(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記占有有無記憶部にアクセスし、前記処理対象列車による占有有りとされた転てつ器のうち、前記処理対象列車の列車位置に基づいて、通過した転てつ器の占有を解除する解除ステップを更に含み、
前記確保ステップは、前記占有有無記憶部にアクセスして再度前記確保を行うステップを有し、
前記転てつ器制御ステップは、再度の前記確保により新たに確保された転てつ器を動作させる制御を行うステップを有し、
前記進行許可ステップは、前記進行許可区間を更新するステップを有する、
請求項1に記載の連動制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば上述の特許文献1に開示されているような従来の無線列車制御システムにおける連動制御では、従来の連動制御をそのまま踏襲しており、線路を区切った所定の区間(軌道回路が設置された物理的な区間や仮想的なブロック)を単位とした進路鎖錠を行っていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、無線列車制御システムにおける新たな連動制御を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
無線列車制御システムにおける連動制御方法であって、
処理対象列車の列車位置を発点とし、当該処理対象列車の到達目標位置を着点とする当該発点から当該着点までを予定進路として設定する進路設定ステップ(例えば、
図15のステップA3〜A5)と、
各転てつ器の論理的な占有有無を占有列車と関連付けて記憶する占有有無記憶部(例えば、
図9の地上記憶部400、
図13の進路構成情報530)にアクセスし、前記予定進路中に存在する転てつ器のうち、前記発点から順に占有可能な転てつ器までを、前記処理対象列車による占有有りとして確保する確保ステップ(例えば、
図15のステップA7)と、
前記確保ステップで確保した転てつ器を動作させる制御を行う転てつ器制御ステップ(例えば、
図15のステップA9)と、
前記予定進路のうち、前記発点から順に前記動作制御が完了した転てつ器の進路部分までを進行許可区間として前記処理対象列車の進行を許可する進行許可ステップ(例えば、
図15のステップA11)と、
を含む連動制御方法である。
【0007】
また、他の発明として、
車上装置と地上装置とが無線通信を行って、前記車上装置が搭載された列車を制御する無線列車制御システムにおける前記地上装置(例えば、
図9の地上装置30)であって、
前記列車の列車位置を発点とし、当該列車の到達目標位置を着点とする当該発点から当該着点までを予定進路として設定する進路設定手段と、
各転てつ器の論理的な占有有無を占有列車と関連付けて記憶する占有有無記憶部にアクセスし、前記予定進路中に存在する転てつ器のうち、前記発点から順に占有可能な転てつ器までを、前記列車による占有有りとして確保する確保手段と、
前記確保手段によって確保された転てつ器を制御する転てつ器制御部に、当該転てつ器を動作させる信号を送信する動作指示手段と、
前記転てつ器制御部から前記転てつ器の状態を示す信号を受信し、前記予定進路のうち、前記発点から順に動作が完了した転てつ器の進路部分までを進行許可区間として前記車上装置に通知する進行許可手段と、
を備えた地上装置を構成しても良い。
【0008】
また、他の発明として、
車上装置と地上装置とが無線通信を行って、前記車上装置が搭載された列車を制御する無線列車制御システムにおける前記車上装置(例えば、
図18の車上装置20A)であって、
前記列車の列車位置を発点とし、当該列車の到達目標位置を着点とする当該発点から当該着点までを予定進路として設定する進路設定手段と、
各転てつ器の論理的な占有有無を占有列車と関連付けて記憶する前記地上装置が備える占有有無記憶部にアクセスし、前記予定進路中に存在する転てつ器のうち、前記発点から順に占有可能な転てつ器までを、前記列車による占有有りとして確保する確保手段と、
前記確保手段によって確保された転てつ器を制御する転てつ器制御部に、当該転てつ器を動作させる信号を送信する動作指示手段と、
前記転てつ器制御部から前記転てつ器の状態を示す信号を受信し、前記予定進路のうち、前記発点から順に動作が完了した転てつ器の進路部分までを進行許可区間として前記列車の走行を制御する走行制御手段と、
を備えた車上装置を構成しても良い。
【0009】
この第1の発明等によれば、無線列車制御システムにおける新たな連動制御が実現される。具体的には、処理対象列車の列車位置を発点として到達目標位置までを予定進路として設定する。そして、予定進路中に存在する転てつ器のうち、発点から順に占有可能な転てつ器までを処理対象列車による占有有りとして確保する。次いで、確保した転てつ器を動作させて、動作制御が完了した転てつ器の進路部分までを進行許可区間として処理対象列車の進行を許可する。従って、無線列車制御システムにおいて、効率的な連動制御を実現することができる。
【0010】
また、第2の発明として、第1の発明の連動制御方法であって、
