特許第5968239号(P5968239)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968239水中異物除去装置及びその水中異物除去装置を備えた水循環装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968239
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】水中異物除去装置及びその水中異物除去装置を備えた水循環装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/26 20060101AFI20160728BHJP
   B01D 21/24 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B01D21/26
   B01D21/24 Z
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-15632(P2013-15632)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-144442(P2014-144442A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(74)【代理人】
【識別番号】100125494
【弁理士】
【氏名又は名称】山東 元希
(74)【代理人】
【識別番号】100141324
【弁理士】
【氏名又は名称】小河 卓
(74)【代理人】
【識別番号】100153936
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 健誠
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】飯島 茂
(72)【発明者】
【氏名】古川 誠司
(72)【発明者】
【氏名】宮 一普
(72)【発明者】
【氏名】野田 清治
【審査官】 目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−002248(JP,A)
【文献】 実開昭54−076582(JP,U)
【文献】 特開平04−290503(JP,A)
【文献】 実開昭54−036877(JP,U)
【文献】 特開2002−036111(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0049120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00−21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成され、下部が有底筒状に形成された貯水槽と、
前記貯水槽の上部の傾斜面に設けられ、当該貯水槽の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口と、
前記貯水槽の上部の上端面を貫通して設けられ、当該貯水槽内の水を流出させる水流出口と、
前記貯水槽の中に設けられた整流体とを備え、
前記整流体は、上部が前記水流出口から下方に向かうに連れて直径が広がる前記貯水槽の上部の傾斜面と平行な外形円錐状に形成され、
前記水流入口から流入する水は、前記貯水槽と前記整流体との間を旋回しながら降下した後に、前記整流体の内側に入って上昇し、前記水流出口から流出することを特徴とする水中異物除去装置。
【請求項2】
前記貯水槽下部のうちの下側が分離部として取り外し可能に接続されていることを特徴とする請求項1記載の水中異物除去装置。
【請求項3】
前記分離部の底部に設置され、上下・左右が対称となるように複数の捕捉板を配置して格子状に構成され、前記分離部の高さより低い異物捕捉部を備えたことを特徴とする請求項記載の水中異物除去装置。
【請求項4】
前記分離部の底部に設置され、中心を同一とする直径の異なるリング捕捉板を前記分離部の高さより低く積層して構成された異物捕捉部を備えたことを特徴とする請求項記載の水中異物除去装置。
【請求項5】
前記分離部の底部に周方向に配置された先端の尖った複数の捕捉棒で構成される異物捕捉部を備えたことを特徴とする請求項記載の水中異物除去装置。
【請求項6】
前記分離部の底部に、中心を同一とする直径の異なる複数の捕捉筒を配置して構成された異物捕捉部を備え、
前記異物捕捉部の各捕捉筒の直径が大きくなるに連れて高さが低くなっていることを特徴とする請求項記載の水中異物除去装置。
【請求項7】
上部が上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成され、下部が有底筒状に形成され、該下部のうちの下側が分離部として取り外し可能に接続された貯水槽と、
前記貯水槽の上部の傾斜面に設けられ、当該貯水槽の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口と、
前記貯水槽の上部の上端面を貫通して設けられ、当該貯水槽内の水を流出させる水流出口と、
前記貯水槽の中に設けられ、上部が前記水流出口から下方に向かうに連れて直径が広がる前記貯水槽の上部の傾斜面と平行な外形円錐状に形成された整流体と、
前記分離部の底部に設置され、上下・左右が対称となるように複数の捕捉板を配置して格子状に構成され、前記分離部の高さより低い異物捕捉部とを備え、
