(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態による反射物品の層を示す断面図。
【
図2】別の一実施形態による反射物品の層を示す断面図。
【
図3】更に別の一実施形態による反射物品の層を示す断面図。
【0013】
[好ましい形態の詳細な説明]
本明細書に提供されるのは、反射物品及び関係するその製造方法である。これらの反射物品には、1つ以上の金属層に接触した、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーを含む少なくとも1つの層が含まれる。これらの物品は概ね反射用途に使用することを目的としているが、これは本発明を不当に制限するものとして見なされるべきではない。例えば、これら物品は食品保存又は蒸気バリア用途などの非反射用途も想到される。
【0014】
「a」、「an」、及び「the」なる用語は、述べられる要素の1以上を意味するうえで「少なくとも1つの」と互換可能に用いられる。
【0015】
記述される範囲は、端点と、端点の間の全ての数が含まれる。例えば、1〜10の範囲は、1、10、及び1〜10の全ての数字を含む。
【0016】
用語「周囲温度」は、摂氏20度〜摂氏25の範囲の温度を指す。
【0017】
ブロックコポリマー
いくつかの実施形態において、提供される反射物品は、非粘着性基層を有し、これには1つ以上のブロックコポリマーが含まれる。
【0018】
本明細書で使用する場合、用語「ブロックコポリマー」は、複数の別種のポリマーセグメント(すなわち「ブロック」)が互いに共有結合しているポリマー材料を指す。ブロックコポリマーは、(少なくとも)2つの異なるポリマーブロックを含み、これらは一般にAブロック及びBブロックと呼ばれる。AブロックとBブロックは概して、異なるガラス転移温度を備えた化学的に異なる組成を有する。
【0019】
更に、AブロックとBブロックはそれぞれ、複数の固有のポリマー単位を含む。Aブロックポリマー単位並びにBブロックポリマー単位は、一般にモノエチレン性不飽和モノマーから誘導される。それぞれのポリマーブロック及び得られたブロックコポリマーは、後続の水素化を必要としない飽和ポリマー骨格を有する。
【0020】
「ABA」三元ブロックコポリマーは、1つのBミッドブロックに共有結合した一対のAエンドブロックを含む。本明細書で使用する場合、用語「エンドブロック」とは、ブロックコポリマーの末端部を意味し、用語「ミッドブロック」とは、ブロックコポリマーの中央部を意味する。用語「Aブロック」及び「Aエンドブロック」は、本明細書では同じ意味で用いられる。同様に、用語「Bブロック」及び「Bエンドブロック」は、本明細書では同じ意味で用いられる。
【0021】
少なくとも2つのAブロック及び少なくとも1つのBブロックを備えたブロックコポリマーは、更に、式(A−B)−部分を少なくとも3つ有する星形ブロックコポリマーでもあり得る。星形ブロックコポリマーはしばしば、様々な枝を伸ばしている中央部を有する。これらの場合において、Bブロックは通常、星形ブロックコポリマーの中央部にあり、Aブロックは星形ブロックコポリマーの末端部にある。
【0022】
好ましい実施形態において、AブロックはBブロックよりも剛性が高い。すなわち、AブロックはBブロックよりも高いガラス転移温度及び剛性を有する。本発明で使用する場合、用語「ガラス転移温度」又は「T
g」とは、ポリマー材料がガラス状態からゴム状態へと遷移する温度を意味する。ガラス状態は通常、材料、即ち、例えば、脆く、硬く、剛性の、又はこれらの組み合わせであるものを伴う。対照的に、ゴム状態は通常、可撓性及び/又はエラストマー系の材料を伴う。Bブロックは一般に軟性ブロックを意味し、Aブロックは硬性ブロックを意味する。
【0023】
ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)又は動的機械分析(DMA)などの方法を使用して決定することができる。好ましくは、Aブロックはガラス転移温度が少なくとも摂氏50度であり、Bブロックはガラス遷移温度が摂氏20度以下である。代表的なブロックコポリマーにおいて、AブロックT
gが少なくとも摂氏60度、少なくとも摂氏80度、少なくとも摂氏100度、又は少なくとも摂氏120度であり、一方、Bブロックはガラス転移温度が摂氏10度以下、摂氏0度以下、摂氏−5度以下、又は摂氏−10度以下である。
【0024】
いくつかの実施形態において、Aブロック構成要素は熱可塑性材料であり、Bブロック構成要素はエラストマー材料である。本発明で使用する場合、用語「熱可塑性」とは、加熱した際に流動し、冷却して室温に戻した際にその最初の状態に戻るポリマー材料を意味する。本発明で使用する場合、用語「エラストマー」とは、その最初の長さの少なくとも2倍まで延伸することができ、解放した際にほぼその最初の長さまで縮むポリマー物質を意味する。
【0025】
好ましくは、Aブロックの溶解度パラメータは、Bブロックの溶解度パラメータとは実質的に異なる。換言すれば、Aブロックは典型的にBブロックと融和性又は相溶性ではなく、これにより一般に、AブロックとBブロックの局部的相分離(又は「ミクロ相分離」)を生じる。ミクロ相分離は、ブロックコポリマー材料のエラストマー特性及び寸法安定性に有利に作用する可能性がある。
【0026】
いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーは、少なくとも摂氏約20度〜摂氏約150度の範囲の温度において、多相モルホロジーを有する。ブロックコポリマーは、より軟らかくエラストマー系のBブロックのマトリックス内でのAブロックドメイン(例えば、ナノドメイン)を強化する、異なる領域を有することができる。例えば、ブロックコポリマーは、実質的に連続的なBブロック相内に、別個の、不連続なAブロック相を有することができる。このようないくつかの実施例では、Aブロックポリマー単位の濃度は、ブロックコポリマーの約35重量%以下である。Aブロックは通常、ブロックコポリマーに構造強度及び結合力を提供する。
【0027】
Aブロックポリマー単位に好適なモノエチレン性不飽和モノマーは、好ましくは、反応させてホモポリマーを形成させた際に、少なくとも摂氏50度のT
gを有する。多くの実施例において、Aブロックポリマー単位に好適なモノマーは、反応させてホモポリマーを形成させた際に、少なくとも摂氏60度、少なくとも摂氏80度、少なくとも摂氏100度、又は少なくとも摂氏120度のT
gを有する。これらのホモポリマーのT
gは、最高摂氏200度、又は最高摂氏150度であり得る。これらのホモポリマーのT
gは例えば、摂氏50度〜摂氏200度、摂氏50度〜摂氏150度、摂氏60度〜摂氏150度、摂氏80度〜摂氏150度、又は摂氏100度〜摂氏150度の範囲であり得る。反応させてホモポリマーを形成させた際に少なくとも摂氏50度のT
gを有するこれらモノマーに加えて、AブロックのT
gを少なくとも摂氏50度に維持しながら、他のモノマーも所望によりAブロックに含めることができる。
【0028】
Aブロックポリマー単位は、メタクリレートモノマー、スチレン系モノマー、又はこれらの混合物から誘導され得る。即ち、Aブロックポリマー単位は、メタクリレートモノマー、スチレン系モノマー、又はこれらの混合物から選択されるモノエチレン性不飽和モノマーの反応生成物であり得る。
【0029】
Aブロックポリマー単位を形成するために使用されるモノマーの説明をするために本発明で使用する場合、用語「これらの混合物」とは、2種以上のタイプのモノマー(例えば、メタクリレート及びスチレン)又は2種以上の同一タイプのモノマー(例えば、2種の異なったメタクリレート)を混合することができることを意味する。ブロックコポリマーのAブロックの少なくとも2つは、同一であるか又は異なっていてもよい。多くのブロックコポリマーにおいて、Aブロックポリマー単位の全てが、同一のモノマー又はモノマー混合物から誘導される。
【0030】
いくつかの実施形態において、メタクリレートモノマーが反応して、Aブロックが形成される。即ち、Aブロックはメタクリレートモノマーから誘導される。メタクリレートモノマーの様々な組み合わせを使用して、少なくとも摂氏50度のT
gを有するAブロックを提供することができる。メタクリレートモノマーは、例えば、式(I)の、アルキルメタクリレート、アリールメタクリレート、又はアラルキルメタクリレートであり得る。
【0031】
【化1】
【0032】
式(I)において、R(1)はアルキル、アリール、又はアラルキル(すなわち、アリール基で置換されたアルキル)である。
【0033】
好適なアルキル基は、多くの場合、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、又は1〜3個の炭素原子を有する。アルキル基が2個より多い炭素原子を有する場合、アルキル基は分枝状又は環状であることができる。好適なアリール基は、多くの場合、6〜12個の炭素原子を有する。好適なアラルキル基は、多くの場合、7〜18個の炭素原子を有する。
【0034】
式(I)の代表的なアルキルメタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−メタクリル酸ブチル、及びシクロヘキシルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。式(I)のモノマーに加えて、イソボルニルメタクリレートを使用することができる。式(I)の代表的なアリール(メタ)アクリレートとしては、フェニルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。式(I)の代表的なアラルキルメタクリレートとしては、ベンジルメタクリレート及び2−フェノキシエチルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
その他の実施形態において、Aブロックポリマー単位は、スチレン系モノマーから誘導される。反応してAブロックを形成することができる代表的なスチレン系モノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、並びに2−メチルスチレン、4−メチルスチレン、エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、イソプロピルスチレン、及びジメチルスチレンなどの各種アルキル置換スチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
Aブロックについて前述したモノマーに加えて、これらのポリマー単位は、5重量%以下の、メタクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリルアミド、又はヒドロキシアルキルメタクリレートなどの極性モノマーを使用して調製することができる。例えば、Aブロックの結合力及びガラス転移温度を調整するために、これらの極性モノマーを使用することができる。好ましくは、各AブロックのT