前記占有有無記憶部にアクセスし、前記処理対象列車による占有有りとされた転てつ器のうち、前記処理対象列車の列車位置に基づいて、通過した転てつ器の占有を解除する解除ステップ(例えば、
図16のステップB15)を更に含み、
前記確保ステップは、前記占有有無記憶部にアクセスして再度前記確保を行うステップ(例えば、
図15のステップA19〜A21)を有し、
前記転てつ器制御ステップは、再度の前記確保により新たに確保された転てつ器を動作させる制御を行うステップ(例えば、
図15のステップA21)を有し、
前記進行許可ステップは、前記進行許可区間を更新するステップ(例えば、
図15のステップA23)を有する、
連動制御方法を構成しても良い。
【0011】
この第2の発明によれば、処理対象列車の列車位置に基づいて通過した転てつ器の占有を解除することができる。そして、他の列車による占有の解除に伴って新たに占有が可能となる転てつ器が生じ得る。そこで、占有が可能となった転てつ器の占有を確保し、確保した転てつ器を動作させて進行許可区間を更新することができる。
【0012】
また、第3の発明として、第2の発明の連動制御方法であって、
前記占有有無記憶部は、前記予定進路中の前記処理対象列車が未到達の部分に係る第1の占有有無(例えば、
図13の鎖錠有無536の「進路鎖錠」)と、前記処理対象列車の全長部分に係る第2の占有有無(例えば、
図13の鎖錠有無の「てっ査鎖錠」)とを記憶し、
前記解除ステップは、前記処理対象列車の列車先頭位置の外方で且つ、列車最後尾位置の内方に位置する転てつ器については、前記第1の占有有無を解除するとともに前記第2の占有有無を占有有りとし、前記処理対象列車の列車最後尾位置の外方に位置する転てつ器については、前記第2の占有有無を解除するステップ(例えば、
図16のステップB9〜B15)を有する、
連動制御方法を構成しても良い。
【0013】
この第3の発明によれば、転てつ器の占有有無として、予定進路中の処理対象列車が未到達の部分に係る第1の占有有無と、処理対象列車の全長部分に係る第2の占有有無が記憶される。そして、転てつ器の占有の解除は、処理対象列車の列車先頭位置の外方、且つ、列車最後尾位置の内方に位置する転てつ器については、第1の占有有無を解除して第2の占有有無を占有有りとし、列車最後尾位置の外方に位置する転てつ器については、第2の占有有無を解除する。
【0014】
また、第4の発明として、第1〜第3の何れかの発明の連動制御方法であって、
前記進路設定ステップは、
予め定められた前記到達目標位置の候補の中から到達目標位置とする候補を選択するステップと、
各転てつ器について、当該転てつ器の分岐先それぞれにおいて到達可能な到達目標位置の候補を記憶する進路網データ記憶部にアクセスし、前記発点から前記着点までの前記予定進路とする経路を検索するステップと、
を有する、
連動制御方法を構成しても良い。
【0015】
この第4の発明によれば、到達目標位置は、予め定められた到達目標位置の候補の中から選択される。到達目標位置の候補は、例えば実在或いは仮想的に設置する信号機の設置位置や、駅などの停止位置目標の位置等が考えられる。また、各転てつ器について、当該転てつ器の分岐先それぞれにおいて到達可能な到達目標位置の候補が記憶されており、これにより発点から着点までの予定進路とする経路を簡単に探索することができる。
【0016】
また、第5の発明として、第1〜第4の何れかの発明の連動制御方法であって、
前記予定進路を引き戻す引き戻しステップを更に含み、
前記引き戻しステップは、
前記処理対象列車の列車位置及び列車速度に基づいて前記予定進路上の前記処理対象列車の最短停止可能位置を算出するステップ(例えば、
図17のステップC3)と、
前記最短停止可能位置に基づいて前記進行許可区間を更新するステップ(例えば、
図17のステップC5)と、
前記占有有無記憶部にアクセスし、前記処理対象列車による占有有りとされた転てつ器のうち、前記予定進路中の当該最短停止可能位置の内方に位置する転てつ器の占有を解除するステップ(例えば、
図17のステップC7)と、
を有する、
連動制御方法を構成しても良い。
【0017】
この第5の発明によれば、予定進路の引き戻しを行うことができる。すなわち、予定進路の引き戻しは、処理対象列車の最短停止可能位置を算出し、この最短停止可能位置に基づいて進行許可区間を更新するとともに、予定進路中の最短停止位置の内方に位置する転てつ器の占有を解除することで行われる。
【0018】
また、第6の発明として、第1〜第5の何れかの発明の連動制御方法であって、
前記予定進路の着点を当該着点と異なる新規着点に変更する進路変更ステップを更に含み、
前記進路変更ステップは、
前記処理対象列車の列車位置から前記新規着点までの進路と前記予定進路との分岐点を特定するステップ(例えば、
図17のステップC13)と、
前記処理対象列車の列車位置及び列車速度に基づいて前記予定進路上の前記処理対象列車の最短停止可能位置を算出するステップ(例えば、
図17のステップC15)と、
前記最短停止可能位置が前記分岐点の外方の場合に、1)前記占有有無記憶部にアクセスし、前記処理対象列車による占有有りとされた転てつ器のうち、前記予定進路中の前記分岐点の内方に位置する転てつ器の占有を解除することと、2)前記予定進路の着点を前記新規着点として当該進路を更新することと、3)前記最短停止可能位置に基づいて前記進行許可区間を更新することと、を行うステップ(例えば、
