【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセスであって、前記プロセスは:
a)止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの乾燥した粒状調製物を提供するステップと、
b)前記乾燥した粒状調製物中の顆粒を、凝固誘発剤の調製物でコーティングし、それによって凝固誘発剤でコーティングされたポリマー顆粒を得るステップと、
c)前記凝固誘発剤でコーティングされたポリマー顆粒を、最終容器に充填するステップと、
d)前記最終容器を仕上げて、乾燥した安定な止血用組成物として前記凝固誘発剤でコーティングされたポリマー顆粒を含有する、保存可能な薬学的デバイスにするステップと
を包含する、プロセス。
(項目2)
ステップbが、流動床プロセスによって実施される、項目1に記載のプロセス。
(項目3)
前記凝固誘発剤の調製物が、トロンビン溶液であり、好ましくは賦形剤、特にアルブミン、マンニトールまたはその混合物をさらに含有するトロンビン溶液である、項目1または2に記載のプロセス。
(項目4)
ステップd)が、エチレンオキシド滅菌ステップを含む、項目1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目5)
前記トロンビン調製物が、トロンビンを好ましくは10〜10,000I.U.、より好ましくは50〜5,000I.U.、特に100〜1,000I.U./mlの範囲で含有する溶液である、項目1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目6)
前記トロンビン調製物が、NaClおよびCaCl2をさらに含む溶液である、項目1から5のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目7)
ステップb)が、Wursterコーティングプロセスとして行われる、項目1から6のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目8)
前記Wursterコーティングプロセスが、プロセスガスとして窒素を使用し、好ましくは0.1mm〜1.2mmのノズル、特に0.4mm〜1.0mmのノズルを適用して実施される、項目7に記載のプロセス。
(項目9)
前記最終容器として、シリンジが使用される、項目1から7のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目10)
前記シリンジが、前記乾燥した安定な止血用組成物を再構成するための薬学的に受容可能な希釈剤を含む希釈剤シリンジと一緒に仕上げられたシリンジである、項目9に記載のプロセス。
(項目11)
前記トロンビンの成分が、ヒトトロンビン、特に組換えヒトトロンビンを含む、項目1から10のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目12)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、ゼラチン、可溶性コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、フィブリノゲン、フィブリン、カゼイン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチンおよびラミニン、またはその誘導体もしくは組合せからなる群より選択されるタンパク質を含有する、項目1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目13)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、グリコサミノグリカン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、キシラン、アガロース、アルギネートおよびキトサン、またはその誘導体もしくは組合せからなる群より選択される多糖を含有する、項目1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目14)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニル樹脂、ポリラクチド−グリコリド、ポリカプロラクトン(polcaprolactone)およびポリオキシエチレン(polyoxyethlene)、ならびにその誘導体および組合せからなる群より選択されるポリマーを含有する、項目1から13のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目15)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、架橋多糖、架橋タンパク質もしくは架橋された非生物学的ポリマー、またはその混合物を含有する、項目1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目16)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、粒状材料である、項目1から15のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目17)
