特許第5968428号(P5968428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5968428アミンを含まずVOCを含まない金属加工液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968428
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】アミンを含まずVOCを含まない金属加工液
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20160728BHJP
   C10M 129/68 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 125/26 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 133/46 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 133/44 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 125/10 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/06 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/26 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/28 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/18 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 137/04 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/76 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 129/74 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20160728BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20160728BHJP
   C10N 40/20 20060101ALN20160728BHJP
【FI】
   C10M173/02
   !C10M129/68
   !C10M125/26
   !C10M133/46
   !C10M135/36
   !C10M133/44
   !C10M125/10
   !C10M129/06
   !C10M129/10
   !C10M129/26
   !C10M129/28
   !C10M129/18
   !C10M129/54
   !C10M135/10
   !C10M159/22
   !C10M159/24
   !C10M137/04
   !C10M129/76
   !C10M129/74
   !C10M133/06
   !C10M145/14
   C10N10:02
   C10N10:04
   C10N30:00 Z
   C10N40:20
【請求項の数】30
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2014-509672(P2014-509672)
(86)(22)【出願日】2012年5月3日
(65)【公表番号】特表2014-513189(P2014-513189A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2012058086
(87)【国際公開番号】WO2012152639
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】61/483,271
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500399116
【氏名又は名称】ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イーシン ジャオ
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−242743(JP,A)
【文献】 特開2008−291211(JP,A)
【文献】 国際公開第01/025374(WO,A1)
【文献】 特表2011−506683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00−177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性金属加工組成物であって、濃縮物中または濃縮物を水で希釈した後の希釈物中に、
− 少なくとも1つの疎水性脂肪族鎖および少なくとも1種の極性基を有しかつ20℃での水への溶解度が0.1g/リットル未満であり、かつ
・(a1)互いに独立して、12〜100個の炭素原子を有するモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸の、少なくとも1種の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物(但し、ステアリン酸を除く。)
・(a2)互いに独立して、少なくとも1種のトリグリセリドの直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物、
・(a3)化合物(a1)または(a2)またはその両方(12〜5.000個の炭素原子を有する)の、塩素化及び硫化誘導体、エステル、エーテル、エトキシレート、エトキシレート−プロポキシレート、プロポキシレート、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩並びに少なくとも1種のカルボン酸と縮合した化合物からなる群から選択された少なくとも1種の誘導体、および
・(a4)互いに独立して、12〜40個の炭素原子を有する少なくとも1種の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水不溶性脂肪族アルコール
からなる化合物の群から選択され、
かつモノマー、オリゴマー、ポリマー、コオリゴマーおよびコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性化合物(a)を含む潤滑剤である、構成成分(a)0.002〜40質量%と;
− 20℃での水への溶解度が0.1g/リットルを超え、かつ
・(b1)互いに独立して、鎖長が4〜12個の炭素原子であり、4〜80個の炭素原子を有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、それらのエステルおよびそれらのエトキシレートからなる化合物の群から選択される、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水溶性化合物、
・(b2)ホウ酸類並びにその塩およびエステル
・(b3)イミダゾール類、イミダゾリン類並びにそれらのエステルおよび塩
・(b4)チアゾール類並びにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびエステル、および
・(b5)トリアゾール類並びにその塩およびエステル
からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性腐食防止化合物(b)を含む、構成成分(b)0.002〜40質量%と;
− 水溶性、水混和性または水分散性でありかつ非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)を含む、少なくとも1種の乳化・分散剤(c)0.002〜45質量%と;
− 水酸化物およびカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の水溶性アルカリ化合物(d)を含む、アルカリ化剤(d)0.002〜30質量%と;
− 主として水を含む輸送構成成分(e)0.004〜99質量%と
を含
石油を含まず、アルカノールアミンを含まず、かつアミンを含まない、
前記水性金属加工組成物。
【請求項2】
構成成分(a)の化合物と構成成分(b)の化合物と構成成分(c)の化合物との質量比が、1:(0.1〜10):(0.01〜30)の範囲である、請求項1に記載の水性金属加工組成物。
【請求項3】
前記金属加工組成物が、10〜20質量%の範囲の含有量の構成成分(a)、5〜10質量%の含有量の構成成分(b)、10〜20質量%の範囲の含有量の構成成分(c)、5〜15質量%の範囲の含有量の構成成分(d)、70〜25質量%の範囲の含有量の構成成分(e)および総含有量がゼロであるかまたは0.01〜10質量%の範囲である任意選択の構成成分を濃縮物中に含む、請求項1または2に記載の水性金属加工組成物。
【請求項4】
VOCがゼロである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
その濃縮物が透き通っているかまたは半透明であるマイクロエマルションである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
25℃で分散液、エマルションおよび/または溶液であり、前記組成物の少なくとも95質量%が25℃で液体状態である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
そのpHが5〜13の範囲である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
多金属用途に特に有用であり、かつ/または特に前記濃縮物の場合に疎水性滴の平均疎水性液滴直径が10〜200nmの範囲であるエマルションであり、また特に希釈液の場合に疎水性滴の平均液滴直径が10nm〜30μmの範囲であるエマルションである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項9】
タップ立てトルク測定器、Microtap GmbHのMicrotap Megatap II−G8を用いてMicrotap試験で測定した場合に、平均トルク値として測定した潤滑性が300N・cm以下である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項10】
肉眼ではどんな相分離も見られないような安定性があり、かつ純水またはCa含有量が1200ppmまでの硬水で希釈された組成物において透き通っているかまたは半透明のマイクロエマルション、あるいは透明であるか、濁っているかまたは多少乳白色のマクロエマルションである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項11】
腐食保護効果を有し、かつ/または泡立ちにくい、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項12】
前記組成物が、12〜42個の炭素原子を有する脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸および脂肪族ポリカルボン酸の少なくとも1種の化合物(a)または少なくとも1種のそのエステルあるいはその両方(それらは、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物から選択される)を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項13】
前記組成物が、30〜140個の炭素原子を有する少なくとも1種のトリグリセリド(a2)または少なくとも1種のその塩素化及び硫化誘導体、エステル、エーテル、エトキシレート、エトキシレート−プロポキシレート、プロポキシレート、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩並びに少なくとも1種のカルボン酸と縮合した化合物からなる群から選択された誘導体あるいはその両方(それらは、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物である)を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項14】
前記組成物が、14〜40個の炭素原子を有する少なくとも1種の水不溶性脂肪族アルコール(a4)(直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物である)をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項15】
前記疎水性潤滑剤(a)が、特に潤滑性を最適化するために少なくとも2種または少なくとも3種または少なくとも4種の異なった化合物(a)を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項16】
構成成分(a)の含分が、0.01〜28質量%の範囲で含まれる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項17】
前記腐食防止化合物(b)が、化合物当たり合計6〜40個の炭素原子を有するカルボン酸およびその塩からなる群から選択される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項18】
