特許第5968273号(P5968273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968273
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】無段変速機用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 163/00 20060101AFI20160728BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 137/02 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/76 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   C10M163/00
   !C10M159/22
   !C10M159/24
   !C10M139/00 A
   !C10M137/02
   !C10M129/76
   !C10M133/16
   C10N10:04
   C10N20:02
   C10N30:00 Z
   C10N30:04
   C10N30:06
   C10N40:04
【請求項の数】2
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-150126(P2013-150126)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2014-37533(P2014-37533A)
(43)【公開日】2014年2月27日
【審査請求日】2015年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2012-161270(P2012-161270)
(32)【優先日】2012年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXエネルギー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103285
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 順之
(74)【代理人】
【識別番号】100191330
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 寛幸
(72)【発明者】
【氏名】大沼田 靖之
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 紀子
(72)【発明者】
【氏名】福水 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】山下 実
(72)【発明者】
【氏名】小川 仁志
(72)【発明者】
【氏名】西ノ園 純一
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−037421(JP,A)
【文献】 特開2000−109875(JP,A)
【文献】 特開2004−155873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油全量基準における飽和環状成分の重量パーセント(EC(重量%))と40℃における動粘度(V40(mm/s))の積(EC×V40)が500以下であり、100℃における動粘度が3.6〜4.1mm/sに調整してなる基油に、(B)リン系化合物をリン元素量として0.01〜0.03質量%、(C)カルシウムサリシレート及び/又はカルシウムスルホネートをカルシウム元素量として0.03〜0.05質量%含有し、潤滑油組成物中のリンとカルシウムの元素量比(P/Ca)が0.3〜0.7であり、(D)ホウ素変性無灰分散剤をホウ素元素量として0.001〜0.008質量%、および(E)摩擦調整剤を組成物全量基準で0.01〜2質量%含有し、潤滑油組成物の100℃の動粘度が5.2〜5.6mm/s、粘度指数が165以上であることを特徴とする無段変速機用潤滑油組成物。
【請求項2】
上記(E)成分が、脂肪酸エステル系摩擦調整剤および/または脂肪酸アミド系摩擦調整剤であることを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無段変速機用潤滑油組成物に関し、詳しくは、省燃費性の高い、自動車用の金属ベルト式無段変速機に好適な潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、炭酸ガス排出量の削減など、環境問題への対応から自動車、建設機械、農業機械等の省エネルギー化、すなわち、省燃費化が急務となっており、エンジンや変速機、終減速機、圧縮機、油圧装置等の装置には省エネルギーへの寄与が強く求められている。
【0003】
変速機については省燃費化手段のひとつとして、無段変速機の使用が拡大されつつある。これは内燃機関の最も効率的な運転条件で、装置を運転することにより燃費効率を最大にするためである。
さらにこの無段変速機についても軽量小型化による高効率化が図られてきている。この高効率化に伴い、使用される潤滑油についても、省燃費性が求められている。これに対して、一般には、潤滑油をより低粘度化、あるいは低温時の粘度上昇を抑えることにより、トルクコンバータ、湿式クラッチ、歯車軸受機構およびオイルポンプ等の攪拌抵抗および摩擦抵抗を低減する手段が取られている。
【0004】
しかしながら、これらに使用される潤滑油は、油圧制御装置の媒体としても使用されており、過度な低粘度化は、油膜厚さの不足による摩耗や焼き付き等の潤滑不良や、オイルポンプや制御バルブ等からのオイルの漏れにより、十分な油圧を発生できない等の不具合を生じる。特に低温時の粘度増加を抑制するため、基油に高分子の添加剤すなわち粘度指数向上剤を添加することが通常行われているが、新油時は適正な粘度を保有していたとしても、使用に伴い高分子の添加剤はせん断を受け粘度が低下し、適正な粘度を保有できない不具合が発生する。
【0005】
このため、従来での技術は、燃費向上のため潤滑油組成物としては低粘度にしながら、基油の粘度を高くすることにより、せん断安定性、潤滑油寿命等の性能を保持し、高温高せん断(HTHS)粘度も高くすることで、油膜保持性能を高め、耐摩耗性、耐ピッチング性等に優れ、せん断安定性も良好で、低温粘度特性にも優れる自動変速機油を提供することとしていた(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、これでは近年の更なる省燃費化要求に十分に応えきれなくなってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−096925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その目的は、省燃費性を発揮する低粘度でありながら、機器が使用される期間を通して潤滑油組成物の必要な粘度を保持し、また高い金属間摩擦係数を保持することにより、高い動力伝達力を保有し、かつ変速機に必要な湿式クラッチの摩擦特性やシャダー防止性をもち、低いトラクション係数によりさらなる省燃費性を実現する無段変速機用潤滑油組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために、検討した結果、特定の基油と特定の添加剤を選択した潤滑油組成物が、上記課題を解決できる事を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、基油全量基準における飽和環状成分の重量パーセント(EC(重量%))と40℃における動粘度(V40(mm/s))の積(EC×V40)が500以下であり、100℃における動粘度が3.6〜4.1mm/sに調整してなる基油に、(B)リン系化合物をリン元素量として0.01〜0.03質量%、(C)カルシウムサリシレート及び/又はカルシウムスルホネートをカルシウム元素量として0.03〜0.05質量%含有し、潤滑油組成物中のリンとカルシウムの元素量比(P/Ca)が0.3〜0.7であり、(D)ホウ素変性無灰分散剤をホウ素元素量として0.001〜0.008質量%、および(E)摩擦調整剤を組成物全量基準で0.01〜2質量%含有し、潤滑油組成物の100℃の動粘度が5.2〜5.6mm/s、粘度指数が165以上であることを特徴とする無段変速機用潤滑油組成物である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無段変速機用潤滑油組成物は、低粘度でありながら、機器が使用される期間を通して潤滑油組成物の必要な粘度を保持することができ、また高い金属間摩擦係数を保持することができるため、高い動力伝達力を保有し、かつ変速機に必要な湿式クラッチの摩擦特性やシャダー防止性を有し、低いトラクション係数によりさらなる省燃費性を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。