gは、極性モノマーを追加しても少なくとも摂氏50度に留まる。Aブロック内の極性モノマーから生じる極性基は、所望であれば、化学的又はイオン性架橋のための反応部位として機能できる。
【0037】
Aブロックポリマー単位は、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下の極性モノマーを使用して調製することができる。しかし、多くの実施例では、Aブロックポリマー単位は極性モノマーを本質的に含まないか又は全く含まない。
【0038】
本発明で使用する場合、用語「本質的に含まない」とは、極性モノマーに関する場合、存在する任意の極性モノマーが、Aブロックポリマー単位を形成するために使用される選択されたモノマーの1種の中の不純物であることを意味する。
【0039】
極性モノマーの量は、Aブロックポリマー単位を形成するために使用される反応混合物中モノマーの1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満である。
【0040】
Aブロックポリマー単位は多くの場合、ホモポリマーである。代表的なAブロックでは、ポリマー単位は、1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、又は1個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルメタクリレートモノマーから誘導される。いくつかのより具体的な実施例では、Aブロックポリマー単位はメチルメタクリレートから誘導される(即ち、Aブロックはポリ(メチルメタクリレート)である)。
【0041】
Bブロックポリマー単位での使用に好適なモノエチレン性不飽和モノマーは通常、反応させてホモポリマーを形成させた際に、摂氏20度以下のT
gを有する。多くの実施例において、好適なBブロックポリマー単位のモノマーは、反応させてホモポリマーを形成させた際に、摂氏10度以下、摂氏0度以下、摂氏−5度以下、又は摂氏−10度以下のT
gを有する。
【0042】
これらのホモポリマーのT
gはしばしば、少なくとも摂氏−80度、少なくとも摂氏−70度、少なくとも摂氏−60度、又は少なくとも摂氏−50度である。これらのホモポリマーのT
gは、例えば、摂氏−80度〜摂氏20度、摂氏−70度〜摂氏10度、摂氏−60度〜摂氏0度、又は摂氏−60度〜摂氏−10度の範囲であり得る。反応させてホモポリマーを形成させた際に、摂氏20度以下のT
gを有するこれらのモノマーに加え、他のモノマーも、BブロックのT
gを摂氏20度以下に維持しつつ、Bブロックに含めることができる。
【0043】
Bミッドブロックポリマー単位は通常、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルエステルモノマー、又はこれらの組み合わせから誘導される。即ち、Bミッドブロックポリマー単位は、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルエステルモノマー、又はこれらの混合物から選択される第2のモノマーの反応生成物である。本発明で使用する場合、用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートとアクリレートの両方を意味する。Bミッドブロックポリマー単位を形成するために、2種以上のタイプのモノマー(例えば、(メタ)アクリレート及びビニルエステル)又は2種以上の同一タイプのモノマー(例えば、2種の異なった(メタ)アクリレート)を組み合わせることができる。
【0044】
多くの実施形態では、アクリレートモノマーが反応して、Bブロックが形成される。
【0045】
アクリレートモノマーは、例えば、アルキルアクリレート又はヘテロアルキルアクリレートであることができる。
【0046】
Bブロックは多くの場合、式(II)のアクリレートモノマーから誘導される。
【0047】
【化2】
【0048】
式(II)において、R
2は、1〜22個の炭素を有するアルキル又は2〜20個の炭素を有するヘテロアルキル及び酸素又はイオウから選択される1〜6個のヘテロ原子である。
【0049】
アルキル基又はヘテロアルキル基は、線状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであり得る。Bブロックポリマー単位を形成するために使用することができる式(II)の代表的なアルキルアクリレートとしては、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。Bブロックポリマー単位を形成するために使用することができる、式(II)の代表的なヘテロアルキルアクリレートとしては、2−メトキシエチルアクリレート及び2−エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
6超〜20個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルメタクリレートなどのBブロックを調製するために、いくつかのアルキルメタクリレートを使用することができる。代表的なアルキルメタクリレートとしては、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、及びラウリルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、2−エトキシエチルメタクリレートなどのいくつかのヘテロアルキルメタクリレートもまた使用することができる。
【0051】
Bブロックに好適なポリマー単位は、式(II)のモノマーから調製することができる。商業的に入手不可能な又は直接的に重合不可能な(メタ)アクリレートモノマーは、エステル化又はトランスエステル化反応によって得ることができる。例えば、市販の(メタ)アクリレートを加水分解し、次にアルコールでエステル化して、関心のある(メタ)アクリレートを得ることができる。あるいは、高級アルキル(メタ)アクリレートは、低級アルキル(メタ)アクリレートから、低級アルキル(メタ)アクリレートを高級アルキルアルコールと直接トランスエステル化することによって誘導することができる。
【0052】
更にその他の実施形態では、Bブロックポリマー単位は、ビニルエステルモノマーから誘導される。代表的なビニルエステルとしては、ビニルアセテート、ビニル2−エチル−ヘキサノエート、及びネオデカン酸ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
Bブロックについて前述したモノマーに加えて、このポリマー単位は、5重量%以下の、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド(例えば、N−メチル−アクリルアミド)、N,N−ジアルキルアクリルアミド(N,N−ジメチルアクリルアミド)、又はヒドロキシアルキルアクリレートなどの極性モノマーを使用して調製することができる。これらの極性モノマーを使用して、例えば、BブロックのT
gを摂氏20度以下に維持しつつ、ガラス転移温度を調節することができる。更に、これらの極性モノマーは、所望する場合、化学的又はイオン性架橋のための反応部位として機能することができるに極性基をポリマー単位内にもたらすことができる。
【0054】
ポリマー単位は、4重量%以下、3重量%以下、又は2重量%以下の極性モノマーを使用して調製することができる。他の実施形態において、Bブロックポリマー単位は、極性モノマーを含まないか、又は実質的に含まない。本発明で使用する場合、用語「実質的に含まない」とは、極性モノマーに関する場合、存在する任意の極性モノマーが、Bブロックポリマー単位を形成するために使用される選択されたモノマーの1種の中の不純物であることを意味する。
【0055】
好ましくは、極性モノマーの量は、Bブロックポリマー単位を形成するために使用されるモノマーの1重量%未満、0.5重量%未満、0.2重量%未満、又は0.1重量%未満である。
【0056】
Bブロックポリマー単位はホモポリマーであり得る。Bブロックのいくつかの実施例では、ポリマー単位は、1〜22、2〜20、3〜20、4〜20、4〜18、4〜10、又は4〜6個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルアクリレートから誘導することができる。アルキルアクリレートモノマーなどのアクリレートモノマーが形成するホモポリマーは、アルキルメタクリレートの対応物から得られるものよりも概ね剛性が低い。
【0057】
好ましくは、Aブロック及びBブロックの組成物及び対応するT
gが、非粘着性基層を提供する。非粘着性の基層は、取扱いと操作が容易であるため有利である。これにより、この基層を製造時にスタンドアローン層として使用することが容易になる。加えて、非粘着性基層ならば、その基層が反射フィルムの外側層であるときはいつでも、エンドユーザーがその反射フィルムを取り扱うことが容易になる。
【0058】
いくつかの基層組成物において、ブロックコポリマーは、メタクリレートモノマーから誘導されるAブロックポリマー単位と、アクリレートモノマーから誘導されるBブロックポリマー単位とを有する、ABA三元ブロック(メタ)アクリレートブロックコポリマーである。例えば、Aブロックポリマー単位は、アルキルメタクリレートモノマーから誘導することができ、Bブロックポリマー単位は、アルキルアクリレートモノマーから誘導することができる。
【0059】
いくつかのより具体的な実施例では、Aブロックは、1〜6、1〜4、1〜3、又は1〜2個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルメタクリレートから誘導され、Bブロックは、3〜20、4〜20、4〜18、4〜10、4〜6、又は4個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルアクリレートから誘導される。例えば、Aブロックは、メチルメタクリレートから誘導することができ、Bブロックは、4〜10、4〜6、又は4個の炭素原子を有するアルキル基を有するアルキルアクリレートから誘導することができる。
【0060】
より具体的な実施例において、Aブロックは、メチルメタクリレートから誘導することができ、Bブロックは、n−ブチルアクリレートから誘導することができる。即ち、Aブロックはポリ(メチルメタクリレート)であり、Bブロックはポリ(n−ブチルアクリレート)である。
【0061】
所望により、Bブロックの重量%は、ブロックコポリマー中のAブロックの重量パーセントに等しいか又はそれより大きい。Aブロックが硬性ブロック、Bブロックが軟性ブロックと仮定すると、Aブロックの量が多くなるほど、ブロックコポリマーの弾性率が増大する傾向になる。しかしながら、Aブロックの量が多すぎる場合、ブロックコポリマーのモルホロジーは望ましい配置から反転することがあり、ここで、Bブロックは、連続相を形成し、ブロックコポリマーはエラストマー材料である。即ち、Aブロックの量が多すぎる場合、コポリマーは、エラストマー材料よりも熱可塑性材料により類似した性質を有する傾向がある。
