(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面処理を施してもよい金属被塗物上に、請求項1に記載のプライマー塗料組成物を乾燥膜厚0.5〜10μmとなるように塗装し、さらにナイロンで乾燥膜厚50〜200μmとなるように被覆することを特徴とする被膜形成方法。
【背景技術】
【0002】
燃料配管用鋼管は、金属被塗物との付着性や耐ガソリン性などにおいて、高い性能が要求されている。その為、該燃料配管用鋼管の表面に、メッキを施して付着性を向上させ、その上をクロメート処理皮膜で被覆して、耐ガソリン性等の向上を図っている。
【0003】
また、燃料配管用鋼管は、自動車ボディの下側に引き回してエンジンまで延びており、その為、走行中に跳ねた小石などが当たって被膜を毀損しないように、複層の被膜で覆われている。
図1は、燃料配管用鋼管の断面図の一例である。
【0004】
車両に用いられる燃料配管用鋼管は、耐食性や耐燃料油性などにおいて、高い性能が求められている。その為、当該鋼管1の内面側もしくは内外面には、ニッケルメッキ2が施され、外面側には亜鉛メッキ3及びクロメート化成被膜4が施され、更にプライマー塗膜5を介して、ポリアミド樹脂被覆6を施している。
【0005】
近年、地球環境問題に対する関心の高まりから、ガソリンにアルコールを混合したアルコール/ガソリン混合燃料が普及している。また、低燃費車の普及により一旦給油を行なうと次の給油を行うまでの間隔が長くなり、アルコール/ガソリン混合燃料が燃料配管用鋼管内に滞留し、酸化劣化することがあった(以下、このように劣化したアルコール/ガソリン混合燃料のことを「劣化燃料」と称する場合がある)。
【0006】
このような劣化燃料によって、燃料配管用鋼管の腐食が、純粋なガソリンを使用していた時に比べて早くなってきた。ここで、従来からのガソリンであれば、例え、ガソリンがポリアミド層6に接触することがあっても問題はなかった。しかし、例えば、車両点検時等において燃料配管用鋼管の継ぎ目を外した時に、劣化燃料がポリアミド層6に接触すると、燃料配管用鋼管の耐食性が低下することがあった。
【0007】
その原因として、劣化燃料が、ポリアミド層6から下層のプライマー塗膜5まで浸透してプライマー塗膜5を膨潤させて、プライマー塗膜5とクロメート処理被膜4との付着力が低下し、腐食性物質(例えば、酸、過酸化物、燃料精製貯蔵過程で混入する可能性のある塩素等)が、金属被塗物表面に到達することが考えられた。
【0008】
このような背景から、燃料配管用鋼管に塗装されるプライマー塗料組成物において、金属被塗物との付着性、ポリアミド(ナイロン)樹脂被膜との密着性、及び耐劣化燃料性等の向上が求められてきた。例えば、特許文献1には、ポリアミドイミド樹脂(A)、ポリアミド樹脂(B)、ナイロン樹脂ビーズ(C)、エポキシ樹脂(D)及び硬化剤(E)を含有するプライマー塗料組成物が開示されている。
【0009】
他に、特許文献2には、ポリイミド樹脂及び/又はポリエステルイミド樹脂(A)、ナイロン樹脂ビーズ(B)、エポキシ樹脂(C)及び硬化剤(D)を含有するプライマー塗料組成物が開示されている(特許文献2)。
【0010】
他に、メッキ被膜を含む多層の被膜で鋼管を被覆してなる燃料配管用鋼管であって、エポキシ化合物を主体にアミド結合若しくはイミド結合を導入したエポキシ硬化型樹脂組成物であるプライマー塗料組成物が開示されている(特許文献3)。
【0011】
しかしながら、特許文献1〜3に記載のプライマー塗料組成物では、プライマー塗料組成物の安定性に問題が生じることがあった。さらに、上記プライマー塗料組成物による塗膜は、金属被塗物との付着性、ポリアミド(ナイロン)樹脂被膜との密着性、及び耐劣化燃料性のいずれかが不十分であった。ここで、酸化劣化したアルコール/ガソリン混合燃料である劣化燃料は、劣化前のアルコール/ガソリン混合燃料よりも配管用鋼管に対する腐食性が非常に高いため、劣化燃料に対する耐性が強く求められている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のプライマー塗料組成物は、ポリイミド樹脂(A)、ポリアミドイミド樹脂(B)、ナイロン樹脂ビーズ(C)及びフェノール樹脂(D)を含むプライマー塗料組成物に関する。以下、詳細に説明する。
【0019】
ポリイミド樹脂(A)