前記水流入口から流入する水は、前記貯水槽と前記整流体との間を旋回しながら降下した後に、前記異物捕捉部を通って前記整流体の内側に入って上昇し、前記水流出口から流出することを特徴とする水中異物除去装置。
【請求項8】
上部が上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成され、下部が有底筒状に形成され、該下部のうちの下側が分離部として取り外し可能に接続された貯水槽と、
前記貯水槽の上部の傾斜面に設けられ、当該貯水槽の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口と、
前記貯水槽の上部の上端面を貫通して設けられ、当該貯水槽内の水を流出させる水流出口と、
前記貯水槽の中に設けられ、上部が前記水流出口から下方に向かうに連れて直径が広がる前記貯水槽の上部の傾斜面と平行な外形円錐状に形成された整流体と、
前記分離部の底部に設置され、中心を同一とする直径の異なるリング捕捉板を前記分離部の高さより低く積層して構成された異物捕捉部とを備え、
前記水流入口から流入する水は、前記貯水槽と前記整流体との間を旋回しながら降下した後に、前記異物捕捉部を通って前記整流体の内側に入って上昇し、前記水流出口から流出することを特徴とする水中異物除去装置。
【請求項9】
上部が上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成され、下部が有底筒状に形成され、該下部のうちの下側が分離部として取り外し可能に接続された貯水槽と、
前記貯水槽の上部の傾斜面に設けられ、当該貯水槽の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口と、
前記貯水槽の上部の上端面を貫通して設けられ、当該貯水槽内の水を流出させる水流出口と、
前記貯水槽の中に設けられ、上部が前記水流出口から下方に向かうに連れて直径が広がる前記貯水槽の上部の傾斜面と平行な外形円錐状に形成された整流体と、
前記分離部の底部に周方向に配置された先端の尖った複数の捕捉棒で構成される異物捕捉部とを備え、
前記水流入口から流入する水は、前記貯水槽と前記整流体との間を旋回しながら降下した後に、前記異物捕捉部を通って前記整流体の内側に入って上昇し、前記水流出口から流出することを特徴とする水中異物除去装置。
【請求項10】
上部が上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成され、下部が有底筒状に形成され、該下部のうちの下側が分離部として取り外し可能に接続された貯水槽と、
前記貯水槽の上部の傾斜面に設けられ、当該貯水槽の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口と、
前記貯水槽の上部の上端面を貫通して設けられ、当該貯水槽内の水を流出させる水流出口と、
前記貯水槽の中に設けられ、上部が前記水流出口から下方に向かうに連れて直径が広がる前記貯水槽の上部の傾斜面と平行な外形円錐状に形成された整流体と、
前記分離部の底部に、中心を同一とする直径の異なる複数の捕捉筒を配置して構成され、前記捕捉筒の直径が大きくなるに連れて高さが低くなる異物捕捉部とを備え、
前記水流入口から流入する水は、前記貯水槽と前記整流体との間を旋回しながら降下した後に、前記異物捕捉部を通って前記整流体の内側に入って上昇し、前記水流出口から流出することを特徴とする水中異物除去装置。
【請求項11】
前記整流体の最大半径を前記貯水槽の上部の最大半径の0.67倍以下としたことを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の水中異物除去装置。
【請求項12】
前記貯水槽の下部の半径を前記整流体の最大半径の1.5倍以上としたことを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の水中異物除去装置。
【請求項13】
前記整流体の下端から前記分離部の底部までの高さは、前記整流体の高さ以上であることを特徴とする請求項2〜10の何れか一項に記載の水中異物除去装置。
【請求項14】
前記分離部の中央に設置され、その設置位置が当該分離部の高さより低く前記異物捕捉部の高さ以上である異物上昇抑制板を備えたことを特徴とする請求項10の何れか一項に記載の水中異物除去装置。
【請求項15】
前記異物上昇抑制板は、上面が上方に突出する円弧状に形成されていることを特徴とする請求項14記載の水中異物除去装置。
【請求項16】
前記異物捕捉部の材質は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリアセタール、シリコーンの何れかとし、前記異物捕捉部の表面粗さを中心線平均粗さにして30μm以上としたことを特徴とする請求項3〜10の何れか一項に記載の水中異物除去装置。
【請求項17】
循環水槽及びポンプを有し、前記ポンプの運転によって前記循環水槽内の水を循環させる水循環装置において、
前記ポンプに並列に接続された請求項1〜16の何れか一項に記載の水中異物除去装置と、
前記水中異物除去装置の水流入側に設けられたバルブとを備え、
