(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加硫機本体で加硫された加硫済タイヤを該加硫機本体に設置された型から取り出して、前記加硫済タイヤを冷却する冷却位置まで搬送するとともに、前記冷却位置で冷却された前記加硫済タイヤを、該加硫済タイヤを排出するための搬出手段に受け渡す排出位置まで搬送するタイヤ加硫機のアンローディング装置であって、
前記加硫済タイヤを支持可能な支持部と、
前記支持部を平面視して回転移動させる回転移動部と、
前記支持部を直進移動させる直進移動部と、
を備え、
前記直進移動部は、前記加硫機本体から前記排出位置に向かう方向に沿って移動可能であり、
前記回転移動部は、前記直進移動部に回転可能に支持されているタイヤ加硫機のアンローディング装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたように、金型、ポストキュアインフレータ(冷却装置)、排出コンベアの各々が、タイヤを受け取り、受け渡す位置が、アンローディング装置の旋回アームが回転する同一軌跡上に配置されている必要がある。また、これら金型、ポストキュアインフレータ、排出コンベアの各々がタイヤの処理中に互いに干渉しない位置に配置される必要がある。このため、これらの二つの配置の制約によって、旋回アームの長さ寸法も決まってしまい、旋回アームの長さ寸法をさらに小さくすることは難しく、同じ構造を用いてタイヤ加硫機のさらなるコンパクト化を図ることはできない。また、特に大型のタイヤについては、旋回アームの回転中に加硫機の外部へのはみ出し量が大きくなってしまうため、複数台並べる場合のタイヤ加硫機の設置ピッチを広くとる必要があり、省スペース化も難しい。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、コンパクト化、省スペース化が可能なタイヤ加硫機のアンローディング装置、及び、タイヤ加硫機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係るタイヤ加硫機のアンローディング装置は、加硫機本体で加硫された加硫済タイヤを該加硫機本体に設置された型から取り出して、前記加硫済タイヤを冷却する冷却位置まで搬送するとともに、前記冷却位置で冷却された前記加硫済タイヤを、該加硫済タイヤを排出するための搬出手段に受け渡す排出位置まで搬送するタイヤ加硫機のアンローディング装置であって、前記加硫済タイヤを支持可能な支持部と、前記支持部を平面視して回転移動させる回転移動部と、前記支持部を直進移動させる直進移動部と、
を備え、前記直進移動部は、前記加硫機本体から前記排出位置に向かう方向に沿って移動可能であり、前記回転移動部は、前記直進移動部に回転可能に支持されている。
【0008】
このようなアンローディング装置によると、加硫済タイヤを支持部によって支持して搬送する際に、回転移動部と直進移動部とによって回転移動と直進移動を組み合わせた搬送が可能となる。従って、回転移動のみによって加硫済タイヤを搬送する場合と異なって、加硫機本体に設置された型の位置、冷却位置、排出位置を同一の回転軌跡上に配置する必要がなくなるため、これらの位置の配置は自由度を増す。よって、支持部で加硫済タイヤを支持する位置を回転移動部の回転中心に近づけたとしても、これら加硫機本体の型の位置、冷却位置、排出位置の各々の位置での装置部品と、これら各々の位置での加硫済タイヤとの干渉を生じることなく、これらの位置へ加硫済タイヤを搬送することができる。従って、支持部の回転半径を抑えて、タイヤ加硫機の幅寸法を小さくすることができ、また、タイヤ加硫機を隣接して複数台設置する際に設置ピッチを小さくすることができ、同じ面積のスペースにおいてタイヤの生産量を増加させることができる。また、例えば支持部の回転中心までの長さ寸法を小さくできるため、支持部の資材費低減が可能となる。さらに、このように支持部の長さ寸法を小さくできることで、曲げモーメント低減が可能となり、回転移動部において支持部の回転中心を支持する周辺の部材に要求される強度を抑えることができ、タイヤ加硫機の軽量化及び資材費低減につながる。また、支持部の回転半径を小さく抑えることで、加硫済タイヤの搬送に要する時間を短縮することが可能となり、タイヤ生産時のサイクルタイム低減によってタイヤの生産量増加につながる。
さらに、このように回転移動部が直進移動部に支持されていることで、簡易な構造で回転移動と直進移動とを組み合わせた移動を実現でき、支持部の回転半径を小さく抑えながら、加硫機本体の型内から排出位置への加硫済タイヤの搬送が可能となる。
【0011】
さらに、前記回転移動部は、前記型内から前記加硫済タイヤを取り出し可能な位置から前記冷却位置まで該加硫済タイヤを回転移動させ、前記直進移動部は、前記冷却位置から前記排出位置まで前記加硫済タイヤを直進移動させてもよい。