止血に使用するのに適した前記生体適合性ポリマーが、架橋ゼラチンである、項目1から16のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目18)
前記最終容器が、滅菌放射線に曝露されるときに前記ポリマーの修飾を阻害するのに有効な量の安定剤、好ましくはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸の他の塩または抗酸化剤をさらに含有する、項目1から17のいずれか一項に記載のプロセス。
(項目19)
患者の身体の標的部位に止血用組成物を送達するための方法であって、項目1から18のいずれか一項に記載のプロセスによって生成された止血用組成物を前記標的部位に送達するステップを包含する、方法。
(項目20)
前記止血用組成物を薬学的に受容可能な希釈剤と接触させてヒドロゲル形態の止血用組成物を得るステップをさらに包含する、項目19に記載の方法。
(項目21)
項目1から18のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、仕上げられた最終容器。
(項目22)
すぐに使用できる止血用組成物を提供するための方法であって、項目1から18のいずれか一項に記載のプロセスによって生成された止血用組成物を、薬学的に受容可能な希釈剤と接触させるステップを包含する、方法。
(項目23)
項目21に記載の仕上げられた容器と、薬学的に受容可能な希釈剤を含む容器とを含む、止血用組成物を投与するためのキット。
(項目24)
止血に使用するのに適した、生体適合性ポリマーの、トロンビンでコーティングされた顆粒。
(項目25)
前記ポリマーがゼラチンである、項目24に記載の顆粒。
したがって、本発明は、乾燥した安定な止血用組成物を作製するためのプロセスであって、
a)止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの乾燥した粒状調製物を提供するステップと、
b)前記乾燥した粒状調製物中の顆粒を、トロンビン調製物でコーティングし、それによってトロンビンでコーティングされたポリマー顆粒を得るステップと、
c)前記トロンビンでコーティングされたポリマー顆粒を、最終容器に充填するステップと、
d)最終容器を仕上げて、乾燥した安定な止血用組成物として前記トロンビンでコーティングされたポリマー顆粒を含有する、保存可能な薬学的デバイスにするステップと
を含むプロセスを提供する。
【0007】
本プロセスは、医学的使用のために容易に組成物を再構成し得る好都合な方式で、本発明の乾燥した安定な組成物を提供する。本発明はさらに、患者の身体の標的部位に止血用組成物を送達するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を、前記標的部位に送達するステップを含む方法に関する。もう1つの態様によれば、本発明は、本発明のプロセスによって得られる、仕上げられた最終容器に関する。本発明はまた、すぐに使用できる止血用組成物を提供するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を、薬学的に受容可能な希釈剤と接触させるステップを含む方法、ならびに仕上げられた最終容器と、該組成物を適用するための他の手段(例えば希釈剤容器)とを含むキットに関する。本発明の組成物は、外科手術による出血部位、外傷性出血部位等を含む出血部位において止血を提供するのに特に有用である。組成物の例示的な使用は、血管カテーテル法のために作られた血管貫入部の上の組織路(tissue tract)を密封することであり得る。
【0008】
発明の具体的な実施形態の説明