【0062】
好ましくは、ブロックコポリマーは、10〜50重量%のAブロックポリマー単位及び50〜90重量%のBブロックポリマー単位を含有する。例えば、ブロックコポリマーは、10〜40重量%のAブロックポリマー単位及び60〜90重量%のBブロックポリマー単位、10〜35重量%のAブロックポリマー単位及び65〜90重量%のBブロックポリマー単位、15〜50重量%のAブロックポリマー単位及び50〜85重量%のBブロックポリマー単位、15〜35重量%のAブロックポリマー単位及び65〜85重量%のBブロックポリマー単位、10〜30重量%のAブロックポリマー単位及び70〜90重量%のBブロックポリマー単位、15〜30重量%のAブロックポリマー単位及び70〜85重量%のBブロックポリマー単位、15〜25重量%のAブロックポリマー単位及び75〜85重量%のBブロックポリマー単位、又は10〜20重量%のAブロックポリマー単位及び80〜90重量%のBブロックポリマー単位を含有することができる。
【0063】
ブロックコポリマーは、任意の好適な分子量を有することができる。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーの分子量は、少なくとも2,000g/モル、少なくとも3,000g/モル、少なくとも5,000g/モル、少なくとも10,000g/モル、少なくとも15,000g/モル、少なくとも20,000g/モル、少なくとも25,000g/モル、少なくとも30,000g/モル、少なくとも40,000g/モル、又は少なくとも50,000g/モルである。いくつかの実施形態において、ブロックコポリマーの分子量は、500,000g/モル以下、400,000g/モル以下、200,000g/モル以下、100,000g/モル以下、50,000g/モル以下、又は30,000g/モル以下である。
【0064】
例えば、ブロックコポリマーの分子量は、1,000〜500,000g/モルの範囲、3,000〜500,000g/モルの範囲、5,000〜100,000g/モルの範囲、5,000〜50,000g/モルの範囲、又は5,000〜30,000g/モルの範囲であり得る。
【0065】
分子量は通常、重量平均分子量として表される。任意の周知の技術を使用して、ブロックコポリマーを調製できる。ブロックコポリマー調製のいくつかの方法においては、欧州特許第EP 349 232(Andrusら)に記載の通り、イニファーターが使用される。しかし、用途によっては、イニファーターの使用を含まないブロックコポリマー調製法が好ましい場合があるが、これは、イニファーターが、光重合反応にて特に問題となる残留物を残す傾向があるためである。
【0066】
例えば、チオカルバメート(一般に使用されるイニファーター)が存在すると、得られたブロックコポリマーが屋外曝露分解をより起こしやすい場合がある。屋外曝露分解は、チオカルバメート残留物中の相対的に弱い炭素−イオウ結合に起因し得る。例えば、元素分析又は質量分析を使用すると、多くの場合、チオカルバメートの存在を検出することができる。このため、用途によっては、この弱い炭素−イオウ結合を形成しない他の方法を使用して、ブロックコポリマーを調製することが望ましい。
【0067】
ブロックコポリマーのいくつかの好適な製造方法は、リビング重合法である。本発明で使用する場合、用語「リビング重合」とは、伝搬する種が停止又は移動のいずれも生じない、重合技術、重合工程、又は重合反応を意味する。100%転化後、追加のモノマーを加えると、更なる重合が生じ得る。
【0068】
リビングポリマーの分子量は、伝搬する種の数が変化しないため、転化率に応じて直線的に増大する。リビング重合法としては、例えば、リビングフリーラジカル重合法及びリビングアニオン重合法が挙げられる。リビングフリーラジカル重合反応の具体例としては、原子移動重合反応及び可逆的付加開裂連鎖移動重合反応が挙げられる。
【0069】
リビング重合法を使用して調製されたブロックコポリマーは、良好にコントロールされたブロックを有する傾向がある。本発明で使用する場合、用語「良好にコントロールされた」とは、ブロック及びブロックコポリマーの製造方法に関する場合、ブロックポリマー単位が以下の特性:コントロールされた分子量、低多分散性、十分に画定されたブロック、又は高純度を有するブロックのうちの少なくとも1つを有することを意味する。いくつかのブロック及びブロックコポリマーは、理論分子量に近い良好にコントロールされた分子量を有する。
【0070】
理論分子量とは、それぞれのブロックを形成するために使用されるモノマー及び反応開始剤のモル充填量を基準にして計算上の分子量を意味する。良好にコントロールされたブロック及びブロックコポリマーは多くの場合、理論分子量の約0.8〜1.2倍、又は理論分子量の約0.9〜1.1倍である重量平均分子量(M
w)を有する。そのようなものとして、ブロックの分子量及び総ブロックの分子量を選択しかつ調製することができる。
【0071】
いくつかのブロック及びブロックコポリマーは、低多分散性を有する。本発明で使用する場合、用語「多分散性」は、分子量分布の尺度であり、ポリマーの数平均分子量(M
n)で除した重量平均分子量(M
w)を意味する。同一分子量を持つ材料は1.0の多分散度を有するのに対して、複数の分子量を持つ材料は1.0より大きい多分散度を有する。多分散度は、例えば、ゲル透過クロマトグラフィーを使用して決定することができる。
【0072】
良好にコントロールされたブロック及びブロックコポリマーは多くの場合、2.0以下、1.5以下、又は1.2以下の多分散度を有する。
【0073】
いくつかのブロックコポリマーは、十分に画定されたブロックを有する。即ち、Aブロック及びBブロックを含有する連続相の境界は十分に画定されている。
【0074】
これらの十分に画定されたブロックは、テーパーの付いた構造を本質的に含まない境界を有する。
【0075】
本発明で使用する場合、用語「テーパーの付いた構造」とは、Aブロック及びBブロックの両方に使用されるモノマーから誘導される構造を意味する。
【0076】
テーパーの付いた構造は、Aブロック相及びBブロック相の混合を増大させ、ブロックコポリマー、又はブロックコポリマーを含有する基層の、全体的な結合力を低下させ得る。リビングアニオン重合などの方法を使用して調製したブロックコポリマーは、テーパーの付いた構造を含まないか、又は実質的に含まない境界をもたらす傾向がある。
【0077】
AブロックとBブロックとの間の明確な境界は多くの場合、化学的架橋を必要としないで全体的な結合力を増大させることができる物理的架橋の形成をもたらす。これら十分に画定されたブロックとは対照的に、イニファーターを使用して調製されたいくつかのブロックコポリマーは、テーパーの付いた構造を有する、より明確性の乏しいブロックを有する。
【0078】
所望により、AブロックとBブロックは高純度を有する。例えば、Aブロックは、Bブロックの調製に使用されるモノマーから誘導されたセグメントを実質的に含まないか、又は全く含まないことができる。同様に、Bブロックは、Aブロックの調製に使用されるモノマーから誘導されたセグメントを実質的に含まないか、又は全く含まないことができる。
【0079】
リビング重合法は通常、非リビング又は疑似リビング重合法(例えば、イニファーターを使用する重合反応)を使用して調製されたブロックよりも、より立体規則性のブロック構造をもたらす。高度にシンジオタクチックな構造又はアイソタクチックな構造で示される立体規則性により、良好にコントロールされたブロック構造がもたらされる傾向があり、かつブロックのガラス転移温度に影響を与える傾向がある。
【0080】
例えば、リビング重合法を使用して合成したシンジオタクチックポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)は、従来の(即ち、非リビングの)重合法を使用して合成した同様のPMMAよりも摂氏約20度〜摂氏約25度高いガラス転移温度を有することができる。立体規則性は、例えば、核磁気共鳴分光法を使用して検出することができる。約75%超の立体規則性を有する構造は多くの場合、リビング重合法を使用して得ることができる。
【0081】
リビング重合法がブロックを形成するために使用される場合、モノマーは概ね、不活性希釈剤(又は溶媒)の存在下で反応開始剤と接触させられる。不活性希釈剤は、熱伝達及び反応開始剤とモノマーとの混合を促進できる。任意の好適な不活性希釈剤を使用することができるが、飽和炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、又はこれらの組み合わせが多くの場合、選択される。
【0082】
代表的な希釈剤としては、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素;トルエンなどの芳香族炭化水素;及びジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の脂肪族エーテル及び環状エーテル;エチルアセテート及びブチルアセテートなどのエステル;並びにアセトン、メチルエチルケトン等のケトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
リビングアニオン重合法を使用してブロックコポリマーを調製する場合、簡略化した構造A−MにてリビングAブロックを表すが、ここで、Mは、リチウム、ナトリウム、又はカリウムなどの第I族金属から選択される反応開始剤フラグメントである。
【0084】
例えば、Aブロックは、式(I)のメタクリレートモノマーを含む第1のモノマー組成物の重合反応生成物であり得る。Bブロックを形成するのに使用されるモノマーを含む第2のモノマー組成物をA−Mに追加して、リビング二元ブロック構造A−B−Mを形成することができる。例えば、第2のモノマー組成物には、式(II)によるモノマーを含めることができる。式(I)によるモノマーを含み得る第1のモノマー組成物の別の供給の追加と、それに続くリビングアニオン部位の脱離により、三元ブロック構造A−B−Aの形成をもたらすことができる。別の方法としては、リビング二元ブロック構造A−B−Mを、二官能性又は多官能性カップリング剤を用いて結合させ、三元ブロック構造A−B−Aコポリマー又は(A−B)[n]−星形ブロックコポリマーを形成することができる。
【0085】
当技術分野において既知の任意の反応開始剤をリビングアニオン重合反応のために使用することができる。
【0086】
典型的な反応開始剤としては、有機リチウム化合物(例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソ−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、A−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム等)などのアルカリ金属炭化水素が挙げられる。このような反応開始剤は、リビングAブロック又はリビングBブロックの製造において有用であり得る。