図17のステップC17〜C27)と、
を有する、
連動制御方法を構成しても良い。
【0019】
この第6の発明によれば、着点を異なる新規着点に変更する進路変更(或いは進路再設定とも言える)を行うことができる。すなわち、進路変更は、処理対象列車の最短停止可能位置が、新規着点までの進路と予定進路との分岐点の外方の場合に、分岐点の内方に位置する転てつ器の占有を解除し、予定進路の着点を新規着点として進路を更新し、最短停止可能位置に基づいて進行許可区間を更新することで行われる。
【0020】
また、第7の発明として、第6の発明の連動制御方法であって、
前記進路変更ステップは、前記最短停止可能位置が前記分岐点の内方の場合に、前記予定進路の着点の変更を抑止するステップ(例えば、
図17のステップC17、C31)を有する、
連動制御方法を構成しても良い。
【0021】
この第7の発明によれば、進路変更において、処理対象列車の最短停止可能位置が、新規着点までの進路と予定進路との分岐点の内方の場合に、着点の変更が抑止される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。但し、本発明の適用可能な実施形態がこれに限定されるものではない。
【0024】
[システム構成]
図1は、本実施形態の列車制御システム1の構成図である。同図によれば、この列車制御システム1は、軌道Rを走行する列車10に搭載される車上装置20と、地上装置30とを備えて構成される。車上装置20と地上装置30とは、所定の無線通信回線を介した無線通信が可能となっている。無線通信回線は、
図1に破線で示す通信エリアが連続して軌道Rを含むように複数の無線基地局50を設置して構成しても良いし、或いは、軌道Rに沿ってループアンテナや漏洩同軸ケーブル(LCX)を敷設して構成しても良い。
【0025】
車上装置20は、自列車の列車IDや走行位置、走行速度等を含む車上情報を地上装置30へ送信する。走行位置や走行速度は、例えば車軸に取り付けられた速度発電機が検出する回転数の計測値をもとに算出する。走行位置は例えばキロ程として算出される。そして、地上装置30から受信した速度制御情報に従った自列車の速度制御を行う。
【0026】
地上装置30は、例えば中央司令所に設置され、車上装置20と無線通信を行うことで、各列車の走行位置及び走行速度を管理する在線管理を行うとともに、外部からの要求に応じた連動制御を行う。
【0027】
転てつ器40は、列車をある線路から他の線路へ移動させるためのレール部分である分岐器41と、分岐器41のトングレールを移動させる転換装置、及び、トングレールを転換できないように鎖錠する鎖錠装置で構成される転てつ装置42とを備えている。転てつ器40は、地上装置30からの動作指示に従って転換動作及び鎖錠動作が制御される。なお、本実施形態では、転てつ器における転換動作及び鎖錠動作をまとめて「転換」或いは「転換動作」とする。
【0028】
[原理]
本実施形態の列車制御システム1における連動制御の手順を説明する。
(1)進路設定
先ず、進路設定を行う。
図2は、進路設定の説明図である。処理対象列車の先頭位置を発点とし、この発点から、要求された着点(到達目標位置)までの経路を予定進路として設定する。
図2では、処理対象列車である列車10aについて着点Aまでの進路構成を要求された場合を示している。列車10aの先頭位置から着点Aまでの経路を予定進路として設定する。
【0029】
(2)占有
次いで、予定進路上の転てつ器を占有する。
図3は、予定進路上の転てつ器40の占有の説明図である。予定進路上の転てつ器40について、発点に近い順に占有可能か否か(他の列車に占有されていないか)を判断し、占有可能な転てつ器40までを処理対象列車で占有する。なお、この占有は、転てつ器40の状態を考慮しない論理的な占有である。
【0030】
図3に示す例では、予定進路上に3つの転てつ器40a〜40cが存在する。すなわち、
図3の(1)は、予定進路上の転てつ器40a〜40cの全てが占有可能な例である。この場合、転てつ器40a〜40cの全てを、列車10aで占有する。
【0031】
また、
図3の(2)は、予定進路上に同一方向の他の列車(先行列車)10bが存在する例である。この場合、発点から順に見て、先行列車10bの後方(外方)の転てつ器40aのみが占有可能であり、これを列車10aで占有する。先行列車10bより先(内方)の転てつ器40b,40cは占有が不可能である。
【0032】
また、
図3の(3)は、予定進路上の転てつ器40に、他の列車(対向列車)10cによって占有されている転てつ器40が含まれる例である。この場合、転てつ器40b,40cは対向列車10cによって占有されており、占有が不可能である。そのため、発点から順に見て、占有可能な転てつ器40aのみを列車10aで占有する。
【0033】
(3)鎖錠
続いて、占有した転てつ器40を鎖錠する。本実施形態において、鎖錠は、処理対象列車が未到達の転てつ器を対象とする進路鎖錠と、処理対象列車の全長部分の転てつ器を対象とするてっ査鎖錠との2種類がある。
