特許第5968435号(P5968435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5968435-オイル掻取りリング 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968435
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】オイル掻取りリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 9/20 20060101AFI20160728BHJP
   F16J 9/26 20060101ALI20160728BHJP
   F02F 5/00 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   F16J9/20
   F16J9/26 C
   F02F5/00 Q
   F02F5/00 B
   F02F5/00 F
【請求項の数】9
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2014-520534(P2014-520534)
(86)(22)【出願日】2012年5月30日
(65)【公表番号】特表2014-525013(P2014-525013A)
(43)【公表日】2014年9月25日
(86)【国際出願番号】DE2012000573
(87)【国際公開番号】WO2013010520
(87)【国際公開日】20130124
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】102011108280.1
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102012004757.6
(32)【優先日】2012年3月8日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509340078
【氏名又は名称】フェデラル−モーグル ブルシェイド ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FEDERAL−MOGUL BURSCHEID GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ベーレンロイター
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ギレン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ミクス
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−530045(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/124353(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/040066(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/151589(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/053727(WO,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1557594(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 9/00 − 9/28
F02F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル掻取りリングであって、半径方向外側の摺動面(3)と、半径方向内側の周面(6)と、上部側面(8)と、下部側面(7)とを備えた基体(2)を有しており、該基体(2)は、必要に応じて耐摩耗性の層(15)が設けられた少なくとも2つの摺動面ウェブ(4,5)を有しており、これらの摺動面ウェブ(4,5)は、半径方向に見て対向摺動面に面した端部(10)に向かって、基体(2)から出発して所定の傾斜角度で脚部(11,13)を形成するように、円錐状に先細りしており、摺動面ウェブ(4,5)の自由端部(10)は、オイルチャンバ側の領域(O)から出発して、燃焼室側の領域(B)に向かって少なくとも部分的に傾斜して形成されており、摺動面ウェブ(4,5)の傾斜した領域(12)から脚部(11,13)への移行領域と、脚部(11,13)から基体(2)への移行領域とが、それぞれ丸み付けられて形成されているものにおいて、
摺動面ウェブ(4,5)の傾斜した領域(12)が、オイルチャンバ側の領域(O)に向かって延びる、円筒状に延在する部分(14)と接続しており、円筒状の部分(14)に付与された掻取りエッジの曲率半径(R)が、0.02〜0.05mmであり、前記傾斜角度は18°以下であり、円筒状の各部分(14)の幅は0.15mm未満であり、
前記基体の軸方向高さは、1.2mm〜2.0mmであることを特徴とする、オイル掻取りリング。
【請求項2】
前記傾斜角度は、15°以下である、請求項1記載のオイル掻取りリング。
【請求項3】
前記傾斜角度は、5〜15°である、請求項1又は2記載のオイル掻取りリング。
【請求項4】
前記円筒状の部分(14)の幅は、0.03〜0.15mm未満である、請求項1からまでのいずれか1項記載のオイル掻取りリング。
【請求項5】
前記基体の軸方向高さは、1.5mm以上である、請求項1から4までのいずれか1項記載のオイル掻取りリング。
【請求項6】
記摺動面ウェブ(4,5)に、耐摩耗性の層(15)が設けられている、請求項1からまでのいずれか1項記載のオイル掻取りリング。
【請求項7】
前記耐摩耗性の層(15)は、少なくとも1つのCVD摩耗保護層又はPVD摩耗保護層により形成されている、請求項6記載のオイル掻取りリング。
【請求項8】
各摩耗保護層(15)の層厚さは、最大20μmである、請求項6又は7記載のオイル掻取りリング。
【請求項9】
