(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記組成物が、前記アルキド樹脂含有バインダーの重量またはバインダーの総重量を基準として、100ppm未満の量でコバルトを含有する、請求項1に記載の組成物。
前記シラン処理されたコロイド状シリカ粒子が、組成物の乾燥重量または担体液を含まない重量を基準として、前記組成物中に2〜25重量%の量で存在する、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
前記シラン処理されたコロイド状シリカ粒子およびアルキド樹脂含有バインダーまたはバインダーの総量を、バインダーに対するシラン処理されたシリカの重量比率0.05〜2の範囲で添加する、請求項7または8に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一実施形態によれば、担体液は水および/または有機溶剤、好ましくは水である。このように、塗料組成物は水性、油性、溶液またはそれらの混合物とすることができる。一実施形態によれば、担体液は組成物中、好ましくは水性分散液中に、例えば乾燥開始前に、約20〜約80重量%、例えば約30〜約70重量%、または約40〜約60重量%存在する。
【0011】
一実施形態によれば、塗料組成物は塗料分散液である。本出願において、本明細書で「塗料組成物」という場合、塗料分散液、塗料乳濁液および塗料溶液が包含される。単純化のために、本明細書において実施形態はしばしば分散液として記載するが、それは他のいずれかの組成物、例えば乳濁液または溶液にも適用され得る。
【0012】
好ましくは、塗料組成物は安定である。「安定」という用語は、組成物が、成分a)〜c)を含んで水性分散液中に存在し、15〜30℃で2ヶ月、好ましくは4ヶ月、または最も好ましくは6ヶ月保管してもゲル化や沈殿を生じないことを意味する。
【0013】
一実施形態によれば、塗料組成物は本質的に活性乾燥剤を含まない。「活性乾燥剤」という用語は、酸素の取り込み、過酸化物生成、および過酸化物分解を周囲温度、すなわち0〜40℃で促進する乾燥剤を意味する。好ましくは、塗料組成物は、コバルト、マンガン、鉄、セリウム、バナジウム、および/または鉛に基づく活性乾燥剤を含まない。一実施形態によれば、活性乾燥剤の金属含量は、アルキド樹脂含有バインダーの重量またはバインダーの総量を基準として、200ppm未満、例えば20ppm未満、または2ppm未満、または0ppmの量で組成物中に存在する。一実施形態によれば、コバルト、マンガン、鉄、セリウム、バナジウム、および/または鉛に基づく活性乾燥剤は、アルキド樹脂含有バインダーの重量またはバインダーの総量を基準として、塗料組成物中に100ppm未満、例えば10ppm未満、または1ppm未満、または0ppmの量で存在する。
【0014】
一実施形態によれば、塗料組成物はペイント、エナメル、ラッカー、またはワニス分散液である。好ましくは、組成物は水性の分散液または乳濁液である。一実施形態によれば、塗料組成物中には活性乾燥剤は存在しない。
【0015】
一実施形態によれば、塗料組成物は補助的な乾燥剤を含む。補助的な乾燥剤は、周囲温度、すなわち0〜40℃で触媒的な活性はないが、活性乾燥剤の活性を高めることができる。一実施形態によれば、補助的な乾燥剤はバリウム、ジルコニウム、カルシウム、ビスマス、亜鉛、カリウム、ストロンチウム、および/またはリチウムから選択される金属、好ましくはジルコニウムに基づく。
【0016】
一実施形態によれば、補助的な乾燥剤の金属含量は、アルキド樹脂含有バインダーの重量またはバインダーの総量を基準として、1%未満、例えば0.5%未満、または3000ppm未満、または0.25ppm、または0ppmの量で組成物中に存在する。一実施形態によれば、バリウム、ジルコニウム、カルシウム、ビスマス、亜鉛、カリウム、ストロンチウム、および/またはリチウムに基づく補助乾燥剤は、アルキド樹脂含有バインダーの重量またはバインダーの総量を基準として、10%未満、例えば5%未満、または3%未満または0.25ppmまたは0ppmの量で、塗料組成物中に存在する。一実施形態によれば、組成物はアルキド樹脂含有バインダーの他に任意選択的にさらなるバインダーを含む。一実施形態によれば、アルキド樹脂含有バインダー対他のバインダーの重量比は、約2:1〜約100:1、例えば約5:1〜約100:1、例えば10:1〜約100:1、または50:1〜約100:1の範囲である。
【0017】
一実施形態によれば、アルキド樹脂含有バインダーは、組成物の乾燥重量または担体液を含まない重量を基準として、塗料組成物中に約10〜約90重量%、例えば約70〜約90重量%、または例えば約10〜約30重量%の量で存在する。