【0034】
図4は、転てつ器40の鎖錠(進路鎖錠)の説明図である。予定進路上の占有した転てつ器40を予定進路に向かう所定方向に転換させ、転換が完了すると進路鎖錠とする。そして、進路鎖錠した転てつ器40までの進路部分を、処理対象列車の進行を許可する進行許可区間として設定する。
【0035】
すなわち、占有しているが鎖錠されていない(未開通の)転てつ器40が存在する場合、この転てつ器40の手前までの区間を進行許可区間とする。詳細には、
図4の(1)は、未開通の転てつ器40が対向転てつ器の例である。転てつ器40a,40bは進路鎖錠されており、対向転てつ器である転てつ器40cは鎖錠されていない(未開通)。この場合、転てつ器40cのトングレールの先端の位置までを、進行許可区間とする。
【0036】
また、
図4の(2)は、未開通の転てつ器40が背向転てつ器の例である。転てつ器40aは進路鎖錠されており、背向転てつ器である転てつ器40bは鎖錠されていない(未開通)。この場合、転てつ器40bの車両接触限界支障点までを、進行許可区間とする。
【0037】
また、
図4の(3)は、予定進路が他の列車の予定進路と重複する例である。列車10aの予定進路と逆方向の他の列車(対向列車)10bの予定進路とが重複している。この場合、対向列車10bの予定進路の終端である着点Bまでを、進行許可区間とする。
【0038】
また、
図4の(4)は、予定進路上に他の列車が存在する例である。転てつ器40b,40cの間に、同一方向の他の列車(先行列車)10cが存在する。但し、先行列車10cの後方(外方)の転てつ器40a,40bは進路鎖錠されている。この場合、先行列車10cの最後尾位置までを進行許可区間とする。
【0039】
このように進行許可区間を設定すると、設定した進行許可区間の終端を進行限界位置とし、処理対象列車の走行位置及び走行速度等をもとに、この進行限界位置に停止するための速度照査パターンを作成する。そして、現在の走行位置及び走行速度をこの速度照査パターンと照査することで速度制御(ブレーキ制御)が行われる。
【0040】
(4)解除
転てつ器40の占有・鎖錠は、列車の進行に伴って解除される。
図5は、転てつ器40の解除の説明図である。
図5の(1)では、列車10aの先頭位置を発点とし、着点Aまでの予定進路が設定されている。また、予定進路上の全ての転てつ器40a,40bが進路鎖錠されており、着点Aまでの速度照査パターンが作成されている。
【0041】
そして、
図5の(2)に示すように、列車10aが進行して先頭位置が転てつ器40aを通過すると、この転てつ器40aの鎖錠を、進路鎖錠からてっ査鎖錠に変更する。続いて、
図5の(3)に示すように、更に列車10aが進行して最後尾が転てつ器40bを通過すると、この転てつ器40aの鎖錠(てっ査鎖錠)を解除する。
【0042】
(5)進路の引き戻し(取り消し)
進路構成がなされた後、進路の引き戻し(取り消し)が可能である。
図6は、進路の引き戻しの説明図である。
図6の(1)では、列車10aの先頭位置を発点とし、着点Aまでの予定進路が設定されている。予定進路上の全ての転てつ器40a〜40cが鎖錠され、着点Aまでの速度照査パターンが作成されている。
【0043】
この状態において、進路の引き戻し要求がなされると、
図6の(2)に示すように、列車10aの最短停止可能位置を算出する。最短停止可能位置は、列車10aの現在の走行位置や走行速度、ブレーキ性能(減速度)などをもとに、通常最大ブレーキをかけたときに停止可能な位置として算出する。勿論、空走距離などの余裕距離を含めて最短停止可能位置を算出してもよい。次いで、進行許可区間を最短停止可能位置までの区間に更新し、速度照査パターンをこの最短停止可能位置に停止するための速度照査パターンに変更する。続いて、予定進路の最短停止可能位置より先(内方)の進路部分の転てつ器について、占有及び鎖錠を解除する。
【0044】
図6では、列車10aの最短停止可能位置が転てつ器40aと転てつ器40bの間となり、進行許可区間をこの最短停止可能位置までの区間に変更するとともに、この最短停止可能位置までの速度照査パターンに変更する。そして、最短停止可能位置より先の転てつ器40b,40cの占有及び鎖錠を解除する。
【0045】
(6)進路の再設定
また、進路構成がなされた後も、所定条件を満たす場合には進路の再設定が可能である。
図7は、進路の再設定の説明図である。
図7の(1)では、列車10aの先頭位置を発点とし、着点Aまでの予定進路が設定されている。また、予定進路上の全ての転てつ器40a,40b,40cが鎖錠されている。
【0046】
この状態において、進路の再設定要求がなされると、
図7の(2)に示すように、列車10の現在の走行位置を発点とし、変更要求された新規着点までの再設定進路を設定する。次いで、予定進路と再設定進路との分岐点を特定する。また、列車10の最短停止可能位置を算出する。そして、最短停止可能位置が分岐点の手前ならば、再設定進路の分岐点より先(内方)の進路部分の転てつ器を、分岐点に近い順に占有及び鎖錠して進行許可区間を更新する。そして、更新した後の進行許可区間の終端を新たな進行限界位置として速度照査パターンを更新する。また、最短停止可能位置が分岐点を超えるならば、進路の再設定は不可能であるとして、もとの予定進路のままとして進路の再設定を行わない。
