(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968467
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】可変真空コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 5/013 20060101AFI20160728BHJP
H01G 5/04 20060101ALI20160728BHJP
H01G 5/011 20060101ALI20160728BHJP
【FI】
H01G5/013 100
H01G5/04
H01G5/011
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-555093(P2014-555093)
(86)(22)【出願日】2012年2月3日
(65)【公表番号】特表2015-505645(P2015-505645A)
(43)【公表日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2012051865
(87)【国際公開番号】WO2013113401
(87)【国際公開日】20130808
【審査請求日】2014年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】509337160
【氏名又は名称】コメット アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アブレヒト、マイク
(72)【発明者】
【氏名】タナー、ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ミルドナー、マルク、ヨアキム
(72)【発明者】
【氏名】ヤエギ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ビグラー、ヴァルター
【審査官】
柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03611075(US,A)
【文献】
米国特許第01810985(US,A)
【文献】
特開昭53−044861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 5/00− 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空筐体と、
1つ又は複数の第1の固定電極(18)及び1つ又は複数の第1の可動電極(17)を備える第1の可変電極アセンブリ(17、18、21)と、
1つ又は複数の第2の固定電極(8)及び1つ又は複数の第2の可動電極(7)を備える第2の可変電極アセンブリ(7、8、11)と、
1つ又は複数の第1の固定コンデンサ電極(4)に電気接続を提供する第1の電気接続端子と、
1つ又は複数の第2の固定コンデンサ電極(9)に電気接続を提供する第2の電気接続端子と、
真空コンデンサの軸(A)に沿って前記第1の固定電極(18)及び/又は前記第2の固定電極(8)それぞれに対して前記第1の可動電極(17)及び/又は前記第2の可動電極(7)を変位させるための変位手段(1)と
を備える可変真空コンデンサにおいて、
前記第1の可変電極アセンブリ(17、18、21)が前記第2の可変電極アセンブリ(7、8、11)から連動組付けオフセット距離だけ前記軸(A)に沿ってオフセットされるように、前記第1の可変電極アセンブリ(17、18、21)及び前記第2の可変電極アセンブリ(7、8、11)が、前記軸(A)に沿って連動式に組み付けられ、
前記軸(A)に沿った前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)の第1の変位が前記軸(A)に沿った前記1つ又は複数の第2の可動電極(7)の第2の変位を生じるように、前記可変真空コンデンサは、前記軸(A)に沿った第1の位置にある前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)と、前記軸(A)に沿った第2の位置にある前記1つ又は複数の第2の可動電極(7)との間の運動学的な連係をもたらす可動電極連係手段(10)を備え、
前記可動電極連係手段(10)は、前記真空コンデンサの軸(A)および前記第1の可変電極アセンブリ(17、18、21)の外側の周りに配置され略円筒形の要素を備える
ことを特徴とする、可変真空コンデンサ。
【請求項2】
前記可動電極連係手段(10)は、前記第2の変位の大きさが前記第1の変位の大きさと同じであるように配置される、請求項1に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項3】
