(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記液圧機械は、前記プレス機械のスライドの上昇工程において、前記液圧シリンダにダイクッション力と同等の力を発生させることが可能なものである請求項1に記載のダイクッション装置。
前記位置制御器による位置制御における前記クッションパッドの減速時、又は前記圧力制御器による下降時の圧力制御時、又は停止時の圧力制御における減圧時に運動エネルギ又はダイクッション力作用に要したエネルギ又は前記液圧シリンダの圧液が保有するエネルギを、前記液圧機械を介して回生する回生装置を備えた請求項1又は2に記載のダイクッション装置。
プレス機械のスライドの下降工程において、前記位置制御器による位置制御と前記圧力制御器による圧力制御とを切り替える請求項1から3のいずれか1項に記載のダイクッション装置。
前記圧力制御器は、プレス機械のスライドの上昇工程において、少なくとも前記スライドの上昇動作中に圧力制御する請求項1から4のいずれか1項に記載のダイクッション装置。
前記液圧機械は、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に配管を介して吐出口が接続された液圧ポンプ/モータと、前記液圧ポンプ/モータの駆動軸に正転方向又は逆転方向に選択的に回転駆動力を伝達する駆動装置とを有する請求項1から5のいずれか1項に記載のダイクッション装置。
前記駆動装置は、前記液圧ポンプ/モータの駆動軸に締結された両傾転式可変容量型液圧ポンプ/モータと、前記両傾転式可変容量型液圧ポンプ/モータの片側ポートに略一定圧の液圧を供給する液圧供給部とから構成された請求項6に記載のダイクッション装置。
前記液圧供給部は、前記両傾転式可変容量型液圧ポンプ/モータの片側ポートに接続されたアキュムレータと、前記アキュムレータに圧液を供給する液圧ポンプと、前記液圧ポンプの駆動軸に締結された電動モータとから構成された請求項8に記載のダイクッション装置。
クッションパッドと、前記クッションパッドを昇降させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に圧液を供給する液圧機械と、前記クッションパッドの位置を検出するダイクッション位置検出器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力を検出する圧力検出器と、前記クッションパッドの位置を示す第1の指令を出力する第1の指令器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力又は該圧力に比例する物理量を示す第2の指令を出力する第2の指令器と、前記第1の指令器から出力される第1の指令と前記ダイクッション位置検出器により検出される前記クッションパッドの位置とに基づいて前記クッションパッドの位置が、前記第1の指令に対応する位置になるように前記液圧機械を制御する位置制御器と、前記第2の指令器から出力される第2の指令と前記圧力検出器により検出される圧力とに基づいて前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力が、前記第2の指令に対応する圧力になるように前記液圧機械を制御する圧力制御器と、を備えたダイクッション装置の制御方法であって、
プレス機械のスライドの下降工程において、少なくとも前記プレス機械による第1のプレス成形を行うべく前記圧力制御器による圧力制御を行い、前記スライドの上昇工程において、前記上昇工程中に第2のプレス成形を行うべく前記位置制御器による位置制御と前記圧力制御器による圧力制御とを切り替えることを特徴とするダイクッション装置の制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、上昇工程中にもプレス加工を行う記載がないが、仮に上昇工程中にプレス加工を行う場合には、油圧シリンダに圧油を供給するアキュムレータに、成形に応じて高圧の圧油(かつ、高エネルギを保有する圧油)を蓄えなければならず、この場合には、アキュムレータ、及びアキュムレータに高圧の圧油を供給する圧油供給源(油圧ポンプ、電動機)を大容量化する必要がある。
【0010】
また、ダイクッション工程及び上昇工程は、それぞれサーボ弁により圧油を絞ることにより圧力を制御し、油量を制御する方式となるため、エネルギ損失が大きく、動力コストや冷却コスト(電気代)が増大化する。
【0011】
即ち、特許文献1に記載の比較的シンプルなサーボ弁式サーボダイクッション装置においても、上昇工程で比較的大きな力を必要とするような成形を行う場合は、装置の大容量化、エネルギロス、サイクル時間の無駄等、多くの問題(課題)を伴う。
【0012】
一方、特許文献2に記載のダイクッション装置は、油圧シリンダの下室に油圧ポンプ/モータの吐出口を直接接続し、この油圧ポンプ/モータの回転軸を電動モータによってトルク制御して油圧シリンダの下室の油圧(ダイクッション圧力)を制御するようにしたため、ダイクッション工程時に指令されるダイクッション圧力指令に対して追従性よくダイクッション圧力を制御することができるが、特許文献2には、上昇工程時にプレス成形を行う記載はなく、ダイクッション工程(下降工程)及び上昇工程時にそれぞれプレス成形する発想が開示されていない。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、装置の大型化及び高価格化を招くことなく、1プレスサイクルで2回のプレス成形を実現可能にし、プレス成形の効率を向上させ、かつ省エネルギ化を図ることができるダイクッション装置及びダイクッション装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の一の態様に係るダイクッション装置は、クッションパッドと、前記クッションパッドを昇降させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に圧液を供給する液圧機械と、前記クッションパッドの位置を検出するダイクッション位置検出器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力を検出する圧力検出器と、前記クッションパッドの位置を示す第1の指令を出力する第1の指令器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力又は該圧力に比例する物理量を示す第2の指令を出力する第2の指令器と、前記第1の指令器から出力される第1の指令と前記ダイクッション位置検出器により検出される前記クッションパッドの位置とに基づいて前記クッションパッドの位置が、前記第1の指令に対応する位置になるように前記液圧機械を制御する位置制御器と、前記第2の指令器から出力される第2の指令と前記圧力検出器により検出される圧力とに基づいて前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力が、前記第2の指令に対応する圧力になるように前記液圧機械を制御する圧力制御器と、を備え、プレス機械のスライドの
