特許第5968303号(P5968303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968303
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】単顆型膝関節置換術
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/17 20060101AFI20160728BHJP
   A61F 2/38 20060101ALI20160728BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   A61B17/17
   A61F2/38
   A61F2/46
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-505544(P2013-505544)
(86)(22)【出願日】2011年4月20日
(65)【公表番号】特表2013-524915(P2013-524915A)
(43)【公表日】2013年6月20日
(86)【国際出願番号】GB2011050780
(87)【国際公開番号】WO2011131983
(87)【国際公開日】20111027
【審査請求日】2014年4月8日
(31)【優先権主張番号】1006590.2
(32)【優先日】2010年4月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512236146
【氏名又は名称】オコナー ジョン
(73)【特許権者】
【識別番号】512236157
【氏名又は名称】ドッド クリス
(73)【特許権者】
【識別番号】512236168
【氏名又は名称】マーレイ デイビッド
(73)【特許権者】
【識別番号】308013595
【氏名又は名称】バイオメット ユーケー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】512236179
【氏名又は名称】ハンスリー コリン
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】オコナー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ドッド クリス
(72)【発明者】
【氏名】マーレイ デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】グッドフェロー ジョン
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−137273(JP,A)
【文献】 特開2005−46625(JP,A)
【文献】 米国特許第5234433(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨及び脛骨を有する患者の単顆型膝関節置換術で使用される器具キットであって、
ドリルガイドと、
脊髄管と、を有し、
前記脊髄管は、患者の大腿骨の脊柱管内に適合する大きさであり、
前記ドリルガイドは、前記患者の脊柱管が係合する前記脊髄管の遠位端と係合するように配置され、骨が前記大腿骨又は脛骨から除去される前に前記患者の大腿骨と脛骨の間に適合するような大きさにされた脚部から形成され、前記大腿骨に少なくとも1つの孔をあけるためのガイドを提供し、
前記ドリルガイドは、リンケージによって脊髄管に連結され、
前記リンケージは、
前記脊髄管の一端に係合する少なくとも1つのロッドと、
前記ドリルガイド内の少なくとも二つの孔に係合するロッドとを有し、
左膝用に、前記リンケージが第二の孔ではなく第一の孔とかみ合い、右膝用に、前記リンケージが第一の孔ではなく第二の孔とかみ合うように、前記ドリルガイドの孔が位置決めされる
ことを特徴とする、器具キット。
【請求項2】
前記ガイドは、少なくとも1つの孔を有し、