【0018】
一実施形態によれば、シラン処理されたコロイド状シリカ粒子は、組成物の乾燥または担体液を含まない重量を基準として、塗料組成物中に約1〜約50重量%、好ましくは約2〜約25重量%、さらに好ましくは約5〜約20重量%、または最も好ましくは約8〜約15重量%の量で存在する。
【0019】
一実施形態によれば、アルキド樹脂含有バインダーまたはバインダーの総量に対するシラン処理されたコロイド状シリカ粒子の重量割合は、約0.05〜約2の範囲であり、例えば約0.1〜約1、好ましくは約0.2〜約0.6、さらに好ましくは約0.3〜約0.5である。このようにこの重量比は、組成物中に存在するアルキド樹脂含有バインダーおよびバインダーの総量の両方に基づくことができる。
【0020】
一実施形態によれば、アルキド樹脂含有バインダーまたはアルキド樹脂系バインダー以外の他のバインダーを組成物中に含めることができ、例えばアクリレート系バインダーまたはエポキシ系、またはポリウレタン系バインダー、またはそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態によれば、アルキド樹脂含有バインダーは、トール油系、亜麻仁油系、またはヒマシ油系アルキド樹脂から選択される
【0021】
一実施形態によれば、担体液は塗料組成物を使用する前、例えば基体に塗装する前は、塗料組成物中の成分であるが、除去、例えば蒸発させてその後に固体材料を固定させ、塗膜、例えば薄い保護フィルムを形成させる。
【0022】
一実施形態によれば、アルキド樹脂として水性および/または油性アルキド樹脂塗料、例えば水性および/または油性のアルキド樹脂ペイントが挙げられる。一実施形態によれば、このような塗料組成物は酸化乾燥型とすることができる。一実施形態によれば、アルキド樹脂塗料はアルキド樹脂乳濁液またはコロイド状の分散アルキド樹脂とすることができる。一実施形態によれば、水性アルキド樹脂が用いられる。一実施形態によれば、アルキド樹脂は修飾物、未修飾物、またはそれらの混合物である。アルキド樹脂は、例えばポリオール、ポリ塩基酸および/または脂肪酸またはトリグリセリド油の縮合重合によって調製され得る。
【0023】
一実施形態によれば、アルキド樹脂は脂肪酸と他の成分との付加により修飾されたポリエステルである。それらは、ポリオールおよびジカルボン酸またはカルボン酸無水物から導かれる。アルキド樹脂には2つのタイプがあり、乾性(半乾性を含む)と不乾性のアルキド樹脂がある。2つのタイプは共に、典型的にジカルボン酸または酸無水物、例えば無水フタル酸または無水マレイン酸、およびポリオール、例えばトリメチロールプロパン、グリセリン、またはペンタエリスリトールから製造される。
【0024】
乾性樹脂、ポリ不飽和脂肪酸から導かれるトリグリセリドは、しばしば植物および植物油、例えば亜麻仁油から導かれる。これらの乾性アルキド樹脂は空気中で硬化される。塗料の乾燥速度および性質は、使用される乾性油の量およびタイプ(ポリ不飽和油が多いと空気中での反応時間が速くなることを意味する)、並びに金属塩、いわゆる油乾燥剤の使用に依存する。これらの金属錯体は、不飽和部位の架橋に触媒作用を及ぼす。
【0025】
一実施形態によれば、アルキド樹脂塗料は2つの方法:脂肪酸からの方法、およびアルコリシスまたはモノ−グリセリドによる方法により製造される。脂肪酸からの方法では、得られる樹脂の組成物をより正確に制御でき、より高品質のアルキド樹脂が製造される。この方法では、酸無水物、ポリオールおよび不飽和脂肪酸が組み合わされ、生成物によって予め決められたレベルの粘度を達成するまで一緒に熱処理(cook)させる。例えば、ペンタアルキド樹脂は、この方法で製造される。アルコリシスまたはグリセリド法では、より経済的にアルキド樹脂が製造されるが、これらの方法は最終生成物の品質制御が最高まではいかない。この方法において、不飽和成分に多く含まれる生植物油がさらなるポリオールと組み合わされて加熱され、トリグリセリドをモノグリセリド油およびジグリセリド油の混合物へとエステル交換させる。この得られた混合物に酸無水物が加えられ、脂肪酸の方法の場合とほぼ同じ生成物へと樹脂分子量を増加させる。しかしながら、アルコリシスの方法によれば、よりランダムに配向した構造が得られる。復生した水を除くため、および反応速度を上げるために、過剰の無水フタル酸が添加された。このようにしてバルク(bulk)を必要な温度まで加熱することによって、未反応の酸を用いて水は除去される。また、キシレンを添加して水との共沸混合物を作ることができ、それによって、より低温への調節を容易にして、より粘度の低い樹脂にし、それは固形物濃度の高いペイントを製造する(AZOプロセスとして公知である)のに有用である。どちらの場合も、得られる生成物は乾性の油性ペンダント基が結合しているポリエステル樹脂である。