【0012】
このように回転移動と直進移動とを組み合わせることで、回転移動の回転半径を小さく抑えながら、加硫機本体の型内から、冷却位置、排出位置への加硫済タイヤの搬送が可能となる。
そして、型の位置から冷却位置までを回転移動とすることで、回転移動部にスイング用のシリンダを用いた場合には、シリンダのストロークを短くできる。即ち、仮に、型の位置から冷却位置までを直進移動とした場合、型外形に加硫済タイヤが干渉しない位置まで直進させる必要があることから、直進移動部にスライド用のシリンダを用いた場合には、シリンダのストロークが長くなってしまう。よって、型の位置から冷却位置までを回転移動とすることで、省スペース、コスト等の点でメリットがある。
【0013】
また、前記直進移動部を上下に昇降させる昇降部をさらに備えていてもよい。
【0014】
このように昇降部を備えることで、支持部、回転移動部及び直進移動部の移動軌跡の自由度が高まる。
【0015】
さらに、前記直進移動部の高さ位置を検出する検出部と、前記検出部で検出された高さ位置に基づいて前記昇降部を制御する制御部と、をさらに備えていてもよい。
【0016】
このように、検出部で高さ位置を検出し、昇降部を制御することで、支持部、回転移動部及び直進移動部を適正な高さ方向位置に位置させることができる。
【0019】
また、本発明に係るタイヤ加硫機は、上記のアンローディング装置と、加硫前の生タイヤを加硫する加硫機本体と、前記加硫機本体で加硫された前記加硫済タイヤの冷却を、前記冷却位置で行うポストキュアインフレータと、前記冷却位置で冷却された前記加硫済タイヤを排出するための搬出手段と、を備える。
【0020】
このようなタイヤ加硫機によると、アンローディング装置を備えることで、回転移動のみによって冷却位置及び排出位置へと搬送する場合に比べ、タイヤ加硫機の幅寸法を小さくすることができる。また、タイヤ加硫機の設置ピッチを小さくすることができ、同じ面積のスペースにおいてタイヤの生産量を増加させることができる。
【0021】
さらに、前記加硫機本体に、前記ポストキュアインフレータが固定されていてもよい。
【0022】
このようにすることで、これらを加硫機本体とポストキュアインフレータとを近接して設置することができるため、設置スペースのさらなる削減が可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のタイヤ加硫機のアンローディング装置、及び、タイヤ加硫機によると、回転移動部と直進移動部とを組み合わせて、又は直進移動部によって、支持部の移動を行うことで、コンパクト化、省スペース化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫位置での加硫処理終了時の状態を示すものである。
【
図2】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機を一部破断して示す平面図であって、タイヤ加硫機における生タイヤ、加硫済タイヤの配置位置の関係を示すものである。
【
図3】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、
図1の要部を示すものである。
【
図4】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機に関し、加硫機本体での加硫終了後に加硫済タイヤを支持部が支持する状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は部分平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫機本体での加硫処理終了後に加硫済タイヤを搬送する状態を示すものである。
【
図6】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機に関し、加硫済タイヤが冷却位置に搬送された後の状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は部分平面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、冷却位置で加硫済タイヤをポストキュアインフレータにセット中の状態を示すものである。
【
図8】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機に関し、加硫済タイヤをポストキュアインフレータの下リム昇降装置にセットした後、支持部が待避する状態を示すもので、(a)は側面図、(b)は部分平面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫済タイヤをポストキュアインフレータにセットした状態を示す。