前記腐食防止構成成分(b)が、特に腐食保護を最適化するために少なくとも2種または少なくとも3種または少なくとも4種の異なった化合物(b)を含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項19】
構成成分(b)が0.01〜28質量%の範囲で含まれる、請求項1〜18のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項20】
前記乳化剤兼分散剤(c)が1〜40の範囲のHLBを有する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)が、
・(c1)アルキルアルコール、
・(c2)アルキルフェノール、
・(c3)アルカン酸、脂肪酸、エーテルカルボキシレートおよび/または他の有機酸、
・(c4)ブロックコポリマーおよびランダムコポリマー、
・(c5)アルキルポリグルコシド、
・(c6)少なくとも1種のサルフェートまたはスルホネート基を有する陰イオン界面活性剤、
・(c7)エーテルサルフェート、
・(c8)エーテルホスフェート、
・(c9)リン酸エステル、
・(c10)モノグリセリド、
・(c11)トリグリセリド、
・(c12)脂肪アミン、
・(c13)ソルビタン、エトキシル化ソルビタン、プロポキシル化ソルビタン、エトキシル化−プロポキシル化ソルビタン、ポリソルベート及びオレイン酸ソルビタン、
・(c14)コハク酸、コハク酸のエステル、コハク酸の塩、アルキルスクシネート、コハク酸水素塩、スルホサクシネート、サクシナメート及びスルホサクシナメート、および
・上記の界面活性剤(c1)〜(c14)の、エトキシル化及びエトキシル化−プロポキシル化された誘導体
からなる非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤の群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項22】
前記乳化・分散剤(c)が、特にHLBの分布を広くするために、少なくとも2種の異なった化合物(c)を含む、請求項1〜21のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項23】
前記アルカリ化剤(d)が、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物およびカーボネートから選択される、請求項1〜22のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項24】
前記アルカリ化剤(d)が、0.01〜15質量%の範囲で含まれる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項25】
少なくとも98質量%の前記輸送構成成分(e)が水である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項26】
前記組成物が、合計0.002〜60質量%の、少なくとも1種の任意選択の潤滑性付与構成成分Aまたは潤滑性付与化合物A(それは、植物油、動物油、エトキシル化、プロポキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化誘導体またはこれらの任意のものの任意の組合せである)、少なくとも1種の殺生剤B、少なくとも1種の殺真菌剤Bまたはその両方、少なくとも1種の消泡剤Cおよび/または少なくとも1種の脱泡剤C、アクリルアミド、アクリル酸/メタクリル酸、ブタン、エポキシド、エチレン、イオノマー、イソブチレン、ポリ−α−オレフィン、ポリアミド、ポリグリセロール、ポリイソブテン、プロピレン、スチレン、ポリスルホン酸、ウレタン、それらのエステル(1種以上)および/またはそれらの塩(1種以上)といったもののモノマー、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマーおよび/またはコポリマーに基づく少なくとも1種の任意選択構成成分Dの群から選択される少なくとも1種の任意選択化合物をさらに含む、請求項1〜25のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項27】
前記組成物は、少なくとも1種の任意選択の潤滑性付与構成成分Aまたは潤滑性付与化合物A(それは、植物油、動物油、エトキシル化、プロポキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化誘導体またはこれらの任意のものの任意の組合せである)を含むが、その含分は、本発明の前記金属加工組成物中に前記構成成分(a)の含分の1〜200質量%の範囲で含まれているにすぎない、請求項1〜26のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物。
【請求項28】
最初に任意の化合物(b)および(d)を水に加え、次いで任意の化合物(a)、その後(c)を加え、この混合手順の間、ここまでは、30〜50℃の範囲の温度まで加熱し撹拌を行い、さらに任意選択的にその後に他のすべての化合物を加える、請求項1〜27のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物の製造方法。
【請求項29】
冷却液として、潤滑剤として、および/または曲げ加工、板抜き、ボーリング、ブローチ削り、冷却、切削、絞り加工、穴あけ、冷間成形、温間成形、鍛造、研削、ホブ切り、ホーニング仕上げ、液圧成形、研磨、潤滑、成形、微粉砕、プレス成形、打抜き、リーマ仕上げ、冷間圧延、熱間圧延、のこ引き、スタンピング、タップ立て、ねじ切り、旋削またはそれらの任意の組合せに、請求項1〜27のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物を使用する方法。
【請求項30】
請求項1〜27のいずれか一項に記載の水性金属加工組成物によるフラッシング、吹付け、高圧吹付け、ブラッシング、流展、フルーティング、ロールコーティング、浸漬またはそれらの任意の組合せによって前記金属加工作業を行うことを特徴とする、金属加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性金属加工組成物の分野に関する。
【0002】
技術分野
本発明は特に、環境に優しく、再利用可能で、アミンを含まず、石油を含まず、さらにVOCも含まない合成の水性金属加工組成物であって、有害物質をかなりの程度含まずかつ広範囲の金属合金との適合性がある、水性金属加工組成物に関する。
【0003】
背景技術
金属加工組成物は、切削、研削、成形、研磨、絞り加工、成形、プレス成形、打抜き、圧延、スタンピングおよび他の多数の金属処理作業に使用されるが、それは、金属加工工具を滑らかにし冷却するため、金属片および不純物(加工物からいくらかが出る場合)を流し出すため、機械の工具および部品を損傷、摩耗および腐食からできる限り保護するためである。そのような処理には、金属除去の行われる切削作業(研削、旋削、微粉砕、タップ立て、ブローチ削りおよびホブ切りのようなもの)ならびに大半は金属除去が行われない成形作業(曲げ加工、熱間および冷間圧延、絞り加工、鍛造、スタンピングおよび板抜きのようなもの)がある。金属加工組成物は、そうした金属部材から油や破片を流し去るのに役立ち、さらに部材の腐食を防止する。
【0004】
金属加工組成物の主な種類には、ストレートオイルタイプと水性タイプがある。
【0005】
水性タイプはさらに以下のタイプに区別することができる:
A)可溶性オイルは、典型的には少なくとも70質量%の石油、乳化剤、任意の潤滑添加剤、アルカノールアミンおよび2質量%未満の水を含む。
【0006】
B)半合成液は、典型的には5〜60質量%の石油、高含有量の乳化剤、任意の潤滑添加剤、アルカノールアミンおよび10〜60質量%の水を含む。半合成液の不利な点に、熱容量が低いため冷涼効果が低くいこと、エマルション安定性が乏しいこと、細菌増殖が頻繁に発生すること、さらに石油残留物の浄化可能性の問題がある。
【0007】
C)合成液は石油を含まず、典型的には、任意の水溶性潤滑添加剤(水溶性短鎖カルボン酸と水溶性ポリアルキレングリコールと水溶性EO/POブロックコポリマーとの混合物のようなもの)、さらに任意の水溶性腐食防止剤、腐食防止およびpH緩衝能のためのアルカノールアミンおよびかなりの高含有量の水を含む。合成金属加工組成物C)には、石油類の浄化の問題がなく、硬水安定性が良好であり、微生物が抑制され、油溜め期間が長いという利点がある。しかし、既存の合成金属加工組成物の欠点には、典型的には、添加された潤滑添加剤によって生じる残留物の浄化の問題、同じ原価基準に基づいて石油含有製品と比較すると潤滑性が低いという問題、油溜めおよび機械保守における腐食の問題点の増大という問題、および作業者の皮膚刺激の可能性の問題がある。
【0008】
D)新合成液は、石油の代わりに植物油および/または動物油を使用し、典型的には任意の乳化剤、腐食防止剤、アルカノールアミンおよびある量の水をさらに含む。しかし、それらは典型的には、中程度の潤滑性しかなく、エマルションは多くの場合、非常に不安定であり、非常に頻繁に細菌増殖が起こるという不利な点がある。
【0009】
従来技術においては、多くの金属加工組成物が石油系分散液か、水と油とのエマルションである。今日、80%を超える金属加工作業が、石油を多く含む金属加工組成物を用いて行われている。しかし、任意の金属加工組成物中に含まれる石油により、次のようないろいろな問題が生じる:1.)熱伝導率が低く、冷涼効果が低い、2.)微生物が容易に増殖し、作業者に害を及ぼしうる、3.)石油により、浄化が困難なミスティングおよび残留物が生じる、4.)廃棄に問題があり、環境に優しくない、さらに5.)硬水がエマルション安定性に影響を及ぼしうる。それゆえに、石油を含まない金属加工組成物をさらに開発する必要がある。そのため、業界は、水性金属加工組成物を使用する傾向にある。
【0010】
アルカノールアミンには、非常に有害な化合物であり環境に悪いもの、揮発性有機含有量(VOC)が高いもの、皮膚および体への刺激および病気を引き起こすものがある。さらに、こうした化合物により強いにおいが生じうる。
【0011】
市場における石油を含まない合成金属加工組成物の潤滑性および安定性は、まだまだ不十分である。業界ではいまだに、潤滑性の良い、より良く長く安定する、有害化合物量の少ないもっと優れた製品が探求されている。
【0012】
加えて、金属加工組成物は、破片、汚れおよび油を金属部材から離して除去することができなければならず、あらゆる金属部材の腐食保護が十分にできなければならない。とはいえ、そのような組成物は、多くの場合、マイクロエマルションまたはマクロエマルションであり、エマルションが分離しないようにできるだけ安定している必要があり、それと同時に濃縮物および希釈物(濃縮物を少量または多量の水で希釈して得られたもの)として安定している必要もある。金属加工作業が過酷であるほど、使用する金属加工組成物の濃度を高くするべきである。研削のような要件の厳しくない金属加工作業では、金属加工組成物は5質量%の希釈物で十分であろう。中程度に過酷な要件の金属加工作業では、金属加工組成物は10〜15質量%の希釈物を使用すべきである。さらに、こうした組成物は、いずれかの金属加工作業に使用する場合、泡立たないか、泡立ちにくい組成物である必要がある。さらにこうした組成物は、もっともっと環境に優しいものであるべきである。ここ数年の間に、いろいろなアミン含有金属加工組成物が使用されたが、それは、アミン(特にアルカノールアミン)が生物学的耐性、腐食保護およびエマルション安定性に役立つからである。しかし、いろいろなアミンは強い毒性があり、揮発性有機化合物(VOC)でもある。どんなアミンも使用せずに水性金属加工組成物を配合することは、相当に難しい。1つの金属加工組成物をあらゆる用途に使用するには、あらゆる特性および可能性を網羅することが期待される。
【0013】
以下に説明するように、本発明は、どんな石油も使用することなく、あらゆる種類の金属材料に対して非常に良好な潤滑性をもたらし、かつ非常に良好な安定性のある水性金属加工組成物に関する。アルミニウム系金属材料およびスチールに関していろいろな金属加工組成物が試験されたので、すべての種類の金属材料ではないとしても、これらの試験材料は種々の金属材料の大部分を表し、多金属用途が満たされると考えられる。それゆえに、本発明の金属加工組成物は、多種多様な金属および合金との適合性があり、それらを腐食することはない。それは、石油、汚れおよび破片を金属部材から十分に除去する。環境に優しく、泡立ちにくく、腐食から保護し、再利用可能であり、長期間使用可能であり、生物の増殖に対して耐性がありうる。
【0014】
さらに、そのような組成物は冷間成形作業に用いることができ、冷間成形としては次のものがある:(例えば、溶接管または継目無管、中空形材、棒、中実形材またはワイヤーの)スライド絞り加工(引っ張りと圧縮とが一緒になった条件下での成形)、アイロニングおよび/または(例えば、細片、シートまたは中空部品の)深絞り成形による中空部品の成形、(例えば、中空または中実部品の)冷間押出し(圧縮条件下での成形)および/または(例えば、ワイヤー部分の)冷間圧造による結合部品(例えば、ナットまたはねじブランクなど)の成形。
【0015】
米国特許第7,018,959B2号明細書は、ポリアルキレングリコール水溶液、アルカノールアミン、ポリグリコール界面活性剤、ポリオール界面活性剤、殺生剤パッケージおよび腐食防止剤を含む、再利用可能な水性金属加工液を開示している。
【0016】