前記大腿骨内にメイン孔を含む1つ又は複数の孔をあけるために、ドリルビットが前記少なくとも1つの孔を通ることができ、前記メイン孔と前記脚部との間の距離は、インプラントされる大腿骨コンポーネントの半径と同一であることを特徴とする請求項1に記載の器具キット。
【請求項3】
前記ガイドは、前記大腿骨にさらなる孔をあけるための追加孔を有し、
前記メイン孔と前記ドリルガイドの前記追加孔との間の距離は、前記インプラントされる大腿骨コンポーネントの主ペグと追加ペグとの間の距離と同一であることを特徴とする請求項2に記載の器具キット。
【請求項4】
前記大腿骨にインプラントされる少なくとも1つの大腿骨コンポーネントを有し、
前記大腿骨コンポーネントは、通常、前記大腿骨に一時的にインプラントされる試用大腿骨コンポーネントと、前記大腿骨に恒久的にインプラントされる人工大腿骨コンポーネントとを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の器具キット。
【請求項5】
大腿骨及び脛骨を有する患者の単顆型膝関節置換術で使用される器具キットであって、
大腿骨内でのインプラント用の大腿骨コンポーネントを有し、
前記大腿骨コンポーネントは、
曲率半径を有するベアリング面と、
ガイドスプーンとを有し、
前記ガイドスプーンは、
前記ベアリング面の曲率半径と同じ内側曲率半径を有するボール形状部と、
前記ボール形状部から延在するハンドル部とを有し、
当該器具キットは、さらに、
ドリルガイドと、
脊髄管と、を有し、
前記脊髄管は、患者の大腿骨の脊柱管内に適合する大きさであり、
前記ドリルガイドは、前記患者の脊柱管が係合する前記脊髄管の遠位端と係合するように配置され、骨が前記大腿骨又は脛骨から除去される前に前記患者の大腿骨と脛骨の間に適合するような大きさにされた脚部から形成され、前記大腿骨に少なくとも1つの孔をあけるためのガイドを提供し、
前記ドリルガイドは、リンケージによって脊髄管に連結され、
前記リンケージは、
前記脊髄管の一端に係合する少なくとも1つのロッドと、
前記ドリルガイド内の少なくとも二つの孔に係合するロッドとを有し、
左膝用に、前記リンケージが第二の孔ではなく第一の孔とかみ合い、右膝用に、前記リンケージが第一の孔ではなく第二の孔とかみ合うように、前記ドリルガイドの孔が位置決めされる
ことを特徴とする、器具キット。
【請求項6】
前記ボール形状部はリムを有し、
前記リムと前記ハンドル部とは同一平面にて同一平面状にあり、
前記器具キットは、
クランプと、
ホリゾンタルソーガイドとをさらに有し、
前記クランプは、前記ハンド部に固定されるように、かつ、所定の距離で、通常同一平面へ直行する方向で、前記ソーガイドを前記ハンドル部から隔離するように配置されることを特徴とする請求項5に記載の器具キット。
【請求項7】
バーチカルソーガイドをさらに有し、
前記バーチカルソーガイドは、
前記大腿骨コンポーネントの中にある孔とかみ合う第一アームを有し、前記孔は、前記第一アームが前記孔の中で回転しないようにされており、
前記大腿骨の機械軸から角度を有して延在する第二アームを有し、前記角度は、前記第二アームが骨幹大腿骨軸に平行に延在する角度であることを特徴とする請求項5又は6に記載の器具キット。
【請求項8】
前記バーチカルソーガイドは、U型チャネルであって、前記第二アームに連結され、内部に配置されたソーブレイドを規制して前記第二アームに平行に切除するように配置されたU型チャネルをさらに有することを特徴とする請求項7に記載の器具キット。
【請求項9】
前記スプーンの前記リムは、脛骨コンポーネントの壁が、切除されるカット部に取り付けられる際、前記壁と、前記脛骨コンポーネントと前記大腿骨コンポーネントとの間にはめ込まれるベアリングとの間に、一定サイズの間隙があるように形成された半径を有する円形であることを特徴とする請求項5〜8の何れか1項に記載の器具キット。
【請求項10】
