(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記改質ゴム弾性体について説明する。上記改質ゴム弾性体は、ゴム弾性体と、表面処理層とを有している。
【0015】
上記ゴム弾性体は、ゴム弾性を有している。ゴム弾性体は、典型的にはゴム(ゴムにはエラストマーも含まれる、以下省略)を主体として構成することができる。なお、「ゴムを主体とする」とは、ゴム弾性を損なわない限りにおいてゴム以外にも各種の添加剤などを含むことができることを意味する。
【0016】
上記ゴムとしては、具体的には、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(ECO、CO)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム(U)、シリコーンゴム(Q)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、天然ゴム(NR)などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。なお、ゴムは架橋体であっても非架橋体であってもよく、また、非発泡体であっても発泡体であってもよい。
【0017】
上記添加剤としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト等の炭素系導電材料、チタン酸バリウム、c−TiO
2、c−ZnO、c−SnO
2(c−は導電性を意味する。)等の導電性の金属酸化物や金属ナノ粒子などといった電子導電剤、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸塩、イオン液体などといったイオン導電剤などの導電剤を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。ゴム弾性体に導電剤を含有させることにより、改質ゴム弾性体に導電性を付与することができる。
【0018】
上記導電剤以外にも、上記添加剤として、例えば、フィラー(無機系、有機系)、難燃剤(無機系、有機系)、可塑剤、軟化剤、滑剤、加工助剤、架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤、酸化防止剤、カップリング剤、反応触媒、分散剤、レべリング剤、粗さ形成用粒子などを例示することもできる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0019】
上記ゴム弾性体の形状は、改質ゴム弾性体を適用する部材に応じて適宜最適な形状とすることができる。ゴム弾性体の形状としては、例えば、略円柱状(ロール状等)、略筒状(ベルト状等)や、板状、シート状、フィルム状、膜状などを例示することができる。
【0020】
上記表面処理層は、例えば、ゴム弾性体の表面から内方へ数μm程度まで、具体的には、例えば、3μm程度まで、好ましくは2μm程度まで、より好ましくは1.5μm程度までの範囲内に主に存在することができる。また、表面処理層は、基本的に、ゴム弾性体の表面よりも内方にその大部分が存在している。もっとも、表面処理層は、その一部がゴム弾性体の表面より外方に存在していてもよい。表面処理層は、例えば、ゴム弾性体の表面から外方へ1μm程度まで、好ましくは0.7μm程度まで、より好ましくは0.5μm程度までの範囲内にその一部が存在するように構成することが可能である。
【0021】
上記表面処理層は、ゴム弾性体の表面より含浸させた光硬化性組成物の硬化物より構成されている。光硬化性組成物は、(メタ)アクリルモノマーと、光重合性ポリマーと、光重合開始剤とを少なくとも含む。
【0022】
上記「(メタ)アクリルモノマー」の表記は、アクリルモノマーだけでなくメタクリルモノマーをも含みうることを意味する。つまり、光硬化性組成物は、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマーのいずれか一方を含んでいてもよいし、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーの双方を含んでいてもよい。また、光硬化性組成物は、同種または異なる種類の(メタ)アクリルモノマーを1種または2種以上含むことができる。
【0023】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を複数有する多官能モノマーを好適に用いることができる(請求項8)。なお、「(メタ)アクリロイル基」の表記は、アクリロイル基だけでなくメタクリロイル基をも含みうることを意味する(以下、本願において同様であるので記載を省略する。)。
【0024】
この場合は、改質ゴム弾性体における粉体離型性と低摩擦性との両立を確実なものとすることができる。これは、(メタ)アクリロイル基を複数有することにより、光硬化性組成物の光硬化時に、ゴム弾性体の内部に浸透した(メタ)アクリルモノマーと、ゴム弾性体表面上にある光重合性ポリマーの(メタ)アクリロイル基とが化学結合しやすくなるためであると考えられる。
【0025】
上記(メタ)アクリルモノマーは、数平均分子量が200〜700の範囲内にあることが好ましい(請求項9)。
【0026】
この場合は、光硬化性組成物のゴム弾性体への含浸性が良好であり、表面処理ムラも抑制しやすいので、表面処理層が比較的均一になりやすい。そのため、この場合は、粉体離型性と低摩擦性との安定性に優れた改質ゴム弾性体とすることができる。
【0027】
上記(メタ)アクリルモノマーの数平均分子量は、好ましくは70以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは200以上とすることができる。ゴム弾性体の表面に光硬化組成物を含浸させる際に、光硬化組成物の粘度が低くなり過ぎず、ゴム弾性体表面での光硬化組成物のはじきが生じ難くなるので、表面処理ムラを抑制しやすくなるからである。一方、上記(メタ)アクリルモノマーの数平均分子量は、好ましくは1000以下、より好ましくは850以下、さらに好ましくは700以下とすることができる。ゴム弾性体の表面に光硬化組成物を含浸させる際に、(メタ)アクリルモノマーがゴム弾性体に含浸しやすいので、表面処理ムラを抑制しやすくなるからである。
【0028】
上記(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の1官能(メタ)アクリルモノマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO(エチレンオキシド、以下省略)変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルモノマーなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。これらのうち、光重合性ポリマーとの反応性の観点から、多官能(メタ)アクリルモノマーを好適に用いることができる。
【0029】
上記光重合性ポリマーは、少なくともシリコーン基および/またはフッ素含有基と(メタ)アクリロイル基とを分子内に有している。光重合性ポリマーは、シリコーン基またはフッ素含有基のいずれか一方を分子内に有していてもよいし、シリコーン基およびフッ素含有基の双方を分子内に有していてもよい。光重合性ポリマーがシリコーン基およびフッ素含有基の双方を分子内に有している場合は、粉体離型性と低摩擦性との両立を一層図りやすく有利である。光重合性ポリマーは、シリコーン基、フッ素含有基を1種有していてもよいし、2種以上有することもできる。光重合性ポリマーが有する(メタ)アクリロイル基は、ゴム弾性体に含浸させた(メタ)アクリルモノマーの重合に関与させるために必要な基である。光重合性ポリマーが有する(メタ)アクリロイル基は、アクリロイル基またはメタクリロイル基のいずれか一方から構成されていてもよいし、あるいは、アクリロイル基およびメタクリロイル基の双方から構成されていてもよい。
【0030】