米国特許出願公開第2009/0149359A1号明細書は、水性金属加工組成物の組成および成分に関するものであるが、詳細については、実施例である程度述べられているにすぎない。こうした組成物のpHは、少なくとも3となっているが、酸性pH値は、アルミニウム系金属材料には受け入れられても、スチールには好ましくない。水性金属加工組成物をスチールに使用する場合、アルミニウム系金属材料に使用する場合よりかなりやっかいであり、多くの場合、高いpH値が求められる。得られている一番良い特性は、試料Cに関して開示されており、それは本出願において第4表でも比較される。この刊行物は、アミンの使用、さらにはアルカノールアミンの使用ならびに他の多数の化合物の使用を示している。
【0017】
本出願の目的は、潤滑性が高く、安定性が高く、かつ優れた腐食保護を示す、環境に優しい金属加工組成物を提案することである。
【0018】
本出願の別の目的は、多金属の金属加工作業に十分に使用可能な組成物を提案することである。さらに、安定した金属加工エマルションの製造方法を提案することである。
【0019】
米国特許出願公開第2009/0149359A1号明細書の教示に基づく水性金属加工組成物の特性は、さらに変更および最適化する必要があることが分かった。それは、それらの組成物が、第4表に詳しく開示されているとおり、アルミニウム系材料においてのみ良好であると思われるからである。
【0020】
課題を解決するための手段
本発明の水性金属加工組成物は、
− 少なくとも1つの疎水性脂肪族鎖および少なくとも1つの極性基を有しかつ20℃での水への溶解度が0.1g/リットル未満であり、かつ
・(a1)互いに独立して、12〜100個の炭素原子を有するモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸の、少なくとも1種の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物、
・(a2)互いに独立して、少なくとも1種のトリグリセリドの直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物、
・(a3)化合物(a1)または(a2)またはその両方の、12〜5.000個の炭素原子を有する少なくとも1種の誘導体、および
・(a4)互いに独立して、12〜40個の炭素原子を有する少なくとも1種の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水不溶性脂肪族アルコール
からなる化合物の群から選択され、
かつモノマー、オリゴマー、ポリマー、コオリゴマーおよびコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性化合物(a)を含む潤滑剤である、構成成分(a)0.002〜40質量%と;
− 20℃での水への溶解度が0.1g/リットルを超え、かつ
・(b1)鎖長が4〜12個の炭素原子であり、4〜80個の炭素原子を有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸ならびにそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、それらのエステルおよびそれらのエトキシレートからなる化合物の群から選択される、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水溶性化合物、
・(b2)ホウ酸類およびその誘導体、
・(b3)イミダゾール類、イミダゾリン類およびそれらの誘導体、
・(b4)チアゾール類およびその誘導体、および
・(b5)トリアゾール類およびその誘導体
からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性腐食防止化合物(b)を含む、構成成分(b)0.002〜40質量%と;
− 水溶性、水混和性または水分散性でありかつ非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)を含む、少なくとも1種の乳化・分散剤(c)0.002〜45質量%と;
− 水酸化物およびカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の水溶性アルカリ化合物(d)を含む、アルカリ化剤(d)0.002〜30質量%と;
− 主として水を含む輸送構成成分(e)0.004〜99質量%と
を、濃縮物中または濃縮物を水で希釈した後の希釈物中に含むか、またはそれらから基本的に構成されるか、またはそれらからなる。
【0021】
本発明はさらに、最初に任意の化合物(b)および(d)を水に加え、次いで任意の化合物(a)、その後(c)を加える(この混合手順の間、ここまで、30〜50℃まで加熱し、撹拌を行い、さらに任意選択的にその後で他のすべての化合物を加える)、水性金属加工組成物の製造方法に関する。
【0022】
本発明はさらに、本発明の水性金属加工組成物を、冷却液として、潤滑剤として、および/または曲げ加工、板抜き、ボーリング、ブローチ削り、冷却、切削、絞り加工、穴あけ、鍛造、研削、ホブ切り、ホーニング仕上げ、液圧成形、研磨、潤滑、成形、微粉砕、プレス成形、打抜き、リーマ仕上げ、冷間圧延、熱間圧延、のこ引き、スタンピング、タップ立て、ねじ切り、旋削またはそれらの任意の組合せに使用する方法に関する。
【0023】
本発明は最後に、本発明の水性金属加工組成物によるフラッシング、吹付け、高圧吹付け、ブラッシング、流展、フルーティング、ロールコーティング、浸漬またはそれらの任意の組合せによって金属加工作業を行うことを特徴とする、金属加工方法に関する。
【0024】
発明を実施するための形態
好ましくは、本発明の水性金属加工組成物は、低VOCであり、これは、典型的には揮発性有機化合物の含有量が1質量%未満であることを意味する。より好ましくは、本発明の水性金属加工組成物は、少なくとも金属加工作業において使用し始めるまでは、VOCがゼロであるか、または好ましくは石油を含まないか、または好ましくはアルカノールアミンを含まないか、またはアミンを含まないか、または好ましくはそれらの任意の組合せを含まない。
【0025】
「VOC」は、「揮発性有機化合物」を意味し、実際の石油中の、特に低分子量の石油、有機溶剤およびアルカノールアミンを含む。もっとも好ましくは、金属加工組成物は、多くの実施形態で、まったくアミンを含まないものであるか、あるいは少なくとも金属加工作業でその使用を開始するまでは、金属加工組成物の配合および製造時にどんなアミンも意図的に加えられない。まれな実施形態で、本出願の金属加工組成物は、アルカノールアミンまたはアルキルアミンまたは油分またはそれらの任意の組合せを、総含有量が0.01〜5質量%未満の範囲で、または米国政府の環境保護局の試験法EPA24でVOC含有量を検出できないような量だけ含みうる。しかし実際は、微量のアミンを避けることができないこともあろう。混合物である任意の原料中に微量だけ含まれている場合、あるいは方法において不純物がある場合あるいは金属加工組成物が長く使用されているかまたは再利用される場合、あるいはそれらの任意の組合せの場合がそうである。アルカノールアミンまたはアルキルアミンのようなアミン、または別のアミン系物質または油またはそれらの任意の組合せのものが少量含まれる場合でも、EPA24にしたがって試験されたVOCであっても、多くの場合、VOCの量を検出できないことが見出された。その場合、アミンを含まない、アルカノールアミンを含まない、石油を含まない、または油を含まない、あるいはその任意の組合せを含まないものである必要はないことがある。さらに、水性金属加工組成物は、どんなアンモニウム分も、またアンモニアも、少なくとも使用し始めるまでは、含んでいないことが好ましい。好ましくは、組成物は、有機溶剤、強酸性化合物、ワックス、鎖長がC12以下である塩素化脂肪酸およびそのエステルおよび/または重金属(クロムおよびニッケルのようなもの)を実質的に含まないか、それらを完全に含まない。
【0026】
好ましくは、組成物のpHは、一般に、濃縮物ならびに希釈組成物において5〜14の範囲であり、より好ましくは7〜13.5または8〜13または9〜12または10〜11である。しかし、たとえpH>13であっても、金属加工組成物に関して技術上の問題は起こらない。したがって、ほとんどの組成物は、弱アルカリ性であるか強アルカリ性である。アルカリ性であることは、腐食保護、乳化およびエマルション安定性ならびに生物学的安定性にとって必要であろう。pH値もアルカリ度も、多くの場合、水性金属加工組成物の安定性にも潤滑性にも影響を与えない。低pHである場合、部品および機械に腐食やさびが生じえ、またバクテリアが成長しうる。組成物のアルカリ性は、大抵の場合、アルカリ化剤(d)である少なくとも1種の化合物を加えると生じる。低アルカリ性は低pHに相当する。pH5〜6において、組成物は特にアルミニウム系金属部品で良好な潤滑性を有しうるが、腐食保護性は非常に乏しい。最適値よりかなり低いpH値では、金属加工エマルションに相分離が起こる恐れが増大し、潤滑作用とは相容れなくなる恐れが増すことになる。pH13〜14では、組成物は、アルカリ浸食されない金属材料に対して良好な腐食保護性および良好な潤滑性を有しうるが、アルミニウム、亜鉛およびその合金は12より高いpHでは溶解するおそれがある。最善の結果は、多くの場合、pH7〜10で得られる。
【0027】
化合物は、水性金属加工組成物に、互いに独立して、存在する原子の数および種類によって定義される任意の他の化学種の、イオン性の、不安定または安定な、仮定的な、未反応の、および/または反応した任意の形態で使用でき、さらに明確に定義される分子を持つ化合物として使用できる。
【0028】
本発明は、濃縮物中または濃縮物を水で希釈した後の希釈物中に、構成成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)の各クラスの化合物の少なくとも1種の化合物を含む水性金属加工組成物に関する。
【0029】
本発明による組成物の第1の必須成分は、主に潤滑性付与化合物を含むその主要潤滑性付与構成成分(a)である。好ましくは、化合物(a)は水不溶性である。ほとんどの場合、化合物(a)はさらに、良好な耐食性および良好な乳化のためにも用いられる。
【0030】
潤滑性付与混合物の添加方法またはその製造方法にはいろいろな異なるやり方がある。しかしながら、好ましくは、植物油または動物油は、全く異なるカルボン酸およびその誘導体の混合物を含む。そのような油(1種以上)は、互いに独立して、純化、精製、状態調整、化学修飾、合成またはそれらの任意の組合せによって製造することができる。さらに、少なくとも1種の特定化合物(a)または化合物(a)を主な化合物として有する少なくとも1種の化学製品、および任意選択的に他の任意の化合物(a)を、金属加工組成物に加える。多くの場合、2種、3種または4種の異なった特定化合物(a)、あるいは化合物(a)をその主な化合物としてそれぞれが有する2種、3種または4種の異なった化学製品を、金属加工組成物に加えるのが好ましいであろう。これにより、相乗性効果が見込まれる。
【0031】
好ましくは、構成成分(a)または少なくとも1種の化合物の疎水性潤滑剤(a)は、濃縮物であるか希釈物であるかに関わりなく、0.1〜36質量%または0.3〜32質量%または0.7〜28質量%または1〜24質量%または1.5〜20質量%または2〜17質量%または3〜14質量%または4〜12質量%または5〜10質量%または6〜8質量%の範囲で含まれる。構成成分(a)の含有量が低くなると、金属加工組成物は有効ではなくなるであろうが、含有量が多くなると、多くの場合、安定した組成物ではなくなるであろう。
【0032】
構成成分(a)の化合物は、化合物(a1)、(a2)、(a3)および/または(a4)からなる化合物の群から選択される。最も好ましい化合物(a)は、任意の化合物(a1)、(a2)および/または(a3)であり、任意選択で、任意選択化合物Aを加えて作用を助けることができる。
【0033】
多くの実施形態で、金属加工組成物は少なくとも1種の化合物(a1)を含み、その化合物は、互いに独立して、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物であり、かつ互いに独立して12〜100個の炭素原子を有する。その化合物は、少なくとも1種の芳香族基をさらに有していてもよい。
【0034】
好ましくは、化合物(a1)は脂肪酸である。より好ましい化合物は、ラウリン酸/ドデカン酸、ミリスチン酸/テトラデカン酸/ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸/ヘキサデカン酸/パルミトレイン酸/ヘキサデカポリエン酸、マルガリン酸/マルガノレイン酸、リシノール酸、ステアリン酸/オクタデカン酸、リノール酸/エイコサン酸、オレイン酸、リノール酸/リノレン酸/オクタデカテトラエン酸、アラキジン酸/ガドレイン酸/エイコサジエノン酸/アラキドン酸/エイコサペンタエン酸、ヘネイコサン酸、ベヘン酸/ドコサン酸/エルカ酸/ドコサポリエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸およびそれらの誘導体ならびにそれらの任意の組合せからなる群から選択される。カルボン酸(a1)およびそのそれぞれの誘導体(化合物(a3)に属するもの)は、好ましくは鎖当たり12〜26または16〜22個の炭素原子を有する。
【0035】
より好ましいベースでは、例えば、オレイン酸または類似の化合物(a1)が用いられる。これは、本質的な要素と一緒に、例えば、ナタネ油、ひまし油、ヤシ油、ダイズ油、ヒマワリ油、ラード油またはそれらの任意の組合せ中に含まれるものである。そのような化合物は、好ましくは、14〜56個または16〜50個または18〜46個または20〜42個または22〜38個または24〜34個または26〜32個の炭素原子を有する。特に好ましい誘導体は、14〜120個または18〜100個または24〜80個の炭素原子を有する脂肪酸のエステルおよび縮合物である。そのような油または化合物の炭素原子の数が鎖当たり12個より少なくなると、それらの化合物は潤滑性の点で有効ではなくなるということが起こりえるし、また炭素原子の数が鎖当たり24個より多くなると、金属加工組成物は安定した組成物ではなくなることが起こりえる。