前記リムの前記半径は、前記ベアリング幅の半分と、前記壁の幅と、前記ベアリングと前記壁との間の距離との和であり、用いられソーブレイドの幅より小さいことを特徴とする請求項9に記載の器具キット。
【請求項11】
インプラントされる脛骨コンポーネントと、患者の脛骨を切除する際に用いられるソーブレイドのうち、少なくとも一方をさらに有することを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載の器具キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、単顆型膝関節置換術を施術するための器具キット及び方法に関する。
[発明の背景技術]
膝は、相互依存する3つの関節を3つの異なる区画(compartment)内に有し、これらはすべて、皮膚で覆われた線維性被膜により被われている。内側脛骨大腿骨関節は、下肢の内側にて、太ももの骨(大腿骨)と脚の骨(脛骨)との間の接触を伴う。外側脛骨大腿骨関節は、下肢の外側にて、大腿骨と脛骨との間の接触を伴う。膝蓋大腿関節は、下肢の前方にて、大腿骨と膝小僧(膝蓋骨)との間の接触を伴う。
【0002】
大腿骨の下(遠位)端前方は、膝蓋骨の通り道となるフランジ付き凹溝を有する。遠位大腿骨の後方は、脛骨と接触する2つの離間した略球形の凹顆部に分けられる。脛骨の上面は、プラトーの様であり、内側が若干くぼむことで、内側脛骨大腿骨関節を形成する大腿骨の内側顆と接触し、外側が若干突き出ることで、関節間の前方から後方へ伸びる突出部(脛骨顆間隆起)を有する外側脛骨大腿骨関節を形成する大腿骨の外側顆と接触する。
【0003】
各関節の接合面は、軟骨と呼ばれる頑丈な保護層の薄層で覆われ、膝を被う線維性被膜の内側面上の皮膜から分泌される滑液によって滑りやすくなっている。脛骨大腿骨関節の表面は、周方向に合わせて配置され、半円形及び半月状のコラーゲン線維束である半月板によりさらに隔てられている。各線維束は、各端部にて脛骨に固着されている。半月板は、大腿骨と脛骨との似通っていない表面をぴったりと合わせる、大腿骨顆部用の整合ソケットを成す。
【0004】
骨は、関節をつなぐ腱を有する筋肉により能動的に接合されており、靭帯と関節包とにより受動的に接合されている。靭帯は、主に長手方向に延在するコラーゲン繊維の線維束から成る。側副靭帯は、内側顆及び外側顆の外表面にある。内側側副靭帯は、近位脛骨の内側の外表面にはまる。外側側副靭帯は、腓骨近位表面にはまる。内側側副靭帯は、外側側副靭帯よりも大きく堅い構造を有する。十字靭帯は、大腿骨顆部の内壁面から生じ、脛骨顆間隆起にはまる。
【0005】
靭帯と骨とにより、骨同士の複雑な運動パターンをコントロールするメカニズムが形成される。無負荷状態では、横軸周りでの130度までの膝の屈曲作用は、脛骨の軸周りでのおよそ25度の回転(軸回転)及び前後軸周りでのおよそ5度の回転(外転―内転)を伴う。これらの動きは、骨が互いに回転及び摺動し、膝蓋骨が大腿骨前方で摺動するように、主に脛骨―大腿骨の接触領域の前後移動により調整される。
【0006】
負荷時は、屈曲及び軸回転と外転―内転との関係、並びに、屈曲と接触領域の移動との関係が大きく変化しながら、靭帯が伸び、関節面がくぼむ。従って、膝における運動は、負荷と動作とが依存している。
【0007】
関節面又は靭帯の損傷により、骨同士の運動パターンと関節の負荷への応答性とが変わる。変形性関節症は、三つの関節のうちのいずれかの軟骨の不具合から発症し、骨同士がぶつかり、痛みの発症につながる。
【0008】
たびたび、変形性関節症は、内側区画で兆候が最初に現われ、靭帯の損傷は無い。この疾患は、前十字靭帯が損傷し、疾患が他の二つの区画に広がるまでは、内側区画にとどめられる。この進行に対する薬物治療は見つかっていない。
【0009】
膝関節置換術は、変形性関節症の最も一般的な外科的治療であるが、三つ全ての区画の関節面を置換し、靭帯のいくつかを犠牲にする。部分膝関節置換術は、1つの区画内のみの関節面を置換し、他二つの区画の表面と靭帯のいずれもを無処置で残す。部分膝関節置換術は、他の区画での疾患の進行率を下げ、予防的に作用可能である。部分膝関節置換術は、外科的に難易度がより高いため、希望されるときに必ずしも施術できているわけでない。