本発明は、主に、好都合な単一の組成フォーマットで2つの成分の生成物を提供することによって、止血用組成物の送達および取扱いを改善することを提供する。本発明の止血用組成物は、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの、凝固誘発剤でコーティングされた顆粒、例えば、トロンビンでコーティングされた顆粒(「止血用生体適合性ポリマー成分」)を含有する。さらなる成分が存在することもできる。これらのコーティングされた顆粒は、適切な希釈剤(例えば、イオン化水溶液(aqueous ionic solution))を使用して、「すぐに使用できる」止血用調製物に再構成することができる。好ましくは、「すぐに使用できる」調製物は、ヒドロゲルとして提供される。この種の生成物は、原理として当技術分野では異なるフォーマットで公知であり、通常、その成分は、別々の実体として乾燥形態で提供される。患者に投与するために成分を混合する前に、乾燥した成分を、通常、適切な希釈剤と別個に接触させる。次に、別個に再構成された成分を混合することによって、成分の混合を実施する。例えば、薬学的に受容可能な(水性)希釈剤によって再構成される、乾燥トロンビン成分を提供することができる。次に、再構成の後に得られたトロンビン溶液は、通常は後に患者に適用されるヒドロゲルの形成の下で、ポリマーを湿潤化または可溶化するために使用される。これは、生成物が「すぐに使用できる」状態になる前に少なくとも2つのステップがあるプロセスであることから、生成物がすぐに使用できる状態になる前に1ステップのみしか必要としないのならば、より好都合となる。しかし前述の通り、2つの成分の性質により、主に安定性および活性の喪失に起因して、該生成方法の過程では、成分の単純な混合が妨げられる。
【0009】
本発明では、2つの成分(凝固誘発剤、例えばトロンビンと、ポリマー)を、すぐに一緒に再構成される組み合わされた乾燥形態であらかじめ提供することができる生成プロセスを提供する。本発明のプロセスは、科学的なベンチ実験に対して可能なだけでなく、産業用医薬品の大量生産にも適している。本発明により、酵素活性の望ましくない分解または喪失の危険を伴わずに、あらかじめ混合されたこの止血用組成物を提供することが可能である。得られた組成物は、既に公知の生成物に匹敵する保存安定性を有するが、本発明によって得られる生成物では、医学的な投与の前に別々に再構成し、混合する必要がないため、取扱いがより好都合である。すぐに使用できるヒドロゲルを提供することにより、適切な薬学的に受容可能な希釈剤を、最終容器内で単に組成物に添加することによって、1ステップの加工で止血用組成物の懸濁液または溶液が可能になる。最終容器は、好ましくは、希釈剤と接触させた後に、再構成した止血用組成物を直接投与するように設計されたシリンジである。本発明のトロンビンでコーティングされたポリマー顆粒は、シリンジに充填することができ、次にシリンジをストッパーで閉鎖することができる。
【0010】
凝固誘発剤は、トロンビン、ヘビ毒、血小板活性化因子、トロンビン受容体活性化ペプチドおよびフィブリノゲン沈殿剤からなる群より選択される物質であり、好ましくはトロンビンである。
【0011】
「トロンビン調製物」は、ヒトにおける使用に適した(すなわち薬学的に受容可能な)任意のトロンビン調製物から生成され得る。トロンビンの適切な供給源には、ヒトまたはウシの血液、血漿または血清(有害な免疫反応が予測されない場合には、他の動物源のトロンビンも適用され得る)および組換え起源のトロンビン(例えば、ヒト組換えトロンビン)が含まれ、いくつかの適用では自己由来のヒトトロンビンが好ましいことがある。好ましくは、止血用組成物は、10〜100,000国際単位(I.U.)、より好ましくは100〜10,000I.U.、特に500〜5,000I.U.のトロンビンを含有する。「すぐに使用できる」組成物におけるトロンビン濃度は、好ましくは10〜10,000I.U.、より好ましくは50〜5,000I.U.、特に100〜1,000I.U./mlの範囲である。希釈剤は、「すぐに使用できる」組成物において所望の最終濃度を達成する量で使用される。トロンビン調製物は、イオン、緩衝液、賦形剤、安定剤などの他の有用な成分を含有することができる。好ましくは、トロンビン調製物は、ヒトアルブミン、マンニトールまたはその混合物を含有する。好ましい塩は、NaClおよび/またはCaCl
2であり、これらは共に、トロンビンに対して適用される通常の量および濃度で使用される(例えば、0.5%〜1.5%NaCl(例えば0.9%)および/または20mM〜80mM CaCl
2(例えば40mM))。
【0012】
本発明の「生体適合性ポリマーの乾燥した粒状調製物」は、例えばWO98/08550A(ただし、これはトロンビンコーティングを含んでいない)から公知である。好ましくは、ポリマーは、生体適合性の、生分解性の乾燥した安定な粒状材料である。本発明の「乾燥」ポリマーは、通常、0.1〜5.000μmの粒径で提供される。通常、ポリマー粒子は、10〜1000μm、特に50〜500μmの平均粒子直径(メジアンサイズ)を有する(「平均粒子直径」は、レーザー回折法によって測定されるメジアンサイズであり、「メジアンサイズ」(または質量メジアン粒子直径)は、度数分布を二等分する粒子直径であり、所与の調製物の粒子の50パーセントは、より大きい直径を有し、粒子の50パーセントは、より小さい直径を有する)。より大きい粒子の適用は医学的な必要性に主に依存し、平均粒子直径が小さい粒子は、生成プロセスにおける取扱いがしばしばより困難である。