特許第5968285号(P5968285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968285
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】バンパー補強材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   B60R19/04 M
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-186731(P2013-186731)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-51755(P2015-51755A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2015年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100100974
【弁理士】
【氏名又は名称】香本 薫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 成一
(72)【発明者】
【氏名】津吉 恒武
(72)【発明者】
【氏名】梶原 博之
(72)【発明者】
【氏名】下赤 真吾
【審査官】 田合 弘幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023753(JP,A)
【文献】 特開2011−131647(JP,A)
【文献】 特開2009−137452(JP,A)
【文献】 特開2010−083381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/03−19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理型アルミニウム合金中空押出材からなり、車幅方向の両方の端部に潰し加工を受け、潰し加工後に全体が時効硬化処理を受けたバンパー補強材において、前記端部が潰し加工を受けた箇所を含めて潰し加工前に復元処理を受けており、前記端部の復元処理を受けた箇所の硬度が、復元処理を受けていない車幅方向中央部の硬度より高いことを特徴とするバンパー補強材。
【請求項2】
熱処理型アルミニウム合金中空押出材からなり、車幅方向の一方の端部に潰し加工を受け、潰し加工後に全体が時効硬化処理を受けたバンパー補強材において、前記端部が潰し加工を受けた箇所を含めて潰し加工前に復元処理を受けており、前記端部の復元処理を受けた箇所の硬度が、復元処理を受けていない車幅方向中央部の硬度より高いことを特徴とするバンパー補強材。
【請求項3】
熱処理型アルミニウム合金中空押出材の断面が、略鉛直に配置される前後のフランジと、略水平に配置され前記フランジを連結する複数個のウエブを有し、前記潰し加工を受けた箇所は、前記ウエブが曲げ変形していて前後のフランジ間の距離が減少していることを特徴とする請求項1又は2に記載されたバンパー補強材。
【請求項4】
前記熱処理型アルミニウム合金中空押出材がJIS7000系アルミニウム合金からなり、前記潰し加工を受けた箇所と長手方向中央部のビッカース硬さの差がHv10以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたバンパー補強材。
【請求項5】
熱処理型アルミニウム合金押出材のT1調質材を用いてバンパー補強材を成形し、前記バンパー補強材の一方又は両方の端部を局部的に400℃以上に加熱して復元処理を施し、復元処理を施した領域に潰し加工を施した後、前記バンパー補強材全体に時効硬化処理を施すことを特徴とするバンパー補強材の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理型アルミニウム合金中空押出材がJIS7000系アルミニウム合金からなることを特徴とする請求項5に記載されたバンパー補強材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理型アルミニウム合金押出材からなるバンパー補強材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜4には、対向配置された一対のフランジとそれらに連結された複数のウエブからなるアルミニウム合金押出材の端部領域に、フランジ面に対し垂直方向に潰し加工を施し、ドアビームやバンパー補強材等の自動車用補強部材を製造することが記載されている。