前記可動電極連係手段(10)は、前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)を前記1つ又は複数の第2の可動電極(7)に電気的に接続するための電気接続手段を備える、請求項1又は2に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項4】
前記変位手段(1)は、前記真空筐体の外側のモータ、及び前記モータ(1)の駆動力を前記真空筐体の壁(14)を介して前記真空筐体の内側の前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)に伝達するための駆動伝達手段(12、16)を備える、請求項1から3までのいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項5】
前記モータ(1)を前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)への高電圧に対して電気絶縁するためのモータ保護絶縁材(2)を備える、請求項4に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項6】
前記モータ保護絶縁材(2)は、前記駆動伝達手段(12、16)と前記1つ又は複数の第1の可動電極(10)との間に配置される、請求項5に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項7】
前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)及び前記1つ又は複数の第1の固定電極(18)は、略円筒形であり、前記軸(A)と同軸であり、それによって前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)は前記1つ又は複数の固定電極(18)に少なくとも部分的に挿入され、且つ/或いは
前記第2の可動電極(7)及び前記1つ又は複数の第2の固定電極(8)は、略円筒形であり、前記軸と同軸であり、それによって前記1つ又は複数の第2の可動電極(7)は前記1つ又は複数の第2の固定電極(8)に少なくとも部分的に挿入される、
請求項1から6までのいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項8】
前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)及び前記1つ又は複数の第1の固定電極(18)は、螺旋状電極として構成され、且つ/或いは前記1つ又は複数の第2の可動電極(7)及び前記1つ又は複数の第2の固定電極(8)は、螺旋状電極として構成される、請求項1から7までのいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項9】
略円筒形の要素が、前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)及び前記1つ又は複数の第1の固定電極(18)と同軸に配置される、請求項7又は8に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項10】
前記略円筒形の要素(10)は、電極材料から少なくとも部分的に構成され、前記1つ又は複数の第1の固定電極(18)のうちの外側の固定電極に十分に近接して配置されて、前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)のうちの1つとして少なくとも部分的に機能することができる、請求項9に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項11】
前記略円筒形の要素(10)は開口領域を備え、1つ又は複数の固定電極支持要素が前記第1の固定電極(18)から開口部を通って前記真空筐体の前記壁(14)に延在する、請求項9及び10のいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項12】
少なくとも部分的にセラミック材料から作製される絶縁部品(6)を備える、請求項1から11までのいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項13】
前記第1の可変電極アセンブリ(17、18、21)と前記真空筐体の前記壁(14)との間に延在する伸張性の真空シール手段(5)を備える、請求項1から12までのいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【請求項14】
