(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968315
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】保護手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/04 20060101AFI20160728BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20160728BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
A41D19/04 A
A41D19/00 M
A41D19/00 A
A41D19/015 140
【請求項の数】12
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-523525(P2013-523525)
(86)(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公表番号】特表2013-533396(P2013-533396A)
(43)【公表日】2013年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2011003935
(87)【国際公開番号】WO2012019738
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年4月21日
(31)【優先権主張番号】202010011380.6
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513032633
【氏名又は名称】ウベックス セーフティ グローブ ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】マリエリース ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ケスティング
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ホルンベルガー
【審査官】
北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭57−154718(JP,U)
【文献】
実開昭57−162315(JP,U)
【文献】
特表2002−533228(JP,A)
【文献】
実開平06−031719(JP,U)
【文献】
実開昭58−145621(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3154903(JP,U)
【文献】
特開2002−129450(JP,A)
【文献】
特開2009−215669(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/032866(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00 − 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの糸要素より製造され、第1糸要素が手袋の所定の引裂ゾーン(10)を形成する領域において編まれる保護手袋の製造方法であって、第1糸要素より高い引裂抵抗を有する第2糸要素が手袋の残り部分で編まれ、所定の引裂ゾーン(10)のみがニトリル、クロロプレン、ポリウレタン、ラテックス、ポリ塩化ビニルのいずれかであるエラストマーコーティングされ、エラストマーコーティングは所定の引裂ゾーン(10)の少なくとも一部に施されるものであって、
2つの糸要素が共に編まれ、所定の引裂ゾーン(10)においては引裂抵抗が低い方の糸要素のみが編まれ、
引裂抵抗が低い方の糸要素が10〜40デニールの強度を有しており、これによりエラストマーコーティングすることで、所定の引裂ゾーン(10)の引裂抵抗が20〜60Nとされることを特徴とする、保護手袋の製造方法。
【請求項2】
第1糸要素が連続的に編まれることを特徴とする、請求項1に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項3】
少なくとも2つの糸要素が継ぎ目なく編まれることを特徴とする、請求項2に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項4】
一方の糸要素が、他方の糸要素とは異なる引張強度および/または弾力性を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項5】
一方の糸要素が、他方の糸要素とは異なる糸強度を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項6】
一方の糸要素および他方の糸要素が、異なる繊維材料から形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項7】
一方の糸要素および他方の糸要素が、異なる糸構造により形成されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項8】
少なくとも1つの所定の引裂ゾーン(10)が、1つの指(1、2、3、4、5)の周囲に沿って配されるよう製造されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項9】