上記光重合性ポリマーは、具体的には、シリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位および/またはフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位と、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位とを含む共重合体における上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されたポリマーとすることができる(請求項2)。なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートだけでなくメタクリレートをも含みうることを意味する。また、「フッ素含有基」とは、フッ素原子を含有する基をいい、−Fを含む。
【0031】
この場合は、光重合性ポリマーにおける、第1重合単位に基づくシリコーン基および/または第2重合単位に基づくフッ素含有基と、第3重合単位の水酸基を修飾する分子に基づく(メタ)アクリロイル基との割合を調整しやすい。そのため、この場合は、改質ゴム弾性体における粉体離型性および低摩擦性のバランス調整を行いやすい利点がある。
【0032】
上記共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。好ましくは、上記共重合体は、ランダム共重合体であるとよい。この場合は、第1重合単位に基づくシリコーン基および/または第2重合単位に基づくフッ素含有基とを、ゴム弾性体の表面にランダムに存在させやすくなる。そのため、この場合は、改質ゴム弾性体における粉体離型性および低摩擦性のバランス向上に寄与しやすくなる利点がある。
【0033】
上記共重合体におけるシリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートは、1種または2種以上のシリコーン基を有することができる。シリコーン基としては、例えば、ジメチルシリコーン基、ジエチルシリコーン基、ジフェニルシリコーン基などを例示することができる。シリコーン基としては、具体的には、例えば、ジメチルシロキサン単位の繰り返しから構成されるポリジメチルシロキサン骨格を含むことができる。この場合は、比較的簡易な分子構造のポリジメチルシロキサン骨格にてシリコーン基の分子量を大きくすることができるので、改質ゴム弾性体表面の低摩擦化に寄与しやすくなる。
【0034】
上記共重合体におけるフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートは、1種または2種以上のフッ素含有基を有することができる。フッ素含有基は、具体的には、例えば、フルオロアルキル基、フルオロアルキルアルキレンオキシド基、フルオロアルケニル基、フッ素基(−F)などから構成することができる。
【0035】
これらのうち、上記フッ素含有基としては、トナー等の粉体離型性、フッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートの入手容易性等の観点から、フルオロアルキル基(好ましくは、炭素数4〜12程度)を好適に用いることができる。フルオロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素化されていてもよいし(全フッ素化)、一部にフッ素化されていない箇所を含んでいてもよい(部分フッ素化)。特に好ましくは、フルオロアルキル基は、パーフルオロアルキル基であるとよい。パーフルオロアルキル基は構造的な安定性が高いので、トナー等の粉体を寄せ付けたままとし難く、粉体離型性を向上させるのに有利なためである。
【0036】
上記フルオロアルキル基としては、具体的には、例えば、トリフルオロメチル、トリフルオロエチル、トリフルオロブチル、ペンタフルオロプロピル、パーフルオロブチル、パーフルオロヘキシル、パーフルオロオクチル、パーフルオロデシル、パーフルオロ−3−メチルブチル、パーフルオロ−5−メチルヘキシル、パーフルオロ−7−メチルオクチル、オクタフルオロペンチル、ドデカフルオロヘプチル、ヘキサデカフルオロノニルなどを例示することができる。
【0037】
上記改質ゴム弾性体において、上記シリコーン基は、ジメチルシロキサン単位の繰り返しから構成されるポリジメチルシロキサン骨格を含み、上記フッ素含有基は、パーフルオロアルキル基であるとよい(請求項4)。この場合は、粉体離型性と低摩擦性との両立に優れた改質ゴム弾性体を得やすくなる。
【0038】
上記共重合体におけるシリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートは、より具体的には、下記(式3)にて示される化合物とすることができる。
【0040】
上記(式3)中、nは、合成時の反応性、低摩擦性などの観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上の整数とすることができ、好ましくは240以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは160以下の整数とすることができる。
【0041】
また、上記共重合体におけるフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートは、より具体的には、下記(式4)にて示される化合物とすることができる。
【0043】
上記(式3)、(式4)にて示される化合物は、比較的入手が容易であるので、上記光重合性ポリマーを比較的容易に合成することができる。そのため、この場合は、上記作用効果を奏する改質ゴム弾性体を得やすくなる。
【0044】
上記共重合体における水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、EO変性(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどを例示することができる。このうち、好ましくは、重合後の(メタ)アクロイル基の導入のしやすさなどの観点から、上記共重合体における水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートとしては、より具体的には、下記(式5)や(式6)にて示される化合物とすることができる。
【0047】
上記(式5)や(式6)にて示される化合物は、その水酸基を、(メタ)アクリロイル基を有する分子で比較的容易に修飾することができる。なお、上記(式5)や(式6)におけるアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などとすることができる。
【0048】
上記共重合体における第3重合単位の水酸基を修飾する(メタ)アクリロイル基を有する分子としては、具体的には、例えば、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などを例示することができる。このうち、好ましくは、上記(式3)に示される化合物との反応性などの観点から、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートが好適である。上記共重合体における第3重合単位の水酸基を修飾する(メタ)アクリロイル基を有する分子としては、より具体的には、下記(式7)にて示される化合物とすることができる。
【0050】
上記(式7)にて示される化合物は、イソシアネート基を有するので、比較的低温、短時間で水酸基と反応できる利点がある。なお、上記(式7)におけるアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などとすることができる。
【0051】