【0047】
図7では、列車10aの先頭位置から着点Bまでの経路が再設定進路となり、予定進路と再設定進路との分岐点は、転てつ器40bの位置となる。この場合、再設定進路の分岐点より先の進路部分に係る転てつ器40dを転換動作させて進路鎖錠とし、進行許可区間を着点Bまでの区間に更新し、速度照査パターンを着点Bに停止するための速度照査パターンに更新する。
【0048】
[機能構成]
(A)車上装置
図8は、車上装置の構成図である。
図8に示すように、車上装置20は、車上処理部100と、車上記憶部200とを備えて構成される一種のコンピュータである。
【0049】
車上処理部100は、例えばCPU等の演算装置で実現され、車上記憶部200に記憶されたプログラムやデータ、列車10に搭載された無線通信装置11を介した受信データ等に基づいて、車上装置20の全体制御を行う。また、車上処理部100は、位置速度算出部110と、速度照査パターン作成部120と、速度照査部130とを有し、車上制御プログラム210に従った車上制御処理(
図15〜
図17参照)を行う。
【0050】
位置速度算出部110は、車軸に取り付けられた速度発電機14の回転数の計測値をもとに、自列車の現在の走行位置(キロ程で表される走行距離)、及び、走行速度を算出する。また、地上子の近傍の通過時に、受電器15を介した当該地上子との無線通信によって取得した地上子IDから通過した地上子を識別し、走行位置を補正する。算出された走行位置及び走行速度は、走行情報として、随時、地上装置30へ送信される。
【0051】
速度照査パターン作成部120は、自列車の現在の走行位置や走行速度、線路に定められた制限速度や自列車の加減速性能等をもとに、地上装置30から受信した速度制御情報に含まれる進行限界位置に停止するための速度照査パターンを作成する。ここで、受信した進行限界位置は進行限界位置データ220として記憶されており、作成した速度照査パターンは速度照査パターンデータ230として記憶される。
【0052】
速度照査部130は、速度照査パターン作成部120によって作成された速度照査パターンに従った速度照査を行う。すなわち、速度照査パターンで定められる現在の走行位置に対応する照査速度と、現在の走行速度とを比較し、走行速度が照査速度を超える場合には、ブレーキ機構12を作動させて減速させる。このブレーキ制御は、従来の一段ブレーキ制御と同様であっても良いし、走行速度が照査速度を下回った時点で緩解させる構成としても良い。
【0053】
車上記憶部200は、ROMやRAM、ハードディスク等の記憶装置で実現され、車上処理部100が車上装置20を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、車上処理部100の作業領域として用いられ、車上処理部100が実行した演算結果や、無線通信装置11を介した受信データ等が一時的に格納される。本実施形態では、車上制御プログラム210と、進行限界位置データ220と、速度照査パターンデータ230とが記憶される。
【0054】
(B)地上装置
図9は、地上装置30の構成図である。
図9によれば、地上装置30は、地上処理部300と、地上記憶部400とを備えて構成される一種のコンピュータである。
【0055】
地上処理部300は、CPU等の演算装置で実現され、地上記憶部400に記憶されたプログラムやデータ、無線基地局50からの受信データ等に基づいて、地上装置30の全体制御を行う。また、地上処理部300は、在線管理部310と、連動制御部320と、転てつ器制御部330とを有する。
【0056】
在線管理部310は、車上装置20から受信した車上情報をもとに、各列車の走行位置及び走行速度を管理する。走行位置及び走行速度は、該当する列車データ510の位置速度蓄積情報520(
図11参照)として蓄積記憶される。
【0057】
連動制御部320は、連動制御プログラム410に従った連動制御(
図15〜
図17参照)を行う。具体的には、進路設定要求がなされたならば、要求された着点(到達目標位置)までの進路構成を行う。すなわち、対象列車の先頭位置から要求された着点までを予定進路として設定し、予定進路上の地上設備を探索する。地上設備は、転てつ器及び着点の候補を含む。着点の候補は、例えば駅などの停車場における列車の停止位置目標や、実在或いは仮想的に設置する信号機の設置位置等であり、これらの着点の候補のうちから、進路設定が要求される着点が選択される。従って、地上設備は、地上の必要各所に設置される信号保安設備ということもできる。
【0058】
地上設備の探索は、地上設備構成データ420を参照して行う。
図10は、地上設備構成データ420のデータ構成例である。
図10に示すように、地上設備構成データ420は、転てつ器40に関する転てつ器構成データ430と、着点の候補に関する着点構成データ450とを含む。
【0059】