前記1つ又は複数の第1の固定電極(18)及び前記1つ又は複数の第1の可動電極(17)は、前記1つ又は複数の第2の固定電極(8)及び前記1つ又は複数の第2の可動電極(7)それぞれと実質的に同じ寸法及び空間的な構成を有する、請求項1から13までのいずれか一項に記載の可変真空コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変真空コンデンサの分野に関し、限定するものではないが、詳細には、モータ付き可変真空コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
真空コンデンサは、通常、真空気密筐体及び、真空気密筐体内の静電容量を生成する電導性表面(電極)配置構成から成る。内容積部は、非常に低圧(通常は、10
−6mbar未満)にポンプで下げられ、真空気密筐体によってデバイスの全耐用年数(通常は、長年)にわたって低く維持される。真空は、電極間の電気絶縁が良好なこと、及びデバイスの誘電損失が非常に低いことを確実にする。
【0003】
真空気密筐体は、通常は、絶縁部片(しばしば円筒形のセラミック部片)に真空気密に取り付けられた、2つの導電性カラー(デバイスの電気端子としても機能する)で作製される。真空コンデンサは、固定可能であり(すなわち、製造後に静電容量値の調整が不可能である)、又は静電容量値が変更可能である可変真空コンデンサに作製することが可能であり、それは伸縮継手(たとえばベロー)によって一方の電極を他方に対して移動させることによって通常は、実現される。伸縮継手は、通常は、モータと何らかの形態の制御機構も含む駆動システムによって駆動される。モータはしばしば、可変真空コンデンサに別個に付け加えて構成される。しかし、可変真空コンデンサは、可変電極(したがって静電容量値)を駆動及び制御するそのような手段なしに機能することはできない。
【0004】
最も一般的な可変真空コンデンサの用途としては、(高出力送信の発振回路での)放送、並びに(いわゆるインピーダンス整合回路網での)半導体、太陽光、及びフラットパネル製造装置でのプラズマ制御プロセスがある。可変真空コンデンサの静電容量値を調整することにより、電源の出力インピーダンスを用途のインピーダンス値に修正及び整合させることが可能になる。
【0005】
電気回路のどの部分も、交流(AC)電流の振幅及び位相に応答する。その応答(すなわち、それがどのように電流の振幅及び/又は位相を変えるか)は、実部及び虚部から形成される(数学用語)での複素数であるインピーダンスによって表現される。
【0006】
高周波電源は、標準的なインピーダンス値を有するように製造される。標準的なインピーダンスは50オームである。
【0007】
回路の「負荷」と呼ばれる(プラズマプロセスなどの)高周波用途は、任意のインピーダンス値(a+bj)を有することができ、式中、a及びbは任意の実数とすることができ、jは2乗が−1に等しい数学的な数として定義される。通常の半導体、太陽光、又はフラットパネル製造には、連続した様々なプラズマプロセスが必要であり、それは、電源の固定されたインピーダンスに連続的及び動的に整合しなければならない変化する負荷インピーダンスにつながる。
【0008】
したがって、インピーダンス整合回路網では、可変真空コンデンサの機能により、(用途によって生成された全ての負荷に関して)常に以下の関係が等式化される。
Z
power supply=Z
matching network(C,…)+Z
load、(任意の(経時変化の)負荷の場合)
50+0j=Z
matching network(C,…)+a+jb、(経時変化の負荷が任意のa値、b値の場合。)
式中、Zは、高周波回路部分(その部分は指標として示されている)の複素インピーダンス値を示す。
【0009】
整合回路網のインピーダンスZ
matching network(C,…)は、可変真空コンデンサの静電容量値Cの関数であり、誘導性、若しくは抵抗性、又は他の静電容量性構成要素などの整合回路網の他の構成要素の関数であることもできる。
【0010】
負荷が常に適切に整合しない場合、供給源からの電力は、負荷に十分に伝達されない。そこから生じる望ましくない結果として、エネルギーが散逸し、又はエネルギーが電源にはね返り、それが破壊につながることなどがある。可変真空コンデンサの値を適切に調整することによって、整合回路網のインピーダンスは電源から負荷へ最適な電力を伝達するように調節され得る。
【0011】
可動電極を移動させる手段(「可変電極」とも呼ばれることがある)は、デバイスに別個に付け加えることが可能であり、又はデバイスに一体化が可能である。一体化された場合、可変真空コンデンサは、明確に「モータ付き可変真空コンデンサ」と呼ばれることがある。いずれにせよ、可変真空コンデンサの大きさ若しくは速度、又は他の特性を比較する場合、両方が適用する際に必要であるので、「モータ+可変コンデンサデバイス」から作製されたシステム全体を常に考慮する必要がある。