【0010】
膝関節置換術にて人工コンポーネントをインプラントするためには、骨の充分な領域を、脛骨と及び大腿骨の表面から最初に取り除く必要がある。まず最初に、脛骨の長い軸に平行なシャフトが適用されてなり、その上端部が露出した骨に固定されたソー(saw)ガイドを使って、脛骨粗面が切除される。より多くの骨が必要に応じて切除できるように、ガイドのレベルは、通常控えめに予測される。
【0011】
脛骨の初回切除が施術されると、膝関節置換術の大腿骨コンポーネントをインプラントするために、大腿骨が準備される。大腿骨ソーブロックと、研磨用スピゴット(spigot)と、試用大腿骨コンポーネントとをはめるために、孔があけられる。これらの孔の位置と角度とは、その大腿骨の特性の検査から参照され、切除された脛骨プラトーの位置は、適宜、確認及び修正される。大腿骨の初回切除、研磨、及び位置調整が行われると、試用大腿骨コンポーネントと脛骨テンプレートとがはめられる。膝が最も屈曲している際の大腿骨コンポーネントと脛骨コンポーネントとの間の新たな間隙が測定され、これら屈曲間隙を均等化するために、大腿骨がさらに研磨される。大腿骨と脛骨との最終位置調整が行われ、適切なベアリングをはめ込み、最終コンポーネントがセメントで適所に固定される。
[発明の要約]
本発明の第一局面によると、大腿骨及び脛骨を有する患者の単顆型膝関節置換術で使用される器具キットが提供される。器具キットは、ドリルガイドと脊髄管とを有する。脊髄管は患者の大腿骨の脊柱管内に適合する大きさである。ドリルガイドは、患者の脊柱管に係合する脊髄管の遠位端と係合するように配置され、骨が大腿骨又は脛骨から取り除かれる前に患者の大腿骨と脛骨の間にちょうど収まるような大きさの脚部から形成され、大腿骨に少なくとも1つの孔をあけるためのガイドを提供する。
【0012】
このように、ドリルガイドは、患者の大腿骨上に二つの基準点を有する。第一は脊髄管であり、第二は切除前の脛骨と大腿骨との間にはめられる脚部である。よって、ドリルガイドは、正しい位置にしっかりと正しく保持され、正確で一貫した孔あけが可能となる。
【0013】
切除前の脛骨コンポーネントと大腿骨コンポーネントとの間にはめこまれるために、脚部は、最大厚さが2mmまであってもよい。
通常、ガイドは、少なくとも1つの孔を有し、大腿骨内に1つ又は各孔をあけるために、ドリルビットがその少なくとも1つの孔を通ることができる。通常、メイン孔があり、メイン孔は、インプラントされる大腿骨コンポーネント上の主ペグのための孔をあけるために用いられてもよい。メイン孔の中心と脚部との間の距離は、大腿骨顆部の半径と同一であってもよい。また、メイン孔の中心と脚部との間の距離もまた、大腿骨コンポーネントの半径と同一であってもよい。
【0014】
ガイドは、大腿骨にさらなる孔をあけるために、追加孔を有してもよい。ドリルガイド内のメイン孔と追加孔との間の距離は、インプラントされる大腿骨コンポーネントの主ペグと追加ペグとの間の距離と同一であってもよい。また、ドリルガイド内のメイン孔と追加孔との間の距離は、大腿骨の切除に用いられたソーガイドの二つの孔の間の距離と同一であってもよい。
【0015】
ドリルガイドは、リンケージによって脊髄管に連結されてもよい。リンケージは、脊髄管の一端に係合する少なくとも1つのロッドを有してもよい。また、リンケージは、ドリルガイド内の少なくとも1つの孔に係合する少なくとも1つのロッドを有してもよい。左膝用に、リンケージが第二の孔ではなく第一の孔と係合し、右膝用に、リンケージが第一の孔ではなく第二の孔と係合するように、ドリルガイドの孔の位置が合わせられてもよい。これにより、左右の膝に、同じ装置を用いることができる。
【0016】