前記水中異物除去装置に流入する水量を前記バルブで調節することを特徴とする水循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水中に含まれる異物粒子を捕捉して除去する水中異物除去装置及びその水中異物除去装置を備えた水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空調・冷熱機器における熱交換器は、必要不可欠な技術である。熱交換器は、近接する2つの流体間に温度差が生じると、温度勾配に沿った熱移動が生じ、熱交換を行う性質を利用したものである。2流体の間には、熱伝導率の高い金属を伝熱面として挟むことで流体の混合を防ぎ、効率の良い熱交換を実現する。熱交換器には多くの種類があり、多管式、コイル式、二重管式、プレート式、スパイラル式などがある。熱交換を行う流体を一般に熱媒体や冷媒と呼び、主にフルオロカーボンやアンモニアなどが用いられる。
【0003】
空調・冷熱機器の中には、熱媒体として水を用いた熱交換器を有する製品があり、水熱交換器と呼ばれる。水熱交換器を用いた空調機器の一例として産業用チラーがある。産業用チラーでは循環水を冷却し、冷水を提供する。産業用チラーの循環水回路には、鉄製配管が使用されることが多い。
【0004】
産業用チラーの水熱交換器の伝熱面に鉄さびが付着することが知られている。ラジエータや鉄製配管といった鉄製部品に、循環水中の溶存酸素が酸化剤として作用することで酸化反応が起き、鉄さびが生じると考えられている。
【0005】
伝熱部への鉄さびの付着は、熱交換の効率を下げるため、産業用チラーのような空調・冷熱機器の水循環回路中の循環水から鉄さびを除去する必要がある。
【0006】
従来の水中異物除去装置では、円筒状の容器の接線方向から入る原水に旋回流を起こし、旋回流と重力沈降を利用して、異物と処理水を分離している。異物は装置下部から排出され、処理水は上部から外部へ排出される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−87604号公報(図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来の水中異物除去装置では、異物の沈降部における巻き上げが生じ、分離効率が低下する。沈降部に旋回流を抑制するための邪魔板を設置しても、流動状態を乱すことになり、異物の巻き上げにつながるといった課題があった。
また、循環水を排出する流路の断面積が小さいため、出口流路付近の装置内の流動状態を乱し、異物の重力沈降を妨げると共に連続的な処理が困難という課題もあった。
【0009】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、沈降した異物の巻き上げを防止でき、出口流路付近の装置内の流動状態の乱れを抑制できる水中異物除去装置及びその水中異物除去装置を備えた水循環装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る水中異物除去装置は、上部が上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成され、下部が有底筒状に形成された貯水槽と、貯水槽の上部の傾斜面に設けられ、当該貯水槽の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口と、貯水槽の上部の上端面を貫通して設けられ、当該貯水槽内の水を流出させる水流出口と、貯水槽の中に設けられた整流体とを備え、整流体は、上部が水流出口から下方に向かうに連れて直径が広がる貯水槽の上部の傾斜面と平行な外形円錐状に形成され、水流入口から流入する水は、貯水槽と整流体との間を旋回しながら降下した後に、整流体の内側に入って上昇し、水流出口から流出する。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、貯水槽の上部を外形円錐状とし、その上部の内側に上部が円錐形状の整流体を設けて、水を接線方向から流入させて旋回させている。これにより、異物粒子が沈降する滞留時間を確保すると共に流動状態の乱れを防止することができ、沈降した異物粒子の巻き上げを防ぐことができる。そのため、重力沈降によって異物粒子を貯水槽の底部に堆積させ、異物粒子を再浮上させることなく効率よく分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態1に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。
図2図1の水中異物除去装置の上方を透かして示す平面図である。
図3図1の水中異物除去装置における粒子の沈降分離の考え方を示す図である。
図4】本発明の実施の形態2に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。
図5図4の異物捕捉部を上方から見て示す拡大平面図である。
図6】本発明の実施の形態3の水中異物除去装置における異物捕捉部の拡大平面図である。
図7】本発明の実施の形態4に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態5に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。
図9図8に示す異物捕捉部の拡大平面図である。
図10】本発明の実施の形態6に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。
