特許第5968369号(P5968369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノーブルズ メディカル テクノロジーズ、インコーポレイテッドの特許一覧

特許5968369解剖学的弁を縫合するための縫合デバイス及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968369
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】解剖学的弁を縫合するための縫合デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/04 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
   A61B17/04
【請求項の数】14
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-134876(P2014-134876)
(22)【出願日】2014年6月30日
(62)【分割の表示】特願2011-508705(P2011-508705)の分割
【原出願日】2009年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-236995(P2014-236995A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2014年6月30日
(31)【優先権主張番号】61/052,146
(32)【優先日】2008年5月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510296937
【氏名又は名称】ノーブルズ メディカル テクノロジーズ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルー、ジョン、アール.
(72)【発明者】
【氏名】ブロッシュ、ベンジャミン、ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ノーブルズ、アンソニー、エイ.
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−534419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的弁を縫合するためのデバイスにおいて、前記デバイスは、
近位端部及び遠位端部を有し、心臓弁を通って送達されるように構成された細長い本体と;
収縮位置と前進位置との間を移動するように動作可能に前記細長い本体に連結された第1の縫合糸キャッチ機構と;
収縮位置と拡張位置との間を移動するように前記細長い本体の遠位端部付近において前記細長い本体に取り付けられた第1のアームであって、前記第1のアームが、第1の縫合糸部分を解放可能に保持するように構成された第1の縫合糸クラスプを含み、前記第1の縫合糸キャッチ機構が前記収縮位置から前記前進位置へ移動させられて前記収縮位置へさらに戻されたときに、前記第1の縫合糸キャッチ機構が前記第1の縫合糸クラスプに保持されている前記第1の縫合糸部分を取ってくるように、前記第1の縫合糸クラスプが前記第1のアーム上に位置付けられている、第1のアームと;
収縮位置と前進位置との間を移動するように動作可能に前記細長い本体に連結された第2の縫合糸キャッチ機構と;
収縮位置と拡張位置との間を移動するように前記細長い本体の遠位端部付近において前記細長い本体に取り付けられた第2のアームであって、前記第2のアームが、第2の縫合糸部分を解放可能に保持するように構成された第2の縫合糸クラスプを含み、前記第2の縫合糸キャッチ機構が前記収縮位置から前記前進位置へ移動させられて前記収縮位置へさらに戻されたときに、前記第2の縫合糸キャッチ機構が前記第2の縫合糸クラスプに保持されている前記第2の縫合糸部分を取ってくるように、前記第2の縫合糸クラスプが前記第2のアーム上に位置付けられている、第2のアームと
を有し、
前記第1の縫合糸キャッチ機構及び前記第2の縫合糸キャッチ機構は、それぞれの収縮位置からそれぞれの拡張位置へ前記解剖学的弁の組織を通して順番に移動するように構成されている、解剖学的弁を縫合するためのデバイス。
【請求項2】
前記第1のアームが前記拡張位置にあるとき、前記第1の縫合糸キャッチ機構が、収縮位置から前進位置へ移動して第1の弁尖の第1の部分を貫通し、前記第1の縫合糸クラスプに保持された前記第1の縫合糸部分と係合するように構成されており、前記第1の縫合糸キャッチ機構が収縮位置へ戻るとき、前記第1の縫合糸部分と係合した前記第1の縫合糸キャッチ機構が、前記第1の弁尖の前記第1の部分を通って収縮されるように構成されており、
前記第2のアームが前記拡張位置にあるとき、前記第2の縫合糸キャッチ機構が、収縮位置から前進位置へ移動して第2の弁尖の第2の部分を貫通し、前記第2の縫合糸クラスプに保持された前記第2の縫合糸部分と係合するように構成されており、前記第2の縫合糸キャッチ機構が収縮位置へ戻るとき、前記第2の縫合糸部分と係合した前記第2の縫合糸キャッチ機構が、前記第2の弁尖の前記第2の部分を通って収縮されるように構成されている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項3】
前記細長い本体の前記遠位端部が、心尖の穴を通して前記心臓内に入るサイズ及び構成となっている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項4】
前記細長い本体の前記遠位端部が、僧帽弁を通して送達されるサイズ及び構成となっている、請求項3に記載されたデバイス。
【請求項5】
前記細長い本体の前記遠位端部が、大動脈弁を通して送達されるサイズ及び構成となっている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項6】
前記細長い本体の前記遠位端部が、三尖弁を通して送達されるサイズ及び構成となっている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項7】
前記細長い本体の前記遠位端部が、肺動脈弁を通して送達されるサイズ及び構成となっている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項8】
前記細長い本体の前記遠位端部が、二尖弁を通して送達されるサイズ及び構成となっている、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項9】
前記第1のアーム及び第2のアームが、それらの拡張位置において前記細長い本体の前記遠位端部と鋭角を形成する、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項10】
前記第1のアーム及び第2のアームが、それらの拡張位置において前記細長い本体の前記近位端部と鋭角を形成する、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項11】
前記第1の縫合糸キャッチ機構及び前記第2の縫合糸キャッチ機構が、それぞれの収縮位置からそれぞれの拡張位置へ移動するときに、概して遠位に移動する、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項12】
前記第1の縫合糸部分及び前記第2の縫合糸部分は、単一の縫合糸の一部である、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、前記第1のアーム、前記第2のアーム、前記第1の縫合糸キャッチ機構、及び前記第2の縫合糸キャッチ機構を作動させるように構成されているハンドルをさらに含む、請求項1に記載されたデバイス。
【請求項14】
前記第1のアーム及び前記第2のアームが、収縮位置と前進位置との間を移動するときに、前記細長い本体に対して枢動する、請求項1に記載されたデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「SUTURING DEVICE AND METHOD OF SUTURING AN ANATOMIC VALVE」と題され、2008年5月9日に出願された米国仮特許出願第61/052,146号の利益を米国特許法第119条(e)(35U.S.C.§119(e))の下で主張するものである。その全内容は、参照により本明細書に援用され、本明細書の一部をなす。