上記光重合性ポリマーは、第1重合単位を0〜60mol%、第2重合単位を0〜60mol%、上記水酸基が修飾された状態の第3重合単位を0.01〜60mol%含むことができる。但し、第1重合単位、第2重合単位のいずれか一方は必須の重合単位であるため、第1重合単位と第2重合単位との合計割合が0mol%となる場合、つまり、第1重合単位と第2重合単位とが同時に0mol%をとる場合は除かれる。また、第1重合単位、第2重合単位、上記水酸基が修飾された状態の第3重合単位の各割合は、後述する他の重合単位を含む場合にはその重合単位を含めた合計の割合が100mol%となるように選択することができる。
【0052】
この場合には、改質ゴム弾性体における粉体離型性と低摩擦性との両立を確実なものとすることができる。また、上記光重合性ポリマーの各重合単位の割合を上記範囲内で調節することにより、シリコーン基およびフッ素含有基の量を調節し、両特性のバランスを制御しやすくなる。
【0053】
上記第1重合単位の割合は、低摩擦性の向上などの観点から、好ましくは0.01mol%以上、より好ましくは0.05mol%以上、さらに好ましくは0.1mol%以上、さらにより好ましくは0.3mol%以上とすることができる。また、第1重合単位の割合は、光硬化性組成物の溶媒への溶解性などの観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは35mol%以下、さらに好ましくは10mol%以下とすることができる。第2重合単位の割合は、トナー等の粉体離型性の向上などの観点から、好ましくは0.1mol%以上、より好ましくは1mol%以上、さらに好ましくは5mol%以上、さらにより好ましくは10mol%以上とすることができる。また、第2重合単位の割合は、光硬化性組成物の溶媒への溶解性などの観点から、好ましくは50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下とすることができる。上記水酸基が修飾された状態の第3重合単位の割合は、光反応性などの観点から、好ましくは1mol%以上、より好ましくは5mol%以上、さらに好ましくは10mol%以上とすることができる。また、上記水酸基が修飾された状態の第3重合単位の割合は、上記第1重合単位、2重合単位による粉体離型性や低摩擦性を十分に発現させるなどの観点から、好ましくは、50mol%以下、より好ましくは45mol%以下、さらに好ましくは30mol%以下とすることができる。なお、上記重合単位の割合は、熱分解GC/MS分析、NMR分析などにより測定することができる。
【0054】
上記共重合体は、上述した重合単位以外にも、他の(メタ)アクリレートに基づく重合単位を必要に応じて1種または2種以上含むことができる。
【0055】
例えば、上記共重合体は、さらに、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位を含むことができる(請求項3)。なお、上記共重合体は、1種または2種以上の第4重合単位を含むことができる。
【0056】
この場合は、第4重合単位により、(メタ)アクリルモノマーや溶媒に対する第1重合単位〜第3重合単位の溶解性を向上させ、ゴム弾性体を均一に改質できる等の利点がある。
【0057】
上記アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、1種または2種以上のアルキル基を有することができる。上記アルキル基としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリルモノマーや溶媒への溶解性などの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを例示することができる。これらのうち、上記アルキル基は、合成時におけるアクリル基もしくはメタクリル基との反応性が良好であるなどの観点から、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが好ましい。
【0058】
上記アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、より具体的には、メタクリル酸メチルまたはメタクリル酸ブチルとすることができる(請求項5)。
【0059】
この場合は、第1重合単位〜第3重合単位とともに共重合させやすい上、(メタ)アクリルモノマーや溶媒と上記光重合性ポリマーとの相溶性を向上させやすく、上記作用効果を得やすくなる。
【0060】
上記第4重合単位の割合は、(メタ)アクリルモノマーや溶媒への溶解性の向上などの観点から、好ましくは5mol%以上、より好ましくは10mol%以上、さらに好ましくは30mol%以上、さらにより好ましくは50mol%以上とすることができる。また、第4重合単位の割合は、効果発現のための第1重合単位〜第3重合単位の割合を確保するなどの観点から、好ましくは95mol%以下、より好ましくは94mol%以下、さらに好ましくは92mol%以下、さらにより好ましくは90mol%以下とすることができる。
【0061】
上記共重合体は、シリコーン基、フッ素含有基、水酸基およびアルキル基とは異なる官能基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第5重合単位をさらに含むこともできる。
【0062】
この場合は、粉体離型性および低摩擦性以外にも、上記官能基に起因する機能を改質ゴム弾性体に付与することができるので、改質ゴム弾性体の機能性をより向上させることができる。シリコーン基、フッ素含有基、水酸基およびアルキル基とは異なる官能基を分子内に有する(メタ)アクリレートは、1種または2種以上の官能基を含むことができる。また、上記共重合体は、1種または2種以上の第5重合単位を含むことができる。
【0063】
上記官能基としては、具体的には、例えば、エステル基、エーテル基、アミド基、アミノ基、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、カルボン酸基、スルホン酸基、フェニル基から選択される1種または2種以上とすることができる。
【0064】
上記官能基のうち、例えば、エステル基、エーテル基などは電気抵抗を下げる効果がある。また、上記官能基のうち、例えば、アミド基、アミノ基、第四級アンモニウム塩、ホスホニウム塩は、改質ゴム弾性体に荷電性を付与することができる。そのため、この場合は、例えば、負帯電トナーに対するトナー荷電性を有することができる。また、上記官能基のうち、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基も、荷電性を付与することができる。そのため、この場合は、例えば、正帯電トナーに対するトナー荷電性を有することができる。
【0065】
上記光重合性ポリマーは、より具体的には、下記(式1)および下記(式2)にて示される分子構造を有するポリマーから選択される1種または2種以上から構成することができる(請求項7)。
【0068】
上記(式1)、(式2)中、R
2のアルキル基は、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基とすることができる。また、上述した理由により、モル%でpは、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.1以上、さらにより好ましくは0.3以上とすることができる。モル%でpは、好ましくは50以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは10以下とすることができる。また、モル%でqは、好ましくは0.1以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは5以上、さらにより好ましくは10以上とすることができる。モル%でqは、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは30以下とすることができる。また、モル%でrは、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上とすることができる。モル%でrは、好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは30以下とすることができる。また、モル%でsは、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは30以上、さらにより好ましくは50以上とすることができる。モル%でsは、好ましくは95以下、より好ましくは94以下、さらに好ましくは92以下、さらにより好ましくは90以下とすることができる。また、nは、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上の整数とすることができる。nは、好ましくは240以下、より好ましくは200以下、さらに好ましくは160以下の整数とすることができる。なお、上述したように、各重合単位の割合であるp、q、r、sは、合計で100モル%である。