図11】本発明の実施の形態7に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。
図12】本発明の実施の形態8に係る水循環装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図、図2図1の水中異物除去装置の上方を透かして示す平面図、図3図1の水中異物除去装置における粒子の沈降分離の考え方を示す図である。
【0014】
実施の形態1に係る水中異物除去装置100は、上部2aが上端部から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成された貯水槽2と、貯水槽2の上部2aの傾斜面に設けられ、貯水槽2の壁に対して接線方向から水を流入させる水流入口1と、貯水槽2の上部2aの上端面を貫通して設けられ、貯水槽2内の水を流出させる水流出口6と、貯水槽2の中に設けられた整流体3とを備えている。前述の貯水槽2は、下部2bが有底筒状に形成され、その下部2bの下側が分離部4として接合部5a、5bによって取り外し可能に接続されている。水流入口1及び水流出口6は、それぞれ水循環装置の水管と接続される。
【0015】
整流体3は、上部3aが水流出口6から下方に向かうに連れて直径が広がる外形円錐状に形成されている。その傾斜面は貯水槽2の上部2aの傾斜面と平行になっている。また、整流体3の上部3aには、筒状に形成された下部3bが接続されている。
【0016】
前記のように構成された水中異物除去装置においては、水流入口1に循環水が流入すると、図2に示すように、その循環水は、貯水槽2の上部2aの傾斜面と整流体3の上部3aの傾斜面との間に流入し旋回流となる。そして、その間を旋回する循環水は、貯水槽2の筒状の下部2bと整流体3の筒状の下部3bとの間を旋回しながら貯水槽2の分離部4の底部に流れ込む。その旋回流によって、整流体3上を流れる時間が長くなると共に、その間に循環水に含まれる異物は外周に押し出され、異物粒子間の凝集が生じる。その凝集により径が大きくなった異物粒子は、分離部4の底部に重力沈降し、底部に堆積する。
【0017】
異物粒子が除去された循環水は、整流体3の下部3bの内側に入って円錐状の上部3a内を通り、水流出口6から流出する。流出する循環水は、分離部4から貯水槽2の中央を通るため、整流体3の外側の旋回流によって外周に寄せられた異物粒子と混ざることなく、整流体3の内側の上部に達する。循環水の出口方向の流れを上向きとすることにより、分離部4中の上昇方向の流速を低下させ、分離部4の底部に溜まった異物粒子の巻き上げを防ぐ。
【0018】
分離部4の底部に異物粒子が堆積された場合は、接合部5a、5bによって、分離部4を貯水槽2の下部2bから取り外し、分離部4を洗浄することで、堆積した異物粒子を除去し、異物粒子の捕捉能力を回復させることができる。分離部4の洗浄頻度は、循環水に含まれる異物量に応じて増減する。例えば、循環水の流量を100ton/hrとし、異物濃度を10mg/Lとし、分離部4の体積を60Lとした場合は、2ヶ月に1回以上の頻度で洗浄するとよい。
【0019】
次に、動作原理について図3を用いて説明する。図3に整流体3より下の部分における異物粒子の運動について示す。
整流体3から下方へ流出した旋回流の循環水は、分離部4の中心方向へ平均流速Vで移動し、整流体3の内側を平均流速Vで上昇した後、水流出口6から流出される。異物粒子の沈降速度をV、整流体3と貯水槽2との間の距離をΔRとし(この部分では上向きの流れは生じないとする。)、整流体3の下端から分離部4の底部までの高さをhとする。異物粒子が分離部4の底部に捕捉されるには、以下の式を満たせばよい。時間tを異物粒子が分離部4の底部に到着する時間とすると、式(1)が成立する。
【0020】
・t=h・・・(1)
・t<ΔR ・・・(2)
前記の式(2)は、時間tにおいて異物粒子が整流体3の内側に存在しないときの条件である。
異物粒子は、沈降速度Vが循環水の上昇速度Vよりも大きければ、整流体3の内側に存在しても上向きの流れの中でも沈降し、分離部4の底部に到達する。よって、式(2)を満足しなくても以下の式(3)を満たせばよい。
<V・・・(3)
【0021】
以上の式を満たす条件として、貯水槽2の最大半径R、整流体3の最大半径Rを以下のように決める。
沈降速度Vは異物粒子の径に依存するため、その粒子の径が5μm以上の場合には、R/R=1.2以上1.5以下が望ましい。異物粒子の径が5μm未満の場合には、R/R=1.5以上2.0以下が望ましい。つまり、整流体3の最大半径Rを貯水槽2の最大半径Rの0.5倍以上0.67倍以下とする。なお、貯水槽2の下部2bは円筒形であり、上部2aの最大半径は下部2bの半径と一致するように構成されている。整流体3の下端から分離部4の底部までの高さhは、整流体3の高さhの1倍以上の高さとすればよい。
【0022】
以上のように実施の形態1においては、旋回流に伴う異物粒子の凝集と異物粒子の径に合わせた貯水槽2の半径Rと整流体3の下端から分離部4の底部までの高さhにより、異物粒子が沈降する滞留時間を確保すると共に流動状態の乱れを防止することができ、沈降した異物粒子の巻き上げを防ぐことができる。そのため、重力沈降によって異物粒子を分離部4の底部に堆積させ、異物粒子を再浮上させることなく効率よく分離することができる。
【0023】
実施の形態2.