【0002】
本発明の実施例は縫合デバイス及び縫合方法に関するものである。本発明の一実施例は、例えば、僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、又は肺動脈弁などの心臓弁といった解剖学的弁(anatomic valve)を縫合するための縫合デバイス及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
医療従事者は、人体の様々の箇所の切断部、穿刺部、及び切開部などの種々の開口部を閉じるために縫合を頻繁に使用する。一般に、縫合は、使用することが便利であり、生物組織の開口部を閉じた状態に保持するために適切に機能する。それによって、血液凝固及び治癒を助け、傷跡が残ることを防止する。
【0004】
開口部を閉じるのに従来の縫合及び縫合方法を使用することができない状況がある。さらに、従来の縫合及び縫合方法を使用するには、患者に、感染、回復の遅れ、痛みの増大、及び他の合併症のリスクを負わせる侵襲的な処置を行う必要がある状況もある。
【0005】
心臓弁のなかには弱っていたり伸びていたりするものがあり、又は、先天性欠陥などの別の構造的欠陥を有しているものもある。それによって、心臓弁を適切に閉じることができず、通常の流れ方向とは逆の方向に血液が流れてしまうことがある。この状態は、通常の方向への血流量を減少させる可能性がある。この状態は、逆流、機能不全(incompetence)又は機能不全症(insufficiency)と呼ばれる。逆流が起こると、これらの弁を通って血液が逆に流れるのを補償するために心臓がより過酷に機能しなければならない。これは、心機能を低下させる心臓肥大を引き起こす可能性がある。三尖弁及び肺動脈弁もこの状態を引き起こす可能性があるが、僧帽弁及び大動脈弁は、より頻繁にこの状態を起こす。
【0006】
適切に閉じない弁を修復するために多数の処置が開発されている。これらの処置のなかにはAlfieri法がある。Alfieri法は、エッジ・トゥ・エッジ・リペア(edge−to−edge repair)と呼ばれることもある。これは、弁尖(leaflet)の縁部を縫合して、それらの弁尖を共に引っ張り、より近づけることが含まれる。別の手法では、腱索を取り替えたり短くしたりする。開口部を有する弁尖にパッチを適用する場合もある。一部の例では、治療される弁尖の一区間を除去して弁尖を変形させ、弁尖を囲んでいる部分を縫合して閉じる。一部の弁は、機能不全弁の外側の周りにリングを取り付けることによって治療される。他の一部の弁は、生物学的又は機械的代替物に取り替えられる場合もある。これらの処置は非常に侵襲的な処置によって実施されることが多く、患者の胸を開いたり、患者の心臓を停止させたり、血液に人工心肺装置を経由させたりすることが必要になる場合がある。このような処置に必要な開口部のサイズを縮小させるために、ロボット支援の処置も採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7,090,686号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0269786号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0010829(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書では、生物組織を縫合するための縫合デバイス及び縫合方法の実施例を開示する。
この縫合デバイス及びそれらの使用方法は、傷、及び自然にできた孔又は通路、又は手術によってできた孔又は通路の治療(例えば、閉じる)などの種々の処置に対して有用であり得る。例えば、縫合デバイスは、心臓弁などの解剖学的弁の治療に使用され得る。心臓弁には、弱っていたり伸びていたりする可能性のある心臓弁や、適切に閉じることができなくなるような先天性欠陥などの他の構造的欠陥を含む心臓弁が含まれる。一実施例においては、例えば、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、及び大動脈弁などの弁を治療又は修復するために、1つ又は複数の縫合デバイスが使用され得る。一実施例においては、Alfieri法(エッジ・トゥ・エッジ・リペア)、腱索の取り替え、腱索の短縮、パッチの適用、弁尖の形状変更、並びに、例えばリングや生物学的又は機械的代替弁などの人工器官の取り付けなどの処置を実施するために、1つ又は複数の縫合デバイスが使用され得る。
【0009】
一実施例においては、縫合デバイスは、他の種々の組織開口部、ルーメン、中腔器官、或いは、自然にできた又は手術によりできた身体内の通路を閉じたり縮小させたりするために使用され得る。一実施例においては、縫合デバイスは、人工器官、合成材料、又は身体内の移植可能なデバイスを縫合するために使用され得る。例えば、このデバイスは、身体内の綿撒糸を縫合するのに使用され得る。
【0010】
一実施例においては、解剖学的弁を縫合するためのデバイスは、細長い本体、針、アーム、及び、細長い本体とアームとの間に位置付けられる凹部を含む。針は、収縮位置と前進位置との間を移動するように動作可能に細長い本体に連結され得る。アームは、収縮位置と拡張位置との間を移動するように細長い本体の遠位端部付近において細長い本体に取り付けられ得る。アームは、縫合糸部分を解放可能に保持するように構成された縫合糸マウント(suture mount)を含むことができる。針が収縮位置から前進位置へ移動させられて収縮位置へさらに戻されたときに、針が縫合糸マウントに保持されている縫合糸部分を取ってくるように、縫合糸マウントがアーム上に位置付けられている。凹部は、細長い本体とアームとの間において、弁の弁尖を損傷させることなく弁尖を受け入れるようなサイズ及び形状である。
【0011】
一実施例においては、解剖学的弁が縫合され得る。細長い本体を含む縫合デバイスは、少なくとも部分的に解剖学的弁内に位置付けられ得る。第1の縫合糸部分を解放可能に保持した状態で、第1のアームが細長い本体から展開され得る。第1のアームは、解剖学的弁の第1の弁尖の周りにおいて少なくとも部分的に閉じられ得る。第1のアームは第1の弁尖の周りにおいて少なくとも部分的に閉じられ、第1の針が、第1の弁尖を通って前進させられ、第1の縫合糸部分に係合され得る。第1の縫合糸部分は、第1の弁尖を通して取り出され得る。第2の縫合糸部分は、第2の弁尖を貫通し得る。第1及び第2の縫合糸部分が、一体に固定され得る。
【0012】
一実施例においては、心臓弁が縫合され得る。第1の細長い部材が心臓弁まで前進させられ得る。第1のアームが、細長い部材から第1の心臓弁部分の周りに延在され得る。第1のアームは、第1の縫合糸部分を解放可能に保持した状態である。第1のアームから第1の縫合糸部分を取ってくるために、第1の針が、細長い部材から第1の心臓弁部分を通って前進させられ得る。第2のアームが、第2の縫合糸部分を解放可能に保持した状態で第2の心臓弁部分の周りに延在され得る。第2のアームから第2の縫合糸部分を取ってくるために、第2の針は、第2の心臓弁部分を通って前進させられ得る。第1及び第2の縫合糸部分が互いに固定され得る。
【0013】
一実施例においては、単一デバイスを使用して解剖学的弁が縫合され得る。別の実施例においては、複数のデバイスを使用して解剖学的弁が縫合され得る。複数のデバイスを使用する実施例においては、任意の2つのデバイスが同じアクセス又は異なるアクセスを使用して治療部位へ導入され得る。
【0014】
また、本明細書は、下記の発明も開示している。
【0015】
解剖学的弁を縫合するためのデバイスにおいて、前記デバイスは、
細長い本体と;
収縮位置と前進位置との間を移動するように動作可能に前記細長い本体に連結された針と;
収縮位置と拡張位置との間を移動するように前記細長い本体の遠位端部付近において前記細長い本体に取り付けられたアームであって、前記アームが、縫合糸部分を解放可能に保持するように構成された縫合糸マウントを含み、前記針が前記収縮位置から前記前進位置へ移動させられて前記収縮位置へさらに戻されたときに、前記針が前記縫合糸マウントに保持されている前記縫合糸部分を取ってくるように、前記縫合糸マウントが前記アーム上に位置付けられている、アームと;
