシタの過熱状態を判定する際には、4個の温度データが示す温度のうち最も高い温度を、蓄電モジュールの温度として採用してもよい。逆に、蓄電モジュールの温度が低下し過ぎた状態の判定には、4個の温度データが示す温度のうち最も低い温度を、蓄電モジュールの温度として採用してもよい。
【0081】
制御装置130が、昇圧用IGBT202A及び降圧用IGBT202Bのゲート電極に、制御用のパルス幅変調(PWM)電圧を印加する。
【0082】
以下、昇圧動作(放電動作)について説明する。昇圧用IGBT202Aのゲート電極にPWM電圧を印加する。昇圧用IGBT202Aのオフ時に、リアクトル201に、高圧側の電源接続端子203Aから昇圧用IGBT202Aのコレクタに向かって電流を流す向きの誘導起電力が発生する。この起電力が、ダイオード202bを介してDCバスライン210に印加される。これにより、DCバスライン210が昇圧される。
【0083】
次に、降圧動作(充電動作)について説明する。降圧用IGBT202Bのゲート電極に、PWM電圧を印加する。降圧用IGBT202Bのオフ時に、リアクトル201に、降圧用IGBT202Bのエミッタから高圧側の電源接続端子203Aに向かって電流を流す向きの誘導起電力が発生する。この誘導起電力により、蓄電モジュール80が充電される。
【0084】
蓄電モジュール80に、上記実施例1〜3による蓄電モジュールが用いられているため、振動や衝撃による蓄電モジュール80内の蓄電セル35及び保護板40の位置ずれが抑制される。特に、旋回軸受け73(
図11、
図12)のガタに起因して上部旋回体70が上下に震動する際に、ダンパ91(
図12)で吸収しきれない振動に起因する位置ずれを抑制することができる。さらに、流路50に水等の冷却媒体を流通させることにより、蓄電セルからの効率的な放熱を実現することができる。
【0085】
[実施例5]
実施例5では、実施例1〜実施例3のいずれかの蓄電モジュールの少なくとも1つが搭載される作業機械の例として、電動ショベルが例示される。
【0086】
図15及び
図16は、それぞれ実施例5による電動ショベルの概略平面図、及びブロック図である。以下の説明では、
図11、
図13に示した実施例4との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0087】
実施例5による電動ショベルでは、エンジン74(
図11、
図13)が搭載されていない。蓄電モジュール80を充電するための電圧コンバータ88及び外部電源接続プラグ87が準備されている。外部電源から、外部電源接続プラグ87及び電圧コンバータ88を介して、蓄電モジュール80を充電することができる。電動発電機83は、発電機として動作せず、蓄電モジュール80(蓄電回路190)から供給される電力により、電動機としてのみ動作する。
【0088】
電圧コンバータ88は、外部電源の電圧を蓄電モジュール80の電圧に適合させるための電圧変換を行う。
【0089】
実施例1〜3による蓄電モジュールは、実施例4のハイブリッド型ショベルのみならず、実施例5の電動ショベルにも適用することが可能である。
【0090】
実施例4及び実施例5では、作業機械への適用例として、ハイブリッド型ショベル及び電動ショベルを示したが、実施例1〜3の蓄電モジュールは、ショベルの他に、ホイルローダ、ブルドーザ、フォークリフト等の他の作業機械に適用することも可能である。実施例1〜3による蓄電モジュールを、ホイルローダやフォークリフトに適用する場合には、蓄電モジュールから走行用電動モータに電力が供給される。走行用電動モータは、駆動対象である走行装置、例えば車輪を駆動する。走行装置は、走行用電動モータによって駆動されることにより、走行装置に取り付けられた本体部を前進または後進させる。
【0091】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0092】
上述の実施例に基づいては、下記の付記に示された発明を開示する。
【0093】
(付記1)
積層方向に積み重ねられた複数の保護板と、
相互に隣り合う前記保護板の間に挟まれた平板状の蓄電セルと
を有し、
前記保護板は、前記積層方向に直交する方向である位置拘束方向に関する相対的な位置を拘束する位置拘束形状を有する蓄電モジュール。
【0094】
(付記2)
前記位置拘束形状は、前記位置拘束方向に直交する段差面により構成され、
前記保護板は、相互に対向する表面に形成された前記段差面同士が対向することにより、両者の前記位置拘束方向に関する相対位置が拘束される付記1に記載の蓄電モジュール。
【0095】
(付記3)
前記保護板は、その内部に形成され、前記積層方向及び前記位置拘束方向に直交する方向に延在する流路を含む付記2に記載の蓄電モジュール。
【0096】
(付記4)
さらに、
前記保護板の積層体の側方に配置され、前記保護板に熱的に接触する側板と、
前記側板に設けられた冷却媒体用の流路と
を有する付記2に記載の蓄電モジュール。
【0097】
(付記5)
前記保護板は、一方の表面と他方の表面とに、前記積層方向及び前記位置拘束方向に直交する方向に延在する仮止め用の溝が形成されている付記2乃至4のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【0098】
(付記6)
相互に隣り合う前記保護板の間に、直列接続された複数枚の前記蓄電セルが挟まれている付記1乃至5のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。
【0099】
(付記7)
さらに、前記蓄電セルと前記保護板との積層体に、前記積層方向の圧縮力を印加する加圧構造体を有する付記1乃至6のいずれか1項に記載の蓄電モジュール。