本発明に用いられるポリイミド樹脂(A)は、特に制限がなく、プライマー塗料組成物中の有機溶剤に可溶であるポリイミド樹脂が使用できる。これらのポリイミド樹脂(A)の中でも、テトラカルボン酸二無水物(a1)又はその誘導体と、ジアミン(a2)とを有機溶媒中で反応させてポリアミック酸を得た後、ポリアミック酸をイミド転化することによって得られるポリイミド樹脂が、プライマー塗料組成物の安定性の面から好ましい。
【0020】
上記テトラカルボン酸二無水物(a1)は、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0021】
また、ジアミン(a2)は、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−第三ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルヘプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ピペラジン等が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物(a1)又はその誘導体、ジアミン(a2)は、それぞれ1種類以上を適宜に選定して反応させることができる。
【0022】
上記テトラカルボン酸二無水物(a1)又はその誘導体と、ジアミン(a2)との反応に用いられる有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン等が挙げられ、単独または併用することができる。
【0023】
本発明のプライマー塗料組成物に使用するポリイミド樹脂(A)は、上記有機溶媒中で、テトラカルボン酸二無水物(a1)又はその誘導体と、ジアミン(a2)を混合して、反応温度150〜220℃、好ましくは180〜200℃で、反応時間0.5〜10時間、好ましくは3〜8時間の反応を行って得られるポリアミック酸溶液を使用することができる。また、ポリイミド樹脂(A)には、前記ポリアミック酸溶液を転化率(反応率)が5〜100%の範囲で、イミド転化した樹脂を使用することもできる。
【0024】
また、市販されているポリイミド樹脂(A)は、パイヤーML、SKYBOND700、SKYBOND703(以上、Industrial Summit Technology社製、商品名)、U−Varnish−A、U−Varnish−S(以上、宇部興産社性、商品名)、HCI−7000、HCI−1000S、HCI−1200E、HCI−1300(以上、日立化成社製、商品名)などが挙げられる。このようなポリイミド樹脂(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
ポリアミドイミド樹脂(B)
本発明に用いられるポリアミドイミド樹脂(B)は、特に制限がなく、プライマー塗料組成物中の有機溶剤に可溶であるポリアミドイミド樹脂が使用できる。これらのポリアミドイミド樹脂(B)の中でも、芳香族ジイソシアネート化合物(b1)と、酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸(b2)又はその誘導体とを適当な有機溶媒中で反応させて得られるポリアミドイミド樹脂が、プライマー塗料組成物の安定性の面から好ましい。
【0026】
上記芳香族ジイソシアネート化合物(b1)は、例えば、ビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,3’−ジイソシアネート、ビフェニル−3,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジエチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアネートなどが挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0027】
上記芳香族ジイソシアネート化合物(b1)と併用される他のジイソシアネートは、例えば、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,4’−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4’−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、ナフタレン−2,6−ジイソシアネート、4,4’−[2,2−ビス(4−フェノキシフェニル)プロパン]ジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートなどを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで、予め合成しておいたポリイソシアネートを用いてもよく、適当なブロック剤で安定化したものを使用してもよい。