【0012】
従来技術
知られている可変真空コンデンサは、通常は、ベローを有し、それは、信頼性の高い真空シールを提供しなければならないこと、伸縮が可能で可動電極の移動を可能にしなければならないこと、及び端子から可動電極への高周波電流も伝導しなければならないことの3つの機能を果たさなくてはならない。これによってベローに関する材料の選択がほんのわずかな選択肢に限定されるが、それは電気特性及び機械特性について同時に最適化されていなくてはならないことによる。たとえ材料の選択が優れていても、ベローに沿った電流の長い経路(高周波電流が「表皮効果」として知られる現象である、導体の表面に沿って流れることを強いられる)により、デバイスの非常に重要な部分の内側で大幅な電気損失を生じるおそれがあり、それによって望ましくない熱及び静電容量性デバイスへのさらなる寄生電気抵抗が発生する。そのような温度の上昇及び熱サイクルは伸縮継手の動作周期の総数を低減し、それによって可変真空コンデンサの動作寿命が短縮される。
【0013】
特開平10−284347は、2つのベローを使用して前述の不都合を軽減する可変真空コンデンサを提示する。他方で、米国特許第6473289号は、ベローを完全になくし、その機能を他の部品及び真空筐体の内側の異なるレイアウトの電極で代用することを提唱した。
【0014】
本出願からの米国特許出願公開第2005/052820A号は、径方向に互いに隣接して配置された2つの連続して接続された組の電極を使用することを提唱した。この配置構成により、(適度に高い静電容量値を実現するために)可変電極の移動に垂直な平面に大きな空間が必要であるので、ある程度大きな直径のデバイスへと結果的につながる。そのような設計が、
図2を参照して下記により詳細に論じられる。
【0015】
米国特許出願第3611075号に記載された可変真空コンデンサは、同じ欠点を抱え、すなわち2つの固定電極及び2つの可変電極が径方向に互いに並んで配置される。したがって、所与の直径のデバイスに対して、実現され得る静電容量は連続して接続された電極の組を使用しない従来の設計においてより劣るものとなる。米国特許出願公開第2005/052820A号及び米国特許第3611075号に開示されたこれらのデバイスの別の不都合は、内側の組の電極の電極半径が外側の組の電極の半径と実質的に異なるので、外側及び内側の電極の組が等しい静電容量を有するように製造することが困難である。たとえば、外側の電極の巻き及び/又は長さの数と比較した内側の電極の巻き及び/又は長さの数を適合しなければならない。
【0016】
従来技術の多くの可変真空コンデンサのさらなる不都合は、モータがデバイスの高電圧端子又はその付近に装着されるので、モータが可動電極から十分に絶縁されなくてはならないことである。その端子からモータへの高電圧放電を避けるため、及び高電圧端子とモータのはるかに低い電圧との間の他の電気干渉を避けるために、長い絶縁部品を使用することが必要であり、それによってデバイスの全体のサイズが大幅に増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平10−284347
【特許文献2】米国特許第6473289号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/052820A号
【特許文献4】米国特許出願第3611075号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の可変真空コンデンサは、従来技術のデバイスに伴うこれらの問題及び他の問題に対処することを目的とする。本発明の特定の目的は、可変真空コンデンサを提供することであり、この可変真空コンデンサは、増加した耐用寿命、同様のサイズ及び静電容量を有する従来技術のデバイスによって得られるものと比べて改善された電圧及び電流の処理特性、並びに/又はより短い直径及び/若しくは長さ(たとえば、小さな円筒形の直径を有するより小さな円筒形容積部に嵌合することができる静電容量の電極を有する)を有する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
特に、本発明は、真空筐体と、1つ又は複数の第1の固定電極及び1つ又は複数の第1の可動電極を備える第1の可変電極アセンブリと、1つ又は複数の第2の固定電極及び1つ又は複数の第2の可動電極を備える第2の可変電極アセンブリと、1つ又は複数の第1の固定コンデンサ電極に電気接続を提供する第1の電気接続端子と、1つ又は複数の第2の固定コンデンサ電極に電気接続を提供する第2の電気接続端子と、真空コンデンサの軸に沿って第1の固定電極及び/又は第2の固定電極それぞれに対して第1の可動電極及び/又は第2の可動電極を変位させるための変位手段とを備える可変真空コンデンサを想定し、
