【課題を解決するための手段】
【0011】
〔構成1〕
上記目的を達成するための本発明のメタンガス濃縮方法の特徴構成は、
メタン含有ガス中のメタンガスを吸着する吸着材を充填した吸着塔を4塔以上設けるとともに、
前記吸着塔それぞれについて、
吸着塔下部から大気圧近傍の高圧状態でメタン含有ガスの供給を受けて、前記吸着材にメタンガスを吸着するとともに、空気を主成分とするオフガスを吸着塔上部から放出する吸着工程、
吸着工程を終え、高圧状態にある吸着塔内のガスをより低圧状態の他の吸着塔に移送して吸着塔内を中間圧状態にする均圧(降圧)工程、
均圧(降圧)工程により塔内圧力が低下した後、さらに前記吸着材を低圧状態まで減圧して、前記吸着材に吸着されたメタンガスを脱着させて吸着塔下部から回収する減圧工程、
減圧工程を終え、より高圧状態にある他の吸着塔内からガスを受け入れて吸着塔内を中間圧状態にする均圧(昇圧)工程、
均圧(昇圧)工程により塔内圧力を上昇した後、さらに、前記吸着塔内に吸着塔上部から昇圧用空気を供給して、前記吸着材をメタンガスを選択的に吸着可能な高圧状態に復元する昇圧工程、
を順に繰り返すPSAサイクルを実行するメタンガス濃縮方法であって、
前記吸着材は、
空気中に含まれるメタンガスを大気圧近傍の高圧状態で選択的に吸着して、吸着したメタンガスを低圧状態で脱着する特性を有するとともに、
メタンガスを脱着する際、空気を優先的に脱着する特性を有し、
前記中間圧状態として、吸着塔内圧力の異なる複数の圧力状態が設定され、
前記均圧(降圧)工程として、
高圧状態の吸着塔内のガスを、当該吸着塔より低圧の中間圧状態の他の吸着塔に移送して、吸着塔内の圧力を高圧側の中間圧状態とする初段均圧(降圧)工程と、
低圧状態より高圧の中間圧状態の吸着塔内のガスを、低圧状態の他の吸着塔に移送して、吸着塔内の圧力を低圧側の中間圧状態とする最終均圧(降圧)工程と、
を含み、
前記均圧(昇圧)工程は、
低圧状態の吸着塔内に、前記高圧側の中間圧状態の吸着塔内のガスを受け入れて、吸着塔内の圧力を低圧側の中間圧状態とする初段均圧(昇圧)工程と、
低圧側の中間圧状態の吸着塔内に、高圧状態の他の吸着塔内のガスを受け入れて、吸着塔内の圧力を高圧側の中間圧状態とする最終均圧(昇圧)工程と、
を含み、
前記均圧(降圧)工程を行う吸着塔から、前記均圧(昇圧)工程を行う吸着塔へ、吸着塔上部から吸着塔上部にわたってガスを移送する
ものであり、
前記吸着塔に、前記吸着塔からメタンガスを回収する回収路が設けられており、前記回収路に開閉弁が設けられており、少なくとも前記減圧工程を終えてから前記吸着工程を開始するまでの間は前記開閉弁が閉じられている
点にある。
【0012】
〔作用効果1〕
上記構成によると、上述の従来の可燃性ガス濃縮装置の基本構成を備えているので、前記吸着塔に可燃性ガスを吸着させ、吸着工程と脱着工程とを順次行うことで可燃性ガスの濃縮が行える。
【0013】
上記構成において、吸着材は空気中に含まれるメタンガスを大気圧近傍の高圧状態で選択的に吸着して、吸着したメタンガスを低圧状態で脱着する特性を有するとともに、低圧状態でメタンガスを脱着する際、メタンガス以外のガスを優先的に脱着する特性を有する。すなわち、メタンガスを脱着する際に、脱着開始初期はメタンガスに比して空気が優先的に脱着し始めるものの、脱着操作を継続するに従いメタンガスの脱着割合が増加するという特徴を有する。
【0014】
そのため、吸着工程後に初段均圧(降圧)工程を行うと、吸着塔に供給されたガスのうち、まず、吸着塔内において吸着材の充填されていない空間のガスや、吸着材に未吸着のガスが優先的に吸着塔から排出される。ここで、吸着塔には、吸着塔下部からメタンガスを供給するとともに、オフガスを吸着塔上部から放出するから、その吸着塔内における吸着材に吸着されたメタン濃度は、下部ほど濃く上部ほど薄い状態となっている。そのため、均圧工程中において、吸着材に吸着済みのガスが放出される程度まで吸着塔内が減圧されると、前記吸着材の特性により、吸着材に吸着されたガスのうち空気を優先的に吸着材から放出することもあり、初段均圧(降圧)工程では吸着工程を終えた吸着塔から特にメタン含有率の低いガスを排出され、その後、徐々にメタン濃度の高いガスが排出されることになる。