【0028】
上記ジイソシアネート成分と反応させる酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸(b2)又はその誘導体は、イソシアネート基又はアミノ基と反応する酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸又はその誘導体が挙げられる。
【0029】
本発明のプライマー塗料組成物に使用するポリアミドイミド樹脂(B)は、有機溶媒中で、芳香族ジイソシアネート化合物(b1)、必要に応じて他のジイソシアネートを加え、次いで酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸(b2)又はその誘導体を混合して、反応温度150〜220℃、好ましくは180〜200℃で、反応時間2〜10時間、好ましくは3〜8時間の反応を行って得ることができる。
【0030】
上記有機溶媒は、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン等が挙げられ、単独または併用することができる。
【0031】
なお、市販されているポリアミドイミド樹脂(B)は、バイロマックスHR11NN、バイロマックスHR12N2、バイロマックス13NX、バイロマックス14ET(以上、東洋紡績(株)製)、HI−405−30、HPC−5000、HPC−5010S、HPC−5020、HPC−5030、HPC−6000、HPC−6100、HPC−7200、HPC−9000(以上、日立化成工業社製)等が挙げられる。
【0032】
このようなポリアミドイミド樹脂(B)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、本発明のプライマー塗料組成物は、ポリアミドイミド樹脂(B)を配合することによって、ポリアミド(ナイロン)樹脂被膜との付着性を向上できる。
【0033】
ナイロン樹脂ビーズ(C)
本発明において、ナイロン樹脂ビーズとは、平均粒子径1〜100μm、好ましくは5〜50μmの直径を有するナイロン樹脂の粒子を意味する。本発明において、平均粒子径は、UPA−EX250(日機装株式会社製、商品名、粒度分布測定装置、動的光散乱法・レーザードップラー法(UPA法))を用いて測定した。ナイロン樹脂ビーズは、通常、溶剤に不要である。
【0034】
本発明に用いるナイロン樹脂ビーズ(本明細書中において、ポリアミド樹脂ビーズと示すこともある)(C)としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12等(好ましくはポリアミド6、ポリアミド12等)のポリアミド樹脂を含む粒子が挙げられる。
【0035】
本発明において、平均粒子径は、に規定する方法で測定したものを意味する。
【0036】
尚、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11及びポリアミド12の構造式は以下の通りである:
【0038】
なお、市販されているナイロン樹脂ビーズ(C)は、Orgasol、Rilsan(以上、アルケマ社製)、SNPパウダー13、SNPパウダー19(以上、メタルカラー社製)、A1020LP(ユニチカ社製)、ダイアミド、ベストジント(以上、ダイセル・エポック社製)などが挙げられる。このようなナイロン樹脂ビーズ(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
フェノール樹脂(D)
本発明に用いるフェノール樹脂(D)は、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、及びポリパラビニルフェノールのいずれも用いることができる。
【0040】
また、メチロール基が導入されたフェノール樹脂も用いることができる。さらにメチロール基が導入されたフェノール樹脂において、導入されたメチロール基の一部又はすべてを、炭素数6以下のアルコールでアルキルエーテル化したフェノール樹脂も用いることができる。また、クレゾール型ノボラックフェノール樹脂、クレゾール型レゾールフェノール樹脂なども用いることができる。
【0041】