下降工程において、少なくとも前記プレス機械による第1のプレス成形を行うべく前記圧力制御器による圧力制御を行い、前記スライドの上昇工程において、
前記上昇工程中に第2のプレス成形を行うべく前記位置制御器による位置制御と前記圧力制御器による圧力制御とを切り替えることを特徴とする。
【0015】
本発明の一の態様によれば、液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に圧液を供給する液圧機械を制御することにより、クッションパッドの位置を制御する位置制御器と、液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力を制御する圧力制御器とを備え、特にプレス機械のスライドの上昇工程において、位置制御器による位置制御と圧力制御器による圧力制御とを切り替えて行うことで、
スライドの下降工程時のプレス成形(第1のプレス成形)に加えて、スライドの上昇工程時にもプレス成形
(第2のプレス成形)を可能
にしている。一般に上昇工程では、成形後の製品を上方にノックアウトするためのクッションパッドの位置制御が行われるが、本発明によれば、上昇工程中に圧力制御も行い、この圧力制御の期間中に
第2のプレス成形を可能にしている。
【0016】
本発明の他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧機械は、前記プレス機械のスライドの上昇工程において、前記液圧シリンダにダイクッション力と同等の力を発生させることが可能なものである。これにより、材料引張強さが大きく(ハイテン化し)形状が複雑化しつつある成形品に対しても、上昇工程中に成形を行うことができる。
【0017】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記位置制御器による位置制御における前記クッションパッドの減速時、又は前記圧力制御器による下降時の圧力制御時、又は停止時の圧力制御における減圧時に運動エネルギ又はダイクッション力作用に要したエネルギ又は前記液圧シリンダの圧液が保有するエネルギを、前記液圧機械を介して回生する回生装置を備えることが好ましい。これにより、エネルギ効率のよい装置にすることができ、省エネルギ化を図ることができる。
【0018】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、プレス機械のスライドの下降工程において、前記位置制御器による位置制御と前記圧力制御器による圧力制御とを切り替えることが好ましい。例えば、スライドのインパクト時又はインパクト直前まではクッションパッドを位置制御し、インパクト後は圧力制御に切り替えることが好ましい。
【0019】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記圧力制御器は、プレス機械のスライドの上昇工程において、少なくとも前記スライドの上昇動作中に圧力制御することが好ましい。スライドの上昇工程中に圧力制御することにより、製品の外側面は、上昇する上型の内側面と製品の外側面間の摩擦力によって上側に引っ張られ、製品の内側面は、下型の外側面と製品の内側面間の摩擦力によって下側に引張され、製品を良好に変形させることができる。
【0020】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧機械は、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に配管を介して吐出口が接続された液圧ポンプ/モータと、前記液圧ポンプ/モータの駆動軸に正転方向又は逆転方向に選択的に回転駆動力を伝達する駆動装置とを有することが好ましい。駆動装置から正転方向の回転駆動力又は逆転方向の回転駆動力を、選択的に液圧ポンプ/モータの駆動軸に伝達することができ、これにより下降工程と上昇工程時の位置制御及び圧力制御を可能(可逆制御可能)にしている。
【0021】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記駆動装置は、前記液圧ポンプ/モータの駆動軸に締結された電動サーボモータであることが好ましい。応答性のよい電動サーボモータのトルク制御により、指令に対する追従性のよい制御が可能である。
【0022】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記駆動装置は、前記液圧ポンプ/モータの駆動軸に締結された両傾転式可変容量型液圧ポンプ/モータと、前記両傾転式可変容量型液圧ポンプ/モータの片側ポートに略一定圧の液圧を供給する液圧供給部とから構成されることが好ましい。電動サーボモータよりも安価な装置で所望の回転駆動力を液圧ポンプ/モータの駆動軸に伝達することができる。
【0023】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧供給部は、前記両傾転式可変容量型液圧ポンプ/モータの片側ポートに接続されたアキュムレータと、前記アキュムレータに圧液を供給する液圧ポンプと、前記液圧ポンプの駆動軸に締結された電動モータとから構成されることが好ましい。これにより、位置制御器による位置制御におけるクッションパッドの減速時、又は圧力制御器による圧力制御における液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力の減圧時に液圧シリンダの運動エネルギ又は液圧シリンダの圧液が保有するエネルギを、アキュムレータに蓄積される圧油として回生することができる。
【0024】
本発明の更に他の態様に係るダイクッション装置において、前記液圧ポンプ/モータの駆動軸の角速度を検出する角速度検出器を備え、前記位置制御器及び圧力制御器は、それぞれ前記角速度検出器によって検出される角速度信号を前記クッションパッドの位置及び前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力の動的安定性を確保するための角速度フィードバック信号として用いることが好ましい。
【0025】