【
図10】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫済タイヤのポストキュアインフレータでの冷却処理中の状態を示すものである。
【
図11】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫済タイヤのポストキュアインフレータでの冷却処理完了後の状態を示すものである。
【
図12】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫済タイヤの冷却処理完了後、搬送開始前の状態を示すものである。
【
図13】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、冷却処理後の加硫済タイヤの搬出手段への搬送中の状態を示すものである。
【
図14】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、冷却済みの加硫済タイヤの搬出手段へ搬送中の状態を示し、支持部が排出位置にある状態を示すものである。
【
図15】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫済タイヤの搬出手段への受け渡し後の状態を示すものである。
【
図16】本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の側面図であって、加硫済タイヤの搬出手段での排出中の状態を示すものである。
【
図17】タイヤ加硫機における加硫済タイヤの配置位置の関係を示し、(a)は仮に回転移動部のみによってアンローディング装置を構成した場合を示すものであり、(b)は本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機の部分平面図であって
図2を簡略化して示すものである。
【
図18】本発明の実施形態の第一変形例に係るタイヤ加硫機のアンローディング装置の概略平面図である。
【
図19】本発明の実施形態の第二変形例に係るタイヤ加硫機のアンローディング装置の概略平面図である。
【
図20】本発明の実施形態の第三変形例に係るタイヤ加硫機のアンローディング装置の概略平面図である。
【
図21】本発明の実施形態の第四変形例に係るタイヤ加硫機のアンローディング装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係るタイヤ加硫機1について説明する。
図1及び
図2に示すように、タイヤ加硫機1は、加硫処理前の未加硫の生タイヤW1を前方(
図1の紙面に向かって左側)から搬入し、加硫処理を行って加硫済タイヤW2とし、この加硫済タイヤW2に冷却処理を施した後に、後方に向かって排出する。
【0026】
そして、このタイヤ加硫機1は、生タイヤW1を搬入する搬入手段2と、生タイヤW1に加硫処理を施す加硫機本体3と、加硫機本体3で加硫された加硫済タイヤW2を冷却するポストキュアインフレータ4と、ポストキュアインフレータ4で冷却された加硫済タイヤW2を排出する搬出手段5とを、前方から後方に向かってこの順番で備えている。
さらに、タイヤ加硫機1は、搬入手段2から加硫機本体3へ生タイヤW1を受け渡すローディング装置10と、加硫機本体3からポストキュアインフレータ4及び搬出手段5へと加硫済タイヤW2を受け渡すアンローディング装置20とを備えている。
【0027】
ここで本実施形態では、タイヤ加硫機1は、前後方向に対して直交する左右方向に、左右対称となるように搬入手段2、加硫機本体3、ポストキュアインフレータ4、搬出手段5、ローディング装置10、アンローディング装置20を備えており、生タイヤW1の処理を左右対称に行うものとなっている。
【0028】
また、
図2に示すように、以下では水平方向における生タイヤW1、加硫済タイヤW2の位置に関し、搬入手段2での生タイヤW1の受け取り位置を搬入位置P0、加硫機本体3での位置を金型位置P1、ポストキュアインフレータ4での位置を冷却位置P2、搬出手段5での位置を排出位置P3とする。
【0029】
搬入手段2は、詳細な図示は省略するが、タイヤ加硫機1の最前方に配されて、タイヤ加硫機1の外部で生成された生タイヤW1を準備する。
【0030】
ローディング装置10は、生タイヤW1をそれぞれ支持する一対のローディングチャック11と、これらローディングチャック11各々を支持して左右方向の中央位置に向かって延びるローディングアーム13とを有している。そしてこれらローディングチャック11、ローディングアーム13は、不図示のガイドに沿って上下に変位可能に設けられている。
【0031】
