(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5968468
(24)【登録日】2016年7月15日
(45)【発行日】2016年8月10日
(54)【発明の名称】シャワー便器用のシャワーアーム
(51)【国際特許分類】
E03D 9/08 20060101AFI20160728BHJP
【FI】
E03D9/08 D
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-556952(P2014-556952)
(86)(22)【出願日】2013年2月13日
(65)【公表番号】特表2015-513015(P2015-513015A)
(43)【公表日】2015年4月30日
(86)【国際出願番号】EP2013000416
(87)【国際公開番号】WO2013120605
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2014年8月25日
(31)【優先権主張番号】12001036.8
(32)【優先日】2012年2月16日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514194613
【氏名又は名称】ゲベリット インテルナツィオナール アーゲー
【氏名又は名称原語表記】GEBERIT INTERNATIONAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ツヴィッカー、マウルス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイス、ロルフ
【審査官】
七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−144581(JP,A)
【文献】
米国特許第05826282(US,A)
【文献】
独国特許出願公開第102008019930(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/00−9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワー便器(30)又はビデ用のシャワーアーム(31)であって、
前記シャワー便器(30)の使用者に向かって洗浄のためにシャワー水が出て行くシャワーノズル(4,ノズル部分14b,24)と、
前記シャワーノズル(4,ノズル部分14b,24)へ給水する送水管路(7,17,27)と、
前記シャワーノズル(4,ノズル部分14b,24)へ送るシャワー水に回転水流を生成するために前記送水管路(7,17,27)に設けられたスワール室(8,18,28)と、
前記スワール室(8,18,28)と前記シャワーノズル(4,ノズル部分14b,24)との間の送水管路部分(シャワーノズル4の一部,直管路部分14a及びノズル部分14b,24a)と、を備え、
前記送水管路部分は、最大で、前記スワール室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の断面と同程度の大きさである断面を有し、
前記スワール室は球形室(8,18,28)であって、その内径が該球形室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の部分の内径よりも大きく、当該スワール室は、前記送水管路(7,17,27)の流入口、流出口、及びこれら開口の縁の接続部分を除いて球形である、シャワーアーム。
【請求項2】
前記球形室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の部分は、シャワー水の主ノズル噴出方向(5,15,25)に対して65°〜115°の間の角度を有する、請求項1に記載のシャワーアーム。
【請求項3】
前記球形室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の部分は、当該シャワーアーム(31)の長手方向(6,16,26)に対して0°〜20°の角度を有する、請求項1又は請求項2に記載のシャワーアーム。
【請求項4】
前記球形室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の部分は、シャワーアームの水平方向の中心で、シャワー水の主ノズル噴出方向中(5,15,25)の中心軸線と当該送水管路(7,17,27)の長手方向中心軸線(6,16,26)とが交差して、前記球形室(8,18,28)に接続されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項5】