このうち、特許文献2には、プレス焼き入れした6000系(Al−Mg−Si系)アルミニウム合金押出材について、時効硬化処理後に潰し加工を行うことが記載されている。また、特許文献4には、プレス焼き入れした6000系又は7000系(Al−Zn−Mg系)アルミニウム合金押出材について、押出後のT1調質の状態で潰し加工を行い、その後に時効硬化処理を行うことが記載されている。
【0003】
一方、特に7000系アルミニウム合金押出材は、プレス焼き入れ後、時効硬化処理前の材料(T1調質材)でも、自然時効によって硬化し、成形性が低下している。その成形性を改善するため、例えば特許文献5〜7に記載されているように、従来より、自然時効により硬化した7000系アルミニウム合金の強度を低下させる復元処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3465862号公報
【特許文献2】特許第4111651号公報
【特許文献3】特開平7−25296号公報
【特許文献4】特開2003−118367号公報
【特許文献5】特開平7−305151号公報
【特許文献6】特開平10−168553号公報
【特許文献7】特開2007−119853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アルミニウム合金中空押出材からなるバンパー補強材において、特許文献3に記載されたようにバンパー補強材の端部に潰し加工を施した場合、潰し加工を施した箇所において水平面内の断面係数が減少する。このため、端部衝突時にバンパー補強材に発生する反力が低下し、バンパー補強材のエネルギー吸収量が減少するという問題が生じる。アルミニウム合金が6000,7000系等の熱処理型アルミニウム合金であれば、潰し加工前にバンパー補強材の端部に復元処理を施し、潰し加工後に時効硬化処理を行うことで、潰し加工による割れの発生を防止でき、かつバンパー補強材全体の強度が向上するが、これは上記問題点の本質的な改善にはならない。
従って、本発明は、アルミニウム合金中空押出材からなるバンパー補強材において、端部にこのような潰し加工を施した場合に生じる上記問題点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱処理型アルミニウム合金中空押出材からなり、車幅方向の一方又は両方の端部に潰し加工を受け、潰し加工後に全体が時効硬化処理を受けたバンパー補強材において、潰し加工を受けた端部が潰し加工を受けた箇所を含めて潰し加工前に復元処理を受けており、前記端部の復元処理を受けた箇所の硬度が、復元処理を受けていない車幅方向中央部の硬度より高いことを特徴とする。
典型的な例でいえば、前記アルミニウム合金中空押出材の断面は、略鉛直に配置される前後のフランジと、略水平に配置され前記フランジを連結する複数個のウエブを有し、潰し加工が前記フランジ面に略垂直に行われ、潰し加工を受けた箇所は、ウエブが曲げ変形し前後のフランジ間の距離が減少している。
【0007】
前記熱処理型アルミニウム合金中空押出材が、JIS7000系のT1調質材である場合、復元処理の加熱温度を400℃以上としたとき、端部の復元処理を受けた箇所と復元処理を受けていない車幅方向中央部のビッカース硬さの差として、Hv10以上が容易に達成される。なお、本発明においてT1調質材とは、プレス焼き入れ後人工時効硬化処理を行わず、その間自然時効させた材料を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るバンパー補強材は、端部の復元処理を施した箇所(潰し加工を施した箇所)の時効処理後の硬度及び強度が、復元処理を施さなかった箇所(車幅方向中央部など、普通に時効硬化処理を施しただけの箇所)に比べて向上し、これにより、断面係数の減少に伴って生じる端部衝突時の反力の低下、及びバンパー補強材のエネルギー吸収量の減少が補われる。