【0036】
例えば、オレイン酸は18個の炭素原子を有する。例えば、ひまし油は約85〜95質量%のリシノール酸を含み、この酸も18個の炭素原子を有する。ひまし油はトリグリセリド(このエステルは、1つのグリセロール単位と3つのリシノール酸単位に基づいたものであろう)として存在するので、ひまし油における炭素原子の総数は多くの場合、約57個である。潤滑添加剤として使用可能な別の一般的な植物油は、ナタネ油である。多くの場合、ナタネ油の約41質量%はエルカ酸である。エルカ酸のトリグリセリドの炭素原子の総数は69個である。
【0037】
本発明の水性金属加工組成物は、好ましくは30〜140個の炭素原子を有する少なくとも1種のトリグリセリド(a2)、または少なくとも1種のその誘導体(a3)あるいはその両方(これらは、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物である)を含む。
【0038】
実施形態によっては、金属加工組成物は、少なくとも1種の化合物(a2)(これは、互いに独立して、少なくとも1種のトリグリセリドの直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物である)を含む。
【0039】
好ましくは、少なくとも1種のトリグリセリド(a2)は、互いに独立して、24〜80個の炭素原子を有するトリグリセリドから選択される。
【0040】
好ましくは、これらの化合物は、36〜2.000または42〜1.000または48〜800個の炭素原子を有する。特に好ましいその誘導体(a3)はエステルである。分子の炭素原子の数が30個より少なくなると、それらの化合物は潤滑性の点で有効ではなくなることがあり得るし、炭素原子の数が5.000個より多くなると、金属加工組成物は安定した組成物ではなくなることがあり得る。
【0041】
トリグリセリドには、互いに独立して、同一または異なる側鎖があり、トリグリセリドの脂肪酸には、互いに独立して、「中間鎖長」または「長鎖長」がある。そのような鎖は、6〜12個の炭素原子または14〜24個の炭素原子を、互いに独立して、含んでいる場合に、「中間鎖長」または「長鎖長」と呼ばれる。トリグリセリドは、グリセロールおよび3つの脂肪酸に由来するエステルである。これは、植物油および動物油脂の主な構成成分である。不飽和脂肪トリグリセリドの特定の例は、グリセロールと、他方の側のパルミチン酸、オレイン酸およびアルファ−リノレン酸に基づいている(C55986)。トリグリセリドはグリセリンのトリエステルである。多数の好ましい水不溶性トリグリセリド(a2)の一部として、3つの同一カルボン酸のトリグリセリドあるいは2つまたは3つの異なるカルボン酸のトリグリセリド、特にオレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、エルカ酸、リグノセリン酸および/またはラウリン酸に基づくトリエステルがある。
【0042】
実施形態によっては、金属加工組成物は、少なくとも1種の化合物(a3)を含み、この化合物は、化合物(a1)または(a2)またはその両方の誘導体であり、互いに独立して、12〜5.000個の炭素原子を有する。
【0043】
好ましい誘導体(a3)は、塩素化または硫化誘導体(これは、任意選択的に極圧添加剤としても使用できる)、エステル、エーテル、エトキシレート、エトキシレート−プロポキシレート、プロポキシレート、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩および/または、少なくとも1種のカルボン酸(リシノール酸のようなもの)と縮合した化合物である。より好ましい誘導体は、エステル、エトキシレート、エトキシレート−プロポキシレートおよび/またはプロポキシレートである。好ましくは、誘導体は、14〜170または16〜130または18〜100または20〜70または22〜52または24〜42個の炭素原子を有する。そのような誘導体の具体例は、リシノール酸エステルおよび重合リシノール酸エステルであり、その最後のものは約4個の分子の縮合物であってよい。トリグリセリドの例として、エトキシル化ひまし油(ひまし油はそれぞれが12〜120個の炭素原子を有する)を使用できる。
【0044】
本発明の水性金属加工組成物は、好ましくは、14〜36または16〜32個の炭素原子を有する少なくとも1種の水不溶性脂肪族アルコール(a4)または少なくとも1種のその誘導体(a4)あるいはそれらの任意の組合せ(これらは、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物である)を含む。
【0045】
水不溶性脂肪族アルコールおよび/またはその誘導体は、1つ以上のOH基、好ましくは1つまたは2つまたは3つのOH基を有する。好ましくは、それらは、14〜28または16〜24または18〜22個の炭素原子を有する。たとえ3つのOH基があっても、それらは水不溶性である。水不溶性脂肪アルコールの炭素原子の数が12個より少なくなると、それらの化合物は潤滑性の点で有効ではなくなることがあり得るし、炭素原子の数が40個より多くなると、金属加工組成物は安定した組成物ではなくなることがあり得る。
【0046】
実施形態によっては、金属加工組成物は、少なくとも1種の化合物(a4)を含み、その化合物は、互いに独立して、直鎖のおよび/または分岐の飽和および/または不飽和の水不溶性アルコールであり、互いに独立して、12〜40個の炭素原子を有する。
【0047】
水不溶性の多価アルコール(a4)は、少なくとも3個のヒドロキシル部分および少なくとも3個の炭素原子を含み、好ましくは10個未満または6個未満または4個未満または3個未満のヒドロキシル部分を含み、さらに好ましくは10個未満または6個未満または4個未満または3個未満の炭素原子を含む分子である。多数の好ましい水不溶性脂肪族アルコール(a4)の一部として、ラウリルアルコール(ドデカノール、1−ドデカノール)、ミリスチルアルコール(1−テトラデカノール)、ペンタデシルアルコール(1−ペンタデカノール、ペンタデカノール)、セチルアルコール(1−ヘキサデカノール)、オレイルアルコール(cis−9−オクタデセン−1−オール)およびリシノレイルアルコール(12−ヒドロキシ−9−オクタデセン−1−オール)がある。
【0048】
これらの化合物(a)はすべて、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コオリゴマーおよびコポリマーからなる群から選択される。
【0049】
好ましくは、潤滑性付与化合物(1種以上)(a)は、20℃における水への溶解度が0.05g/リットル未満または0.001g/リットル未満である。化合物(a)の塩に存在する特定陽イオンは、得られる性能にどんな重要な影響も与えないと考えられるので、陽イオンの濃度はさらに明記はしない。好ましくは、こうした陽イオンは、アルカリ金属およびアルカリ土類金属から選択される。陽イオンとして、ナトリウムおよびカリウムがもっとも好ましいが、他のものを使用してもよい。酸または塩の中和度またはイオン化度は、実際の金属加工組成物における製造、希釈または使用方法で変わりうる。こうした種々の条件はすべて本発明の一般的手段に含まれる。
【0050】
本発明による組成物の別の必須成分は、少なくとも1種の水溶性腐食防止化合物(b)を含む構成成分(b)である。好ましくは、金属加工組成物は、水への溶解度が20℃で0.1g/リットルを超える少なくとも1種の水溶性腐食防止化合物(b)を含む構成成分(b)を0.002〜30質量%含む。より好ましくは、水溶性腐食防止化合物(1種以上)(b)の水への溶解度は20℃で0.5g/リットルを超えるか、または1g/リットルを超えるか、または5g/リットルを超える。水溶性化合物(b)は、水性金属加工組成物の生物学的安定性に寄与する。水溶性化合物(b1)および(b3)〜(b5)は、金属加工組成物においてエマルションの安定性を向上させるのに役立ちうる。
【0051】
好ましくは、構成成分(b)または少なくとも1種の化合物(b)は、濃縮物であるか希釈物であるかどうかに関わりなく、0.1〜36質量%または0.3〜32質量%または0.7〜28質量%または1〜24質量%または1.5〜20質量%または2〜17質量%または3〜14質量%または4〜12質量%または5〜10質量%または6〜8質量%の範囲で含まれる。少なくとも1種の腐食防止化合物(b)の金属加工組成物の含有量が少なくなると、構成成分(b)が有効ではなくなりえるが、その含有量が多くなると、金属加工組成物が安定した組成物ではなくなりえる。多くの場合、2種、3種または4種の異なった特定化合物(b)、あるいは化合物(b)をその主な化合物としてそれぞれが有する2種、3種または4種の異なった化学製品を、金属加工組成物に加えるのが好ましいであろう。好ましくは、腐食防止構成成分(b)は、少なくとも2種または少なくとも3種または少なくとも4種の異なった化合物(b)を、特に腐食保護を最適化するために含む。そのようなものである腐食防止化合物の混合物は、そうした化合物をあまりに多く加えなくても、腐食保護効果を強力に向上させることができる。そのような混合物により、相乗性効果が見込まれる。
【0052】
好ましくは、金属加工組成物は、大体水によく溶ける化合物(b1)、(b2)、(b3)、(b4)および(b5)からなる群から選択される少なくとも1種の腐食防止化合物(b)を含む:
・(b1)カルボン酸およびその誘導体、
・(b2)ホウ酸類およびその誘導体、
・(b3)イミダゾール類、イミダゾリン類およびそれらの誘導体、
・(b4)チアゾール類およびその誘導体、および
・(b5)トリアゾール類およびその誘導体。
【0053】
実施形態によっては、金属加工組成物は、少なくとも1種の化合物(b1)を含み、その化合物は、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水溶性化合物であり、かつ互いに独立して、4〜80個の炭素原子を有しかつ4〜12個の炭素原子の鎖長を有する。より好ましいくは、化合物(b1)は、互いに独立して、脂肪族鎖当たり6〜10または6〜8個の炭素原子を有する。化合物(b1)は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸ならびにそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩ならびにそれらのエステルからなる化合物の群から選択される。好ましくは、モノカルボン酸、ジカルボン酸および/またはそれらの誘導体が使用される。例えば、20℃におけるC8−モノカルボン酸(カプリル酸)の水への溶解度は、0.7g/リットルである。
【0054】
好ましい化合物(b2)は、ホウ酸、その塩(そのアルカリ金属塩およびそのアルカリ土類金属塩のようなもの)およびホウ酸エステルである。ホウ素化合物(b2)はさらに生物学的安定性に役立ちうる。
【0055】
好ましい化合物(b3)は、イミダゾール類、イミダゾリン類およびそれらの誘導体(それらのエステルおよび塩のようなもの、特にそれらのアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のようなもの)であり、例えば、ベンズイミダゾール類およびその塩である。
【0056】
好ましいチアゾール類およびその誘導体(b4)は、特にそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびエステルを含み、例えばベンゾチアゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類およびそれらの塩およびエステルを含む。
【0057】
好ましいトリアゾール類およびその誘導体(b5)は、特にその塩およびエステルを含み、例として、ベンゾトリアゾール類、トリルトリアゾールC773、およびそれらの誘導体ならびにトリアゾール類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩およびエステルがある。
【0058】
もっとも好ましい化合物(b)は、(b1)、(b2)および/または(b5)の任意の化合物である。
【0059】
本発明による組成物の別の必須成分は、少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)を含む構成成分(c)である。好ましくは、金属加工組成物は、少なくとも1種の乳化・分散剤(c)を0.002〜45質量%含み、その少なくとも1種の乳化・分散剤(c)は、水溶性、水混和性または水分散性でありかつ非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤からなる群から選択され、かつ場合によっては腐食を防止することさえできる、少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)を含む。多くの場合、化合物(a)および(b)は疎水性であるので、乳化・分散剤を加えなければ、組成物は分離して、滴、さらには大きな滴または層あるいはそれらの任意の組合せになるであろう。
【0060】
低含有量の構成成分(c)を使用する場合、金属加工組成物は有効ではなくなるであろうが、その含有量が多くなると、多くの場合、安定した組成物ではなくなるであろう。好ましくは、乳化・分散剤(c)は、本発明の金属加工組成物中に、濃縮物であるか希釈物であるかどうかに関わりなく、0.01〜40質量%または0.05〜35質量%または0.1〜32質量%または0.5〜25質量%または1〜20質量%または3〜15質量%または5〜12質量%の範囲で含まれる。