本発明における基油は、全量基準における飽和環状成分の重量パーセント(EC(重量%))と40℃における動粘度(V40(mm/s))の積(EC×V40)が500以下であり、100℃における動粘度が3.6〜4.1mm/sに調整してなる基油であり、鉱油系潤滑油基油、合成系潤滑油基油及びこれらの混合物を用いることができる。
【0012】
鉱油系潤滑油基油としては、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を単独又は二つ以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系等の鉱油系潤滑油基油や、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。なお、これらの基油は単独でも、2種以上任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0013】
好ましい鉱油系潤滑油基油としては以下の基油を挙げることができる。
(1) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留による留出油;
(2) パラフィン基系原油および/または混合基系原油の常圧蒸留残渣油の減圧蒸留留出油(WVGO);
(3) 潤滑油脱ろう工程により得られるワックスおよび/またはGTLプロセス等により製造されるフィッシャートロプシュワックス;
(4) (1)〜(3)の中から選ばれる1種または2種以上の混合油のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(5) (1)〜(4)の中から選ばれる2種以上の油の混合油;
(6) (1)、(2)、(3)、(4)または(5)の脱れき油(DAO);
(7) (6)のマイルドハイドロクラッキング処理油(MHC);
(8) (1)〜(7)の中から選ばれる2種以上の油の混合油などを原料油とし、この原料油および/またはこの原料油から回収された潤滑油留分を、通常の精製方法によって精製し、潤滑油留分を回収することによって得られる潤滑油
【0014】
ここでいう通常の精製方法とは特に制限されるものではなく、潤滑油基油製造の際に用いられる精製方法を任意に採用することができる。通常の精製方法としては、例えば、(ア)水素化分解、水素化仕上げなどの水素化精製、(イ)フルフラール溶剤抽出などの溶剤精製、(ウ)溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう、(エ)酸性白土や活性白土などによる白土精製、(オ)硫酸洗浄、苛性ソーダ洗浄などの薬品(酸またはアルカリ)精製などが挙げられる。本発明ではこれらの1つまたは2つ以上を任意の組み合わせおよび任意の順序で採用することができる。
【0015】
本発明で用いる鉱油系潤滑油基油としては、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をさらに以下の処理を行って得られる基油が特に好ましい。
すなわち、上記(1)〜(8)から選ばれる基油をそのまま、またはこの基油から回収された潤滑油留分を、水素化分解あるいはワックス異性化し、当該生成物をそのまま、もしくはこれから潤滑油留分を回収し、次に溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行い、その後、溶剤精製処理するか、または、溶剤精製処理した後、溶剤脱ろうや接触脱ろうなどの脱ろう処理を行って製造される水素化分解鉱油及び/又はワックス異性化イソパラフィン系基油が好ましく用いられる。
【0016】
また、合成系潤滑油基油としては、ポリα−オレフィン又はその水素化物、イソブテンオリゴマー又はその水素化物、イソパラフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル(例えば、ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等)、ポリオールエステル(例えば、トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)、ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0017】
好ましい合成系潤滑油基油としてはポリα−オレフィンが挙げられる。ポリα−オレフィンとしては、典型的には、炭素数2〜32、好ましくは6〜16のα−オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー(例えば、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマー等)及びその水素化物が挙げられる。
【0018】
本発明における(A)成分の潤滑油基油の100℃における動粘度は3.6〜4.1mm/sであり、好ましくは3.8mm/s以上、4.0mm/s以下である。100℃における動粘度を4.1mm/s以下とすることによって、流体抵抗が小さくなるため潤滑箇所での摩擦抵抗がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となる。また、100℃における動粘度を3.6mm/s以上とすることによって、油膜形成が十分となり、潤滑性により優れ、また、高温条件下での基油の蒸発損失がより小さい潤滑油組成物を得ることが可能となる。
【0019】
本発明における省燃費性向上効果のひとつはトラクション係数の低減によって達成される。このトラクション係数に与える一つの大きな要因は基油の飽和環状成分である。これが多いほどトラクション係数は高い傾向にある。もう一つの大きな要因は、基油粘度である。
基油粘度は、粘度が低いほうが省燃費性には有利であるが、低くなりすぎるとさまざまな悪影響が現れるため、先に述べたよう範囲にあることが望まれる。しかるに、これも上述したように、トラクション係数は基油の粘度と基油の飽和環状成分の量に大きく影響されるため、本発明における潤滑油基油はトラクション係数を下げるため、基油全量基準における飽和環状成分の重量パーセント(EC(重量%))と40℃における動粘度(V40(mm/s))の積(EC×V40)が500以下であることが必要である。好ましくは470以下であり、さらに好ましくは450以下であり、特に好ましくは400以下であり、最も好ましくは350以下である。
なお、ここで飽和環状成分はASTM D2786の試験法に準じて測定された値であり、単位が重量パーセントとなるように換算をしている。
【0020】
また、本発明における潤滑油基油の粘度指数については格別の限定はないが、粘度指数は100以上が好ましく、より好ましくは110以上、特に好ましくは130以上、最も好ましくは135以上である。また160以下であることが好ましい。粘度指数を100以上とすることによって、低温から高温にわたり良好な粘度特性を示す組成物を得ることができるとともに、トラクション係数も低いものが得られる。また粘度指数が160を超えると低温時の粘度特性が悪化する可能性があるため好ましくない。