実施の形態2は、貯水槽2の分離部4の底部に、異物粒子を捕捉するための異物捕捉部を設けたものである。
図4は本発明の実施の形態2に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図、図5図4の異物捕捉部を上方から見て示す拡大平面図である。なお、実施の形態2においては、実施の形態1と同様の部分には同じ符号を付し、実施の形態1にない異物捕捉部について説明する。
【0024】
貯水槽2の分離部4の底部には、底部の軸心を直交する線を中心として、上下・左右に対称的に複数の捕捉板7aを等間隔に配置して構成された格子状の異物捕捉部7が設置されている。例えば、各捕捉板7aの厚さは0.5cm以上で、各捕捉板7aの高さは分離部4の高さの1/2以下に設定されている。なお、捕捉板7aの枚数は、前記条件を満たし、上下・左右に対称的な格子状となれば何枚配置してもよい。また、前述の捕捉板7aの厚さ及び高さは一例であって、分離部4の直径及び高さに応じて設定される。各捕捉板7aの材質は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリアセタール、シリコーンの何れかが使用されている。その捕捉板7aの表面は、表面形状測定または粗さ計による表面粗さ測定によって中心線平均粗さが30μm以上となるように施されている。
【0025】
この構成によれば、分離部4の底部に至る前に中心方向の速度を持って整流体3の内側に入る一部の異物粒子についても、上向きの水流に乗る前に異物捕捉部7によって捕捉される。異物捕捉部7が格子状となっているため、分離部4の中心方向の速度を持つ異物粒子は異物捕捉部7に衝突する。異物捕捉部7に衝突して捕捉された異物粒子は、分離部4の底部に堆積する。異物捕捉部7の各捕捉板7aの表面に粗さを持たせた樹脂とすることで、静電気的に中性な樹脂による分子間力の効果により異物粒子が捕捉される。異物粒子の一例である酸化鉄粒子の凝集体の直径が最大で30μm程度であることから、表面粗さを30μmとすることで、凝集体が各捕捉板7aの凹みに捕捉され易くなる。
【0026】
以上のように実施の形態2においては、分離部4の底部に、底部の軸心を直交する線を中心として、上下・左右に対称的に複数の捕捉板7aを等間隔に配置して構成された格子状の異物捕捉部7を設置している。この構成により、分離部4の中心方向の速度を持った異物粒子が上向きの水流に乗る前に異物捕捉部7の各捕捉板7aに衝突して捕捉され、そのため、沈降した異物粒子の巻き上げを抑えることができる。
【0027】
実施の形態3.
図6は本発明の実施の形態3の水中異物除去装置における異物捕捉部の拡大平面図である。なお、実施の形態3においては、実施の形態2と同様の部分には同じ符号を付し、実施の形態2と異なる異物捕捉部7について説明する。
【0028】
貯水槽2の分離部4の底部には、その底部の軸心を同一中心とする直径の異なるリング捕捉板7bを配置して構成された異物捕捉部7が設置されている。各リング捕捉板7bは、分離部4の高さ方向に積層されており、リング捕捉板7bの1枚の厚さは、分離部4の底部の直径をリング捕捉板7bの積層枚数の4倍の値で割った値以下とする。ただし、各リング捕捉板7bの1枚の厚さは、長期運転に耐える強度を確保するために0.5cm以上とすることが望ましい。各リング捕捉板7bをそれぞれ積層して構成される異物捕捉部7の高さは、分離部4の高さの1/2以下とする。なお、計算上の各リング捕捉板7bの1枚の厚さが0.5cm未満の場合には、分離部4の底部に設置するリング捕捉板7bの個数を減らす必要がある。異物捕捉部7を構成する各リング捕捉板7bの材質は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリアセタール、シリコーンの何れかが使用されている。そのリング捕捉板7bの表面は、表面形状測定または粗さ計による表面粗さ測定によって中心線平均粗さが30μm以上となるように施されている。
【0029】
この構成によれば、分離部4の底部に至る前に中心方向の速度を持って整流体3の内側に入る一部の異物粒子についても、上向きの水流に乗る前に異物捕捉部7によって捕捉される。異物捕捉部7に捕捉された異物粒子は、分離部4の底部に堆積する。異物捕捉部7は直径の異なる複数のリング捕捉板7bで構成されているため、分離部4内の流動状態を乱すことなく、循環水の流れが分離部4の底部に至るのを防ぐ。そのため、異物粒子の巻き上げを防止することができ、異物粒子の回収率を高めることができる。異物捕捉部7のリング捕捉板7bの材質を表面に粗さを持たせた樹脂とすることで、静電気的に中性な樹脂による分子間力の効果により異物粒子が捕捉される。異物粒子の一例である酸化鉄粒子の凝集体の直径が最大で30μm程度であることから、表面粗さを30μmとすることで、酸化鉄粒子の凝集体が各リング捕捉板7bの凹みに捕捉され易くなる。
【0030】
以上のように実施の形態3においては、分離部4の底部に、その底部の軸心を同一中心とする直径の異なるリング捕捉板7bを配置して構成された異物捕捉部7を設置している。この構成により、分離部4の中心方向の速度を持った異物粒子を上向きの水流に乗る前に捕捉することができ、そのため、沈降した異物粒子の巻き上げを抑えることができる。
【0031】
実施の形態4.