【0069】
上記光硬化性組成物において、上記光重合開始剤としては、例えば、紫外線や電子線等の光照射によってラジカルを発生するラジカル系光重合開始剤、紫外線や電子線等の光の照射によってカチオンを発生するカチオン系光重合開始剤、紫外線や電子線等の光の照射によってアニオンを発生するアニオン系光重合開始剤などを好適に用いることができる。中でも、ラジカル系光重合開始剤を特に好適に用いることができる。(メタ)アクリロイル基の多くがラジカル重合反応しやすいからである。なお、上記改質ゴム弾性体は、光重合開始剤の一部が表面処理層やゴム弾性体に化学的に結合されていてもよい。
【0070】
上記ラジカル系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、アセトフェノン、p−アニシル、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、2−ベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル安息香酸、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、2−エチルアントラキノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−イソニトロソプロピオフェノン、2−ベンゾイル安息香酸メチル、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、2−フェニル−2−(p−トルエンスルホニルオキシ)アセトフェノンなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0071】
上記カチオン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、2−(3,4−ジメトキシスチリル) −4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホン酸、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート、トリ−p−トリルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、トリ-p-トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートなどを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0072】
上記アニオン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ニフェジピンなどを例示することができる。
【0073】
上記光硬化性組成物は、(メタ)アクリルモノマーを含有しているため、比較的粘性の低い液状とすることができる場合がある。そのため、必ずしも、溶媒を含有させる必要はない。もっとも、上記光硬化性組成物は、ゴム弾性体への塗工に適した粘度に調節するなどのため、必要に応じて溶媒を含有することができる。上記溶媒としては、例えば、エーテル系溶剤(THF、ジエチルエーテル、ジオキサン等)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、ケトン系溶剤(アセトン、MEK等)、アミド系溶剤(DMF、DAC、NMP等)、第三級アルコール(tert−ブチルアルコール等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、ヘキサン等)などの有機溶剤、水などを例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。
【0074】
上記光硬化性組成物は、必要に応じて、酸や塩基、金属塩などの触媒、界面活性剤、多官能チオールなどの(メタ)アクリレートと熱反応する硬化助剤などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。
【0075】
上記光硬化性組成物は、(メタ)アクリルモノマー100質量部に対し、光重合性ポリマーを0.01〜10質量部含むように構成することができる。
【0076】
上記光重合性ポリマーの含有量は、添加による十分な効果を得るなどの観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上とすることができる。また、光重合性ポリマーの含有量は、改質ムラの抑制などの観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下とすることができる。なお、光重合性ポリマーの含有量は、熱分解GC/MS、NMRなどによって測定することができる。
【0077】
上記光硬化性組成物は、(メタ)アクリルモノマー100質量部に対し、光重合開始剤を0.01〜10質量部含むように構成することができる。
【0078】
上記光重合開始剤の含有量は、十分な光硬化性の確保などの観点から、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは1質量部以上とすることができる。また、光重合開始剤の含有量は、分解物の残留抑制などの観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下とすることができる。
【0079】
上記光硬化性組成物は、紫外線や電子線等の光照射によって硬化された硬化物として構成することができる。
【0080】
上記改質ゴム弾性体において、表面処理層は、その表面側に上記シリコーン基および/または上記フッ素含有基が多数存在している構成とすることができる(請求項6)。
【0081】
この場合は、表面処理層の内方よりも表面側にシリコーン基および/またはフッ素含有基が多数存在しているので、改質ゴム弾性体の表面における粉体離型性および低摩擦性の確保を確実なものとすることができる。
【0082】
上記改質ゴム弾性体の製造方法としては、例えば、(メタ)アクリルモノマーと、シリコーン基および/またはフッ素含有基と(メタ)アクリロイル基とを分子内に有する光重合性ポリマーと、光重合開始剤とを含む液状の光硬化性組成物を、ゴム弾性体の表面より含浸させる含浸工程と、当該含浸工程を経た後のゴム弾性体の表面に光照射を施し、上記光硬化性組成物を硬化させて表面処理層を形成する硬化工程とを有する製造方法などを例示することができる。なお、光重合性ポリマーは、例えば、第1重合単位および/または第2重合単位と、第3重合単位と、必要に応じて、第4重合単位や第5重合単位等の各重合単位とをそれぞれ形成するための上述した各化合物を共重合させて共重合体を得た後、得られた共重合体における第3重合単位における水酸基を、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリロイル基を有する分子で化学修飾する方法などによって準備することができる。
【0083】