更に他の態様に係る発明は、クッションパッドと、前記クッションパッドを昇降させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に圧液を供給する液圧機械と、前記クッションパッドの位置を検出するダイクッション位置検出器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力を検出する圧力検出器と、前記クッションパッドの位置を示す第1の指令を出力する第1の指令器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力又は該圧力に比例する物理量を示す第2の指令を出力する第2の指令器と、前記第1の指令器から出力される第1の指令と前記ダイクッション位置検出器により検出される前記クッションパッドの位置とに基づいて前記クッションパッドの位置が、前記第2の指令に対応する位置になるように前記液圧機械を制御する位置制御器と、前記第2の指令器から出力される第2の指令と前記圧力検出器により検出される圧力とに基づいて前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力が、前記第2の指令に対応する圧力になるように前記液圧機械を制御する圧力制御器と、を備えたダイクッション装置の制御方法であって、プレス機械のスライドの下降工程において、少なくとも
前記プレス機械による第1のプレス成形を行うべく前記圧力制御器による圧力制御を行い、前記スライドの上昇工程において、
前記上昇工程中に第2のプレス成形を行うべく前記位置制御器による位置制御と前記圧力制御器による圧力制御とを切り替えることを特徴とする。
【0026】
更に他の態様に係る
発明は、クッションパッドと、前記クッションパッドを昇降させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に圧液を供給する液圧機械と、前記クッションパッドの位置を検出するダイクッション位置検出器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力を検出する圧力検出器と、前記クッションパッドの位置を示す第1の指令を出力する第1の指令器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力又は該圧力に比例する物理量を示す第2の指令を出力する第2の指令器と、前記第1の指令器から出力される第1の指令と前記ダイクッション位置検出器により検出される前記クッションパッドの位置とに基づいて前記クッションパッドの位置が、前記第1の指令に対応する位置になるように前記液圧機械を制御する位置制御器と、前記第2の指令器から出力される第2の指令と前記圧力検出器により検出される圧力とに基づいて前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力が、前記第2の指令に対応する圧力になるように前記液圧機械を制御する圧力制御器と、を備えたダイクッション装置の制御方法であって、プレス機械のスライドの下降工程において、前記スライドが前記クッションパッドの所定のダイクッション待機位置又はその近傍の位置に到達するまで前記位置制御器による位置制御を行い、前記スライドが、前記クッションパッドの所定のダイクッション待機位置又はその近傍の位置に到達すると、前記スライドが下死点に到達するまで前記圧力制御器による圧力制御に切り替え、前記スライドが下死点に到達すると、前記位置制御器による位置制御に切り替え、前記第1の指令器から出力される第1の指令を下死点近傍の値にして一定時間経過後、所定の値まで徐々に大きくし、続いて前記圧力制御器による圧力制御に切り替えて一定時間加圧した後、前記位置制御器による位置制御に切り替えることが好ましい。
【0027】
前記下死点近傍の値は、下死点より少し小さい値が好ましく、この下死点近傍の値により位置制御する一定時間は、ダイクッション圧力の脱圧に要する時間が好ましい。また、第1の指令を所定の値まで徐々に大きくすることにより、前記クッションパッドを所定の位置まで上昇させながら成形できるようにしている。
【0028】
更に他の態様に係る
発明は、クッションパッドと、前記クッションパッドを昇降させる液圧シリンダと、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室に圧液を供給する液圧機械と、前記クッションパッドの位置を検出するダイクッション位置検出器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力を検出する圧力検出器と、前記クッションパッドの位置を示す第1の指令を出力する第1の指令器と、前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力又は該圧力に比例する物理量を示す第2の指令を出力する第2の指令器と、前記第1の指令器から出力される第1の指令と前記ダイクッション位置検出器により検出される前記クッションパッドの位置とに基づいて前記クッションパッドの位置が、前記第1の指令に対応する位置になるように前記液圧機械を制御する位置制御器と、前記第2の指令器から出力される第2の指令と前記圧力検出器により検出される圧力とに基づいて前記液圧シリンダのダイクッション圧力発生室の圧力が、前記第2の指令に対応する圧力になるように前記液圧機械を制御する圧力制御器と、を備えたダイクッション装置の制御方法であって、プレス機械のスライドの下降工程において、前記スライドが前記クッションパッドの所定のダイクッション待機位置又はその近傍の位置に到達するまで前記位置制御器による位置制御を行い、前記スライドが、前記クッションパッドの所定のダイクッション待機位置又はその近傍の位置に到達すると、前記スライドが下死点に到達するまで前記圧力制御器による圧力制御に切り替え、前記スライドが下死点に到達すると、前記位置制御器による位置制御に切り替え、前記第1の指令器から出力される第1の指令を下死点近傍の値にして一定時間経過後、前記圧力制御器による圧力制御に切り替え、続いて、前記プレス機械のスライドの上昇工程において、前記スライドが上昇を開始し、前記スライドが少なくとも所定のスライド位置に到達するまで前記圧力制御を維持し、前記スライドが前記所定のスライド位置に到達した後、又は前記所定のスライド位置に到達してから一定時間経過後に前記位置制御器による位置制御に切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、装置の大型化及び高価格化を招くことなく、プレス機械のスライドの上昇工程時にクッションパッドの圧力制御を行うことができ、この圧力制御の期間中にプレス成形を可能にしたため、1プレスサイクルで2回のプレス成形を実現することができ、プレス成形の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下添付図面に従って本発明に係るダイクッション装置及びダイクッション装置の制御方法の好ましい実施形態について詳説する。