つまり、前記吸着塔から放出されるガスは、初期ほどメタン濃度が低く、均圧(降圧)工程を繰り返すにつれて濃くなる。
さらに、均圧(降圧)工程を行って、最終均圧(降圧)工程を行う段階では、前記吸着材の特性により、さらにメタン含有率が高いガスが排出されるようになっているから、吸着塔内の吸着材に吸着されているメタンの純度が高められる。
また、前記均圧(降圧)工程を行う吸着塔から、前記均圧(昇圧)工程を行う吸着塔へ、吸着塔上部から吸着塔上部にわたってガスを移送すると、吸着塔内の吸着材に吸着されているメタンの濃度勾配は、上部ほどメタン濃度が薄く下部ほどメタン濃度が高い状態に保持される。
【0015】
そのため、均圧(降圧)工程の後、メタンガスを吸着塔下部から回収する減圧工程を行うと、高濃度のメタンガスを回収しやすくなる。
【0016】
前記均圧(昇圧)工程では、初段均圧(昇圧)工程において、吸着塔は、最終均圧(降圧)工程を行っている吸着塔からのガスを受け入れる。そのため、多段階ある均圧(昇圧)工程のうち先に行われる回ほど吸着塔はメタン濃度の高いガスを受け入れ、回を重ねるにつれてメタン濃度の低いガスを受け入れるようになる。
すると、吸着塔上部から吸着塔上部にわたってガスを移送しているから、前記吸着塔内を昇圧したガスは、吸着塔内の吸着材に、上部ほどメタン濃度が低く、下部ほどメタン濃度が高くなる濃度勾配を形成しやすくなる。
【0017】
そのため、均圧(昇圧)工程の後、昇圧工程を行って、さらに吸着工程を開始するようにすると、その吸着塔内のメタン濃度勾配をくずしにくく、吸着塔の内部に供給されるメタンガスをさらに下部ほどメタン濃度が高くなるように回収することができるとともに、回収されるメタンガスの濃度を高く維持するのに寄与することができる。
【0018】
したがって、上記構成によってメタンガスを濃縮すると、メタンガスの濃度をより高くして回収することができるようになった。
【0019】
また、均圧(降圧)工程を一度だけ行う場合には、均圧(降圧)工程後の吸着塔内圧力は、その吸着塔の最高圧と最低圧とのほぼ中央値にしか達しないが、複数回の均圧工程を経た最終均圧(降圧)工程の後は、吸着塔内の圧力を、その吸着塔の最高圧と最低圧とのほぼ中央値に比べてさらに低下させることができる。
ここで、最高圧は、吸着工程時のガス吸着圧であり、最低圧は、減圧工程時のガス脱着圧力であり、これらは、ガス吸着材毎にそれぞれ固有の特性値を有する。すると、減圧工程の際、吸着材からメタンを脱着させるのに必要となる動力(差圧)は、最終均圧(降圧)工程の後のより低い圧力と、前記最低圧との差圧分だけ必要になる。
【0020】
具体例をあげて説明すると、均圧(降圧)工程を一度だけ行う場合には、最高圧と最低圧との差の約1/2の圧力が減圧工程で減圧すべき差圧となるが、初段均圧(降圧)工程と、最終均圧(降圧)工程とを行えば、均圧工程が2度行われることにより、最高圧と最低圧との差の約1/3の圧力が減圧工程で減圧すべき差圧となる。さらに均圧工程を行えば、均圧工程がn度行われることにより、最高圧と最低圧との差の約1/(n+1)の圧力が減圧工程で減圧すべき差圧となる。
【0021】
すなわち、均圧工程を多く行うほど減圧工程を行う際の負荷を小さくすることができるようになる。
なお、均圧工程の回数を増やすほど、各工程が煩雑になるとともに、総工程時間が長くなり、また、均圧工程の回数の増加による減圧工程負荷低減効果が少なくなるので、均圧(降圧)工程は、初段、最終の2回、もしくは初段、中段、最終の3回程度が実用的である。
【0022】
その結果、上記メタンガス濃縮方法によると、均圧回数毎の差圧を小さくするとともに、減圧工程を行う際の負荷を減少することができると同時に、吸着塔内のメタンガス濃度勾配を適切に維持して、回収されるメタンの濃度を高く維持することができる。
【0023】
〔構成2〕
また、前記均圧(降圧)工程が、初段均圧(降圧)工程と、最終均圧(降圧)工程とからなるとともに、前記均圧(昇圧)工程が、初段均圧(昇圧)工程と、最終均圧(昇圧)工程とからなる場合に、