【0021】
また、本発明における潤滑油基油の硫黄含有量については格別の限定はないが、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、特に好ましくは1質量ppm以下である。(A)成分の硫黄含有量を低減することで組成物の酸化安定性により優れた組成物を得ることができる。
【0022】
本発明における(A)潤滑油基油としては、(A1)ワックスを50質量%以上含む原料油を水素化分解し接触脱ろうした基油単独、もしくは(A1)基油と(A2)水素化分解し接触脱ろうした基油を混合して用いたものが特に好ましい。
なお、(A1)ワックスを50質量%以上含む原料油を水素化分解し接触脱ろうした基油としては、原料油のワックス含有量は60質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
【0023】
この(A1)基油と(A2)基油の混合割合は、基油全量基準で好ましくは(A1)基油を20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは90質量%以上使用することが望ましい。(A1)基油の割合を20質量%以上混合することにより、組成物の粘度指数を175以上とすることが可能となり、またトラクション係数も低減できるため、優れた省燃費性を発揮できる。
(A1)基油は(A2)基油より、各基油を構成する分子の構造において、同じ炭素数の分枝を比較したとき、メチレン鎖の長さが(A1)基油のほうが長いため、粘度指数が高く、またトラクション係数が低くなる特徴を持つためである。この特徴は前述したポリαーオレフィン系合成油より優れている。
【0024】
本発明の潤滑油組成物における(A)潤滑油基油は、100℃における動粘度が3.6〜4.1mm/sに調整してなる潤滑油基油であり、好ましくは下記(Aa)または(Ab)から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることが好ましい。
(Aa)100℃における動粘度が1.5〜3.5mm/s未満、好ましくは1.9〜3.2mm/s、さらに好ましくは2.2〜2.9mm/s、の鉱油系基油
(Ab)100℃における動粘度が3.5〜7mm/s未満、好ましくは3.6〜4.5mm/sの鉱油系基油
もちろんこれら(Aa)基油と(Ab)基油は、それぞれ(A1)基油または(A2)基油のいずれかである。
【0025】
異なる粘度の基油を混合して用いることにより、同じ基油粘度でありながら組成物の粘度指数を高めることができるため、組成物の省燃費性の向上を図ることができる。
【0026】
本発明の潤滑油組成物は、(B)成分として、リン系化合物を含有する。
リン系化合物としては、分子中にリンを含むものであれば特に制限はないが、例えば、炭素数1〜30の炭化水素基を有するリン酸モノエステル類、リン酸ジエステル類、リン酸トリエステル類、亜リン酸モノエステル類、亜リン酸ジエステル類、亜リン酸トリエステル類、チオリン酸モノエステル類、チオリン酸ジエステル類、チオリン酸トリエステル類、チオ亜リン酸モノエステル類、チオ亜リン酸ジエステル類、チオ亜リン酸トリエステル類、これらのエステル類とアミン類あるいはアルカノールアミン類との塩若しくは亜鉛塩等の金属塩等が使用できる。
【0027】
前記炭素数1〜30の炭化水素基としては、具体的には、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基を挙げることができ、1種類あるいは2種類以上を任意に配合することができる。また、上記炭化水素基は主鎖に硫黄を含む炭化水素基であってもよい。
【0028】
本発明においては、リン系化合物のうち、炭素数4〜20のアルキル基又は炭素数6〜12の(アルキル)アリール基を有する亜リン酸エステル若しくはリン酸エステルが好ましい。
また、炭素数4〜20のアルキル基を有する亜リン酸エステルおよび炭素数6〜12の(アルキル)アリール基を有する亜リン酸エステルから選ばれる1種又は2種以上の混合物がより好ましい。
さらに、フェニルホスファイト等の炭素数6〜7の(アルキル)アリール基を有する亜リン酸エステルおよび/または炭素数4〜8のアルキル基を有する亜リン酸エステルがより好ましい。これらの中でも、ジブチルホスファイトが最も好ましい。
アルキル基は直鎖状でも良いが、分枝状であることがより好ましい。炭素数が少ないほうが、また分枝状であるほうが金属間摩擦係数が高いことによる。
【0029】
本発明における(B)成分のリン系化合物としては、(B−1)下記一般式(1)で示されるリン系化合物であることが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
ここで式(1)において、X、X及びXは、それぞれ個別に酸素原子又は硫黄原子を示し、R20、R21及びR22は、それぞれ個別に、水素原子、炭素数1〜30の炭化水素基又は少なくともひとつの硫黄を含む炭素数3〜30の炭化水素基を示す。
【0032】
式(1)において、X、X及びXは、すべて酸素原子であることが好ましい。またR20、R21及びR22は、少なくともひとつが水素原子であることが好ましい。さらに、R20、R21及びR22の少なくともひとつが水素原子であり、残りの一方もしくは両方が主鎖に硫黄を含む直鎖状の炭化水素基であることが好ましい。特に、R20、R21及びR22のひとつが水素原子であり、残りの両方が主鎖に硫黄を含む直鎖状の炭化水素基であることが好ましい。これにより耐摩耗性と金属間摩擦係数の向上を図ることができる。
なお、主鎖に硫黄を含む直鎖状の炭化水素基は各々異なる炭素数であることが好ましい。
【0033】
ここで、主鎖に硫黄を含む直鎖状の炭化水素基とは下記式で示される基を表す。
−(CH−S−C2m+1
【0034】
20、R21及びR22のひとつが水素原子であり、残りの両方が主鎖に硫黄を含む直鎖状の炭化水素基である場合、リンに結合する酸素と炭化水素基の主鎖に含まれる硫黄との間のアルキレン基の炭素数nは4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。また炭化水素基の主鎖中の硫黄と結合しているアルキル基の炭素数mは、少なくともひとつは8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。またもうひとつは4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。また、この炭素数4以下のアルキル基は、末端の水素が水酸基で置換されていることが最も好ましい。これにより耐摩耗性と金属間摩擦係数の向上をさらに図ることができる。
【0035】
20、R21及びR22の全部が主鎖に硫黄を含む直鎖状の炭化水素基である場合、リンに結合する酸素と炭化水素基の主鎖に含まれる硫黄との間のアルキレン基の炭素数nはいずれも4以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。また炭化水素基の主鎖中の硫黄と結合しているアルキル基の炭素数mは、いずれも8以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。これにより耐摩耗性と金属間摩擦係数の向上をさらに図ることができる。
【0036】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分のリン系化合物は、さらに(B−2)下記一般式(2)に示されるリン系化合物を混合して用いてもよい。
【化2】
【0037】
式(2)において、R23、R24及びR25は、それぞれ個別に、水素原子又は炭素数3〜30の炭化水素基を示す。
【0038】