【0032】
[ダイクッション装置の第1の実施形態]
図1は本発明に係るダイクッション装置の第1の実施形態を示す構成図である。尚、
図1において、プレス機械100は2点鎖線で示され、ダイクッション装置200は実線で示されている。
【0033】
図1に示すプレス機械100は、ベッド102、コラム104及びクラウン106でフレームが構成され、スライド110は、コラム104に設けられたガイド部108により鉛直方向に移動自在に案内されている。スライド110は、図示しない駆動手段によって回転駆動力が伝達されるクランク軸112を含むクランク機構によって
図1上で上下方向に移動させられる。
【0034】
プレス機械100のベッド102側には、スライド110の位置を検出するスライド位置検出器114が設けられ、クランク軸112には、クランク軸112の角速度及び角度をそれぞれ検出するクランク軸エンコーダ116が設けられている。
【0035】
スライド110には上型121が装着され、ベッド102上(のボルスタ上)には下型122が装着されている。
【0036】
上型121と下型122の間には、ブランクホルダ(皺押え板)202が配置され、下側が複数のクッションピン204を介してクッションパッド210で支持され、上側には材料203がセットされる(接触する)。
【0037】
<ダイクッション装置の構造>
ダイクッション装置200は、主としてブランクホルダ202と、ブランクホルダ202を複数のクッションピン204を介して支持するクッションパッド210と、クッションパッド210を支持し、クッションパッド210にダイクッション力を発生させる油圧シリンダ(液圧シリンダ)220と、油圧シリンダ220に圧油を供給する油圧機械(液圧機械)250と、油圧機械250を制御するダイクッション制御装置300とから構成されている。
【0038】
油圧シリンダ220及び油圧機械250は、クッションパッド210を昇降動作させるクッションパッド昇降器として機能するとともに、クッションパッド210にダイクッション力を発生させるダイクッション力発生器として機能する。
【0039】
また、油圧シリンダ220に対して、油圧シリンダ220のピストンロッド220aの伸縮方向の位置を、クッションパッド210の昇降方向の位置として検出するダイクッション位置検出器224が設けられている。尚、ダイクッション位置検出器は、ベッド102とクッションパッド210との間に設けるようにしてもよい。
【0040】
次に、油圧シリンダ220を駆動する油圧機械250の構成について説明する。
【0041】
油圧機械250は、油圧ポンプ/モータ(液圧ポンプ/モータ)252、油圧ポンプ/モータ252の回転軸に接続された電動サーボモータ254、電動サーボモータ254の駆動軸の角速度(モータ角速度ω)を検出する角速度検出器256、及び圧力検出器258から構成されている。
【0042】
油圧ポンプ/モータ252の一方のポート(吐出口)は、油圧シリンダ220のダイクッション圧力発生室(下室)220bに接続され、他方のポートはタンク260に接続されている。
【0043】
油圧シリンダ220の下室220bに作用する圧力は、圧力検出器258により検出され、電動サーボモータ254の駆動軸の角速度は角速度検出器256により検出される。
【0044】
[ダイクッション力制御の原理]
ダイクッション力は、油圧シリンダ220の下室220bの圧力とシリンダ面積の積で表すことができるため、ダイクッション力を制御することは、油圧シリンダ220の下室220bの圧力を制御することを意味する。
【0045】
いま、ダイクッション圧力:P
サーボモータトルク:T
電動サーボモータの駆動電流:I
比例定数:k
a、k
2、k
4
とすると、次式が成立する。
【0046】
T=k
a・I …(1)
P=k
2・T …(2)
P=k
2・k
a・I=k
4・I …(3)
(3)式に示すように、ダイクッション圧力Pは、電動サーボモータ254の駆動電流に比例する。したがって、電動サーボモータ254に加える電流Iを制御することにより、ダイクッション圧力Pを制御することができる。
【0047】
[ダイクッション制御装置]
図2は、ダイクッション装置200におけるダイクッション制御装置300の実施形態を示すブロック図である。
【0048】
ダイクッション制御装置300は、大別してスライド110の下降工程の制御器310と、上昇工程の制御器320とからなり、下降工程の制御器310は、主としてダイクッション位置を指令する第1の指令器312、ダイクッション圧力を指令する第2の指令器314、ダイクッション位置を制御する位置制御器316及びダイクッション圧力を制御する圧力制御器318を有し、上昇工程の制御器320は、主としてダイクッション位置を指令する第1の指令器322、ダイクッション圧力を指令する第2の指令器324、ダイクッション位置を指令する位置制御器326及びダイクッション圧力を指令する圧力制御器328を有している。
【0049】
また、ダイクッション制御装置300は、スイッチSW1〜SW3を有し、スイッチSW1は、下降工程側の位置制御器316による位置制御と、下降工程側の圧力制御器318による圧力制御とを切り替えるスイッチであり、スイッチSW2は、上昇工程側の位置制御器326による位置制御と、上昇工程側の圧力制御器328による圧力制御とを切り替えるスイッチである。また、スイッチSW3は、下降工程の制御器310による制御と、上昇工程の制御器320による制御とを切り替えるスイッチである。
【0050】
尚、下降工程の制御器310と上昇工程の制御器320とは、物理的に分離しているものに限らず、下降工程と上昇工程とで異なる指令(ダイクッション位置指令、ダイクッション圧力指令)が出力される共通の制御器により構成されたものでもよい。
【0051】
下降工程の制御器310及び上昇工程の制御器320には、それぞれダイクッション位置検出器224により検出されたダイクッション位置(クッションパッド位置)を示すダイクッション位置検出信号と、角速度検出器256により検出されたサーボモータ角速度信号と、圧力検出器258により検出された圧力検出信号とが入力され、下降工程の制御器310及び上昇工程の制御器320(ダイクッション制御装置300)は、これらの入力信号に基づいてダイクッション位置(クッションパッド210の位置)を制御するダイクッション位置指令と、ダイクッション圧力を制御するダイクッション圧力指令とを、スイッチSW1〜SW3を介して切り替えて出力する。