前記細長い本体と前記アームとの間に位置づけられた凹部であって、前記凹部は、前記細長い本体と前記アームとの間において、弁の弁尖を損傷させることなく前記弁尖を受け入れるようなサイズ及び形状である、凹部と
を有する、解剖学的弁を縫合するためのデバイス。
【0016】
前記アームが少なくとも部分的に収縮されているときに、前記凹部は、前記細長い本体と前記アームとの間において、前記弁尖を損傷させることなく前記弁尖を保持するようなサイズ及び形状である、デバイス。
【0017】
前記アームが前記収縮位置にあるときに、前記凹部は、前記細長い本体と前記アームとの間において、前記弁尖を損傷させることなく前記弁尖を受け入れるようなサイズ及び形状である、デバイス。
【0018】
前記アームが前記収縮位置にあるときに、前記凹部は、前記細長い本体と前記アームとの間において、前記弁尖を損傷させることなく前記弁尖を保持するようなサイズ及び形状である、デバイス。
【0019】
前記アームが部分的に収縮位置にある間に、前記針が前記収縮位置から前記前進位置へ移動させられて前記収縮位置へさらに戻されたときに、前記針が前記縫合糸マウントに保持されている前記縫合糸部分を取ってくるように、前記縫合糸マウントが前記アーム上に位置づけられている、デバイス。
【0020】
前記アームが完全に収縮された位置にある間に、前記針が前記収縮位置から前記前進位置へ移動させられて前記収縮位置へさらに戻されたときに、前記針が前記縫合糸マウントに保持されている前記縫合糸部分を取ってくるように、前記縫合糸マウントが前記アーム上に位置づけられている、デバイス。
【0021】
前記アームが少なくとも部分的に閉じられており且つ前記針が前記前進位置にあるとき、前記針の組織貫通構造体が前記アーム内に受け入れられる、デバイス。
【0022】
前記アームが前記収縮位置にあり且つ前記針が前記前進位置にあるとき、前記針の前記組織貫通構造体が前記アーム内に受け入れられる、デバイス。
【0023】
少なくとも第2のアーム及び少なくとも第2の針をさらに含む、デバイス。
【0024】
前記針が同時に動くように設置されている、デバイス。
【0025】
前記アームが収縮位置と拡張位置との間を同時に移動可能である、デバイス。
【0026】
解剖学的弁を縫合する方法において、前記方法は、
細長い本体を含む縫合デバイスを、少なくとも部分的に解剖学的弁内に位置決めするステップと;
第1のアームを前記細長い本体から展開するステップであって、前記第1のアームは第1の縫合糸部分を解放可能に保持する、展開するステップと;
前記解剖学的弁の第1の弁尖の周りにおいて前記第1のアームを少なくとも部分的に閉じるステップと;
前記第1のアームが前記第1の弁尖の周りにおいて少なくとも部分的に閉じられている間に、前記第1の縫合糸部分に係合させるために前記第1の弁尖を通して第1の針を前進させるステップと;
前記第1の縫合糸部分を前記第1の弁尖を通して取り出すステップと;
第2の弁尖を貫通させて第2の縫合糸部分を通すステップと;
前記第1及び第2の縫合糸部分を一体に固定するステップと
を含む、解剖学的弁を縫合する方法。
【0027】
前記第1のアームが少なくとも部分的に閉じられているとき、前記第1の弁尖を、前記第1のアームと前記細長い本体との間において損傷することなく捕捉する、方法。
【0028】
前記第1のアームが完全に閉じられているとき、前記第1の弁尖を、前記第1のアームと前記細長い本体との間において損傷することなく捕捉する、方法。
【0029】
前記第1のアームが少なくとも部分的に閉じられており且つ前記第1の針が前記第1の弁尖を通るように位置付けられているときに、前記第1の針の組織貫通構造体を前記第1のアーム内に受け入れるステップをさらに含む、方法。
【0030】
前記第1のアームが完全に閉じられており且つ前記第1の針が前記第1の弁尖を通るように位置付けられているときに、前記組織貫通構造体を前記第1のアーム内に受け入れる、方法。
【0031】
前記第2の弁尖を貫通させて前記第2の縫合糸部分を通すステップが:
第2のアームを前記細長い本体から展開するステップであって、前記第2のアームは前記第2の縫合糸部分を解放可能に保持する、展開するステップと;
前記第2の弁尖の周りにおいて前記第2のアームを少なくとも部分的に閉じるステップと;
前記第2のアームが前記第2の弁尖の周りにおいて少なくとも部分的に閉じられている間に、前記第2の縫合糸部分に係合させるために前記第2の弁尖を通して第2の針を前進させるステップと;
前記第2の縫合糸部分を前記第2の弁尖を通して取り出すステップと
を含む、方法。
【0032】
前記第2のアームが追加の縫合デバイスから展開される、方法。
【0033】
前記第1のアーム及び前記第2のアームが同時に展開される、方法。
【0034】
前記第1の針及び前記第2の針が同時に前進させられる、方法。
【0035】
心臓弁の縫合方法において、前記方法は、
第1の細長い部材を心臓弁まで前進させるステップと;
第1のアームを前記細長い部材から第1の心臓弁部分の周りに延在させるステップであって、前記第1のアームは第1の縫合糸部分を解放可能に保持する、延在させるステップと;
前記第1のアームから第1の縫合糸部分を取り出すために、第1の針を前記細長い部材から第1の心臓弁部分を通して前進させるステップと;
第2のアームを第2の心臓弁部分の周りに延在させるステップであって、前記第2のアームは第2の縫合糸部分を解放可能に保持する、延在させるステップと;
前記第2のアームから前記第2の縫合糸部分を取り出すために、第2の針を第2の心臓弁部分を通して前進させるステップと;
前記第1及び第2の縫合糸部分を固定するステップと
を含む、心臓弁の縫合方法。
【0036】
前記第1の心臓弁部分が第1の弁尖であり、前記第2の心臓弁部分が第2の弁尖である、方法。
【0037】
前記第2のアームが第2の細長い部材から拡張され、前記第2の針が前記第2の細長い部材から前進させられる、方法。
【0038】
前記第1のアームと細長い本体との間において前記第1の心臓弁部分を保持するために前記第1のアームを少なくとも部分的に閉じるステップをさらに含む、方法。
【0039】
本開示は、本発明の複数の実施形態の実施例を記載している。それらのデザイン、図及び説明は、本発明の実施形態の非限定的な実施例についてのものである。本デバイス及び本方法の別の実施例は、本明細書に開示されている特徴を含んでいても含んでいなくてもよい。また、開示されている利点及び利益は、本発明の一部の実施形態のみに適用され得るものであり、本発明を限定するために使用されない。
【0040】
本明細書で開示する上述の特徴及び他の特徴を、特定の実施形態の図面を参照しながら以下で説明する。図示された実施形態は、説明することを意図しており、限定することを意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】心臓の大動脈弁などの、例示の使用環境へのアクセスを提供する方法を示す図である。
図2】心臓の僧帽弁などの、例示の使用環境へのアクセスを提供する方法を示す図である。
図3】縫合糸クラスプ・アームが収縮位置にあり、ケーシングが断面で示された縫合デバイスの一実施例を示す斜視図である。
図4】ケーシングが断面で示された図3の実施例を示し、縫合糸キャッチ機構が部分的に前進位置にあることを示す拡大斜視図である。
図5】縫合糸クラスプ・アームが拡張位置にあり、縫合糸キャッチ機構が部分的に前進位置にある、図3の実施例を示す斜視図である。
図6図5と同様に、図3の実施例を示し、ケーシングがデバイスに取り付けられている、斜視図である。
図7A】縫合糸クラスプ・アームが拡張位置にある、図3の実施例を示す平面図である。
図7B】縫合糸クラスプ・アームが収縮されている、図7Aと同様の平面図である。
図8図6の線VIII−VIIIに沿った、図3の実施例を示す断面図である。
図9図7Aの線IX−IXに沿った、図3の実施例を示す断面図である。
図10】弁を通る通路に位置付けられている縫合デバイスの一実施例を示す概略図である。
図11】縫合糸クラスプ・アームが弁の第1及び第2の弁尖の周りに位置付けられている、図10と同様の概略図である。
図12】縫合糸クラスプ・アームが収縮されている、図11と同様の概略図である。
図13】縫合糸クラスプ・アームに係合されている縫合糸キャッチ機構を示している、図12と同様の概略図である。
図14】第1及び第2の弁尖を通って収縮された縫合糸キャッチ機構及び縫合糸部分を示している、図13と同様の概略図である。
