特許第5968450号(P5968450)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968450
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】CO2回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/14 20060101AFI20160728BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
   B01D53/14 220
   B01D53/62ZAB
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-536886(P2014-536886)
(86)(22)【出願日】2013年9月18日
(86)【国際出願番号】JP2013075197
(87)【国際公開番号】WO2014046146
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】13/623,448
(32)【優先日】2012年9月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】中山 浩次
(72)【発明者】
【氏名】米川 隆仁
(72)【発明者】
【氏名】乾 正幸
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】宮本 修
(72)【発明者】
【氏名】反町 美樹
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−284273(JP,A)
【文献】 特開2010−022986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/14−53/18
B01D 53/34−53/85
C01B 31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中のCOを吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCOを吸収した吸収液からCOを放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCOを放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO回収装置であって、
前記再生塔は、
前記吸収液を貯留する第1トレイ部を有する第1再生部と、
前記第1再生部の下方に設けられ、前記吸収液を供給する液分散部及び前記吸収液を貯留する第2トレイ部を有する第2再生部と、
前記第1トレイ部と前記液分散部を結び、前記第1トレイ部に貯留された前記吸収液を前記液分散部に供給する第1供給管と、
前記第2トレイ部と前記第2トレイ部よりも下方部を結び、前記第2トレイ部に貯留された前記吸収液を前記下方部に供給する第2供給管と、
前記第2供給管に設けられ、前記吸収液を加熱して水蒸気を生成するリボイラと、
を備え、
前記第1供給管は、前記吸収液を加熱する加熱部が設けられ、前記加熱部の前流の前記吸収液及び後流の前記吸収液の密度差を駆動力として前記吸収液を循環させ
前記加熱部で前記吸収液から発生したガス状のCO及び水蒸気によって、前記吸収液の循環の駆動力を生じさせるCO回収装置。
【請求項2】
前記第1供給管には、前記吸収液を圧送する圧送装置又は前記吸収液の流量を制御する制御部を設けない請求項1に記載のCO回収装置。
【請求項3】
前記第2再生部の液分散部に対する前記第1供給管及び前記加熱部における圧力損失で発生する水頭差が、前記第1トレイ部と前記液分散部との高さの差以上である請求項1に記載のCO回収装置。
【請求項4】
前記第1供給管は、ガスが溜まる区間を有さない請求項1に記載のCO回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収液にCOを吸収させて排ガスに含まれるCOを除去し、かつ、COを吸収した吸収液からCOを放出させつつ吸収液を再生するCO回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CO回収装置は、火力発電所等で化石燃料を燃焼したときに発生する二酸化炭素(CO)を回収する。CO回収装置は、アミン化合物の水溶液(以下「吸収液」という。)をボイラから排出された燃焼排ガスと接触させ、燃焼排ガスに含まれるCOを除去し、大気に放出することなく貯蔵する。