【0087】
(メタ)アクリレートのリビングアニオン重合において、クラウンエーテル、又はリチウムエトキシレートなどの材料から選択される錯化配位子を添加することにより、アニオンの反応性を抑えることができる。リビングアニオン重合反応に好適な二官能性反応開始剤としては、1,1,4,4−テトラフェニル−1,4−ジリチオブタン;1,1,4,4−テトラフェニル−1,4−ジリチオイソブタン;並びにナフタレンリチウム、ナフタレンナトリウム、ナフタレンカリウム、及びこれらの同族体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
その他の好適な二官能性反応開始剤としては、アルキルリチウムのジビニル化合物との付加反応により調製されるようなジリチウム化合物が挙げられる。例えば、アルキルリチウムは、1,3−ビス(1−フェニルエテニル)ベンゼン又はm−ジイソプロペニルベンゼンと反応することができる。
【0089】
リビングアニオン重合反応のためには、通常、反応開始剤のアニオンによる特徴的な色が観察されるうちは、少量の(例えば、一度に一滴)反応開始剤をモノマーに添加することが望ましい。次に、計算量の反応開始剤を加えて、所望の分子量のポリマーを製造することができる。多くの場合、あらかじめ少量を添加することにより、反応開始剤と反応する汚染物質が破壊され、重合反応をより良好にコントロールできる。
【0090】
使用する重合温度は、重合させられるモノマー及び使用する重合法のタイプに依存する。一般に、この反応は摂氏約−100度〜摂氏約150度で実施することができる。リビングアニオン重合反応については、この温度はしばしば摂氏約−80度〜摂氏約20度である。リビングフリーラジカル重合反応については、この温度はしばしば摂氏約20度〜摂氏約150度である。リビングフリーラジカル重合反応は、リビングアニオン重合反応よりも温度変化に対してより感受性が低い傾向がある。
【0091】
リビングアニオン重合法を使用したブロックコポリマー調製法は、例えば、米国特許第6,734,256号(Everaertsら)、同第7,084,209号(Everaertsら)、同第6,806,320号(Everaertsら)、及び同第7,255,920号(Everaertsら)に詳しく記載されており、これら全体が、本明細書に参考として組み込まれる。この重合法は、例えば、米国特許第6,630,554号(Hamadaら)及び同第6,984,114号(Katoら)、並びに、日本特許出願公開公報平11−第302617号(Uchiumiら)及び同平11−第323072号(Uchiumiら)に詳しく記載されている。
【0092】
一般的に、反応開始剤又はリビングアニオンを破壊し得る物質を排除するために、重合反応は、コントロールされた条件下で実施される。通常は、重合反応は、窒素、アルゴン、ヘリウム、又はこれらの組み合わせなどの不活性雰囲気中で実施される。反応がリビングアニオン重合の場合、無水条件が必要となり得る。
【0093】
好適なブロックコポリマーは、Kuraray Co.,LTD.(日本、東京)からLAポリマー(LA POLYMER)の商標名で購入することができる。これらのブロックコポリマーのいくつかは、ポリ(メチルメタクリレート)エンドブロックとポリ(n−ブチルアクリレート)ミッドブロックとを備えた三元ブロックコポリマーである。いくつかの実施形態において、2種以上のブロックコポリマーが、基層組成物中に含まれる。例えば、異なる重量平均分子量を有する複数のブロックコポリマー、又は異なるブロック組成を有する複数のブロックコポリマーを使用することができる。
【0094】
異なる重量平均分子量を有する複数のブロックコポリマー、又は異なる量のAブロックポリマー単位を有する複数のブロックコポリマーを使用することで、例えば、基層組成物の剪断強度を向上させることができる。
【0095】
異なる重量平均分子量を有する複数のブロックコポリマーが基層組成物に含まれている場合、重量平均分子量は任意の好適な量で変化し得る。場合によっては、第1ブロックコポリマーの分子量は、より大きな重量平均分子量を有する第2ブロックコポリマーから、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、又は少なくとも200%だけ変えることができる。
【0096】
ブロックコポリマー混合物は、10〜90重量%の第1ブロックコポリマー及び10〜90重量%のより大きな重量平均分子量を有する第2ブロックコポリマー、20〜80重量%の第1ブロックコポリマー及び20〜80重量%のより大きな重量平均分子量を有する第2ブロックコポリマー、又は25〜75重量%の第1ブロックコポリマー及び25〜75重量%のより大きな重量平均分子量を有する第2ブロックコポリマーを含有できる。
【0097】
異なる濃度のAブロックポリマー単位を有する複数のブロックコポリマーが基層組成物に含まれる場合、濃度は、任意の好適な量で異なり得る。場合によっては、濃度は、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、又は少なくとも100%で変化し得る。
【0098】
ブロックコポリマー混合物は、10〜90重量%の第1ブロックコポリマー及び10〜90重量%のより多量のAブロックを有する第2ブロックコポリマー又は20〜80重量%の第1ブロックコポリマー及び20〜80重量%のより多量のAブロックを有する第2ブロックコポリマー又は25〜75重量%の第1ブロックコポリマー及び25〜75重量%のより多量のAブロックを有する第2ブロックコポリマーを含有できる。
【0099】
ランダムコポリマー
いくつかの実施形態において、提示される反射物品は、少なくとも1つのランダムコポリマーを含む基層を有する。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「ランダムコポリマー」は、少なくとも2つの異なるポリマー単位(又は繰返し単位)を含み、それらがポリマー主鎖に沿って互いにランダムな順で共有結合している、ポリマー材料を意味する。ブロックコポリマーと同様に、ランダムコポリマーには、化学的に異なる2つ以上のポリマー単位が含まれる。更に、ランダムコポリマーのポリマー単位は、2つ以上のそれぞれ異なるモノエチレン性不飽和モノマーから誘導され、それぞれ異なるガラス転移温度を伴う。しかしながら、ブロックコポリマーとは異なり、ランダムコポリマーは別個のブロックに区分されてはおらず、ナノレベルにおいて互いに均一に散在しているポリマー単位を有する。
【0101】
ランダムコポリマーはまた、巨視的な特性においてブロックコポリマーとは異なっている。ブロックコポリマーはA及びBブロックの不溶性に基づきミクロ相で分離可能であるが、ランダムコポリマーは均一なミクロ構造を有する。その結果、ランダムコポリマーは単一のガラス転移温度のみを呈し、一方ミクロ相分離したブロックコポリマーは2つ以上のガラス転移温度を呈する。
【0102】
ランダムコポリマーのガラス転移温度は概ね、それぞれのポリマー単位に伴うガラス転移温度の間にある。例えば、メチルメタクリレートとn−ブチルアクリレートのランダムコポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)ホモポリマーとポリ(n−ブチルアクリレート)ホモポリマーそれぞれに対応するガラス転移温度の間にあるガラス転移温度を有する。望ましい場合は、ポリマー単位に伴うガラス転移温度とそれぞれの構成要素の重量比又は体積分率に基づいて、様々な理論式及び経験式を用いて近似することができる。
【0103】
本明細書に記述されるランダムコポリマーには、少なくとも、第1のポリマー単位A及び第2ポリマー単位Bが含まれる。Aポリマー単位は「硬性」の、剛性の高い構成要素であり、Bポリマー単位は「軟性」の、より剛性の低い構成要素である。Aポリマー単位は、反応させてホモポリマーを形成させた際に、少なくとも50℃のガラス転移温度を有する。Bポリマー単位は、反応させてホモポリマーを形成させた際に、20℃以下のガラス転移温度を有する。換言すれば、Aポリマー単位は少なくとも50℃のガラス転移温度を伴い、Bポリマー単位は20℃以下のガラス転移温度を伴う。
【0104】
代表的なランダムコポリマーにおいて、Aポリマー単位は少なくとも60℃、少なくとも80℃、少なくとも100℃、又は少なくとも120℃のガラス転移温度を伴い、一方、Bポリマー単位は、10℃以下、0℃以下、−5℃以下、又は−10℃以下のガラス転移温度を伴う。
【0105】
Aポリマー単位は概ね、熱可塑性材料のホモポリマーを伴い、一方、Bポリマー単位は概ね、エラストマー材料のホモポリマーを伴う。更に、A及びBポリマー単位に伴う溶解度パラメータは、それぞれのA及びBホモポリマーが互いに相溶性とならないよう、十分に異なっている。しかしながら、このランダムポリマー構造の結果、このランダムコポリマーはすべての組成物において均質なミクロ構造を呈する。
【0106】
A及びBポリマー単位の代表的な化学構造及び特性は、Aブロック及びBブロックポリマー単位について前述したものと同様であり、よってここでは繰り返さない。
【0107】
ランダムコポリマーにおいて、Aポリマー単位の重量パーセントは概ね、Bポリマー単位の重量パーセントを上回る。Aポリマー単位の量が多くなると、ランダムコポリマーの全体の弾性率が高くなる傾向になる。同時に、Aポリマーブロックの量が多くなると、周囲温度でのランダムコポリマーの粘着度が低減する傾向になる。ランダムコポリマーを含んだ基層は、粘着性又は非粘着性であり得る。しかしながら、ブロックコポリマーを含む基層に関して前述したのと同じ理由で、基層は非粘着性であることが好ましい。
【0108】
ランダムコポリマーは通常、60〜95重量%のAポリマー単位及び5〜40重量%のBポリマー単位を含有する。例えば、ブロックコポリマーは、60〜90重量%のAポリマー単位及び10〜40重量%のBポリマー単位、60〜85重量%のAポリマー単位及び15〜40重量%のBポリマー単位、65〜95重量%のAポリマー単位及び5〜35重量%のBポリマー単位、65〜90重量%のAポリマー単位及び10〜35重量%のBポリマー単位、65〜85重量%のAポリマー単位及び15〜35重量%のBポリマー単位、70〜95重量%のAポリマー単位及び5〜30重量%のBポリマー単位、70〜90重量%のAポリマー単位及び10〜20重量%のBポリマー単位、又は70〜85重量%のAポリマー単位及び15〜30重量%のBポリマー単位を含有することができる。
【0109】
前述のブロックコポリマー同様、ランダムコポリマーは任意の好適な分子量を有し得る。代表的な分子量は、ブロックコポリマーについてすでに詳細に列挙されており、ランダムコポリマーにも同様に適用される。加えて、低い多分散性を有するランダムコポリマーも想到される。好ましい実施形態において、ランダムコポリマーは2.0以下、1.5以下、又は1.2以下の多分散性を有する。