図15】第1及び第2の弁尖を通って延在しており且つノットによって接合されている縫合糸部分を示している、図14と同様の概略図である。
図16】縫合糸クラスプ・アームが拡張位置にある、縫合デイバスの一実施例を示す平面図である。
図17】縫合糸クラスプ・アームが拡張位置にある、図16の縫合デバイスの遠位端部を示す拡大斜視図である。
図18】弁を通る通路に位置付けられている第1の縫合デバイスの一実施例を示す概略図である。
図19】縫合糸クラスプ・アームが弁の第1の弁尖の周りに位置付けられている、図18と同様の概略図である。
図20】縫合糸クラスプ・アームに係合されている縫合糸キャッチ機構を示している、図19と同様の概略図である。
図21】第1の弁尖を通って収縮された縫合糸キャッチ機構及び縫合糸部分を示している、図20と同様の概略図である。
図22】弁を通る通路に位置付けられている第2の縫合デバイスを示している、図21と同様の概略図である。
図23】縫合糸クラスプ・アームが弁の第2の弁尖の周りに位置付けられている、図22と同様の概略図である。
図24】縫合糸クラスプ・アームに係合されている縫合糸キャッチ機構を示している、図23と同様の概略図である。
図25】第2の弁尖を通して収縮された縫合糸キャッチ機構及び縫合糸部分を示している、図24と同様の概略図である。
図26】第1の弁尖及び第2の弁尖を通って延在しており且つ第1のノットによって接合されている縫合糸部分を示している、図25と同様の概略図である。
図27】縫合糸クラスプ・アームが拡張位置にある、縫合デバイスの一実施例を示す平面図である。
図28】縫合糸クラスプ・アームが拡張位置にある、図27の縫合デバイスの遠位端部を示す拡大斜視図である。
図29】弁を通る通路に位置付けられている第1の縫合デバイスの一実施例を示す概略図である。
図30】縫合糸クラスプ・アームが弁の第1の弁尖の周りに位置付けられている、図29と同様の概略図である。
図31】縫合糸クラスプ・アームに係合されている縫合糸キャッチ機構を示している、図30と同様の概略図である。
図32】第1の弁尖を通って収縮された縫合糸キャッチ機構及び縫合糸部分を示している、図31と同様の概略図である。
図33】縫合糸クラスプ・アームが第2の縫合デバイスから延在することを可能にするために、弁を通る通路に位置付けられている第2の縫合デバイスを示している、図32と同様の概略図である。
図34】縫合糸クラスプ・アームが弁の第2の弁尖の周りに位置付けられている、図33と同様の概略図である。
図35】縫合糸クラスプ・アームに係合されている縫合糸キャッチ機構を示している、図34と同様の概略図である。
図36】第2の弁尖を通って収縮された縫合糸キャッチ機構及び縫合糸部分を示している、図35と同様の概略図である。
図37】第1の弁尖及び第2の弁尖を通って延在しており且つ第1のノットによって接合されている縫合糸部分を示している、図36と同様の概略図である。
図38】各弁尖の中央部分付近において二尖弁を貫通する縫合の配置を示す図である。
図39】各弁尖の中央から離れた位置において二尖弁を貫通する縫合の配置を示す図である。
図40】各弁尖の中央から離れた複数の位置において二尖弁を貫通する縫合の配置を示す図である。
図41】三尖弁を貫通する縫合の配置を示す図である。
図42】弁を通る縫合の配置を示す図である。
図43】弁を通る縫合の配置を示す図である。
図44】腱索及び心筋層を通る縫合の配置を示す図である。
【実施例】
【0042】
生物組織を縫合するための縫合デバイス及び縫合方法の実施例を本明細書で開示する。この縫合デバイス及びそれらの使用方法は、種々の処置に対して有用であり得る。処置としては、例えば、傷、及び自然にできた孔又は通路、又は手術によってできた孔又は通路の治療(例えば、閉じる)などがある。例えば、縫合デバイスは、心臓弁などの解剖学的弁の治療に使用され得る。心臓弁には、弱っていたり伸びていたりする心臓弁や、適切に閉じることができなくなるような先天性欠陥などの他の構造的欠陥を含む心臓弁が含まれる。一実施例においては、例えば、三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、及び大動脈弁などの弁を治療又は修復するために、1つ又は複数の縫合デバイスが使用され得る。一実施例においては、Alfieri法(エッジ・トゥ・エッジ・リペア)、腱索の取り替え、腱索の短縮、パッチの適用、弁尖の形状変更、並びに、例えばリングや生物学的又は機械的代替弁などの人工器官の取り付けなどの処置を実施するために、1つ又は複数の縫合デバイスが使用され得る。
【0043】
一実施例においては、縫合デバイスは、他の種々の組織開口部、ルーメン、中腔器官、或いは、自然にできた又は手術によりできた身体内の通路を閉じたり縮小させたりするために使用され得る。一実施例においては、縫合デバイスは、人工器官、合成材料、又は身体内の移植可能なデバイスを縫合するために使用され得る。例えば、このデバイスは、身体内の綿撒糸を縫合するのに使用され得る。
【0044】
図1は、大動脈弁4を縫合する使用環境を例示している。心臓弁を縫合するための本明細書で開示されたデバイス及び方法は、他の身体的組織を縫合する処置、及び、人工器官又は合成材料又は身体内の移植可能なデバイスを縫合する処置に対しても適応され得る。図1に図示される通り、ガイドワイヤ10が大動脈2を通って大動脈弁4の位置又はその付近まで前進させられ得る。ガイドワイヤ10は、鎖骨下動脈(図示せず)を通って大動脈2内へ前進させられ得る。種々の経路を介して心臓へ到達することができることは予想されよう。例えば、下大動脈3、上大動脈5、又は他の血管アクセスを通って心臓に到達することができる。ガイドワイヤ10を所定の位置に置いて、医師はシース12を大動脈弁4の位置又はその付近まで挿入することができる。このシース12は、通常、その近位端部に弁を備えたシングル・ルーメン・カテーテルである。この弁は、例えば、余計な血液逆流(bleed back)を防止するために、又は患者の身体内へ薬剤を導入するために使用され得る。次いで、以下においてさらに説明されるような縫合デバイスが、シース12のルーメンを通って前進させられ得る。代替の実施例においては、縫合デバイスは、イントロデューサー・シース12を挿入する必要なしに、ガイドワイヤ10に沿って前進させられて大動脈弁4の位置又はその付近に配置され得る。
【0045】
図2は、僧帽弁8を縫合する別の使用環境を例示している。図2に図示される通り、ガイドワイヤ10が、左心室6の先端7付近の穿刺部又は切開部9を通って心臓の左心室6内へ前進させられている。心臓へは、局所的な開胸部、小さなトロカール穿刺部又は小さなカテーテル穿刺部を介して到達することができる。別のアクセス・パスが使用されてもよい。次いで、ガイドワイヤ10は、さらに、僧帽弁8の位置又はその付近に配置され得る。ガイドワイヤ10を所定の位置に置いて、医師はシース12を左心室6まで挿入することができる。シース12は、僧帽弁8の位置又はその付近に配置され得る。次いで、縫合デイバスが、シース12のルーメンを通って前進させられ得る。代替実施例においては、縫合デバイスは、イントロデューサー・シース12を挿入する必要なしに、ガイドワイヤ10に沿って前進させられて僧帽弁8の位置又はその付近に配置され得る。
【0046】
図3図9は、心臓弁などの解剖学的弁を縫合するために使用され得る縫合デバイス100の一実施例を示している。縫合デバイス100は、心臓弁などの解剖学的弁を縫合することを参照して説明されるが、別の生物組織、並びに移植可能なデバイス及び物質を縫合するためにも使用され得る。縫合デバイス100は、遠位側組立体102、1つ又は複数の縫合糸クラスプ・アーム104、及び、1つ又は複数の縫合糸キャッチ機構106を含むことができる。縫合デバイス100は、遠隔位置から縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104及び縫合糸キャッチ機構(複数可)106を操作することを容易にするための細長い部材(図示せず)をさらに含むことができる。例えば、細長い部材は、ある長さの縫合糸を収容するための1つ又は複数のルーメン、又は、縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104及び縫合糸キャッチ機構(複数可)106を操作するための1つ又は複数のアクチュエータ・ロッドを含むか、或いはその両方を含むことができる。一実施例においては、遠位側組立体102は、細長い部材の一部分を含むことができる。
