(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968441
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】ラビリンスシール
(51)【国際特許分類】
F01D 11/02 20060101AFI20160728BHJP
F01D 11/06 20060101ALI20160728BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20160728BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20160728BHJP
F16J 15/447 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
F01D11/02
F01D11/06
F01D25/00 M
F02C7/28 A
F02C7/28 B
F02C7/28 C
F16J15/447
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-530199(P2014-530199)
(86)(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公表番号】特表2014-531555(P2014-531555A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】EP2012067871
(87)【国際公開番号】WO2013037849
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年5月12日
(31)【優先権主張番号】202011105609.4
(32)【優先日】2011年9月12日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シリル ブリコー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ ローベアト シュタイガー
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ハイデッケ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス スィモン−デルガド
【審査官】
佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−254006(JP,A)
【文献】
特開昭50−085752(JP,A)
【文献】
特開平07−243303(JP,A)
【文献】
特開2006−052808(JP,A)
【文献】
特開2002−357103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 11/00−10
F01D 25/00
F02C 7/28
F16J 15/40−453、54−56
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンまたはガスタービンの固定部分(10)と回転部分(12)との間の環状空間(11)を封止するためのラビリンスシール(25,26,27)であって、
複数のシールストリップ(13)を備え、該複数のシールストリップ(13)は、軸方向に連続して配置されており、かつ前記固定部分(10)に固定されており、かつ前記空間(11)に突出しており、前記複数のシールストリップ(13)は、シール効果を生じつつ、交互に配置されているロータ側シール部材(14,19)と相互作用する、ラビリンスシール(25,26,27)において、
前記複数のシールストリップ(13)は、低温の設置状態において対称位置に関してオフセットされており、
該オフセットは、前記固定部分(10)および前記回転部分(12)が前記低温の設置状態から高温の定常運転状態に加熱されたときに熱膨張する結果として、前記シールストリップ(13)が、隣接するロータ側シール部材(14,19)に関して変位する方向とは逆向きであり、かつ該変位の距離と同じ量であり、
2つの隣り合うロータ側シール部材(14,19)の間に配置された中間成形部(21)は、2つの隣り合うロータ側シール部材(14,19)それぞれの中央に最大高さを有しており、定常運転時に、前記シールストリップ(13)がそれぞれ、この領域に向かい合って配置され、かつ前記シールストリップ(13)と前記中間成形部(21)との間の自由隙間が最小になることを特徴とするラビリンスシール。
【請求項2】
前記低温の設置状態においては、前記ロータ側シール部材(14,19)から、前記固定部分(10)の最も近いシールストリップ(13)までの距離(b)は、前記固定部分(10)の遠方のシールストリップ(13)までの距離(a)の0.2倍〜0.8倍である、請求項1記載のラビリンスシール。
【請求項3】
前記ロータ側シール部材は、前記回転部分(12)の環状突出形成部(19)として形成されている、請求項1または2記載のラビリンスシール。
【請求項4】
2つの隣り合う前記シールストリップ(13)それぞれの間の前記突出形成部(19)は、略矩形断面を有しており、かつ前記空間(11)に向かって前記半径方向に延びている、請求項3記載のラビリンスシール。
【請求項5】