【0026】
アルキド樹脂塗料は、長油、中油、および短油の3つのクラスに分類することができる。これらの用語は、樹脂中の乾性油成分の相対的な画分を表す。長油のアルキド樹脂は乾性油の含量の割合が多く、消費者向けの市場で中程度の負荷の塗料として一般に販売される。中油のアルキド樹脂は乾性油がより少なく、高分子量のポリエステル主鎖の割合が多い。これは、ゆっくりと乾燥し、高光沢の塗料および木材塗装として利用される。短油のアルキド樹脂は、ベースのポリエステルポリマーまたは主鎖に比べて乾性油の割合が非常に低い下限にある。これらの塗料は風乾せず、加熱しなければ硬化しない。短油のアルキド樹脂はアミノ/ホルムアルデヒド樹脂と組み合わせて最終金属製品の焼付けエナメルとして使用される。アルキド樹脂はまた、フェノール樹脂、スチレン、ビニルトルエン、アクリルモノマー(より速く乾燥させるため)およびポリウレタンにより改変される。特定の修飾性樹脂を添加することによって、装飾用のチキソトロピー性のアルキド樹脂を製造することができる。最近のアルキド樹脂は短油のA/D樹脂であり、安息香酸および現在ではパラ−ターシャリーブチル安息香酸により鎖長停止されて油の長さが短くされている(アルキド樹脂M48)。装飾用のアルキド樹脂は、特別な油を熱処理させて長鎖化して耐久性を向上させている。エナメルを焼き付けるのに使用される短油の樹脂は、不乾性の飽和した油または脂肪酸から作製される。これらは通常、ずっとより大きなヒドロキシル価および酸価を有し、アミノ樹脂のヒドロキシル基と反応することができる。これらの混合物は通常、アミンで安定化され、貯蔵中のゲル化を防止する。
【0027】
アルキド樹脂塗料の乾性油の典型的な原料は、亜麻仁油、桐油、ヒマワリ油、紅花油、クルミ油、大豆油、魚油、穀物油、D.C.O(ヒマシ油の脱水素によって製造され、半乾性で共役の油/脂肪酸を生じる)およびトール油(パルプおよび紙の製造の樹脂状油の副産物)である。不乾性の可塑剤樹脂は、ひまし香、ヤシ油、ココナッツ油、およびCardura(シェル製の合成脂肪酸、Versatic acid)から製造される。好適なアルキド樹脂はさらに、例えばAlkyd Resins, p. 1-18, Jones, N. Frank, Coatings Research Institute, Eastern Michigan University, Ypsilanti, MI 48197, USA, 2005, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KgaA, Weinheim, 10. 1002/14356007. a01_409に開示されている。
【0028】
一実施形態によれば、シラン処理されたコロイド状シリカ粒子は、さらに改変され、他の要素、例えばアルミニウムおよび/またはホウ素を含有することができ、これらは粒子および/または連続相中に存在することができる。ホウ素で改変されたシリカゾルは、例えば米国特許第2,630,410号明細書に記載されている。アルミニウムで改変されたシリカゾルの調製手順は、さらに例えば「The Chemistry of Silica」, by ller, K. Ralph, pages 407-409, John Wiley & Sons (1979)および米国特許第5,368,833号明細書に記載されている。
【0029】
シラン処理されたコロイド状シリカ粒子は、BET法で測定して約20〜約1500m
2/g、特に約50〜約900m
2/g、さらに特に約70〜約600m
2/g、または約120〜約600m
2/g、または約200〜約400m
2/g、または約220〜約360m
2/gの比表面積を有し得る。
【0030】
シラン処理されたコロイド状シリカ粒子は、例えば欧州特許第2087045号明細書に開示されているように、平均粒径約2〜約150nm、例えば約3〜約60nm、例えば約5〜約40nmまたは約5〜約25nm、または約6〜約12nm、または約7〜約10nmを有し得る。
【0031】
コロイド状シリカ粒子は、狭い粒子サイズ分布、すなわち粒子サイズについて低い相対標準偏差を有することができる。粒子サイズ分布の相対的標準偏差は、粒子サイズ分布の標準偏差 対 数平均粒子サイズの比である。数基準の上記粒子サイズ分布の相対標準偏差は、約60%未満、特に約30%未満、より特に約15%未満である。
【0032】
コロイド状シリカ粒子は水性媒体に分散され、特に水性シリカゾルを形成するために、安定化カチオン、例えばK
+、Na
+、Li
+、NH