【0110】
リビング重合法(リビングアニオン重合技法及びリビングフリーラジカル重合技法を含む)を含むランダムコポリマーの好適な製造方法は、前述されている。ブロックコポリマーの合成は一般に、AモノマーとBモノマーの順次追加を含むが、ただし、ランダムコポリマーの合成は一般に、A及びBモノマー両方を含む撹拌溶液に反応開始剤を加えること、又は、反応開始剤の撹拌溶液にA及びBモノマー両方を同時に導入することを含む。有利なことにこれらの方法は、制御された分子量、低い多分散性、及び/又は高純度を備えたランダムコポリマーを製造する傾向にある。従来の非リビングのフリーラジカル重合技法も、ランダムコポリマー調製に使用することができる。
【0111】
好適なランダムコポリマーはまた、Dow Chemical Company(Midland、Michigan)、BASF SE(Ludwigshafen、Germany)、及びThe Polymer Source,Inc.(Montreal、Canada)からも市販されている。
【0112】
いくつかの実施形態において、2つ以上のランダムコポリマーを、本明細書に記述される基層組成物に含めることができる。例えば、異なる重量平均分子量又は異なる組成を有するA及びBポリマー単位を有するランダムコポリマーを使用することができる。所望により、2つ以上のランダムコポリマーが、基層内の別個の層にされる。別の方法として、2つ以上のランダムコポリマーを混合して、均一なミクロ構造が提供される。この混合物が想到される場合、組成物中の差は、コポリマー層が互いに分離するほど大きくはないことが好ましい。有利なように、2つ以上のランダムコポリマーの組み合わせを使用して、基層組成物の剪断強度を調整することができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、2つ以上のランダムコポリマーの分子量の差及び/又は組成の差は、ブロックコポリマーに関して前述に列記したものと同様である。よって、この記述はここでは繰り返さない。
【0114】
金属構成要素
提示される反射物品は1つ以上の金属層を含む。そのような物品は、高度の反射性を提供することに加え、製造の柔軟性も提供し得る。所望により、金属層は比較的薄い有機結合層又は無機結合層に適用することができ、この結合層がポリマー基層上に配置される。
【0115】
提示される反射物品について想到される金属層は、滑らかな表面を有し、これは鏡面でもあり得る。本明細書で使用する場合、用語「鏡面」は、入射光の方向と出射光の方向とが表面垂線に対して同じ角度を形成する、鏡のような光の反射を誘導する表面を意味する。この目的のために任意の反射性金属を使用することができるが、好ましい金属には銀、金、アルミニウム、銅、ニッケル、及びチタンが挙げられる。これらのうち、銀、アルミニウム及び金が特に好ましい。
【0116】
所望により、この反射物品の腐食の影響を軽減するため、1つ以上の層を追加することもできる。例えば、隣接する金属層の腐食を低減する犠牲陽極として使用するために、銀層の裏側に銅層を蒸着させることができる。
【0117】
金属層は、様々な方法を用いて基層に蒸着させることができる。好適な蒸着技法の例としては、スパッタコーティングによる物理的気相蒸着、電子ビーム又は加熱法による蒸発、イオン支援電子ビーム蒸発、及びこれらの組み合わせが挙げられる。望ましい場合は、金属製又はセラミック製のマスク又はシャッター機能を使用して、特定の領域の蒸着を制限することができる。
【0118】
金属層を形成するための特に好適な蒸着法は、スパッタリングによる物理的気相蒸着法(PVD)である。この技法では、ターゲットの原子は、薄いフィルムを形成するよう基材上に衝突することができるように高エネルギー粒子ボンバードメントによって発射される。スパッタ蒸着に使用される高エネルギー粒子は、グロー放電によって、又は、例えば、電磁場をアルゴンガスに印加することによって生成される自己保持性プラズマによって、生成される。
【0119】
1つの代表的な方法において、蒸着プロセスは基層上に好適な層厚さの金属層を堆積するのに十分な持続時間、継続され、これにより金属層を形成する。別のオプションとして、銀以外の他の金属を使用してもよい。例えば、異なる金属からなる金属層を、その金属を含む好適な標的を用いることによって、同様に蒸着させることができる。
【0120】
反射物品及び組立て
反射物品は、金属組成物と共に、上述の少なくとも1つのブロックコポリマー組成物又はランダムコポリマー組成物を含んで提供される。本明細書で参照される全ての図は説明目的のために限定され、必ずしも縮尺通りに描かれていない。
【0121】
一実施形態による反射物品を
図1に示し、これは数字100によって広範に示す。図示のように、物品100には、第1の表面104及び第2の表面106を含む基層102が含まれる。
【0122】
基層102には、周囲温度で非粘着性(非接着性)の三元ブロックコポリマーが含まれる。このブロックコポリマーは少なくとも2つのエンドブロックポリマー単位を有し、このそれぞれが、メタクリレート、アクリレート、スチレン、又はこれらの組み合わせを含む第1のモノエチレン性不飽和モノマーから誘導される。このブロックコポリマーは1つのミッドブロックポリマー単位を有し、これはメタクリレート、アクリレート、ビニルエステル、又はこれらの組み合わせを含む第2のモノエチレン性不飽和モノマーから誘導される。各エンドブロックはガラス転移温度が少なくとも摂氏50度であり、ミッドブロックはガラス遷移温度が摂氏20度以下である。
【0123】
別の方法として、基層102は、ブロックコポリマー/ホモポリマー混合物を含み得る。例えば、基層102には、A又はBブロックのいずれかに可溶性のホモポリマーと混合したA−B−A三元ブロックコポリマーが含まれ得る。所望により、ホモポリマーはA又はBブロックのいずれかに同一のポリマー単位を有する。1つ以上のホモポリマーのブロックコポリマー組成物への追加は、1つ又は両方のブロックを有利に可塑化又は硬化するのに利用することができる。好ましい実施形態において、このブロックコポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)Aブロック及びポリ(ブチルアクリレート)Bブロックを含み、ポリ(メチルメタクリレート)ホモポリマーと混合される。
【0124】
ポリ(メチルメタクリレート)ホモポリマーをポリ(メチルメタクリレート)−ポリ(ブチルアクリレート)ブロックコポリマーと有利なように混合することにより、基層102の高度を、望ましい用途に合わせて調節することが可能になる。更なる有利な点として、ポリ(メチルメタクリレート)との混合により、全体の組成物の透明度又は加工性を実質的に損うことなく、硬度に対する調節が得られる。好ましくは、ホモポリマー/ブロックコポリマーの混合物は、混合物の全体の重量に対して、総ポリ(メチルメタクリレート)組成物を、少なくとも30パーセント、少なくとも40パーセント、又は少なくとも50パーセント有する。好ましくは、ホモポリマー/ブロックコポリマーの混合物は、混合物の全体の重量に対して、総ポリ(メチルメタクリレート)組成物を、95パーセント以下、90パーセント以下、又は80パーセント以下で有する。
【0125】
特に好適な非粘着性ブロックコポリマーには、ポリ(メチルメタクリレート)−ポリ(n−ブチルアクリレート)−ポリ(メチルメタクリレート)(25:50:25)三元ブロックコポリマーが挙げられる。これらの材料は以前、Kuraray Co.,LTDから商品名LA POLYMERとして入手可能であった。本出願の提出日現在、2010年8月時点で、同社からブランド名KURARITYとして入手可能である。
【0126】
所望により、このブロックコポリマーは好適な紫外線吸収剤と組み合わせて、基層102の安定性を高めることができる。いくつかの実施形態において、このブロックコポリマーは紫外線吸収剤を含む。いくつかの実施形態において、このブロックコポリマーは、ブロックコポリマーと紫外線吸収剤の総重量に対して、0.5重量パーセント〜3.0重量パーセントの範囲の量の紫外線吸収剤を含む。ただし、ブロックコポリマーには、紫外線吸収剤を含める必要はないことに注意されたい。紫外線吸収剤は基層102の表面から分離され、隣接層に対する接着を阻害することがあるため、紫外線吸収剤を含まない組成物を使用することは有利であり得る。
【0127】
更なるオプションとして、ブロックコポリマーは、1つ以上のナノフィラーと組み合わせて、基層102の弾性率を調節することができる。例えば、二酸化ケイ素又は二酸化ジルコニウムなどのナノフィラーをブロックコポリマーに均一に分散させて、物品100の全体的な剛性又は硬度を高めることができる。好ましい実施形態において、ナノフィラーはポリマーマトリックスと親和性になるよう表面修飾される。これにより、材料を張った際に光を散乱する多孔性の形成を回避するのに役立つ。
【0128】
ベース層102は更に、比較的高いT
gを備える第1のポリマー単位と、比較的低いT
gを備える第2ポリマー単位とを有する、ランダムコポリマーをも含み得る。この実施形態において、第1のポリマー単位は、メタクリレート、アクリレート、スチレン、又はそれらの組合せを含む第1のモノエチレン性不飽和モノマーから誘導され、少なくとも摂氏50度のガラス転移温度を伴い、更に第2のポリマー単位は、メタクリレート、アクリレート、ビニルエステル、又はそれらの組み合わせを含む第2のモノエチレン性不飽和モノマーから誘導され、摂氏20度以下のガラス転移温度を伴う。
【0129】
特に好ましいランダムコポリマーにおいて、第1のポリマー単位はメチルメタクリレートであり、第2のポリマー単位はブチルアクリレートである。好ましくは、このランダムコポリマーは、ランダムコポリマーの重量に対して、メチルメタクリレート組成物を、少なくとも50パーセント、少なくとも60パーセント、少なくとも70パーセント、又は少なくとも80パーセント有する。好ましくは、このランダムコポリマーは、ランダムコポリマーの重量に対して、メチルメタクリレート組成物を、最高80パーセント、最高85パーセント、最高90パーセント、又は最高95パーセントで有する。
【0130】
いくつかの実施形態では、ベース層102は、少なくとも0.25マイクロメートル、少なくとも0.4マイクロメートル、少なくとも0.6マイクロメートル、少なくとも0.8マイクロメートル、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも5マイクロメートル、少なくとも10マイクロメートル、少なくとも50マイクロメートル、又は少なくとも60マイクロメートルの厚さを有する。加えて、いくつかの実施形態において、基層102は、200マイクロメートル以下、150マイクロメートル以下、100マイクロメートル以下、50マイクロメートル以下、25マイクロメートル以下、10マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下、又は1マイクロメートル以下の厚さを有する。
