特許第5968393号(P5968393)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968393断熱ガラスユニット内への光学素子の集積
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968393
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】断熱ガラスユニット内への光学素子の集積
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/00 20060101AFI20160728BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20160728BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20160728BHJP
   H02S 30/00 20140101ALI20160728BHJP
【FI】
   E06B5/00 D
   E06B9/24 Z
   H01L31/04 560
   H02S30/00
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-214260(P2014-214260)
(22)【出願日】2014年10月21日
(62)【分割の表示】特願2012-508905(P2012-508905)の分割
【原出願日】2009年5月7日
(65)【公開番号】特開2015-17500(P2015-17500A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2014年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】511269598
【氏名又は名称】フォトソーラー・アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】エイク・ベッセル
(72)【発明者】
【氏名】アリシア・ヨハンソン
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・バルホルム−ハンセン
【審査官】 仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−530069(JP,A)
【文献】 特開2004−128419(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0136198(US,A1)
【文献】 特開2006−37499(JP,A)
【文献】 特開平9−226032(JP,A)
【文献】 特開2000−268610(JP,A)
【文献】 特開平9−275534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二枚の窓ガラスを備えた断熱ガラスユニットであって、該断熱ガラスユニット内部に少なくとも一つの光学素子が集積されていて、前記光学素子が、複数の穿孔と非穿孔領域とを有し、前記非穿孔領域が、該断熱ガラスユニットが取り付けられる建物内への光の侵入を防止し、前記穿孔が、所定の入射角の光を通過させる一方で他の入射角を有する光が前記穿孔を通過することができずに遮蔽効果を提供するような深さ/幅の比を有し、
前記光学素子が、2GPa以上のヤング率を有する硬質材製であり、接着剤によって二枚の前記窓ガラスの間に配置され、前記接着剤が前記光学素子の前記穿孔内に存在しておらず、前記光学素子が、前記窓ガラスの領域の少なくとも一部を覆うように構成されている、断熱ガラスユニット。
【請求項2】
前記複数の穿孔が透明領域を構成し、前記非穿孔領域が不透明領域を構成する、請求項1に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項3】
前記非穿孔領域が光を反射及び吸収する、請求項1又は2に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項4】
前記光学素子が金属スクリーンであり、前記金属スクリーンが、ステンレス鋼、鉄合金、非鉄合金、及びアルミニウムベース合金から成る群から選択された材料製である、請求項1からのいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項5】
前記光学素子がポリマー材であり、前記ポリマー材が、(a)アクリル(PMMA)、(b)安定化ポリカーボネート(PC)、(c)ポリイミド(PI)、(d)ポリエーテルイミド(PEI)、(e)前記(a)から(d)のいずれかのガラス充填組成物、及び(f)前記(a)〜(e)のいずれかの他の充填材から成る群から選択されている、請求項1からのいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項6】
前記接着剤が透明である、請求項1からのいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項7】
前記接着剤が、テープ、糊、樹脂、ポリマー材、エポキシ、アクリル、UV硬化性樹脂、及びシアノアクリレートから成る群から選択されている、請求項1からのいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項8】
前記接着剤が両面テープである、請求項1からのいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項9】
前記両面テープが、圧縮性の発泡材コアを有する、請求項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項10】
前記両面テープが、幅3mmの両面アクリル材を備える、請求項8又は9に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項11】
前記接着剤が、スクリーン印刷UV硬化性接着剤である、請求項1から10のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項12】
前記光学素子が、前記断熱ガラスユニットの少なくとも一枚の窓ガラスの水平長さに対応するサイズに切断されるように構成されている、請求項1から11のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項13】
二つ以上の光学素子が、該光学素子の間にギャップを備えて窓ガラスに取り付けられるように構成されている、請求項1から12のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項14】
二つ以上の光学素子が、該光学素子が隣接して窓ガラスに取り付けられるように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項15】
二つ以上の光学素子が、該光学素子が重畳して窓ガラスに取り付けられるように構成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項16】
前記接着剤が、前記光学素子の穿孔に対応する穿孔を有するテープである、請求項1から15のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項17】
前記接着剤が、前記光学素子の非穿孔領域の上に適用された糊の薄層である、請求項1から16のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項18】
断熱ガラスユニットの少なくとも二枚の窓ガラスのうち第一の窓ガラスは、屋外に面する最外ガラスであり、該少なくとも二枚の窓ガラスのうち第二の窓ガラスは、屋内に面する最内ガラスである、請求項1から17のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項19】