(B−1)成分と(B−2)成分を混合して使用する場合、(B−2)成分と(B−1)成分のリン元素量基準での比率(B−2)/(B−1)は、0〜2が好ましく、0〜0.5がより好ましい。これにより耐摩耗性と金属疲労耐久性の向上をさらに図ることができる。
【0039】
本発明の潤滑油組成物における(B)成分のリン系化合物の含有量は、潤滑油組成物全量基準で、リン元素量として、その下限値が0.01質量%であり、好ましくは0.015質量%であり、一方、その上限値は0.03質量%であり、好ましくは0.025質量%である。(B)成分の含有量を上記範囲とすることで優れたトルク伝達力と変速特性を有し、シャダー防止性能に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0040】
本発明の潤滑油組成物は、(C)成分として、カルシウムサリシレート及び/又はカルシウムスルホネートを含有する。
【0041】
カルシウムサリシレートとしては、その構造に特に制限はないが、炭素数1〜30のアルキル基を1〜2個有するサリチル酸のカルシウム塩が用いられる。
【0042】
本発明において、カルシウムサリシレートは、モノアルキルサリチル酸カルシウム塩の構成比が85〜100mol%、ジアルキルサリチル酸カルシウム塩の構成比が0〜15mol%であって、3−アルキルサリチル酸カルシウム塩の構成比が40〜100mol%であるアルキルサリチル酸カルシウム塩、及び/又はその(過)塩基性塩であることがシャダー防止寿命をより向上させることができる点で好ましい。
【0043】
また、アルキルサリチル酸カルシウム塩におけるアルキル基としては、炭素数10〜40、好ましくは炭素数10〜19又は炭素数20〜30、さらに好ましくは炭素数14〜18又は炭素数20〜26のアルキル基、特に好ましくは炭素数14〜18のアルキル基である。これらアルキル基は直鎖状であっても分枝状であっても良く、プライマリーアルキル基、セカンダリーアルキル基であっても良い。
【0044】
また、カルシウムサリシレートとしては、アルカリ金属塩あるいはカルシウムの中性塩に、さらに過剰のカルシウム塩を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性塩や、炭酸ガス又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で上記中性塩をカルシウムの水酸化物等の塩基と反応させることにより得られる過塩基性塩も含まれる。
【0045】
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分として、カルシウムスルホネートも使用可能であり、その構造に特に制限はなく使用することができる
カルシウムスルホネートとしては、例えば、分子量100〜1500、好ましくは200〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩が好ましく用いられる。
【0046】
また、カルシウムスルホネートとしては、上記のアルキル芳香族スルホン酸を直接、カルシウムの酸化物や水酸化物等と反応させたり、または一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからカルシウム塩と置換させること等により得られる中性アルカリ土類金属スルホネートや、上記中性カルシウムスルホネートと過剰のカルシウム塩やカルシウム塩基(水酸化物や酸化物)を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性カルシウムスルホネートや、炭酸ガス及び/又はホウ酸若しくはホウ酸塩の存在下で上記中性金属スルホネートとカルシウムの塩基と反応させることにより得られる炭酸塩過塩基性カルシウムスルホネート、ホウ酸塩過塩基性カルシウムスルホネートも含まれる。
本発明においては、上記の中性カルシウムスルホネート、塩基性カルシウムスルホネート、過塩基性カルシウムスルホネート及びこれらの混合物等を用いることができる。
【0047】
本発明で用いる(C)成分のカルシウムサリシレート及び/又はカルシウムスルホネートの塩基価は任意であり、通常0〜500mgKOH/gであるが、伝達トルク容量向上に優れる点から、塩基価が100〜450mgKOH/g、好ましくは200〜400mgKOH/gのものを用いるのが望ましい。なおここでいう塩基価は、JIS K2501に準拠して測定される過塩素酸法による塩基価を意味している。
【0048】
本発明の潤滑油組成物において、(C)成分の含有量は、組成物全量基準で、カルシウム元素量として0.03〜0.05質量%である。好ましくは0.035質量%以上であり、さらに好ましくは0.04質量%以上である。また好ましくは0.045質量%以下である。(C)成分の含有量を上記範囲とすることで優れたトルク伝達力と変速特性を有し、シャダー防止性能に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0049】
本発明の潤滑油組成物において、潤滑油組成物中の、(B)成分のリン元素質量含有量と(C)成分のカルシウム質量含有量の比(P/Ca)は、0.3〜0.7であり、好ましくは0.4〜0.6、特に好ましくは0.45〜0.55である。(C)成分の含有量を上記範囲とすることで優れたトルク伝達力と変速特性を有し、シャダー防止性能に優れる潤滑油組成物を得ることができる。
【0050】
本発明の潤滑油組成物は、(D)成分として、ホウ素変性無灰分散剤を含有する。
【0051】
本発明において無灰分散剤としては、潤滑油に用いられる任意の無灰分散剤を用いることができるが、例えば、炭素数40〜400の直鎖若しくは分枝状のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有する含窒素化合物又はその誘導体、或いはアルケニルコハク酸イミドの変性品等が挙げられる。これらの中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上を配合することができる。
【0052】
上記アルキル基又はアルケニル基の炭素数は40〜400、好ましくは60〜350である。アルキル基又はアルケニル基の炭素数が40未満の場合は、化合物の潤滑油基油に対する溶解性が低下し、一方、アルキル基又はアルケニル基の炭素数が400を超える場合は、潤滑油組成物の低温流動性が悪化するため、それぞれ好ましくない。該アルキル基又はアルケニル基は、直鎖状でも分枝状でもよいが、好ましいものとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等のオレフィンのオリゴマーやエチレンとプロピレンのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基等が挙げられる。
【0053】
上記無灰分散剤の具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上の化合物を用いることができる。
(I)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、或いはその誘導体
(II)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するベンジルアミン、或いはその誘導体
(III)炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を分子中に少なくとも1個
有するポリアミン、或いはその誘導体。
【0054】
上記(I)コハク酸イミドとしては、より具体的には、下記一般式(3)又は(4)で示される化合物等が例示できる。
【0055】
【化3】
【0056】
上記一般式(3)中、Rは炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、aは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0057】