器具キットは、少なくとも1つの大腿骨コンポーネントをさらに有してもよい。少なくとも1つの大腿骨コンポーネントは、大腿骨に一時的にインプラントされる試用大腿骨コンポーネントであってもよい。少なくとも1つの大腿骨コンポーネントは、大腿骨に恒久的にインプラントされる人工大腿骨コンポーネントであってもよい。少なくとも1つの人工大腿骨コンポーネントは、少なくとも1つの試用大腿骨コンポーネントの半径と同じ半径を有してもよい。
【0017】
本発明の第二局面によると、大腿骨及び脛骨を有する患者の単顆型膝関節置換術で使用される器具キットが提供される。器具キットは、大腿骨でのインプラント用の大腿骨コンポーネントを有する。大腿骨コンポーネントは、曲率半径を有するベアリング面と、ガイドスプーンとを有しする。ガイドスプーンは、ベアリング面の曲率半径と同じ内側曲率半径を有するボール形状部と、ボール形状部から延在するハンドル部とを有する。
【0018】
よって、このスプーンガイドにより、患者の膝の、通常は脛骨の、さらなる切除の正確な基準点が提供される。通常、大腿骨コンポーネントは、大腿骨に一時的にだけインプラントされる試用大腿骨コンポーネントである。
【0019】
ボール形状部は、通常、リムを有し、リムとハンドル部とは同一平面にて同一平面状であってもよい。器具キットは、クランプとホリゾンタル(horizontal)ソーガイドとをさらに有する。クランプは、ハンド部に固定されるように、かつ、所定の距離で、通常同一平面へ直行する方向に、ソーガイドをハンドル部から隔離するように、配置される。よって、脛骨のなかで「ホリゾンタル」カットが正しく配置できる。
【0020】
器具キットは、バーチカル(vertical)ソーガイドをさらに有してもよい。バーチカルソーガイドは、第一アームと第二アームとを有する。第一アームは、大腿骨コンポーネントの中にある孔と係合し、第一アームが孔の中で回転しないように固定される。第二アームは、大腿骨の機械軸から角度を有して延在する。通常、この角度は約7度であり、第二アームが骨幹大腿骨軸に平行に延在する。
【0021】
左右両膝に対応するように、孔の中で少なくとも二箇所に第一アームが配置可能であるように、孔は回転対称(通常、偶数配列)であってもよい。通常、孔の断面は、正方形又は長方形である。
【0022】
ソーをバーチカルソーガイドとスプーンのリムとに対向して配置して、正しく切除をおこなうために、スプーンのリムは、切除されるカット部に脛骨コンポーネントの壁が取り付けられる時、壁と、脛骨コンポーネントと大腿骨コンポーネントとの間にはめ込まれるベアリング、通常、半月版ベアリング、との間に、一定サイズ、通常、約1mm、の間隙があるように形成された半径を有する円形であってもよい。通常、リムの半径は、ベアリング幅の半分、壁の幅、ベアリングと壁の間の距離の和であり、用いられるソーブレイドの幅より小さい。器具キットは、前記脛骨コンポーネントと前記ソーブレイドのうち、少なくとも一方をさらに有してもよい。
【0023】
バーチカルソーガイドの第一、第二アームもまた、リムの半径によりオフセットされてもよい。
器具キットは、バーチカルソーガイドの第二アームに連結され、内部に配置されたソーブレイドを第二アームに平行に切除することを強いるように配置されたU型チャネルをさらに有してもよい。
【0024】
バーチカルソーガイドの寸法は、スロット機構が切除のために正しい位置及び正しい角度の両方において配向するように決められてもよい。クランク部の長さxは、以下の通り計算されてもよい。
【0025】
x=r/cosθ−ytanθ
ここで、θはガイド部が第一端の軸から軸方向に離れるように屈曲される角度でありる。yはスプーンの中心からのクランク部の半径方向距離である。rはスプーンのリムの半径である。
【0026】
本発明の第三局面によると、患者の膝の単顆型膝関節置換術を施術する方法が提供される。その方法は、膝の大腿骨の脊柱管に脊髄管を配置することで、本発明の第一局面の器具キットを使用すること、ドリルガイドを脊髄管に連結すること、膝の大腿骨と脛骨との間に脚部を配置すること、ドリルガイドを大腿骨顆部の中央突出部に横方向に並べること、続いて、ガイドが案内する大腿骨の中に孔をあけることを含む。