複数のスクリーン印刷パターンのうち一つ以上が、窓ガラス上に融合されたガラスエナメルを備える、請求項1から18のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【請求項20】
前記光学素子が、前記断熱ガラスユニット内の太陽電池材と集積されるように構成されている、請求項1から19のいずれか一項に記載の断熱ガラスユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、断熱ガラスユニット内へ光学素子を集積する方法に関する。特に、本発明は、複数の穿孔及び非穿孔領域を有する光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
大型ガラスのファサードは、建物の建築的外観を改善するが、一般的な欠点は、ファサードの過度の太陽光の透過に起因する建物の過熱である。この問題を解決するためには、空調若しくは太陽光の遮蔽、又はこれら二つの組み合わせを使用しなければならない。太陽光の遮蔽が益々注目されていることの主な動機の一つは、新たな建物がよりエネルギー効率的なものであることを要求する政府の規制である(エネルギー価格の上昇と共に)。
【0003】
太陽光遮蔽デバイスは、窓の内側若しくは外側のいずれかに配置可能であり、又はガラスユニット内に集積可能である。
【0004】
屋内シェーディングの例として、ベネチアンブラインド、ローマンブラインド、ブラインド、カーテン、屋内シャッタが挙げられる。屋内太陽光シェーディングは、望ましくない光の遮蔽という点に関しては十分であるが、太陽光放射が遮蔽デバイスの表面上で熱に変換される際には熱的に不十分である。従って、屋内シェーディングは、建物内部の熱の異なった分布をもたらすが、ファサードを透過する全太陽エネルギーは、屋内遮蔽の無いファサードと比較して変わらない。
【0005】
屋外シェーディングの例として、ベネチアンブランド、太陽光スクリーン、シャッタ、遮蔽ラメラが挙げられる。屋外シェーディングは、ファサードを透過する光及び太陽光エネルギーの両方を低減する点に関して十分である。屋外シェーディングの最も明確な欠点は、メンテナンス及び洗浄の必要性、並びに可動デバイスの頻繁な機械的故障である。
【0006】
集積型太陽光シェーディングの例は、太陽光遮蔽箔、集積ベネチアンブラインド、着色ガラス、コーティングガラス、集積型太陽光スクリーンである。集積型太陽光シェーディングの効率は、検討される実際のタイプに依存するが、典型的には、最良のタイプの効率は、建物内に透過する光及び太陽光エネルギーの両方を低減する点に関して、屋外シェーディングのものに近い。
【0007】
太陽電池又は光起電電池を、太陽光シェーディングと組み合わせて取り付けて、遮蔽と、光起電効果により変換された太陽光エネルギーからの発電との両方の利点を得ることができる。
【0008】
特許文献1(“Combination of window and sun‐proof screen”)に記載されている太陽光遮蔽デバイスでは、ベネチアンブラインドが、二枚の透明物質シートの間(例えば、二重窓の窓ガラスの間)に集積される。一般的に、ベネチアンブラインドは、取り付けバーの下方に懸架され、その取り付けバーは、スラブを傾斜させて、ガラス内部でルーバー(よろい戸)を上下させるデバイスを備え得る。ブラインドの適正な機能化には、各ルーバーの自由な懸架が必要で、つまり、ブランドは、各スラブの幅としての最小内寸のガラスを必要として、ガラスの中心に取り付けられなければならない。このことは、ベネチアンブラインドの使用を制限する。何故ならば、ベネチアンガラスは、実質的に垂直に取り付けられないガラス(つまり屋根ガラス)においては動作不能だからである。また、屋内取り付けベネチアンブラインドは、矩形又は二次元以外の形状(三角形のガラスや湾曲した(アーチ状の)頂部を有するガラス等)のガラスには適応不能である。屋内取り付けベネチアンブラインドは、機械的又は電気的フィードスルーを必要とし、このフィードスルーは、ガラスの密閉における一般的な弱点である。
【0009】
着色窓ガラス又はコーティング窓ガラスは、太陽の角度に関わりなく入射放射を低減するので、結果として、窓は、冬の間光を遮蔽し過ぎて、夏の間ほとんど光を遮蔽しない。更に、着色窓ガラス又はコーティング窓ガラスは、窓を通して視られる対象及び窓を通る光によって照らされる対象の色の知覚に影響し得る。
【0010】
他のタイプの太陽光遮蔽デバイスは半透明スクリーンであり、その半透明スクリーンは、光を通過させる小さな穿孔を備えた不透明スクリーンで構成される。特許文献2(“Double window apparatus”)には、屋内窓と屋外窓との間に配置された防虫/太陽光スクリーンが記載されている。フレームは、窓の間の空間内への空気の流れを可能にする空気孔を有する。同様の発明が特許文献3(“Sunshade/Sunscreen combo”)に示されていて、複数の開口を有するセミグリッドの平坦な太陽光スクリーンが、光及び風の通過を可能にする。両方の場合において、太陽光スクリーンは、断熱ガラス自体の密閉キャビティに集積されていない。代わりに、太陽光スクリーンは、窓の不可欠な部分と見なされ、窓を開けた時に使用され得る。
【0011】
断熱ガラスユニット内に集積される光学素子(半透明スクリーン状)は一般的に、キャビティ内部に懸架されるか、又は断熱ガラスユニット内部の窓ガラスに対して完全に積層される。特許文献4(“Light dispersive insulated glazing unit”)では、光分散フィルムが、断熱ガラスユニットに集積される。フィルムは、二枚の窓ガラスの間の中間に懸架されて、窓の縁において接着剤で取り付けられる。この方法は、ガラスが完全に覆われることを要する。平坦性を維持するためにフィルムをスペーサバーの間で伸ばさせなければならないので、部分的な被覆は不可能である。更に、しわを防止するために、製造時にフィルムは熱処理に晒されて、フィルムが縮んでしわを無くす。
【0012】
二重窓の屋内側の一方に完全に積層されたUVスクリーンが特許文献5に記載されている。二枚の窓ガラスの間の空間は不活性ガスで充填される。特許文献5には、本質的に平坦なプレート又は箔である部分を集積するガラス産業において最も一般的に使用されている方法が記載されている。二枚のPVB又はEVA樹脂シートの間にプレート又は箔を積層させて、また、二枚のガラスシートの間に積層させる。樹脂を、加熱しながら高圧又は真空下で硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2849762号明細書
【特許文献2】米国特許第5379824号明細書
【特許文献3】米国特許第6315356号明細書
【特許文献4】米国特許第6259541号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0209020号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2005/0213233号明細書
【特許文献7】デンマーク特許第176229号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
断熱ガラスユニット内に光学素子/太陽光スクリーンを集積する代替方法を提供することに関しては問題が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
少なくとも二枚の窓ガラスを備えた断熱ガラスユニット内部に少なくとも一つの光学素子を集積する方法が開示される。光学素子は、複数の穿孔及び非穿孔領域を備える。非穿孔領域は、断熱ガラスユニットが取り付けられる建物において光の侵入を防止する。穿孔は、所定の入射角を有する光を通過させる一方で他の入射角を有する光が穿孔を通過することができずに遮蔽効果を提供する深さ/幅の比を有する。
光学素子は、接着剤を用いて二枚の窓ガラスの間に配置される。接着剤は、光学素子の穿孔内には実質的に存在しない。
【0016】