上記含浸工程において、ゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させる方法は、特に限定されるものではなく、各種の方法を採用することができる。例えば、液状の光硬化性組成物中にゴム弾性体を浸漬する方法、ゴム弾性体の表面に液状の光硬化性組成物を各種コーティング法を用いてコーティングする方法などを例示することができる。
【0084】
上記光硬化性組成物を含浸させる際の温度は、常温程度とすることができる。また、光照射は、例えば、比較的簡易な装置で効果が得られる等の観点から、紫外線照射とすることができる。上記改質ゴム弾性体の製造方法は、硬化工程の後、必要に応じて、ゴム弾性体の表面を洗浄する洗浄工程を有することもできる。この場合には、未硬化成分を洗い流すことができるので、処理ムラを減少させることができる。なお、洗浄には、水、有機溶剤、これらの混合液などを用いることができる。
【0085】
上記改質ゴム弾性体は、柔軟であることが要求され、さらに表面機能として粉体離型性および低摩擦性を要求される各種の用途に好適に用いることができる。上記改質ゴム弾性体は、上述したように、例えば、電子写真装置に組み込まれる電子写真用部材の表面を含む部位の材料として好適に用いることができる。上記電子写真装置としては、具体的には、帯電像を用いる電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、POD(Print On Demand)装置等の画像形成装置を例示することができる。
【0086】
上記電子写真用部材は、トナー存在下において、電子写真装置に用いられる他の相手部材(例えば、感光体や、上記電子写真用部材の周囲に配設されるブレード部材やロール部材等)を表面に接触させた状態で使用されることが多い。上記改質ゴム弾性体を表面に有する電子写真用部材は、表面のトナー離型性に優れるので、表面に付着したトナーが離型せずに付着したままの状態となり難い。また、上記改質ゴム弾性体を表面に有する電子写真用部材は、表面の低摩擦性に優れるので、相手部材との間の滑りを安定させることができる。したがって、上記改質ゴム弾性体を表面に有する電子写真用部材は、良好な画像形成に寄与することができる。
【0087】
上記電子写真用部材としては、具体的には、例えば、電子写真方式の画像形成装置に組み込まれる現像部材、帯電部材、転写部材、クリーニング部材などを例示することができる(請求項11)。
【0088】
上記現像部材、帯電部材、転写部材、クリーニング部材は、相手部材と接触して用いられることが多い。したがって、上記効果を十分に発揮させることができる。
【0089】
なお、上記現像部材、帯電部材は、具体的には、例えば、軸体と、軸体の外周に層状の上記改質ゴム弾性体を有するロール部材として構成することができる。また、転写部材としては、具体的には、感光体に担持されたトナー像を中間転写部材に一次転写した後、このトナー像を中間転写部材から用紙等の転写材へ二次転写するための上記中間転写部材を例示することができる。転写部材は、筒状に形成された樹脂等よりなる基層と、この基層の外周面に沿って形成された層状の上記改質ゴム弾性体とを有するベルト部材として構成することができる。また、クリーニング部材は、板状の上記改質ゴム弾性体より形成されるブレード部と、ブレード部を保持する保持部とを有するブレード部材として構成したり、軸体と、軸体の外周に層状の上記改質ゴム弾性体とを有するロール部材として構成したりすることができる。
【実施例】
【0090】
電子写真方式を採用する画像形成装置に用いられる電子写真用部材の表面を含む部位の材料として、上述した改質ゴム弾性体を適用した試料および比較試料を作製し、評価を行った。以下、その実験例について説明する。
【0091】
本実験例において、上記電子写真用部材は、具体的には、ロール部材またはブレード部材である。すなわち、
図1、
図2に示すように、上述した改質ゴム弾性体を適用した電子写真用部材の試料のうち、ロール部材1は、軸体11と、軸体11の外周に沿って形成された層状の改質ゴム弾性体12とを有している。改質ゴム弾性体12は、ゴム弾性を有するゴム弾性体121と、ゴム弾性体121の表面より含浸させた光硬化性組成物の硬化物より構成される表面処理層122とを有している。また、
図3、
図4に示すように、上述した改質ゴム弾性体を適用した試料のうち、ブレード部材2は、板状の改質ゴム弾性体22より形成されたブレード部23と、ブレード部23を保持する保持部24とを有している。改質ゴム弾性体22は、ゴム弾性を有するゴム弾性体221と、ゴム弾性体221の表面より含浸させた光硬化性組成物の硬化物より構成される表面処理層222とを有している。つまり、改質ゴム弾性体12、22の表面は、外部に露出しており、各部材の最表面を構成している。本例では、ロール部材1のゴム弾性体121は、導電剤を含有することによって導電性を有している。
【0092】
そして、改質ゴム弾性体12、22における表面処理層122、222は、いずれも、(メタ)アクリルモノマーと、シリコーン基および/またはフッ素含有基と(メタ)アクリロイル基とを分子内に有する光重合性ポリマーと、光重合開始剤とを含む光硬化性組成物の硬化物より構成されている。
【0093】
なお、本例において具体的な試料は作製してはいないが、上記電子写真用部材は、ベルト部材として構成することもできる。この場合、
図5、
図6に示すように、ベルト部材3は、筒状に形成された樹脂製の基層31と、基層31の外周面に沿って形成された層状の改質ゴム弾性体32とを有する構成とすることができる。改質ゴム弾性体32は、ゴム弾性を有するゴム弾性体321と、ゴム弾性体321の表面より含浸させた光硬化性組成物の硬化物より構成される表面処理層322とを有しており、表面処理層322の構成は上記と同様の構成とすることができる。また、ベルト部材3の基層31およびゴム弾性体321は、導電剤を含有することによって導電性を有するように構成することができる。
【0094】
(実験例)
<光重合性ポリマーの準備>
光硬化性組成物に含有させる光重合性ポリマー、比較のためのポリマーを以下のようにして準備した。
【0095】
・光重合性ポリマーA
100mLの反応フラスコに、アクリレート変性シリコーンオイル(信越化学工業(株)製、「X−22−174DX」)1.66g(0.36mmol)と、2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート(ダイキン工業(株)製、「R−1620」)5.61g(13mmol)と、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(東京化成工業(株)製)1.69g(13mmol)と、メタクリル酸メチル(純正化学工業(株)製)7.37g(73.64mmol)と、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)(和光純薬工業(株)製、「VE−73」)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)75gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させた。
なお、上記アクリレート変性シリコーンオイルは、上記(式3)にて示される化合物であり、R
1はCH
3であり、R
2はCH
3(CH
2)
3でありnは60である。つまり、シリコーン基は、ジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるポリジメチルシロキサン骨格を含んでいる。
その後、この反応フラスコに2−イソシアナトエチルメタクリレート(昭和電工(株)製(株)製、「カレンズMOI」)2.02g(13mmol)とビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.001gとを加えた後、内液の温度75℃にて10時間撹拌することにより、上記共重合体におけるメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに基づく重合単位の水酸基と2−イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、光重合性ポリマーAを含有する合成液Aを得た。