転てつ器構成データ430は、転てつ器それぞれについて、転てつ器ID431と、共通側隣接設備432と、定位側隣接設備433と、反位側隣接設備434と、対向定位到達可能着点435と、背向定位到達可能着点436と、対向反位到達可能着点437と、背向反位到達可能着点438と、共通側車両接触限界439と、定位側車両接触限界440と、反位側車両接触限界441とを対応付けて格納している。共通側隣接設備432、定位側隣接設備433、及び、反位側隣接設備434には、対応する方向に隣接する地上設備(転てつ器及び着点)のIDが記憶される。また、対向定位到達可能着点435、背向定位到達可能着点436、対向反位到達可能着点437、及び、背向反位到達可能着点438には、対応する方向に進行した場合に到達可能な全ての着点のIDが記憶される。共通側車両接触限界439、定位側車両接触限界440、及び、反位側車両接触限界441には、例えばキロ程などで定められた当該転てつ器の接触限界の位置情報が記憶される。
【0060】
着点構成データ450は、着点の候補それぞれについて、着点ID451と、左方隣接設備452と、右方隣接設備453とを対応付けて格納している。左方隣接設備452、および右方隣接設備453には、対応する方向に隣接する地上設備のIDが記憶される。
【0061】
このように、地上設備構成データ420においては、各地上設備について、方向毎に、隣接する他の地上設備と、到達可能な着点とを定めている。このため、要求された着点に到達するように隣接設備を順に辿っていくことで、予定進路上の地上設備を探索することができる。
【0062】
予定進路上の地上設備を探索すると、続いて、予定進路の発点に近い順に、占有可能な地上設備を占有し、転てつ器を転換動作させて進路鎖錠する。ここで、転てつ器40の転換動作は、転てつ器制御部330によって実行される。次いで、鎖錠した地上設備までを含む進行許可区間を設定し、この進行許可区間の終端を対象列車の進行限界位置とする。そして、進路構成の完了を通知(返信)する。決定した進行限界位置は、速度制御情報に含めて対象列車の車上装置20へ送信される。
【0063】
また、列車の進行にともなう地上設備の占有及び鎖錠の解除を行う。すなわち、列車の先頭位置が地上設備を通過すると、当該地上設備の鎖錠を進路鎖錠からてっ査鎖錠に変更する。また、列車の最後尾位置が地上設備を通過すると、当該地上設備の鎖錠(てっ査鎖錠)を解除する。ここで、地上信号装置の通過は、当該地上信号装置に定められた車両接触限界を超えたことで判定する。
【0064】
また、進路の引き戻し要求がなされたならば、対象列車の最短停止可能位置を算出し、この最短停止可能位置を新たな進行限界位置として更新する。そして、予定進路の最短停止可能位置より先の進路部分について、地上設備の占有及び鎖錠を解除する。
【0065】
また、進路の再設定要求がなされたならば、要求された新規着点までの経路を再設定進路として設定し、この再設定進路と先に設定済みの予定進路との分岐点を特定する。また、処理対象列車の最短停止可能位置を算出し、この最短停止可能位置が分岐点より手前(外方)ならば、この最短停止可能位置を新たな進行限界位置として更新する。次いで、再設定進路の分岐点より先(内方)の進路部分について、分岐点に近い順に占有可能な地上設備を占有し鎖錠する。そして、鎖錠した地上設備に応じて最短停止可能位置を更新して、再設定の完了を通知(返信)する。一方、最短停止位置が分岐点の先(内方)ならば、進路の再設定が不可能である旨を通知(返信)する。
【0066】
連動制御部320によってなされた各列車の進路構成に関するデータは、該当する列車データ510における進路構成情報530として記憶される(
図11参照)。
【0067】
図11は、列車DB500のデータ構成の一例を示す図である。
図11に示すように、列車DB500は、複数の列車それぞれの列車データ510の集合であり、各列車データ510は、該当する列車ID511と、列車長512と、位置速度蓄積情報520と、進路構成情報530とを格納している。
【0068】
図12は、位置速度蓄積情報520のデータ構成の一例を示す図である。
図12に示すように、位置速度蓄積情報520は、時刻521と、走行位置522と、走行速度523とを対応付けて蓄積記憶している。走行位置
522は、列車の先頭位置及び最後尾位置である。最後尾位置は、先頭位置より列車長だけ後方の位置である。地上装置30は、無線通信によって車上装置20から随時走行位置及び走行速度の情報を受信しており、その情報に基づいて位置速度蓄積情報520にデータが蓄積される。
【0069】
図13は、進路構成情報530のデータ構成の一例を示す図である。
図13に示すように、進路構成情報530は、予定進路の発点531及び着点532と、予定進路上の進行限界位置533とを格納しているとともに、予定進路上の地上設備534それぞれについて、占有状態535と、鎖錠状態536とを対応付けて格納している。
【0070】
また、各地上設備の占有や鎖錠等の状態に関するデータは、地上設備状態データ460として管理される。
【0071】
図14は、地上設備状態データ460のデータ構成の一例を示す図である。
図14に示すように、地上設備状態データ460は、転てつ器の状態に関する転てつ器状態データ470と、着点の候補の状態に関する着点状態データ480とを含む。
【0072】