したがって乾燥ポリマーは、粒状形態で提供される。粉末および粒状(または顆粒)という用語は、時に、別個のクラスの材料を区別するために使用されるが、粉末は、本明細書では粒状材料の特別なサブクラス(sub−class)として定義される。特に粉末は、より細かい粒度を有し、したがって流れるときに凝集塊を形成する傾向がより高い粒状材料を指す。粒状物(granular)には、湿潤化するとき以外は凝集塊を形成する傾向がない、より粗い粒状材料が含まれる。本願では、使用される粒子は、適切なコーティング技術によってコーティングすることができる粒子である。したがって、本発明のポリマー顆粒の粒径は、この技術の必要性によって、特定のコーティング技術に容易に適合し、最適化することができる。
【0013】
本発明の「乾燥した」止血用組成物は、Floseal(登録商標)などの比較できる利用可能な生成物の水分含有量におおよそ相当し得る残存水分含有量だけを有する(Flosealは、例えば乾燥生成物として約12%の水分を有する)。通常、本発明の乾燥組成物は、これらの生成物を下回る残存水分含有量、好ましくは10%を下回る水分、より好ましくは5%を下回る水分、特に1%を下回る水分を有する。本発明の止血用組成物は、より低い、例えば0.1%またはそれをさらに下回る水分含有量を有することもできる。本発明の乾燥した止血用組成物の好ましい水分含有量は、0.1〜10%、特に0.5〜5%である。
【0014】
本発明によれば、止血用組成物は、乾燥形態で最終容器に入れて提供される。乾燥形態では、成分を分解または不活化するプロセスが著しく適切に低減されて、保存安定性が可能となる。適切な保存安定性は、トロンビン活性を基にして決定することができる。したがって、本発明の種類の乾燥した止血用組成物は、乾燥形態で室温(25℃)において24カ月間保存してから再構成した後、400I.U./ml以上(500I.U./mlの生成物に対して)がなおも存在する(すなわち、凍結乾燥する前の最初の活性と比較して、80%以上のトロンビン活性が残っている)場合に、保存安定性がある。好ましくは、本発明の組成物は、この24カ月保存した後、より高い保存安定性を有し、すなわち少なくとも90%のトロンビン活性が残り、特に少なくとも95%のトロンビン活性が残る。
【0015】
しかし、トロンビンと生体適合性ポリマーの乾燥混合物を提供することは、この混合物が乾燥形態で作製されなくてはならないことから、並大抵のことではない。可溶性(懸濁)形態の成分を混合し、次に乾燥プロセスを開始すると、許容されない材料の分解が生じる。例えば、トロンビンおよびゼラチンを4℃に保っても、24時間後には明らかな分解が見られる。
【0016】
したがって、本発明は、混合時のかかる分解プロセスを克服するためのコーティングプロセスの原理を使用する。このコーティングプロセスは、トロンビンとポリマーの接触中に分解プロセスをもたらす完全な湿潤化を防止すべきである。コーティングプロセスの最中、ポリマー顆粒の外層だけがある程度膨潤して、所望の量のトロンビンを吸収することに注意を払わなければならない。したがって、ポリマー顆粒の表面の湿潤状態は、この方式で容易に取り扱うことができるので、コーティングプロセスは、好ましくは、トロンビンをスプレー形態で適用することによって行われる。本発明に従ってコーティングプロセスを行うための好ましい技術は、流動床プロセスである。流動床プロセスまたは流動床コーティングでは、ポリマー顆粒は、トロンビン溶液に含有されているタンパク質(すなわち、好ましくはヒト血清アルブミンおよびマンニトール)の層でコーティングされる。このプロセスでは、ポリマー顆粒の床を介して下から暖気を吹きつけ、それによってポリマー顆粒をこの空気流に懸濁させて流動床を作ることによって、ポリマー顆粒を流動床にする。この流動床には、トロンビン溶液のスプレーが導入され、このトロンビン溶液は、流動床と密接に混合される。スプレーの液滴により、粒子はトロンビンで均質にコーティングされる。このプロセスは、トロンビンの活性を保持するプロセス条件で行われる。ポリマー顆粒の外層は、ある程度膨潤し、トロンビン溶液のいくらかを吸収する可能性が高くなるが、トロンビン溶液のタンパク質のほとんどは、顆粒の表面上に層を形成することになる。特に好ましい一実施形態によれば、コーティングプロセスに導入されるトロンビン調製物は、スプレー、好ましくは無菌スプレーによって得られる。スプレーは、特にタンパク質様材料のための任意のスプレー装置で実施することができ、好ましくはその装置は、スプレーするためにトロンビン溶液を入れる直前に滅菌される。
【0017】