【0052】
<ダイクッション位置の制御>
下降工程の制御器310の第1の指令器312及び上昇工程の制御器320の第1の指令器322には、位置指令生成における初期値生成用に使用するためにダイクッション位置検出器224からダイクッション位置(クッションパッド位置)を示すダイクッション位置検出信号が加えられている。
【0053】
下降工程側の第1の指令器312は、主としてクッションパッド210を初期位置であるダイクッション待機位置に待機させるために、ダイクッション位置(クッションパッド210の位置)を制御するダイクッション位置指令を出力する。
【0054】
上昇工程側の第1の指令器322は、主として下死点の位置でクッションパッド210を保持し、その後、製品ノックアウト動作を行うとともに、ダイクッション待機位置に待機させるために、ダイクッション位置を制御するダイクッション位置指令を出力する。
【0055】
ダイクッション位置制御状態の場合、下降工程側の位置制御器316は、第1の指令器312から出力されるダイクッション位置指令とダイクッション位置検出器224により検出されるダイクッション位置検出信号とに基づいて電動サーボモータ254を制御するための制御信号を出力し、同様に上昇工程側の位置制御器326は、第1の指令器322から出力されるダイクッション位置指令とダイクッション位置検出器224により検出されるダイクッション位置検出信号とに基づいて電動サーボモータ254を制御するための制御信号を出力する。
【0056】
位置制御器316又は326から出力される制御信号は、
図1に示すように増幅器330を介して電動サーボモータ254に出力され、電動サーボモータ254の駆動を制御する。電動サーボモータ254に駆動軸が接続された油圧ポンプ/モータ252は、電動サーボモータ254から加えられる駆動トルクにより回転し、油圧シリンダ220の下室220bに圧油を供給し、又は下室220bから圧油を排出させる。
【0057】
これにより、油圧シリンダ220のピストンロッド220aの伸縮方向の位置(即ち、クッションパッド210の昇降方向の位置(ダイクッション位置))が制御される。尚、位置制御器316、326は、角速度検出器256により検出される電動サーボモータ254の駆動軸の角速度信号を用いて、動的安定性を確保のために電動サーボモータ254を速度制御し、クッションパッド210の昇降方向の位置制御を行うことが好ましい。
【0058】
また、位置制御器316、326による位置制御におけるクッションパッド210の減速時には、油圧ポンプ/モータ252に制動用の、回転方向と反対方向のトルクが作用し、電動サーボモータ254が発電機として作用する。電動サーボモータ254によって発電された電力は、増幅器330(増幅器兼PWM制御器)及び電力回生機能付き電源装置340を介して交流電源350に回生される。これにより、ダイクッション装置200の省エネルギ化を図ることができる。
【0059】
<ダイクッション圧力の制御>
下降工程の制御器310の第2の指令器314及び上昇工程の制御器320の第2の指令器324には、スライド位置に応じたダイクッション圧力指令を出力するためにスライド位置検出器114により検出されるスライド位置を示すスライド位置検出信号、又はクランク軸エンコーダ116の検出信号から演算されるスライド位置を示すスライド位置検出信号が加えられている。
【0060】
本例の場合、第2の指令器314、324は、後述するようにステップ状のダイクッション圧力指令を出力し、スライド位置検出信号に基づいてダイクッション圧力指令の出力タイミング等を制御している。
【0061】
下降工程の制御器310の第2の指令器314及び上昇工程の制御器320の第2の指令器324には、ダイクッション位置に応じたダイクッション圧力指令を出力するためにダイクッション位置検出器224からダイクッション位置を示すダイクッション位置検出信号が加えられている。
【0062】
ダイクッション圧力制御状態の場合、下降工程側の圧力制御器318は、第2の指令器314から加えられるダイクッション圧力指令どおりにダイクッション圧力を制御するために、圧力検出器258により検出された油圧シリンダ220の下室220bの圧力を示すダイクッション圧力検出信号を入力し、第2の指令器314から出力されるダイクッション圧力指令と圧力検出器258により検出されるダイクッション圧力検出信号とに基づいて電動サーボモータ254を制御するための制御信号を出力し、同様に上昇工程側の圧力制御器328は、第2の指令器324から出力されるダイクッション圧力指令と圧力検出器258により検出されるダイクッション圧力検出信号とに基づいて電動サーボモータ254を制御するための制御信号を出力する。
【0063】
また、圧力制御器318、328は、角速度検出器256により検出される電動サーボモータ254の駆動軸の角速度(サーボモータ角速度(ω))を示すサーボモータ角速度信号を入力し、ダイクッション圧力の動的安定性を確保するための角速度フィードバック信号として使用している。
【0064】
また、圧力制御器318、328は、クランク軸エンコーダ116により検出される検出信号より演算されるスライド速度信号を入力し、ダイクッション圧力の補正を行うための角速度フィードバック信号として使用している。
【0065】
圧力制御器318、328は、スイッチSW1、SW2によりダイクッション位置制御状態からダイクッション圧力制御状態に制御が切り替えられると、ダイクッション圧力指令、ダイクッション圧力検出信号、及びサーボモータ角速度信号、及びスライド速度信号を用いて演算したトルク指令を、増幅器330を介して電動サーボモータ254に出力することでダイクッション圧力を制御する。
【0066】
また、圧力制御器318による下降工程における下降時の圧力制御時には、油圧ポンプ/モータ252が油圧モータとして作用し、油圧モータとして作用する油圧ポンプ/モータ252によって電動サーボモータ254が従動して発電機として作用する。また、圧力制御器328による上昇工程における停止時の減圧時の圧力制御時には、電動サーボモータ254が発電機として作用する。電動サーボモータ254によって発電された電力は、増幅器330(増幅器兼PWM制御器)及び電力回生機能付き電源装置340を介して交流電源350に回生される。これにより、ダイクッション装置200の省エネルギ化を図ることができる。
【0067】