なおフェノール樹脂(D)の市販品は、ショウノールBRG−555、ショウノールBRG−556、ショウノールBRG−558、ショウノールCKM−923、ショウノールCKM−983、ショウノールBKM−2620、ショウノールBRL−2854、ショウノールBRG−5590M、ショウノールCKS−3898、ショウノールCKS−3877A、ショウノールCKM−937、ショウノールCKM−2400(以上、昭和高分子社製、商品名)、マルカリンカーM、マルカリンカーMB、マルカリンカーM−S−1、マルカリンカーM−S−2、マルカリンカーM−S−3、マルカリンカーCST(以上、丸善石油化学社製、商品名);ニカノールNP−100、ニカノールP−100、ニカノールHP−150、ニカノールPR−1440(以上、フドー社製)等が挙げられる。
【0042】
プライマー塗料組成物
なお本発明のプライマー塗料組成物は、ポリイミド樹脂(A)、ポリアミドイミド樹脂(B)、ナイロン樹脂ビーズ(C)及びフェノール樹脂(D)の各樹脂固形分の合計100質量部に対して、ポリイミド樹脂(A)5〜45質量部、好ましくは10〜38質量部、ポリアミドイミド樹脂(B)5〜45質量部、好ましくは15〜43質量部、ナイロン樹脂ビーズ(C)10〜45質量部、好ましくは15〜40質量部、フェノール樹脂(D)1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部の割合で含有する。
【0043】
本発明のプライマー塗料組成物における、ポリイミド樹脂(A)、ポリアミドイミド樹脂(B)、ナイロン樹脂ビーズ(C)、及びフェノール樹脂(D)の配合割合は、上記範囲内であることが、金属被塗物との付着性、ポリアミド(ナイロン)樹脂被膜との密着性及び耐劣化燃料性に優れたプライマー塗膜を得る為に必要である。
【0044】
また、本発明のプライマー塗料組成物は、必要に応じて、顔料成分を配合することができる。上記顔料成分は、特に制限なく使用でき、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等の有機着色顔料;例えば、黄色酸化鉄、べんがら、二酸化チタン、カーボンブラック等の無機着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)等の防錆顔料を添加できる。
【0045】
また、必要であれば、アルミ顔料、パール顔料等の鱗片状顔料も配合できる。これらの顔料成分は、特に限定されることなく、単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0046】
本発明のプライマー塗料組成物は、ポリイミド樹脂(A)、ポリアミドイミド樹脂(B)、ナイロン樹脂ビーズ(C)及びフェノール樹脂(D)の各成分を有機溶剤に溶解もしくは分散して、固形分を5〜50質量%、好ましくは10〜45質量%に調整して使用することが、塗料安定性や塗装作業性の面から好ましい。
【0047】
上記有機溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、(o−、m−、p−)シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール2−ブトキシエタノールジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトンメチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、アセト酢酸エチル、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミドなどが挙げられる。
【0048】
[被膜形成方法]
本発明の被膜形成方法は、表面処理を施してもよい金属被塗物上に、前記プライマー塗料組成物を塗装し、さらにその上に、ポリアミド(ナイロン)被膜を形成する方法である。従って、本発明の被膜形成方法は、金属被塗物(当該金属被塗物は表面処理が施されていてもよい)上に、前記プライマー塗料組成物を塗装する工程、プライマー塗料組成物の塗膜上に、ポリアミド(ナイロン)被膜を形成する工程を含む。本発明の方法は、特に、燃料配管用鋼管の被覆に用いられることが望ましい。以下、詳細に説明する。
【0049】
金属被塗物