好ましくは、本発明のプロセスは、無菌環境で行われ、特にコーティングステップおよび最終容器への充填ステップは、無菌で実施されるべきである。既に適切に滅菌された成分によってプロセスを開始し、次にすべてのさらなるステップを無菌で実施することも好ましい。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態は、Wursterコーティング技術を適用する。Wursterプロセスは、個々の微粒子材料を均一にコーティングまたは被包するのに十分適しており、特に医薬処方技術において一般的なコーティング技術である。この技術は、固体粒子の流動床の底部にスプレーノズルが位置していることを特徴とする。粒子は、流動化空気流に懸濁され、この流動化空気流は、粒子の循環流をスプレーノズルに通して誘導するように設計されている。このノズルは、コーティング溶液、懸濁液または他のコーティングビヒクル(本発明の場合、トロンビン調製物)の噴霧流をスプレーする。
【0019】
噴霧化されたコーティング材料は、ノズルから飛び出すときに粒子と衝突する。流動化空気の温度は、粒子と衝突した直後に溶液もしくは懸濁液の溶媒を適切に蒸発させ、またはコーティング材料を固化するように設定される。
【0020】
コーティング用のすべての固体は、現れてくるフィルムまたはコーティングの一部として、粒子上に残る。このプロセスは、各粒子が所望のフィルムの厚さまで均一にコーティングされるまで、継続される。
【0021】
Wursterプロセスは、粉末、結晶または顆粒などの微粒子材料にフィルムコーティングを正確に適用するための、業界で認識されているコーティング技術である。この技術を使用して、約50μm〜数センチメートルの範囲の直径を有する固体材料を被包することができる。このプロセスは、流動化空気の速度が相対的に高いことに起因して、他のコーティング系よりも高い乾燥能を有する。粒子は、実際には、ノズルから飛び出すと分離するので、凝集なしに小型粒子をコーティングすることが可能である。疎水性コア上に親水性コーティングを置き、または水溶性コア上に水系コーティングを置く能力を含むコーティングの可能性は、比較的に制限されない。コーティング特性は、コーティングの処方パラメータ、加工条件および積層(layering)によって最適化することができる。流動床コーティングの大きな利点は、バッチ様式の技術として実施できることである(Wursterコーティング)。バッチ様式の技術は、製造にとって非常に好ましい。粒子は、流動床コーティングを用いて流動化され、そのコーティング用流体をスプレーし、乾燥させる。スプレー媒体の液滴が小さく、粘度が低いと、均等な生成物コーティングが得られる。好ましくは、本発明のコーティングは、特に底部スプレーの適用の下で、バッチ流動床コーティングとして行われる。
【0022】
本方法の最終ステップは、仕上げステップである。このステップの最中、最終容器は、適切に密封され、保存および/または販売に合わせて準備される。仕上げステップは、最終容器にラベル付けし、パッケージングし、(さらなる)滅菌プロセスを実施する(例えば、最終容器で、またはパッケージされた生成物もしくは最終容器を含むキットで実施される)ことを含み得る。
【0023】
好ましくは、ステップd)は、EO(エチレンオキシド)滅菌ステップを含む。EO滅菌は、本発明の技術分野では一般的である。エチレンオキシドガスは、細菌(およびそれらの内生胞子)、カビおよび真菌を死滅させる。EO滅菌は、低温殺菌またはオートクレービングなどの高温技術によって損傷を受けるおそれがある物質を滅菌するために使用される。
【0024】
滅菌の他の好ましい実施形態は、β照射もしくはγ照射などの電離放射線照射を適用するか、または気化した過酸化水素を使用することである。
【0025】
最終容器は、薬学的に投与できる化合物を収容(および保存)するのに適した任意の容器であり得る。シリンジ、バイアル、管等を使用することができるが、本発明の止血用組成物をシリンジに入れて提供することが特に好ましい。医療の実施ではシリンジの取扱いが有利であることから、シリンジは、従来技術に開示されている止血用組成物に対しても、好ましい投与手段となっている。次に組成物は、好ましくはシリンジの特定の針または適切なカテーテルを介して適用することができる(再構成した後)。再構成した止血用組成物(好ましくは、ヒドロゲルを形成するために再構成される)は、様々な他の手段によって、例えばヘラ、ブラシ、スプレーによって、圧力によって手動で、または任意の他の従来技術によって適用することもできる。通常、再構成された本発明の止血用組成物は、オリフィス、開口部、針、管または他の通路を介して、再構成された組成物を押し出して、ビーズ、層または類似の材料部分を形成することができる、シリンジまたは類似のアプリケーターを使用して適用されることになる。組成物の機械的な崩壊は、一般に0.01mm〜5.0mm、好ましくは0.5mm〜2.5mmの範囲のサイズを有する、シリンジまたは他のアプリケーターのオリフィスを介して押し出すことによって実施され得る。しかし好ましくは、止血用組成物は、最初に所望の粒径を有する乾燥形態(特に水和によって再構成されると、必須のサイズのサブユニット(例えばヒドロゲルサブユニット)をもたらす)から調製されるか、または最終的な押出しもしくは他の適用ステップの前に、必須のサイズに部分的もしくは完全に機械的に崩壊される。当然のことながら、これらの機械部品は、ヒトに使用するための安全性の要件を満たすために、滅菌形態(内側も外側も)で提供されなければならないことが明らかである。