【化4】
【0058】
上記一般式(4)中、R及びRは、それぞれ個別に炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基、更に好ましくはポリブテニル基を示し、bは0〜4、好ましくは1〜3の整数を示す。
【0059】
なお、上記コハク酸イミドには、ポリアミンの一端に無水コハク酸が付加した一般式(3)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミンの両端に無水コハク酸が付加した一般式(4)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含されるが、本発明の潤滑油組成物においては、それらの一方のみを含んでもよく、或いはこれらの混合物が含まれていてもよい。
【0060】
上記コハク酸イミドの製法は特に制限はないが、例えば炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合を無水マレイン酸と100〜200℃で反応させて得たアルキル又はアルケニルコハク酸をポリアミンと反応させることにより得ることができる。ここで、ポリアミンとしては、具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等が例示できる。
【0061】
上記(II)ベンジルアミンとしては、より具体的には、下記一般式(5)で表される化合物等が例示できる。
【化5】
【0062】
上記一般式(5)中、Rは、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、cは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0063】
上記ベンジルアミンの製造方法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンをフェノールと反応させてアルキルフェノールとした後、これにホルムアルデヒドとジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンをマンニッヒ反応により反応させることにより得ることができる。
【0064】
上記(III)ポリアミンとしては、より具体的には、下記一般式(6)で表される化合
物等が例示できる。
−NH−(CHCHNH)−H ・・・(6)
上記一般式(6)中、Rは、炭素数40〜400、好ましくは60〜350のアルキル基又はアルケニル基を示し、dは1〜5、好ましくは2〜4の整数を示す。
【0065】
上記ポリアミンの製造法は何ら限定されるものではないが、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、及びエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリオレフィンを塩素化した後、これにアンモニアやエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン等のポリアミンを反応させることにより得ることができる。
【0066】
本発明においては、前述の無灰分散剤にホウ酸を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和した、いわゆるホウ素変性無灰分散剤を(D)成分として使用する。このホウ素変性無灰分散剤は耐熱性、酸化防止性に優れており、本発明の無段変速機用潤滑油組成物おいても、酸化安定性や腐食防止性を高めるために特に有効である。
【0067】
上記ホウ素変性化合物の製造は、一般に、前述の無灰分散剤にホウ素化合物を作用させて、残存するアミノ基及び/又はイミノ基の一部又は全部を中和することにより行われる。例えば、ホウ酸変性コハク酸イミドの製造方法としては、特公昭42−8013号公報、特公昭42−8014号公報、特開昭51−52381号公報、及び特開昭51−130408号公報等に開示されている方法等が挙げられる。具体的には、アルコール類やヘキサン、キシレン等の有機溶媒、軽質潤滑油基油等にポリアミンとポリアルケニルコハク酸(無水物)にホウ酸、ホウ酸エステル、又はホウ酸塩等のホウ素化合物を混合し、適当な条件で加熱処理することにより得ることができる。
【0068】
上記ホウ素含有コハク酸イミド等のホウ素含有無灰分散剤のホウ素含有量については特に制限はなく、通常0.1〜3質量%であり、好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、特に好ましくは1.5質量%以下である。ホウ素含有無灰分散剤としてホウ素含有量がこの範囲内のホウ素含有コハク酸イミドを使用することが好ましく、特にホウ素含有ビスコハク酸イミドを使用することが望ましい。なお、ホウ素含有量が3質量%を超える場合、安定性に懸念がある。
【0069】
また、ホウ素含有コハク酸イミド等のホウ素含有無灰分散剤のホウ素/窒素質量比(B/N比)は特に制限はないが、通常0.05〜5であり、好ましくは0.2以上であり、また、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、特に好ましくは0.9以下である。ホウ素含有無灰分散剤としてB/N比がこの範囲内のホウ素含有コハク酸イミドを使用することが好ましく、特にホウ素含有ビスコハク酸イミドを使用することが望ましい。なお、B/N比が5を超える場合、安定性に懸念がある。
【0070】
本発明の潤滑油組成物において、(D)成分のホウ素変性無灰分散剤の含有量は、ホウ素元素量として、組成物全量基準で、0.001質量%以上、好ましくは0.003質量%以上であり、また0.008質量%以下、好ましくは0.006質量%以下である。
組成物中のホウ素含有量が0.008質量%を超えると湿式摩擦クラッチの摩擦特性が悪化するため好ましくない。また0.001質量%未満では、先に述べたように、無段変速機用潤滑油組成物の性能のひとつである酸化安定性や腐食防止性の向上に効果が認められない。
【0071】
本発明の潤滑油組成物は、(E)成分として摩擦調整剤を含有する。
摩擦調整剤としては、脂肪酸エステル系摩擦調整剤および/または脂肪酸アミド系摩擦調整剤が好ましい。
摩擦調整剤として配合される脂肪酸エステル系化合物、脂肪酸アミド系化合物の原料となる脂肪酸としては直鎖構造が好ましく、その炭化水素基はアルキル基でもアルケニル基でも良い。その炭素数は10〜30であり、12以上が好ましく、16以上がさらに好ましい。また26以下が好ましく、24以下がより好ましい。炭素数が10未満では摩擦調整剤としての効果に乏しく、また炭素数が30を超えると、組成物としての低温粘度特性が悪化する懸念がある。
【0072】
また摩擦調整剤として配合される脂肪酸エステル系化合物の原料となるアルコールとしては、1価アルコールでも多価アルコールでもよいが、多価アルコールが好ましい。多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものが用いられる。2〜10価の多価アルコールとしては、具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜15量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜15量体)、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール、グリセリン、ポリグリセリン(グリセリンの2〜8量体、例えばジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン等)、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜8量体、ペンタエリスリトールおよびこれらの2〜4量体、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の多価アルコール、キシロース、アラビノース、リボース、ラムノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、ソルボース、セロビオース、マルトース、イソマルトース、トレハロース、スクロース等の糖類、およびこれらの混合物等が挙げられる。