従って、光学素子が、非穿孔基板に配置された穿孔を有することが有利である。何故ならば、窓ガラスを介する太陽エネルギーの透過率を減じることによって生じる建物内部の加熱が減じられるからである。光学素子は、断熱ガラスユニットの断熱キャビティ内部に取り付けられ、遮蔽デバイスを有さない断熱ガラスと比較すると、太陽エネルギーの透過率を顕著に低減する。光学素子は、光学素子の領域の少なくとも一部を覆う接着材によって、断熱ガラスユニットの窓ガラスの一方に取り付けられる。この方法は、従来技術において知られているようなガラスユニット内部の光学素子の積層や懸架を用いるものと比較して、複数の利点を提供する。
【0017】
従来技術では、二枚の窓ガラスの間に集積された光学素子又は太陽電池は、表面全体にわたって完全に積層されて、積層キャビティ内部の物体は、プロセス後に完全に積層材内に埋め込まれる。透明積層材(大抵はEVA又はPVB)は、光学素子内の穿孔を充填する。これは、穿孔が積層されず空気(又は、断熱ガラスユニットを充填するのに使用されるガス)のみで充填されている場合と比較しての欠点である。光学素子内の穿孔が空気で充填されると、穿孔内部の光の角度は、屈折率が同じなので、窓の外側における光の角度と同じである。従って、太陽の角度が大きいと、穿孔を介して入って来る光は、同じ大きな角度を有する。他方、穿孔が、樹脂やポリマー材等の接着剤(空気よりも大きな屈折率を有する)で充填されている場合、穿孔内の光の角度は、太陽の角度よりも小さくなる。これは、詳細な説明における図1の説明のスネルの法則から明らかである。結果として、日中等において大きな角度で通って来る光は、角度の減少に起因して、積層接着剤等のより大きな屈折率の物質で充填された孔を透過し得る。同様の積層されていない光学素子に対しては、光は、光学素子によって反射又は吸収される。従って、完全に積層された光学素子を用いることによって、その光学素子は、小さな又は中程度の大きさの太陽の角度に対する光の通過のみを許容する非積層光学素子と比較して、顕著に広範な太陽の角度からの光の通過を許容する。この角度に関する透過率の選択性は、本光学素子に対する重要な点であり、非積層モジュールを使用することの動機は非常に強いものである。
【0018】
従って、完全積層は、二枚のガラスシートの間の箔又はプレートの固定を保証するものであるが、この方法の欠点は、遮蔽デバイスを介する光の光路に大きな影響を与え(多くの場合望ましくない)、遮蔽デバイスの効率を妥協させることである。
【0019】
樹脂等の接着剤で穿孔が充填されている光学素子に対する太陽の角度に関する透過率の選択性が、穿孔が接着剤を有さない光学素子に対するものと同じであるべき場合、光学素子内の穿孔は、入射光を減らすためにより小さなものでなければならない。しかしながら、穿孔の寸法を小さくすることは、このタイプの光学素子において不可避に生じる回折歪みを増大させて、これは、シースルーの質の大きな低下につながる。
【0020】
説明されるタイプの太陽光遮蔽スクリーンに対して、スクリーンの穿孔は選択された視認距離において人間の眼では見えないように設計されることが一般的に望ましい。1メートル近くの視認距離において、最小寸法0.45mmの穿孔は、この要求を満たすことが分かっている。0.50mm以下の臨界サイズの孔を備えた反復構造は、人間の眼によって検出可能な回折を形成する。発生する回折は、大きな孔よりも小さな孔に対して酷くなり、孔が積層樹脂で充填されるならば、はるかに小さな孔が、同様の光学特性を備えた太陽光スクリーンを得るのに必要となる。従って、説明されるようなものであるが一般的な積層法を用いた太陽光遮蔽構造を実現した場合には、遮蔽スクリーンは、はるかに厚いものであるか、又は小さな孔を有するものである必要があり、その光学的な質は、発生する回折によって低下する。
【0021】
積層材自体も、シースルーの質を低下させ得る。何故ならば、極小の穿孔は、積層材で全体的に充填することが難しいものであり得るからである。従って、泡が、穿孔周囲の積層材内に生じ得て、小型レンズとして光を合焦して、この欠陥を明らかに目に見えるものにし得る。更に、積層は多くの材料を必要とするので、本願で提示される方法よりも高価である。
【0022】
従来技術では、その結果物は積層ガラスであり、例えば太陽光スクリーニングデバイスはPVB又はEVA内に完全に埋め込まれている。この方法の欠点は、太陽光スクリーン内の孔が硬化後に樹脂で充填されて、その樹脂の屈折率がガラスのものに近いので、遮蔽効率が大幅に妥協されることである。
【0023】
光学素子は、スクリーンの領域の僅かな部分のみを覆い得る接着剤によって、断熱ガラスユニット(IGU,insulated glazing unit)の内部に取り付けられる。二枚のガラスシートの間に完全に積層された太陽光シェーディングと比較して、本発明に係る光学素子は、積層太陽光シェーディングのように光学素子内の穿孔が樹脂で充填されておらず、その光学素子が空気又はガス(クリプトンやアルゴン等)を含むという事実に起因して、顕著に高い光学性能を有する。空気又はガスの屈折率は1に近いので、光が光学素子を通過する角度は、ガラス外部の光の角度と同一である。
従って、光学素子は、大きな角度の太陽光放射の太陽エネルギーの透過率を効率的に低下させるので、完全に積層された太陽光スクリーンとは異なるものである。また、本願で説明される取り付け方法は、低減された回折つまりより良い光学的な質での太陽光スクリーンの使用を可能にする。
【0024】
更に、ガラスを介する建物内への太陽エネルギーの透過率は、太陽の位置、つまり、水平線からの太陽の高さに関して、光学素子の設計を通じて規制される。太陽が空の最も高い位置にある時に、光学素子を備えた断熱ガラスユニットを介する太陽エネルギーの透過率は最低となるので、光学素子は、最も必要とされる時に最も強い太陽の遮蔽を提供する。
【0025】
光学素子は、高い効率で直射太陽光ビームの遮蔽を提供するので、コーティングガラス又は着色ガラスとは異なるものである。更に、光学素子は、コーティングガラス又は着色ガラスとは異なり、漸進的な遮蔽特性を提供する。
【0026】
ガラス内に光学素子を集積することによる他の利点は、損傷から保護されていて追加の洗浄を必要としない点である。従って、屋外又は屋内メンテナンスの費用がかからない。更に、カーテン、ベネチアンブラインド、ローマンブラインド等を用いた場合のように洗浄前に取り外さなければならないものがないので、光学素子が集積されている窓の洗浄は簡単である。窓の内部、つまり二枚の窓ガラスの間に光学素子を配置することによって、太陽光が建物の内部に入って来る前に太陽光の一部を反射及び吸収するので、光学素子は、建物の加熱を低減する。
【0027】
他の利点は、ベネチアンブラインドと比較して、光学素子内の穿孔が、垂直方向及び水平方向の両方に対して大きな入射角を有する直射放射を遮蔽することができることである。
【0028】
更に、光学素子は、その素子の穿孔を充填する積層材を備えないガラスに取り付けられるので、透過光の変色が完全に防止される。従って、説明される素子の固定方法は、建物内部の物体の自然な演色を保証する。
【0029】
また、光学素子は、例えば太陽光スクリーン、太陽光シェード、太陽光遮蔽モジュール、シェーディング、太陽光スクリーニング等としても知られていて又は指称され得る。また、断熱ガラスユニットは、例えばIGU、窓等としても知られていて、又は指称され得る。また、窓ガラスは、例えば窓等としても知られていて、又は指称され得る。また、接着剤は、テープ、糊、樹脂、積層材等としても知られていて、又は指称され得る。穿孔は、開口、孔、スロット、スリット、透明領域等としても知られていて、又は指称され得る。非穿孔領域は、不透明領域、基板等としても知られていて、又は指称され得る。
【0030】
一部実施形態では、複数の穿孔は透明領域を構成し、非穿孔領域は不透明領域を構成する。
透明領域は、例えば50パーセントの透明度を有し得る。
少なくとも、光学素子が一般的な屋内施設での視認距離(例えば1から10メートル)に対応する所定の距離から見られる場合に、不透明領域が裸眼には本質的に不可視となるように、透明領域は、互いに十分に近づけて配置され得る。
【0031】
一部実施形態では、非穿孔領域は、光を反射及び吸収する。