前記初段均圧(降圧)工程において吸着塔上部から排出されるガスを前記最終均圧(昇圧)工程を行う吸着塔上部に対して供給し、
前記最終均圧(降圧)工程において吸着塔上部から排出されるガスを前記初段均圧(昇圧)工程を行う吸着塔上部に対して供給することが好ましい。
【0024】
〔作用効果2〕
吸着塔内のメタンガス濃度勾配を適切に維持するにあたり、特に具体的な構成として、前記均圧(降圧)工程を行う吸着塔から、前記均圧(昇圧)工程を行う吸着塔へ、吸着塔上部から吸着塔上部にわたってガスを移送するが、前記均圧(降圧)工程、均圧(昇圧)工程をそれぞれ2段で行う場合には、
前記初段均圧(降圧)工程において吸着塔上部から排出されるガスを前記最終均圧(昇圧)工程を行う吸着塔上部に対して供給し、
前記最終均圧(降圧)工程において吸着塔上部から排出されるガスを前記初段均圧(昇圧)工程を行う吸着塔上部に対して供給することによって、吸着塔内のメタンガス濃度勾配を乱すことなく適切に管理することができるとともに、後述の実験結果によっても、精製されるメタンガスの純度を、回収率をあまり低下させずに向上させることができることが明らかになっている。
【0025】
すなわち、均圧(降圧)工程、均圧(昇圧)工程をそれぞれ2段で行う場合には、いずれの均圧工程におけるガス移送も吸着塔下部を利用した場合に比べて10%近い製品ガス中のメタンガス純度の向上が見られることがわかり、他の組み合わせを検討した結果で、次にメタンガス純度の高かった例に比べても3%程度メタンガス純度の高い製品ガスを得ることができることが明らかになっている。
【0026】
〔構成3〕
また、前記メタン含有ガスが、炭鉱ガス、バイオガス、改質ガス、天然ガスから選ばれる一種のガスを主成分とするものとすることができる。
【0027】
〔作用効果3〕
ここで、炭鉱ガスとは、炭鉱から発生するガスであり、条件により異なるが、炭鉱ガス中には、メタンガス20〜40Vol%程度、空気(主として窒素ガス、酸素ガスが含まれる)60〜80Vol%程度が含まれている。
また、バイオガスとは、たとえば、メタン発酵槽などを用いて、有機排水等を処理して生成したメタンガスと二酸化炭素とを主成分とするガスであって、条件によって異なるが、メタンガスを40〜60Vol%程度、二酸化炭素を20〜50Vol%程度含有する。
また、改質ガス、天然ガス等のメタン含有ガスについても、メタンガスを4〜95Vol%程度含有することが知られており、本発明のメタンガス濃縮方法として好適に用いられることがわかっている。
【0028】
〔構成4〕
また、前記吸着材は、MP法による平均細孔直径が4.5〜15Åで、かつ大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/g以上である活性炭、ゼオライト、シリカゲルおよび有機金属錯体からなる群から選択される少なくとも一種を主成分として含有するものが利用できる。
【0029】
〔作用効果4〕
このような吸着材を用いると、メタンガス吸着材に大気圧および298K下でも充分にメタンガスを吸着することができる。
すなわち、大気圧および298K下におけるメタンガス吸着量が20Nml/gより低いと、低圧(特に大気圧程度)でのメタンガス吸着性能が低下して、濃縮後のメタンガスの濃度が低下するとともに、吸着性能を維持するには、メタンガス吸着材の増量が必要となり装置が大型化する。なお、上記メタンガス吸着量の上限は特に制限されないが、現状で得られるメタンガス吸着材のメタンガス吸着量は40Nml/g以下程度である。また、MP法における平均細孔直径が4.5Åより小さいと、酸素ガス、窒素ガスの吸着量が増え、濃縮後における炭鉱ガス中のメタン濃度が低下したり、平均細孔直径がメタンガス分子径に近くなり吸着速度が遅くなってメタンガス吸着性能が低下したり、吸着しなくなる。一方、MP法における平均細孔直径が15Åより大きいと、低圧(特に大気圧程度)でのメタンガス吸着性能が低下して、濃縮後のメタンガスの濃度が低下するとともに、吸着性能を維持するには、メタンガス吸着材の増量が必要となり装置が大型化する。