これらの多価アルコールの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの3〜10量体)、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの3〜10量体)、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールアルカン(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等)およびこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコールおよびこれらの混合物等が好ましい。さらにエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびこれらの混合物等がより好ましい。これらの中でもグリセリンが特に好ましい。
【0073】
また摩擦調整剤として配合される脂肪酸アミド系化合物の原料となるアミンとしては、アンモニア、1級アミン、2級アミンのいずれでもよいが、アンモニアもしくは1級アミンが好ましい。1級アミンの具体的な構造としては、モノアルキルアミン、モノアルカノールアミン、芳香族アミン、エチレンジアミンに代表されるジアミン等が挙げられる。これらの中でもアンモニアが特に好ましい。
【0074】
本発明で用いられる(E)脂肪酸エステル系摩擦調整剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸から選択される脂肪酸もしくはその混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンから選択されるアルコールもしくはその混合物を反応させて得られるエステルを挙げることができる。エステルの構造としては、多価アルコール中の水酸基全てがエステル化された完全エステルでもよく、水酸基の一部がエステル化されず水酸基のまま残存する部分エステルでもよい。なかでも上述した炭素数16から20の脂肪酸とグリセリンの部分エステルが好ましい。
【0075】
本発明で用いられる(E)脂肪酸アミド系摩擦調整剤の具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸から選択される脂肪酸もしくはその混合物と、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、アニリン、エチレンジアミンもしくはその混合物を反応させて得られるアミドを挙げることができる。アミドの構造としては、1級アミド、2級アミド、3級アミドのいずれでもよいが、1級アミドもしくは2級アミドが好ましい。なかでも上述した炭素数16から20の脂肪酸とアンモニアの1級アミドが好ましい。
【0076】
本発明の潤滑油組成物においては、摩擦調整剤として脂肪酸エステル系化合物および/または脂肪酸アミド系摩擦調整剤を使用することにより、金属間摩擦係数を低下させることなくシャダー防止性を確保することができる。
【0077】
(E)成分の含有量は、組成物全量基準で0.01〜2質量%、好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以下である。0.01質量%未満では摩擦調整剤の効果が発揮されず、2質量%を超えると、低温時の溶解性に懸念がある。
【0078】
本発明の潤滑油組成物は、(F)成分として、粘度指数向上剤を含有することが好ましい。
本発明の潤滑油組成物に用いられる粘度指数向上剤は、下記一般式(7)で表されるモノマーから誘導される構造単位を実質的に含有するポリ(メタ)アクリレート系添加剤であることが好ましい。
【化6】
【0079】
一般式(7)において、Rは水素又はメチル基、好ましくはメチル基、Rは炭素数1から30の炭化水素基である。
炭素数1から30の炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、直鎖又は分枝のペンチル基、直鎖又は分枝のヘキシル基、直鎖又は分枝のヘプチル基、直鎖又は分枝のオクチル基、直鎖又は分枝のノニル基、直鎖又は分枝のデシル基、直鎖又は分枝のウンデシル基、直鎖又は分枝のドデシル基、直鎖又は分枝のトリデシル基、直鎖又は分枝のテトラデシル基、直鎖又は分枝のペンタデシル基、直鎖又は分枝のヘキサデシル基、直鎖又は分枝のヘプタデシル基、直鎖又は分枝のオクタデシル基、直鎖又は分枝のノナデシル基、直鎖又は分枝のイコシル基、直鎖又は分枝のヘンイコシル基、直鎖又は分枝のドコシル基、直鎖又は分枝のトリコシル基、直鎖又は分枝のテトラコシル基等の炭素数1〜30のアルキル基等が挙げられる。
【0080】
本発明における(F)成分のポリ(メタ)アクリレート系添加剤は、上記一般式(7)で表されるモノマーから誘導される構造単位の他に、下記一般式(8)や(9)で表されるモノマーから誘導される構造単位を含むこともできる。
【化7】
【0081】
一般式(8)において、Rは水素又はメチル基、好ましくはメチル基、Rは炭素数1〜30のアルキレン基、Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示し、aは0又は1の整数を示す。
【化8】
【0082】
一般式(9)において、Rは水素又はメチル基である。Eは窒素原子を1〜2個、酸素原子を0〜2個含有するアミン残基又は複素環残基を示す。
【0083】
およびEで表される基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、キノニル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、およびピラジノ基等が例示できる。
【0084】
この好ましい例としては、具体的には、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−メチル−5−ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン及びこれらの混合物等が例示できる。
【0085】
粘度指数向上剤((F)成分)は、具体的には、下記(Fa)〜(Fd)からなる一般式(7)のモノマーと、必要に応じて使用される一般式(8)および/または(9)で表される(Fe)の極性基含有モノマーとの共重合体である。
(Fa)Rが炭素数1〜4のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Fb)Rが炭素数5〜10のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Fc)Rが炭素数12〜18のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Fd)Rが炭素数20以上のアルキル基である(メタ)アクリレート
(Fe)極性基含有モノマー
【0086】
本発明においては、(F)成分におけるモノマーの構成比としては、ポリ(メタ)アクリレートを構成するモノマー全量基準で、以下の通りであることが好ましい。
(Fa)成分:好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜50質量%、
(Fb)成分:好ましくは0〜50質量%、より好ましくは0〜20質量%
(Fc)成分:好ましくは10〜60質量%、より好ましくは20〜40質量%、
(Fd)成分:好ましくは1〜20質量%、より好ましくは5〜10質量%、
(Fe)成分:好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0質量%