本発明では、復元処理の温度を適切に調整することにより、潰し加工による割れの発生を防止でき、同時に潰し加工を施した箇所の時効処理後の硬度及び強度を向上させ、端部衝突時の反力、及びエネルギー吸収量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】バンパー補強材の端部の潰し加工部と復元処理の加熱部を説明する平面図である。
図2】潰し加工部に潰し加工を行ったバンパー補強材の平面図である。
図3】実施例で作成したバンパー補強材について、各部の寸法を記載した平面図である。
図4図3に示すバンパービーム補強材において、復元処理の加熱部を示す平面図(a)、及び潰し加工後の形態を示す平面図(b)である。
図5】実施例の端部衝突試験について説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜5を参照して、本発明に係るバンパー補強材及びその製造方法について、具体的に説明する。
図1に示すバンパー補強材1(潰し加工前の半製品)は、断面の輪郭が矩形の熱処理型アルミニウム合金中空押出材を曲げ加工して得られたもので、車体幅方向に平行な中央部2と、車体側に屈曲した左右の端部3と、中央部2及び端部3をつなぐ屈曲部4からなる。中央部2と屈曲部4の境界及び端部3と屈曲部の境界を破線で示している。端部3にはバンパーステイが設置される。バンパー補強材1はT1調質材であり、通常、自然時効により、全体がやや硬化した状態にある。なお、上記曲げ加工は、後述する復元処理と潰し加工の間に行ってもよい。
【0011】
潰し加工をバンパー補強材1の端部3に施す前に、バンパー補強材1の両端から潰し加工部A1を含む領域(加熱部A2)を、加熱して局部的に復元処理を施した後、前記潰し加工部A1に潰し加工を施す。潰し加工後のバンパー補強材1を図2に示す。
前記アルミニウム合金中空押出材は断面の輪郭が矩形で、略鉛直に配置される前後のフランジ(前フランジが衝突側、後フランジが車体側に配置される)と、両フランジを連結し略水平に配置される複数個のウエブを有し、潰し加工部A1では、前記ウエブが曲げ変形し、前後のフランジ間の距離が減少している。
【0012】
本発明の復元処理では、7000系アルミニウム合金の場合、加熱部A2を実体温度400〜550℃に所定時間保持後、冷却(空冷又は水冷)する。この保持温度は、一般的な復元処理の保持温度(特許文献5〜7参照)よりかなり高温である。復元処理の加熱温度を400℃以上とすることにより、加熱部A2が再溶体化又はそれに近い状態となり軟化する。一方、復元処理の加熱温度が550℃を越えると局部溶解のおそれがある。保持時間については0秒を超える時間であればよく、加熱部A2が上記保持温度に達した後、直ちに冷却してもよい。保持時間の上限は特に限定的ではないが、5分以内の短時間で済ますのが、生産効率の面で望ましい。復元処理は、他の合金系(例えば6000系)の場合も、ほぼ同じ条件で実施できる。加熱手段として、高周波誘導加熱装置又は硝石炉を利用できる。
復元処理後の潰し加工は、復元処理終了後(冷却後)72時間以内に行うことが望ましい。
【0013】
なお、7000系アルミニウム合金の組成は、概ね、Zn:3.0〜8.0質量%、Mg:0.4〜2.5質量%、Cu:0.05〜2.0質量%、Ti:0.005〜0.2質量%を含有し、さらにMn:0.01〜0.3質量%、Cr:0.01〜0.3質量%、Zr:0.01〜0.3質量%の1種又は2種以上を含有し、残部Al及び不可避不純物からなる。
この組成について説明すると、以下のとおりである。ただし、この組成自体は7000系アルミニウム合金として公知のものである。
【0014】
ZnとMgは金属間化合物であるMgZnを形成して、7000系アルミニウム合金の強度を向上させる元素である。Zn含有量が3.0質量%未満又はMg含有量が0.4質量%未満では、実用材として必要な200MPa以上の耐力が得られない。一方、Zn含有量が8.0質量%を越え又はMg含有量が2.5質量%を越えると、押出形材に対し潰し加工前に所定の復元処理を行っても、潰し加工による亀裂の発生を防止できず、同時に、潰し加工により付与される引張残留応力を低減できず、耐応力腐食割れ性が顕著に低下する。従って、Zn含有量は3.0〜8.0質量%、Mg含有量は0.4〜2.5質量%とする。高強度化及び軽量化の観点からは、Zn含有量、Mg含有量はより高合金側、例えばそれぞれ5.0〜8.0質量%、1.0〜2.5質量%、合計で6.0〜10.5質量%が望ましい。