【0026】
本発明の乾燥した止血用組成物は、通常、乾燥組成物を適切な希釈剤に接触させることによって、使用前に再構成(再水和)される。本発明の希釈剤は、乾燥組成物を適切に湿潤化させることができる、乾燥した止血用組成物用の任意の適切な再構成媒体であり得る。好ましくは、乾燥した止血用組成物は、「すぐに使用できる」フォーマットとしてヒドロゲルに再構成される。
【0027】
適切な希釈剤は、薬学的に受容可能な水性流体、例えば医薬等級の脱イオン水(すべてのイオン成分または緩衝液成分が、乾燥組成物中に既に提供されている場合;「注射用水」)または特定のイオンおよび/もしくは緩衝剤を含有する医薬等級の水溶液である。これらの水溶液は、賦形剤などの他の構成成分をさらに含むことができる。「賦形剤」は、例えばトロンビンが保存(または滅菌(例えば、照射による))時に、その化学的安定性および生物学的活性を確実に保持するようにするため、または審美的理由、例えば色のために、溶液に添加される不活性物質である。好ましい賦形剤には、ヒトアルブミン、マンニトールおよび酢酸ナトリウムが含まれる。再構成された生成物中のヒトアルブミンの好ましい濃度は、0.1〜100mg/ml、好ましくは1〜10mg/mである。好ましいマンニトール濃度は、0.5〜500mg/ml、特に10〜50mg/mlの濃度範囲であり得る。好ましい酢酸ナトリウム濃度は、1〜10mg/ml、特に2〜5mg/mlの範囲である。
【0028】
例えば、適切な希釈剤は、注射用水、ならびに−互いに独立に−NaCl(好ましくは50〜150mM、特に110mM)、CaCl
2(好ましくは10〜80mM、特に40mM)、ヒトアルブミン(好ましくは最大2%w/w、特に0.5%w/w)、酢酸ナトリウム(好ましくは0〜50mM、特に20mM)およびマンニトール(好ましくは最大10%w/w、特に2%w/w)を含む。好ましくは、希釈剤は、再構成された乾燥組成物のpHを、好ましくはpH6.4〜7.5、特にpH6.9〜7.1に緩衝するための緩衝剤または緩衝系を含むこともできる。
【0029】
好ましい一実施形態では、希釈剤は、別個の容器で提供される。この容器は、好ましくはシリンジであり得る。シリンジ内の希釈剤は、次に、本発明の乾燥した止血用組成物を再構成するための最終容器に、容易に適用することができる。最終容器もシリンジである場合、両方のシリンジを、包み(pack)内に一緒に入れて仕上げることができる。したがって、本発明の乾燥した止血用組成物をシリンジに入れて提供し、それを、前記乾燥した安定な止血用組成物を再構成するための薬学的に受容可能な希釈剤を含む希釈剤シリンジと共に仕上げることが好ましい。
【0030】
止血に使用するのに適した本発明の生体適合性ポリマーの乾燥した粒状調製物(「乾燥した止血用ポリマー」)は、生物学的ポリマーおよび非生物学的ポリマーから形成することができる。適切な生物学的ポリマーには、ゼラチン、可溶性コラーゲン、アルブミン、ヘモグロビン、カゼイン、フィブリノゲン、フィブリン、フィブロネクチン、エラスチン、ケラチンおよびラミニンなどのタンパク質、またはその誘導体もしくは組合せが含まれる。特に好ましいのは、ゼラチンまたは可溶性の非線維性コラーゲン、より好ましくはゼラチンを使用することであり、例示的なゼラチン処方物を、以下に記載する。他の適切な生物学的ポリマーには、グリコサミノグリカン、デンプン誘導体、キシラン、セルロース誘導体、ヘミセルロース誘導体、アガロース、アルギネートおよびキトサンなどの多糖、またはその誘導体もしくは組合せが含まれる。適切な非生物学的ポリマーは、2つの機構、すなわち(1)ポリマー主鎖の断絶、または(2)水溶性をもたらす側鎖の分解のいずれかによって分解可能であるように選択されることになる。例示的な非生物学的ヒドロゲル形成ポリマーには、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニル樹脂、ポリラクチド−グリコリド、ポリカプロラクトンおよびポリオキシエチレンなどの合成物質(synthetics)、またはその誘導体もしくは組合せが含まれる。異なる種類のポリマーの組合せも可能である(例えば、タンパク質と多糖、タンパク質と非生物学的ヒドロゲル形成ポリマー等)。
【0031】