転てつ器状態データ470は、転てつ器40それぞれについて、転てつ器ID471と、対向定位進路設定472と、背向定位進路設定473と、対向反位進路設定474と、背向反位進路設定475と、占有状態476と、鎖錠状態477と、転換状態478とを対応付けて格納している。対向定位進路設定472、背向定位進路設定473、対向反位進路設定474、及び、背向反位進路設定475には、対応する方向の予定進路を設定した列車のIDが記憶される。なお、本実施形態では、一の転てつ器40について4方向(対向定位、背向定位、対向反位及び背向反位)の進路が定められ、例えば、複数方向それぞれに列車進路を設定したり、同一方向に複数の列車進路を設定するといったように、一の転てつ器40に複数の列車の進路設定が可能とする。転てつ器40の鎖錠状態477及び転換状態478は、転てつ器制御部330によって判断される。また、鎖錠状態477には、鎖錠有りの場合には進路鎖錠であるかてっ査鎖錠であるかの別も記憶される。
【0073】
着点状態データ480は、着点の候補それぞれについて、着点ID481と、右方進路設定482と、左方設定483と、占有状態484と、鎖錠状態485とを対応付けて格納している。右方進路設定482、及び、左方進路設定483には、対応する方向の予定進路を設定した列車のIDが記憶される。
【0074】
図9に戻り、転てつ器制御部330は、転てつ器40の動作制御を行う。すなわち、連動制御部320によって指定された転てつ器40に対して所定方向への転換指示を出力して転換動作を行わせる。また、転てつ器制御部330は、転てつ器40から現在の転換状態を示す信号を受信して、転てつ器40の動作状態(定位/反位の転換位置、転換中)を判断・管理する。
【0075】
[処理の流れ]
図15〜
図17は、連動制御部320が実行する連動制御の流れを説明するフローチャートである。なお、
図15〜
図17では一の列車を対象とした処理を示しているが、同様の処理が複数の列車それぞれに対して並列に実行される。
【0076】
先ず、進路設定要求がなされたならば(ステップA1:YES)、対象列車の先頭位置を進路発点として設定し(ステップA3)、この進路発点から要求された着点までの経路を、予定進路として設定する(ステップA5)。次いで、予定進路上の地上設備について、進路発点に近い順に、占有可能、すなわち他の列車で占有されていない地上設備を対象列車で占有する(ステップA7)。このとき、他の列車によって占有状態にある地上設備がある場合には、その占有が解除されるまで、その先の地上設備の占有を中断する。なお、中断せずに進路設定を取り消す方法も可能とする。そして、占有した地上設備を鎖錠する(ステップA9)。具体的には、対応する転てつ器を転換動作させて鎖錠する。その後、鎖錠が完了した地上設備にもとづいて対象列車の進行許可区間を設定し(ステップA11)、進行許可区間の終端を進行限界位置とする(ステップA13)。また、対象列車の先頭位置と最後尾位置との間の地上設備を特定し、これらをてっ査鎖錠とする(ステップA15)。
【0077】
続いて、予定進路上の地上設備に未占有の地上設備が含まれる場合(ステップA17:YES)、進行許可区間を随時更新する。すなわち、予定進路上の未占有の地上設備のうち、進路発点に最も近い未占有の地上設備が占有可能となったならば(ステップA19:YES)、当該地上設備を対象列車で占有し、転換動作を行わせて鎖錠する(ステップA21)。次いで、鎖錠した地上設備にもとづいて進行許可区間を更新し(ステップA23)、更新後の進行許可区間の終端を新たな進行限界位置として更新する(ステップA25)。
【0078】
また、予定進路上の地上設備に占有したが、転換動作中等のために鎖錠が完了していない地上設備が含まれる場合(ステップB1:YES)、転換動作が完了して当該地上設備の鎖錠が完了したならば(ステップB3:YES)、当該鎖錠が完了した地上設備にもとづいて進行許可区間を更新し(ステップB5)、更新した進行許可区間の終端を新たな進行限界位置として更新する(ステップB7)。
【0079】
また、対象列車の先頭位置が地上設備を通過したならば(ステップB9:YES)、当該地上設備の鎖錠を進路鎖錠からてっ査鎖錠に変更する(ステップB11)。また、対象列車の最後尾位置が地上設備を通過したならば(ステップB13:YES)、当該地上設備の占有及び鎖錠を解除する(ステップB15)。
【0080】
また、進路の引き戻し要求がなされたならば(ステップC1:YES)、対象列車の最短停止可能位置を算出する(ステップC3)。この最短停止位置可能を新たな進行限界位置として更新する(ステップC5)。そして、予定進路のうち、最短停止可能位置より先の進路部分における地上設備の占有及び鎖錠を解除する(ステップC7)。
【0081】
また、進路の再設定要求がなされたならば(ステップC9:YES)、対象列車先頭位置を発点とし、要求された新規着点までの経路を再設定進路として設定する(ステップC11)。次いで、この再設定進路と予定進路との分岐点を特定する(ステップC13)。また、対象列車の最短停止可能位置を算出する(ステップC15)。そして、最短停止可能位置が分岐点より先(内方)ならば(ステップC17:NO)、進路の再設定は不可能である旨を通知する(ステップC31)。