【0131】
基層102の第2の表面106にわたって延在するのが、金属層108である。代表的な実施形態において、金属層108は元素状態の銀を含む。ただし、前述のように、アルミニウムなどの他の金属も使用することができる。好ましくは、金属層108と基層102との間の界面は、金属層108が鏡面(鏡のような面)を提供するのに十分な滑らかさを有する。
【0132】
金属層108は、基層102の第2の表面106全体にわたって延在している必要はない。望ましい場合は、蒸着プロセス中に基層102にマスクを使用して、基層102の所定の部分のみに金属層108が適用されるようにすることができる。基層102への金属層108のパターン化蒸着も可能である。
【0133】
所望により、図に示すように、第2の金属層110は第1の金属層108に接触し、これにわたって延在している。代表的な実施形態において、第2の金属層110は元素状態の銅を含む。犠牲陽極として作用する銅層を使用することで、耐腐食性及び屋外耐候性を強化した反射物品を提供することができる。別のアプローチとして、インコネル(鉄−ニッケル合金の一種)などの比較的不活性な合金を使用して、耐腐食性を強化することもできる。
【0134】
反射金属層は好ましくは、望ましい太陽光スペクトル量を反射するのに十分な厚さである。好ましい厚さは、金属層108、110の組成物によって異なり得る。例えば、金属層108、110は好ましくは、銀、アルミニウム、及び金などの金属については少なくとも約75ナノメートル〜約100ナノメートルの厚さであり、銅、ニッケル、及びチタンなどの金属については少なくとも約20ナノメートル、又は少なくとも約30ナノメートルの厚さである。
【0135】
いくつかの実施形態において、金属層108、110の一方又は両方が、少なくとも25ナノメートル、少なくとも50ナノメートル、少なくとも75ナノメートル、少なくとも90ナノメートル、又は少なくとも100ナノメートルの厚さを有する。更に、いくつかの実施形態において、金属層108、110の一方又は両方が、100ナノメートル以下、110ナノメートル以下、125ナノメートル以下、150ナノメートル以下、200ナノメートル以下、300ナノメートル以下、400ナノメートル以下、又は500ナノメートル以下の厚さを有する。
【0136】
前述のように、金属層108、110の一方又は両方が、化学気相蒸着、物理気相蒸着、及び蒸発を含む、当該技術分野において既知の任意の数の方法を用いて蒸着することができる。図には示されていないが、3層以上の金属層を使用してもよい。
【0137】
所望により、図には示されていないが、反射物品100は支持基材(又はバックプレート)に接着して、好適な形状が反射物品100に付与される。物品100は、例えば、好適な接着剤を使用して、基材に接着することができる。いくつかの実施形態において、この接着剤は感圧接着剤(PSA)である。本発明で使用する場合、用語「感圧性接着剤」とは、強力かつ持続性の粘着性、指圧以下での基材への接着性、及び基材から除去可能な十分な結合力を示す接着剤を意味する。代表的な感圧性接着剤には、PCT国際公開特許WO 2009/146227号(Josephら)に記述されているものが挙げられる。
【0138】
好適な基材は概ね、特定の特性を共有している。第1に、基材は、基材の質感が接着剤/金属/ポリマー積層を通って伝わることのないよう、十分に滑らかであるべきである。これは次の理由から有利となる:(1)光学的に正確な鏡を可能にする、(2)金属を腐食させ、又は接着剤を劣化させる可能性のある、反応性化学種の侵入経路を排除することによって、金属の物理的一体性を維持する、(3)反射フィルム−基材積層内の応力密度を制御及び規定する。第2に、基材は好ましくは、腐食を防ぐため、反射鏡積層に対して非反応性である。第3に、基材は好ましくは、接着剤が高い耐久性で接着できる表面を有する。
【0139】
反射フィルムのための代表的な基材と、それに関連するオプション及び利点は、PCT国際公開特許WO04114419号(Schripsema)、同WO03022578号(Johnstonら)、米国特許公開第2010/0186336号(Valenteら)及び同第2009/0101195号(Reynoldsら)、並びに米国特許第7,343,913号(Neidermeyer)に記述されている。
【0140】
更なるオプションとして、基材には、反射物品100及び感圧性接着剤が容易に除去でき、別の基材に移転できるような、剥離面が含まれ得る。例えば、
図1の金属層110の露出面は、感圧性接着剤でコーティングすることができ、この感圧性接着剤は、シリコーンコーティングされた剥離ライナーに一時的に固定され得る。そのような構成は、輸送、保管及び消費者使用のために便利にパッケージ化することができる。
【0141】
図2は、別の実施形態による反射物品200を示す。物品100と同様、物品200は、基層202と、基層202の第2の表面206にわたって延在する金属層208、210とを有する。ただし、物品100とは異なり、物品200には、基層202の第2の表面206と金属層208の上の第1の表面との間に、結合層220が含まれる。いくつかの実施形態において、この結合層220は、酸化アルミニウム、酸化銅、二酸化チタン、二酸化ケイ素、及びこれらの組み合わせなどの金属酸化物を含む。結合層220として、二酸化チタンは、乾燥剥離及び湿潤剥離試験において、驚くほど高い層間剥離抵抗をもたらすことが示された。金属酸化物の結合層の更なるオプション及び利点は、米国特許第5,361,172号(Schisselら)に記述されている。
【0142】
結合層220は、少なくとも0.1ナノメートル、少なくとも0.25ナノメートル、少なくとも0.5ナノメートル、又は少なくとも1ナノメートルの合計厚さを有することが好ましい。更に、結合層220は、2ナノメートル以下、5ナノメートル以下、7ナノメートル以下、又は10ナノメートル以下の合計厚さを有することが好ましい。
【0143】
図3は、更に別の実施形態による反射物品300を示す。物品300は物品200と同様であり、基層302、基層302の第2の表面306に接触してこれにわたって延在している結合層320、及び結合層320の相対する表面にわたって順に延在している308、310が含まれる。ただし物品100、200と異なり、物品300は、基層302の第1の表面304に接触してこれにわたって延在している上層330を有する。好ましくはこの上層330は、例えば、ポリ(メチルメタクリレート)の層などの、高い表面硬度、優れた光透過性と耐候性を備えたポリマー層である。所望により、この上層330は、下にある基層302の上にラミネート又は溶液流延され、又はその逆に作製される。
【0144】
上層330は、特定の用途にすぐに使用できるよう、好適な任意の厚さを有し得る。太陽光反射フィルムについては、耐候性と適切な機械的柔軟性の両方を提供するため、50〜150マイクロメートルの範囲の厚さが好ましい。また、基層102と同様、上層330は1つ以上のナノフィラーと混合して、上層330の特性を調節することができる。
【0145】
上層330の存在により、物品300全体の強度を強化することができる。上層330が構造的支持を提供することにより、基層302は非常に薄くすることができ、上層330とその下の層320、308、310との間の「有機結合層」として作用する。
図3に示される構成において、この基層302は好ましくは、少なくとも0.25マイクロメートル、少なくとも0.5マイクロメートル、少なくとも0.8マイクロメートル、少なくとも1マイクロメートル、少なくとも1.5マイクロメートル、又は少なくとも2マイクロメートルの厚さを有する。好ましくは、この基層302は4マイクロメートル以下、5マイクロメートル以下、又は7マイクロメートル以下の厚さを有する。
【0146】
薄い基層302は、驚くほど強靱な反射フィルムを提供することが見出された。基層302は、環境曝露中の応力を拡散することにより、ポリ(メチルメタクリレート)と金属との間の接着を維持すると見られる。開示されているブロック及びランダムコポリマーの応力拡散特性は、試験されたサンプルにおいて層間剥離を防ぐのに驚くほど効果的であることが見出された。蒸着中の界面での温度は基層302のBブロックのT
gを実質的に上回り、これにより界面でのポリマーの再配置が可能になる可能性があり、(1)積層にわたる温度勾配、(2)蒸着フィルムの未解放応力、及び(3)蒸着中の基層302における劣化反応、によって生じる応力が緩和される可能性がある。
【0147】
物理気相蒸着などの高真空プロセスにおいて、真空紫外線放射(165ナノメートル未満の波長を有する)によって、ポリ(メチルメタクリレート)上層の表面で、鎖切断が引き起こされ得る。この鎖切断は、そのようなプロセスを用いて蒸着された隣接金属層にポリ(メチルメタクリレート)が接着する能力に悪影響を与え得る。基層302は、一般的に金属蒸着の前に非真空プロセスで調製され、ポリ(メチルメタクリレート)表面を有利に保護することができる。基層302は鎖切断の影響を被りにくいため、ポリ(メチルメタクリレート)表面を、真空紫外線放射の損傷性影響から防護することができる。
【0148】
全体に、反射物品300は、高い硬度と耐候性、優れたコーティング性(又は粘着係数)、及び真空紫外線放射に対する安定性を提供することができる。いくつかの実施形態において、紫外線安定剤及び抗酸化剤などの添加剤は上層330に含まれ、このとき基層302は実質的にこれらの添加剤を含まない。これにより、コーティングされる表面に対する紫外線安定剤、抗酸化剤及びその他の添加剤の分離によって生じ得る接着の問題が回避される。いくつかの実施形態において、上層330はポリ(メチルメタクリレート)を含み、ポリ(メチルメタクリレート)と紫外線吸収剤の総重量に対して、0.5重量パーセント〜3.0重量パーセントの範囲の量の紫外線吸収剤を含む。
【0149】
基層302は、温度及び湿度の変動に対する環境曝露中に粘着を増進する更なる利点を提供する。ゴム様のBブロックは、温度及び湿度の変化に伴う積層の膨張の差による応力を拡散することを可能にする。更に、開示されているブロック及びランダムコポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)よりも実質的に透水性が低い。水吸着により、金属と隣接するポリマー層との間の接着接触において化学的又は物理的低下が生じ得る。
【0150】
物品200及び300における他の態様は、物品100について前に述べたものと同様であり、ここでは繰り返さない。
【0151】
所望により、物品100、200、300は、その物品100、200、300がその下にある好適な支持構造で強固に保持されるアセンブリの一部である。例えば、物品100、200、300は、同時係属中かつ共同出願の米国特許仮出願第61/239,265号(Cosgroveら)(2009年9月2日出願)に記述されている数多くの鏡パネルアセンブリの1つに含まれ得る。