CO回収装置は、燃焼排ガスと吸収液を接触させる吸収塔と、COを吸収した吸収液を加熱し、COを放出すると共に、吸収液を再生する再生塔とを備える。再生された吸収液は、吸収塔に搬送されて、再使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2007−284273号公報(段落[0036]〜[0039]など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
CO回収装置の再生塔には、COが吸収された吸収液(以下「リッチ吸収液」という。)を降下させる液分散部と、液分散部から降下する吸収液を蒸気と対向流接触させて加熱する充填層と、COが除去された吸収液(以下「リーン吸収液」という。)を一部含む吸収液(以下「セミリーン吸収液」という。)を貯留するトレイ部とを有する再生部が内蔵される。
【0005】
再生部は、再生塔内に複数段(例えば、2段又は3段等)設置される場合がある。上側の再生部のトレイ部に貯留された吸収液は、熱交換器を通過して加熱された後、下側の再生部に液分散部を介して供給される。これにより、吸収液を効率良く再生させることができる。特許文献1では、再生塔内で充填層が3段で構成され、例えば、再生塔内でCOを一部除去したセミリーン溶液を再生塔の上流側から抜き出して下流側に戻す還流ラインが設けられ、還流ライン中のセミリーン溶液を加熱する熱交換器を備えることが記載されている。
【0006】
従来、上側の再生部のトレイ部に貯留された吸収液を下側の再生部に搬送する際、ポンプによる昇圧や、流量調整弁による流量の調節を行っていた。しかし、この場合、ポンプや流量調整弁の設置するため、CO回収装置の構成が複雑になり設備費がかかる上に、動力(ポンプの駆動)による電力消費によってコストも上昇する。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、再生部の吸収液の搬送において、設備費を低減しつつ、動力を低減することが可能なCO回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のCO回収装置は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るCO回収装置は、排ガス中のCOを吸収液に吸収させる吸収塔と、前記吸収塔においてCOを吸収した吸収液からCOを放出させる再生塔とを有し、前記再生塔でCOを放出した吸収液を前記吸収塔で再使用するCO回収装置であって、前記再生塔は、前記吸収液を貯留するトレイ部を有する第1再生部と、前記第1再生部の下方に設けられ、前記吸収液を供給する液分散部を有する第2再生部と、前記トレイ部と前記液分散部を結び、前記トレイ部に貯留された前記吸収液を前記液分散部に供給する供給管とを備え、前記供給管は、前記吸収液を加熱する加熱部が設けられ、前記加熱部の前流の前記吸収液及び後流の前記吸収液の密度差を駆動力として前記吸収液を循環させる。
【0009】
この構成によれば、再生塔に第1再生部と第2再生部が高さ方向に連なって設けられており、吸収液は、供給管を通じて、第1再生部の下部に設置されたトレイ部から第2再生部の上部に設置された液分散部に導かれる。供給管を通過する吸収液は、加熱部で加熱されることから、吸収液中の一部のCOがガス状となり、加熱部の前後で密度差が生じ、サーモサイホン効果が得られる。その結果、加熱部で圧力損失が生じたり、又は、高い位置にある配管に吸収液を搬送したりするなどして水頭差がある場合でも、ポンプ等の圧送装置を設けることなく吸収液を供給できる。加熱部は、例えば熱交換器である。
【0010】
上記発明において、前記供給管には、前記吸収液を圧送する圧送装置又は前記吸収液の流量を制御する制御部を設けないことが好ましい。この構成によれば、熱回収システムの構成が単純化し、設備費がかからず、動力(ポンプの駆動)による電力消費も低減する。
【0011】
上記発明において、前記第2再生部の液分散部に対する前記配管及び前記加熱部における圧力損失で発生する水頭差が、前記トレイ部と前記液分散部との高さの差以上でもよい。
【0012】
液分散部に対する配管及び加熱部における圧力損失で発生する水頭差が、トレイ部と液分散部との高さの差よりも小さい場合、吸収液は、高低差によって、配管を通じて、トレイ部から液分散部に導かれる。一方、液分散部に対する配管及び加熱部における圧力損失で発生する水頭差が、トレイ部と液分散部との高さの差以上であるとき、吸収液が加熱部によって加熱されていない場合、高低差では、吸収液をトレイ部から液分散部に導くことはできない。この構成によれば、供給管を通過する吸収液は、加熱部によって吸収液中の一部のCOがガス状となり、加熱部の前後で密度差が生じ、サーモサイホン効果が得られることから、液分散部に対する配管及び加熱部における圧力損失で発生する水頭差が、トレイ部と液分散部との高さの差以上であっても、ポンプ等の圧送装置を設けることなく、液分散部に吸収液を供給できる。