【0047】
遠位側組立体102は、近位側マウント108、遠位側マウント110、ハブ112、及びケーシング114(図6)を含むことができる。近位側マウント108は、ケーシング114によって遠位側マウント110に固定的に連結され得る。ハブ112は、近位側マウント108と遠位側マウント110との間を摺動移動するようにケーシング114内に位置付けられ得る。
【0048】
近位側マウント108は、細長い部材(図示せず)に連結され得る。別法として、細長い部材の遠位端が、近位側マウント108を形成することができ、又は近位側マウント108と一体に形成され得る。一実施例においては、細長い部材はケーシング114を含むことができる。近位側マウント108は、図3及び図5に示される通り、1つ又は複数のルーメン116を含むことができる。
【0049】
ハブ112は、縫合糸キャッチ機構(複数可)106及びアクチュエータ・ロッド118に固定的に連結され得る。アクチュエータ・ロッド118は、近位側マウント108内のルーメン116を通って移動することができる。したがって、アクチュエータ・ロッド118が遠位側へ前進することによって、縫合糸キャッチ機構(複数可)106が遠位側へ前進することになる。ハブ112は、1つ又は複数のルーメン120を含むことができる。
【0050】
縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104が、遠位側マウント110に枢動可能に連結され、縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104が、図3図4に示される収縮位置と図5図7Aに示される拡張位置との間を移動することができるようになっている。図3図9に示すデバイス100のアーム104は、アーム104の遠位端部を中心に枢動するが、別の実施例においては、アーム104はアーム104の近位端部を中心に枢動することもできる。
【0051】
縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104は、アクチュエータ・ロッド124に連結され得る。アクチュエータ・ロッド124は、近位側マウント108のルーメン116を通って移動することができる。アーム(複数可)104、遠位側マウント110及びロッド124は連結され、ロッド124が遠位側へ移動することによってアーム(複数可)104が拡張され、ロッド124が近位側へ移動することによってアーム(複数可)104が収縮されるようになっている。一実施例においては、アーム(複数可)104は、完全に収縮された位置に対して実質的に垂直な位置まで拡張され得る。別の実施例においては、アーム(複数可)104は、完全に収縮された位置と完全に拡張された位置との間において90°未満を移動することができる。
【0052】
縫合糸キャッチ機構(複数可)106が遠位側マウント110を通って移動することを可能にするために、遠位側マウント110は、1つ又は複数のルーメン122(図5)を含むことができる。追加的な方法として、又は別法として、1つ又は複数のルーメン122は、ある長さの縫合糸、アクチュエータ・ロッド124、又はそれらの両方を収容することができる。
【0053】
縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104は、縫合糸部分130を解放可能に保持する縫合糸クラスプ126を含むことができる。縫合糸キャッチ機構(複数可)106は、前進させられ、縫合糸クラスプ・アーム(複数可)によって保持された縫合糸部分(複数可)130に係合され得る。縫合糸キャッチ機構(複数可)106が縫合糸端部分(複数可)130に係合されると、縫合糸キャッチ機構(複数可)は収縮され、縫合糸クラスプ126から縫合糸端部を引っ張り出すことができる。
【0054】
一実施例においては、縫合糸クラスプ126は、縫合糸クラスプ・アーム104上に位置付けられ、縫合糸クラスプ・アーム104が完全に拡張された位置から少なくとも部分的に収縮されているとき、縫合糸キャッチ機構106が、縫合糸クラスプ126によって保持されている縫合糸端部分130を取り出せるようになっている。一実施例においては、縫合糸クラスプ126は、縫合糸クラスプ・アーム104上に位置付けられ、縫合糸クラスプ・アーム104が完全に収縮されているとき、縫合糸キャッチ機構106が、縫合糸クラスプ126によって保持されている縫合糸端部分130を取り出せるようになっている。一実施例においては、縫合糸キャッチ機構106は、長手方向に継続的に前進させられ、縫合糸クラスプ・アームが完全に収縮されているときに、縫合糸クラスプ・アーム104の縫合糸クラスプ126を係合させることができる。一実施例においては、縫合糸クラスプ126は、縫合糸クラスプ・アームの遠位端部を中心に枢動する縫合糸クラスプ・アーム104の近位側を向いている面に位置付けられてもよい。一実施例においては、縫合糸クラスプ126は、縫合糸クラスプ・アームの近位端部を中心に枢動する縫合糸クラスプ・アーム104の遠位側を向いている面に位置付けられてもよい。
【0055】
一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、対応する縫合糸キャッチ機構106の組織貫通部分(tissue−piercing portion)を受け入れるように構成され得る。例えば、一実施例においては、縫合糸キャッチ機構106が完全に前進させられると、組織貫通部分が、対応する縫合糸クラスプ・アーム104によって完全に受け入れられ得る。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、縫合糸クラスプ・アーム104が少なくとも部分的に閉じられているときに、縫合糸キャッチ機構106の組織貫通部分を受け入れることができる。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、縫合糸クラスプ・アーム104が完全に収縮されているときに、縫合糸キャッチ機構106の組織貫通部分を受け入れることができる。
【0056】
一実施例においては、図7Bに示される通り、デバイス100は、縫合糸クラスプ・アーム104が完全に収縮されているときに、縫合糸クラスプ・アーム104と遠位側マウント110との間に又は縫合糸クラスプ・アーム104と遠位側組立体102の他の構成要素との間に凹部140を含むことができる。一実施例においては、弁尖などの組織部分を損傷させることなく、完全に収縮された縫合糸クラスプ・アーム104によって、組織部分が凹部140に受け入れられ得る。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アームが完全に収縮されているときに、縫合糸クラスプ・アーム104によって、組織部分が凹部104内に保持され得る。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アームが少なくとも部分的に収縮されているときに、縫合糸クラスプ・アーム104によって、組織部分が凹部140内に保持され得る。
【0057】
一実施例においては、少なくとも部分的に収縮されているときに、細長い本体とアームとの間において、アームが弁尖を損傷させることなく弁の弁尖を受け入れるようなサイズ及び形状を、凹部140は有することができる。一実施例においては、完全に収縮されているときに、細長い本体とアームとの間において、アームが弁尖を損傷させることなく弁の弁尖を受け入れるようなサイズ及び形状を、凹部140は有することができる。一実施例においては、少なくとも部分的に収縮されているときに、細長い本体とアームとの間において、アームが弁尖を損傷させることなく弁尖を保持するようなサイズ及び形状を、凹部140は有することができる。一実施例においては、完全に収縮されたときに、細長い本体とアームとの間において、アームが弁尖を損傷させることなく弁尖を保持するようなサイズ及び形状を、凹部140は有することができる。
【0058】