この可変真空コンデンサは、第1の可動電極アセンブリが第2の電極アセンブリから連動組付けオフセット距離だけ軸に沿ってオフセットされるように、第1の電極アセンブリ及び第2の電極アセンブリが、軸に沿って連動式に組み付けられ、軸に沿った1つ又は複数の可動電極の第1の変位が軸に沿った1つ又は複数の第2の可動電極の第2の変位を生じるように、可変真空コンデンサは、軸に沿った第1の位置にある1つ又は複数の第1の可動電極と、軸に沿った第2の位置にある1つ又は複数の第2の可動電極との間の運動学的な連係をもたらす可動電極連係手段を備えることを特徴とする。
【0020】
第1及び第2の電極アセンブリを直線的に連動式に組み付けられた構成で配置することにより、デバイスの直径は大幅に縮小される。可動電極などの任意の移動部品への任意の電気接続が必要になることを避けることも可能であり、それはベローが導電体として機能する必要がなく、機械的な機能により適している材料から作製され得ることを意味する。これにより、デバイスの動作寿命を大幅に延長することができる。
【0021】
本発明の可変真空コンデンサの変形形態によれば、可動電極連係手段は、第2の変位の大きさが第1の変位の大きさと同じであるように配置される。可動電極連係手段は、たとえば、単純な剛構造であることができ、それによって2つの組の可動電極の間の直接的な機械的な連係がもたらされ、したがって単純及び堅固な構成が可能になり、連係部のジオメトリによる漂遊静電容量の可能性を低減する。
【0022】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、可動電極連係手段は、1つ又は複数の第1の可動電極を1つ又は複数の第2の可動電極に電気的に接続するための電気接続手段を備える。可動電極を機械的及び電気的に接続する2つの機能を結び付けることにより、デバイスの複雑さがさらに低減する。
【0023】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、変位手段は、真空筐体の外側のモータ、及びモータの駆動力を真空筐体の壁を介して真空筐体の内側の1つ又は複数の第1の可動電極に伝達するための駆動伝達手段を備える。ベロー及びデバイスの外表面は、電極から絶縁されるので、モータは、デバイスにかなり近く装着され(たとえば真空筐体の壁の外表面に)、それによってデバイスの全体的なサイズを大幅に低減することができる。
【0024】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、モータ保護絶縁材が含まれ、モータを1つ又は複数の第1の可動電極への高電圧に対して電気絶縁することができる。
【0025】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、モータ保護絶縁材が駆動伝達手段と1つ又は複数の第1の可動電極との間に配置される。
【0026】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、1つ又は複数の第1の可動電極及び1つ又は複数の第1の固定電極が略円筒形であり、軸と同軸であり、それによって1つ又は複数の第1の可動電極が1つ又は複数の第1の固定電極に少なくとも部分的に挿入され、並びに/或いは第2の可動電極及び1つ又は複数の第2の固定電極が略円筒形であり、軸と同軸であり、それによって1つ又は複数の第2の可動電極が1つ又は複数の第2の固定電極に少なくとも部分的に挿入される。
【0027】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、1つ又は複数の第1の可動電極及び1つ又は複数の第1の固定電極は螺旋状電極として構成され、且つ/或いは1つ又は複数の第2の可動電極及び1つ又は複数の第2の固定電極は螺旋状電極として構成される。
【0028】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、可動電極連係手段は、第1の電極アセンブリの外側の周りに配置され、1つ又は複数の第1の可動電極及び1つ又は複数の第1の固定電極と同軸に配置された略円筒形の要素を備える。
【0029】
略円筒形の要素は、電極材料から少なくとも部分的に構成され、1つ又は複数の第1の固定電極のうちの外側の固定電極に十分に近接して配置されて、1つ又は複数の第1の可動電極のうちの1つとして少なくとも部分的に機能することができる。この改良形態は、単純で堅固な構造を提示し、それはデバイスの最大の可変の静電容量を増加させることにも寄与する。
【0030】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、略円筒形の要素は開口領域を備え、1つ又は複数の固定電極支持要素は第1の固定電極から開口部を通って真空筐体の壁に延在する。