上記光重合性ポリマーAは、シリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位およびフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位と、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体における上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されたポリマーである。より具体的には、上記光重合性ポリマーAは、(式1)にて示される分子構造の化合物(R
1はメチル基、R
2はメチル基、モル%でp=0.4、q=13、r=13、s=73.6)である。
【0096】
・光重合性ポリマーB
100mLの反応フラスコに、上記アクリレート変性シリコーンオイル1.66g(0.36mmol)と、上記メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、上記メタクリル酸メチル8.67g(86.64mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)65gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させた。
その後、この反応フラスコに上記2−イソシアナトエチルメタクリレート2.02g(13mmol)とビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.001gとを加えた後、内液の温度75℃にて10時間撹拌することにより、上記共重合体におけるメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに基づく重合単位の水酸基と2−イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させた、光重合性ポリマーBを含有する合成液Bを得た。
上記光重合性ポリマーBは、シリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位と、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体における上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されたポリマーである。より具体的には、上記光重合性ポリマーBは、(式1)にて示される分子構造の化合物(R
1はメチル基、R
2はメチル基、モル%でp=0.4、q=0、r=13、s=86.6)である。
【0097】
・光重合性ポリマーC
100mLの反応フラスコに、上記2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、上記メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、上記メタクリル酸メチル7.41g(74mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)72gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させた。
その後、この反応フラスコに上記2−イソシアナトエチルメタクリレート2.02g(13mmol)とビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.001gとを加えた後、内液の温度75℃にて10時間撹拌することにより、上記共重合体におけるメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに基づく重合単位の水酸基と2−イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、光重合性ポリマーCを含有する合成液Cを得た。
上記光重合性ポリマーCは、フッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位と、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体における上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されたポリマーである。より具体的には、上記光重合性ポリマーCは、(式1)にて示される分子構造の化合物(R
1はメチル基、R
2はメチル基、モル%でp=0、q=13、r=13、s=74)である。
【0098】
・光重合性ポリマーD
100mLの反応フラスコに、上記アクリレート変性シリコーンオイル1.66g(0.36mmol)と、上記2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、上記メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、メタクリル酸ブチル(東京化成工業(株)製)9.44g(73.64mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)87gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させた。
その後、この反応フラスコに上記2−イソシアナトエチルメタクリレート2.02g(13mmol)とビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.001gとを加えた後、内液の温度75℃にて10時間撹拌することにより、上記共重合体におけるメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに基づく重合単位の水酸基と2−イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、光重合性ポリマーDを含有する合成液Dを得た。
上記光重合性ポリマーDは、シリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位およびフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位と、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体における上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されたポリマーである。より具体的には、上記光重合性ポリマーAは、(式1)にて示される分子構造の化合物(R
1はメチル基、R
2はブチル基、モル%でp=0.4、q=13、r=13、s=73.6)である。
【0099】
・光重合性ポリマーE
100mLの反応フラスコに、上記メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、上記メタクリル酸メチル8.71g(87mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)55gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させた。
その後、この反応フラスコに上記2−イソシアナトエチルメタクリレート2.02g(13mmol)とビスマストリス(2−エチルヘキサノエート)0.001gとを加えた後、内液の温度75℃にて10時間撹拌することにより、上記共重合体におけるメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに基づく重合単位の水酸基と2−イソシアナトエチルメタクリレートのイソシアネート基とを反応させ、光重合性ポリマーEを含有する合成液Eを得た。