4+、有機カチオン、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミンおよび第四級アミン、またはそれらの混合物の存在下で分散される。本発明で使用されるコロイド状シリカ粒子は、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、および最も好ましくは少なくとも6ヶ月の間、ゲル化せず、コロイド状に分散した形態のままである。しかしながらまた、有機媒体を含む分散液、例えばアセトンを媒体の全容積に対して、特に約1〜約20容積%、特に約1〜約10容積%、およびさらに特に約1〜約5容積%使用することができる。しかし、特定の−実施形態では、水性のシリカゾルが任意のさらなる媒体なしに使用される。コロイド状シリカ粒子は負に帯電させることができる。シリカゾル中のシリカ含量は約10〜約80重量%、特に約20〜約70重量%、およびさらに特に約30〜約60重量%とすることができる。シリカ含量がより高いと、得られるシラン処理されたコロイド状シリカ分散液はより濃縮される。シリカゾルのpHは約1〜約13、特に約6〜約12、およびさらに特に約7.5〜約11であり得る。しかし、アルミニウム変性シリカゾルのpHは約1〜約12、特に約3.5〜約11とすることができる。一実施形態によれば、コロイド状シリカ粒子は、例えば欧州特許出願公開第2010/066551号明細書に記載のように有機媒体中に分散される。
【0033】
シリカゾルは、約20〜約100、特に約30〜約90、およびさらに特に約60〜約90のS値を有することができる。
【0034】
これらの範囲のS値を有する分散液は、得られる分散液の安定性を向上できることがわかっている。S値はコロイド状シリカ粒子の凝集の程度、すなわち凝集またはミクロゲル生成の度合いを特徴づけるものである。S値は、J. Phys. Chem. 60 (1956), 955-957 by ller, R. K. & Dalton, R. Lに記載の式にしたがって測定され、計算されている。
【0035】
S値はコロイド状シリカ粒子のシリカ含量、粘度、および密度に依存する。S値が大きいことはミクロゲルの含量が少ないことを示す。S値は、例えばシリカゾルの分散相中に存在するSiO
2の量を重量%で示している。ミクロゲルの度合いは、さらに例えば米国特許第5,368,833号明細書に記載のように、製造過程の間に調節することができる。
【0036】
コロイド状シリカ粒子(本明細書ではシリカゾルともいう)は異なる原料から製造できる。例えば、沈降シリカ、ミクロシリカ(シリカヒューム)、焼成シリカ(ヒュームドシリカ)、または十分な純度を有するシリカゲル、およびこれらの混合物を従来の方法で処理した後、それらは国際公開第2004/035474号に記載の方法でシラン処理できる。シリカゾルはまた、典型的に、例えば米国特許第5,368,833号明細書に記載されるように、水ガラスから得ることができ、この水ガラスは砂、ソーダ、または他の原料から得ることができる。TEOS(テトラエチルオルトシリケート)もまた、シリカゾル製造の原料として使用できる。
【0037】
コロイド状シリカ粒子は、任意の適切なシラン化合物で改変することができる。例えば、トリス−(トリメトキシ)シラン、オクチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン;ビス−(3−[トリエトキシシリル]プロピル)ポリスルフィド、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、オクチルトリメチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン;エポキシ基を含有するシラン(エポキシシラン)、好ましくはグリシドキシおよび/またはグリシドキシプロピル基、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ヘキシルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシラン;ビニル基を含有するシラン、例えばビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス−(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン;ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシリルクロライド、ビニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシリザン、およびそれらの混合物が挙げられる。一実施形態によれば、メルカプト官能性を有するシラン化合物を使用してもよく、例えば3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、HS(CH