【0015】
Cuは7000系アルミニウム合金の強度を向上させる元素である。Cu含有量が0.05質量%未満では十分な強度向上効果がなく、一方、2.0質量%を越えると押出加工性の低下を招く。従って、Cu含有量は0.05〜2.0質量%とする。望ましくは0.5〜1.5質量%である。
Tiは7000系アルミニウム合金の鋳造時に結晶粒を微細化して、押出形材の成形性(潰し加工性)を向上させる作用があり、0.005質量%以上添加する。一方、0.2質量%を越えるとその作用が飽和し、かつ粗大な金属間化合物が晶出して、かえって成形性を低下させる。従って、Ti含有量は0.005〜0.2質量%とする。
【0016】
Mn,Cr,Zrは7000系アルミニウム合金押出形材の再結晶を抑制して、結晶組織を微細再結晶又は繊維状組織とし、耐応力腐食割れ性を向上させる作用がある。この作用のため、Mn、Cr及びZrは、その1種又は2種以上をMn:0.01〜0.3質量%、Cr:0.01〜0.3質量%、Zr:0.01〜0.3質量%の範囲内で添加する。
上記7000系アルミニウム合金の主要な不可避不純物として、Fe及びSiが挙げられる。この合金の諸特性を低下させないため、Fe:0.35質量%以下、Si:0.3質量%以下に制限される。
【0017】
図2に示すように、潰し加工部A1に所定の潰し加工を施した後、バンパー補強材1全体に時効硬化処理を施す。時効硬化処理の条件は、各熱処理型アルミニウム合金における周知の条件でよい。いうまでもなくバンパー補強材1の長手方向全長に、実質的に同じ時効硬化処理条件が適用される。
この時効硬化処理により、バンパー補強材1は硬化し強度が向上する。なかでも潰し加工部A1を含む加熱部A2では、復元処理の加熱により、自然時効の状態から、再溶体化又はそれに近い状態に組織が変化(復元)しており、自然時効が進行した状態のまま時効硬化処理を受けた他の箇所(復元処理の加熱を受けていない箇所)、例えば中央部2に比べると、高い硬度が得られる。この硬度向上効果は、復元処理の加熱温度が400℃未満では得られない。そして、復元処理の加熱温度が高いほど、加熱部A2の硬度の向上が大きく、特に450℃以上とした場合、再溶体化が十分行われるためか、硬度の向上が著しい。また、復元処理後の冷却速度は大きい方が(空冷より水冷の方が)、硬度の向上が大きい。
【0018】
バンパー補強材が7000系アルミニウム合金中空押出材からなる場合、潰し加工部A1を含む加熱部A2では、復元処理の加熱を受けていない箇所に比べ、ビッカース硬さでHv10以上高くなる。また、復元処理の加熱温度が450℃以上であれば、前記組成範囲内でHv20以上高くすることができる。
潰し加工部A1では、断面係数が減少し、ウエブが曲げ変形し、潰し加工による加工硬化は時効硬化処理の加熱によりほぼ除去される。これらはいずれも衝突荷重に対する反力を減少させる要因であるが、他方、潰し加工部A1では、時効硬化処理により復元処理の加熱を受けていなかった箇所より硬度が向上し、高強度化される。この高強度化により、断面係数の減少等に基づく衝突時の反力の低下、及びバンパー補強材のエネルギー吸収量の減少が補われる。
【実施例】
【0019】
Zn:6.39質量%、Mg:1.34質量%、Cu:0.15質量%、Fe:0.11質量%、Si:0.04質量%、Mn:0.02質量%、Cr:0.03質量%、Zr:0.13質量%、Ti:0.02質量%、残部アルミニウム及び不可避不純物からなる7000系アルミニウム合金を熱間押出成形し、押出直後にオンラインでファン空冷(プレス焼き入れ)して、矩形断面で輪郭が60mm×120mmの中空押出材(質別T1)を製造し、長さ1300mmに切断して、13個のバンパー補強材の素材を得た。
【0020】