それぞれのローディングチャック11は、上方から生タイヤW1のビードの内側に入り込み広がることでビードの内周を全周にわたって引っ掛ける爪11aを有しており、搬入手段2に準備された生タイヤW1を内周側から掴んで支持して上方に持ち上げる。
【0032】
それぞれのローディングアーム13は、水平面内において、上記中央位置側の端部を回転中心として一対のローディングチャック11を互いに離間する方向に向かって水平回転させる。なお、このローディングアーム13を回転させる機構は、例えば、後述するアンローディング装置20の回転移動部40と同様な機構を用いることができる。
【0033】
加硫機本体3は、下金型15bと上金型15aとで上下に分割して構成された金型15を有している(
図10参照)。そして、ローディング装置10から受け取った生タイヤW1をこれら上金型15aと下金型15bとで挟み込むことで金型15内に収容し、生タイヤW1の内側から不図示のブラダを挿入して生タイヤW1の内面を押圧した状態で、加熱、加圧することで加硫処理を行う。
なお、本実施形態では金型15としているが、型は金属には限定されない。
【0034】
ここで、上金型15aは、フロアGから上方に向かって立設されたガイドフレーム3aに設けられた上下方向に伸縮可能なシリンダ16aを有する上金型昇降装置16によって支持されている。一方、下金型15bはガイドフレーム3aに対して相対移動不能に固定されており、加硫処理開始前、加硫処理終了後には、上金型15aが上方に移動することで金型15が開放されるようになっている。
【0035】
ポストキュアインフレータ4は、加硫機本体3の後方側に配されて、加硫機本体3のガイドフレーム3aに固定されている。
このポストキュアインフレータ4は、ガイドフレーム3aに固定されて後方に向かって延びる支持フレーム21と、この支持フレーム21を中心として上下方向に延びて上下対称に設けられた上部タイヤ保持部23とを有している。
【0036】
さらに、ポストキュアインフレータ4は、上部タイヤ保持部23の下方で、上部タイヤ保持部23に対向するようにガイドフレーム3aに固定されて、上方に向かって上部タイヤ保持部23に干渉しない位置まで延びる下部タイヤ保持部22を有している。
【0037】
下部タイヤ保持部22は、その上端部に設けられ、加硫機本体3から加硫済タイヤW2を受け取って上部に固定する下リム22aと、下リム22aを上下に昇降させる下リム昇降装置22bとを有している。なお、この下リム昇降装置22bは、例えば昇降シリンダを有しており、この昇降シリンダの昇降制御の機能は、後述する制御部52に持たせてもよいし、別途設けてもよい。
【0038】
上部タイヤ保持部23は、上下の両端部に設けられた上リム23aを有している。また、この上部タイヤ保持部23は、支持フレーム21を回転中心として上下反転するように回転可能となっており、加硫済タイヤW2を下部タイヤ保持部22から受け取った後に、加硫済タイヤW2の内部へ圧縮空気を導入して冷却処理を行う(
図10参照)。
【0039】
搬出手段5は、詳細な図示は省略するが、ポストキュアインフレータ4の後方側で、後方に向かって下方に傾斜するように配されて、冷却処理済の加硫済タイヤW2を傾斜によって次の工程へ搬送するメインコンベア上へ排出するコンベアである。
【0040】
次に、アンローディング装置20について説明する。
図2、
図3、
図4(b)、
図6(b)、
図8(b)に示すように、アンローディング装置20は、加硫済タイヤW2をそれぞれ支持する一対の支持部25と、これら支持部25を水平面上で回転移動させる回転移動部40と、これら支持部25を水平面上で前後方向に直進移動させる直進移動部30とを備えている。
【0041】
それぞれの支持部25は、加硫済タイヤW2を支持するアンローディングチャック26と、これらアンローディングチャック26を支持して左右方向の中央位置に向かって延びるアンローディングアーム27とを有している。
【0042】
アンローディングチャック26は、上方から加硫済タイヤW2のビードの内側に入り込み広がることでビードの内周を全周にわたって引っ掛ける爪26aを有しており、加硫機本体3から加硫済タイヤW2を内周側から掴んで支持して上方に持ち上げる。
【0043】
アンローディングアーム27は、水平面上において、上記中央位置側の端部を回転中心として一対のアンローディングチャック26を互いに離間する方向に向かって水平回転させる。
【0044】
直進移動部30は、加硫機本体3のガイドフレーム3aに取り付けられて後方に向かって延びるように設けられたベース31と、ベース31の上部に設けられた進退可能なスライド用ベース32と、スライド用ベース32とベース31との間に介在されたスライドシリンダ34とを有している。
【0045】
ベース31は、前方側の先端部に設けられた昇降ガイド31bを有しており、この昇降ガイド31bがガイドフレーム3aの後方側に取り付けられて上下方向に延びるガイドレール3bに噛み合うことで、ガイドフレーム3aに対して上下方向に相対的にスライド昇降移動が可能となっている。