2)
3、Si(OCH
3)
3、少なくとも一つのヒドロキシアルコキシシリル基および/または環状ジアルコキシシリル基を有するメルカプトシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0038】
一実施形態によれば、アミド官能性を有するシラン化合物、例えば(メタ)アクリルアミド基;ウレイド官能性、アミノ官能性、エステル官能性および/またはイソシアネート官能性、例えばトリス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレートを使用することができる。好適なウレイド官能性シランとしては、β−ウレイドエチル−トリメトキシシラン、β−ウレイドエチル−トリエトキシシラン、γ−ウレイドエチル−トリメトキシシラン、および/またはγ−ウレイドプロピル−トリエトキシシランが挙げられる。ウレイド官能性を有するシラン化合物は、構造B
(4−n)−Si−(A−N(H)−C(O)−NH
2)
nを有してもよく、式中、Aは1から約8の炭素原子を含有するアルキレン基、Bはヒドロキシルまたは1から約8の炭素原子を含有するアルコキシ基、nは1〜3の数字で、nが1または2のときは、各々のBは同じでも異なっていてもよい。
【0039】
好ましくは、エポキシ基を含有するシランが用いられ、最も好ましくはグリシドキシおよび/またはグリシドキシプロピル基であり、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシランである。
【0040】
一実施形態によれば、アミノ官能性を有するシランは、例えばアミノメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)メチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノイソブチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランであり得る。使用することができる上記のシラン官能性のさらなる例として、米国特許第5,928,790号明細書および同第4,927,749号明細書に記載のものが挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
一実施形態によれば、シラン化合物はモノマーである。一実施形態によれば、シラン化合物はオリゴマーである。
【0042】
シラン処理されたコロイド状シリカ粒子を調製するために、シラン化合物とコロイド状シリカ粒子は、例えば水相で、例えば、約20〜約95℃、例えば約50〜約75℃または約60〜約70℃の温度で、連続的に混合することができる。例えばシランは、約60℃より高い温度で、(コロイド状シリカ粒子の)コロイド状シリカの表面積nm
2あたり時間あたりの制御された速度、好適には約0.01〜約100、例えば約0.1〜約10、約0.5〜約5、または約1〜約2にて、激しく撹拌しながらシリカ粒子に徐々に添加する。シランの添加は、添加速度、添加するシランの量、および所望のシリル化度に依存して、任意の好適な時間継続することができる。しかしながら、シランの添加は約5時間まで、または約2時間まで、適切な量のシラン化合物が添加されるまで継続することができる。一実施形態によれば、コロイド状シラン粒子の表面積nm
2あたり約0.1〜約6、例えば約0.3〜約3、または約1〜約2のシラン分子の量が添加される。コロイド状粒子にシランを連続的に添加することは、シリカ含量約80重量%までの高濃度のシラン処理されたシリカ分散液を調製するときには特に重要であり得る。
【0043】
一実施形態によれば、シランはコロイド状シリカ粒子と混合する前に、例えば水で希釈してシランと水のプレミックスを形成し、好適には重量比を約1:8〜約8:1、約3:1〜約1:3、または約1.5:1〜約1:1.5とすることができる。得られたシラン−水の溶液は実質的に透明で安定であり、コロイド状シリカ粒子と混合するのが容易である。
【0044】
一実施形態によれば、分散液中のシリカに対するシランの重量比率は約0.01〜約1.5、特に約0.05〜約1、例えば0.05〜0.4、さらに特に約0.1〜約0.5、または約0.2〜約0.4、または約0.2〜約0.3とすることができる。
【0045】