適切な再水和助剤(re−hydration aid)と一緒になった非架橋ポリマーは、再構成するのに適した、例えば適切なヒドロゲルベースを形成するのに適した任意の方式で架橋することができる。例えば、ポリマー分子は、2つ以上のポリマー分子鎖に共有結合によって結合している二官能性または多官能性架橋剤を使用して架橋することができる。例示的な二官能性架橋剤には、アルデヒド、エポキシド、スクシンイミド、カルボジイミド、マレイミド、アジド、カーボネート、イソシアネート、ジビニルスルホン、アルコール、アミン、イミデート、無水物、ハロゲン化物、シラン、ジアゾアセテート、アジリジン等が含まれる。あるいは、架橋は、ポリマーの側鎖または一部が他の側鎖または一部と反応して架橋結合を形成することができるように、ポリマーの側鎖または一部を活性化する、過ヨウ素酸塩などの酸化剤および他の薬剤を使用して達成することができる。さらなる架橋法は、ポリマーを、γ線などの放射線に曝露して、ポリマー鎖を活性化して架橋反応を可能にすることを含む。脱水熱(dehydrothermal)架橋法が適切であることもある。ゼラチン分子を架橋するための好ましい方法を、以下に記載する。
【0032】
したがって、好ましい一実施形態によれば、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマー顆粒(granulate)は、架橋多糖、架橋タンパク質もしくは架橋された非生物学的ポリマー、またはその混合物を含有する。
【0033】
上記のように、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーは、粒状材料である。この粒状材料は、流体(すなわち希釈剤)に曝露すると迅速に膨潤することができ、この膨潤形態では、出血部位に適用され得る流動性ペーストに寄与することができる。生体適合性ポリマー、例えばゼラチンは、フィルムとして提供することができ、次に、このフィルムを製粉して、粒状材料を形成することができる。この粒状材料に含有されている粒子のほとんどは、好ましくは100〜1,000μm、特に300〜500μmの粒径を有する。
【0034】
好ましい一実施形態によれば、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーは、架橋ゼラチンである。乾燥した架橋ゼラチン粉末は、適切な希釈剤と接触させる場合、迅速に再水和するように調製することができる。特にゼラチン粉末の形態のゼラチン顆粒は、好ましくは、WO98/08550AおよびWO2003/007845Aに記載の通り、フラグメントまたはサブユニットとも呼ばれる比較的大型の粒子を含む。好ましい(メジアン)粒径は、20〜1,000μm、好ましくは100〜750μm、特に150〜500μmの範囲であるが、この好ましい範囲から外れた粒径も、多くの環境で使用することができる。乾燥組成物はまた、水性の再水和媒体(=希釈剤)に曝露されると、顕著な「平衡状態の膨潤」を示す。好ましくは、膨潤は、400%〜1000%の範囲である。「平衡状態の膨潤」は、ゼラチンヒドロゲル粉末の乾燥重量を、それが完全に水和し、したがって完全に膨潤したときの重量から引くことによって決定することができる。次に、その差異を、乾燥重量で割り、100をかけて、膨潤の尺度を得る。乾燥重量は、実質的にすべての残留水分を除去するのに十分な時間にわたって、例えば120℃で2時間にわたって材料を高温に曝露した後、測定されるべきである。材料の平衡状態の水和は、乾燥材料を、水性の生理食塩水などの適切な希釈剤に、含水量が一定になるのに十分な時間にわたって、一般に室温で18〜24時間にわたって浸漬することによって達成され得る。
【0035】
再水和助剤と一緒になった非架橋ゼラチンは、適切なヒドロゲルベースを形成するのに適した任意の方式で架橋することができる。この好ましい実施形態の乾燥した架橋ゼラチン粉末は、好ましくは、特定の再水和助剤の存在下で粉末を調製することによって得られる。かかる再水和助剤は、粉末の調製中に存在するが、通常は最終生成物から除去されることになる。例えば、全固体含量に対して約20%存在する再水和助剤は、一般に最終生成物の1重量%未満、しばしば0.5重量%未満まで低減されることになる。例示的な再水和助剤には、好ましくは約1000の分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)、好ましくは約50,000の平均分子量を有するポリビニルピロリドン(PVP)、および一般に約40,000の平均分子量を有するデキストランが含まれる。本発明の組成物を調製するときに、これらの再水和助剤の少なくとも2種類を用いることが好ましく、より具体的には、3種類すべてを用いることが好ましい。
【0036】