【0013】
上記発明において、前記加熱部で前記吸収液から発生したガス状のCO及び水蒸気によって、前記吸収液の循環の駆動力を生じさせてもよい。
この構成によれば、吸収液の循環の駆動力は、加熱部で吸収液から発生したガス状のCO及び水蒸気によって生じる。
【0014】
上記発明において、前記供給管は、ガスが溜まる区間を有さないことが望ましい。
この構成によれば、供給管にはガスが溜まる区間が設けられないことから、吸収液は、溜まったガスによって妨げられることなく、トレイ部から液分散部までスムーズに導かれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、供給管を通過する吸収液は、加熱部で加熱される際、吸収液中の一部のCOがガス状となり、加熱部の前後で密度差が生じ、サーモサイホン効果が得られる。その結果、吸収液を圧送する圧送装置が設けられることなく、吸収液を搬送することができるため、設備費を低減しつつ、動力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るCO回収装置を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係るCO回収装置の再生塔を示す概略図である。
図3】従来のCO回収装置の再生塔を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態に係るCO(二酸化炭素)回収装置1について、図面を参照して説明する。
まず、本実施形態に係るCO2回収装置の構成及び動作について、図2を参照して説明する。
CO回収装置1は、火力発電所等で化石燃料を燃焼したときに発生する二酸化炭素(CO)を回収する。CO回収装置1は、アミン化合物の水溶液(以下「吸収液」という。)をボイラやガスタービン(図示せず。)等から排出された排ガス60と接触させ、排ガス60に含まれるCOを除去し、大気に放出することなく貯蔵する。
CO回収装置1は、排ガス60と吸収液を接触させる吸収塔4と、COを吸収した吸収液を加熱し、COを放出すると共に、吸収液を再生する再生塔7とを備える。再生された吸収液は、吸収塔4に搬送されて、再使用される。
【0018】
CO回収装置1では、例えば火力発電所等に設置されたボイラやガスタービン(図示せず。)等から排出されたCOを含有する排ガス60が、ブロワ(図示せず。)によって冷却塔2へと供給されている。冷却塔2へと供給された排ガス60は、循環冷却水61によって冷却される。排ガス60を冷却するのに用いられた循環冷却水61は、ポンプ31によって、冷却器32を通り再び冷却塔2へと供給されて塔内で噴射されている。なお、冷却器32では、冷却塔2へと供給される循環冷却水61を冷やすための冷却水62が用いられる。
【0019】
冷却されたCOを含有する排ガス60は、排ガスライン3を介して吸収塔4の下部に供給される。吸収液は、吸収塔4の上部から供給されて下部の充填層20へと供給されている。吸収塔4において、吸収液は、充填層20を通過する間に排ガス60と対向流接触される。これによって、排ガス60中のCOは、吸収液に吸収され、排ガス60からCOが除去される。ここで、COが除去された排ガス60を浄化ガス50という。この、COが除去された浄化ガス50は、吸収塔4の塔頂部4aから排出される。
【0020】
吸収液にCOが吸収されることによって、吸収液は発熱して液温が上昇するため、浄化ガス50には水蒸気等が含まれ得る。浄化ガス50中の水蒸気は、吸収塔4上部の充填層20上で冷却水と対向流接触で冷却されることで凝縮する。ミストエリミネータ21は、充填層20の上方に設けられ、浄化ガス50中のミストを捕集する。吸収塔4外には、冷却器22と、凝縮水の一部を冷却器22と吸収塔4内との間で循環させるポンプ23とが設けられている。
【0021】
吸収塔4でCOを吸収した吸収液(以下「リッチ吸収液」という。)は、塔底部4bに貯溜される。そして、リッチ吸収液は、吸収塔4の塔底部4bと再生塔7の上部とを接続する送液ラインLを介して再生塔7へポンプ6によって供給される。再生塔7内で、リッチ吸収液は、充填層41へ向けて噴射される。
【0022】
送液ラインLには、送液ラインLとの交差部分において、リッチ吸収液と、再生塔7でCOが除去された吸収液(以下「リーン吸収液」という。)とを熱交換する熱交換器9が設けられている。熱交換器9において、送液ラインLを流れるリッチ吸収液は加熱され、送液ラインLを流れるリーン吸収液は冷却される。