また、このベース31は、前後方向に延びて上下に間隔をあけて配置された棒状をなす複数(本実施形態では二本)のスライドガイド31aを有している。
【0046】
スライド用ベース32は、ベース31の上部に配されており、ベース31のスライドガイド31aを貫通するようにしてこのスライドガイド31aに案内されながら、ベース31に対して、前後方向に相対的にスライド移動可能に設けられている。
【0047】
スライドシリンダ34は、第一シリンダ本体34aと、第一シリンダ本体34aに対して前後方向に伸縮可能な第一ロッド34bとを有し、第一シリンダ本体34aがベース31における前方位置に取り付けられ、第一ロッド34bの端部がスライド用ベース32に取り付けられている。そして、このスライドシリンダ34には例えば流体圧シリンダ等が用いられ、第一ロッド34bの伸縮によってベース31に対してスライド用ベース32を前後方向に直進移動を可能としている。なお、直進移動部30では、他のスライドする直進移動手段としてボールねじ、ラックギアとピニオンギアおよびチェーンとスプロケット等のモータとの組合せ機構を用いての移動も可能である。ここで、第一ロッド34bが最も短くなっている状態で、上記冷却位置P2に位置する加硫済タイヤW2を支持可能であり、第一ロッド34bが最も長くなっている状態で、支持部25に支持された加硫済タイヤW2が上記排出位置P3に位置可能となるように、スライドシリンダ34のスペックを決定する。即ち、直進移動部30は冷却位置P2から排出位置P3まで、加硫済タイヤW2を直進移動させることになる。
【0048】
回転移動部40は、直進移動部30のスライド用ベース32に設けられて、左右それぞれのアンローディングアーム27の中央位置側の端部を固定している上下方向に延びた左右一対の支持ピン41と、アンローディングアーム27の延在方向の中途位置とスライド用ベース32との間に介在された左右一対のスイングシリンダ44とを有している。
【0049】
さらに、
図4(b)、
図6(b)、
図8(b)に示すように、この回転移動部40は、支持部25に支持された加硫済タイヤW2が上記金型位置P1に位置した際に、それより前方への一対のアンローディングアーム27の動作を規制する左右一対の第一ストッパ45と、加硫済タイヤW2が上記冷却位置P2に位置した際に、それより後方への一対のアンローディングアーム27の動作を規制する左右一対の第二ストッパ46とを有している。
【0050】
それぞれの支持ピン41は、上下方向を回転軸線としてスライド用ベース32に対して相対回転可能に設けられており、アンローディングアーム27はこの回転軸線を中心に回転する。
【0051】
それぞれのスイングシリンダ44は、第二シリンダ本体44aと、第二シリンダ本体44aに対して前後方向に伸縮可能な第二ロッド44bとを有し、第二シリンダ本体44aがスライド用ベース32における支持ピン41よりも後方となる位置に取り付けられ、第二ロッド44bの端部が第二シリンダ本体44aから前方へ延びるとともに、アンローディングアーム27の延在方向の中途位置に取り付けられている。このスイングシリンダ44には例えば流体圧シリンダ等が用いられ、第二ロッド44bの伸縮により、アンローディングアーム27を支持ピン41の上記回転軸線を中心として回転可能としている。
【0052】
それぞれの第一ストッパ45は、スライド用ベース32の前方の端部に取り付けられた板状をなす部材に固定されており、アンローディングアーム27が前方側へ当接することで、支持部25が金型位置P1よりも前方に移動しないように、支持部25の動きを規制するメカストッパである。
【0053】
それぞれの第二ストッパ46は、スライド用ベース32の後方の端部に取り付けられた板状をなす部材に固定されており、アンローディングアーム27が後方側へ当接することで、支持部25が冷却位置P2よりも後方に移動しないように、支持部25の動きを規制する第一ストッパ45同様のメカストッパである。
【0054】
即ち、第一ストッパ45と第二ストッパ46によって、回転移動部40は金型位置P1から冷却位置P2まで、加硫済タイヤW2を回転移動させると共に、金型位置P1と冷却位置P2へ精度よく位置決めすることができる。
【0055】
このようにして、回転移動部40は、金型15内から加硫済タイヤW2を取り出し、金型位置P1から冷却位置P2まで回転可能に、直進移動部30に支持されている。つまり回転移動部40は、直進移動部30と一体に設けられている。
【0056】
ここで、アンローディング装置20は、直進移動部30を上下方向へ移動可能な昇降部50と、直進移動部30の高さ位置を検出する検出部51と、検出部51の信号に応じて直進移動部30の高さ位置を調整する制御部52とをさらに備えている。