【0031】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、その絶縁部品は少なくとも部分的にセラミック材料から作製されている。
【0032】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、伸張性の真空シール手段(たとえばベロー)が第1の電極アセンブリと真空筐体の壁との間に延在し、伸張性の真空シール手段は、少なくとも可変真空コンデンサが高電圧及び/又は高周波で動作している場合に、電気絶縁体として振る舞うような形状及び材料で構成されている。
【0033】
本発明の可変真空コンデンサの別の変形形態によれば、1つ又は複数の第1の固定電極及び1つ又は複数の第1の可動電極が、1つ又は複数の第2の固定電極及び1つ又は複数の第2の可動電極それぞれと実質的に同じ寸法及び空間的な構成を有する。この変形形態は、第1に、デバイスの製造が1つの電極構成に対するツーリングしか必要でないことによって大幅に単純化される得ること、及び第2に、同一又は同様の第1及び第2の電極アセンブリを使用することにより2つのアセンブリの間の静電容量の分布が均等になり、それによって可動電極の電圧が最小限に抑えられ、それはデバイスがより高い印加された電圧で動作可能であることを意味する、という2つの主要な利点を有する。
【0034】
次に本発明を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】1対の電極を有する単純な従来技術の可変真空コンデンサの概略断面図を示す。
【
図2】電気的に直列及び機械的に平行に配置された2組の電極を有する従来技術の可変真空コンデンサの概略断面図を示す。
【
図3】電気的及び機械的に直列に配置された2組の電極を有する本発明による可変真空コンデンサの実例の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図は例示の目的でのみ提供され、特許請求の範囲に記載された特許保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。異なる図面で同じ参照番号が使用された場合、それらは同様又は対応する特徴を指すことが意図される。しかし、異なる参照が使用されても、それは必ずしも指し示す特徴が異なることを示すものではない。
【0037】
図1は、従来技術で知られた単純な可変真空コンデンサの構成を示す。そのような真空筐体は通常、真空気密式に絶縁円筒真空筐体壁26に取り付けられた2つの電導性高電圧端子24及び9からなる。電極7及び8の領域の重なり領域を増加させ、且つ/又はその離隔距離を減少させることにより、デバイスの静電容量値が増加する。電極7及び8は端子24及び9にそれぞれ電導的に取り付けられている。可変真空コンデンサデバイスの静電容量を変更するために、1つの電極7が他の電極に対して移動される。これは通常、伸縮継手(ベロー5)及び駆動システム16、12によって実現され、駆動システム16、12の動作はステッパ・モータなどの電気モータ1によって制御される。
【0038】
上記に示したように、ベロー5は、3つの機能を有する。すなわち可動電極7に動きを伝達しながら、また、大気圧にある駆動システムから真空を分離しながらそれらは高周波電流を端子24から可動電極7に電導しなければならない。これは、電気特性及び機械特性について同時に最適化されていなくてはならないので、ベロー5に関する材料の選択をほんのわずかな選択肢に限定する。たとえ材料の選択が優れていても、ベローに沿った電流の長い経路(高周波電流が「表皮効果」として知られる現象である、導体の表面に沿って流れることを強いられる)が、デバイスの非常に重要な部分の内側で大幅な電気損失を生じ、それによって望ましくない熱及び静電容量性デバイスへのさらなる寄生電力抵抗が発生する。そのような温度の上昇及び熱サイクルは伸縮継手5が動作する周期の総数を低減し、それによって可変真空コンデンサの動作寿命が短縮される。
【0039】
図2は、従来技術(たとえば米国特許出願公開第2005/052820A1号)で知られる一連の電極配置構成の概略図を示す。
【0040】
2つの同心電極の組7、8及び17、18が同一平面で一方が他方の外側になって配置され、共通の支持要素22が全ての可動電極7、17を支持している。静電容量を増加させるために、電極表面の高さ及び数は増加されなければならず、それはデバイスの寸法を増加させることを意味する。或いは、電極の間の間隔は縮小可能であり、それによってデバイスの最大動作電圧がより低くなる。
【0041】
可変真空コンデンサへの連結が端部表面13及び14で行われ、端部表面13及び14は、固定電極18及び可動電極17それぞれに内側で接続される。ベロー5は、少なくとも部分的に絶縁材料から作製され、それによって可動電極22、17と上部端子14との間に電流が流れることができない。