非穿孔領域が光を反射及び吸収することが利点となるのは、それによって、光学素子が、外部からの光の流入の遮蔽及び低減を提供するからである。
【0032】
光学素子が複数の穿孔又は開口又は孔を有することが有利であり、穿孔が透明領域を構成し得て、スクリーン材が、太陽光を反射及び/又は吸収する不透明領域となり得る。透明領域は、所定の入射角の光を通過させる一方で他の入射角を有する光が光学素子を通過することができないような深さ/幅の比を有する。
【0033】
一部実施形態では、光学素子は硬質(リジッド)材料製である。
光学素子用に硬質材を使用することが有利となるのは、ガラスに取り付ける際に作業し易いからである。硬質材を使用することによって、従来技術のようにしわを防止するために光学素子を懸架させる必要が無い。更に、光学素子は平坦なので、離散した複数の位置における取り付けによってガラス内部に固定することができる。光学素子は、従来技術のように完全に積層されたり伸ばされたりする必要が無い。単一の縁又は点のみで取り付けるだけで十分である。
【0034】
光学素子は、特許文献6及び特許文献7に記載されているリジッドスクリーンであり得る。
【0035】
一部実施形態では、硬質材が、その材料のリム(縁)又はストリップにおける水平又は垂直位置において、材料又はストリップの幾何学的形状に対して又は取り付け位置に対して掛けられた場合に、硬質材は締め金を外されたままであるように適用される。
【0036】
一部実施形態では、硬質材は、材料のリムにおいて垂直位置に掛けられた際に、自分自身を実質的に硬く保つのに十分剛性である。
【0037】
一部実施形態では、硬質材は、2GPa以上のヤング率を有する。
非穿孔光学素子に対するヤング率が2GPa以上であることが有利であるのは、この値が、硬質材(硬質ポリマー、プラスチック、金属等)を、柔軟材料(箔(例えばプラスチック箔)、積層フィルム等)と区別するからである。ヤング率又はE率は、材料の弾性率を記述する。高いヤング率は、本方法に関して利点となり得て、非穿孔光学素子のヤング率は、本方法において例えば30GPaとなり得る。従って、一部実施形態では、硬質材は、通常の処理条件において、しわくちゃになったり、しわになったり、巻いたり、よじれたりしない。
【0038】
一部実施形態では、光学素子は金属スクリーンである。
光学素子用に金属を使用することが利点となるのは、例えば硬質性に対する要求を満たし得るからである。
【0039】
一部実施形態では、金属スクリーンは、
‐ ステンレス鋼
‐ 鉄合金
‐ 非鉄合金
‐ アルミニウムベース合金
から成る群から選択された材料製である。
例えば、青銅、ニッケル鋼合金インバー等の合金や、ステンレス鋼等の鋼を使用することが利点となるのは、これらの材料は安価で処理し易い等の理由による。
【0040】
一部実施形態では、金属スクリーンがエッチングされて、穿孔が形成される。
金属スクリーン内に穿孔をエッチングすることが利点となるのは、エッチングプロセスが、遮蔽素子の形状に広範な設計自由度を与えて、エッチングされた穿孔が、良好な縁、高い幾何学的正確性等を備えた見た目の良いものになるからである。
【0041】
一部実施形態では、光学素子はポリマー材である。
光学素子用にポリマー材を使用することが利点となるのは、例えば硬質性に対する要求を満たし得るからである。
【0042】
一部実施形態では、ポリマー材は、
‐ アクリル(PMMA)
‐ 安定化ポリカーボネート(PC)
‐ ポリイミド(PI)
‐ ポリエーテルイミド(PEI)
‐ これらのガラス充填組成物
‐ これらの他の充填材
から成る群から選択される。
これらのポリマー材を使用することが利点となるのは、安価であり、処理し易い等の理由による。
【0043】
一部実施形態では、光学素子は、UV光又は温度変化に晒された際に、数年の期間にわたって顕著には変化しない。
遮蔽素子は、断熱ガラス内に集積されるので、ガラスの予想寿命全体において実質的に変化せず安定なままであり得る。この遮蔽素子の安定性は、ガラスキャビティ内部の素子の形状、色彩、及び相対的位置に関係する。
【0044】
一部実施形態では、接着剤はUV露光に対して安定である。
接着剤が紫外線(UV)露光に対して安定であることが利点となるのは、接着剤は、光学素子と同様に、建物のファサードに取り付けられた断熱ガラスユニット内に集積された際に太陽光に晒され、接着剤がガラスの全寿命にわたって光学素子を適所に保持するべきだからである。
【0045】
一部実施形態では、接着剤は温度変化に対して安定である。
接着剤が温度変化に対して安定であることが利点となるのは、建物のファサードに取り付けられた断熱ガラスの温度は、一年の季節において及び昼夜において顕著に変化し得るからである。
【0046】
一部実施形態では、接着剤は、その接着性を数年の期間にわたって維持する。
接着剤がその接着性を数年の期間にわたって維持することが利点となるのは、光学素子を備えた断熱ガラスは、多年にわたって取替え又は修理されずに機能可能でなければならなくなり得るからである。
【0047】
一部実施形態では、接着剤は透明である。
接着剤が透明であることが利点となるのは、光学素子を取り付けるのに使用される接着剤が断熱ガラスユニット内で見えなければ、光学素子の見た目が改善されるからである。
【0048】
一部実施形態では、接着剤及び光学素子は実質的に同じ色を有する。
接着剤及び光学素子が同じ色を有することが利点となるのは、光学素子を取り付けられるのに使用される接着剤が目に見えなくなれば、光学素子の見た目が改善されるからである。
【0049】
一部実施形態では、接着剤は、実質的に少量のガスを放出する。
【0050】
一部実施形態では、接着剤は、断熱ガラスユニット内のくもりを実質的に生じさせない。
【0051】
一部実施形態では、接着剤は、
‐ テープ、
‐ 糊、
‐ 樹脂、
‐ ポリマー材、
‐ エポキシ、
‐ アクリル、
‐ UV硬化性樹脂、
‐ シアノアクリレート、
から成る群から選択される。
【0052】
一部実施形態では、接着剤は両面テープである。
両面テープを使用することが利点となるのは、光学素子を窓ガラスに容易にくっ付けるからである。
【0053】
一部実施形態では、接着テープは、圧縮性の発泡材コアを有する。
圧縮可能な接着テープを使用することが利点となるのは、ガラス及び金属は異なる速度で加熱されて、光学素子(例えば金属)はガラスよりも膨張し得るが、その熱膨張の差が、テープの発泡材コアによって調節可能だからである。圧縮性発泡材はポリエチレンであり得る。
【0054】
一部実施形態では、接着テープは幅3mmのポリエチレン発泡材コアを備え、その両面にアクリル接着剤を備える。
【0055】
一部実施形態では、接着剤はスクリーン印刷UV硬化性接着剤である。
【0056】
一部実施形態では、光学素子は、断熱ガラスユニットの窓ガラスの少なくとも一枚の少なくとも一の寸法に対応するサイズに切断されるように構成される。
光学素子が、その光学素子が取り付けられる窓ガラスに適合するように切断可能であることが有利である。例えば、光学素子は、窓ガラスの水平長さと同じ長さを有するように切断され得る。
【0057】
一部実施形態では、光学素子は、窓ガラスの領域の少なくとも一部を覆うように構成される。
従って、光学素子が窓ガラスの領域の一部を覆い得て、その一部は、窓ガラスの領域全体よりも小さい。しかしながら、多数の光学素子を窓ガラスに取り付けることによって、窓ガラスの全領域を光学素子で覆い得る。代わりに、一つの光学素子が窓ガラスの領域全体を覆い得る。
【0058】
一部実施形態では、光学素子は、窓ガラスのいずれの箇所にも取り付けられるように構成される。
屋内取り付けベネチアンブランドと比較してのこの実施形態の利点は、頂部に取り付けバーを必要としないので、光学素子をガラス内のいずれの位置にも適合できる点である。更に、本発明に係る光学素子は、異形のガラスに簡単に取り付け可能である。また、ガラス自体も所望の方向に取り付け可能である。更に、本発明は、屋内取り付けベネチアンブランドにおいて必要とされるような光学素子を制御するための縁の密閉部におけるフィードスルーを必要としないので、本発明は、ガラスからのガス漏れ、又はガラス内への水蒸気の侵入を排除する。