本発明は、スライド110の下降工程時に下降工程側の圧力制御器318によりダイクッション圧力を制御するとともに、上昇工程時に上昇工程側の圧力制御器328によりダイクッション圧力を制御可能にし、後述するように1プレスサイクルに2回のプレス成形を行うことができるようにしている。
【0068】
<ダイクッション装置の制御方法>
図3及び
図4は、それぞれ上記構成のダイクッション装置200の制御方法の第1の実施形態を示す図である。
【0069】
図3(A)及び(B)は、それぞれダイクッション位置、スライド位置及びダイクッション位置指令を示す波形図であり、
図3(A)は、
図3(B)に示す波形図を縦軸方向に拡大した拡大図である。
図3(C)は、ダイクッション力(圧力)指令及びダイクッション力(圧力)を示す波形図である。
【0070】
また、
図4(A)、(B)及び(C)は、それぞれ
図3に示した時点a、b、及びcにおけるダイクッション装置の要部及び金型(上型120、下型122)を示す図である。
【0071】
第1の実施形態の上型120は、その上部がシリンダ室120c内のピストンである可動ダイス120aと、可動ダイス120aを駆動するシリンダブロック120bとから構成され、シリンダブロック120bのシリンダ室120cに圧油が供給可能になっている。また、シリンダブロック120bには、可動ダイス120aの内側に突出する押圧部120dが形成されている。この上型120(シリンダブロック120b)は、スライド110に取り付けられる。下型122は、中空カップ状の可動ダイス120a内に挿入される上側に凸のパンチである。
【0072】
本例では、材料203はカップ形状に絞り加工される。上型120の可動ダイス120aの下面のコーナー部の曲率(R)、下型122のパンチ上面のコーナー部のRは、深絞り性を助長する為に、十分な大きさが確保されている。
【0073】
サイクル初期(下降工程のスライド110が材料203にインパクトするまでの期間)、位置制御(1)(下降工程の位置制御)に切り替えられ、クッションパッド210は、待機位置(プレス・スライドストロークにおけるダイクッション開始スライド位置)に位置制御される。材料203は、待機位置に位置制御されている油圧シリンダ220のピストンロッド220aに連動するクッションパッド210上に配備されたクッションピン204に支持されるブランクホルダ202上に保持(セット)されている。
【0074】
スライド110の下降工程では、スライド110がダイクッション開始スライド位置に到った時点aで、下降工程の制御器310において、スイッチSW1により位置制御器316による位置制御(1)から圧力制御器318による圧力制御(2)に切り替えられ、ダイクッション圧力を制御するための制御信号がスイッチSW1、SW3を介して出力され、スライド110に装着された上型120と、ブランクホルダ202に保持された材料203と、ボルスタに固定された下型122との間で、絞り加工(第1成形)が開始される(
図4(A))。
【0075】
この状態では、上型120のシリンダ室120cには高圧の圧油が供給され、可動ダイス120aには、油圧シリンダ220による最大作用力より十分に大きな力が作用し、可動ダイス120aは、可動範囲の下限位置に位置している。
【0076】
この時点からプレス下死点に到る過程は、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は、第2の指令器314から出力される、本絞り成形に必要な所定のダイクッション力に相当する圧力指令(第1圧力指令)に追従すべく、圧力制御される(
図3(B)、(C)参照)。
【0077】
スライド110が下死点に到ると(時点b、
図4(B))、油圧シリンダ220の第1圧力指令は0に変更され、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は脱圧される。脱圧が完了(圧力が0に近い所定の小さい値に低下)すると、圧力制御器318による圧力制御(2)から位置制御器326による位置制御(3)に切り替えられ、クッションパッド210を下死点(より2mm小さい位置(
図3(A))参照)に位置制御し、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は、完全に脱圧される(下死点におけるロッキング作用)。
【0078】
絞り加工(第1成形)が終了した時点の製品形状は、カップ円筒部の上側及び下側のRが大きい為、全体的に丸みを帯びた形状である(
図4(B)に示す材料203の形状参照)。
【0079】
また、スライド110が下死点に到ると、プレス機械100は、スライド110を下死点で停止した状態を維持し、可動ダイス120aを下限位置に保持するためにシリンダブロック120bのシリンダ室120cに印加している油圧を脱圧する。
【0080】
次に、ダイクッション位置指令を、下死点より2mm低い位置指令から約4mm高い位置指令まで徐々に変化させ、位置制御器326は、このダイクッション位置指令に基づいて位置制御することにより、クッションパッド210のダイクッション位置を下死点より約4mm高い位置(Sx)に上昇させる(
図3(A)参照)。約4mmは、可動ダイス120aのストロークに相当する。
【0081】
この(下死点より約4mm上昇する)過程で、可動ダイス120aは、可動範囲のほぼ上限に位置し、シリンダブロック120bの押圧部120dと下型122とにより挟持された製品は、その縁部がブランクホルダ202(可動ダイス120a)とともに上昇する。製品は、その縁部の上昇により第2成形(圧縮)がなされ、丸みを帯びた製品の角部は徐々に角形状に変化する。
【0082】
ほぼ4mmストロークした時点(本例では下死点より3.7mm上昇した時点c)で、上昇工程側の位置制御器326による位置制御(3)から圧力制御器328により圧力制御(4)に切り替えられ、上昇方向への圧力指令(第2圧力指令)に追従させるべく、圧力制御される。これ(製品の形状凍結)により、更に製品の角部が直角形状に近づく(
図4(C))。
【0083】
上記圧力制御(4)を一定時間行った後、油圧シリンダ220の第2圧力指令は0に変更され、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は脱圧される。脱圧が完了(圧力が0に近い所定の小さい値に低下)すると、上昇工程側の圧力制御器328による圧力制御(4)から位置制御器326による位置制御(5)に切り替えられ、油圧シリンダ220はクッションパッド210をその位置(約下死点上4mm)に保持すべく、位置制御される(4mm(Sx)におけるロッキング作用)。
【0084】
その後、スライド110は速やかに上昇し(