上記光重合性ポリマーEは、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体における上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されたポリマーである。上記光重合性ポリマーEは、第1重合単位および第2重合単位を有していない点で上記光重合性ポリマーAと異なっている。
【0100】
・ポリマーF
100mLの反応フラスコに、上記アクリレート変性シリコーンオイル(1.66g(0.36mmol)と、上記2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、上記メタクリル酸2−ヒドロキシエチル1.69g(13mmol)と、上記メタクリル酸メチル7.37g(73.64mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)70gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させ、ポリマーFを含有する合成液Fを得た。
上記ポリマーFは、シリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位およびフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位と、水酸基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第3重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体である。上記ポリマーFは、上記水酸基が(メタ)アクリロイル基を有する分子で修飾されておらず、(メタ)アクリロイル基を分子内に有していない点で上記光重合性ポリマーAと異なっている。
【0101】
・ポリマーG
100mLの反応フラスコに、上記アクリレート変性シリコーンオイル(1.66g(0.36mmol)と、上記2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート5.61g(13mmol)と、上記メタクリル酸メチル8.67g(86.64mmol)と、上記ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)1.24g(4mmol)と、メチルエチルケトン(MEK)70gとを仕込み、撹拌しながら5分間窒素によるバブリングを行った後、内液の温度75℃にて7時間重合させて共重合体を生成させ、ポリマーGを含有する合成液Gを得た。
上記ポリマーGは、シリコーン基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第1重合単位およびフッ素含有基を分子内に有する(メタ)アクリレートに基づく第2重合単位と、アルキル基を有する(メタ)アクリレートに基づく第4重合単位とを含む直鎖状の共重合体である。上記ポリマーGは、(メタ)アクリロイル基を分子内に有していない点で上記光重合性ポリマーAと異なっている。
【0102】
【表1】
【0103】
<光硬化性組成物の調製>
(メタ)アクリルモノマーとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製、「アロニックスM305」)、光重合開始剤として、ラジカル系光重合開始剤である2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバスペシャルティケミカルズ社製、「ダロキュア1173」)を準備した。
【0104】
次いで、表2に示す配合割合(質量部)となるように各材料を仕込み、攪拌機を用いて室温で10分間混合することにより、表2に示す固形分量の各光硬化性組成物1〜10を調製した。
【0105】
【表2】
【0106】
<被処理材としてのロール部材の準備>
光硬化性組成物による表面処理が施される被処理材としてのロール部材を、以下のようにして準備した。
NBR(JSR(株)製、「N222L」)100質量部と、酸化亜鉛5質量部と、ステアリン酸2質量部と、テトラブチルアンモニウムパークロレート(試薬)1質量部と、粉末硫黄0.8質量部と、ポリエステル可塑剤(DIC(株)製、「ポリサイザーW−4000」)10質量部とを、50℃に温度調節した密閉型ミキサーを用いて10分間混練することにより、ゴム弾性体形成用組成物を調製した。
【0107】
次いで、軸体として、直径12mmの中実円柱状の鉄棒を準備し、外周面に接着剤を塗布した。この軸体をロール成形用金型の中空空間にセットした後、上記調製したゴム弾性体形成用組成物を中空空間内に注入し、190℃で30分間加熱して硬化させ、脱型した。
【0108】
これにより、軸体の外周に、NBRを主体とする層状のゴム弾性体(厚み2mm)を有する一層構造のロール部材rを複数準備した。
【0109】
<被処理材としてのブレード部材の準備>
光硬化性組成物による表面処理が施される被処理材としてのブレード部材を、以下のようにして準備した。
先ず、ポリウレタン組成物における主剤液(ウレタンプレポリマー)および硬化剤液を調製した。具体的には、MDI(日本ポリウレタン工業(株)製、「ミリオネートMT」)とポリブチレンアジペート(日本ポリウレタン工業(株)製、「ニッポラン4010」、Mn:2000、以下PBA)を用い、80℃にて1時間真空脱泡したPBA:44質量部にMDI:56質量部を添加した後、窒素雰囲気下で80℃×3時間の条件で反応させて調製することにより、末端にイソシアネート基を有するNCO含有量17質量%の主剤液を得た。また、PBAを窒素雰囲気下で、150℃にて1時間加熱し、これに1,4−BD(三菱化学(株)製、1,4−ブタンジオール)、TMP(広栄パーストープ(株)製、トリメチロールプロパン)を6/4で混合し、さらにトリエチレンジアミン(三共エアプロダクツ(株)製、「DABCO」)を配合し、窒素雰囲気下で80℃×1時間真空脱泡、脱水することにより、末端にヒドロキシル基を有するOH価210の硬化剤液を得た。
次いで、上型と下型とから構成される金型を準備した。金型は、上型と下型とを接近させて型締めすることにより、ブレード部材二つ分の大きさを有するキャビティが内部に形成される。このキャビティには、対向する二つの収容部が設けられている。これら各収容部には、保持部の先端側の一側縁がそれぞれ配置できるように構成されている。
【0110】
次いで、上記金型の各収容部に、
図3および
図4に示すように金属板を折り曲げて形成した保持部をそれぞれセットし、型締めした後、キャビティ内に上記ポリウレタン組成物における主剤液(ウレタンプレポリマー)および硬化剤液を注入し、140℃で30分間加熱することにより組成物を硬化させた。その後、金型から成形体を取り出し、所定の大きさとなるように二つに切断した。
これにより、軸体の外周に、ウレタンゴムを主体とする板状のゴム弾性体(厚み2mm)より形成されたブレード部と、ブレード部を保持する保持部とを有するブレード部材bを複数準備した。
【0111】
<試料R1〜R9のロール部材の作製>
表3に示した所定の光硬化性組成物を、上記準備した被処理材としてのロール部材rのゴム弾性体の表面より含浸させた。具体的には、温度25℃の所定の光硬化性組成物の液中にロール部材rを10秒間浸漬させた後、温度25℃で10分間放置し、光硬化性組成物を含浸させた。
【0112】
次いで、紫外線照射装置(アイグラフィックス(株)製、「UB031−2A/BM」)を用い、上記所定の光硬化性組成物を含浸させた後のゴム弾性体の表面に紫外線(UV)を照射した。これにより上記所定の光硬化性組成物を硬化させて各表面処理層を形成した。この際、紫外線照射装置の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とゴム弾性体の表面との距離は200mmとした。また、紫外線照射は、紫外線強度100mW/cm
2、照射時間30秒という条件とした。これにより、試料R1〜R9のロール部材を作製した。
【0113】
<試料R10のロール部材の作製>