【実施例】
【0152】
これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲に限定することを意味するものではない。別段の記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等は全て、重量によるものである。用いた溶媒及びその他の試薬は、別段の記載のない限り、Sigma−Aldrich Chemical Company(Milwaukee,WI)から入手した。
【0153】
検体の調製
本発明の上層に対応する層に使用される材料は、看板材料などに一般的に使用されるタイプの、従来型3.5mil(89マイクロメートル)のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)フィルムで、押出成型の後、2軸伸張によって社内で製造された。このフィルムは、商品名CP−80(Plaskolite,Inc.、Columbus、OH)の樹脂から製造された。この樹脂は、不純物が最小限であり、非常に透明なフィルムをもたらす。このフィルムはまた、約2.5重量%のUV安定剤TINUVINブランド1577(Ciba、BASF Corporationの子会社、Florham Park、NJ)を含んでいた。このフィルムは基材として用いられ、この上に各検体が構築された。
【0154】
表1の樹脂材料それぞれを、固形物20重量%の濃度でトルエンに溶解することにより、コーティング溶液が調製された。それぞれについて、溶媒とポリマーをガラス瓶に入れ、これを電動ローター又はシャーブレードミキサー上で一晩回転させた。透明な溶液(目視検査で確認)が2、3時間以内に達成された。このようにして得られた溶液は安定状態を維持し、数ヶ月にわたって完全に溶解したままであった。
【0155】
【表1】
【0156】
PMMAフィルムは12インチ(30.5センチメートル)四方のクーポン状に切断した。各検体について、本発明の基層に対応する層を、フラットガラスメイヤーロッドコーターを使用して、手作業でクーポンの上にコーティングした。クーポンの上縁を、梱包テープを用いて、コーターのフラットガラスに固定した。20〜40mLのコーティング溶液(固形物20重量パーセント)を上縁近くに配置し、メイヤーロッドを検体上に通過させて、基材上にコーティング溶液が均一に広がるようにした。No.4メイヤーロッドを使用して、湿潤コーティング厚さ0.4mil(10マイクロメートル)以下にコーティングした。コーティングされたPMMA基材を次に、溶媒対応乾燥炉(空気循環付き)中で、70℃で少なくとも30分間乾燥させ、コーティングから溶媒を完全に除去した。各コーティングは、乾燥厚さ約2マイクロメートルであった。各検体について、干渉色又はコーティングの不均一がないか検査し、そのような欠陥が見出された場合は却下された。
【0157】
乾燥したコーティング済み検体を次に高真空(低圧)物理気相蒸着(PVD)コーターに入れて蒸着コーティングし、これにより本発明の金属層と、所望による結合層とを追加した。直径12インチ(30.5センチメートル)の検体ホルダー6つがあるPVDコーターの回転ドーム中に、一度に最高6つの検体を搭載した。この検体ホルダーは、ドームの縁近くに配置され、供給点源に向かって45度の角度に設定された。点源は4ポケットの電子ビームるつぼであり、それぞれが直径1.5インチ(3.8センチメートル)であった。検体は、コポリマー基層を蒸着点源に向けて搭載された。この種のPVDコーターに共通であるように、コーティングドームは中心軸を中心に回転し、各ホルダーもそれぞれの中心軸を中心に回転した。このダブル回転により、高温の点源からの金属及び金属酸化物蒸気が確実に均一に蒸着されるようになっている。
【0158】
検体が搭載されたら、コーターを減圧する。最初に機械的粗引きポンプを使用し、次にクライオポンプを使用して、圧力を100万分の1トール(1.3E−4Pa)まで減圧する。この圧力で、検体に結合層を付着する場合、電子ビーム銃をオンにして、4つのるつぼの最初のものに入っているTiO
2ペレットを予熱する。適切なTiO
2蒸気圧が達成されたら、加熱されたるつぼと検体ホルダーとの間のシールドを除去し、回転する検体にTiO
2蒸気を蒸着させる。検体表面に、5オングストローム/秒の速度で、厚さ5nmのTiO
2フィルムが蒸着した。蒸着速度及び厚さは、INFICONブランドの結晶速度/厚さ監視センサー・コントローラー(Inficon、East Syracuse、NY)を使用して測定された。
【0159】
厚さ5nmのTiO
2が蒸着された後、厚さ監視システムによってシールドが自動的に挿入され、検体に到達する蒸気が完全に停止された。真空を解除することなく、純度99.999%の銀線切片が入った第2のるつぼが所定位置に移動された。TiO
2蒸着と同じ手順を繰り返し、TiO
2層の上に、厚さ90nmの銀層が蒸着された。次に銅線が入った第3のるつぼが所定位置に移動され、銀層の上に厚さ30nmの銅層が蒸着された。最後に、コーターに乾燥窒素をゆっくりと逆流させ、検体を注意深く取り出した。
【0160】
結合層を蒸着しない検体は、最初のTiO
2蒸着を省略し、同様にして調製された。
【0161】
乾燥接着試験
いくつかの検体について乾燥接着テープ試験が実施された。検体は、上記表1に示されている5つの基層ポリマーそれぞれを用いて調製された。どの検体にも結合層は含まれていなかった。幅19ミリメートルのSCOTCH MAGICブランドテープ(カタログNo.810、3M、St.Paul、MN)を、次のように試験に使用した。長さ6インチ(15センチメートル)のテープ片を、検体の銅表面にしっかりと接着した。気泡はハンドローラーで除去した。約5分後、手でテープを剥がした。角度は120〜170度の間、速度は約2ft/分(60センチメートル/分)であった。金属の剥がれを、合計表面積に対するパーセントとして測定した。5つの基層ポリマーで作製された各検体について、金属の剥がれは0%であった。
【0162】
実施例1〜16:湿潤接着剥離試験
検体は、表1に記載されている5つの基層ポリマーのうち4つを使用して、上記の通り調製された。各基層ポリマーについて、TiO
2結合層を含むものと含まないものの両方が調製された。各タイプについて同一に調製された2つの検体が、下記の記述の通り、湿潤接着剥離試験を用いて試験された。
【0163】
各検体から、幅3/4インチ(1.9センチメートル)、長さが少なくとも6インチ(15センチメートル)の試験片を切り出した。各試験片は、厚さ1mil(25.4マイクロメートル)の感圧性接着剤適用を用いて、アルミニウムプレート上に、銅面をプレートに向けてラミネートされた。接着剤の選択は重要ではないが、これらの実施例において使用された接着剤はRD1263(3M、St.Paul、MN)であった。接着剤を最初に、PET剥離ライナー上にコーティングした。接着剤を載せたライナーを、次に、ハンドローラー又は実験室用ラミネーターを使用して、試験検体に貼り付けた。次に剥離ライナーを剥がし、この構成体をアルミニウムプレート上にラミネートした。ラミネートされた試験片はそれぞれ、2枚のナイフ刃を1/2インチ(1.3センチメートル)離して設置された器具を用いて、長さ寸法の中央にあらかじめ切れ目を入れた。試験片を載せたアルミニウムプレートそれぞれを、室温の脱イオン水のタンクに浸漬し、水分が試験片に浸透し、試験片内のいくつかの界面を潜在的に弱めるようにした。
【0164】
24時間後、各プレートを水浴から取り出し、吸収性ワイプで表面を乾かした。鋭い刃又はユーティリティナイフを使用して、試験片の一方の端で、ポリマー層を、それに接触している金属又は金属酸化物から引きはがし、剥離の開始とした。アルミニウムプレートを、INSTRONブランドの剥離試験機(Instron、Norwood、MA)の可動ステージに水平に取り付けた。鋭い刃又はユーティリティナイフで形成されたポリマー端の遊離部を、クロスヘッドのジョー部に取り付け、アルミニウムプレートに対して90度の角度で、速度6ft/分(1.8m/分)で引っ張った。ステージは、90度の剥離角度を維持するよう、クロスヘッドの動きと共に水平に移動した。剥離の初期段階では、刃の切れ目の結果としてすでに最も弱くなっている界面を除き、破損した界面は、最も弱い界面へと「ジャンプ」した。剥離強度は、剥離中にINSTRONブランドロードセルによって検出された荷重の、最大荷重、最小荷重、平均荷重、及び標準偏差について記録され、剥離の初期部分は無視された。この部分では、安定な剥離モードが確立され、荷重が大きく異なることがあるためである。剥離後に試験片を調べ、どの界面が破損したかを判定した。結果を表2に示す。
【0165】
【表2】
【0166】
実施例17〜64:屋外曝露後の湿潤接着剥離試験
検体は、表1に記載されている5つの基層ポリマーのうち4つを使用して、上記の通り調製された。各基層ポリマーについて、TiO
2結合層を含むものと含まないものの両方が調製された。8つの検体タイプのそれぞれについて、幅3/4インチ(1.9センチメートル)、長さが少なくとも6インチ(15センチメートル)の試験片を6枚切り出した。各試験片は、前の実施例に述べたように、厚さ1mil(25.4マイクロメートル)のRD1263(3M、St.Paul、MN)接着剤適用を用いて、アルミニウムプレート上に、銅面をプレートに向けてラミネートされた。ラミネートされた試験片はそれぞれ、2枚のナイフ刃を1/2インチ(1.3センチメートル)離して設置された器具を用いて、長さ寸法の中央にあらかじめ切れ目を入れた。
【0167】
各検体タイプについて、6枚のラミネート済み試験片のうち2枚を別にしておき、4枚を建物屋上の曝露デッキ上に取り付けた。曝露デッキは南に向けて設置され、太陽光曝露を最大にする角度にされた。各検体タイプについて、エッジ保護のない状態で太陽光及び変化する屋外湿度に曝露したときの挙動を評価するため、4枚の試験片のうち2枚は曝露デッキに16日間置かれてから回収された。残る2枚は、28日間曝露デッキに置かれてから回収された。
【0168】
各タイプについて、同条件で調製された2枚の検体が、実施例1〜16で前に述べたように、湿潤接着剥離試験を用いて試験された。結果を表3に示す。「破損モード」と記された欄は、28日間の曝露後に所与の界面で破損が生じた場合の、試験片全体に対するパーセンテージを示す。「P」はポリマーと金属又は金属酸化物との間の界面に対応し、「M」は金属層と接着層との間の界面に対応し、「A」は接着層とアルミニウムプレート層との間の界面に対応する。よって、最も望ましい結果はP=0かつM+A=100であり、「M」と「A」との間の可能な配分の中での優先性はない。
【0169】
【表3-1】
【0170】
【表3-2】
【0171】
【表3-3】
【0172】
実施例65〜69:ポリマー混合物