図7は本発明の実施の形態4に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。なお、実施の形態4においては、実施の形態2と同様の部分には同じ符号を付し、実施の形態2と異なる部分だけを説明する。
【0032】
実施の形態4においては、分離部4の底部の中央には、上端に異物上昇抑制板8が設けられた支持部8aが設置され、また、分離部4の底部には、支持部8aを中央とする格子状の異物捕捉部7が設置されている。異物上昇抑制板8は、上方から見て円形状に形成され、下面が分離部4の底部に対して平行になっている。異物上昇抑制板8の位置は、異物捕捉部7の高さの1.5倍以上とし、異物上昇抑制板8の円形の面積は、分離部4の底部の面積の1/4以上1/2以下とし、異物上昇抑制板8の厚さは、2cm以上かつ分離部4の高さの1/4以下となっている。異物捕捉部7は、実施の形態2と同様に、複数の捕捉板7aを用いて格子状に形成されている。各捕捉板7aの厚さは0.5cm以上とし、各捕捉板7aの高さは分離部4の高さの1/2以下としている。
【0033】
この構成によれば、異物捕捉部7に至る前に整流体3の内側に入る一部の異物粒子についても、上向きの水流に乗る前に異物上昇抑制板8によって捕捉できる。異物上昇抑制板8と異物捕捉部7の間には下向きの流れが生じ、1回の接触で捕捉できない異物粒子が再び異物捕捉部7に接触して捕捉されるので、異物粒子の回収率を高めることができる。異物捕捉部7があることから、下向きの流れを生じても沈降した異物粒子の巻き上げは生じない。異物上昇抑制板8は、分離部4の底部の中央に配置されて十分な高さがあることから、異物上昇抑制板8の上面に堆積する異物粒子の量は十分に少ない。
【0034】
以上のように実施の形態4においては、異物上昇抑制板8を異物捕捉部7の高さの1.5倍以上の位置に配置し、分離部4の底部に異物上昇抑制板8を中央として格子状の異物捕捉部7を配置している。この構成により、異物粒子が上向きの水流に乗る前に異物上昇抑制板8によって捕捉することができ、更に異物粒子の一部が残存する循環水に下向きへの水流を生じさせて、再び循環水を異物捕捉部7に接触させて捕捉することができ、循環水に残存した異物粒子を効率よく回収することができる。
【0035】
実施の形態5.
図8は本発明の実施の形態5に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図、図9図8に示す異物捕捉部の拡大平面図である。なお、実施の形態5においては、実施の形態2と同様の部分には同じ符号を付し、実施の形態2と異なる異物捕捉部について説明する。
【0036】
貯水槽2の分離部4の底部に、例えば、底部の全面に対し1本/cm以上の密度で同心円状に複数の捕捉棒9aを配置して構成された異物捕捉部9が設けられている(図9参照)。各捕捉棒9aは、先端が針状に尖っており、断面が円形状に形成されている。各捕捉棒9aの先端の角度は例えば45°以下とし、各捕捉棒9aの胴部の直径は0.5cm以上とし、各捕捉棒9aの高さは、分離部4の高さの1/2以下としている。各捕捉棒9aの材質は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリアセタール、シリコーンの何れかが使用されている。その捕捉棒9aの表面は、表面形状測定または粗さ計による表面粗さ測定によって中心線平均粗さが30μm以上となるように施されている。
【0037】
この構成によれば、分離部4の底部に至る前に整流体3の内側に入る一部の異物粒子についても、上向きの水流に乗る前に複数の捕捉棒9aによって捕捉される。循環水に対する捕捉棒9aの接触面積を増加させると共に、捕捉した異物粒子を針状の斜面に沿わせて効率よく捕捉棒9aの基部に導いて分離部4の底部に沈降させる。捕捉棒9aの材質を表面に粗さを持たせた樹脂とすることで、静電気的に中性な樹脂による分子間力の効果により異物粒子が捕捉される。異物粒子の一例である酸化鉄粒子の凝集体の直径が最大で30μm程度であることから、表面粗さを30μmとすることで、凝集体が捕捉棒9aの凹みに捕捉され易くなる。
【0038】
以上のように実施の形態5においては、先端が尖った複数の捕捉棒9aを底部の全面に対し1本/cm以上の密度で同心円状に配置している。この構成により、異物粒子が上向きの水流に乗る前に捕捉することができ、更に異物粒子と複数の捕捉棒9aとの接触面積を増加させる効果がある。また、捕捉棒9aの先端で捕捉した異物粒子を斜面に沿わせて捕捉棒9aの基部に導くことができ、そのため、異物粒子を効率よく沈降させることができ、循環水による巻き上げを防ぐことができる。
【0039】
実施の形態6.