【0061】
好ましくは、乳化・分散剤(c)のHLBは、1〜40または6〜24または8〜16または10〜12の範囲である。好ましくは、乳化・分散剤(c)は、1〜40または6〜24または8〜16または10〜12の範囲のHLB値を有する界面活性剤すべてから選択する。好ましくは、個々の乳化および/または分散化合物(c)のHLB値は、1〜40または6〜24または8〜16または10〜12の範囲である。好ましくは、乳化・分散剤(c)は、特に1つの組成物内でHLBの範囲を広くするために、少なくとも2種または少なくとも3種または少なくとも4種の異なった化合物(c)を含む。種々の化合物(c)をそのように組み合わせると、相乗効果が見込まれる。
【0062】
水性金属加工組成物の乳化効果が不十分である場合、エマルションは容易に分離して、一方が他方の上にくるような2つ以上の層になりうる。水性金属加工組成物において、例えば、多量の化合物(c)(1種以上)を加えたにもかかわらず、HLB範囲が不適切であるために乳化作用が不十分である場合、エマルションは容易に分離して、一方が他方の上にくるような2つ以上の層になりうる。水性金属加工組成物の乳化効果が強すぎると、エマルションは潤滑性が著しく低くなりうるし、泡立ちが大きくなりうるし、さらに腐食保護効果が不十分になりうる。
【0063】
好ましくは、少なくとも1種の乳化剤および/または分散化合物(c)は、
・(c1)アルキルアルコール、
・(c2)アルキルフェノール、
・(c3)アルカン酸、脂肪酸、エーテルカルボキシレートおよび/または他の有機酸、
・(c4)ブロックポリマーおよびランダムポリマー、
・(c5)アルキルポリグルコシド、
・(c6)少なくとも1種のサルフェートまたはスルホネート基を有する陰イオン界面活性剤、
・(c7)エーテルサルフェート、
・(c8)エーテルホスフェート、
・(c9)リン酸エステル、
・(c10)モノグリセリド、
・(c11)トリグリセリド、
・(c12)脂肪アミン、
・(c13)ソルビタンおよびその誘導体、
・(c14)コハク酸およびその誘導体、および
・これらの界面活性剤(c1)〜(c14)の誘導体
からなる非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤の群から選択される。
【0064】
好ましくは、これらの界面活性剤は、互いに独立して、エトキシル化されるか、またはエトキシル化−プロポキシル化され、さらにエンドキャップされるかまたはエンドキャップされないものが選択される。
【0065】
より好ましくは、少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)は、以下のものからなる非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤の群から選択される:
(c1)エトキシル化アルキルアルコール、エトキシル化−プロポキシル化アルキルアルコール、エンドキャップされたエトキシル化アルキルアルコールおよびエンドキャップされたエトキシル化−プロポキシル化アルキルアルコール(特に、アルキルアルコールのアルキル基は、飽和または不飽和であり、平均炭素原子数が4〜24であり、線状または分岐のいずれかの鎖構造を有する);
(c2)エトキシル化アルキルフェノール、エトキシル化−プロポキシル化アルキルフェノール、エンドキャップされたエトキシル化アルキルフェノールおよびエンドキャップされたエトキシル化−プロポキシル化アルキルフェノール(特に、アルキルフェノールのアルキル基(飽和または不飽和)は、平均炭素原子数が4〜18個であり、線状または分岐のいずれかの鎖構造を有する);
(c3)エトキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化アルカン酸、エトキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化脂肪酸および/または他のエトキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化有機酸(テルペン酸など、例えば、アビエチン酸)(特に、アルキル酸は、平均炭素原子数が4〜24であり、直鎖または分岐の鎖構造を有するアルキル基(飽和、不飽和および/または環状)を有する);
(c4)少なくとも1つのポリエチレンオキシドブロックと少なくとも1つのポリプロピレンオキシドブロックとを含むブロックコポリマーならびにランダムコポリマー(特に、ブロックコポリマーは、平均2〜100個の数のエチレンオキシド単位を含むポリエチレンオキシドブロックおよび平均2〜100個の数のプロピレンオキシド単位を含むポリプロピレンオキシドブロックを含み、任意選択的に、その分子は、1つ以上のポリエチレンオキシドブロックまたはポリプロピレンオキシドブロックを、互いに独立して、含み、これらのブロックコポリマーの一部は組成物の潤滑性にも寄与しうるし、またこれらのブロックコポリマーは、ときには消泡特性および脱泡特性も有しうる);
(c5)アルキルポリグルコシド(そのアルキル基(飽和または不飽和)は、平均炭素原子数が4〜18であり、また線状または分岐のいずれかの鎖構造を有し、また平均1〜5個の少なくとも1種の糖単位を有するもの。糖(1種以上)単位はアルキル基とグルコシド結合している。ここで、「糖」という用語は、あらゆる種類の糖類ならびにあらゆる糖類似化合物を含むと理解される);
(c6)陰イオン界面活性剤(そのアルキル基(飽和または不飽和)は、平均炭素原子数が4〜24の範囲であり、また線状または分岐のいずれかの鎖構造し、また任意選択的に、アルキル部分が、1つ以上の芳香族基を有するもの。特に、少なくとも1つのサルフェートまたはスルホネート基が分子中に存在し、ここで、アルキルアルコール鎖は、好ましくは平均炭素原子数が10〜14であり、またベンゼンが好ましくは芳香族基として含まれる);
(c7)エーテルサルフェート(そのエトキシル化アルキルアルコールまたはエトキシル化−プロポキシル化アルキルアルコールがサルフェート基を有するもの。特に、アルキルアルコールのアルキル基(飽和または不飽和)は、平均炭素原子数が4〜24の範囲であり、また線状または分岐のいずれかの鎖構造を有し、ここで任意選択的に、エチレンオキシド鎖はエチレンオキシド単位の平均数が2〜30であり、さらに任意選択的に、プロピレンオキシド鎖はプロピレンオキシド単位の平均数が1〜25であり、またここでアルキル部分は任意選択的に1つ以上の芳香族基および/またはフェノール基を有する);
(c8)エーテルホスフェート(そのエトキシル化アルキルアルコールまたはエトキシル化−プロポキシル化アルキルアルコールがホスフェート基を有するもの。特に、アルキルアルコールのアルキル基(飽和または不飽和)は平均炭素原子数が4〜24の範囲であり、また線状または分岐のいずれかの鎖構造を有し、任意選択的に、エチレンオキシド鎖はエチレンオキシド単位の平均数が2〜30であり、また任意選択的にプロピレンオキシド鎖はプロピレンオキシド単位の平均数が1〜25であり、ここでアルキル部分は任意選択的に1つ以上の芳香族基および/またはフェノール基を有する);
(c9)リン酸エステル(その1つまたは2つのアルキル基(飽和または不飽和)は、互いに独立して、平均炭素原子数が4〜24であり、また線状または分岐のいずれかの鎖構造を有する。また任意選択的に、アルキル部分は1つ以上の芳香族基および/またはフェノール基を有する。分子中には1つのホスフェート基が存在する);
(c10)エトキシル化モノグリセリド、プロポキシル化モノグリセリド、エトキシル化−プロポキシル化モノグリセリドまたは特に閉じられた末端基を有するエトキシル化モノグリセリド(これらのモノグリセリドはときおり消泡特性および脱泡特性も有しうる);
(c11)エトキシル化トリグリセリド、プロポキシル化トリグリセリド、エトキシル化−プロポキシル化トリグリセリドまたは特に閉じられた末端基を有するエトキシル化トリグリセリド;
(c12)脂肪アミンならびにエトキシル化脂肪アミン、プロポキシル化脂肪アミン、エトキシル化−プロポキシル化脂肪アミンまたは特に閉じられた末端基を有するエトキシル化脂肪アミン;
(c13)ソルビタンおよびソルビタン誘導体(これは、エトキシル化ソルビタン、プロポキシル化ソルビタン、エトキシル化−プロポキシル化ソルビタンまたは特に閉じられた末端基を有するエトキシル化ソルビタンを含み、さらに、例えば、ポリソルベート、オレイン酸ソルビタンならびにその誘導体を含む);
(c14)コハク酸およびコハク酸誘導体(これは、そのエステルおよび塩を含み、また、例えば、アルキルスクシネート、コハク酸水素塩、スルホサクシネート、サクシナメート、スルホサクシナメートならびにそれらの誘導体を含む);および
ここで、こうした化学的分類中の化合物(c1)〜(c12)の誘導体も含まれる。
【0066】
好ましくは、乳化化合物または分散化合物またはその両方(c)は、EO基の合計が1〜20単位である非イオン界面活性剤、またはEOおよびPO基の合計が2〜40単位である非イオン界面活性剤から選択される。EO基数が増えるほど、より乳化剤となり、減るほど、より分散剤となる。
【0067】
少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)は、水性相中への別の層の分散、固体粒子の分散、分散液の安定化に役立つことになり、また必要に応じてエマルションを形成させるのに役立つことになるであろう。分散液という用語は、本明細書ではエマルションおよび溶液を含むものとする。もっとも好ましくは、そのような化合物(c)は、乳化剤または分散剤またはその両方として使用される。したがって、少なくとも2種または少なくとも3種の異なった界面活性剤を加えるのは多くの実施形態で役立ちうる。その場合、その最初のものは、主に乳化剤として働き、少なくとも1種の他のものは主に分散剤あるいは脱泡剤として働く。これにより、相乗性効果が見込まれる。
【0068】
さらに、少なくとも1種の水溶性アルカリ化合物(d)を含んでいるアルカリ化剤(d)を加える必要がある。アルカリ化剤は、エマルションに高い安定性を与えるのに役立ち、さらに耐食性また多くの場合生物学的安定性にも寄与する。アルカリ性であることは、例えば、陰イオン界面活性剤の安定性を高めるのに役立つ。
【0069】
金属加工組成物のアルカリ性が十分でないと、エマルションは十分安定したものではなくなり、その結果、潤滑性は低下するかまたは失われることにさえなり、耐食性も低くなりうるし、微生物抵抗性も低下する。また金属加工組成物は腐食保護性がよくなり、乳化剤は働かなくなる。アルカリ性が強すぎると、作業者の皮膚が刺激を受けることがありうる。実施形態によっては、水性金属加工組成物のpHは12より高くないようにすべきであるのが好ましいが、濃縮物はずっと高いアルカリ性であってもよい。実施形態によっては、pHが約14でも問題にならない。
【0070】
好ましくは、金属加工組成物は、水酸化物およびカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の水溶性アルカリ化合物(d1)を含むアルカリ化剤(d)を0.002〜30質量%含む。それにもかかわらず、まれな実施形態では、少量のアルカノールアミンまたはアルキルアミンまたはその両方(d2)を加えることさえでき、そのアミンは、アミノメチルプロパノール(AMP)、ジグリコールアミン(DGA)、メタノールアミン(MEA)およびモノイソプロピルアミン(MIPA)のような第一アルカノールアミンからなる群、ジエタノールアミン(DEA)およびジイソプロパノールアミン(DIPA)およびN−ブチルエタノールアミン(nBEA)のような第二アルカノールアミンの群、トリエタノールアミン(TEA)およびn−ブチルジエタノールアミン(nBDEA)のような第三アルカノールアミンの群、および二環ヘキシルアミン(DCHA)のような1〜10個の炭素原子のアルキル鎖および1〜3のOH基を有するアルキルアミンの群から選択することができる。そうしたアルカノールアミンまたはアルキルアミンまたはその両方の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%未満または0.1〜2質量%未満または0.2〜0.8質量%の範囲である。好ましくは、アルカリ化剤(d)は、0.01〜25質量%または0.1〜20質量%または1〜15質量%または3〜12質量%の範囲で含まれる。
【0071】
アルカリ化剤(d)の含有量が少なくなると、腐食保護性が不十分になりうるが、含有量が多くなると、潤滑性が低くなりすぎ、アルカリ性の影響を受けやすい金属材料は、化学的攻撃を受けて溶解しうる。好ましくは、少なくとも1種のアルカリ化合物(d)は、あらかじめ定められたpH値に達するような量を加える。
【0072】
より好ましくは、アルカリ化剤(d)は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物およびカーボネート(d1)(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムまたはこれらの任意の混合物)から選択される。ナトリウム化合物およびカリウム化合物はもっとも好ましいアルカリ化剤である。それらの代わりに多くの他のアルカリ化剤を使用できることは当業者には明らかであろう。しかし、例えば、アルカノールアミン分および/またはしばしばあらゆる種類のアミン分により、VOCが高くなり、そうした組成物との接触から皮膚が刺激されることになりうるし、強いにおいが発生しうる。それゆえに、アルカノールアミンおよび/または多くの場合あらゆる種類のアミンが、望ましくない。
【0073】