更に、この実施形態の利点は、断熱ガラスキャビティ内部に伸ばされたフィルム状の光学素子とは異なり、ガラスの部分被覆が可能な点である。
【0059】
一部実施形態では、二つ以上の光学素子が、それらの間にギャップに備えて窓ガラスに取り付けられるように構成される。
【0060】
一部実施形態では、二つ以上の光学素子が、それらが隣接して窓ガラスに取り付けられるように構成される。
【0061】
一部実施形態では、二つ以上の光学素子が、それらが重畳して窓ガラスに取り付けられるように構成される。
上述のいずれかの方法で光学素子を窓ガラスに取り付けることが利点となるのは、見た目が良いものになり得るからである。
【0062】
一部実施形態では、二つ以上の光学素子の各々が、光学素子の第一のリム(縁)に沿った接着領域を有する。二つの以上の光学素子のうち第一のものが、第一のリムにおいて窓ガラスに取り付けられ、二つ以上の光学素子のうち第二のものが、第一のリムにおいて、光学素子のうち第一のものの第二のリムに部分的に且つ窓ガラスに部分的に取り付けられて、第一の光学素子の第二のリムが、光学素子のうち第二のものの第一のリムによって、窓ガラスに固定されるようにする。
光学素子のリムのうち一の上の接着剤しかその光学素子を窓ガラスに完全に固定するのに必要とされないことが利点となるのは、一つのリムにのみ接着剤を適用することは、簡単且つはやいものであり、使用される接着剤の量を減らし得るからである。
【0063】
一部実施形態では、光学素子は、
‐ 窓ガラスの少なくとも一部を覆うように窓ガラス上に接着剤を適用し、
‐ 窓ガラス上の接着剤に光学素子を取り付け、
‐ 接着剤の硬化後に穿孔内部の接着剤を除去することによって、
窓ガラスに取り付けられる。
接着剤の硬化後に光学素子の穿孔内部に残っている接着剤を除去することが利点となるのは、それによって、光学素子を備えた断熱ガラスが建物のファサードの遮蔽デバイスとして使用される際に、穿孔に接着剤が存在しない状態が保たれるからである。
【0064】
一部実施形態では、穿孔内に存在している接着剤が、UV放射露光、及びその後の分解剤を用いてのUV放射された接着剤の分解によって、除去される。
【0065】
一部実施形態では、光学素子は、一点で窓ガラスに取り付けられるように構成される。
光学素子が一点のみでガラスに取り付け可能であることが利点となるのは、これが簡単ではやい方法となり得て、使用される接着剤の量を減らし得るからである。
【0066】
一部実施形態では、光学素子は、一つのリムにおいて窓ガラスに取り付けられるように構成される。
光学素子が一つのリムのみにおいてガラスに取り付け可能であることが利点となるのは、これが簡単ではやい方法となり得て、使用される接着剤の量を減らし得るからである。
【0067】
一部実施形態では、接着剤は一以上の連続線で適用される。
【0068】
一部実施形態では、接着剤は一以上のドットで適用される。
可能な限り少量の接着剤を使用することの利点は、見た目の良い窓が得られ、接着剤からのガス放出及びくもりが最小化されることである。
【0069】
一部実施形態では、光学素子が、その光学素子の非穿孔領域の少なくとも一部に接着剤を適用することによって、窓ガラスに接着される。
【0070】
一部実施形態では、接着剤は、光学素子の穿孔に対応する穿孔を有するテープである。
【0071】
一部実施形態では、接着剤は、光学素子の非穿孔領域の上に適用された糊の薄層である。
【0072】
一部実施形態では、断熱ガラスユニットの少なくとも二枚の窓ガラスの第一のものは、屋外に面する最外ガラスであり、少なくとも二枚の窓ガラスの第二のものは、屋内に面する最内ガラスである。
【0073】
一部実施形態では、光学素子は、少なくとも二枚の窓ガラスの第一のものの内側表面に取り付けられる。
光学素子を第一の窓ガラス(最外ガラスであり得る)の内側表面に取り付けることが利点となるのは、光学素子が二枚の窓ガラスによって保護されて屋外環境及び屋内環境の両方に対して保護されるからである。また、遮蔽素子が屋外側に面するガラスと熱的に接触している場合には、太陽光遮蔽素子において吸収される太陽エネルギーを、熱として散逸させて、建物の外に伝えることができる。
【0074】
一部実施形態では、第三の窓ガラスが、第一の窓ガラスと第二の窓ガラスとの間に配置される。
【0075】
一部実施形態では、光学素子が、第一の窓ガラスの方を向いた第三の窓ガラスの表面に取り付けられる。
光学素子を第三の窓ガラス(最外窓ガラスと最内窓ガラスとの間に配置された中間窓ガラスであり得る)に取り付けることが利点となるのは、光学素子が最外窓ガラス及び中間窓ガラスによって保護されて、屋外環境及び屋内環境の両方に対して保護されるからである。
【0076】
一部実施形態では、接着剤は、一以上のスクリーン印刷パターンによって、見えなくされる。
スクリーン印刷パターンを用いて接着剤を隠すことが利点となるのは、スクリーン印刷パターンが、見た目の良い一様で均一な外観を提供するからである。また、スクリーン印刷パターンは、UV劣化に対して接着剤を保護する。
【0077】
一部実施形態では、一以上のスクリーン印刷パターンのうち一つが、複数の窓ガラスのうち第一のものの上に配置される。
スクリーン印刷パターンを第一の窓ガラス(例えば光学素子がこの窓ガラスに取り付けられる場合、最外窓ガラスであり得る)上に提供することが利点となるのは、光学素子を取り付けるのに使用される接着剤が、スクリーン印刷パターンによって隠されて、UV露光から保護されるからである。
【0078】
一部実施形態では、一以上のスクリーン印刷パターンのうち一つが、第三の窓ガラスの内側面の上に配置される。
第三の窓ガラス(例えば光学素子がこの窓ガラスに取り付けられる場合、中間窓ガラスであり得る)の内側面上にスクリーン印刷パターンを提供することが利点となるのは、光学素子を取り付けるのに使用される接着剤がスクリーン印刷パターンによって隠されるからである。
【0079】
一部実施形態では、複数のスクリーン印刷パターンのうち一以上がグリッドである。
【0080】
一部実施形態では、複数のスクリーン印刷パターンのうち一以上が、窓ガラス上に焼成又は融合させたガラスエナメルを備える。
【0081】
一部実施形態では、接着剤は、光学素子上の非穿孔領域に適用されることによって、見えなくされる。
接着剤を光学素子上の非穿孔領域に適用することによって、接着剤を隠すことが利点となるのは、接着剤を隠すための更なる手段を提供することは不要で無駄だからである。
【0082】
一部実施形態では、光学素子が、断熱ガラスユニット内の太陽電池材と集積されるように構成される。
光学素子を太陽電池又は光起電デバイスと組み合わせることが利点となるのは、光学素子による遮蔽及び太陽電池によるエネルギーの両方を、一つの同じ断熱ガラスユニットで提供できるからである。このことは、断熱ガラスユニットの機能を一般的に最適化し、エネルギー及び建物内の空間を節約し得る。
【0083】
太陽電池材は、断熱ガラスユニット内に集積され得る。従って、嵐の時に屋根や壁から落ちる可能性のある露出された又は脆弱な太陽電池素子に関する問題が無くなり得る。
更に、例えば太陽が、夏及び日中において最も強い時に、太陽電池が、例えば建物内部を冷却するためのエアコンシステムで使用され得る電気を最大限発生させることができる。
【0084】
更に、光学素子が太陽電池としても機能する場合、太陽電池に対する電気フィードスルーを、断熱ガラスユニットの縁の密閉部に提供することができる。
【0085】
一部実施形態では、光学素子の非穿孔領域は、太陽電池材で覆われるように構成される。
光起電発電機又は太陽電池(例えば薄膜光起電)で光学素子を覆うことが有利である。これによって、光学素子が、直射太陽光を効率的に遮蔽し、遮蔽された太陽光ビームを利用可能な電気エネルギーに変換する。非穿孔領域の全ての領域、表面又は面が太陽電池材で覆われ得て、つまり、前面、背面、及び穿孔領域又は孔の内側が覆われ得る。
【0086】
一部実施形態では、太陽電池材は、光学素子内の穿孔の内側表面を覆うように構成される。