図10は本発明の実施の形態6に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。なお、実施の形態6においては、実施の形態5と同様の部分には同じ符号を付し、実施の形態5と異なる部分だけを説明する。
【0040】
実施の形態6においては、分離部4の底部の中央に設置された支持部10a上に異物上昇抑制板10が設置され、その支持部10aを中央とする底部に複数の捕捉棒9aで構成される異物捕捉部9が設けられている。
異物上昇抑制板10は、上方から見て円形状に形成され、下面が分離部4の底部に対して平行で、上面が上方へ突出するように円弧状に形成されている。異物上昇抑制板10の位置は、捕捉棒9aの高さの1.5倍以上とし、異物上昇抑制板10の円形の面積は、分離部4の底部の面積の1/4以上1/2以下とし、異物上昇抑制板10の厚さは、2cm以上かつ分離部4の高さの1/4以下となっている。
【0041】
この構成によれば、捕捉棒9aに至る前に整流体3の内側に入る一部の異物粒子についても、上向きの水流に乗る前に異物上昇抑制板10によって捕捉できる。異物上昇抑制板10と複数の捕捉棒9aとの間には下向きの流れが生じ、1回の接触で捕捉できない異物粒子が再び複数の捕捉棒9aに接触して捕捉されるので、異物粒子の回収率を高めることができる。分離部4の底部に複数の捕捉棒9aがあることから、下向きの流れを生じても沈降した異物粒子の巻き上げは生じない。異物上昇抑制板10は、分離部4の底部の中央に配置されて十分な高さがある上に、異物上昇抑制板10の上面が円弧状に形成されているため、その上面に沿って異物粒子が降下し、分離部4の底部側に流れて複数の捕捉棒9aにより捕捉される。
【0042】
以上のように実施の形態6においては、異物上昇抑制板10を捕捉棒9aの高さの1.5倍以上の位置に配置し、その複数の捕捉棒9aを支持部8aの周囲に配置している。この構成により、異物粒子が上向きの水流に乗る前に異物上昇抑制板10によって捕捉することができ、更に異物粒子の一部が残存する循環水に下向きへの水流を生じさせて、再び循環水を複数の捕捉棒9aに接触させることができ、循環水に残存した異物粒子を効率よく捕捉することができる。また、異物上昇抑制板10の上面が円弧状に形成されているため、異物粒子が上向きの水流に乗る前にその円弧状の面に沿わせて降下させることができる。そのため、再び分離部4の底部に配置された複数の捕捉棒9aにより捕捉させることができ、異物粒子の回収率を高めることができる。
【0043】
実施の形態7.
図11は本発明の実施の形態7に係る水中異物除去装置を模式的に示す断面図である。なお、実施の形態7においては、実施の形態6と同様の部分には同じ符号を付し、実施の形態6と異なる部分だけを説明する。
【0044】
貯水槽2の分離部4の底部に、その底部の軸心を同一中心とする直径の異なる例えば3本の捕捉筒11a、11b、11cが等間隔に配置されて構成された異物捕捉部11が設けられている。3本の捕捉筒11a、11b、11cのうちの直径が小さい捕捉筒11aの高さが最も高く、直径が大きくなるに連れて捕捉筒11b、11cの高さが順に低くなっている。捕捉筒11aの高さは、分離部4の高さの0.75倍であり、捕捉筒11a、11b、11cの厚さは、0.5cm以上である。なお、一例として3本の捕捉筒11a、11b、11cとしているが、4本以上の捕捉筒を用いてもよい。その場合、分離部4の底部の軸心を同一中心として等間隔に配置し、最も高い捕捉筒を前述の如く分離部4の高さの0.75倍とする。捕捉筒11a、11b、11cの材質は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの共重合合成樹脂(ABS樹脂)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネイト、ポリアミドイミド、ポリアセタール、シリコーンの何れかが使用されている。各捕捉筒11a、11b、11cの表面は、表面形状測定または粗さ計による表面粗さ測定によって中心線平均粗さが30μm以上となるように施されている。
【0045】