【0023】
再生塔7において、リッチ吸収液は、充填層41,42を通過する間に高温の蒸気と対向流接触し、吸熱反応によってCOが放出される。吸収液は、再生塔7の塔底部7bに到達するまでに、大部分のCOが除去され、リーン吸収液として再生される。再生されたリーン吸収液は、送液ラインLを通じてポンプ8によって圧送され、熱交換器9と冷却器5を通過して冷却される。これにより、リーン吸収液は、吸収塔4でのCOの吸収に適した温度まで充分に冷却される。そして、リーン吸収液は、再び吸収塔4の下段の充填層20の上部に供給され、再利用される。
【0024】
CO排出ラインLは、再生塔7の塔頂部7aと気液分離器11とを結ぶ。再生塔7で吸収液から放出されたCOは、CO排出ラインLを通過して、冷却水62を用いた冷却器15を介して充分に冷却された後、気液分離器11へと送られる。気液分離器11に送られるCOは、水分を含んでおり、気液分離器11にてCOと凝縮水とに分離される。水分が分離されたCOは、CO圧縮装置(図示せず。)へ供給される。その後、回収されたCOは、CO圧縮装置によって圧縮されて、高圧COとなる。気液分離器11で集められた凝縮水は、ポンプ12によって再生塔7上部に還流される。還流された凝縮水は、再生塔7内部に設けられた凝縮部43を冷却する。これにより、再生塔7からの吸収液等の放出が抑制される。
【0025】
再生塔7の塔底部7bには、リーン吸収液を塔外に循環させる循環ラインLが設けられ、循環ラインLには、リボイラ30が設置される。リボイラ30は、蒸気管33によって供給される高温蒸気によって、リーン吸収液を加熱する。塔底部7bの吸収液の一部は、循環ラインLを介してリボイラ30に供給され、高温蒸気との熱交換によって加熱された後、再生塔7内へ還流される。この加熱によって、塔底部7bの吸収液からCOが放出される。また、再生塔7が高温化することから、充填層41,42が間接的に加熱され、吸収液からのCOの放出が促進される。
【0026】
次に、図1を参照して、本実施形態に係るCO回収装置1の再生塔7の構成及び動作について説明する。
再生塔7のうち吸収液が加熱されて再生される部分は、上部再生部51と、下部再生部52とに分割される。
【0027】
上部再生部51は、液分散部44と、充填層41と、トレイ部45とを有する。液分散部44は、充填層41の上方に設けられ、リッチ吸収液を充填層41へ供給する。トレイ部45は、充填層41の下方に設けられ、例えば、チムニートレイとシールパンなどからなる。
【0028】
上部再生部51の液分散部44から導入されたリッチ吸収液は、充填層41を流下している過程で、下方から上昇してくる高温の蒸気と接触して、吸熱反応によってCOを放出する。COが放出された吸収液は、トレイ部45のチムニートレイ上に落下し、その後シールパンに集められ貯留される。トレイ部45のシールパンに貯留された吸収液は、供給ラインLへ供給される。
【0029】
下部再生部52は、上部再生部51と同様に、液分散部46と、充填層42と、トレイ部47とを有する。液分散部46は、充填層42の上方に設けられ、供給ラインLから導入された吸収液を充填層42へ供給する。トレイ部47は、充填層42の下方に設けられ、例えば、チムニートレイとシールパンなどからなる。
【0030】
下部再生部52の液分散部46から導入されたセミリーン吸収液は、充填層42を流下している過程で、下方から上昇してくる高温の蒸気と接触して、吸熱反応によってCOを放出する。COが放出された吸収液は、トレイ部47のチムニートレイ上に落下し、その後シールパンに集められ貯留される。トレイ部47のシールパンに貯留されたリーン吸収液の一部は、上述した循環ラインLへ供給される。
【0031】
循環ラインLへ供給されたリーン吸収液は、リボイラ30で加熱された後、再生塔7の下部再生部52のトレイ部47よりも下方に導入され、再生塔7の塔底部7bに貯留される。また、吸収液は、加熱によって蒸気を発生し、発生した蒸気はトレイ部47,45のチムニートレイを通り抜けて、再生塔7内を上昇する。
【0032】
次に、再生塔7に設けられた吸収液の供給ラインLについて説明する。
供給ラインLは、一端が上部再生部51のトレイ部45に接続され、他端が下部再生部52の液分散部46に接続される。供給ラインLには、熱交換器53が設置される。熱交換器53は、加熱源の流体が供給されて、加熱源の流体と供給ラインLを流れる吸収液とが熱交換する。その結果、供給ラインLを流れる吸収液が加熱される。熱交換器53を通過する加熱源の流体には、CO回収装置1におけるリーン吸収液、蒸気凝縮水、排ガス、CO等がある。