【0087】
この組成にすることにより、組成物の低温粘度特性と疲労寿命延長効果を両立させることができる。
【0088】
上記ポリ(メタ)アクリレートの製造法は任意であるが、例えば、ベンゾイルパーオキシド等の重合開始剤の存在下で、モノマー(Fa)〜(Fe)の混合物をラジカル溶液重合させることにより容易に得ることができる。
【0089】
(F)成分のポリ(メタ)アクリレート系添加剤の重量平均分子量は60,000以下、好ましくは50,000以下、さらに好ましくは40,000以下であり、5,000以上、好ましくは10,000以上、さらに好ましくは20,000以上である。60,000を超えると剪断安定性が低すぎ、潤滑油組成物としての必要粘度を維持することができない。また5,000より小さいと粘度指数向上効果が小さくなるため、省燃費性が悪化する。
【0090】
本発明の潤滑油組成物における(F)成分のポリ(メタ)アクリレート系添加剤の配合量は、潤滑油組成物の100℃における動粘度が5.2〜5.6mm/s、かつ、潤滑油組成物の粘度指数が165以上になるように添加される。
より具体的には、その配合量は、潤滑油組成物全量基準で15質量%以下、好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下であり、2質量%以上、好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。15質量%を超えるとせん断による粘度低下が大きくなりすぎ、2質量%未満で十分な組成物粘度を確保できない。
【0091】
本発明の潤滑油組成物は、100℃における動粘度が5.2〜5.6mm/sであり、粘度指数は165以上であることが必要である。
100℃動粘度が5.2未満の場合は極圧性やベアリングの疲労寿命が低下することにより装置の信頼性が低下することが懸念され、5.6mm/sを上回った場合、もしくは、粘度指数が165未満の場合は省燃費効果が小さくなる。
【0092】
本発明の潤滑油組成物は音波剪断試験20時間後の100℃での粘度低下率が8%以下であることが好ましい。ここでいう音波剪断試験とはJASO M 347で規定される試験法によるものである
【0093】
先に述べたように、本発明の潤滑油組成物は、油圧制御装置の媒体としても使用されており、粘度が低下するとオイルポンプや制御バルブ等からのオイルの漏れにより、十分な油圧を発生できない等の不具合を生じる。このため、機械の寿命が尽きるまで、使用される潤滑油は必要な粘度を保持する必要がある。
このため、本発明の潤滑油組成物に繰り返しせん断力がかかっても十分な粘度が保持される必要がある。本発明の潤滑油組成物が音波剪断試験20時間後の100℃での粘度低下率が8%以下であるということは、これを保障する値である。
一方で粘度指数向上剤の添加量を少なくすることで、粘度低下率の軽減が可能となるが、一方で粘度指数が小さくなるために省燃費効果が小さくなる。したがって、本発明の潤滑油組成物にて粘度低下率の範囲は、好ましくは2%以上、8%以下、より好ましくは3.5%以上、7%以下である。
【0094】
また本発明の潤滑油組成物は40℃、平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数が0.02以下であることが好ましい。
【0095】
このトラクション係数はスチールボール−ディスク装置で測定されたものである。これは半径13cmの円盤を286.7rpmで回転させ、半径10cmのところに半径1.27cmのボールに20Nの荷重をかけ、40℃で平均速度 3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるボールにかかる回転トルクから算出されたものである。
【0096】
この条件はいわゆる完全な弾性流体潤滑条件までにはいたらず、まだ流体潤滑条件と弾性流体潤滑条件の中間の領域である。従来の技術では高い面圧、具体的には1GPaを超える面圧でトラクション係数を測定し、その潤滑油組成物の高い面圧条件化での油膜の形成のしやすさ、すなわちトラクション係数が高い組成物ほど油膜を形成しやすく過酷な条件での潤滑性が良好であると判断されていた。
【0097】
しかし本発明でのトラクション係数の測定条件は前述したとおり0.4GPaという中間面圧条件下での測定値であり、玉軸受やころ軸受での潤滑を除けば、機械の潤滑領域のうち、トラクション係数が潤滑にかかわる抵抗となっている部分の代表条件と考えても良い。したがって、本条件下のトラクション係数を低減することは、機械の潤滑条件でトラクション係数にかかる抵抗を下げることになる。すなわち、本発明では40℃で平均速度
3.0m/s、すべり率10%、面圧0.4GPaにおけるトラクション係数を0.02以下とすることで、より省燃費効果を確保することができるのである。
【0098】
この条件下でのトラクション係数は0.02以下であることが好ましい。また低ければ低いほど良いが、先に述べたように、より高い面圧下に玉軸受やころ軸受等の潤滑性を確保するため0.005以上であることが好ましい。
【0099】
また本発明の潤滑油組成物は、無段変速機用潤滑油組成物として金属間摩擦係数が高いことが求められる。これは金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦係数が高いほど、ベルトの押し付け圧が低くても同じトルクを伝達できる、すなわち低い油圧で高いトルクを伝達できることになるためである。
【0100】
金属ベルト式無段変速機のベルト−プーリー間の金属間摩擦特性はFalex Block-on-Ring Test Machine(ブロックオンリング試験機)を用い評価される。具体的条件は以下の通りである。
(試験条件)
リング :Falex S-10 Test Ring (EAE 4620Steel)
ブロック :Falex H-60 Test Block
油温 :80℃
負荷荷重 :445N
すべり速度:0.1m/s
【0101】
上記条件において、金属間摩擦係数が0.115以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.118以上であり、最も好ましくは0.12以上である。また0.14以下である。0.115未満では本発明で目標とする省燃費性が発揮できず、また0.14を超えるとシャダー防止性を満足することが困難となる。また軸受部の摩擦が増加するため、逆に省燃費性が低下する懸念がある。
【0102】
金属ベルト式無段変速機の変速クラッチにおける摩擦特性はSAE No.2試験機を用い評価される。JASO M348:2002に準拠し、フリクションプレートとしてSD−1777Xを用いた評価において、5000サイクル経過後の摩擦特性としては、静摩擦係数(μ)は0.13以上、0.16以下、μ/μは0.9以上、1.05以下であることが好ましい。静摩擦係数が0.13未満では変速クラッチのすべりが懸念され、0.16を超えるとシャダー防止性を満足することが困難となる。また、μ/μが1.05を超えると変速時におけるショックの発生が懸念され、0.9未満では静摩擦係数の確保が困難となる。
【0103】
金属ベルト式無段変速機のロックアップクラッチにおけるシャダー防止性は低速すべり試験機(LVFA)を用い、JASO M349:2010に準拠して評価される。本評価において、0.3m/sにおけるdμ/dvは正勾配であることが好ましい。dμ/dvが負勾配となる場合はシャダーの発生が懸念される。
【0104】
本発明の潤滑油組成物には、その性能をさらに向上させる目的で、又は潤滑油組成物に必要な性能を付与するために、必要に応じて、上述した添加剤以外の、粘度指数向上剤、極圧剤、分散剤、金属系清浄剤、酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、消泡剤、着色剤等の各種添加剤を単独で又は数種類組み合わせて配合しても良い。
【0105】