【0057】
昇降部50は、加硫機本体3のガイドフレーム3aと直進移動部30のベース31との間に介在された昇降シリンダである。そして昇降部50は、昇降シリンダ本体50aと、昇降シリンダ本体50aに対して上下方向に伸縮可能な昇降ロッド50bとを有している。
【0058】
昇降シリンダ本体50aは、ガイドフレーム3aにおける下部位置に設けられた取付部3cに取り付けられている。また昇降ロッド50bは、端部がベース31の前方位置に取り付けられており、ベース31は昇降ロッド50bの伸縮により、ガイドレール3bに昇降ガイド31bが噛み合った状態で上下方向にスライド昇降移動が可能となっている。
【0059】
検出部51は、直進移動部30の高さ位置を検出するセンサとなっており、例えば、近接スイッチやリミットスイッチ、リニアセンサ等を用いることができる。そしてこの検出部51においては、金型位置P1、冷却位置P2、排出位置P3において、直進移動部30が各位置で所定の高さ位置となった状態で、昇降部50の動きを停止させるような信号生成を行うように設定してある。具体的には、金型位置P1、冷却位置P2、排出位置P3の各位置において、加硫済タイヤW2を支持可能となる高さ位置や、金型位置P1から冷却位置P2へ、冷却位置P2から排出位置P3へと加硫済タイヤW2を搬送する高さ位置となった際に昇降部50の動きを停止させるような信号生成を行う。
【0060】
制御部52は、検出部51からの検出信号に応じて昇降部50へ動力を供給して昇降部50を動作させることで、金型位置P1、冷却位置P2、排出位置P3での直進移動部30の高さ位置を制御し、これら各位置で支持部25によって加硫済タイヤW2を支持可能とし、加硫済タイヤW2の搬送を可能とする。
【0061】
ここで、この制御部52は、予め設定された所定のタイミングで、検出部51からの検出信号に応じてスイングシリンダ44へ動力を供給して操作することで、金型位置P1から冷却位置P2へと支持部25を回転移動させ、さらにスライドシリンダ34へ動力を供給して動作させることで、冷却位置P2から排出位置P3へ支持部25を直進移動させる。
【0062】
次に、図面を参照しながら、タイヤ加硫機1の動作の様子について説明する。
【0063】
搬入手段2からローディング装置10によって加硫機本体3の金型位置P1へ搬送された生タイヤW1は、金型15の内部で加硫処理が施される。
【0064】
その後、
図1に示すように、生タイヤW1の加硫処理が終了すると上金型昇降装置16によって上金型15aが上方に移動し、金型15が開放される。この際、アンローディング装置20のアンローディングチャック26が加硫済タイヤW2の上方に位置するように、支持部25が金型位置P1に移動される。
【0065】
そして、
図4(a)、
図4(b)に示すように、検出部51の検出結果に基づき、制御部52が昇降部50を駆動して直進移動部30のベース31を下方に移動させることで、下金型15b上にある加硫済タイヤW2のビード内に爪26aが入り込む。その後、爪26aを拡げることでビードに爪26aが引っ掛かり、加硫済タイヤW2を支持部25が支持する。
【0066】
次に、このように加硫済タイヤW2を支持部25が支持した状態で、検出部51の検出結果に基づき、制御部52が昇降部50を駆動して、
図5に示すように直進移動部30のベース31を金型位置P1における上方に移動させる。
【0067】
そして、加硫済タイヤW2を支持部25が支持した状態で、制御部52が、
図6(a)、
図6(b)に示すように回転移動部40のスイングシリンダ44を駆動して支持部25を冷却位置P2に移動させる。
【0068】
次に、加硫済タイヤW2を支持部25が支持した状態で、検出部51の検出結果に基づき、制御部52が昇降部50を駆動して、
図7に示すように直進移動部30のベース31を冷却位置P2における下方に移動させる。そして、ポストキュアインフレータ4の下部タイヤ保持部22の下リム22aに加硫済タイヤW2を受け渡す。
【0069】
そして、
図8(a)、
図8(b)に示すように、制御部52が昇降部50を駆動して加硫済タイヤW2とアンローディングチャック26が干渉しない位置まで直進移動部30のベース31を上昇させたのち、直進移動部30のスライドシリンダ34を駆動して支持部25を排出位置P3に移動させ、ポストキュアインフレータ4の冷却処理及び反転動作に影響しない位置へ支持部25を待避させる。
【0070】
次に、
図9に示すように、下部タイヤ保持部22の下リム22aと下リム側連結装置22cを下リム昇降装置22bによって上方に移動させ、上リム側連結装置23bと下リム側連結装置22cを連結させることによって、加硫済タイヤW2を上リム23aと下リム22aで挟み込み保持する。
【0071】
そして