試料R1のロール部材の作製において、ゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させることなく紫外線照射を行った点以外は同様にして、試料R10のロール部材を作成した。
【0114】
<試料B1のブレード部材の作製>
表4に示した所定の光硬化性組成物を、上記準備した被処理材としてのブレード部材bのブレード部を形成するゴム弾性体の表面より含浸させた。具体的には、温度25℃の所定の光硬化性組成物の液中にブレード部を10秒間浸漬させた後、温度25℃で10分間放置し、光硬化性組成物を含浸させた。
【0115】
次いで、上記紫外線照射装置を用い、上記所定の光硬化性組成物を含浸させた後のブレード部の表面に紫外線(UV)を照射した。これにより上記所定の光硬化性組成物を硬化させて表面処理層を形成した。この際、紫外線照射装置の紫外線ランプ(水銀ランプ形式)とブレード部の表面との距離は200mmとした。また、紫外線照射は、紫外線強度100mW/cm
2、照射時間30秒という条件とした。これにより、試料B1のブレード部材を作製した。
【0116】
<試料B2、B3のブレード部材の作製>
試料B1のブレード部材の作製において、ブレード部を形成するゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させることなく紫外線照射を行った点以外は同様にして、試料B2のブレード部材を作成した。また、試料B1のブレード部材の作製において、ブレード部を形成するゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させることなく、さらに紫外線照射も行わなかった点以外は同様にして、試料B3のブレード部材を作成した。
【0117】
<トナー離型性>
(トナー固着試験)
カラーレーザービームプリンター(キヤノン(株)製、「LBP5050」)のイエロートナーを、試料のロール部材表面および試料のブレード部材におけるブレード部表面に均一にまぶした状態で、ロール部材およびブレード部材を、50℃、95%湿度の条件下にて温熱槽に1週間投入した。その後、ロール部材およびブレード部材を取り出し、室温まで冷却した後、ロール部材表面およびブレード部表面をエアブローした。その後、レーザー顕微鏡((株)キーエンス製、「VK−X200」)を用いて、ロール部材表面およびブレード部表面をそれぞれ観察した。そして、それぞれの全表面積に対する固着トナーの面積が5%以下であった場合を、トナー固着試験におけるトナー離型性に優れるとして「A」とした。また、上記固着トナーの面積が5%超〜15%以下であった場合を、トナー固着試験におけるトナー離型性が良好であるとして「B」とした。また、上記固着トナーの面積が15%超であった場合を、トナー固着試験におけるトナー離型性に劣るとして「C」とした。
【0118】
(実機耐久試験)
試料のロール部材を現像ロールとして、市販のカラープリンター(日本ヒューレット・パッカード(株)製、「Color Laser Jet4700dn」)に組み込み、2万枚印刷後のロール部材表面へのトナーの固着状況をそれぞれ目視にて評価した。上記表面へのトナー固着によるフィルミングがなかった場合を、実機耐久試験によるトナー離型性に優れるとして「A」とした。また、上記表面へのトナーの固着が見られたが、画質への影響がほとんどなく許容範囲内であった場合を、実機耐久試験によるトナー離型性が良好であるとして「B」とした。また、上記表面へのトナー固着によるフィルミングが発生した場合を、実機耐久試験によるトナー離型性に劣るとして「C」とした。
【0119】
<摩擦係数>
(初期動摩擦係数)
静・動摩擦係数測定器(協和界面科学(株)製、「Triboster500」)のステージ上に固定した試料のロール部材表面、または、上記ステージ上に固定した試料のブレード部材におけるブレード部表面に、接触子(直径3mmの鋼球製)による垂直荷重W100gを加え、この状態でステージを移動速度7.5mm/秒で水平方向に1cm移動させた。これにより試料のロール部材と接触子、試料のブレード部材におけるブレード部と接触子との間に生じた摩擦力Fから、ロール部材表面およびブレード部表面における初期動摩擦係数(F/W)を算出した。
【0120】
(トナー固着試験後の動摩擦係数)
上記トナー固着試験後の試料のロール部材表面および試料のブレード部材におけるブレード部表面を、メタノールを含浸させた不織布で丁寧に拭き取った。その後、このロール部材表面およびブレード部表面について、上記初期動摩擦係数の測定と同様にして、トナー固着試験後の動摩擦係数を算出した。
【0121】
<耐めくれ性>
試料のブレード部材をクリーニングブレードとして、市販のカラープリンター(日本ヒューレット・パッカード(株)製、「Color Laser Jet4700dn」)のトナーカットリッジ内に組み込み、H/H環境下(35℃×85%RH)にて、3万枚画出しを行った。上記3万枚画出し中にめくれが発生しなかったものを「A」、1万枚から3万枚未満の間にめくれが発生したものを「B」、1万枚未満でめくれが発生したものを「C」として評価した。なお、上記にいう「めくれ」とは、クリーニングブレードのブレード部が高い摩擦係数のために感光ドラムの回転に帯同し反転してしまい、クリーニング不可となる現象をいう。
【0122】
上記の評価結果をまとめて表3および表4に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
上記結果によれば、以下のことがわかる。すなわち、試料R10、試料B2、試料B3は、いずれも、ゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させておらず、光硬化性組成物の硬化物より構成される表面処理層を有していない。そのため、試料R10、試料B2、試料B3は、いずれも、トナー離型性と低摩擦性とを両立することができていない。
【0126】
試料R5〜試料R9は、いずれも、ゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させた後、紫外線照射を施しており、上記含浸させた光硬化性組成物の硬化物より構成された表面処理層を有している。しかしながら、試料R5は、分子内にシリコーン基およびフッ素含有基がない光重合性ポリマーEを用いている。試料6および試料7は、分子内に(メタ)アクリロイル基がない光重合性ポリマーF、Gを用いている。試料8は、光硬化性組成物中に(メタ)アクリルモノマーが含まれていない。試料9は、シリコーン基および/またはフッ素含有基と(メタ)アクリロイル基とを分子内に有する光重合性ポリマーが光硬化性組成物中に含まれていない。そのため、試料R5〜試料R9は、いずれも、トナー離型性と低摩擦性とを両立することができていない。
【0127】
これらに対し、試料R1〜R4、B1は、いずれも、トナー離型性と低摩擦性とを両立することができていることが確認された。これは、以下の理由によるものと考えられる。
【0128】
ゴム弾性体の表面より光硬化性組成物を含浸させると、モノマー成分である(メタ)アクリルモノマーは、ゴム弾性体の表面より内部に浸透する一方、ポリマー成分である光重合性ポリマーは、ゴム弾性体の表面より内部にほとんど浸透せず、ゴム弾性体の表面上に残る。そしてこの状態にて光硬化性組成物が光硬化することにより、ゴム弾性体内部の(メタ)アクリルモノマーと、ゴム弾性体表面上にあるシリコーン基および/またはフッ素含有基と(メタ)アクリロイル基とを分子内に有する光重合性ポリマーの(メタ)アクリロイル基とが化学結合してネットワークを形成しつつ重合体となる。そのため、上記改質ゴム弾性体は、ゴム弾性体の表面近傍における光硬化性組成物の硬化による硬度上昇と、ゴム弾性体の表面に主に存在するシリコーン基および/またはフッ素含有基との相乗効果により、トナーが表面に付着しても離れやすく、かつ、表面が低摩擦化されるものと考えられる。
【0129】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。