架橋ゼラチンを生成するための例示的な方法を、以下に記載する。ゼラチンを得、水溶液に懸濁して、一般に1重量%〜70重量%、通常3重量%〜10重量%の固体含量を有する非架橋ヒドロゲルを形成する。ゼラチンは、一般に、グルタルアルデヒド(例えば、水性緩衝液中0.01%〜0.05%w/w、終夜0℃〜15℃)、過ヨウ素酸ナトリウム(例えば、0.05M、0℃〜15℃で48時間保持する)もしくは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)(例えば、0.5%〜1.5%w/w、終夜室温)のいずれかに曝露することによって、または約0.3〜3メガラドのγ線もしくは電子ビーム放射線に曝露することによって架橋される。あるいはゼラチン粒子は、アルコール、好ましくはメチルアルコールまたはエチルアルコールに、1重量%〜70重量%、通常3重量%〜10重量%の固体含量で懸濁し、架橋剤、一般にグルタルアルデヒド(例えば、0.01%〜0.1%w/w、終夜室温)に曝露することによって架橋することができる。アルデヒドの場合、pHは、約6〜11、好ましくは7〜10に保持されるべきである。グルタルアルデヒドを用いて架橋する場合、架橋は、シッフ塩基を介して形成され、シッフ塩基は、例えば水素化ホウ素ナトリウムによる処理によって、その後還元することにより安定化することができる。架橋した後、得られた顆粒を水で洗浄し、任意選択によりアルコールですすぎ、乾燥することができる。次に、得られた乾燥粉末を、本明細書に記載の最終容器に入れて提供することができる。
【0037】
架橋した後、再水和助剤の少なくとも50%(w/w)が、得られたヒドロゲルから除去されることになる。通常、再水和助剤は、ヒドロゲルを濾過し、その後、得られたフィルターケーキを洗浄することによって除去される。かかる濾過/洗浄ステップは、生成物を所望のレベルまで清浄にし、再水和助剤の少なくとも50%を除去するために、好ましくは元々存在する再水和助剤の少なくとも90%(w/w)を除去するために、1回またはさらに複数回反復することができる。濾過後、一般に、生成された最終的なフィルターケーキを乾燥することによって、ゼラチンを乾燥する。次に、乾燥したフィルターケーキを、破壊または粉砕して、前述の所望の範囲の粒径を有する架橋された粉末を生成することができる。
【0038】
好ましい一実施形態によれば、最終容器は、滅菌放射線(sterilizing radiation)に曝露されるときにポリマーの修飾を阻害するのに有効な量の安定剤、好ましくはアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸の他の塩または抗酸化剤をさらに含有する。
【0039】
もう1つの態様によれば、本発明はまた、本発明のコーティングされた顆粒を含有する止血用組成物を、患者の身体の標的部位に送達するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を前記標的部位に送達するステップを含む方法を提供する。特定の実施形態では、乾燥組成物を標的部位に直接適用する(任意選択により、必要に応じて標的部位で希釈剤と接触させる)こともできるが、乾燥した止血用組成物を、標的部位に投与する前に薬学的に受容可能な希釈剤と接触させて湿潤形態、特にヒドロゲル形態の止血用組成物を得ることが好ましい。
【0040】
本発明はまた、本発明のプロセスによって得られる、仕上げられた最終容器に言及する。この仕上げられた容器は、組み合わされた成分を、保存安定性がありかつ販売可能な滅菌された形態で含有する。
【0041】
本発明の別の態様は、すぐに使用できる止血用組成物を提供するための方法であって、本発明のプロセスによって生成された止血用組成物を、薬学的に受容可能な希釈剤と接触させるステップを含む方法に関する。
【0042】
本発明はまた、仕上げられた形態の本発明の乾燥した安定な止血用組成物と、適切な希釈剤を含む容器とを含むキットに関する。キットのさらなる成分は、使用のための指示、シリンジ、カテーテル、ブラシなどの投与手段(組成物が、投与手段にあらかじめ含まれていない場合)であってよく、または代用針もしくはカテーテル、予備のバイアルもしくはさらなる創傷被覆手段などの医療(外科)の実施における使用に必要な他の成分であってもよい。好ましくは、本発明のキットは、乾燥した安定な止血用組成物を収容するシリンジと、希釈剤を含有する(または別の希釈剤の容器から希釈剤を取り込むために提供される)シリンジとを含む。好ましくは、これらの2つのシリンジは、希釈剤が、再構成された組成物を投与するための出口ではない別の入口から、乾燥した止血用組成物に送達され得るように、互いに適合される形態で提供される。
【0043】
本発明はまた、止血に使用するのに適した生体適合性ポリマーの、トロンビンでコーティングされた顆粒に関する。これらのコーティングされた顆粒は、本明細書に開示の方法によって得ることができる。好ましくは、トロンビンでコーティングされた顆粒は、流動床コーティング、特にWursterコーティングによって得られる。好ましい一実施形態では、顆粒は、トロンビンでコーティングされたゼラチンポリマーである。
【0044】
本発明を、以下の実施例および図面に、それらに限定することなくさらに記載する。