【0042】
図3は、本発明による可変真空コンデンサの実例を示す。要求された静電容量は、電極アセンブリ17、18、21、23、及び7、8、11、13によって生成される。各電極アセンブリは、1つ又は複数の可動電極7、17及び1つ又は複数の固定電極8、18を備える。各組の電極は、たとえば1つ又は複数の同心の円筒として、或いは1つ又は複数の旋回を有する螺旋として構成され得る。
【0043】
1組の固定電極18が、支持要素23によって支持され、真空筐体の壁4に固定されて示される。他の組の固定電極8が、真空コンデンサ及び端部端子9の端部キャップ13によって支持されて示される。
【0044】
1つの可動の組の電極17が電極支持部21によって支持され、電極支持部21は、ベロー5及びモータ駆動部12、16を絶縁する絶縁器2に支持される。電極支持部21は、点線によって示された接続手段10によって下方の可動電極7の電極支持部11に機械的及び電気的に接続される。単純な場合では、接続手段は、銅の円筒などの単純で堅固な要素であってもよい。この場合には、円筒の壁は開口部を設けられ、それによって円筒10が、真空筐体の壁4に固定するための1つ又は複数のアーム又は他の支持構造を有する電極支持部23と干渉することなく、デバイスの長手方向軸Aに平行に上下に移動できるようになる。
【0045】
2つの電極アセンブリを直列に接続することは、端子に、又はその端子から流れる電流が、ベローなどの任意の移動部品を含まない経路をたどるように要求されることを意味する。さらに、可変真空コンデンサの両端にある代わりに、デバイスの2つの高電圧端子は、たとえば側方の円筒外周部においてデバイスの長さに沿った中間点での領域の、デバイスの一方の端部、又はその端部に向かって配置され得る。
【0046】
端子24を真空筐体の長手方向の中間の点に配置することは端子から固定電極18への電流経路が短く、一直線であることも意味し、それは望ましくないEMC放出及び熱散逸を最小限に抑える。
【0047】
このようにして、可変真空コンデンサはモータ・アセンブリ1が装着され得る端部部分14を有し、その少なくとも一部分は、従来の可変真空コンデンサの両端部にある高電圧の影響が本質的にない。
【0048】
図3は、絶縁真空筐体部分6によって高電圧端子4から分離されたモータ装着端子14を示す。ベローは電流を伝導しないので、電導性である必要もなく、したがって、モータ装着端子14は電極7からも絶縁されている。或いは、それでも電導性のベロー5を使用する場合は、ベロー5のいずれかの端部にある絶縁部分2が、モータ端子14及びモータ1を電極7から絶縁する。この絶縁部分は真空中にあるので、従来技術で真空の外側で使用されるモータ絶縁部分19(
図1及び2を参照されたい)と同じ大きさである必要はない。
【0049】
モータを真空コンデンサ筐体に直接的に装着可能であることによってもたらされる利点により、本発明のモータ付き可変真空コンデンサがよりコンパクトになり、且つ/又は真空の内側で電極によって満たされる空間が解放される。これにより、ひいては、より高い静電容量値が実現可能になり、より高い最大動作電圧が実現可能になる。
【0050】
図2では、電極の対は直列に同軸に装着されて示され、各対の各電極は、移動軸に対応する単一の軸Aに沿って上下に装着され(
図2に示されるデバイスでは「内側」又は「外側」の電極はない)、(
図1のデバイスのような)直列のジオメトリを使用しない従来技術のデバイスと同様な(移動軸に垂直な)小さな直径になり、(
図2のデバイスのような)直列のジオメトリを使用する従来技術のデバイスのようなより小さな直径になる。
【0051】
同時に、異なる対の電極の間で総電圧が直列に分割されるので直列のジオメトリの電圧能力が2つの高電圧端子4及び9の間で増加する。たとえば、
図3に示された実例の実施例では、電導性表面4と17の間の電圧、及び導電性表面7と9の間の電圧差は、可変真空コンデンサの端子4と9の間に加えられる電圧差の半分である。電極を直列に装着した結果であるこの電圧分割は、真空での電圧破壊の危険を生じることなく電極の離隔距離をより小さくすることが可能であるので有利であり、電極の離隔距離をより小さくすることが実現可能なことにより、静電容量値が大幅に増加され得る。
【0052】
図3に示される実例では、可動電極7及び17の両方が、好ましくは優れた導電体であり、好ましくは固定電極の最も外側の表面と同様であるがより大きな直径を有する剛性の管形状の部品として構成された電導性部片(10)によって接続されて示され、したがって追加の静電容量性の寄与を生成する。
【0053】
2つの対の電極のみが
図3に示されているが、本発明は多数の対の電極の使用も包含することが理解される点に留意されたい。