シラン、コロイド状シリカおよびシラン処理されたシリカの調製のさらに好適な実施形態は、欧州特許第1554221号明細書に開示されている。好ましくは、シラン処理されたコロイド状シリカ粒子は安定に分散した状態のままであることができる。すなわち、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、および最も好ましくは少なくとも6ヶ月の間、温度15℃〜35℃での通常の保存で、ゲル化や沈殿化することなくコロイド状で分散したままであることができる。好ましくは、特許請求される本発明の組成物もまた、少なくとも2ヶ月、好ましくは少なくとも4ヶ月、および最も好ましくは少なくとも6ヶ月、または最も好ましくは1年の間、温度15℃〜35℃にて通常の保存でゲル化や沈殿化することなく安定なままであり得る。
【0046】
塗料組成物は、顔料、バインダー、添加物および担体液の異なる種類および量によって異なり得る。塗料組成物の違いによって、部分およびその最終用途のために具体的に設定したフィルムの特徴がもたらされる。しばしば、1種類の塗料を調合して所望の性質の全てを提供することはできない。異なる塗料材料のいくつかの層を表面に適用してその部分を完全に保護する塗料フィルムを形成することができる。最初のコートは典型的にプライマーまたはアンダーコートと呼ばれ、最後の層はトップコートと呼ばれる。塗料の調合または適用される層の数にかかわらず、適切な調製、適用技術、および硬化プロセスは、達成すべき所望の塗料の性質のために必要であり得る。
【0047】
一実施形態によれば、塗料の用途によって、塗料組成物は数種のバインダー、例えば二または三種のバインダーの組み合わせを含む。一実施形態によれば、塗料組成物は顔料粒子を含み、この粒子は典型的に塗料組成物の着色部分であり、例えば酸化チタンである。顔料を使用して、腐食防止、紫外線(UV)光下での安定、又はカビ、白カビ若しくは細菌からの保護を提供することもできる。導電性、手触り、又は金属若しくは真珠光沢の外観のために他の物質を使用することができる。一実施形態によれば、塗料組成物は充填剤、例えばタルカム、および炭酸カルシウムを含み、これらは塗料(ペイント)分散液から得られるペイントの価格を低減するのに使用することができる。一実施形態によれば、充填剤および/または顔料は、組成物の乾燥または担体液を含まない総量を基準として、約10〜約80重量%、例えば約20〜約60重量%、又は約30〜約50重量%の範囲の量で塗料組成物中に存在する。
【0048】
一実施形態によれば、塗料組成物はペイントの粘度を調節するために増粘剤を含む。一実施形態によれば、増粘剤は、塗料組成物の乾燥重量または担体液を含まない重量を基準にして、約0.1〜約2重量%の量で塗料組成物中に存在する。一実施形態によれば、さらに他の添加剤が存在してもよく、この添加剤は通常、塗料調合物中の低分子量の化学物質であり、塗料に特定の機能を発揮させることができるが着色には寄与しない。非色素添加剤としては、紫外線光または熱の攻撃をブロックするための安定剤、架橋反応を亢進させる硬化添加剤、粘度を増加させる共溶媒、または均一なコーティングを改善する可塑剤が挙げられる。一実施形態によれば、安定剤は、組成物の乾燥総重量または担体液を含まない総重量を基準として、約0.1〜約3重量%の量で組成物中に存在する。一実施形態によれば、硬化剤、例えば紫外線開始剤は、塗料組成物の乾燥総重量または溶剤を含まない総重量を基準として、約0.1〜約1重量%の量で塗料組成物中に存在する。
【0049】
本発明はまた
a)シラン処理されたコロイド状粒子、および
b)アルキド樹脂含有バインダー、および
c)担体液
を混合することを含む塗料組成物の製造方法であって、本質的にコバルト系乾燥剤を添加しない、塗料組成物の製造方法に関する。
【0050】
好ましくは、混合される成分a〜cの量は、本明細書で規定される特許請求される組成物の所望の割合を生じるように本明細書中の上記に規定されるとおりである。特に一実施形態によれば、組成物に添加される、本明細書で規定されるコバルト系の乾燥剤または他の活性乾燥剤の金属含量は、アルキド樹脂含有バインダーまたは形成する組成物のバインダーの総重量を基準にして、200ppm未満であり、例えば20ppm未満または2ppm未満である。一実施形態によれば、活性の乾燥剤は塗料組成物に添加されない。一実施形態によれば、本明細書で規定する補助の乾燥剤が組成物に添加され、アルキド樹脂含有バインダーまたはバインダーの総重量を基準として、好ましくは本明細書に記載する100ppm未満、例えば10ppm未満または1ppm未満の量を生じる量である。一実施形態によれば、塗料配合物に添加されるシラン処理されたコロイド状シリカ粒子は、得られる組成物の乾燥総重量または担体液を含まない総重量を基準として、約1〜約50重量%であり、例えば約2〜約25重量%、例えば約5〜約20重量%または約8〜約15重量%の量である。一実施形態によれば、シラン処理されたコロイド状シリカ粒子およびアルキド樹脂含有バインダーまたはバインダーの総量は、バインダーに対するシラン処理されたシリカの重量比率で約0.05〜約2で添加される。一実施形態によれば、シリカ粒子とアルキド樹脂含有バインダーは、水性分散液中で混合される。一実施形態によれば、シリカ粒子とアルキド樹脂含有バインダーは約20〜約90℃、例えば約20〜約35℃の範囲の温度で混合される。本発明はまた、本明細書に記載の方法により得られ得る塗料組成物に関する。