【0033】
供給ラインLは、上部再生部51のトレイ部45との接続口、下部再生部52の液分散部46の開口以外は密閉された半密閉空間である。下部再生部52の液分散部46は、上部再生部51のトレイ部45との接続口よりも低い位置にある。また、供給ラインLの配管又は熱交換器53には、トレイ部45のシールパンに貯留された吸収液の液面よりも高い位置に配置された部分がある。すなわち、下部再生部52の液分散部46に対する配管及び熱交換器53における圧力損失で発生する水頭差が、トレイ部45と液分散部46との高さの差以上である。
【0034】
供給ラインLでは、熱交換器53によって加熱される部分が、再生塔7側に比べて高温で維持される。上部再生部51のトレイ部45のシールパンに貯留された吸収液は、供給ラインLへ供給され、熱交換器53にて加熱される。吸収液は、熱交換器53で温度が上昇すると、COが一部ガス状となる。したがって、加熱された吸収液は、熱交換器53を通過する前である加熱前の状態に比べて密度が小さくなり、熱交換器53を出ると、供給ラインL内において熱交換器53よりも高い位置に上昇する。その後、供給ラインLの管路に従って吸収液は、下部再生部52の液分散部46へ供給される。
【0035】
以上、本実施形態によれば、熱交換器53で吸収液が加熱され、加熱されることによって吸収液中のCOの一部がガス状となり、熱交換器53の上流側と下流側とで密度差が生じる。したがって、供給ラインLにおける配管又は熱交換器53において、再生塔7の上部再生部51の抜き出し位置よりも高い部分がある場合でも、供給ラインLは、ポンプを用いることなく吸収液を高い位置へ供給でき、最終的に再生塔7の下部再生部52の液分散部46に吸収液を導入できる。
【0036】
よって、本実施形態では、図3に示すような従来のCO2回収装置と異なり、吸収液を昇圧するポンプ71や、昇圧された吸収液の流量を調整する流量調節弁73が不要となり、設備費や動力による電力量を低減できる。
【0037】
従来、上部再生部51のトレイ部45と下部再生部52の液分散部46を結ぶ供給ラインLにおいて、吸収液を熱交換器72に通過させ、かつ、吸収液を高い位置にある配管に搬送するためには、圧力損失や水頭を考慮して、ポンプ71が必要であると考えられていた。ところが、CO回収装置を実運転させたところ、再生塔7の上部再生部51のトレイ部45と下部再生部52の液分散部46を結ぶ供給ラインは、動力なしで吸収液を搬送できるという知見が得られた。このように動力なしでCOを搬送できる理由は、熱交換器53による加熱によって吸収液中の一部のCOがガス状となり、熱交換器53の前後で密度差が生じ、サーモサイホン効果が得られるためである。そこで、本実施形態では、熱交換器53を介して上部再生部51のトレイ部45から下部再生部52の液分散部46に吸収液を供給する際、ポンプ71を設けることなく、吸収液を供給することとした。
【0038】
熱交換器53で加熱された後、供給ラインLにおいて搬送される吸収液は、ガス状となったCOが含まれるため、管路で高さ方向にポケット形状の伸縮曲げ管又はスイベル継手等が形成されていると、ガスが溜まるおそれがある。本実施形態の供給ラインLでは、ガスが溜まる区間を有さないように管路が形成される。例えば、水平方向にポケット形状の管路を形成したり、ポケット形状の管路を形成せずに配管の伸縮を吸収できる構造、又は配管の伸縮の吸収が不要な管路としたりすることで、配管内にガスを溜まらせない。その結果、吸収液は、溜まったガスによって妨げられることなく、トレイ部45から液分散部46までスムーズに導かれる。
【0039】
なお、本実施形態では、再生部が2分割される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、再生部が上部再生部、中部再生部、下部再生部といったように3分割されてもよいし、4分割以上されてもよい。この場合でも、上述した供給ラインLは、上下に隣接する再生部間に設置することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 CO回収装置
4 吸収塔
7 再生塔
11 気液分離器
20 充填層
21 ミストエリミネータ
30 リボイラ
41,42 充填層
43 凝縮部
44,46 液分散部
45,47 トレイ部
51 上部再生部(第1再生部)
52 下部再生部(第2再生部)
53 熱交換器(加熱部)
71 ポンプ
72 熱交換器
73 流量調節弁
,L 送液ライン
CO排出ライン
循環ライン
供給ライン(供給管)
供給ライン
図1
図2
図3