図3(A))、油圧シリンダ220に間接的に保持されるブランクホルダ202は、スライド110が下死点から上昇を開始した後、上型120に干渉しないように、所定の時間を待って(位置制御(5)で)上昇する。この時、製品は下型から離脱する(ノックアウトされる)。
【0085】
図5は、上記構成のダイクッション装置200の制御方法の第2の実施形態を示す図である。
【0086】
図5には、プレスサイクルにおけるスライド位置、ダイクッション位置及びダイクッション力(圧力)を示す波形図が示されており、また、
図5(A)、(B)、及び(C)には、スライド110のインパクト時、下死点、及び上昇工程における成形時のダイクッション装置200の要部及び金型(上型121、下型122)が示されている。
【0087】
本例の上型121は、
図4に示した上型120と構造が異なり、上に閉じた中空カップ状のダイス121aと、パッド121bを駆動する油圧シリンダ121cを内蔵したシリンダブロック121dとが連結されて構成され、油圧シリンダ121cを駆動することによりダイス121aの内側でパッド121bを上下動させることができるようになっている。また、下型122は、中空カップ状のダイス121a内に挿入される上側に凸のパンチである。
【0088】
材料203は、上型121と下型122とにより、以下に説明するようにカップ形状に絞り加工される。尚、ダイス121aの下面のコーナー部の曲率(R)、下型122のパンチ上面のコーナー部のRは、深絞り性を助長する為に、十分な大きさが確保されている。
【0089】
サイクル初期(下降工程のスライド110が材料203にインパクトするまでの期間)、位置制御(下降工程の位置制御)に切り替えられ、クッションパッド210は、待機位置(プレス・スライドストロークにおけるダイクッション開始スライド位置)に位置制御される。材料203は、待機位置に位置制御されている油圧シリンダ220のピストンロッド220aに連動するクッションパッド210上に配備されたクッションピン204に支持されるブランクホルダ202上に保持(セット)されている。
【0090】
スライド110の下降工程では、スライド110がダイクッション開始スライド位置に到った時点(
図5(A)に示すインパクト時点)で、下降工程の制御器310において、スイッチSW1により位置制御器316による位置制御から圧力制御器318による圧力制御に切り替えられ、ダイクッション圧力を制御するための制御信号がスイッチSW1、SW3を介して出力され、スライド110に装着された上型121と、ブランクホルダ202に保持された材料203と、ボルスタに固定された下型122との間で、絞り加工が開始される。
【0091】
この時点からプレス下死点に到る過程は、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は、第2の指令器314から出力される、本絞り成形に必要な所定のダイクッション力に相当する圧力指令(第1圧力指令)に追従すべく、圧力制御される(
図5に示す成形期間(a)参照)。
【0092】
図5(B)に示すようにスライド110が下死点に到ると、油圧シリンダ220の第1圧力指令は0に変更され、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は脱圧される。脱圧が完了(圧力が0に近い所定の小さい値に低下)すると、圧力制御器318による圧力制御から位置制御器326による位置制御に切り替えられ、油圧シリンダ220は、クッションパッド210をスライド下死点位置(より1mm小さい位置)に位置制御され、完全に脱圧される(下死点におけるロッキング作用)。
【0093】
この時点で製品形状は、カップ円筒部の上側および下側のRが大きい為、全体的に丸みを帯びた形状である(
図5(B)に示す材料203の形状参照)。
【0094】
プレス・スライド下死点では、その後、ダイス121a内を摺動するパッド121bに下方向の力F1を作用・保持させるべく、油圧シリンダ121cが駆動される。これにより、製品の上端部は、パッド121bから力F1が作用した状態で、下型122のパンチの間に挟まれた状態になる。尚、油圧シリンダ121cの駆動の詳細な説明はここでは省略する。
【0095】
次に、上昇工程側の位置制御器326による位置制御から圧力制御器328に切り替えられ、油圧シリンダ220の下室220bは、力F1より10%〜20%程度小さい上方向に力F2に相当する圧力指令(第2圧力指令)に追従させるべく、圧力制御される。この時点で、ダイクッションは少し(Sxより少ない量)上昇する(製品の上下R形状部が少し直角形状に近づくように変形する)。
【0096】
スライド110の上昇工程の初期には、上記力F1,F2が作用した状態で、スライド110は微少ストローク量Sxを微速で上昇し、(Sx上昇した位置で)停止する。尚、Sxは、製品の上下R形状部が直角形状に変形する為の製品高さ寸法の収縮量である。また、スライド110の位置及び速度は、スライド位置検出器114により検出されるスライド位置、又はクランク軸エンコーダ116により検出されるクランク軸112の角度又は角速度に基づいて制御することができるが、ここではその詳細な説明は省略する。
【0097】
スライド110が微速で上昇する時、製品の円筒外側面は、微速で上昇する上型121のダイス121a内の側面と製品の外側面間の摩擦力によって上側に引っ張られ、微速で上昇する製品の円筒内側面は、下型122のパンチの外側面と製品の内側面間の摩擦力によって下側に引っ張られ、製品上下のR形状は微小ストローク間に直角形状へと変形を助長されつつ変形する(
図5に示す成形期間(b)参照)。
【0098】
そして、スライド110がSx上昇位置で停止中に、製品には上方向から力F1、下方向から力F2が作用した状態を一定時間保持し、製品の形状凍結を待つ(
図5に示した成形期間(c)参照)。このように(スライド110が上昇中に)油圧シリンダ220が上昇動作中に、一定の力F2に相当する(第2圧力指令に追従する)圧力を制御可能なことも本発明の特徴の一つである。
【0099】
スライド110の上昇工程中にスライド110がスライド位置Sxで一定時間停止した後、力F2に相当する油圧シリンダ220の第2圧力指令は0に変更され、油圧シリンダ220の下室220bの圧力は脱圧される。脱圧が完了(圧力が0に近い所定の小さい値に低下)すると、上昇工程側の圧力制御器328による圧力制御から位置制御器326による位置制御に切り替えられ、油圧シリンダ220はクッションパッド210をスライド位置Sx(より1mm小さいダイクッション位置)に位置制御される(Sxにおけるロッキング作用)。
【0100】