【0051】
本発明はまた、基体、例えば木、プラスチック基体、セメント基体、レンガ基体、セラミック材料、金属基体、鉱物基体などを被覆するための塗料組成物の用途に関する。典型的には、塗料組成物は適切な条件で乾燥することにより、基体の表面塗膜に変換され、例えば簡単な溶媒蒸発、または周囲温度若しくは少し高い温度で空乾される。
【0052】
このように本発明について上述したが、多くの手段によって変更できることは自明である。このような変更は本発明の要旨や範囲から逸脱するものとはみなされず、このような当業者に自明の変更は全て特許請求の範囲内に包含されることを意図するものである。以下の実施例は反応のより具体的な詳細を提供するが、以下の一般原理をここに開示し得る。以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明を実施できる方法をさらに例示するものである。
【0053】
全ての部および%は、特に断らない限り、重量部および重量%を指す。
【実施例】
【0054】
成分1〜6の配合物を調製した。これらの成分を規定量で混合して、視線速度20m/sで回転する溶解用ディスクを備えたDispermat(登録商標)CVを用いて20分ミリングした粉砕ペーストを形成した。次いで粉砕中のペーストに、撹拌器でゆっくり撹拌しながら規定量の成分7〜11を加えた。
【表1】
【0055】
Byk093は消泡剤である。Coadis BR95はアルキド樹脂乳濁液系の分散剤である。CoapurXS22はポリウレタン増粘剤である。Kronosは二酸化チタン顔料である。Aquaflow(商標)は水性装飾塗料用の増粘用添加物である。SER AD FA 179は、消泡剤/湿潤剤である。Additol VXW 6206(乾燥剤)は、コバルト含有乾燥剤である。SYNAQUA 4804は、短油性(short oil)アルキド樹脂乳濁液である。Omyacoat(登録商標)850 OGは、会社OMYA(登録商標)により販売されている炭酸カルシウムを表し、これはアルキド樹脂乳濁液系のための特定の分散剤である。Octa−Soligen Zirconium 10(登録商標)aquaは、ジルコニウムを含有しコバルトを含まない乾燥剤である。
【表2】
【0056】
シリカ製品(Bindzil(登録商標)CC301、およびBindzil(登録商標)CC401、Bindzil(登録商標)CC151およびBindzil(登録商標)CC302)をペイント配合物と混合した。ペイントA参照は、乾燥樹脂を基準に1.5重量%のAdditol VXW6206(コバルト含有乾燥剤)を表1の配合物に加えて調製した(ペイントA)。また、Bindzilおよびコバルト含有乾燥剤なしの参照を使用した(ペイントB)。さらに、ペイントC(参照)を、乾燥樹脂を基準に乾燥剤Octa−Soligen Zirconium 10 aqua(ジルコニウムを含有し、コバルトを含まない乾燥剤)、0.15重量%のZr金属(Octa−Soligen製品1.5重量%に相当)(ペイントC)を(表1の配合物に対して)添加することにより調製した。また、以下のとおりペイント配合物からのさらなる組成物を、Bindzil CC製品を加えることにより調製した。
[表3]
表3:塗料配合物
ペイントA−参照:コバルト乾燥剤+表1の配合物
ペイントB−参照:表1の配合物(コバルト含まず)を含有する
ペイントB21:95g ペイントB+5g Bindzil CC301を含有する
ペイントB22:90g ペイントB+10g Bindzil CC301を含有する
ペイントB23:85g ペイントB+15g Bindzil CC301を含有する
ペイントB31:95g ペイントB+5g Bindzil CC401を含有する
ペイントB32:90g ペイントB+10g Bindzil CC401を含有する
ペイントB33:85g ペイントB+15g Bindzil CC401を含有する
ペイントB1:90g ペイントB+10g Bindzil CC151を含有する
ペイントB4:90g ペイントB+10g Bindzil CC302を含有する
ペイントC−参照:ジルコニウム乾燥剤(コバルト含まず)+表1の配合物