このバンパー補強材の素材を、室温に20日間放置して自然時効させた後(T1調質材)、それぞれ図3に示す形状に曲げ加工して、13個のバンパー補強材11を得た。このバンパー補強材11は左右対称で、中央部12、端部13及び屈曲部14を有し、左右の端を基準位置(ゼロ点)としたとき、端部13が0〜350mm、屈曲部14が350〜450mm、中央部12が450〜650mmの範囲を占める。バンパー補強材11の前後方向の厚みは60mmである。端部13の中央部12に対する傾斜角度は10°、屈曲部14の曲げ半径は500mmである。この例では、バンパーステイの接合箇所S(図4(a)参照)は、バンパー補強材11の端部13のうち、端から130〜200mmの範囲を占める。バンパーステイは前記接合箇所Sにおいて、バンパー補強材11の後フランジに、例えばボルト接合される。
【0021】
得られたバンパー補強材11に対し、復元処理を施した(No.13を除く)。復元処理の加熱は高周波誘導加熱で行い、表1に示す加熱温度(実体温度)に60秒間保持後、直ちに水冷(冷却速度:170℃/sec)又は空冷(冷却速度:5℃/sec)で冷却した。復元処理の加熱部A2は左右対称で、左右の端を基準位置(ゼロ点)としたとき、0〜115mmの範囲とした。加熱部A2の範囲を、図4(a)にドットで示す。
復元処理後(No.13は復元処理なしに)、バンパー補強材11の両端部の0〜80mmの範囲を前後方向に潰し加工し、潰し加工性(割れ発生の有無)を目視で観察した。バンパー補強材11の潰し加工後の形態を図4(b)に示す。潰し加工部A1では、先に図2を参照して説明したように、上下のウエブが曲げ変形し、前後のフランジ間の距離が減少している。
【0022】
【表1】
【0023】
続いて、バンパー補強材全体に130℃×8時間の時効硬化処理を施した後、以下の要領でビッカース硬さと、車両衝突を模した衝突試験で反力の測定を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0024】
(ビッカース硬さの測定)
復元処理の加熱部A2(No.13のみは加熱せず)と、非加熱部(具体的には中央部12を選択)について、バンパー補強材の前面(前フランジ)の高さ中央部のビッカース硬さを、10mmピッチで測定し、それぞれの平均値を求めて、加熱部A2の硬度H1及び非加熱部の硬度H0とした。また、加熱部A2の硬度の増分(H1−H0)を表1に併せて記載した。なお、加熱部A2の硬度H1は、潰し加工を施した箇所を除く加熱部のビッカース硬さの平均値とした。
【0025】
(衝突時の反力の測定)
図5に示すように、バンパー補強材11の端部13のうち前記接合箇所S(左右両方)を、後フランジ側から、それぞれバンパーステイを模したジグ15で支持し、低速度衝突を模した端部衝突試験を行った。ジグ15の左右幅は前記接合箇所Sの幅と同じ70mmとした。この端部衝突試験において、バリア16はバンパー補強材11の前記接合箇所Sよりやや外側に衝突するように配置し、そのストロークをバンパー補強材11に当たってから40mmとした。端部衝突試験の結果から、最大荷重(各供試材(バンパー補強材11)の反力に相当)及びエネルギー吸収量を求めた。
【0026】
表1に示すとおり、No.1〜13のうちNo.3〜6,9〜12は、復元処理の加熱温度が400℃以上で、加熱部のビッカース硬さが、非加熱部に比べてHv10以上向上し、復元処理の加熱を行わなかったNo.13に比べて、最大荷重(反力)が10kN以上向上し、エネルギー吸収量も向上した。特にNo.4〜6,10〜12は、加熱温度が450℃以上であり、加熱部のビッカース硬さが、非加熱部に比べてHv20以上向上した。
これに対し、復元処理の加熱温度が400℃より低いNo.1,2,7,8は、加熱部のビッカース硬さが、非加熱部に比べて向上せず、最大荷重(反力)の大きさは、復元処理の加熱を行わなかったNo.13と変わらない。特に復元処理の加熱温度が低いNo.1,7は、復元処理の効果がなく、復元処理の加熱を行わなかったNo.13と同様に、潰し加工による割れが発生した。
【符号の説明】
【0027】
1,11 バンパー補強材
2,12 バンパー補強材の中央部
3,13 バンパー補強材の端部
4,14 バンパー補強材の屈曲部
15 バンパーステイ
A1 潰し加工部
A2 復元処理の加熱部
図1
図2
図3
図4
図5