保護手袋の各指(1、2、3、4、5)が所定の引裂ゾーン(10)を有するよう製造されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項10】
所定の引裂ゾーン(10)が、10段以下の、好ましくは2〜5段の編目からなるよう製造されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項11】
引裂抵抗が低い方の糸要素が15〜25デニールの強度を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【請求項12】
引裂抵抗が低い方の糸要素が半延伸糸であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の保護手袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
板金や切片その他の金属部品を設置または加工する際には、手を負傷する危険がある。器具の使用により手が受ける機械的ストレスや、鋭い縁またはバリを有する加工対象物の把持/保持、汚れ/これに伴う皮膚洗浄(刺激が強すぎることが多い)には、負傷や皮膚病の危険が付随する。したがって、適切な保護手袋を着用することは、上述のような負傷のリスクを最小限に抑え、職業に起因する皮膚病罹患を避けるための重要な手段である。
【0003】
しかしながら、特にカッター、ドリル、または手動のスクリュードライバなどの回転器具については、回転する装置部分に手袋が挟まり引っぱられる恐れがあるため、手袋は常に着用できるとは限らない。手動スクリュードライバの場合、螺合工程中にネジ止めされる部品を手で押さえておく必要がある時は特に危険であり、手指や腕に重大な損傷を負う可能性がある。このような状況では、保護手袋は保護作用を有しながらも、着用者が負傷する危険を大幅に増大させるものである。そのため、数多くの機械を扱う際は手袋の着用は許されない。
【0004】
従来例には、引張力または圧力がかかると規定の方法で裂けるようになっている引裂ゾーンまたは所定の破断点を組み込んだ様々な織布および布製品が記載されている。たとえば自動車産業においては、エアバッグを出し易くするための引裂ゾーンを備える織布材が記載されている。
【0005】
特許文献1より、エアバッグが展開する際に規定の方法で裂ける編地のシートカバーが知られている。編地のうち、規定の方法で裂ける編目の段または対応する縦目を囲う領域を、引裂抵抗が高く、および/または弾力性の低い糸で編むことにより規定の方法で引き裂かれる。このために、弾力性が15%以上低いものが選択される。また、この領域における糸は、その引裂抵抗が編地の残りの部分の糸の引裂抵抗のおよそ0.05〜0.25であるものが選択される。
【0006】
特許文献2より、規定のエアバッグ引裂線を備える自動車の内装トリム用織布カバーが知られている。上述の目的で強度を低めた糸が、編地または織地カバーの引裂線に沿って組み入れられている。
【0007】
特許文献3より、所定の破断点を組み込んだ織目を形成して製造される織布であって、所定の破断領域が、2つの隣接する織目領域の対向する織目を接続する少なくとも1つの糸により形成される織布が知られている。この糸は低い引裂抵抗を有し、4〜6mmの幅に編まれる。
【0008】
また、引張力下において手袋の適切な領域における早期の引き裂きを可能にする製品も知られている。
【0009】
特許文献4より、指部および掌部からなる保護手袋が知られている。指部および掌部は接続部を介し互いに接続され、該接続部は指部および掌部間の関節周辺に沿って配されている。この手袋は作業者の手が機械に巻き込まれることを防止し、欠損した指部は個々に補完することができる。しかし、このような手袋は、予め個々に製造した多数の手袋部品(指部、掌部)を縫い合わせて組み立てるという複雑な製造工程を要する。縫い目なく自動で編み上げる(島精機製編機などによる)手袋に比べ、このような手法は複雑な製造工程を有する。加えて、手袋の内側に縫い目があると着心地が損なわれる。
【0010】
特許文献5より、所定の破断点を有する作業用保護手袋が知られている。手袋はこのため指関節に沿う目打ち、および、掌上で交差する2本の目打ちを備えている。手袋の材料としては、作業内容に最も適切なものが選択される。これらの目打ちを正確にはどのように製造、設計、実現するかは記載されていない。これら手袋が縫い目なく編まれるものか、予め製造されるものか、それぞれ縫合されるものか否かについても記載がない。
【0011】
特許文献6より、指および掌領域を厚く編むことで着心地を高めた編手袋が知られている。
【0012】
特許文献7より、付着プレートにまとめて貼着され、手首領域にある所定の引裂線に沿って付着プレートから引きちぎることができる使い捨て手袋束が知られている。
【0013】
特許文献8より、指領域に耐切創性繊維、手および親指領域にこれより高い耐切創性を有する繊維、手首領域に、指領域より高く掌および親指領域より低い耐切創性を有する繊維を有する、連続編保護手袋が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際特許出願第WO00/32860号
【特許文献2】ドイツ特許出願第102004010359A1号
【特許文献3】ドイツ特許出願第10320628A1号
【特許文献4】中国特許出願第201356084Y号
【特許文献5】ドイツ特許出願第102007015961A1号
【特許文献6】米国特許出願第6,962,064B1号
【特許文献7】米国特許出願第4,863,084号