2つの隣り合う前記シールストリップ(13)それぞれの間に前記突出形成部(19)が配置されており、2つの隣り合う前記突出形成部(19)の間に、前記軸方向で直径が変化した中間成形部(21)が配置されており、かつ前記固定部分(10)の前記シールストリップ(13)との相互作用時に、前記回転部分(12)と前記固定部分(10)との間の熱的に誘発された変位が補償されるように前記中間成形部(21)の前記直径の前記変化が設計されている、請求項3又は4記載のラビリンスシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転式熱機械の分野に関する。本発明は、回転式熱機械、特に蒸気タービンまたはガスタービンの固定部分と回転部分との間の環状空間を封止するラビリンスシールに関する。
【0002】
発明の背景
図1は、一般的に知られている相互係合ラビリンスシールシステムの、大幅に簡略化した形態の詳細図である。
図1に示されているラビリンスシール24は、(内側の)回転部分12と回転部分12を同心円状に囲んでいる固定部分10との間の環状空間11を、気体の貫流に対して封止している。相互係合ラビリンスシール24は、固定部分10に固定されたステータ側シールストリップ13と、回転部分12に固定されたロータ側シールストリップ14とを備えており、それらのシールストリップは、交互に配置されており、かつそれぞれの向かい合っているシールストリップの空間において半径方向に係合している。
【0003】
しかし、
図1の相互係合ラビリンスシールには、上記の構成において以下のような問題がある。
【0004】
ロータおよびステータの熱的に誘発された大きな変位によって、ラビリンスシールシステムの隙間に大きな変化が生じ、それによって、シールストリップが、設置状態におけるその中央位置から移動し、定常条件下で、その中央位置に全く戻らないかまたは部分的にしか戻らなくなる。結果として生じた変位位置におけるラビリンスシールのシール効果は悪影響を受けることがあるので、漏洩損失が大きくなり、かつ機械の定常力および効率が悪影響を受けることがある。
【0005】
ロータが、直径が階段状になった複数の部分に追加的に分割されている、別の構成の相互係合ラビリンスシールは、例えば、米国特許第5029876号明細書から知られている。
【0006】
発明の概要
蒸気タービンまたはガスタービンの固定部分と回転部分との間の環状空間を封止するためのラビリンスシールであって、軸方向に連続して配置され、固定部分に固定され、かつ空間に突出している複数のシールストリップを備えており、その複数のシールストリップは、シール効果を生じつつ、交互に配置されたロータ側シール部材と相互作用している。
【0007】
本発明は、周知のラビリンスシールの不都合を避け、特に定常運転時に達成される最良の気密性を特徴とするラビリンスシールを製造することを目的とする。
【0008】
この目的は、請求項1の全ての特徴により達成される。
【0009】
本発明の1つの態様には、従来の両側ラビリンスシールと同様に、同じように相互係合しているが、シールストリップが低温の設置状態において対称位置に関してオフセットしたラビリンスシールを設計することが含まれる。このオフセットは、固定支持構造体および回転部分が低温の設置状態から高温の定常運転状態に加熱されたときに熱膨張する結果として、シールストリップが、隣接するロータ側シール部材に関して変位する方向とは逆向きであり、かつその変位の距離と同じ量である。
【0010】
そのため、オフセットは、シールストリップが定常運転時に対称位置に移動するように、すなわち、1つのシールストリップから2つの隣り合うロータ側シール部材までの距離がそれぞれ同じになるように選択される。
【0011】
1つ実施の形態では、ラビリンスシールは、従来の両側ラビリンスシールと同様に、同じように相互係合する形式で設計されている。しかし、ロータに挿入される別個のロータ側シールストリップに代えて、回転部分に直接形成または成形されたシール部材をこの場合使用している。そのため、回転部分の構造化された周面は、支持体であるだけでなく、それ自体がシールシステムの一部を形成している。
【0012】
非対称的な低温の設置位置においては、ロータ側シール部材から近くのシールストリップまでの距離は、遠くのシールストリップまでの距離の0.5倍である。
【0013】
1つの実施の形態では、低温の設置状態においては、ロータ側シール部材から近くのシールストリップまでの距離は、遠くのシールストリップまでの距離の0.2倍〜0.8倍である。さらなる実施の形態では、低温の設置状態においては、ロータ側シール部材から近くのシールストリップまでの距離は、遠くのシールストリップまでの距離の、好ましくは0.3倍〜0.6倍である。
【0014】
本発明のラビリンスシールの別の実施の形態は、2つの隣り合うロータ側シール部材の間の突出形成部はそれぞれ、略矩形断面を有しており、かつ空間に向かって半径方向に延びていることを特徴としている。
【0015】
シールのさらなる有利な特徴は、本発明の開発によれば、回転部分が、軸方向で直径が変化した中間成形部を隣り合う突出形成部の間に有し、かつ固定部分の各シールストリップとの相互作用時に、ロータとステータとの間の熱的に誘発された変位が補償されるように、中間成形部の外径の変化が設計されると得られる。その結果として達成される効果は、回転部の形状によって、直接、隙間の受動的な制御が可能になることである。
【0016】
この場合、中間成形部が、関連するシールストリップの領域において、ロータとステータとの間における軸方向の相対運動時に、シールの隙間を変える円錐部を有することが特に想定される。
【0017】
しかし、中間成形部が、関連するシールストリップの領域において直径段部を有することも想定される。
【0018】