一実施例においては、例えば図11に示される通り、デバイス100が操作されて縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104が拡張位置となり、弁の弁尖などの組織部分を縫合糸クラスプ・アーム104と遠位側マウント110との間に配置することができる。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、組織部分の周りで少なくとも部分的に閉じられてもよい。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、組織部分の周りに完全に閉じられてもよい。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、縫合糸クラスプ・アーム104と遠位側マウント110との間に組織部分を確実に保持するために少なくとも部分的に収縮されてもよい。一実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104は、例えば図12に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104と遠位側マウント110との間に組織部分を確実に保持するために収縮位置まで移動されてもよい。一実施例においては、組織部分の周りで縫合糸クラスプ・アーム104を閉じることによって、又は縫合糸クラスプ・アーム140と遠位側マウント110との間に組織部分を保持することによって、組織部分は損傷されない。
【0059】
組織部分がアーム104と遠位側マウント110との間で保持されている状態で、例えば図13に示される通り、対応する縫合糸キャッチ機構106が前進させられ、アーム104の縫合糸クラスプ126によって保持されている縫合糸部分130に係合させられる。次いで、例えば図14に示される通り、縫合糸部分130が縫合糸キャッチ機構106によって組織部分を通して引き出され得る。一実施例においては、縫合糸キャッチ機構(複数可)106は、縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104が拡張位置にあるとき、縫合糸クラスプ・アーム(複数可)104に向かって前進させられて、縫合糸クラスプ126から縫合糸端部を取り出すことができる。一実施例においては、縫合糸キャッチ機構を針とすることができる。
【0060】
一実施例においては、縫合糸を収容し、デバイス100の任意の構成要素によって縫合糸が損傷されることを防止するために、遠位側組立体102はチューブ又は導管128を含むことができる。一実施例においては、導管128は、近位側マウント108のルーメン116を通って、遠位側マウント110のルーメン120を通って、及びハブ112のルーメン122を通って延在する。
【0061】
デバイス、構造、及び方法に関するさらなる詳細は、米国特許第7,090,686号明細書、及び、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269786号に提示されている。それらは、上述の実施例に組み込まれることができる。それらすべての文献の全体は、参照により本明細書に援用され、本明細書の一部を形成している。例えば、複数のアーム106及び複数の縫合糸キャッチ機構106を含む一実施例においては、デバイス100の各アーム104及び各縫合糸キャッチ機構106が、独立して作動されて収縮位置と拡張位置との間を個別に移動することができる。
【0062】
図10図15は、一実施例による、解剖学的弁を縫合する方法を示している。縫合デバイス100の遠位端部が、図10に示される通り、弁の弁尖132の間に位置付けられ得る。デバイス100は、脈管構造を通って所望の位置まで前進させられ得る。例えば、デバイス100は、下大動脈を通って右心房内まで前進させられ、さらに中隔を通って、僧帽弁8を通る通路内に位置付けられ得る(図2)。
【0063】
縫合糸クラスプ・アーム104が遠位側組立体102から拡張できるように、縫合デバイス100は前進させられ得る。次いで、図11に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104は拡張され、縫合糸クラスプ・アーム104が弁の第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bの周りに延在されるまで、デバイス100は引っ込められ得る。
【0064】
縫合糸クラスプ・アーム104が第1及び第2の弁尖132の周りに適切に位置付けられると、図12に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104は、例えば凹部140内において縫合糸クラスプ・アーム104と遠位側マウント110との間に第1及び第2の弁尖132を部分的に捕捉するために収縮され得る。
【0065】
第1及び第2の弁尖132が捕捉された状態で、図13に示される通り、縫合糸キャッチ機構106は、遠位側組立体102から前進させられ、第1及び第2の弁尖132を貫通して縫合糸クラスプ・アーム104によって保持されている縫合糸部分130に係合され得る。
【0066】
縫合糸部分130が係合された後、次いで、図14に示される通り、縫合糸キャッチ機構106及び係合された縫合糸部分130は、第1及び第2の弁尖132の組織を通って遠位側組立体102内へ引っ込められる。縫合糸クラスプ・アーム104は、第1及び第2の弁尖132を解放するために拡張され得る。第1及び第2の弁尖が解放された後、デバイス100がわずかに前進させられ、縫合糸クラスプ・アーム104が弁尖132を挟むことなく収縮位置まで移動させられる。次いで、第1の縫合デバイス100が弁から撤収され得る。
【0067】
図15に示される通り、縫合デバイス100が撤収された後、縫合糸部分130が弁尖132から延在する。第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bを互いに向かって引き合わせるために、縫合糸部分130は引っ張られ得る。次いで、例えば図15に示される通り、縫合糸部分130は一体に固定され、弁尖132A、132Bの互いに対しての動きが制限され得る。一実施例においては、縫合糸130は、互いに接触した状態で弁尖132A、132Bの一部分を保持することができる。別の実施例においては、縫合糸130は、単に、以前よりも互いに近接するように弁尖132A、132Bを保持するだけである。任意の既知の手法に従ってノット134を結ぶことによって、或いは、参照によりその全体が本明細書に援用される、2007年1月11日に公開された米国特許公開第2007/0010829(A1)号に記載されているようにノット134を適用することによって、縫合糸部分130は一体に固定され得る。縫合糸部分130は、身体の外側で又は身体内で一体に固定され得る。縫合130の過剰な部分は切り取られ得る。
【0068】
図16及び図17は、心臓弁などの解剖学的弁を縫合するのに使用され得る縫合デバイス100の一実施例を示している。縫合デバイス100は、遠位側組立体102、単一の縫合糸クラスプ・アーム104、及び、単一の縫合糸キャッチ機構106を含むことができる。
【0069】
図16及び図17に示される通り、縫合デバイス100は、遠隔位置から縫合糸クラスプ・アーム104及び縫合糸キャッチ機構106を操作するのを容易にするための細長い部材142を含むことができる。例えば、細長い部材は、ある長さの縫合糸を収容するための1つ又は複数のルーメン、又は、縫合糸クラスプ・アーム104及び縫合糸キャッチ機構106を操作するための1つ又は複数のアクチュエータ・ロッド、或いはその両方を含むことができる。縫合デバイス100は、縫合糸クラスプ・アーム104及び縫合糸キャッチ機構106を動かすための1つ又は複数のアクチュエータ及び/又はプル(pull)146を備えたハンドル144を含むことができる。アクチュエータ・ロッドを含めた、ハンドル及び関連する構成要素に関するさらなる詳細は、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269786号に提示されている。その全体は、参照により本明細書に援用され、本明細書の一部を形成している。
【0070】
一実施例においては、図16及び図17に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104は、収縮位置にあるとき、縫合糸クラスプ・アーム104の遠位端部に位置付けられた軸を中心に枢動することができる。
【0071】
図18図26は、解剖学的弁を縫合するための一実施例による方法を示している。図示されている方法は、各々が単一の縫合糸クラスプ・アーム104及び単一の縫合糸キャッチ機構106を有する2つのデバイス100を含むが、この図示されている方法は、2つ以上のアーム104及び2つの以上の縫合糸キャッチ機構106を含む単一の縫合デバイス100を使用して実施され得る。