【特許文献8】米国特許出願第6,155,084号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、回転器具使用中であっても負傷する危険が低い保護手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、本発明の請求項1の主題により達成される。好ましい実施形態は、従属請求項、発明の説明および図面に示している。
【0017】
本発明の目的はまた、少なくとも2つの糸要素より製造され、第1糸要素が手袋の所定の引裂ゾーンを形成する領域において加工され、第2糸要素が手袋の残り部分で加工される保護手袋により達成される。第2糸要素は、第1糸要素より高い引裂抵抗を有する。所定の引裂ゾーンは少なくとも部分的にコーティングされる。第1糸要素は連続的に加工されることが好ましい。
【0018】
本発明は、引張力が所定の破断点にうまく伝わり所望の通り引き裂かれるには、所定の破断点は非常に低い弾力性を有する必要があるという考えに基づいている。所定の引裂ゾーン領域で特定の糸要素を選択、加工するのみでは、引き裂きが充分迅速に行われない。所定の引裂領域の少なくとも一部にコーティングを施すことによってのみ、所定の引裂ゾーンにおける引裂力を充分下げることができ、使用者の危険を大きく減らすことができる。所定の引裂ゾーンにコーティングすることで確実に、手袋の指部を引き裂く低い引張力が指に沿う方向に加わったとき、指部がほとんど伸びることなく即座に引き裂かれる。コーティングにより、所定の破断領域における最大引張伸び量は、コーティングされていない所定の破断領域に比べ、20〜40%と大幅に低減する。
【0019】
本発明の保護手袋はしたがって、隣接ゾーンより低い引裂抵抗を有する少なくとも部分的にコーティングされたゾーンを備える。手袋がたとえば回転部分を有する器具などに引っかかるなどしてより大きな力が手袋にかかると、手袋は前記所定の引裂ゾーンによって少なくとも2つの部分に引き裂かれる。手袋の一部または複数の部分はその後、着用者の手から引き離れ、残りの部分は留まる。したがって、着用者の手が器具に巻き込まれることなく、負傷することがない。このように、本発明に係る手袋は、回転部品を有する器具を使用中の着用者の負傷リスクを低減することができる。しかも、これと同時に手袋の保護作用が低減することもない。本発明に係る保護手袋は、既知の保護手袋と同様の性能を有することができる。所定の引裂ゾーンの寸法は、所定の引裂ゾーン領域における保護作用を損なう可能性を最小限とするよう選択すればよい。
【0020】
本手袋は、少なくとも2つの糸要素から縫い目なく編まれることが好ましい。手袋を2つ以上の糸要素から編むことで、所望の低引裂力および低弾力性を得るよう糸を選択し、編目の高さやその他の編み技術上のパラメータを調節し、コーティングと組み合わせることにより、所定の引裂ゾーンにおける引裂力を調節することができる。保護手袋は近年の手袋編機(たとえば島精機製)により縫い目なく全体を自動で編むことができる。縫い目がないこのような製品は人間工学的に優れた着心地を有する。このシームレス編手袋製造技術により、経済的で生産的な製造工程が可能である。機械のパラメータを利用および変更することで、(形状、編目密度、編目高さなどの)手袋の様々な特徴を個々に変更することができる。また、このような編機には、さらに用途を広げる追加の機能(色変更機、添え糸編機など)が備わっている。
【0021】
保護手袋は、電子制御添え糸編機を用いて手袋編機で縫い目なく全体を編むことができる。2つの糸要素を同時に編機に導入し、それぞれ一基の糸ガイドを用いて同時に編むことができる。編工程中に一方の糸要素の供給を自動で停止することができる。この目的で、編機の添え糸ガイドを電子制御により停止することができる。その後、所定の引裂ゾーン領域は他方の糸のみで編む。数段にわたって編んだ後は、再び両方の糸要素で編む。1つの糸要素のみで編む編目の段数により、所定の引裂ゾーンの幅が決定される。この目的のために、数段編目を飛ばすこともできる。
【0022】
添え糸編領域に替え、手袋編機はまた、2本の糸を縫い目なく交互に編むことができる色変更機を備えていてもよい。色変更機を使用する場合は、一方の糸要素のみを常に使用して保護手袋を編む。所定の引裂ゾーンでは、引裂抵抗を低減させた糸要素で編み、所定の引裂ゾーン以外はこれより高い引裂抵抗を有する糸要素で編む。
【0023】
本発明の一実施形態では、一方の糸要素が他方の糸要素と異なる引張強度を有することができる。したがって、所定の引裂ゾーン領域でそれのみで編まれる糸要素は、低い引張強度を有し、所定の引裂ゾーンにおいて相応に高い引張力が生じると、手袋はより速く、すなわちより小さな力で破れることになる。
【0024】
使用する糸要素は異なる糸太さを有することができる。異なる繊維および糸材料を設けてもよい。1つまたは複数の糸要素はまた、コアスパン糸、ハイブリッド糸、混合糸など、糸構造であってもよい。
【0025】
好ましい実施形態では、引裂抵抗が低い方の糸要素は10〜40デニール、好ましくは15〜25デニール、特に好ましくは20デニールの強度を有する。コーティングがある場合、この強度によって20〜60N、好ましくは40Nの引裂抵抗を得ることができる。これは特に、技術用語で半延伸糸(POY)と呼ばれる糸を使用する場合、指の引き裂きに必要な所望の20〜60Nの引裂抵抗を得るための助けとなる。ここで使用する半延伸糸は、ポリプロピレン、ポリエステルおよび/またはポリアミドからなることが好ましく、エラスタンを加えるおよび/または糸とともに加工してもよい。POY糸は溶融紡糸法を用い、取り出し速度を調節して高分子を一部延伸することにより製造される。