粘度指数向上剤としては、前記した(F)成分のポリ(メタ)アクリレートのほか、非分散型または分散型エチレン−α−オレフィン共重合体またはその水素化物、ポリイソブチレンまたはその水素化物、スチレン−ジエン水素化共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、ポリアルキルスチレンおよび前記一般式(7)で表される(メタ)アクリレートモノマーとエチレン/プロピレン/スチレン/無水マレイン酸のような不飽和モノマーとの共重合体等の粘度指数向上剤をさらに用いることができる。
本発明の潤滑油組成物に粘度指数向上剤((F)成分を除く)を配合する場合、その配合量は、組成物の100℃における動粘度及び粘度指数の規定を満たす限り制限はなく、通常、組成物全量基準で0.1〜15質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
なお潤滑油組成物の粘度指数は165以上であるが、省燃費効果の点からは、好ましくは175以上であり、さらに180以上が好ましく、190以上が最も好ましい。
【0106】
極圧剤としては、(B)成分のリン化合物以外に、硫化油脂類、硫化オレフィン類、ジヒドロカルビルポリスルフィド類、ジチオカーバメート類、チアジアゾール類、及びベンゾチアゾール類から選ばれる少なくとも1種の硫黄系極圧剤を配合することができる。
【0107】
分散剤としては、(D)成分のホウ素変性無灰分散剤以外に、炭素数40〜400の炭化水素基を有する、コハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアミン、又はそれらの酸変性化合物或いは硫黄変性化合物等の無灰分散剤を配合することができる。
本発明においては、上記分散剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜20質量%、好ましくは0.1〜10質量%である。無灰分散剤の含有量が20質量%を超えると、潤滑油組成物の低温流動性が大幅に悪化するため好ましくない。
【0108】
金属系清浄剤としては、(C)成分のカルシウムサリシレート及び/又はカルシウムスルホネートのアルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ土類金属サリシレート等の金属系清浄剤が挙げられる。
本発明においては、上記金属系清浄剤の中から任意に選ばれる1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で含有させることができるが、通常、その含有量は、組成物全量基準で0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0109】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物やアミン系化合物等、潤滑油に一般的に使用されているものであれば使用可能である。
具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のアルキルフェノール類、メチレン−4,4−ビスフェノール(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール)等のビスフェノール類、フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類、ジ−2−エチルヘキシルジチオリン酸亜鉛等のジアルキルジチオリン酸亜鉛類、(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)あるいは(3−メチル−5−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)脂肪酸(プロピオン酸等)と1価又は多価アルコール、例えばメタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6−ヘキサジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール等とのエステル等が挙げられる。
これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物は、任意の量を含有させることができるが、通常、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%であるのが望ましい。
【0110】
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、及びイミダゾール系化合物等が挙げられる。
【0111】
防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等が挙げられる。
【0112】
抗乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0113】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、及びβ−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等が挙げられる。
【0114】
消泡剤としては、潤滑油用の消泡剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、ジメチルシリコーン、フルオロシリコーン等のシリコーン類が挙げられる。これらの中から任意に選ばれた1種類あるいは2種類以上の化合物を任意の量で配合することができる。
【0115】
シール膨潤剤としては、潤滑油用のシール膨潤剤として通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、例えば、エステル系、硫黄系、芳香族系等のシール膨潤剤が挙げられる。
【0116】
着色剤としては、通常用いられる任意の化合物が使用可能であり、また任意の量を配合することができるが、通常その配合量は、組成物全量基準で0.001〜1.0質量%である。
【0117】
これらの添加剤を本発明の潤滑油組成物に含有させる場合には、その含有量は組成物全量基準で、腐食防止剤、防錆剤、抗乳化剤ではそれぞれ0.005〜5質量%、金属不活性化剤では0.005〜2質量%、シール膨潤剤では0.01〜5質量%、消泡剤では0.0005〜1質量%の範囲で通常選ばれる。
【0118】
本発明の潤滑油組成物は、自動車用の手動変速機、自動変速機、無段変速機、終減速機、エンジン油、農業機械や建設用機械等の様々な用途に使用可能である。最も好適に使用されるのは無段変速機である。これは潤滑において剪断がかかる箇所が多く、面圧も高い分が多いため、本発明の性能が最も効果的に使用され得るためである。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0120】
(実施例1〜4、比較例1〜3)
本発明の潤滑油組成物(実施例1〜4)、比較用の潤滑油組成物(比較例1〜3)について、粘度温度特性、EC×V40、せん断試験(JASO超音波法、20時間)による粘度低下率およびトラクション係数の結果を表1に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
(実施例5〜12、比較例4〜10)
本発明の潤滑油組成物(実施例5〜12)、比較用の潤滑油組成物(比較例4〜10)について、金属間摩擦係数、変速クラッチ特性(静摩擦係数、μ/μ)、シャダー防止性の結果を表2に示す。
【0123】
【表2】
【0124】
表1および表2に示すように、本発明の潤滑油組成物は高い金属間摩擦係数を保持し、変速クラッチ特性、シャダー防止性に優れ、低いトラクション係数により、さらなる省燃費性を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の潤滑油組成物は省燃費性に優れ、無段変速機用として好適に使用できるばかりか、手動変速機用、自動変速機用、終減速機用としても有用に使用される。