【0072】
図18に示される通り、第1の縫合デバイス100の遠位端部が、弁の弁尖132の間に位置付けられ得る。デバイス100は、脈管構造を通って所望の位置まで前進させられ得る。例えば、デバイス100は、下大動脈を通って右心房内まで前進させられ、さらに中隔を通って、僧帽弁8を通る通路内に位置付けられ得る(図2)。
【0073】
縫合糸クラスプ・アーム104が遠位側組立体102から拡張できるように、縫合デバイス100は前進させられ得る。次いで、図19に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104は拡張され、縫合糸クラスプ・アーム104が弁の第1の弁尖132A周りに延在されるまで、デバイス100は引っ込められ得る。
【0074】
縫合糸クラスプ・アーム104が第1の弁尖132Aの周りに適切に位置付けられると、図20に示される通り、縫合糸キャッチ機構106が、遠位側組立体102から前進させられ、第1の弁尖132Aを貫通して縫合糸クラスプ・アーム104によって保持されている縫合糸部分130に係合され得る。一実施例においては、縫合糸キャッチ機構106が第1の弁尖132Aを通って前進させられ、上述したように縫合糸端部に係合される前に、縫合糸クラスプ・アーム104は、例えば凹部140内においてアーム104と遠位側マウント100との間に第1の弁尖132Aの一部分を確実に保持するために収縮位置に移動され得る。
【0075】
縫合糸部分130が係合された後、次いで、図21に示される通り、縫合糸キャッチ機構106及び係合された縫合糸部分130は、第1の弁尖132Aの組織を通って遠位側組立体102内へ引っ込められる。デバイス100はわずかに前進させられ、縫合糸クラスプ・アーム104が第1の弁尖132Aを挟むことなく収縮位置まで移動させられ得る。次いで、第1の縫合デバイス100が弁から撤収され得る。
【0076】
次いで、第2の縫合デバイス100が心臓内へ前進させられ、図22に示される通り、弁の弁尖132A、132Bの間に位置付けられ得る。次いで、縫合糸クラスプ・アーム104が拡張されてデバイス100が前進させられ、図23に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104が第2の弁尖132Bの先端の周りに延在するようになる。
【0077】
縫合糸クラスプ・アーム104が、第2の弁尖132Bの周りに適切に位置付けられると、図24に示される通り、縫合糸キャッチ機構106が遠位側組立体102から前進させられ、第2の弁尖132Bを貫通して縫合糸クラスプ・アーム104によって保持されている縫合糸部分130に係合され得る。第1の弁尖132Aに関連して上述したように、一実施例においては、縫合糸キャッチ機構106が第2の弁尖132Bを通って前進させられ、縫合糸部分130に係合される前に、縫合糸クラスプ・アーム104は、アーム104と遠位側組立体102との間に第2の弁尖132Bの一部分を確実に保持するために収縮位置に移動され得る。
【0078】
縫合糸部分130が係合された後、次いで、図25に示される通り、縫合糸キャッチ機構106及び係合された縫合糸部分130は、第2の弁尖132Bの組織を通って遠位側組立体102内へ引っ込められる。次いで、アーム104を閉じるときに第2の弁尖132Bが挟まれることを防止するためにデバイス100がわずかに前進させられた後、縫合糸クラスプ・アーム104が閉じられ得る。縫合糸クラスプ・アーム104が閉じられると、縫合デバイス100が患者の心臓から撤収され得る。
【0079】
図26に示される通り、縫合デバイス100が撤収された後、縫合糸部分130は弁尖132A、132Bから近位側に延在する。次いで、任意の既知の手法に従ってノット134を結ぶことによって、或いはノット134を適用することによって、図26に示される通り、縫合糸部分130は一体に固定され得る。縫合糸部分130は身体の外側で又は身体内で一体に固定され得る。縫合糸130の過剰な部分は切り取られ得る。次いで、第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bを互いに向かって引き合わせるために、縫合糸部分130は引っ張られ得る。次いで、上述したように、第2のノットが、縫合糸130に結び付けられ又は適用され、弁尖132A、132Bの互いに対する動きが制限される。一実施例においては、縫合糸130は、互いに接触した状態で弁尖132A、132Bの一部分を保持することができる。別の実施例においては、縫合糸130は、単に、以前よりも互いに近接するように弁尖132A、132Bを保持するだけである。
【0080】
複数のアーム104及び複数の縫合糸キャッチ機構106を含むデバイス100が使用される場合、単一の縫合糸130を第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bの両方を通して設置するように、デバイス100は構成され得る。単一の縫合糸130は、同時に又は順番に第1及び第2の弁尖132を通して設置され得る。一実施例においては、事前に縫合糸130にノットを適用することなく、第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bを互いに向かって引き合わせるために、縫合糸部分130は引っ張られ得る。したがって、単一のノット134を縫合糸130に適用し、弁尖132A、132Bを互いに近接して保持してもよい。
【0081】
図27及び図28は、心臓弁などの解剖学的弁を縫合するために使用され得る縫合デバイス100の一実施例を示している。図27及び図28に示されている縫合デバイス100は、上述した縫合デバイス100にいくつかの点で類似している。例えば、図27及び図28の縫合デバイス100は、図16及び図17の縫合デバイス100と同様に、遠位側組立体102、単一の縫合糸クラスプ・アーム104、及び単一の縫合糸キャッチ機構106を含むことができる。
【0082】
図27及び図28に示される通り、縫合デバイス100は、遠隔位置から縫合糸クラスプ・アーム104及び縫合糸キャッチ機構106を操作するのを容易にするための細長い部材142を含むことができる。例えば、細長い部材は、ある長さの縫合糸を収容するための1つ又は複数のルーメン、又は、縫合糸クラスプ・アーム104及び縫合糸キャッチ機構106を操作するための1つ又は複数のアクチュエータ・ロッド、或いはその両方を含むことができる。縫合デバイス100は、縫合糸クラスプ・アーム104及び縫合糸キャッチ機構106を動かすための1つ又は複数のアクチュエータ及び/又はプル146を備えたハンドルを含むことができる。アクチュエータ・ロッドを含めた、ハンドル及び関連する構成要素に関するさらなる詳細は、2008年10月30日に公開された米国特許出願公開第2008/0269786号に提示されている。その全体は、参照により本明細書に援用され、本明細書の一部を形成している。
【0083】
一実施例においては、図16及び図17に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104は、収縮位置にあるとき、縫合糸クラスプ・アーム104の近位端部に位置付けられた軸を中心に枢動することができる。
【0084】
解剖学的弁を縫合する方法を図29図37に示している。示されている方法は、各々が単一の縫合糸クラスプ・アーム104及び単一の縫合糸キャッチ機構106を有する2つのデバイス100を含むが、この図示されている方法は、例えば上述したように、2つ以上のアーム104及び2つ以上の縫合糸キャッチ機構106を含むデバイス100を使用して実施され得る。
【0085】
図29に示される通り、第1の縫合デバイス100の遠位端部が、弁の弁尖132の間に位置付けられ得る。デバイス100は、脈管構造を通って所望の位置まで前進させられ得る。例えば、デバイス100は、鎖骨下動脈を通って大動脈内へ前進させられ、大動脈弁4を通る通路内に位置付けられ得る(図1)。別法として、デバイス100は、図2に示される通り、心臓内の穿刺部又は小さな切開部9を通して挿入され、僧帽弁8を通る通路内に位置付けられ得る。このような穿刺部は、心臓の先端7の位置又はその付近に位置付けられ得る。
【0086】