最後に、輸送構成成分(e)(少なくとも水を含んでいる)を混合物に加えなければならない。0.004〜99%または0.01〜95質量%の輸送構成成分(e)は主として水を含む。金属加工組成物中に、輸送構成成分(e)としてまたは水として含まれる液体化合物は、主に水、主として水、ほとんど全部が水または水のみである。通常、金属加工組成物は、石油の含有量が5質量%よりずっと多く、約60質量%までである。本発明では、好ましくは、石油は加えられないか、または(金属加工にそれを使用し始めるまでの含有量として)わずか1質量%または3質量%までの含有量となるように金属加工組成物に加える。石油を含まない金属加工組成物が特に好ましく、その組成物は、何らかの金属加工作業に使用されることで石油に汚染されうるだけである。そのような状況では、金属加工組成物は、多くの場合、石油が含まれないのは最初に使用されるまでにすぎないであろう。石油が含まれていない場合、組成物は多くの実施形態では、VOCがゼロである。典型的には、従来のほとんどの金属加工組成物では、それは、アルカノールアミンに基づく化合物(トリエタノールアミンなど)、有機溶剤に基づく化合物、石油に基づく化合物および低分子量石油に基づく化合物のいずれかを含有し、それらのすべてで、揮発性有機化合物(VOC)の値が中程度であるか、多くの場合高くなる。
【0074】
まれな実施形態において、輸送構成成分(e)は、アルコールのような有機溶剤を少量含むことさえできる。その場合、水性金属加工組成物が、1質量%を超えるアルコールを含むことはまれであろう。しかしほとんどの場合、そのような溶剤は意図的に加えられるものではなく、原料に含まれうるものであるか、または方法における不純物である。いくらかでも石油または有機溶剤を加えると、ほとんどの組成物は不安定になり、別個の種類の乳化剤が必要になることが見出された。一方で、VOCがなく、十分に環境に優しい状態で効果的であるのが好ましく、そのため、(金属加工組成物の使用および要件に応じて)5または3または1質量%を超える量の石油または任意の有機溶剤を加えないように、また含まれないようにするのが好ましい。さらに、合成冷却液として使用する場合、金属加工組成物は、どんな石油もどんな有機溶剤も含むべきではない。
【0075】
少なくとも98質量%の輸送構成成分(e)が水であり、全輸送構成成分(e)を合計すると100質量%になるようにして計算される、本発明の水性金属加工組成物。わずかな実施形態において、輸送剤(e)の含水量は、例えば、少なくとも75質量%のように低くなりうる。そのようなまれな実施形態では、輸送構成成分(e)は、最大20質量%までのアルコールまたは最大5%までの石油あるいはその両方を含む。しかしほとんどの実施形態では、輸送剤(e)の含水量は、例えば、少なくとも99質量%のように多い。どんな有機溶剤も(特に、引火性溶剤および揮発性有機化合物に分類される溶剤は)使用しないのが一般的に望ましい。
【0076】
濃縮物である組成物の場合、金属加工組成物中の輸送剤(e)の含有量は、好ましくは0.1〜90質量%の範囲または1〜80%の範囲、特に好ましくは10〜70または20〜60質量%である。多くの場合、濃縮物中のその含有量は30〜50または35〜45質量%の範囲である。そのような組成物は、典型的にはpHが6〜13または7〜12の範囲である。当然のことながら、濃縮物は使用前に希釈する必要はない。
【0077】
低VOCまたはVOCがゼロであり、石油を含まず、大抵の場合または常にアルカノールアミンを含まず、pHが5〜14の範囲である以下の金属加工組成物は、特に好ましい次の配合物である。
【0078】
− 少なくとも1つの疎水性脂肪族鎖および少なくとも1つの極性基を有しかつ20℃での水への溶解度が0.1g/リットル未満であり、かつ
・(a1)互いに独立して、12〜100個の炭素原子を有するモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸の少なくとも1種の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の化合物、
・(a3)12〜5.000個の炭素原子を有する化合物(a1)の少なくとも1種の誘導体、および
・(a4)互いに独立して、12〜40個の炭素原子を有する少なくとも1種の直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水不溶性脂肪族アルコール
からなる化合物の群から選択され、またモノマー、オリゴマー、ポリマー、コオリゴマーおよびコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の水不溶性化合物(a)を含む潤滑剤である、構成成分(a)0.01〜35質量%;
− 20℃での水への溶解度が0.1g/リットルを超え、かつ
・(b1)鎖長が4〜12個の炭素原子であり、4〜80個の炭素原子を有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびポリカルボン酸およびそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、それらのエステルおよびそれらのエトキシレートからなる化合物の群から選択される、互いに独立して、直鎖および/または分岐の飽和および/または不飽和の水溶性化合物、
・(b2)ホウ酸類およびその誘導体、
・(b3)イミダゾール類、イミダゾリン類およびそれらの誘導体、
・(b4)チアゾール類およびその誘導体、および
・(b5)トリアゾール類およびその誘導体
からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性腐食防止化合物(b)を含む、構成成分(b)0.001〜35質量%;
− 水溶性、水混和性または水分散性でありかつ非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤および両性イオン界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の乳化および/または分散化合物(c)を含む、少なくとも1種の乳化・分散剤(c)0.01〜40質量%;
− 水酸化物およびカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種の水溶性アルカリ化合物(d1)を含む、アルカリ化剤(d)0.01〜25質量%;および
− 水から基本的になるかまたは水からなる輸送構成成分(e)0.01〜98質量%、さらに
− 任意選択的に、ある含有量の少なくとも1種の任意選択の潤滑性付与構成成分Aまたは潤滑性付与化合物A(これは、植物油、動物油、エトキシル化、プロポキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化誘導体あるいはこれらの任意のものの組合せまたはこれらの任意のものの任意の一部であるが、その量は、本発明の金属加工組成物に構成成分(a)の含有量の1〜200質量%の範囲で含まれるだけである)。
【0079】
希釈組成物は、水を加えることにより製造される。こうした「希釈液」は、好ましくは含水量が、20〜99.5質量%または30〜99質量%、あるいはより好ましくは40〜98質量%、50〜96質量%、60〜94質量%、70〜92質量%または80〜90質量%の範囲である。それらは多くの場合、pHが6.5〜11の範囲である。
【0080】
構成成分(a)の化合物と構成成分(b)の化合物との質量比あるいは構成成分(a)の化合物と構成成分(c)の化合物との質量比あるいは構成成分(a)の化合物と構成成分(d)の化合物との質量比は、好ましくは1:(0.2〜5)の範囲または1:(0.3〜3)の範囲または1:(0.5〜2)の範囲または1:(0.8〜1.5)の範囲または1:(0.8〜1.3)の範囲または1:(0.9〜1)の範囲またはほぼ1:1である。同じ質量比が、好ましくは構成成分(b)の化合物と構成成分(c)の化合物、あるいは構成成分(b)の化合物と構成成分(d)の化合物に当てはまる。同じ質量比が、好ましくは構成成分(c)の化合物と構成成分(d)の化合物に当てはまる。
【0081】
好ましくは、本発明の水性金属加工組成物は、構成成分(a)の化合物と構成成分(b)の化合物と構成成分(c)の化合物との質量比が、1:(0.1〜10):(0.01〜30)の範囲の範囲である。
【0082】
好ましくは、構成成分(a)の化合物と構成成分(b)の化合物と構成成分(c)の化合物との質量比は、好ましくは1:(0.2〜5):(0.05〜12)の範囲または1:(0.3〜3):(0.1〜5)の範囲または1:(0.5〜2):(0.2〜3)の範囲または1:(0.8〜1.5):(0.3〜1.8)の範囲または1:(0.8〜1.3):(0.8〜1.3)の範囲または1:(0.9〜1):(0.9〜1)の範囲またはほぼ1:1:1である。好ましくは、構成成分(a)の化合物と構成成分(b)の化合物と構成成分(c)の化合物と構成成分(d)の化合物との質量比は、好ましくは1:(0.2〜5):(0.05〜12):(0.05〜5)の範囲または1:(0.3〜3):(0.1〜5):(0.1〜2)の範囲または1:(0.5〜2):(0.2〜3):(0.2〜1.5)の範囲または1:(0.8〜1.5):(0.3〜1.8):(0.2.5〜1)の範囲または1:(0.8〜1.3):(0.8〜1.3):(0.3〜1.1)あるいはほぼ1:(0.9〜1):(0.9〜1):(0.4〜1)の範囲である。
【0083】
本発明の好ましい実施形態では、単一相配合物または2相配合物となるように組成物の成分を選択し、その相対的割合および濃度を調整する。
【0084】
希釈組成物は、化合物(a)〜(d)の総含有量が、80〜0.5質量%、70〜1質量%、60〜2質量%、50〜4質量%、40〜6質量%、30〜8質量%の範囲が好ましく、より好ましいのは20〜10質量%である。
【0085】
第1表は、濃縮物および希釈物中の含有量のより好ましい変形形態を示す一部の例を開示している。
【0086】
第1表:本発明による一部の濃縮物および希釈物中におけるいろいろな構成成分の含有量の例(ここで、(e)は水のみである)
【表1】
【0087】
より好ましくは、金属加工組成物は、濃縮物中に以下の含有量の構成成分を含むか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらから構成される:
(a):(a1)、(a2)、(a3)および/または(a4)の合計で、10〜20質量%の範囲の含有量、
(b):(b1)、(b2)、(b3)、(b4)および/または(b5)の合計で、5〜10質量%の含有量、
(c):(c1)、(c2)、(c3)、(c4)、(c5)、(c6)、(c7)、(c8)、(c9)、(c10)、(c11)、(c12)、(c13)および/または(c14)の合計で、10〜20質量%の範囲の含有量、
(d):(d1)および任意選択の(d2)の合計で、5〜15質量%の範囲の含有量、
(e):70〜25質量%の範囲の含有量、および
任意選択の構成成分(A〜Dからなる群から選択される任意の構成成分で、総含有量がゼロまたは0.01〜10質量%の範囲にあるようなもの)。
【0088】
より好ましくは、金属加工組成物は、希釈物中に以下のような構成成分の相対質量含有量を含むか、またはそれらから本質的になるか、またはそれらから構成される:(a):(b):(c):(d)の比率が、(a)(1〜2):(b)(0.5〜1):(c)(1〜2):(d)(1〜2.5)であり、残りは、(e)(特に、95〜30質量%の範囲の含有量)および任意選択の構成成分(A〜Dからなる群から選択される任意の構成成分のようなもの)である。
【0089】
本発明の水性金属加工組成物は、その特定の用途および組成に応じて様々な特徴を示しうる。好ましくは、特に多金属用途に有用であり、かつ/または、特に濃縮物の場合には、疎水性滴の平均疎水性液滴直径が10〜200nmの範囲であるエマルションであり、特に希釈物の場合は、疎水性滴の平均液滴直径が10nm〜30μmの範囲のエマルションである。
【0090】
金属加工エマルションの平均液滴直径は、1.)初期の段階で、乳化化合物(1種以上)(c)の量および種類を変えることで、特にそのHLB値により、また2.)金属加工作業に使用する前に、多少の水で希釈する度合いにより、また純粋または多少の硬水を希釈に使用することにより、望みの液滴直径に調整することができる。その場合、金属加工を行う金属表面のおおよその平均粗さ(Ra)のサイズに平均液滴直径を合わせるのが好ましい。一方、平均液滴直径を制御すると、潤滑性の度合い、エマルションの安定性、泡立ちの度合い、耐食性および/または生物学的安定性は、多くの場合、影響を受けて良くなるかまたは悪くなる。したがって、典型的には金属加工作業時に、何らかの乳化および/または分散化合物(1種以上)(c)を、再利用された金属加工組成物に(例えば、タンクサイド添加で)補充して乳化度および他の特性を調整する。
【0091】
好ましくは、本発明の組成物は、25℃において分散液、エマルションおよび/または溶液である。ほとんどの場合、濃縮物ならびにそれから製造される希釈物はエマルションである。好ましくは組成物の少なくとも95質量%が25℃で液体状態である。
【0092】
(a)〜(d)の個々の化合物において、それらの化合物は、室温で、また有効作業温度(例えば、10〜40℃の範囲)で、典型的には室温で液体(例えば、水溶液)または固体の形態でありうるが、それらのほとんどは室温で液体である。もちろん、KOHのような化合物は固体でもあるが、容易に水に溶けるであろう。
【0093】
組成物がワックスのような粒子を含む場合、そのような粒子または90%を超えるそれらの粒子は好ましくは100nm未満である。
【0094】