前記摩耗保護層(15)は、前記摺動面ウェブ(4,5)の外周面の他に、前記摺動面ウェブ(4,5)の側面(11,13)並びに前記摺動面ウェブ(4,5)に隣接する溝底部(16)にも設けられている、請求項からまでのいずれか1項記載のオイル掻取りリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイル掻取りリングであって、半径方向外側の摺動面と、半径方向内側の周面と、上部側面と、下部側面とを備えた基体を有しており、該基体は、必要に応じて耐摩耗性の層が設けられた少なくとも2つの摺動面ウェブを有しており、これらの摺動面ウェブは、半径方向に見て対向摺動面に面した端部に向かって、基体から出発して所定の角度で円錐状に先細りしており、摺動面ウェブの自由端部は、オイルチャンバ側の領域から出発して、燃焼室側の領域に向かって少なくとも部分的に傾斜して形成されており、摺動面ウェブの傾斜した領域から脚部への移行領域と、脚部から基体への移行領域とが、それぞれ丸み付けられて形成されているものに関する。
【0002】
このような従来技術は、WO2008/151589A1に記載されている。
【0003】
ここに記載されたオイル掻取りリングは、円錐形の摺動面ウェブ、並びに鋭い掻取りエッジの代わりに規定された曲率半径を有している。前記掻取りエッジは、対向摺動面、例えばシリンダライナを摩耗から保護するが、オイル掻取り作用に関しては理想的でない。
【0004】
更に、WO01/53727A1により公知となったオイル掻取りピストンリングは、耐摩耗性の被覆を備えた少なくとも1つの円錐状の摺動ウェブを有している。この摺動ウェブの円錐面の領域には、予め設定可能な半径方向高さと幅の半径方向隆起部が、耐摩耗性の被覆を備えて設けられており、この場合、傾斜して延在する部分と、円筒状に延在する部分とが生ぜしめられている。
【0005】
この公知のオイル掻取りリングは、その円錐・円筒状の摺動ウェブに基づき、極めて良好なオイル掻取り作用を有している。このリングにおける欠点は、当該刊行物に記載された製造過程(予備輪郭の旋削、被覆、総形研削及び最終輪郭の形成)に基づいて、鋭いエッジの掻取りエッジが生ぜしめられる点にある。良好なオイル掻取り作用に結びつくこの鋭い掻取りエッジは、個々の使用ケースにおいて、対向摺動面、例えばシリンダライナの摩耗の増大を招く。
【0006】
本発明の課題は、前掲のWO01/53727A1に記載の従来技術によるオイル掻取りリングと同様に良好なオイル掻取り作用を有するオイル掻取りピストンリングを更に改良して、同時に対向摺動面、例えばシリンダライナの摩耗を減少させることにある。
【0007】
この課題は、摺動面ウェブの傾斜した領域が、オイルチャンバ側の領域に向かって延びている、円筒状に延在する部分と接続しており、円筒状の部分に付与された掻取りエッジの曲率半径が、0.02〜0.2mmであり、傾斜角度は18°以下であり、円筒状の各部分の幅は0.15mm未満であることによって解決される。
【0008】
本発明の有利な改良は、従属請求項に記載されている。
【0009】
提案した構成が示すオイル掻取りリングは、摺動面ウェブの領域に円錐・円筒状の摺動面を備え、且つ0.02〜0.2mm、特に0.02〜0.05mmの曲率半径を有する掻取りエッジを備えている。つまりこのオイル掻取りリングは、冒頭で述べた2つのオイル掻取りリングを折衷したものである。
【0010】
更に、傾斜角度は15°以下、特に有利には5〜15°であってよい。
【0011】
更に、基体の軸方向高さが1.2mm以上、特に1.5mm以上であると有利である。
【0012】
従来技術から公知のオイル掻取りリングとは異なり、摺動ウェブの円筒状の部分の幅が減少させられる。このこともやはり有利である。それというのも、より少ない接線力で、昨今のオイル掻取りピストンリングと同一の接触圧力が実現され得るからであり、これにより、Co2排出量の減少をも伴う、より小さな摩擦損失が得られる。
【0013】
新規に提案されたオイル掻取りリングの輪郭は、被覆前に完全に旋削されるので、摺動ウェブの側面は、総形研削を用いた昨今のオイル掻取りリングにおけるよりも、急峻にすることができる。これにより、極めて小さな軸方向構成高さ(≧1.2mm)のオイル掻取りリングが可能である。但し、このピストンリングの製造方法は、今日汎用の軸方向高さを有するオイル掻取りリングにも用いることができる。掻取りエッジの小さな曲率半径に基づいて、対向摺動面、特にシリンダライナが最適に保護されるようになっている。
【0014】
提案した傾斜角度により、オイル消費量が最適化され得る。
【0015】
円筒状の摺動ウェブ部分のより小さな幅は、摩擦を減少させる効果を有している。
【0016】
軸方向高さを極めて小さくした結果、ピストンの構成高さも同様に減少させることができ、このことは、より小さな重量と結びついている。
【0017】
以下に、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】基体2を備えたオイル掻取りリング1を示す図である。
【0019】
図示のオイル掻取りリング1は、半径方向外側に摺動面3を備えた基体2を有している。この基体2から出発して摺動面ウェブ4,5が半径方向外側に向かって延びている。基体2は更に、内周面6並びに下部側面7及び上部側面8を有している。下部側面7は、オイルチャンバ側の領域Oに対応配置されており、上部側面8は、燃焼室側の領域Bに対応配置されている。内周面6の領域には環状溝9が、ばねリング(詳しくは図示せず)を収容するために設けられている。摺動面ウェブ4,5は、対向摺動面(詳しくは図示せず)に面した端部10に向かって半径方向に先細りしている、即ち、基体2から出発して18°未満の傾斜角度で脚部11,13を形成するように円錐形に先細りしており、この場合、摺動面ウェブ4,5の自由端部10には、オイルチャンバ側の領域Oから出発して燃焼室側の領域Bに向かって傾斜面12が設けられている。傾斜面12の領域には、オイルチャンバ側の領域Oに向かって円筒状に延在する、0.15mm未満の幅の部分14が続いている。オイル掻取りリング1の使用に応じて、ピストンリングの軸方向の構成高さは1.2mm以上のあらゆる所望の寸法であってよい。円筒状の部分14はオイルチャンバ側で、0.02〜0.2mm、好適には0.02〜0.05mmの曲率半径をもって所属の脚部11に移行している。
【0020】
摺動面ウェブ4,5は、本実施形態では少なくとも1つの耐摩耗性の層15を有していて、この層15は、例えばDLC(Diamond-Like-Carbon)−摩耗保護層であってよい。各摩耗保護層15の層厚さは、最大20μmであってよく、摩耗保護層15は、摺動面ウェブ4,5の外周面だけでなく、摺動面ウェブ4,5の側面11,13並びに摺動面ウェブ4,5に隣接する溝底部16にも設けられている。
図1