図29に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム140が遠位側組立体102から拡張できるように、縫合デバイス100は位置付けられ得る。次いで、図30に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104は拡張され、縫合糸クラスプ・アーム104が弁の第1の弁尖132Aの周りに延在されるまで、デバイス100は前進させられ得る。
【0087】
縫合糸クラスプ・アーム104が第1の弁尖132Aの周りに適切に位置付けられると、図31に示される通り、縫合糸キャッチ機構106が遠位側組立体102から前進させられ、第1の弁尖132Aを貫通して縫合糸クラスプ・アーム104によって保持されている縫合糸部分130に係合され得る。一実施例においては、縫合糸キャッチ機構106が第1の弁尖132Aを通って前進させられ、例えば上述したように縫合糸端部に係合される前に、縫合糸クラスプ・アーム104は、アーム104と遠位側組立体102との間に第1の弁尖132Aの一部分を確実に保持するために収縮位置に移動され得る。
【0088】
縫合糸部分130が係合された後、次いで、図32に示される通り、縫合糸キャッチ機構106及び係合された縫合糸部分130は、第1の弁尖132Aの組織を通って遠位側組立体102内へ引っ込められる。デバイス100はわずかに引っ込められ、縫合糸クラスプ・アーム104が第1の弁尖132Aを挟むことなく収縮位置まで移動させられ得る。次いで、第1の縫合デバイス100が弁から撤収され得る。
【0089】
次いで、第2の縫合デバイス100が心臓内へ前進させられ、図33に示される通り、弁の弁尖132A、132Bの間に位置付けられ得る。次いで、縫合糸クラスプ・アーム104が拡張されてデバイス100が前進させられ、図34に示される通り、縫合糸クラスプ・アーム104が第2の弁尖132Bの先端の周りに延在するようになる。
【0090】
図示されている実施例においては、縫合糸クラスプ・アーム104が第2の弁尖132Bの周りに適切に位置付けられると、図35に示される通り、縫合糸キャッチ機構106が遠位側組立体102から前進させられ、第2の弁尖132Bを貫通して縫合糸クラスプ・アーム104によって保持されている縫合糸部分130に係合され得る。第1の弁尖132Aに関連して上述したように、一実施例においては、縫合糸キャッチ機構106が第2の弁尖132Bを通って前進させられ、縫合糸部分130に係合される前に、縫合糸クラスプ・アーム104は、アーム104と遠位側組立体102との間に第2の弁尖132Bの一部分を確実に保持するために収縮位置に移動され得る。
【0091】
縫合糸部分130が係合された後、次いで、図36に示される通り、縫合糸キャッチ機構106及び係合された縫合糸部分130は、第2の弁尖132Bの組織を通って遠位側組立体102内へと遠位側に引っ込められる。次いで、第2の弁尖132Bが挟まれることを回避するためにデバイス100がわずかに引っ込められた後、縫合糸クラスプ・アーム104が閉じられ得る。縫合糸クラスプ・アーム104が閉じられると、縫合デバイス100が患者の心臓から撤収され得る。
【0092】
図37に示される通り、縫合デバイス100が撤収された後、縫合糸部分130は弁尖132A、132Bから近位側に延在する。次いで、任意の既知の手法に従ってノット134を結ぶことによって、或いはノット134を適用することによって、図37に示される通り、縫合糸部分130は一体に固定され得る。縫合糸部分130は身体の外側で又は身体内で一体に固定され得る。縫合糸130の過剰な部分は切り取られ得る。次いで、第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bを互いに向かって引き合わせるために、縫合糸部分130は引っ張られ得る。次いで、第2のノットが、縫合糸130に結び付けられ又は適用され、弁尖132A、132Bの互いに対する動きが制限される。一実施例においては、縫合糸130は、互いに接触した状態で弁尖132A、132Bの一部分を保持することができる。別の実施例においては、縫合糸130は、単に、以前よりも互いに近接するように弁尖132A、132Bを保持するだけである。
【0093】
複数のアーム104及び複数の縫合糸キャッチ機構106を含むデバイス100が使用される場合、単一の縫合糸130を第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bの両方を通して設置するように、デバイス100は、同時に又は順番に構成され得る。このような一実施例においては、事前に縫合糸130にノットを適用することなく、第1の弁尖132A及び第2の弁尖132Bを互いに向かって引き合わせるために、縫合糸部分130は引っ張られ得る。したがって、単一のノット134を縫合糸130に適用し、弁尖132A,132Bを互いに近接して保持してもよい。
【0094】
1つ又は複数の縫合糸130は、特定の弁の問題を治療するために医師によって選択された場所に弁尖132を通して設置され得る。例えば、一実施例においては、図38に示される通り、弁尖132の中央領域内又はその付近の位置において、1つ又は複数の縫合糸130が弁尖132を貫通し得る。一実施例においては、図39に示される通り、1つ又は複数の縫合糸130が、弁の周囲部に近接した弁尖132の部分を貫通し得る。一実施例においては、図40に示される通り、縫合糸130が、2つの弁尖132の間の複数の位置に適用されてもよい。一実施例においては、三尖弁に関連して図41に示される通り、縫合糸130は、3つ以上の弁尖132の間の複数の位置に適用されてもよい。
【0095】
図42及び図43は、弁の弁尖を通しての縫合糸の配置の別の形を示している。一実施例においては、縫合糸は、図42又は図43に示される通り、図16図17及び図27図28に示したデバイス100を使用して設置され得る。デバイス100は、同様の又は異なるアクセス経路を通して導入され得る。例えば、デバイスは脈管構造を通して心臓に導入されてもよく、トランスアピカルによって(transapically)導入されてもよい。一実施例においては、第1の縫合糸は、図18図21に示されたように、第1のデバイス100によって第1の弁尖を通して設置されてもよく、第2の縫合糸は、図29図32に示されたように、第2のデバイス100によって第2の弁尖を通して設置されてもよい。一実施例においては、第1の縫合糸の前に第2の縫合糸が設置されてもよい。複数の縫合糸を設置する必要がある実施例においては、複数の縫合糸は、単一のノット又は複数のノットを用いて接合されてもよい。図42及び図43に示したような縫合糸を設置するためのデバイス及び方法に関するさらなる情報は、2008年10月30日に公開された、参照により援用される米国特許出願公開第2008/0269786号の特に図10I〜L、図27から図28B図36から図39A〜Kに関連して説明される実施例に提示されている。
【0096】
本明細書で説明及び参照したデバイス及び方法は、弁修復のための別の技法を実施するのに使用され得る。例えば、上述のデバイス及び方法は、図44に示される通り、縫合糸を1つ又は複数の腱索136及び心筋138に適用し、伸びてしまった腱索の張力を修復するために使用してもよい。上述したデバイス及び方法を、弁尖の自然にできた開口部又は手術によってできた開口部にパッチを縫合するのに使用してもよい。上述したデバイス及び方法を、機能不全弁の外側の周りにリングを取り付けるのに使用してもよい。上述したデバイス及び方法を、心臓に人工器官を縫合するのに使用してもよい。
【0097】
好適な実施例の上述の説明は、本発明の基本的な新規の特徴を示し、説明し、指摘するものであるが、示された器具の細部の形態の種々の省略、代用及び変更、並びにその使用法の種々の省略、代用及び変更が、本発明の精神から逸脱することなく当業者によってなされ得ることを理解されたい。例えば、縫合デバイスは患者の心臓の弁を縫合することに関連して説明されているが、この縫合デバイスが、別の種々の組織開口部、ルーメン、中腔器官、或いは、自然に又は手術によりできた身体内の通路を閉じたり縮小させたりするのに使用され得ることもさらに考えられる。縫合デバイスは、2つ又は4つ、或いはそれ以上の任意の適当な数のアームを含むことができ、任意の所与のアームは1つ又は複数の縫合糸クラスプ又は開口部を含むことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44