その後、スライド110は速やかに上昇し、油圧シリンダ220に間接的に保持されるブランクホルダ202は、スライド110がスライド位置Sxから上昇を開始した後、上型121に干渉しないように所定の時間を待って(位置制御で)上昇する(
図5(d)参照)。この時、製品は下型122から離脱する(ノックアウトされる)。
【0101】
上記のようにスライド110の下降工程時にクッションパッド210の圧力制御を行うことにより材料203のプレス成形(通常のプレス成形)を可能にするとともに、上昇工程時に通常のクッションパッド210の位置制御の他に圧力制御も行うことにより材料203のプレス成形(2回目のプレス成形)を可能にし、これにより1プレスサイクルで2回のプレス成形を実現可能にしている。また、上記構成のダイクッション装置200は、上昇工程において、下降工程時に発生させることができるダイクッション力と同等のダイクッション力を発生させることができる。
【0102】
[ダイクッション装置の第2の実施形態]
図6は本発明に係るダイクッション装置の第2の実施形態を示す構成図である。尚、
図1と共通する部分には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0103】
図6に示すように第2の実施形態のダイクッション装置200’は、
図1に示した第1の実施形態のダイクッション装置200とは、油圧シリンダ220に圧油を供給する油圧機械(液圧機械)250’の構成が相違する。
【0104】
即ち、第2の実施形態のダイクッション装置200’に適用された油圧機械250’は、油圧ポンプ/モータ252の駆動軸に、第1の実施形態の電動サーボモータ254の代わりに、両傾転式可変容量型油圧(液圧)ポンプ/モータ270が締結されている。
【0105】
また、両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270の片側ポートにはアキュムレータ272が接続され、アキュムレータ272には、インダクションモータ(電動モータ)274により駆動される油圧ポンプ(液圧ポンプ)276から逆止弁278を介して圧油が供給され、略一定圧の圧油が蓄積される。また、アキュムレータ272と逆止弁278との間にはリリーフ弁280が設けられている。リリーフ弁280は、アキュムレータ272に予期せぬ異常圧力が作用した場合に、圧油をタンク282に逃がす役割を果たす。更に、油圧ポンプ276と逆止弁278との間にはオンロード弁284が設けられている。オンロード弁284は、アキュムレータ272に蓄積された圧油の油圧が所定の下限値以下に低下すると、オンにされ、所定の上限値を越えるとオフにされる弁であり、オンロード弁284がオンにされると、インダクションモータ274により駆動される油圧ポンプ276から逆止弁278を介してアキュムレータ272に圧油が供給される。
【0106】
いま、ダイクッション圧力:P
両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータのトルク:T
両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータの押し退け容積:q
油圧ポンプ/モータの押し退け容積:Q
アキュムレータに蓄積された圧油の油圧:P
O
比例定数:k
1、k
2、k
3、k
とすると、次式が成立する。
【0107】
(kP
Oq)/2π=T →T=k
1q …(4)
(kPQ)/2π=T →P=k
2T …(5)
P=k
1k
2q=k
3q …(6)
(6)式に示すように、ダイクッション圧力Pは、両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270の押し退け容積qに比例する。したがって、両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270の押し退け容積q(両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270の斜板(または斜軸)角)を、ダイクッション制御装置300により制御することにより、ダイクッション圧力Pを制御することができる。
【0108】
また、ダイクッション制御装置300による位置制御におけるクッションパッド210の減速時、又はダイクッション制御装置300による圧力制御における油圧シリンダ220の下室220bの圧力の減圧時には、油圧ポンプ/モータ252に制動用の、回転方向と反対方向のトルクが作用し、両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270が油圧ポンプとして作用する。油圧ポンプとして作用する両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270によりアキュムレータ272には圧油が供給され、油圧シリンダ220の運動エネルギ又は油圧シリンダ220の圧油が保有するエネルギは、アキュムレータ272に蓄積される圧油として回生される。これにより、ダイクッション装置200’の省エネルギ化を図ることができる。
【0109】
油圧ポンプ/モータ252が油圧モータとして作用し、油圧モータとして作用する油圧ポンプ/モータ252によって両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270が従動して油圧ポンプとして作用する。油圧ポンプとして作用する両傾転式可変容量型油圧ポンプ/モータ270によりアキュムレータ272には圧油が供給され、油圧シリンダ220の運動エネルギ又は油圧シリンダ220の圧油が保有するエネルギは、アキュムレータ272に蓄積される圧油として回生される。これにより、ダイクッション装置200’の省エネルギ化を図ることができる。
【0110】
[その他]
尚、上昇工程時に行われるプレス成形は、この実施形態に限定されず種々の成形が考えられ、要は上昇工程時にクッションパッドに加えられたダイクッション力を利用するものであれば、いかなるものでもよい。
【0111】
また、本実施形態では、下降工程時にクッションパッドの位置制御と圧力制御とを切り替えるようにしているが、これに限らず、クッションパッドの圧力制御のみを行うようにしてもよい。この場合、プレスサイクル初期のクッションパッドは、所定の基準面に一定の圧力で当接させ待機させる(圧力制御状態にする)。
【0112】
更に、ダイクッション圧力指令は、ステップ状のダイクッション圧力指令に限らず、ダイクッション位置に応じて段階的に変化し、又はテーパー状に変化するものでもよい。
【0113】
また、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。