金属被塗物は、鉄、銅などの金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板が好ましく用いられ、例えば、銅メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、亜鉛ニッケルメッキ鋼板等が挙げられる。これらの金属被塗物上へのプライマー塗料組成物の塗装は、金属被塗物の表面処理を施すことが好ましく、例えばクロメート化成処理、リン酸塩化成処理、金属酸化皮膜処理などが挙げられる。
【0050】
プライマー塗料組成物の塗装方法
前記プライマー塗料組成物の塗装方法は、例えば、バーコーター、ロールコーター、フローコーター、ディッピング、スプレー等による塗装方法が用いられる。なかでも、ロールコーター、スプレー等による塗装が、均一な膜厚を得る点で好ましい。プライマー塗膜の硬化は、通常の塗膜の焼付手段、例えば、熱風加熱、赤外線加熱、高周波加熱などにより行うことができる。
【0051】
プライマー塗料組成物を塗装した塗膜に対し、焼付け乾燥を行うことができる。焼付け乾燥の温度は特に限定されないが、例えば、100〜300℃、好ましくは150〜280℃等の範囲で適宜設定できる。焼付け乾燥の時間は特に限定されないが、例えば、0.5秒〜5分間、好ましくは1秒〜3分間等の範囲で適宜設定できる。焼付け乾燥して得られたプライマー塗膜は、例えば、乾燥膜厚0.5〜10μm、好ましくは乾燥膜厚2〜8μmである。
【0052】
ポリアミド(ナイロン)樹脂の被覆
プライマー塗料組成物を塗装した塗膜上には、ポリアミド(ナイロン)樹脂の被膜を形成する。該形成方法は、例えば、プライマー塗膜上に、ポリアミド(ナイロン)樹脂の融点以上に加熱して溶融してシート状にして被覆する。
【0053】
上記ポリアミド(ナイロン)樹脂の被膜は、乾燥膜厚が50〜200μm、好ましくは乾燥膜厚が80〜150μmである。なお、ポリアミド(ナイロン)樹脂は、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド611、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1011、ポリアミド1012、ポリアミド11、ポリアミド12等が挙げられる。以上のような複層被膜を有する燃料配管用鋼管は、金属被塗物との付着性、ポリアミド(ナイロン)樹脂被膜との密着性及び耐劣化燃料性に優れた性能を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0055】
実施例1 プライマー塗料No.1
分散機に、バイロマックスHR11NN(注3)42部、硫酸バリウムHF(注11)5部、KW−105(注12)5部、チタンJR−605(注13)5部及びN−メチルピロリドンとビーズミルを仕込み、粒度が10μmになるまで顔料分散を行った。なお粒度は、粒ゲージ(JIS K5600−2−5に準拠)を用いて測定した。
【0056】
その中に、パイヤーML(注1)8部、ORGASOL 2002−D(注5)45部、ショウノールCKM−937(注7)5部にシクロヘキサノンを加えて十分に攪拌し、プライマー塗料No.1を得た。
(注1)パイヤーML:Industrial Summit Technology社製、商品名、ポリイミド樹脂(A)
(注2)HCI−7000:日立化成社製、商品名、ポリイミド樹脂(A)
(注3)バイロマックスHR11NN:東洋紡績社製、商品名、ポリアミドイミド樹脂(B)
(注4)HPC−5000:日立化成工業社製、商品名、ポリアミドイミド樹脂(B)
(注5)ORGASOL 2002−D:アルケマ社製、商品名、ナイロン樹脂ビーズ(C)(ポリアミド12、平均粒子径20μm)
(ORGASOL 2002−Dの平均粒子径をご教示下さい)
(注6)SNPパウダー13:株式会社メタルカラー社製、商品名、ナイロン樹脂ビーズ(C) (ポリアミド6、平均粒子径13μm)
(SNPパウダー13の平均粒子径をご教示下さい)
(注7)ショウノールCKM−937:昭和高分子社製、商品名、レゾール型フェノール樹脂
(注8)マルカリンカーM−S−1:丸善石油株式会社製、商品名、ポリパラビニルフェノール
(注9)jER1001:三菱化学社製、商品名、エポキシ当量475、数平均分子量900
(注10)jER828:三菱化学社製、商品名、エポキシ当量190、数平均分子量380
(注11)硫酸バリウムHF:深州嘉信化工有限責任公司社製、商品名、バリタ
(注12)KW−105:テイカ社製、商品名、トリポリリン酸二水素アルミニウム
(注13)チタンJR−605:テイカ社製、商品名、チタン白。
【0057】