この構成によれば、分離部4の底部に至る前に整流体3の内側に入る一部の異物粒子についても、上向きの流れが強い中央部分に位置する最も高さの高い捕捉筒11aの内部に入る。各捕捉筒11a、11b、11cの外周面が整流体として作用し、沈降した粒子の巻き上げを防ぐ。また、各捕捉筒11a、11b、11cの材質を表面に粗さを持たせた樹脂とすることで、静電気的に中性な樹脂による分子間力の効果により異物粒子が捕捉される。異物粒子の一例である酸化鉄粒子の凝集体の直径が最大で30μm程度であることから、表面粗さを30μmとすることで、酸化鉄粒子の凝集体が各捕捉筒11a、11b、11cの凹みに捕捉され易くなる。
【0046】
以上のように実施の形態7においては、分離部4の底部に、その底部の軸心を同一中心とする直径の異なる3本の捕捉筒11a、11b、11cを等間隔に配置し、そのうちの直径が小さい捕捉筒11aの高さが最も高く、直径が大きくなるに連れて捕捉筒11b、11cの高さが順に低くなるようにしている。この構成により、中央部に高い多層円筒を設置することで、上向きの流れが強い中央部分ほど早い段階で異物粒子が上向きの水流に乗る前に捕捉することができ、異物粒子の巻き上げを防止できる。また、各捕捉筒11a、11b、11cの外周面が整流体として作用するので、その周囲を旋回する異物粒子を捕捉することができ、より異物粒子の回収率が高くなる。
【0047】
なお、実施の形態3では、分離部4の底部にその底部の軸心を同一中心とする直径の異なるリング捕捉板7bを配置して構成された異物捕捉部7を設けたことについて説明したが、分離部4の底部の中央に、異物上昇抑制板8あるいは異物上昇抑制板10の何れかを加えるようにしてもよい。
【0048】
実施の形態8.
図12は本発明の実施の形態8に係る水循環装置の概略構成を示す図である。
図中に示す水循環装置は、空調機器12、ポンプ13及び循環水槽16で構成される水循環回路に水中異物除去装置15を備えている。水中異物除去装置15は、水流入側がバルブ14aを介してポンプ13の流入側に接続され、水流出側がバルブ14bを介してポンプ13の流入側に接続されている。水中異物除去装置15に流入する水の量は、循環水量の例えば5%以下となるように、バルブ14aの開度が制御される。
【0049】
この構成によれば、バルブ14a、14bにより、適切な水の量を水中異物除去装置15に流入させることができるので、分離効率を高めることが可能となっている。
【0050】
実施例.
ここで、以下に示す水中異物除去装置を水循環装置に適用した場合の具体例について説明する。
循環水の流量を例えば100ton/hrとすると、水中異物除去装置15には、バルブ14a、15bによって流量の5%である5ton/hr、つまり、85L/minが流れる。水中異物除去装置15の各寸法を図1の符号に従って示すと、h=h=60cm、R=12cm、R=18cm、ΔR=6cm、水流入口1を半径5cmの円形とする。異物捕捉部7の中心を分離部4の底部の軸心とし、リング捕捉板7bの積層枚数を4枚、高さを15cm、厚さを2cm、リング捕捉板7b間の間隔を2cm、つまり、外径8cm、16cm、24cm、32cmの4つのリング捕捉板7bとし、材質を例えばポリエチレンテレフタレートとする。そして、表面形状測定または粗さ計による表面粗さ測定によって中心線平均粗さ30μm以上にする。また、異物上昇抑制板8の半径を10cm、厚さを10cm、分離部4の底部から異物上昇抑制板8の下面までの高さを25cmとする。
【0051】
循環水に1mg/Lの濃度で酸化鉄が含まれるとし、分離部4の洗浄頻度を2ヶ月に1回とする。除去装置の手前と出口で循環水を10mL採取し、循環水に含まれる酸化鉄量を比較したところ、運転直後は85%以上の回収率であり、2ヶ月で80%まで低下したが、洗浄を行うことで、85%まで回復した。
この構成により、水中異物除去装置に適量の循環水を加えることが可能であり、効率よく異物粒子を分離することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 水流入口、2 貯水槽、2a 貯水槽の上部、2b 貯水槽の下部、3 整流体、3a 整流体の上部、3b 整流体の下部、4 分離部、5a、5b 接合部、6 水流出口、7 異物捕捉部、7a 捕捉板、7b リング捕捉板、8、10 異物上昇抑制板、8a、10a 支持部、9 異物捕捉部、9a 捕捉棒、11 異物捕捉部、11a、11b、11c 捕捉筒、12 空調機器、13 ポンプ、14a、14b バルブ、15 水中異物除去装置、16 循環水槽。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12