前記球形室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の部分は、前記送水管路(7,17,27)の長手方向軸線(6,16,26)が、前記球形室(8,18,28)の中心点に対して垂直方向にオフセットされて、前記球形室(8,18,28)に接続されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項6】
前記球形室(8,18,28)における前記流出口の接続縁部は、前記球形室(8,18,28)の内部半径の0.3倍〜3倍の半径をもつように丸められている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項7】
前記球形室(8,18,28)の内部半径に対する前記球形室(8,18,28)直前の前記送水管路(7,17,27)の部分の内部半径の比は、0.3〜0.9の間にある、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項8】
前記シャワーノズル(4)は、前記球形室(8)から前記シャワーノズルのノズル噴出口(3)まで連続した先細りの内部断面を有し、前記球形室(8)における前記流出口の縁の丸みの所を除いて円錐形である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項9】
前記シャワーノズル(ノズル部分14b)に、シャワー水の主ノズル噴出方向(15)に一致する少なくとも1つ又は複数の真っ直ぐな通流案内リブが設けられている、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項10】
前記球形室(28)と前記シャワーノズルのノズル噴出面(23)との間にある前記送水管路(27)の部分(送水管路部分24a)に、シャワー水流中に空気を導入する横からの給気通路(24c)が少なくとも1つ又は複数設けられている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシャワーアーム。
【請求項11】
前記給気通路(24c)は、前記ノズル噴出面(23)の隣にある少なくとも1つの吸気口から空気を引き込む、請求項10に記載のシャワーアーム。
【請求項12】
水加熱装置を備えると共に請求項1〜11のいずれか1項に記載のシャワーアーム(31)を備えた、シャワー便器(30)又はビデ用のシャワー装置。
【請求項13】
請求項12に記載のシャワー装置(32)と便器ボウル(33)とを備えたシャワー便器。
【請求項14】
作動状態において前記シャワーアーム(31)は傾斜し、その長手方向(6,16,26)が前記シャワーノズル(4,14b,24)へ向かって水平に対し5°〜15°の角度で下降する、請求項13に記載のシャワー便器。
【請求項15】
請求項12に記載のシャワー装置(32)あるいは請求項13又は請求項14に記載のシャワー便器(30)に使用する請求項1〜11のいずれか1項に記載のシャワーアーム(31)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー便器又はビデ用のシャワーアームに関する。
【背景技術】
【0002】
使用者を洗浄するシャワー装置を備えた便器が知られ、長年にわたって広く使用されている。一般にシャワー装置は可動シャワーアームを有し、該シャワーアームは、便器のボウル内に全体的に又は部分的に隠れたポジションから洗浄のために移動し、洗浄後には元に戻ることが可能になっている。このシャワーアームの移動によって、一方では、使用者の下半身に向けたシャワー水の放出に好適なポジションを得ることができ、他方では、使わないときの格納ポジションにおいて汚染及び故障を防ぐことができる。ただし、シャワーアームの移動は、通例ではあるけれども、必ず必要というものではない。
【0003】
このタイプのシャワーアームでシャワーノズルへシャワー水を供給する送水管路のスワール室に関する従来技術は既にある。この種のスワール室は、特に、シャワーノズルから出る水の噴流を遠心力により広げる目的をもつ水の回転流を生成するためのものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にある技術的課題は、改善されたスワール室付きシャワーアーム、これを備えたシャワー便器、及びこの便器用シャワー装置を具体化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記課題は、シャワー便器の使用者に向かって洗浄のためにシャワー水が出て行くシャワーノズルと、該シャワーノズルへ給水する送水管路と、前記シャワーノズルへ送るシャワー水に回転水流を生成するために前記送水管路に設けられたスワール室と、を備え、前記スワール室は球形室であって、該球形室の内径が前記送水管路の前記球形室直前の部分の内径よりも大きく、且つこのスワール室は、前記送水管路の流入口、流出口、及びこれら開口の縁の接続部分を除いて球形である、シャワー便器又はビデ用のシャワーアームによって、そして、これを備えたシャワー便器及びシャワー装置によって、さらに、前記シャワーアームのこのような用途によって、達成される。