太陽電池が穿孔の内側表面にも適用されることが利点となるのは、太陽からの放射が穿孔の内側にも当たるので、穿孔内部の表面にも太陽電池材を適用することによって、太陽電池によって利用される太陽光放射の量が多くなるからである。
【0087】
一部実施形態では、太陽電池材は、アモルファスシリコン薄膜、微結晶シリコン薄膜、又はこれらの組み合わせである。
【0088】
一部実施形態では、太陽電池材に対する電気接続は、導電性接着剤によって提供される。
導電性接着剤を使用することが利点となるのは、それが二つの機能を有し得るからである。即ち、太陽電池をガラスに接着させる機能と、太陽電池からの電流を運ぶ機能である。
導電性接着剤は、太陽電池を外部グリッドに接続し得る。外部グリッドは、太陽電池によって発生させた電力の送電システム又はエネルギー貯蔵システムである。
【0089】
一部実施形態では、導電性接着剤は、光学素子の面上の一以上の電極と、窓ガラス上のスクリーン印刷パターンとの間に適用されるように構成される。
スクリーン印刷パターンも含むことが有利となるのは、スクリーン印刷パターンは、導電性接着剤を隠し得るからである。
【0090】
一部実施形態では、接着剤は、その接着剤に導電体を加えることによって、導電性にされる。
【0091】
一部実施形態では、導電体は、
‐ 銀粒子、
‐ 金属層で覆われたプラスチック粒子
から成る群から選択される。
例えば銀粒子や、金属で覆われたプラスチック粒子を使用することが利点となるのは、これらの材料は比較的化学的に不活性だからである。
【0092】
本発明は、上述の及び以下の方法、対応する方法、デバイス、使用、及び/又は、生産手段を含む多様な側面に関係し、その各々は、説明される第一の側面に関係して説明される複数の利点の一以上を生じさせて、また、その各々は、説明される第一の側面及び/又は添付の特許請求の範囲で開示される実施形態に対応する一以上の実施形態を有する。
【0093】
特に、本願で開示されるのは、内側に集積された少なくとも一つの光学素子を備えた断熱ガラスユニットであり、少なくとも二枚の窓ガラスを備える。光学素子は、複数の穿孔と非穿孔領域とを有する。非穿孔領域は、断熱ガラスユニットが取り付けられる建物内への光の侵入を防止する。穿孔は、所定の入射角の光を通過させる一方で他の入射角を有する光が穿孔を通過できずに遮蔽効果を提供するような深さ/幅の比を有する。
光学素子は、接着剤によって二枚の窓ガラスの間に配置される。接着剤は、光学素子の穿孔内には実質的に存在しない。
【0094】
本発明の上述及び/又は追加の課題、特徴及び利点は、添付図面を参照して、以下の例示的で非限定的な本発明の実施形態の詳細な説明によって更に明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
図1】如何にして光学素子が機能するのかの例を示す。
図2】光学素子に対する有効G値のグラフを示す。
図3】如何にして光学素子を窓ガラスに取り付けることができるのかの例を示す。
図4】光学素子が窓ガラスに取り付けられている例を示す。
図5】断熱ガラスユニットに含まれる光学素子の例を示す。
図6】太陽電池と組み合わさった光学素子の例を示す。
図7a】非穿孔領域の前側及び穿孔領域の内側(つまり孔の内側)の両方を覆う太陽電池フィルムの例を示す。
図7b】非穿孔領域の前側及び穿孔領域の内側(つまり孔の内側)の両方を覆う太陽電池フィルムの例を示す。
図7c】非穿孔領域の前側及び穿孔領域の内側(つまり孔の内側)の両方を覆う太陽電池フィルムの例を示す。
図8】如何にして光学素子を窓ガラス上に設けて取り付けることができるのかの例を流れ図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
以下の説明においては、如何にして本発明が実施可能であるのかを例示的に示す添付図面を参照する。
【0097】
図1は、如何にして光学素子が機能するのかの例を示す。
従来技術において、二枚の窓ガラスの間に集積された光学素子又は太陽電池は、全表面にわたって完全に積層される。積層材は、光学素子内の穿孔を充填する。光学素子が積層されていないと、光学素子内の穿孔は樹脂等の接着剤で充填されていないが、空気又は断熱ガラスユニットを充填するのに使用されるガスで充填されていて、穿孔内部の光の角度は、屈折率が同じであるので、窓の外の光の角度と同じである。従って、太陽の角度が大きいと、穿孔を介して来る光は大きな角度を有する(図1のa)を参照)。一方、穿孔が、空気よりも高い屈折率を有する樹脂やポリマー材等の接着剤で充填されていると、穿孔内の光の角度は、太陽の角度よりも小さくなる(図1のb)を参照)。これは以下のスネルの法則から明らかである。結果として、日中等において大きな角度で通って来る光は、角度の減少に起因して、樹脂等の接着剤で充填された孔を透過することができる。同様の積層されていない光学素子に対しては、光は、光学素子によって反射又は吸収される。従って、完全に積層された光学素子を用いることによって、小さな又は中間の大きさの太陽の角度に対してのみ光を通すことができる非積層光学素子と比較すると、光学素子は、考えられるほぼ全ての太陽の角度からの光の通過を許容する。
【0098】
穿孔が樹脂等の接着剤で充填されている光学素子に対する太陽の角度の透過率の選択性は、穿孔が接着剤の無いものである光学素子に対する場合と同じであるべきときには、光学素子内の穿孔は、入射光を減らすためにより小さくならなければならない(図1のc)を参照)。しかしながら、穿孔のサイズを小さくすることによって、回折がより目に見えるようになり、スクリーンのシースルーの質が低下する。
【0099】
図1は、光学素子101が窓ガラス102に取り付けられている三つの場合を示す。図1のa)では、光学素子101内の穿孔104は、真空、空気及び/又は屈折率が1.0のガスで充填されている。図1のb)及びc)では、積層法を用いて、穿孔が積層材103で充填されている。非積層素子と同じカットオフ角度Θを積層素子が有するようにするために、図1のc)に示されるように、より小さな孔を有する光学素子を用いなければならない。
【0100】
以下の例では、光学素子101が、Θ=60°のカットオフ角度を最適に有するものとする。つまり、太陽の高さが地平線から60°を超えて大きくなると、直射光はスクリーンを透過しない。空気はn=1の屈折率を有し、窓ガラス102のガラスはn=1.5の屈折率を有する。太陽の高さが60°の時、スネルの法則によると、窓ガラス102内の太陽の角度は以下のようになる:
【数1】
【0101】
一方、光学素子101が、略1.48の屈折率を有するEVAやPVB等の接着剤103で積層されると、積層材103で充填された穿孔内の角度は以下のようになる。
【数2】
【0102】
他方、光学素子が積層されておらず、穿孔104が空気で充填されていると、角度は
【数3】
となり、これは太陽の高さと同じである。
【0103】
更に、太陽のカットオフ角度が60°であり、光学素子の厚さtが200μmであると、EVAで充填された穿孔は、以下の広がりBを有さなければならない:
B=tanΘ・t=tan(35.9°)・200μm=145μm
【0104】
一方、穿孔104が空気で充填されていると、穿孔の広がりB’は以下のようでなければならない:
B’=tanΘ’・t=tan(60°)・200μm=346μm
【0105】
回折は、346μmの孔と比較して145μmの大きさの孔に対して顕著に目に見えるようになるので、これが、大きな非充填孔又は非積層孔を有することについての強い動機である。
【0106】
図2は、有効G値(又は太陽熱利得係数)のグラフを示す。有効G値は、光学素子に対する太陽エネルギー透過率の尺度である。G値は、穿孔が空気、接着剤樹脂で充填されている光学素子に対してそれぞれプロットされている。
【0107】
図2のa)では、有効G値は、角度で測った空の太陽の高さの関数としてプロットされている。
【0108】
G値は、樹脂で充填された穿孔に対して顕著に大きくなっていて、つまり、非積層素子(穿孔が空気で充填されている)と比較して、積層素子に対して顕著に大きくなっている。
【0109】