【0027】
このように、ドリルガイドは、患者の大腿骨上に二つの基準点を有する。第一は脊髄管、第二は大腿骨顆部の中央突出部である。これにより、精度の高い一貫した孔あけが可能とある。回転自由度により、脚部が顆部軟骨の球面のまわりを動くことが許容されてもよい。通常、それは、大腿骨顆部の中央突出部と横方向に並ぶドリルガイドのメイン孔である。
【0028】
その方法は、ドリルビットをメイン孔に貫通させ、ビットで孔あけすることで、大腿骨に第一の孔をあけることを有してもよい。その方法は、第一の孔があけられた後で、ドリルビットをそのまま残すこと、続いて、追加孔を正しく位置決めするために、メイン孔を中心にドリルガイドを回転させ(通常、第一の孔があけられた後、ドリルガイドは脊髄管から切り離されている)、続いて、ドリルガイドの追加孔を通して、大腿骨に第二の孔をあけることをさらに有してもよい。
【0029】
その方法は、通常、一時的にだけインプラントされる試用大腿骨コンポーネントである、大腿骨コンポーネントのインプラントを有してもよい。通常、第一の孔及び第二の孔が穴あけされると、置換される大腿骨顆部が、通常従来の技術を使って研磨及び切除され、位置ガイドとして、第一及び/又は第二の孔を使って、大腿骨コンポーネントがインプラントされる。
【0030】
本発明の第四局面によると、本発明の第二局面の器具キットを使用して、患者の膝の単顆型膝関節置換術を施術する方法が提供される。その方法は、膝の大腿骨内への大腿骨コンポーネントのインプラントと、ベアリング面に対して、ボール部を介してのスプーンのはめ込みとを有する。
【0031】
よって、このスプーンガイドにより、患者の膝の、通常は脛骨の、さらなる切除用の正確な基準点が提供される。大腿骨コンポーネントは、一時的にだけインプラントされる試用大腿骨コンポーネントであってもよい。
【0032】
その方法は、クランプとホリゾンタルソーガイドとをハンドル部に固定するステップをさらに有し、通常、これにより、通常は共通面に垂直方向に、ソーガイドがハンドル部から所定の距離で隔離される。その方法は、次に、ホリゾンタルソーガイドによって指定された平面に沿って脛骨を切除することを有してもよい。これにより、脛骨のなかで「ホリゾンタル」カットが正しく配置できる。
【0033】
その方法は、バーチカルソーガイドを大腿骨コンポーネント内にはめ込み、続いて、バーチカルソーガイドによって案内されて脛骨内を切除するステップをさらに含んでもよい。よって、「バーチカル」カットを行うことが可能である。通常、バーチカルカットは、ホリゾンタルカットに接触するように延在する。
【0034】
本発明の第五局面では、患者の単顆型膝関節置換術を実施する方法が提供される。その方法は、脛骨コンポーネントが膝の脛骨にインプラントされる前に、患者の膝の大腿骨に大腿骨コンポーネントをインプラントすることを含む。好ましい実施形態では、一度インプラントされた大腿骨コンポーネントは、脛骨コンポーネントのインプラント前に、脛骨の切除する場所を正しく位置決めするために用いられる。
【0035】
大腿骨コンポーネントは、一時的にインプラントされるだけの試用大腿骨コンポーネントであってもよい。
通常、その方法は、本発明の第四局面の方法が後に続く本発明の第三局面の方法のステップを有する。
[図面のいくつかの図の簡単な説明]
以下添付図面を参照に記載され、かつ、添付図面に示される本発明の実施形態が、一例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】大腿骨コンポーネントをインプラントするために用いられる本発明の第一実施形態の器具キットの側面図を示す。
図2図1の器具キットのうちのドリルガイドのさらなる側面図を示す。
図3図2のドリルガイドの底面平面図を示す。
図4図1の器具キットの脊髄管とドリルガイドとをつなげるために用いられるリンケージを示す。