実施例2〜12 プライマー塗料No.2〜No.12
表1の配合内容とする以外は、実施例1と同様にして、固形分30%のプライマー塗料
No.2〜No.12を得た。
【0058】
【表1】
【0059】
比較例1 プライマー塗料No.13
分散機にパイヤーML(注1)17部、硫酸バリウムHF(注11)5部、KW−105(注3)5部、チタンJR−605(注4)5部、及びN−メチルピロリドンとビーズミルを仕込み、粒度が10μmになるまで顔料分散を行った。なお粒度は、粒ゲージ(JIS K5600−2−5に準拠)を用いて測定した。
【0060】
その中に、jER1001(注9)83部に、シクロヘキサノンを加えて十分攪拌し、固形分30%のプライマー塗料No.13を得た。
【0061】
比較例2〜12 プライマー塗料No.14〜No.24
表2の配合内容とする以外は、比較例1と同様にして、固形分30%のプライマー塗料
No.14〜No.24を得た。
【0062】
【表2】
【0063】
試験用試料の作成及び評価方法は、下記に従って行った。
【0064】
試験用試料の作成
燃料配管用鋼管(ニッケルメッキ、亜鉛メッキ及びクロメート処理済み、8mmφ)に、実施例及び比較例で得たプライマー塗料No.1〜No.24を乾燥膜厚8μmとなるように塗装し、200℃で3分間焼き付けた(乾燥膜厚8μmでの試験は、より厳しい条件である)。
【0065】
さらにその上に、溶融したポリアミド(ナイロン)樹脂(ポリアミド11)を乾燥膜厚100μmとなるように被覆して、各試験用試料を得た。
(注14)一次付着性:
得られた試料を縦方向に4mm幅で塗膜に切り込みを入れ、ポリアミド(ナイロン)被覆を1cm/秒で引っ張り、プライマー塗膜の剥離状態を下記の基準により評価した:
◎:プライマー塗膜は剥離せずに、ポリアミド(ナイロン)塗膜のみが破断する
○:プライマー塗膜が凝集破壊又は界面剥離し、かつポリアミド(ナイロン)塗膜が破断する
△:プライマー塗膜とナイロン塗膜との界面において剥離するが、ポリアミド(ナイロン)塗膜は破断しない
×:プライマー塗膜とナイロン塗膜との界面において剥離し、かつポリアミド(ナイロン)塗膜が破断する。
【0066】
(注15)折り曲げ性:
常温にて、各試験用試料を半径10mmのパイプベンダに押し当てて、180度折り曲げる加工を行なったのち、JIS K 5600−5−6(1999)碁盤目−テープ法に準じて、ナイフを使用して、試験用試料のポリアミド(ナイロン)塗膜面に素地に達するように約1mmの間隔で縦・横それぞれ平行に5本の切目を入れて碁盤目を形成し、その表面にセロハン(登録商標)粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後の碁盤目塗面を下記基準にて評価した:
◎:ポリアミド(ナイロン)塗膜に剥がれがなく、問題なし
○:16個の碁盤目のうち、碁盤目の角にポリアミド(ナイロン)塗膜の微小剥がれ(ふち欠け)がみられる
△:16個の碁盤目のうち、ポリアミド(ナイロン)塗膜の剥がれが1〜2個ある
×:16個の碁盤目のうち、ポリアミド(ナイロン)塗膜の剥がれが3個以上ある。
【0067】
(注16)耐劣化燃料油性:
各試験用試料を80℃×72時間、劣化燃料(エタノール30%/水分/腐食性物質の混合物)に浸漬した後、1時間室温に放置し、縦方向に4mm幅で塗膜に切り込みを入れ、ポリアミド(ナイロン)被覆を1cm/秒で引っ張り、プライマー塗膜の剥離状態を下記の基準により評価した:
◎:試験前の剥離強度に対して、試験後の剥離強度の残存率が、50%以上である
○:試験前の剥離強度に対して、試験後の剥離強度の残存率が、30%以上で、かつ50%未満である
△:試験前の剥離強度に対して、試験後の剥離強度の残存率が、15%以上で、かつ30%未満である
△△:試験前の剥離強度に対して、試験後の剥離強度の残存率が、1%以上で、かつ15%未満である
×:試験後の剥離強度がゼロである。
【0068】
(注17)総合評価
本発明が属するプライマー塗料組成物の分野においては、一次付着性、折り曲げ性及び耐劣化燃料油性の全てが優れていることが要求される。従って、下記の基準により総合評価を行った:
◎:上記3項目が全て◎である、
○:上記3項目が全て◎又は○であり、少なくとも1つが○である、
△:上記3項目が全て◎、○又は△であり、少なくとも1つが△である、
△△:上記3項目が全て◎、○、△又は△△であり、耐劣化燃料性が△△である、
×:上記3項目のうち、少なくとも1つが×である