図10に示すように、上部タイヤ保持部23を上下反転させることにより、複数個(本図では片側二個)の加硫済タイヤW2の冷却処理を行うことができる。また、支持部25は上述したように排出位置P3に待避した状態となっている。
【0072】
ここで、この冷却処理は、加硫処理に比べて時間を要するため、上部タイヤ保持部23の上下で、連続して加硫済タイヤW2の冷却処理を行うようになっている。即ち、上部タイヤ保持部23の一方で冷却処理を行っている間に、アンローディング装置20によって冷却処理の終了した加硫済タイヤW2を搬出手段5へ排出するとともに、加硫機本体3から新たに加硫済タイヤW2を搬送し、下部タイヤ保持部22に新たな加硫済タイヤW2をセットすることができる。
【0073】
そして、
図11に示すように、下部タイヤ保持部22の下リム昇降装置22bによって、下リム側連結装置22cと下リム22a上に保持された冷却処理済みの加硫済タイヤW2を受け取り、加硫済タイヤW2を再度下方へ移動させる。
【0074】
次に、
図12に示すように、制御部52が直進移動部30のスライドシリンダ34を駆動して、支持部25を冷却位置P2に直進移動させる。その後、冷却位置P2において制御部52が昇降部50を駆動してベース31を下方に移動させることで、加硫済タイヤW2のビード内に爪26aが入り込み、その後、爪26aを拡げることでビードに爪26a引っ掛かり、加硫済タイヤW2を支持部25が支持する。
【0075】
そして、加硫済タイヤW2を支持部25が支持した状態で、検出部51の検出結果に基づき、制御部52が昇降部50を駆動して、
図13に示すように、直進移動部30のベース31を冷却位置P2における上方に移動させる。
【0076】
次に、加硫済タイヤW2を支持部25が支持した状態で、制御部52が直進移動部30のスライドシリンダ34を駆動して、
図14に示すように、支持部25を排出位置P3に移動させる。
【0077】
そして、加硫済タイヤW2を支持部25が支持した状態で、検出部51の検出結果に基づき、制御部52が昇降部50を駆動して、
図15に示すように、直進移動部30のベース31を排出位置P3における下方に移動させる。
【0078】
最後に、
図16に示すように、加硫済タイヤW2を支持部25から搬出手段5に受け渡して、加硫済タイヤW2の排出を行う。
【0079】
このようなタイヤ加硫機1においては、加硫済タイヤW2を支持部25によって支持して搬送する際に、アンローディング装置20の回転移動部40と直進移動部30とによって、回転移動と直進移動を組み合わせた搬送が可能となる。
【0080】
従って、回転移動のみによって冷却位置P2及び排出位置P3へと加硫済タイヤW2を搬送する場合に比べ、回転移動部40のアンローディングアーム27の長さ寸法を小さく抑えて回転半径を小さくしたとしても、加硫機本体3、ポストキュアインフレータ4、搬出手段5で加硫済タイヤの処理中に、各々の装置部品と加硫済タイヤとが干渉することがなくなる。
【0081】
より具体的には、
図17(a)に示すように、仮に回転移動のみで加硫済タイヤW2の搬送を行った場合には、
図17(b)に示す本実施形態の場合に比べてアンローディングアーム27Aの長さ寸法を大きくしなければ、同一の回転軌跡上に金型位置P1、冷却位置P2、排出位置P3を配置できない。一方で、本実施形態では、各位置を同一の回転軌跡上に配置するという制約がなくなるため、アンローディングアーム27をアンローディングアーム27Aよりも短くしても、上述したような各位置での干渉が起きることがない。よって、タイヤ加硫機1全体の左右方向の幅寸法を小さくすることができる。
【0082】
また、このようにアンローディングアーム27の長さ寸法を小さくすることで、タイヤ加硫機1を隣接して複数台設置する際に、設置ピッチを小さくすることができ、タイヤの生産量を増加できる。
【0083】
さらに、アンローディングアーム27の長さ寸法を小さくすることで、資材費低減が可能となることや、アンローディングアーム27での曲げモーメント低減により、回転移動部40におけるアーム部材の回転中心を支持する周辺の部材、即ち、スライド用ベース32や支持ピン41に要求される強度を抑えることが可能となり、軽量化、資材費低減につながる。
【0084】
また、アンローディングアーム27の回転半径を小さく抑えることで、加硫済タイヤW2の搬送に要する時間を短縮することが可能となり、タイヤ生産時のサイクルタイム低減によって、タイヤの生産量増加につながる。
【0085】
さらに、回転移動部40が直進移動部30によって支持されていることで、簡易な構造で回転移動と直進移動とを組み合わせた移動を実現できる。
【0086】
また、昇降部50を用いたことで、支持部25、回転移動部40及び直進移動部30の移動軌跡の自由度が高まり、さらに、検出部51によって制御部52を制御することで、支持部25、回転移動部40、直進移動部30を適正な高さ位置に移動可能となって、加硫済タイヤW2の受け渡しを確実に行って搬送が可能となる。