図5】脛骨コンポーネントをインプラントするために用いられる、図1の器具キットのさらなる部材を示す。
図6図5の器具キットの1つであるスプーンの平面図を示す。
図7図5の器具キットを用いて脛骨内でおこなわれる「ホリゾンタル」カットを示す。
図8】大腿骨コンポーネントにはめ込まれた、図5の器具キットのうちのバーチカルソーガイドの側面図を示す。
図9】脛骨内で「バーチカル」カットを行うために用いられる、図8のバーチカルソーガイドの平面図を示す。
図10図8のバーチカルソーガイドと共に用いることができる任意のソーガイドを示す。
図11】脛骨コンポーネントに対する、半月板ベアリングの水平位置決めを示す。
図12】バーチカルソーガイドの寸法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
[本発明の詳細な説明]
図1から図4は、単顆型膝関節置換術の第一段階を達成するために用いられる、本発明の第一実施形態の器具キットを示す。この第一段階にて、大腿骨コンポーネント3(図5)が患者の大腿骨1へはめ込まれるので、大腿骨は、インプラントを可能にするために切除されなければならない。
【0038】
そのためには、大腿骨コンポーネント1の1つ又は複数の位置決めペグを支持するために大腿骨内に必要な二つの孔の位置を決めるために、ドリルガイド4が用いられる。このドリルガイド4は、位置を固定するために大腿骨1の脊柱管に挿入される脊髄管5と併せて用いられる。狭脚部9は、厚さが約2mmで、ドリルガイド4の下端に備えられ、切除開始前に、患者の大腿骨と脛骨の間にはめ込むことができる。
【0039】
穴あけされるべき第一の孔の位置を決めるために、二つの孔6がドリルガイドに備えられ、リンケージ7の二つのロッド8の一方を受容する。孔6は、脚部9に向かって水平面に対して10度の角度で、かつ、垂直ドリル孔10のいずれか側に向かって水平に7度の角度で、ドリルガイド内を延在する。詳細は以下にて説明する。一方の孔6だけが任意の膝用に用いられ、組み合わせにより、左右両方の膝に対してこの器具キットを使用することができる。脊髄管5は、二つのロッド8のうち孔6に挿入されない他方を受容するように構成されている。よって、ドリルガイドを脊髄管とリンクさせ、それらの間で所定の間隔と配列とを維持できる。このようにドリルガイドを脊髄管にリンクさせることで、ドリル孔は、骨幹大腿骨軸の水平部材に平行に、脚部9から離れて水平面に対して10度の角度で、及び、水平に7度の角度で、案内される。
【0040】
ドリル孔10は、大腿骨コンポーネントの主ペグ用の主ドリル孔をどこにあけるべきかに関して、執刀医を案内する。ドリル孔10と脚部9との間の距離は、大腿骨コンポーネント1の曲率半径Rと同じである。
【0041】
追加ドリル孔11が設けられ、これにより、下記に示すとおり、執刀医は、より小さな追加ペグ用の孔の位置を決める。
ドリルガイド4と脊髄管5とがリンクすると、ドリル孔10が適切な顆部の中心と並ぶように、ドリルガイド4の位置が調整される。そして、ドリルが、主ペグ用の孔をあけるために用いられる。ドリルビットは孔の中にそのまま残され、リンケージ7が取り外される。その後、追加ドリル孔11が、第一の孔の下方にて大腿骨顆部の突起に沿って中央に並ぶまで、ドリルガイド4は、ドリル孔10を中心に回転される。よって、二つの孔の距離が補正される。そして、より小さな孔が、追加ドリル孔11を介してあけられる。完了すると、ドリルガイド4とドリルとは取り外され、顆部1aの一次研磨と切除とが既存の方法により実施される。試用又は仮の大腿骨コンポーネント3が、その後はめ込められる。
【0042】
以下に記載するように、試用大腿骨コンポーネント3がインプラントされており、この試用大腿骨コンポーネント3は、患者の脛骨が切除されるべき正しい位置の基準を提供するために用いられる。これにより、全体的により精度高く切除ができ、切除や修正を手術中に繰り返す必要性が低減される。
【0043】