G値は、直射太陽透過率及び二次内部熱伝達の和として定義される。G値が小さくなると、遮蔽が良好になる。グラフは、空気又はガス(アルゴン、クリプトン等)で充填された穿孔を備えた光学素子、接着剤(この場合、積層材)で充填された穿孔を備えた光学素子との太陽光遮蔽を比較する。特に、大きな太陽の高さに対して、積層光学素子よりも、空気充填穿孔に対して遮蔽効果が大きいことは明らかである。また、光学素子は、水平方向において漸進的に遮蔽するので、G値が太陽の方位角の増加の関数として計算される場合にも、同じ結果が得られる。
【0110】
図2のb)には、積層素子及び非積層素子に対する平均有効G値が、一年の各月に対してプロットされている。
空気充填穿孔を備えた光学素子は、最大の遮蔽効果を有する。有効G値は、コペンハーゲンの南向きのファサードに配置された三枚窓ガラスアルゴン充填断熱ガラスユニット(IGU,insulating glazing unit)に対して計算されている。結果は、窓に用いられている窓ガラスのタイプ、窓が配置されている方向、及び位置に応じて、僅かに変化し得る。
【0111】
図3は、如何にして光学素子を窓ガラスに取り付けることができるのかの例を示す。
光学素子301は、接着剤303を用いて窓ガラス302に取り付けられる。光学素子301は、大きな非穿孔領域305を有することができるが、光学素子301の主領域は穿孔304を有する。接着剤303は、図3のa)、c)、d)及びf)に見て取れるような連続線で、及び/又は、図3のb)及びe)に見て取れるような小さなドットとして適用可能である。
【0112】
図3のa)〜c)は、穿孔が光学素子のサイズと比較して相対的に小さい例を示し、図3のd)〜f)は、穿孔が光学素子と比較して相対的に大きい例を示す。
【0113】
従来技術のような完全に積層された太陽光スクリーンを用いる代わりに、本方法に係る光学素子は、糊やテープ等の接着剤を用いて窓ガラスに取り付けられる。光学素子とガラスとの間に接着剤を適用する方法として考えられるものは多数あり、一部例が図3に示されていて、接着剤がガラスを介して見える。穿孔光学素子は、接着剤が適用可能である非穿孔材の領域を有することができる。この非穿孔領域は、光学素子の何れの箇所にも適用可能である。非穿孔領域は、一方の観察方向において接着剤を隠すという利点を有する。接着剤は、一以上の連続線、及び/又は、ドット等で適用可能である。線は、垂直、水平、対角線、及び/又は、傾斜等であり得る。また、線は、中央、一以上の縁、及び/又は、光学素子内の適切ないずれかの箇所に配置可能である。
【0114】
代替的に及び/又は追加的に、接着剤を、光学素子の穿孔領域に適用し得る。接着剤が穿孔領域に適用される場合、一部の穿孔は初めから接着剤で充填され得る。しかしながら、後述のように、穿孔内の接着剤は、後で除去され得る。更に、穿孔の大部分が充填されていない限り、光学素子は、その遮蔽機能を保ち得る。窓ガラス上のスクリーン印刷パターンを用いることによって、接着剤を見えなくすることができる。
【0115】
図4は、光学素子が窓ガラスに取り付けられている例を示す。光学素子401は、接着剤403を用いて窓ガラス402に取り付けられる。接着剤403は、光学素子401の穿孔404に対応する穿孔を備えた積層フィルムであり得る。
代わりに、接着剤403は、初め、穿孔の無い積層フィルムであり得る。その後、積層材等の物質は光学素子の効果に影響を与える可能性があるので、穿孔404内に何ら物質が存在していないことを確実にするために、光学素子401の穿孔404内に存在している積層フィルムの一部が除去され得る。
【0116】
穿孔内に存在している積層フィルム等の接着剤は、UV放射で露光し続いて分解剤を用いてUV照射された接着剤を分解することによって、除去可能である。
【0117】
代わりに、本方法は、穿孔内の空間を充填せずに、穿孔領域の一部又は全体にわたって光学素子を糊付けすることを含み得る。これは、光学素子内の穿孔に対応する小さな穿孔を有するテープを用いることによって、又は非穿孔領域にのみ又は主に適用された糊の薄層を用いることによって、行うことができる。代わりに、接着剤が孔を充填しないのであれば、積層材等の糊の連続フィルム又は層を用いることによって、光学素子を、窓ガラスに取り付けることができる。
【0118】
接着剤は、例えばアクリル製の糊又はテープであり得る。純アクリル接着剤は、UVに適合し、有機蒸気の低い放出値を示す。更に、アクリル接着剤は、高温において機械的変形に対する優れた耐性を示す。代わりに、接着剤は、スクリーン印刷UV硬化性接着剤であり得る。また、テープは、両面がアクリル接着剤でコーティングされた発泡材コアを備え得る。発泡材コアは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又は他のポリマー発泡材製であり得る。発泡材コアの利点は、窓ガラスとシェーディング又は光学素子との間の応力緩和の改善である。
【0119】
図5は、断熱ガラスユニットに含まれる光学素子の例を示す。
図5のa)は、断熱ガラスユニット510の断面を示し、外側ガラス511、ベント孔518を備えた中間ガラス512、内側ガラス513、乾燥剤515で充填されたスペーサバー514、一次封止材516、二次封止材517、外側ガラス511に取り付けられた光学素子501が示されている。
図5のb)は、断熱ガラスユニット510の断面を示し、外側ガラス511、内側ガラス513、乾燥剤515で充填されたスペーサバー514、一次封止材516、二次封止材517、外側ガラス511に取り付けられた光学素子501が示されている。
【0120】
非積層光学素子を集積する本方法によると、IGUが最外ガラス及び最内ガラスと称される二枚の窓ガラスで構成される場合、光学素子は、IGUの最外窓ガラスの内側面に取り付けられる。代わりに、IGUの最外窓ガラスと最内窓ガラスとの間に一枚以上の窓ガラスが存在し得る。この場合、光学素子は、中間ガラスの外側面に取り付けられ得る。
【0121】
光学素子が、最外窓ガラスの内側面に配置される場合、断熱ガラスユニット用に二枚の窓ガラスを有するだけで十分であり、IGUの重量を最小化する。光学素子を取り付けるのに使用される接着剤は、光学素子が窓ガラスに取り付けられる建物の外側から目に見えるものであり得て、光学素子は、最外窓ガラスを介して入射する太陽光放射に晒され得る。この場合、接着剤は、紫外線(UV,ultraviolet)放射に対して安定であるべきであり、UV放射によって影響を受けないべきである。最外窓ガラス上のスクリーン印刷パターンを用いることによって、接着剤を、UV放射から遮蔽して、外側から目に見えないようにできる。
【0122】
接着剤が建物の内側から目に見えることを防止するため、光学素子は、接着剤が適用される不透明領域を有することができる。
【0123】
中間窓ガラスをIGU内に含ませることもできる。そして、光学素子を、外側窓ガラスの内側面と中間窓ガラスの外側面の両方に配置することができる。光学素子が、最外窓ガラスと最内窓ガラスとの間に集積された中間窓ガラスの外側面に配置され、接着剤が光学素子の不透明領域に配置される場合、接着剤は、外側からの放射から守られ、観察されることから守られる。また、外側窓ガラス上のスクリーン印刷パターンを用いることによって、接着剤を外側からの観察から隠すこともできる。内側からの観察から接着剤を隠すために、中間窓ガラスの内側面にスクリーン印刷パターンを適用することができる。
【0124】
接着剤が観察から隠されない場合、接着剤は、UV放射に対してロバストであるべきである。更に、IGUが配置されている建物の外側又は内側のいずれかから接着剤が目に見え得る場合、接着剤は見た目の良いものであることが有利となり得る。見た目の良い光学素子を有するために、接着剤は、明確な領域内に少量(小さなドット及び/又は細い線等)適用され、透明であるか、又は光学素子と同じ色を有し得る。
【0125】
光学素子をその間のギャップに取り付けて、より多くの光が窓を透過するようにすることが可能であり、又は、光学素子を隣同士で取り付けて、互いに接触又は隣接するようにすることができる。他の可能性では、素子を重畳させる。
【0126】