【0087】
さらに、加硫機本体3にポストキュアインフレータ4が固定されていることで、これら加硫機本体3とポストキュアインフレータ4とを近接して設置することができるため、設置スペースのさらなる削減が可能となる。また、加硫機本体3とポストキュアインフレータ4との間の設置位置の調整も不要となる。
さらに、加硫機本体3からポストキュアインフレータ4へ、ポストキュアインフレータ4から搬出手段5への加硫済タイヤW2の搬送に、それぞれ個別のアンローディング装置を設ける必要がなくなり、省スペース化及びコスト削減につながる。
【0088】
本実施形態のタイヤ加硫機1によると、アンローディング装置20において、回転移動部40を直進移動部30を組み合わせて支持部25の移動を行うことで、コンパクト化、省スペース化が可能となる。
【0089】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
【0090】
例えば、必ずしも加硫機本体3にポストキュアインフレータ4が固定されている必要はない。
【0091】
また、上述のアンローディング装置20において、回転移動部40は直進移動部30に支持されて一体となっているが、必ずしも一体でなくともよい。
【0092】
また、上述のアンローディング装置20では、金型位置P1から冷却位置P2までを回転移動部40によって、冷却位置P2から排出位置P3までを直進移動部30によって加硫済タイヤW2の搬送を行っているが、これに限定されず、金型位置P1から冷却位置P2までを直進移動部30によって、冷却位置P2から排出位置P3までを回転移動部40によって搬送してもよい。
【0093】
また、アンローディング装置については、回転移動部及び直進移動部は上述した構造と異なるものであってもよい。
【0094】
一例として、
図18に示すように、アンローディング装置は回転移動部90と直進移動部80とを備えていてもよい。
【0095】
回転移動部90は、中央位置に前後方向に延在するラックギア91と、このラックギア91に噛み合うとともに上下方向を中心として回転可能に設けられた左右一対のピニオンギア92とを有している。
各々のピニオンギア92には、支持部25が取り付けられており、ラックギア91の前後移動によって支持部25が回転移動を行う。
ラックギア91には、ラックギア91自身が前方に移動することで支持部25の支持する加硫済タイヤW2が回転して冷却位置P2に位置した際に、ラックギア91とピニオンギア92との間の噛み合いが解除されるように、前後方向の所定の範囲内に歯91aが形成されている。
そして、直進移動部80は、上述したように冷却位置P2でラックギア91とピニオンギア92との間の噛み合いが解除された状態で、支持部25をピニオンギア92ごと後方へスライド移動させるシリンダ(不図示)を有している。
【0096】
さらに他の例として、アンローディング装置は、回転しながら直進させて加硫済タイヤW2を搬送するような回転直進移動部100、110(
図19、
図20参照)を備えていてもよい。
【0097】
具体的には、
図19に示すように、回転直進移動部100では、アンローディングアーム107が回転するとともに、アンローディングアーム107の径方向外側の先端において、アンローディングチャック106が前後方向にスライド移動するようになっている。
また、
図20に示すように、回転直進移動部110では、アンローディングアーム117が回転すると、このアンローディングアーム117の長さ寸法をシリンダ等によって変化させることで、回転中であっても、アンローディングチャック116が左右方向の同じ位置に常に位置するようになっている。
【0098】
さらに他の例として、
図21に示すように、アンローディング装置は、回転移動部を有しておらず、アンローディングアーム127を左右方向の中央位置側の端部で支持し、アンローディングチャック126を前後方向に移動可能にする直進移動部120を備えていてもよい。
このように回転移動することなく直進移動のみによって加硫済タイヤW2を搬送することで、タイヤ加硫機1の左右方向の幅寸法を小さくしてコンパクト化が可能である。また、タイヤ加硫機1を隣接して複数台設置する際に、左右方向の設置ピッチを小さくすることができ、左右方向の省スペース化が可能である。
【0099】
ここで、ローディング装置10に、上述した直進移動部30、80、120、回転移動部90、回転直進移動部100、110を適用してもよい。
【0100】
また、直進移動部30と回転移動部40とを一つの駆動源によって駆動してもよい。同様に、直進移動部80と回転移動部90とについて、回転直進移動部100、110についても同様に一つの駆動源によって駆動してもよい。