【0006】
すなわち、本発明によれば、球形室と呼ぶ、名前が示唆するとおり球形の内面形状を有するスワール室が提供される。当然ながら、球形を途切れさせる送水管路の流入口と流出口はその例外である。これら開口に生じる縁部も、具体的には流速向上のために丸みをつけられた又は斜面とした形状であり、球形から除かれる。
【0007】
球形室の代表的な管断面は、送水管路の特に流入口直前の部分に比べ、基本的に広くされる。したがって、送水管路の代表的な円形断面の場合に、球形室の内径又は内部半径は、特に直前部分の送水管路よりも大きい。これ以外の送水管路の断面形状でも、同じことが、該送水管路の標準径に適宜当てはまる。したがって、シャワー水が球形室へ入ると通流断面が広がり、球形室で水流にスワール(旋回流)が起こる。どのような場合でも水は、実質的にシャワーノズルへ至るまでスワールを持続し、使用者までの経路においてシャワー水の噴流を形成する。したがって、噴流の主噴出方向を横切る流れの成分に従って、脈動マッサージ感、シャワー噴流の広がり、洗浄効果の向上のいずれかが又はこれらが組み合わさって、提供される。
【0008】
一筋の送水管路、すなわち、球形室の1つの流入口及び1つの流出口の態様が好ましいが、複数の流入口及び複数の流出口、あるいは複数の流入口又は複数の流出口も基本的に考慮に入れることができる。
【0009】
発明者の実施した試験では、球形室が、簡単に作れるスワール室の非常に効果的な形状であることが証明されている。
【0010】
スワール室は、好ましくは、シャワーノズルの近く、すなわち、シャワーアームにおける送水管路の反対側の端部との比較で明らかにシャワーノズルの方に近い所に、配置する。これにより、シャワー水がシャワーノズルから出る前に多量の又は十分なスワールが維持される。ただし好ましくは、実際のシャワー噴出面と球形室との間に、良好な噴流を形成するための送水管路区域を設ける。
【0011】
送水管路は、シャワーノズルにおけるシャワー水の主噴出方向に対して65°〜115°、すなわち90°±25°の角度で球形室へ接続するのが好ましい。より好適には、直角から多くて20°、15°、10°、さらには5°だけずらす。ほぼ直角に水流の方向を変えることには価値があって、これにより水は、シャワーノズルの主噴出方向とほぼ平行の回転軸をもったスワールに至り、噴流を広げるために有利となる。
【0012】
少なくとも球形室直前の送水管路部分は、好ましくは、シャワーアームの長手(軸)方向とほぼ平行に設けられ、多くて20°、より好ましくは多くて15°、10°、さらには5°のずれ角度とするのが好適である。これにより、シャワーアーム内の送水管路の配置に関して有益な形状と、球形室前後の送水管路間の好適な角度形成に伴ってシャワーアームをほぼ横切る、シャワーアームからの水噴出口と、が得られる。
【0013】
本発明において、球形室における送水管路の流入口を、球形室に対し、シャワーノズルの主噴出方向及び球形室直前の送水管路部分の両方に対し交差する方向において中心に配置すること、加えて又はこれとは別に、シャワーノズル噴出方向に対し平行な方向において中心に配置することが、好ましい。後者の方向(シャワーノズル噴出方向に対し平行な方向)における中心配置は、球形室内に顕著なスワールを生成する。前者の方向(主噴出方向に対し交差し且つ球形室直前の送水管路に対し交差する)における中心配置は、従来技術(この点においてスワール室の偏心流入を伴う)との対比において、異なる回転方向、さらに言えば
、ほとんど反対方向の回転方向をもつ、スワール室内の交流(交互)スワール状態を生成する。
【0014】
この中心流入に伴って、スワール方向つまり回転の方向は、例えば、おおよそランダムに発生して維持されるのではなくて、この観点での流れは、電気工学の双安定フリップフロップ回路のように時系列で繰り返し“反転”する。交流スワール状態は、シャワー水がシャワーノズルから出た後のシャワー噴流の成形もする。したがって、脈動により使用者に、殊に顕著なマッサージ感を与える。
【0015】
特定方向の顕著な(はっきりした)スワールの間の中間位相における遠心力は、一定ではない流れの状態に起因して小さいか又は混ざり合っており、あるいは小さく且つ混ざり合っており、時間的に平均すると、噴流の広がりだけではなくて、シャワー噴流がカバーする領域の内方の格段に良好な填補も起こる。発明者は、シャワー噴流中のスワールがもたらす遠心力による噴流の広がりに対する集中が、言うなれば中空円錐噴流、いずれにしても、シャワー噴流の内方で洗浄効果が弱まるというリスクを回避する、ということを立証した。すなわち、交流スワール状態によって効果的に解消可能である。