【0026】
保護手袋の機械的特性は欧州規格388(引裂抵抗の測定)を参照して試験することができ、所定の破断ゾーンの引裂力は引張試験機を用いて測定される。手袋の人差し指と掌全体を、引張試験機の上クランプと下クランプとでそれぞれ挟持する。人差し指を引き裂くのに要する引裂力を計測する。所定の引裂ゾーンを有さない従来の手袋(たとえば4×70デニールのポリアミド製)では、人差し指の引き裂きに200〜900Nの引裂力を必要とする。本発明に係るコーティングされた所定の引裂ゾーンを人差し指に組み入れた場合、引裂力は好ましくは60N以下となる。
【0027】
本発明の好ましい実施形態においては、少なくとも1つの所定の引裂ゾーンが保護手袋の1本の指の周囲に沿って配される。所定の引裂ゾーンはまた、縦向きの指の長手方向軸に対してほぼ水平に掌を横切るように設けてもよい。所定の引裂ゾーンは指の基端付近に配することが好ましい。所定の引裂ゾーンは通常指輪を着用する位置にあってもよい。保護手袋の指の幾つか、または全ての指、および親指が、所定の引裂ゾーンを有していてもよい。所定の引裂ゾーンは指の長手方向軸に対し直角に配されることが好ましい。さらに、任意の数の所定の引裂ゾーンを保護手袋に編み込むことができる。複数の所定の引裂ゾーンを一定周期で配することもまた考えられる。
【0028】
手袋は、フリース、ワープニット、または織物製品などその他の織布材から製造することもできる。手袋は、2つの糸要素から編まれることが好ましい。
【0029】
一実施形態においては、保護手袋および所定の引裂ゾーンは少なくとも部分的にエラストマーによりコーティングされていてもよい。コーティング材料として、たとえばニトリル、クロロプレン、ポリウレタン、ラテックス、ポリ塩化ビニルなどのエラストマーコーティングを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は本発明に係る保護手袋の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照し、本発明の具体的実施例を詳細に説明する。
【0032】
図1は、専用の手袋編機によって全体を編まれた本発明に係る保護手袋を概略図示している。保護手袋は親指1と4本の指2、3、4、5、かつ掌6および手首7を有する。手袋の各部分には、手袋が覆う手の部分と同じ名称を付している。
【0033】
指1、2、3、4、5の基端付近、すなわち、掌6への移行部に所定の引裂ゾーン10を設けている。この引裂ゾーンは、保護手袋の指1、2、3、4、5の周囲に沿う円環形状で、指を掌6に接続している。所定の引裂ゾーン10は、手袋のその他部分より低い引裂抵抗を有している。手袋が、たとえばドリルのヘッド上において回転機械に引っかかり、大きな引張力が手袋の指1、2、3、4、5にかかると、手袋の指1、2、3、4、5は所定の引裂ゾーン10において掌6から引き裂かれる。そして引きちぎれた手袋の指1、2、3、4、5のみが機械に巻き込まれる。手袋の残存部、そして特に手袋を着用している者の対応する指は、損傷を受けずにすむ。
【0034】
保護手袋は2つの糸要素から編まれ、2つの糸要素のうち1つは所定の引裂ゾーン10領域において使用されない。したがって、所定の引裂ゾーン10は1つの糸要素のみからなり、このため手袋の残りの部分より低い引裂抵抗を有する。所定の引裂ゾーン10の引裂抵抗および弾力性は、使用材料または編目幅など複数の要因に影響されるが、実用上求められる低弾力性は、追加のコーティングによってのみ得られる。所定の引裂ゾーン10を有する指1、2、3、4、5の引き裂きに要する力は20〜60Nである。これに比べ、従来の手袋の引き裂きに要する力は200〜900Nである。
【0035】
手動スクリュードライバなどの回転器具を使用する際は特に、手袋上のコーティングが、器具が布地に引っかかるのを防ぐことが実験により分かった。したがって、コーティングによりさらに引っかかりの危険を防ぐことができる。
【0036】
一部コーティングされた所定の引裂ゾーンは、手の内側の90〜270°の角度範囲、好ましくは180°にわたってコーティングされることが好ましい。所定の引裂ゾーンの、手の裏側に対向する側にはコーティングを設けず、これにより全体として所望の引裂力を得ることができる。ただし、360°の角度範囲全体にコーティングを設けた所定の引裂ゾーンとすることも可能である。所望の引裂力は、編地の所定の引裂ゾーンにコーティングする角度範囲によって正確に調節することができる。所定の引裂ゾーン周囲に沿ってコーティング範囲が広がるにつれ、引裂力も最初は増大し、所定の引裂ゾーンがほぼ全周にわたってコーティングされると最大値に達する。
【0037】
以下に、2つの糸要素(部材Aおよび部材B)より編まれる本発明に係る保護手袋構造の例を幾つか挙げる。
【0038】
1)同等の繊維および糸材料と異なる糸太さ
部材A:ポリアミド1×40デニール(半延伸糸)
部材B:ポリアミド1×200デニール
【0039】
2)異なる繊維および糸材料
部材A:セルロース、ビスコース、綿、エラスタン(低引裂力)
部材B:ポリエステル、ポリアミド、アラミド(ケブラー)、高性能ポリエチレン(HPPE)、エラスタン
【0040】
3)異なる繊維および糸構造
部材A:セルロース、ビスコース、綿(低引裂力)、エラスタン
部材B:コアスパン糸:
芯:ガラス、ステンレス、HPPE、エラスタン
鞘:ポリアミド、アラミド、セルロース、竹
および/または
糸/繊維混合体:
ポリエステル50%/綿50%、エラスタン、捻糸