次の段階にて、添付図面の図5図7に示されるように、ホリゾンタルカットが患者の脛骨12へまず施術される。ガイドスプーン13が用いられ、ガイドスプーン13は、大腿骨コンポーネント3の曲率半径Rと同じ内側曲率半径を有するボール部14を有する。ボール部14は、リム15と、リム15から延在しリム15と同一平面上のハンドル部16とを有し、厚さは1mmである。
【0044】
ガイドスプーン13は、試用大腿骨コンポーネント3の下部にボール部14を介してはめ込まれ、ハンドル部とクランプ17を用いてホリゾンタルソーガイド18に固定される。ホリゾンタルソーガイド18により、ホリゾンタルカットに適した位置へ執刀医がガイドされる。クランプにより、スプーンハンドル16はホリゾンタルソーガイド18に対して平行となり、カット19が、脛骨テンプレートの基板の厚さと半月版ベアリングのはめ込み(それぞれ3.5mm、4.5mm)を考慮して、所望の距離−7.5mm−だけ大腿骨コンポーネントより下に位置できる。
【0045】
ホリゾンタルカットが行われると、手順は、添付図面の図8図10に示す状態に進むことができる。バーチカルソーガイド20が用いられ、これは、正方形断面の比較的長いボディと、大腿骨コンポーネント3の正方形孔21内で受容される第一端22とを有する。正方形のため、バーチカルソーガイド20は孔21内において二方向に受容されることができ、左膝又は右膝が施術されることが許容される(言うまでも無く、上記差込みは、さらに他二方向でも可能であるが、実際には使用されない)。
【0046】
大腿骨コンポーネントの孔21は、試用大腿骨コンポーネントのペグと垂直方向に一直線上にある。このペグの軸は、コンポーネントの水平部の面と平行(つまり水平)であるので、孔の軸はペグの軸と同一線上にある。左右両膝に使用される場合、孔は、大腿骨コンポーネント3の中心に位置する。
【0047】
バーチカルソーガイド20は、第一端22から遠位端にて、ガイド部24に連結されるクランク部23を有する。クランク部23は、第一端22をガイド部24から軸方向で分割する。ガイド部は、水平に対して7度の角度θで、第一端の軸と大腿骨の機械軸から軸方向で離れるように、屈曲し、骨幹大腿骨軸と並ぶ。
【0048】
バーチカル脛骨カット25のソーは、ガイド部24に平行に、かつスプーン13のリム15に対向して配置される。図11に示すとおり、脛骨コンポーネント28の壁27がバーチカル脛骨カット25に対して同一平面上にある時、リム15の寸法により、壁27とベアリング30との間に、1mmの間隙29ができる。
【0049】
したがって、スプーン13のリム15は、{1/2(ベアリング差込み幅)+壁の幅+ベアリングと壁の距離−ソーブレイドの幅)}と同一の半径を有する丸形状である。ベアリング差込み幅は別として、これらの値はそれぞれ、1.5mm、1mm、及び1mmである。クランク部23も同様にこの長さである。
【0050】
スロット機構26(図10)がガイド部24に装着されてもよい。スロット機構26は、U型スロットの形状で、ソーブレイドを正しい向きに配置する。バーチカルソーガイド20の寸法は、スロット機構26が切除のために正しい位置及び正しい角度の両方で配向するように、決められる。クランク部23の長さxは、以下の通りである。
【0051】
x=r/cosθ−ytanθ
ここで、θはガイド部24が第一端22の軸から軸方向で離れるように屈曲される角度である。yはスプーン13の中心からのクランク部23の半径方向距離である。rはスプーン13のリム15の半径でありる。これら寸法は、添付図面の図12にてより詳細に示される。
【0052】
これらカットが行われると、接着剤を使用しようがしまいが、既存の方法によって、脛骨板がはめ込まれる。そして、執刀医が、所定位置に置かれた脛骨土台を用いて、既存の実務に沿って、伸長及び屈曲の両面での靭帯のバランスに適したベアリングを選定し、インプラントできる大腿骨をはめ込むことで、手術が完了する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11
図12