組成物が滴の形で疎水性の液体を含む場合、その平均液滴直径は約5nmから約80μmの間で変わりうる。滴の平均液滴直径が50μmより大きいと、金属加工組成物が不安定になり、組成物が容易に分離して2つの不混和性の液層になりうることが見出された。平均液滴直径が30μmより大きい場合でさえ、そのように不安定になりうることが見出された。一方、添加された何らかの物質が析出することがあり、それは沈みうるので、そうした沈殿はできる限り避けるべきである。
【0095】
多くの場合、本発明による金属加工組成物はエマルションである。一般に2種類のエマルションがある:
1.)マイクロエマルションまたはマクロエマルション(これは、平均液滴直径が好ましくは約100nmから約50μmまでである)であるエマルションがあり得る。エマルションは普通、平均液滴直径が約0.1μmまたは約0.15μmから約0.3μmの範囲である場合、ほとんど透明または半透明に見える。ほぼ半透明から淡い乳白色に見える場合、濁っていると言うことができる。平均液滴直径が約0.3μm〜1μmの範囲である場合、普通は淡い乳白色に見える。平均液滴直径が1μmを超える範囲である場合、それは普通、乳白色に見える。しかし、安定したエマルションの場合、平均液滴直径は多くの場合、30μmより小さい。
2.)マイクロエマルションは多くの場合、平均液滴直径が5nm〜150nmの範囲または20nm〜100nmの範囲である。それにもかかわらず、濃縮物は、普通は透明な溶液のように見えるマイクロエマルションであるか、または半透明である。透明なマイクロエマルションではない濃縮物は多くの場合、非常に安定しているということはないので、濃縮物は十分に透明なマイクロエマルションであるのが好ましい。
【0096】
濃縮物が透明または半透明である場合、それはマイクロエマルションであり、安定していることが見出された。濃縮物が濁っているかまたは非常に濁っているかまたは乳白色に見える場合、濃縮物は安定であることもあれば、不安定であることもある。希釈物の場合、それが透明でも半透明でもなく、濁っているか非常に濁っているかまたは乳白色であるとしても問題にならない。透明または半透明に見えてもよいが、そうである必要はない。それらは、透明のマイクロエマルションまたはマクロエマルションでも、半透明のマイクロエマルションまたはマクロエマルションでもある必要はない。
【0097】
ほとんどの場合、本発明の水性金属加工組成物はエマルションであり、それは、濃縮物の場合、大抵はマイクロエマルションであり、希釈物の場合、大抵はマイクロエマルションまたはマクロエマルションである。希釈物は多くの場合、安定しており、その結果、肉眼ではどんな相分離も見られず、また純水またはCa含有量が1200ppmまでの硬水で希釈された組成物では、透明または半透明のマイクロエマルション、あるいは透明であるか、濁っているかまたは多少乳白色のマクロエマルションである。
【0098】
構成成分(a)の量が増大する場合、かつ/または構成成分(c)の量が減少する場合、マイクロエマルションからマクロエマルションへと金属加工組成物の粘稠度の変化がときにみられることがあり、通常その逆の場合もある。
【0099】
任意の構成成分(a)、(b)および/または(c)の量が増大するかまたは減少すると、金属加工組成物の粘稠度が変化し、マイクロエマルションからマクロエマルションへと変わることもときおりある。
【0100】
もっとも好ましくは、本発明の金属加工組成物は、以下の成分の組合せを含むか、それらから本質的になるかまたはそれらから構成される:[(a1)および/または(a3)]および(b1)および(c3)および(d1)および(e)。濃縮物の場合、好ましくはマイクロエマルションまたはさらには透明なマイクロエマルションであり、また希釈物の場合、好ましくはマイクロエマルションまたはマクロエマルションである。各構成成分は、本明細書では、添加されるか、含まれているか、またはその両方である少なくとも1種の物質である。もっとも好ましくは、こうした構成成分は、濃縮物中に以下の含有量で含まれる:総含有量が10〜20質量%の範囲である[(a1)および/または(a3)]、含有量が5〜10質量%である(b1)、含有量が10〜20質量%の範囲である(c3)、総含有量が5〜15質量%の範囲である(d1)および任意選択の(d2)(ここで(d2)は、ゼロであるかまたは0.05〜4.8または0.1〜1.8質量%の範囲である)、含有量が70〜25質量%の範囲である(e)および総含有量がゼロまたは0.01〜10質量%の範囲である任意選択の構成成分(A〜Dからなる群から選択される任意の構成成分のようなもの)。
【0101】
好ましくは、濃縮物または希釈物のエマルションは、平均液滴直径が主に10nm〜50μmの範囲であり、より好ましくは50nm〜10μmの範囲である。平均液滴直径の適度な範囲は多くの場合、0.15〜50ミクロンまたは0.15ミクロン〜30ミクロンの範囲である。濃縮物のような金属加工組成物を希釈すると、真溶液、透明マイクロエマルション(特に平均液滴直径が5〜150nmの範囲)またはエマルション(=マクロエマルション)(特に平均液滴直径が150nm〜50ミクロンの範囲)が形成されうる。
【0102】
固体粒子が金属加工組成物中に含まれる場合、分散液(濃縮物または希釈物)は、好ましくは平均粒径が主に10nm〜10μmの範囲、より好ましくは50nm〜1μmの範囲である。金属加工組成物中に粒子として存在できる固体化合物として、ワックス、研削粒子および/または研磨粒子が含まれうる。しかし、そのような固体粒状化合物はまれにしか使用されることはなく、普通は少量のみである。
【0103】
「多金属用途」という用語は、金属加工組成物が普通、少なくとも2種類の異なった金属材料で良好な潤滑性を有することを意味し、それらの金属は、好ましくは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、亜鉛、任意のそれらの合金、黄銅およびスチールから選択されうる。本出願の実施例では、潤滑性試験は、それぞれアルミニウム合金(1種以上)およびスチール(1種以上)でのみ実施する。アルミニウムおよびスチールでの潤滑性試験で良好な結果が得られる場合、この試験は、種々の金属材料でもうまく使用できることを示す。
【0104】
好ましくは、水性金属加工組成物は多くの場合、25℃における粘度が0.05〜10Pa・sの範囲、より好ましくは0.2〜3Pa・sの範囲である。
【0105】
本発明の組成物は、まれな実施形態において所望される場合には、任意選択構成成分A〜Dからなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0106】
本発明の水性金属加工組成物は、好ましくは、任意選択構成成分A〜Dの群から選択される少なくとも1種の任意選択化合物を、合計で0.002〜60質量%だけさらに含むことができる。構成成分Aは、0質量%または0.002〜30質量%の範囲、好ましくは1〜20質量%の範囲の含有量で含まれうる。構成成分Bは、0質量%または0.002〜5質量%の範囲、0.1〜2質量%の範囲の含有量で含まれうる。構成成分Cは、0質量%または0.002〜3質量%の範囲、0.1〜1.5質量%の範囲の含有量で含まれうる。構成成分Dは、0質量%または0.002〜30質量%の範囲、好ましくは1〜20質量%の範囲の含有量で含まれうる。
【0107】
好ましくは、水性金属加工組成物は、少なくとも1種の任意選択の潤滑性付与構成成分Aまたは潤滑性付与化合物Aを含み、この構成成分または化合物は、植物油、動物油、エトキシル化、プロポキシル化またはエトキシル化−プロポキシル化誘導体あるいはこれらの任意の組合せあるいはこれらの任意のものの任意の一部であるが、その含有量は、本発明の金属加工組成物中に、構成成分(a)の含有量の1〜200質量%の範囲、好ましくは20〜180質量%または40〜160質量%または60〜140質量%の範囲であるにすぎない。少なくとも1種の任意選択の潤滑性付与構成成分Aまたは潤滑性付与化合物Aは、水溶性、水分散性、水混和性または水不溶性の化合物であってよい。特に好ましい化合物Aは、エトキシル化誘導体であり、これは、任意選択で任意の植物油または動物油またはその両方(これらは、純化されるか、精製されるか、状態調節されるか、化学修飾されるか、合成されるか、またはそれらの任意の組合せによって製造される)に含まれている化合物であってよい。
【0108】
好ましくは、水性金属加工組成物は、少なくとも1種の殺生剤B、少なくとも1種の殺真菌剤Bまたはその両方を含む。
【0109】
好ましくは、本発明の水性金属加工組成物は、少なくとも1種の消泡剤Cおよび/または少なくとも1種の脱泡剤Cを含む。任意選択構成成分Cは、好ましくは、ポリグリコール、シロキサン、ポリシロキサンおよびワックスから選択される。
【0110】
最後に、ある量の有機高分子物質を任意選択構成成分Dとして本発明の水性金属加工組成物中に加えるか、または含めることができる。そのような有機高分子物質Dは、イオノマー、アクリルアミド、アクリル酸/メタクリル酸、ブタン、エポキシド、エチレン、イソブチレン、ポリ−α−オレフィン、ポリアミド、ポリグリセロール、ポリイソブテン、プロピレン、スチレン、ポリスルホン酸、ウレタン、それらのエステル(1種以上)および/またはそれらの塩(1種以上)をベースにした、モノマー、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマーおよび/またはコポリマーを主として含みうるか、またはそれらから構成されうる。好ましくは、水性金属加工組成物は、アクリルアミド、アクリル酸/メタクリル酸、ブタン、エポキシド、エチレン、イオノマー、イソブチレン、ポリ−α−オレフィン、ポリアミド、ポリグリセロール、ポリイソブテン、プロピレン、スチレン、ポリスルホン酸、ウレタン、それらのエステル(1種以上)および/またはそれらの塩(1種以上)といったもののモノマー、オリゴマー、コオリゴマー、ポリマーおよび/またはコポリマーに基づく、少なくとも1種の任意選択構成成分Dを含む。好ましい有機物質は、例えば、アクリルアミド−(メタ)アクリレートコポリマー、エチレン−(メタ)アクリレートコポリマー、スチレン−(メタ)アクリレートコポリマー、ウレタン−カーボネートコポリマー、ウレタン−カーボネート...コポリマー、ウレタン−エステル−カーボネートコポリマー、イソブチレン−ブテンコポリマー、ポリスルホン酸を含む。こうした有機物質は、ときおり、固体、エマルションまたは液体として加えることができる。そのような有機高分子物質Dは、さらに潤滑性を向上させ、それと同時に組成物の生物学的安定性を向上させるのに役立ちうる。多種類の切削作業、成形作業および冷間成形作業(これらでは、高度の潤滑性が求められる)に添加して使用することができる。水性金属加工組成物中のそのような有機高分子物質Dの含有量は、0.1〜50質量%の範囲または1〜30質量%の範囲または3〜15質量%の範囲または5〜10質量%の範囲から選ぶことができる。
【0111】
本発明の水性金属加工組成物の製造方法は、最初に任意の化合物(b)および(d)を水に加え、次いで任意の化合物(a)、その後(c)を加え(この混合手順の間、ここまでは、30〜50℃の範囲まで加熱し撹拌を行う)、(ここで、連続混合、加熱および撹拌は安定したエマルションを得るために行う)および任意選択的にその後、他のすべての化合物を加えることを特徴とする。要望に応じて、製造した濃縮物を水で希釈して望みの希釈度にすることができる。
【0112】
本発明の水性金属加工組成物の塗布は、吹付け、高圧吹付け、ブラッシング、ロールコーティング、浸漬または他のそうした方法(流水のようなもの)によって実施できる。次いで、塗布された金属基材に所望の方法で、金属加工(例えば、切削、研磨または機械加工)を行うことができ、ここで、液流金属加工組成物により有利な潤滑効果がもたらされる。
【0113】
本発明の水性金属加工組成物の使用方法は、水性金属加工組成物を、冷却液および/または潤滑剤として使用でき、かつ/または曲げ加工、板抜き、ボーリング、ブローチ削り、冷却、冷間成形、温間成形、切削、絞り加工、穴あけ、鍛造、研削、ホブ切り、ホーニング仕上げ、液圧成形、研磨、潤滑、成形、微粉砕、プレス成形、打抜き、リーマ仕上げ、冷間圧延、熱間圧延、のこ引き、スタンピング、タップ立て、ねじ切り、旋削またはそれらの任意の組合せに使用できることを特徴とする。
【0114】
本発明の水性金属加工組成物が、非常に異なる金属材料に対してそのような高い潤滑性を示し、その結果、多金属用途に非常にうまく使用可能なことは驚くべきことであった。
【0115】
さらに、本発明の水性金属加工組成物が、非常に異なる金属材料に対して優れた腐食保護を示すことも驚くべきことであった。
【0116】
さらに、本発明の水性金属加工組成物が、濃縮物ならびに希釈物の場合に優れたエマルション安定性を示すこともさらに驚くべきことであった。
【0117】
さらに、本発明の水性金属加工組成物により、この組成物を用いて金属加工された完成した金属部品の金属表面が清浄で、光沢があり、かつ滑らかになるということも驚くべきことであった。
【0118】
最後の点として、本発明の水性金属加工組成物は、VOCがゼロであることやアルカノールアミンおよび/または石油が含まれていないことなど、高度に環境に優しい組成物であるにもかかわらず、産業上の要件から期待されるほとんどすべての特性(一般には、泡立ちが少ないことおよび高い生物学的安定性でさえも)を示すということは驚くべきことである。
【0119】
実施例および比較例
本発明は、好ましい実施形態を含む以下の実施例(決して本発明を限定することを意図するものではない)を考慮することにより、さらに詳しく理解されるであろう。
【0120】
特性およびその測定:
本発明の水性金属加工組成物は、好ましくは、平均トルク値として測定された潤滑性が300N・cm以下である(タップ立てトルク測定器、Microtap GmbH(Germany)のMicrotap Megatap II−G8を用いてMicrotap試験で測定した場合)。
【0121】
そのようなタップ立てトルク計測器は、Microtap計測器と呼ばれることが多い。この試験は、金属棒または合金棒(特にアルミニウム6061またはスチール1018またはその両方の棒)に穴をあけることにより、ASTM D5619に従って行うことができる。Microtap試験は、厳密にこの標準に従って行われるわけではなく、計測器製造業者が推薦する手順にしたがって、10質量%の希釈物またはまれに5質量%まで薄めた希釈物に対して使用する。金属棒には普通、事前に穴があけられている。金属加工組成物の試料をその穴に入れる。その後、タップが穴に進入し、測定器がトルク値を測定することになる。アルミニウム6061棒の場合には、14.4mmの深さ、660rpmの速度、700N・cmのトルクおよび5N・cmの力を使用し、スチール1018棒の場合は、14.4mmの深さ、500rpmの速度、700N・cmのトルクおよび5N・cmの力を使用する。Microtap試験では、水性金属加工組成物を満たした穴にタップが進入し、計測器の出力データが平均トルク値(N・cm)を示す。アルミニウムとその合金の場合の非常に良いデータでは、200N・cm以下であり、スチールの場合の非常に良いデータでは230N・cm以下である。
【0122】
本発明の水性金属加工組成物は、好ましくは安定性があるため、肉眼で見えるような相の分離はなく、純水だけで希釈するかまたは硬水(Ca含有量が1200ppmCaまで)で希釈した組成物において透き通るかまたは透明なまたは多少乳白色のエマルションまたはそれらの任意に組み合わせたようなエマルションである。不安定であると、エマルションはやがて分離し、その分離は目で見えることになる。2種類の安定性試験がある:
A)濃縮物の安定性の測定:
1.)3サイクルの50℃でのオーブン試験(各サイクルは24時間である)
2.)凍結/解凍試験。濃縮物試料を約−16℃で凍結し、その後室温で解凍する。これも3サイクル行う。
【0123】
B)希釈エマルションの安定性の測定:
純水による希釈物および少なくとも300ppmCaの硬水による別の希釈物(それぞれ所望の濃度のものであり、普通は5または10質量%)を用意し、少なくとも1週後に目視で安定性を観察する(エマルション安定性試験)。
【0124】
エマルションの分離がないということは、組成物が分離しないこと、またエマルションに沈殿部分がないことを意味する。安定した濃縮物は、透き通るか、透明または濁った外観でありうる。金属加工組成物が分離しない限り、透き通るか、透明か、あるいは濁っているかは問題ではない。その場合、それは安定している。エマルションは、確かに多少は乳白色でありうるが、安定している限り、希釈エマルションがどのような外観であるかは問題ではない。
【0125】
金属加工組成物の安定性を判定するために、以下の安定性試験法を濃縮物と希釈物に使用した。この場合の、目視だけによる濃縮物または希釈物の安定性の検査は、いまだにもっとも一般的なやり方である。
【0126】
濃縮物試料の場合:
50℃のオーブン試験では、濃縮物試料を50℃のオーブン中に24時間放置し、その後、試料を取り出し、濃縮物試料の温度が室温に下がるまで実験台に放置する。分離が観察されなければ(目で見えるようにすることができる)、試料は安定している。試験を50℃でさらに2回繰り返す。濃縮物試料は安定しているべきである。つまり、透き通っているか、透明であるかまたは濁っていなければならないが、目で見えるような分離が少しでもあってはならないということである。
【0127】
凍結/解凍試験では、濃縮物試料をフリーザーに24時間入れて、試料を凍結し、その後試料をフリーザーから取り出し、解凍して液体状態に戻るまで実験台に放置する。この凍結および解凍をさらに2回繰り返す。分離が観察されてはならない。
【0128】
希釈試料の場合:
600ppmの酢酸カルシウムを含む硬水による5%希釈物を用意する。その溶液を50℃でオーブン中に3日間放置する。分離が観察されてはならず、希釈試料は透き通っているか、濁っているかまたは乳白色である。
【0129】
好ましくは、本発明の水性金属加工組成物は腐食保護効果を有する。腐食保護効果は、好ましくは鋳鉄片試験(CIC)(鋳鉄棒の場合、腐食等級が2以下になる)で検査され、より好ましいくはここでは、清浄な小片を使用し、24時間にわたって脱イオン水による2質量%希釈組成物と接触させて試験する。鋳鉄片試験(CIC)の試験手順は似ているが、幾つかの寸法が、標準試験法ASTM D4627およびDIN51360−2のデータと同じではない。小片の大きさは小さく、2〜3mmであり、ここでは、2gの小片および2gの5%水性金属加工希釈物(脱イオン水中)を、ふた付きのペトロディッシュ内で24時間用いる。等級値が小さいほど、優れている。最も悪い結果は等級5であり、最も良いのはゼロである。等級値が3から始まるそのような水性金属加工組成物は業界には受け入れられないように思われる。
【0130】
金属加工組成物が24時間にわたるCIC試験によって試験されて合格しているならば、金属加工組成物は、多くの場合に、機械の工具および部品にどんな腐食作用も及ぼさないはずであると予想される。
【0131】
好ましくは、本発明の水性金属加工組成物は、泡立ちにくく、特に金属加工の特定の作業条件下で泡立ちにくい。いろいろな金属加工作業において、高圧吹付けであっても泡発生による問題が生じ得ないことが望まれる。さらに、泡立ちにくい組成物であるためには、金属加工作業中に発生した泡は、金属加工作業後、1分以内または1分たたないうちに壊れるべきである。
【0132】
好ましくは、金属加工組成物は泡立ちにくいので、発泡試験において泡は長く続かない。その試験は、ミキサー法で、200mlの金属加工組成物(水中の活性物質濃度が5質量%である、5質量%の濃縮物を有する)を含んだ1000mlビーカーにおいて、Black and Deckerの12段変速ミキサーで、速度10で5分間行う。その結果、その場合は泡が消失する泡破時間が30秒未満である。泡破とは、泡がすべて消失すること、すなわち、溶液の表面に泡がなくなることを意味する。
【0133】
泡試験法TM♯2142は、社内の試験法である。発泡試験には標準的方法がない。5%希釈物とは、95%の脱イオン水中に5質量%の濃縮物試料を含むものを意味する。この試験の目的は、激しく撹拌される装置で発生する泡の量およびその泡が消失するのにかかる時間を求めることである。1000mlのKimaxビーカー(ビーカーの高さが規定される)、100mlのメスシリンダー、タイマーとストップウォッチを備えたBlack and Deckerの12段変速ミキサーを使用する。
【0134】
発泡試験手順:
1.工場水を190ml計量して1000mlのKimaxビーカーに入れる。
2.試験する製品10mlをビーカーに入れる。
3.ミキサーのビーターの下にビーカーを置く。
4.速度10で5分間ブレンドする。
5.混合の停止後、時間測定を開始し、泡の全ミリリットル数を測定する。
6.泡が消失する時間を測定する。
7.泡の高さおよび消失時間の結果を記録する。
【0135】
EPA24法によるVOC試験:
組成物のVOC含有量は、ASTM D2369−81、87、90、92、93、または95の、塗膜の揮発分標準試験法に従って試験する。金属加工液濃縮物の試料を、110℃で少なくとも60分間、または質量が一定になるまで放置して、水および揮発性有機物質をすべて追い出す。その後、VOC含有量を質量減少(グラム/リットル)から計算できる。
【0136】
エマルションの平均液滴直径の試験:
エマルションの平均液滴直径の試験は、Marvern Mastersizerのような光散乱技術を装備した計測器を用いて測定する。光線またはレーザービームがエマルションを通過し、エマルション粒子または油滴に衝突すると、光は散乱し、光の強さが変わる。光の強さおよび角度の変化から、平均液滴直径を計算できる。
【0137】
アルミニウム系金属材料およびスチールに関して、いろいろな金属加工組成物を試験したので、これらの試験材料は(すべての種類の金属材料ではないとしても)種々の金属材料の大部分を表し、多金属用途を満たすと考えられる。
【0138】
第3表の「成分」欄の標準化学名以外で識別されている物質ならびにそうした例および試験のさらなる成分は、以下の第2表に述べられている下記の特性を有する。それらは、金属加工組成物に使用されるより好ましい化合物である。
【0139】
第2表:実施例および比較例で用いられた成分の一部およびそれらの成分の化学的情報
【表2】
【0140】
【表3】
MW=分子量、EO=エトキシル化、PO=プロポキシル化。
【0141】
より優れた水性金属加工組成物および最高の水性金属加工組成物の試験から学ぶために、組成物に加える構成成分(b)および(c)の化合物を多くの実施例で維持して、化学系に対する種々の化合物(a)および他の化合物の影響を観察する。
【0142】
これらの実施例およびさらなるそれらの試験用の水性金属加工組成物は、選択した化合物(b)および(d)を水に加え、次いで選択した化合物(a)を加え、その後、選択した化合物(c)を加えることにより製造した。この混合手順の間に、30〜50℃に加熱し、撹拌してエマルションを得た。また任意選択的に、その後、他の選択化合物すべてを加えた。要望に応じて、製造した濃縮物を水で薄めて、望みの希釈度にした。
【0143】
第3表は、潤滑性および安定性に関して試験した400近くの種々の組成物から選んだ20の組成物およびそれらの特性を示す。試験した種々の潤滑性付与化合物の種々の潤滑性度が特定されること、および試験した種々の乳化化合物(c)の種々の乳化度が特定されることは驚くべきことだった。さらに、安定した金属加工組成物が、アルミニウム系金属材料とスチールで同時に十分に潤滑性を示すことが自明ではないことも驚くべきことだった。したがって、多金属用途のために金属加工組成物を構成して安定化させる方法を学ぶ必要があった。安定した、十分に潤滑性を示す多金属用途用の金属加工組成物(まだ腐食保護の点で十分ではないもの)が得られることも驚くべきことだった。したがって、上記の要件すべてを十分に満たし、同時に泡立ちにくい金属加工組成物を得ることは簡単ではない。
【0144】
第3表:組成物の選択ならびに潤滑性と安定性の試験結果
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
【表7】
【0148】
【表8】
【0149】
【表9】
【0150】
【表10】
【0151】
【表11】
【0152】
第3表は、濁った乳白色の金属加工濃縮物でさえ、エマルションが安定している場合には優れた特性を示しうることを示す。濃縮物または希釈物が透明または半透明の外観である場合には、外観について述べられていない。濃縮物の安定性は、外観よりも重要である。比較例はすべて、濁った濃縮物であるかまたは乳白色の濃縮物であり、すべて(CE4でさえも)不安定であるかまたは分離する。
【0153】
良好な実施例から非常に良い実施例に至るものについてさえ、非常に様々な潤滑性データがある。潤滑性データが低くなるほど、組成物の潤滑性はよくなる。アルミニウムおよびその合金での非常に良いトルクデータは、≦200N・cmであり、スチールでの非常に良いトルクデータは、≦230N・cmである。トルクデータが非常に低い組成物の多くは、過酷な金属加工作業に使用できる。
【0154】
CE1の組成物は、十分な乳化化合物(c)がなかったので不合格であった。CE2の組成物は、乳化化合物(c)がすでに増やされていたが、適切な乳化化合物(c)が含まれているので、不合格であった。CE3の組成物は、さらにもっと量が増やされていたが、十分適切な乳化化合物(c)が含まれていなかったので、不合格であった。種々の乳化化合物(c)の組合せのHLB値が、乳化効果に影響を与えると仮定される。そのため、任意の乳化化合物(c)の量が重要であるだけでなく、そうした化合物の化学特性さえも、エマルションを安定化させる方法において選択しなければならない。したがって、乳化化合物(c)の適切な選択には特別の注意を払わなければならない。
【0155】
第4表は、米国特許出願公開第2009/0149359A1号明細書の実施例1および2で示されている組成物Cの結果を、本出願による組成物の結果と比較して示している。
【0156】
第4表:選択された本発明の組成物とその特性について、米国特許出願公開第2009/0149359A1号明細書の一番良い試料Cについての組成および試験結果
【表12】
【0157】
【表13】
【0158】
【表14】
【0159】
*の付いているCE4のデータは刊行物に述べられているが、ここでは*の付いていないCE4のデータをオリジナルの開示されていない配合物と一緒に試験し、本出願による組成物の結果と比較した。C=CE4は、米国特許出願公開第2009/0149359A1号明細書の一番良い実施例である。
【0160】
この表は、この刊行物によれば、化合物(a)および(d)が加えられていないことを明らかに示している。CE4のpHは、E21〜E25の場合よりも著しく低い。スチールでのタップ立てトルクデータで測定されたCE4の潤滑性は、E21〜E25のそれと比べて悪い。CE4の耐食性も、CIC試験で測定されたE21〜E25のそれと比べて明らかに悪い。CE4の希釈エマルションの安定性でさえも、純水および/または硬水で希釈されたものについてエマルション安定性試験で測定されたE21〜E25の安定性と比べて低い。
【0161】
さらに、現場での長期試験を非常にいろいろな金属材料に対して実施したが、それによると、工業規模の金属加工作業において本発明の金属加工組成物の優れた挙動および特性が確認された。これは、実験室での試験で以前に見出されたことであり、一部分は上に示されている。