【0082】
一方、この最短停止可能位置が分岐点の手前(外方)ならば(ステップC17:YES)、再設定進路の分岐点より先の進路部分について、分岐点に近い順に占有可能な地上装置を占有し鎖錠する(ステップC19〜C21)。次いで、新たに鎖錠した地上設備にもとづいて進行許可区間を更新し(ステップC23)、更新した進行許可区間の終端を新たな進行限界位置として更新する(ステップC25)。そして、分岐点より先の進路設定区間の地上信号装置の占有及び鎖錠を解除する(ステップC27)。
【0083】
その後、対象列車が終着駅に到着した等の所定の終了条件を満たしたかを判断し、満たさないならば(ステップC33:NO)、ステップA1に戻り、同様の処理を繰り返す。
終了条件を満たすならば(ステップC33:YES)、本処理を終了する。
【0084】
[作用効果]
このように、本実施形態の列車制御システム1は、列車10に搭載された車上装置20と地上装置30とが無線通信可能に構成されている。地上装置30は、各列車10の位置及び速度を管理(在線管理)するとともに、外部からの要求に応じた連動制御を行う。具体的には、進路構成要求に応じて、列車の先頭位置を発点として要求された着点までの経路を予定進路として設定し、この予定進路上の地上設備(転てつ器40及び着点の候補)について、進路の発点に近い順に占有可能な設備を順に占有する。次いで、占有した地上設備の転てつ器を転換動作させた後に鎖錠し、鎖錠が完了した地上設備までの進行許可区間として設定する。車上装置20では、この進行許可区間の終端である進行限界位置に停止するための速度照査パターンを作成し、走行制御(速度制御)を行う。これにより、線路を区切った区間を単位とした進路鎖錠を行うといった従来の連動制御とは異なる、無線列車制御システムにおける新たな連動制御が実現される。
【0085】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0086】
(A)
上述の実施形態では、連動制御の主体を地上装置30が主体として行うとしたが、車上装置20が行うこととしても良い。
【0087】
図18は、連動制御を車上主体で行う場合の車上装置20A及び地上装置30Aの構成図である。同図によれば、車上装置20Aにおいて、車上処理部100Aは、位置速度算出部110と、自列車連動制御部140と、速度照査パターン作成部120と、速度照査部130とを有する。
【0088】
自列車連動制御部140は、車上連動制御プログラム240に従った車上連動制御を行う。具体的には、進路構成が要求されると、自列車の先頭位置を発点とし、地上設備構成データ420を参照して要求された着点までの予定進路の設定を行う。次いで、予定進路上の地上設備(転てつ器40及び着点の候補)についての占有状態(占有有無)を地上装置30に対して照会し、占有可能な地上設備について、占有指示及び鎖錠指示を地上装置30へ送信して、地上装置30では占有、転換動作及び鎖錠を行う。続いて、占有した地上設備の鎖錠状態を地上装置30に照会し、鎖錠が完了した地上設備をもとに自列車の進行許可区間を設定し、この進行許可区間の終端を進行限界位置とする。また、自列車の最後尾位置が地上設備を通過すると、当該地上設備の解除指示を地上装置30へ送信して解除する。この自列車連動制御部140による進路構成に関するデータは、自列車データ510Aの進路構成情報530として記憶される。
【0089】
また、車上記憶部200Aは、車上連動制御プログラム240と、進行限界位置データ220と、速度照査パターンデータ230と、地上設備構成データ420と、自列車データ510Aとを記憶する。自列車データ510Aは、自列車の列車長データ512と、位置速度蓄積情報520と、進路構成情報530とを含む。
【0090】
地上装置30Aにおいて、地上処理部300Aは、在線管理部310と、転てつ器制御部330Aと、地上設備状態管理部350とを有する。
【0091】
転てつ器制御部330Aは、車上装置20からの転換指示に従って、指定された転てつ器40を転換動作させる。
【0092】
地上設備状態管理部350は、車上装置20からの占有指示や鎖錠・転換指示等の各種指示に応じた地上設備(転てつ器40及び着点の候補)の状態管理を行って、地上設備状態データ460の管理・更新を行う。
【0093】
地上記憶部400Aには、在線情報540と、地上設備状態データ460とが記憶される。在線情報540は、在線管理部310によって管理される各列車の走行位置及び走行速度のデータである。
【0094】
(B)列車位置
また、列車の先頭位置及び最後尾位置に応じた詳細な制御を行うこととして説明したが、包括して列車位置としてある程度の許容範囲をもたせた制御を行うこととしてもよい。具体的には、例えば、列車位置を基準として列車長に所定の余裕長を含めた長さの範囲を列車存在推定範囲とし、列車存在推定範囲の先頭位置を上述の実施形態の列車先頭位置、列車存在推定範囲の最後尾位置を上述の実施形態の列車最後尾位置とするとしてもよい。
【0095】
(C)鎖錠
また、進路鎖錠の解除に当たっては、列車最後尾位置の通過でもって進路鎖錠を解除することとして、進路鎖錠とてっ査鎖錠とを含めた包括的な鎖錠としてもよい。