図6は、太陽電池と組み合わせた光学素子の例を示す。光学素子601は、導電性コーティング606でコーティングされて、この外側に、太陽電池活性材607及び透明導電性コーティング608が存在する。導電体のグリッド609が加えられて、太陽電池から生じた電流を運ぶ。
【0127】
太陽電池と共に使用するために、光学素子を窓ガラスに取り付けるのに使用される接着剤が、導電性であるべき場合には、銀粒子等の導電体で充填可能である。接着剤の厚さは、窓ガラスと光学素子との熱膨張の差に起因する光学素子の小さな動きを許容するのに十分なものであるべきである。UV放射に晒される場合、接着剤は、年単位でUV放射に対して安定であるべきであり、また、変形したり変色したりしないべきである。
【0128】
図7は、非穿孔領域の前側及び穿孔領域の内側の両方を覆う太陽電池フィルムを備えた光学素子の例を示す。
図7a)及び図7b)の両方は、窓ガラス702に取り付けられた光学素子701を示す。図の左側の四角形は、図の右側に見て取れる光学素子の拡大部を示す。内側窓ガラス713も示されている。
光学素子701の拡大図において、薄膜707(例えば太陽電池フィルム)が、光学フィルム701の非穿孔領域701の前側と、穿孔領域704の内側(つまり光学素子701内の孔の内側)の少なくとも一部とを覆っているのが見て取れる。
【0129】
図7a)は、光学素子701の前側に加えて、穿孔領域704の内側全体も、フィルム707(太陽電池フィルム等)で覆われている又はコーティングされている様子を示す。
【0130】
図7b)は、光学素子701の前側に加えて、穿孔領域704の内側の一部も、フィルム707(太陽電池フィルム等)で覆われている又はコーティングされている様子を示す。
【0131】
図7a)及び図7b)において、光学素子は、窓ガラスに対して相対的に傾斜しているものとして示されている。
【0132】
図7c)は、窓ガラス702に取り付けられた複数の光学素子701を示し、各光学素子は、導電性基板706と、薄膜光起電コーティング又は太陽電池コーティング707と、透明導電性酸化物(TCO,transparent conducting oxide)コーティング708とを備える。太陽電池コーティング707は、光学素子701の非穿孔領域の前側と、光学素子701の穿孔領域704又は孔の内側とに適用される。光学素子の前側は、太陽光放射を示す傾斜矢印によって示されている。
【0133】
図7c)では、光学素子は直線状で、窓ガラスに対して直角又は直交して示されている。
【0134】
光学素子の穿孔領域の内側の一部又は全部を太陽電池フィルムで覆う又はコーティングすることによって、太陽電池フィルムのより大きな領域に太陽光が当たる可能性があるので、より多くの太陽光が太陽電池によって電気に変換可能である。
【0135】
図8は、如何にして光学素子を窓ガラス上に設けて取り付けることができるのかの例を流れ図で示す。
IGU内の窓ガラスの数は、組み立て中のパネルを処理できる方法と、IGUの縁の密閉に影響する。以下の参照符号は図5のa)及びb)の参照符号を参照するものである。
【0136】
例1: 図5のb)に示されるような内部取り付け光学素子を備えた矩形断熱ガラスユニットの構築。光学素子は縁の密閉部と接触しない。
【0137】
ステップ1: 図5の光学素子501は、ステンレス鋼の薄いストリップから形成され得て、そのストリップは、太陽が空高くあり遮蔽が最も必要な際に良好な遮蔽性が得られるようにエッチングされ得る。
【0138】
ステップ2: 矩形IGU510を形成するために、光学素子501を、スペーサバー514の水平部の長さによって画定されるキャビティの内幅よりも僅かに短い長さ(典型的には2mm又は3mm)に切断する。窓ガラスを覆うのに必要な光学素子501の数は、窓ガラスの高さを光学素子の高さで割ることによって計算される。低い高さの素子を形成するためには追加の素子が必要となり得る。ガラス上の最後のギャップは、素子の幅全体の数パーセントに過ぎないものであり得る。
【0139】
ステップ3: 光学素子に、その光学素子の一縁に沿って、例えば幅3mmの両面アクリル接着剤503を提供し得る。接着剤は、最初、保護シリコン紙で覆われ得る。代わりに、接着剤は、光学素子上に予め形成されているか、又はプロセスのより早い段階で光学素子に適用され得る。そして、光学素子を外側ガラス511に取り付けることができる。
【0140】
ステップ4: 第一の光学素子501は、縁から所定の距離でガラスの頂部リム(縁)に沿って、接着剤503で固定される。
【0141】
ステップ5: 第二の光学素子は、例えば0.5mmから1mmの距離で第一の光学素子と僅かに重畳するように、第一の光学素子の底部リムに沿って取り付けられ得る。この重畳は、光学素子間の誤った光を排除して、窓ガラスに固定された前者の光学素子を保持する。
後続の光学素子は、ガラスの下端に当たるまで、窓ガラスに取り付けられる。
【0142】
ステップ6: 最後の光学素子は、最後の位置に適合するように長さ方向に切断される(最後の位置が光学素子の高さよりも小さい場合)。そして、最後の光学素子のこの条件付の切断の後に、最後の光学素子を窓ガラスに取り付けることができる。
【0143】
ステップ7: そして、IGUを、IGU業界において既知の方法に従って、スペーサ及び内側ガラス511を用いて組み立てることができる。
【0144】
例2: 水平取り付け光学素子501を備えた矩形IGU510の構築。中間窓ガラス512がIGU510内に含まれる(図5のa)を参照)。光学素子501は縁の密閉部と接触しない。
ステップ1〜6は、上述の例1と同じである。しかしながら、そのプロセスでは、例1のステップ7の前に、以下のステップが含まれる。
【0145】
例1のステップ6とステップ7との間のステップ: 中間ガラス512は、一次封止材516(例えばポリイソブチレンであり得る)を用いて、光学素子501を覆うように外側ガラス511の頂部に固定されて、光学素子積層体を実質的に形成する。この積層体を、標準的なIGUの構成における外側ガラスとみなすことができる。積層体内部の光学素子は二枚の窓ガラスによって守られているので、この積層体は洗浄可能であり、標準的な製造ラインで処理可能である。
積層体の内部(つまり、外側ガラス511と中間ガラス512との間の空間)をベントするために、小さな孔(例えば直径6mm)を中間ガラス512に形成し得る。これによって、侵入してくる湿気をスペーサバーのキャビティ内の乾燥剤515で吸収することができる。孔518は、例えば小さくて除去可能なテープ片を用いることによって、洗浄中に密閉可能であり、積層体内の湿気を防止する。
【0146】
一部実施形態について詳述して示してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって定められる対象の範囲内の他の方法によっても実施可能である。特に、本発明の範囲から逸脱すること無く、他の実施形態が利用可能であり、構造及び機能の修正が可能であることは理解されたい。
【0147】
複数の機能を列挙する装置クレームにおいて、複数の手段は、一つの同じハードウェア資源によって実施可能である。特定の複数の手段が互いに異なる請求項又は異なる実施形態に記載されている事実は、これらの手段の組み合わせを有利に利用することができないということを意味するものではない。
【0148】
本明細書において使用される際の“備える”との用語は、述べられた特徴、個数、ステップ、構成要素の存在を特定するためのものであって、一以上の他の特徴、個数、ステップ、構成要素又はこれらの群の存在又は追加を排除するものではない。
【符号の説明】
【0149】
101、301、401、501 光学素子
102、302、402 窓ガラス
103、303、403 積層材、接着剤
104、304、404 穿孔
305 非穿孔領域
510 断熱ガラスユニット
511 外側ガラス
512 中間ガラス
513 内側ガラス
514 スペーサバー
515 乾燥剤
516 一次封止材
517 二次封止材
518 ベント孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8