1つの実施の形態によれば、突出形成部の中間成形部はそれぞれ、2つの隣り合うロータ側シール部材の間の中央において最大高さを有しており、それによって、定常運転時に、シールストリップはそれぞれ最大高さの領域に向かい合って位置し、シールストリップと中間成形部との間の自由隙間が最小になる。
【0019】
ラビリンスシールの回転部分は、例えば、ロータそのもの、動翼またはロータの熱シールドである。通常、ロータには、シャフトカバーの領域、すなわちコンプレッサとタービンとの間の領域において、コンプレッサからの空気がタービンに直接漏れるのを制御するラビリンスシールが設けられている。2次流れを減らすために、動翼および熱シールドにはラビリンスシールが設けられている。特に、動翼のシュラウドには、設置状態で、包囲型のラビリンスシールを周囲の部分と共に製造するシール部材(シールストリップ、ラビリンスシール、リブまたはブリッジ)が設けられていることが多い。
【0020】
次いで、本発明を、例示的な実施の形態に基づいて、図面とともにより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ステータ側およびロータ側に挿入されたシールストリップを有する、両側で相互係合しているラビリンスシールの詳細を簡略図で示す図である。
【
図2】
図1に類似した図であって、シールストリップが非対称に位置している、本発明によるラビリンスシールの第1の例示的な実施の形態の図である。
【
図3】
図2に類似した図であって、シールストリップに代わってロータ側突出形成部を有している、本発明によるラビリンスシールの第2の例示的な実施の形態の図である。
【
図4】
図3に類似した図であって、複数のロータ側突出形成部の間に配置されている、直径段部と円錐部とを有しているロータの中間成形部を備えた、本発明によるラビリンスシールの第3の例示的な実施の形態の図である。
【0022】
発明を実施するための形態
図2は、
図1に類似した図であって、本発明によるラビリンスシールの第1の例示的な実施の形態を示している。
図1のシールでは、ステータ側のシールストリップ13がそれぞれ、ロータ側の2つのシールストリップの間の中央において対称に配置されているのに対して、ステータ側のシールストリップ13がそれぞれ非対称に配置されている。ステータ側のシールストリップ13’から、右側の隣接するロータ側シールストリップ14bまでの距離bは、ステータ側のシールストリップ13’から、左側の隣接するロータ側シールストリップ14aまでの距離aの一部である(bのaに対する比は1未満)。
図2は、ラビリンスシール25の低温の設置状態を示している。回転部分12に関する、ステータ側のシールストリップ13のシール端部の過渡的運動28も示されている。低温状態から定常状態への全体的な運動が示されている。低温状態から高温状態への結果として生じた変化29も示されている。
【0023】
図3は、
図2に類似した図であって、ステータ側シールストリップ13と相互係合する形式で相互作用している、シールストリップのようなロータ側突出形成部19を備えているラビリンスシールの例示的な実施の形態を示している。突出形成部19は、互いに関して同じであり、かつ互いに関して同じ軸方向間隔を有している。突出形成部は略矩形断面を有しており、かつ回転部分12と固定部分10との間の空間11に向かって半径方向に延びている。突出形成部19の(軸方向)厚さは、シールストリップ13の厚さよりも著しく厚くなっている。突出形成部19は、隣り合うシールストリップ13の間において、ネガティブオフセット29によって中央から変位して配置されている。複数の突出形成部19とその間にある中間成形部21との間の移行部は、切欠き効果を最小化するために丸くなっている。中間成形部21は、わずかに凹んだ設計になっており、かつ中間成形部21の中央にその最下点を有している。中間成形部21のわずかな曲線の結果として、回転部分12および固定部分10が軸方向において相対的に動いた場合、結果として得られるラビリンスシール27の隙間に比較的小さな変化が生じる。低温状態から高温状態への結果として生じる変化29も示されている。低温状態から高温状態への結果として生じる変化29は、シールストリップ13が、定常運転中に複数の突出形成部19の間の中央に位置するようになることを明確にしている。
【0024】
この状況は、
図4の例示的な実施の形態の場合では異なっている。
図4は、
図3に類似した図であって、より顕著に構造化されており、かつ直径の隆起部分によって分離されている鋭い直径段部21aと円錐部21bとを備えているロータ側部分12の、複数のロータ側突出形成部19の間に配置されている中間成形部21を備えた、本発明のラビリンスシールの別の例示的な実施の形態を示している。これによって、熱膨張の際に、ラビリンスシール27の隙間に所定の変化が生ずることができる。したがって、特に、定常運転時に、シールストリップ13に、低温状態から高温状態への結果として生じる変化による変位29が生じた後に、シールストリップ13は、中間成形部21に向かい合って位置するようになる。その結果、損失が最小化される。
【0025】
概して、本発明を使用することによって、ガスタービンまたは蒸気タービンのためのラビリンスシールが製造されるが、そのラビリンスシールは、定常運転時に高い気密性を有することができ、かつ隙間の受動的な制御を簡単な形式で可能にすることができる。
【符号の説明】
【0026】
10 固定部分
11 空間
12 回転部分
13,13’ シールストリップ(ステータ側)
14,14a,14b シールストリップ(ロータ側)
19 突出形成部(ロータ)
21 中間成形部
21a 直径段部
21b 円錐部
24,...,27 ラビリンスシール
28 シール端部の過渡的運動
29 低温状態から高温状態への変化