場合によっては、基層に使用されるポリマーを改変することによって、本発明の反射物品の特定の特性(硬度、ウェブ取扱い、その他)をカスタマイズすることが望ましい。表1に示すポリマーにPMMAホモポリマーを混合することによって、これを行うことが望ましい可能性がある。そのような混合を行う際の懸念は2つあり、1つはポリマー混合物基層の光学的透過率(ヘイズがないこと)、もう1つは剥離接着であり得る。
【0173】
実施例65及び67〜69のそれぞれについて、下記の通りフィルムが調製された。2.5重量%のTINUVINブランド1577を含むPMMA樹脂CP−40(Plaskolite,Inc.、Columbus、OH)を、単独でトルエンに溶解し、あるいは表1に示すブロックコポリマーの1つと共に混合して溶解した。混合物の重量比は、PMMA:ブロックコポリマーが90:10であった。各溶液を次に、前の実施例の記述に従いメイヤーロッドを用いて剥離ライナー上にコーティングし、溶媒対応炉中で70℃で30分間乾燥させた。コーティングされたフィルムを剥離ライナーから剥がし、試験を行った。
【0174】
実施例66は、LAT 735Lフィルム(Kuraray Co.,LTD、日本、東京)が使用された。これは表1のものに同様のPMMAブロックコポリマーから製造されたフィルムと考えられる。厚さ0.1ミリメートルと0.2ミリメートル両方の検体が試験された。
【0175】
5種のフィルム全てについて、LAMBDAブランド900 UV/VIS/NIRスペクトロメーター(PerkinElmer、Waltham、MA)を使用して、光学的透過率測定が実施された。全てのフィルムが500〜1600nmの間で相対的に平坦な透過率を示し、1200nm近辺と1400nm近辺の領域で、2つの小さな(1%未満)低下が見られた。乾燥剥離接着試験が、前述の通り実施された。乾燥剥離接着試験については、前の実施例の記述の通り、約5nmのTiO
2、100nmの銀、及び30nmの銅で、フィルムが蒸着コーティングされた。接着テープによって最初に覆われていた領域で銀が除去された領域のパーセントが記録された。銀除去が0%の場合は優れた乾燥接着を示し、銀除去が100%の場合は乾燥接着が悪いことを示す。結果を表4に示す。
【0176】
【表4】
【0177】
実施例70〜73:連続プロセス
本発明の物品をロール・ツー・ロールプロセス、又は「連続」プロセス技法によって製造する能力を示すため、実施例に使用するものとして、LA 4825基層ポリマーが選択された。トルエン中それぞれ4重量%、12重量%、及び24重量%で、3つのコーティング溶液が調製された(それぞれ実施例70、71、及び72)。高剪断ミキサーを使用して、工業規模で溶液を調製した。前の実施例で使用したものと同じPMMAフィルムを上層材料に使用し、幅12インチ(30.5センチメートル)のストックロールの形状で供給した。従来型のグラビアコーターが採用された。このコーターは、自動ウェブ取扱い、速度制御電子装置、及びこのコーティングをライン上で乾燥させることができる高流量空気循環炉が備わっている。ラインは、オーブン中の滞留時間が約2〜3分になるような速度で稼働させた。炉は70℃〜80℃の温度に設定した。乾燥コーティング厚さは、グラビアロールの選択と、コーティング溶液中のポリマー固形分の濃度によって決定された。グラビアロールは、調製した3つの溶液が、厚さ約1/3マイクロメートル、1マイクロメートル、及び2マイクロメートル(それぞれ実施例70、71、及び72)乾燥コーティングを得られるように選択された。
【0178】
コーティングのヘイズが増大したかどうかを判定するため、3つのコーティング済みフィルム全てについて透過率測定が実施された。コーティング厚さ1/3マイクロメートルを有する実施例70のフィルムは、近UV−VIS波長で干渉縞の証拠を呈した。実施例71及び72のフィルムはそれぞれ厚さ1マイクロメートルと2マイクロメートルの基層で製造され、改変なしのPMMAに比べ、ヘイズ又は干渉を示さなかった。
【0179】
ブロックコポリマーがコーティングされたPMMAのロールに、14インチ(35.6センチメートル)の3チャンバ式ロール・ツー・ロール蒸気コーターを使用して、TiO
2、銀、及び銅の層を蒸着した。ロールは、装置の第1のチャンバ内のアンワインド/リワインドステーションに搭載し、装置内を通して、第3のチャンバのアンワインド/リワインドステーションに載せ、装置全体を密封した。機械的ポンプ積層を用いてコーティングチャンバを1ミリトール(0.13Pa)未満に減圧し、次にクライオポンプに至るゲートバルブを開いて、100万分の1トール(1.3E−4Pa)の真空レベルを達成した。第1のチャンバには、平面DCマグネトロンスパッタリング源(Advance Energy Industries,Inc.、Fort Collins、CO)を搭載した。第2のチャンバには、2つの電子ビーム銃が備えられ、それぞれに4つのポケットがあり、ウェブを前後に通過させることで、最高4種類の異なる材料を蒸着させることが可能であった。
【0180】
ウェブは約5ft/分(1.5m/分)で移送され、第1のチャンバの反応性スパッタリング環境中でTiO
2の蒸着を行った。酸素及びアルゴンを導入して圧力を1ミリトール(0.13Pa)まで上げ、カソード上の金属チタンを完全に酸化させてTiO
2にした。同じ通過で、電子ビームシャッターを開き、TiO
2コーティングされたフィルムを、第2のチャンバの電子ビームポケットの1つに入っている銀線片からの銀蒸気に曝露させた。銀蒸着の速度及び厚さは、DELCOMブランドのオンライン伝導度測定デバイス(Delcom Instruments,Inc.、Prescott、WI)を用いて監視した。太陽スペクトルを適切に反射するために十分な銀の厚さと整合するように、あらかじめ、5mhoの値が定められていた。TiO
2厚さは、事前の校正から得た式に、電力、圧力及びウェブ速度を入力することによって判定された。厚さは、TEM及び干渉測定を用いて測定された。銀が蒸着されるに伴って、ウェブは水冷(約5℃)ドラムに接触することで冷却され、電子ビーム及びスパッタリング蒸着の熱負荷を最小限にした。
【0181】
ロール全体が処理された後、TiO
2スパッタリングを停止し、電子ビームシャッターを閉じた。銅線片が入った新たなポケットを定位置に動かした。所定の電力設定に達したら、電子ビームシャッターを開き、ウェブを第3のチャンバから第1のチャンバに移動させて、第2のチャンバで、銀の上に銅を蒸着させた。コンダクタンス監視を使用して、銅の厚さを測定した。厚さ20nmの銅に整合する値として2mhoがあらかじめ決定されていた。よって、この第2の通過でウェブの速度を調節して、銀層蒸着中に達成された5mhoに加え、2mhoの伝導度加算が達成されるようにした。銅蒸着の後、電子ビームポケットを数分間冷ませるようにした。次にコーターに乾燥窒素を充填した。最後に装置を開き、蒸着コーティングされたロールをアンワインド/リワインドステーションから取り出した。
【0182】
3つ全てのコーティング済みフィルムについて、反射率測定が実施された。厚さ1マイクロメートル及び2マイクロメートルの基層を備えて作製された実施例71及び72は、可視光波長範囲全体にわたって優れた反射率を呈した。厚さが1/3マイクロメートルの基層を備えて作製された実施例70は、長波長では他の2つのフィルムの反射率に匹敵したが、短波長側では低い反射率を呈し、約1100nmでの約97%から、約550nmでは約90%に低下した。
【0183】
実施例73では、PMMAベースの対照検体を、金属層蒸着の前にブロックコポリマー基層でPMMA上層フィルムをコーティングしない点を除き、全く同様に調製した。
【0184】
前の実施例の記述に従って、これらの4つのフィルムタイプの複数の検体について、湿潤剥離強度を測定した。ブロックコポリマーの基層が欠如している実施例73のPMMAベースの対照検体は約0.4〜0.5lbf(1.78〜2.22N)の湿潤剥離力を呈した。ブロックコポリマーの基層を有する実施例70〜72の3つのフィルムは全て、1.4〜1.5lbf(6.23〜6.67N)の湿潤剥離力を呈した。更に、破損パターンが顕著に異なっていた。実施例73のPMMAベースの対照検体は、金属層がPMMAから完全に剥離したが、ブロックコポリマー基層を有する実施例70〜72のフィルムは、剥離試験において、接着剤とアルミニウムプレートとの間の界面で破損した。
【0185】
これらの4つのフィルムは次に、前の実施例の記述と同様の方法で、屋外曝露試験を行った。各フィルムのいくつかの検体について、7日間の屋外曝露後に湿潤剥離接着試験を行った。各フィルムのいくつかの検体について、28日間の屋外曝露後に湿潤剥離接着試験を行った。ここでも、ブロックコポリマーの基層が欠如している実施例73のPMMAベースの検体は全て、金属層とPMMA層との間の界面で破損したが、ブロックコポリマーの基層を有する実施例70〜72の検体は全て、試験中に、PSA層と銅層との間の界面で破損した。結果を、表5に要約する。
【0186】
【表5】
【0187】
実施例74〜76:脱イオン水中の長期的耐腐食性
長期的な湿潤環境に対する具体的な構成の耐性を測定するため、実験が実施された。実施例74は実施例71に類似しているが、ただしフィルムは、12インチ×12インチ(30.5cm×30.5cm)のアルミニウムパネルにアクリルPSAでラミネートされた。実施例75は実施例74に類似しているが、ただしTiO
2層の厚さを5nmではなく40nmとした。実施例76は実施例74に類似であるが、ただし酸化物層をTiO
2ではなくZrO
2とした。これらの実施例を、室温で1000リットルの容器内に入った脱イオン水に浸漬した。このデータは、TiO
2は、例えば、ZrO
2よりも高い耐腐食性をもたらすことを示している。しかしながら、酸化物層が厚くなっても、必ずしも高い耐腐食性をもたらさない。結果を、表6に要約する。
【0188】
【表6】
【0189】
実施例77〜82:様々な基層厚さでの塩水噴霧試験
塩水噴霧に対する具体的な構成の耐性を測定するため、実験が実施された。実施例77〜82は実施例71と類似しているが、ただし基層の厚さを変えて、耐腐食性に対する影響があるかを調べた。これらの実施例について、1000リットル塩水噴霧チャンバ内で550時間の塩水噴霧試験を行った。温度及びpHのチャンバ設定、並びに凝縮霧のNaCl濃度は、ASTM B117に準拠した。結果を表7に要約する。
【0190】
【表7】
【0191】
上述の特許及び特許出願の全ては、本明細書において本開示に明示的に援用される。上記の発明は、明瞭さ及び理解を目的として図及び実施例によってある程度詳細に述べたものである。しかしながら、様々な代替例、改変例、及び均等物の使用が可能であり、上記の説明は発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。また、本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物によって定義されるものである。