ペイントC21:85g ペイントC+15g Bindzil CC301を含有する
【0057】
ダート付着性試験(Dirt Pick-Up tests;DPU)
DPU試験は、松の木の基体にブラシでペイントを2層に塗布することにより行った(2つの層の塗布時間の差は24時間)。室温で1ヶ月および2ヶ月の間乾燥させた後、表面を、赤色の酸化鉄を含む水系の溶液または以下に示すようにカーボンブラックを含む水系の溶液で汚染させた。汚染はスプレーによって施した。次いで汚染した系を24時間、室温で放置し乾燥させた。汚染した表面を水で洗浄した。CIELABカラー系を使用し、L、a、bおよびデルタEの値をApplications Note, Insight on Color, Vol. 8, 9 from Hunter Associates Laboratory (www. hunterlab. com/appnotes/an07_96a. pdf)およびChromameter manual CR-200, p.71-75に記載の方法で測定した。
www.konicaminolta,com/content/download/4728/34959/CR-200.PDF
【0058】
ダート溶液
−赤色酸化鉄 1g顔料+200ml水
−カーボンブラック(プリンテックスG) 1g顔料+200ml水
【表4-1】
【表4-2】
【表5】
【表6-1】
【表6-2】
【表7】
【0059】
上記の表4〜7の結果から、ペイントAとB(参照)と比較した汚染前のb値が示すように、Bindzilを含むペイント配合物に関して塗料の黄変は少なくなることが明らかである。また、このBindzilを含むペイント配合物は、水で表面を洗浄した後のb値がBindzilおよび乾燥剤を含まないペイントよりも低いレベルに維持され、このことは、水で洗浄した後にも許容できるb値が得られることを示している。さらに、シラン処理されたコロイド状シリカを含有するサンプルでは、配合物Bと比較して、全色差(total colour difference)で測定されるダート付着性(dirt pick-up)、△(デルタ)Eは劇的に低下し、したがってダート付着耐性は改良されており、乾燥剤を含有する配合物Aと同じレベルに達する場合もある。このことは、両方の型のダート、すなわち親水性酸化鉄ダートおよび疎水性カーボンブラックダートについて当てはまる。
【0060】
水蒸気透過性
ISO7783−1(水蒸気透過率の測定−パート1:フリーフィルムへのディッシュ法)にしたがって、水蒸気透過性を測定した。ペイントをテフロン(登録商標)シート上に塗布した。乾燥フィルム厚は約70μmであった。透過性の測定は、室温で14日乾燥後、各ペイントについて7つのディスク上で行った。水蒸気透過係数および水蒸気透過性は、ISO規格に詳述されている式にしたがってディッシュアセンブリ(dish assembly)の質量変化の比率から計算し、これを表8に示した。
【表8】
本発明が、乾燥剤含有サンプル(参照AおよびC)よりも水蒸気透過の点で性能が優れていることは、全てのサンプルから明らかに理解できる。
【0061】
乾燥時間
乾燥時間はASTM5896で測定した。乾燥時間の測定のために、ガラスの表面に120μm(湿潤厚み)のフィルムを設けた。ASTMでは、記録機器を用いて、有機塗料のフィルム形成の間の乾燥または硬化時間を測定する試験方法を記載している。機械的な記録器により、ペイントの表面に皮膜を生じることなく乾燥するペイントについて有益な結果が得られた。記録器の針がペイントフィルムの表面に何も印をつけなくなる時間が乾燥時間として考慮される時間であり、さらにそれがフィルムの全体の遮断と関する。乾燥剤が存在しているときでさえ、全ての場合でペイントの表面に永久的な痕跡が(非常にわずかであるが)残ることに注意しなければならない。乾燥時間の記録は3つ組にて行い、それらを表9に示す。
以下の結果は、金属乾燥剤がなくても乾燥時間が本質的に維持されることを示している。多くの場合、シラン処理されたシリカを添加することにより、ペイントBと比較して乾燥時間は短くなり、Bindzil CC401を含有するサンプルは乾燥剤を含有する配合物ペイントAとほぼ同じ短い乾燥時間になった。
【表9】
【0062】
硬度試験
配合物の硬度を、EN ISO 1522で試験した。ペイントをスズめっきしたスチールに塗布した(150μm 湿潤厚み)。以下の結果は1、7および27日後それぞれの硬度をPersoz硬度(単位は秒)で示している。表10に示す異なるペイントのPersoz硬度は20℃および50%相対湿度で測定し、各数値は5つの測定値の平均である。乾燥剤を含有するサンプルについては、硬度が本質的に維持または向上されるということが理解できる。
【表10】