【0016】
上述したように、球形室と流入口及び流出口との間の接続縁部は、鋭利である必要はない。具体的に本態様では、流出口で丸められているのが好ましい。この丸みの基準的半径(この部分において正確に円弧形状に一致している必要は必ずしもない)は、球形室の内部半径の0.3倍から3倍までの間が好ましい。下限値は、球形室の内部半径の0.5倍、0.7倍、0.8倍とすると、この順にだんだん好ましくなる。上限値は、球形室の内部半径の2倍、1.5倍、1.2倍とすると、この順にだんだん好ましくなる。
【0017】
このようにすることで、球形室からのスワール流が乗り入れるときの障害を、シャワーノズルへの流出口で減らすことができる。この種の丸めこみは、球形室へ流れ込む流速が必ず再規定されることから、流入口においては同じほどに重要ではない。
【0018】
同じく上述したように、球形室は、直前の送水管路部分に対して有効な通流断面を増加させることを目的とする。具体的に、この管路部分の内部半径(分子)と球形室の内部半径(分母)との比は、0.3から0.9までの間が好ましく、その下限は0.4、0.5、上限は0.8、0.7、0.6とすると、この順にだんだん好ましくなる。
【0019】
送水管路の直前部分の断面形状は、最長内径(例えば楕円の長軸や矩形の対角線)が球形室の直径よりも長くならない限りにおいて、円形以外としてもよい。この場合、上記半径比に関しては、平均半径を使用する。ただし、円形管断面が好ましい。
【0020】
球形室から実際のノズル噴出口までの送水管路の断面は、最大で、球形室直前の送水管路の断面と同程度の大きさとする。ただし、部分的にノズルの形状、つまり先細りにもする。ノズルの好適な形状の一つが、球形室からノズル噴出口まで連続した先細りである。したがって、球形室とノズル噴出口との間の送水管路は、ノズル全体を構成し、その断面縮小によって主噴出方向における水噴流の速度成分を加速する。この先細りの好適形状の一つが円錐形であり、この円錐形状と球形室との間の接続部分は上述したように丸めることが可能である。例示する第1の実施形態を参照して説明される。
【0021】
さらなる本発明の態様によれば、ノズル噴出口に少なくとも1つの通流案内リブ、好ましくは、例えば実施形態においては6個の、複数のリブが設けられる。これら通流案内リブは、内壁から内方へ突出して水流に作用する。当リブは、好ましくは真っ直ぐ、すなわち、スワールの追加という意味においては曲がっておらず、シャワー噴流の主噴出方向に対して(シャワーノズルの中心軸線との間隔の増減という意味において)傾斜させることができる。通流案内リブは、設計に応じて、スワール流を少し緩める(スワール状態をすべて消し去るのではなく)。特に、リブは、スワール状態との相互作用によってシャワー噴流に空気を混ぜるように作用する。この空気混入は、水をより細かく分散させることから価値があり、シャワー噴流が、水消費量を増やさずとも、いわゆる“水量感を増す”ように機能する。
【0022】
シャワーノズルのさらなる態様において、少なくとも1つの給気通路、すなわち、シャワーノズルの領域にある送水管路中に外から空気を導入する追加管路、が設けられる。より好適には、水噴流のポンプ原理に従いシャワーノズル中の流れにより空気が吸引される。1以上の給気通路は、基本的に、シャワーアームの外から空気を導入するが、好ましくは、給気通路は比較的短くし、供給すべき空気をシャワー水のノズル噴出面の隣から導入する、すなわち、吸引するように形成する。この説明には、例示する第3の実施形態が参照される。
【0023】
以下、実施形態を例示して本発明をより詳細に説明する。個々の特徴は、別の組み合わせにおいても重要であり得るし、特許請求の範囲の全カテゴリに関連する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係るシャワーアームのノズル側端部を、斜視図、上面図、長手方向断面図、この長手方向断面図からの詳細断面図で示す。
【
図4】本発明に係るシャワー装置を備えたシャワー便器を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1a〜
図1dは、第1の実施形態、すなわちシャワーアーム1の先端を示す。この先端は、例えば、脱着可能なノズルヘッド1として設計可能であるし、支持機能及び移動機能をもつだけのシャワーアームの追加部位に適用することもできる。シャワーヘッド1は、作動させると、水洗縁の裏(壁側又は貯水タンク側)又は水洗縁なし便器ボウルの壁からボウル内へ押し出され、少し下方へ傾いて便器ボウルの開口内へ突き出る。この傾斜は、シャワーアームの(
図1c及び
図1dでは水平の)長手方向と水平との間に約5°の角度をつけ、これにより、作動時、
図1a〜
図1cに見られる端面2が垂直に立つ。
【0026】
図1a〜
図1dは、シャワーヘッド1の上側にあるノズル噴出面3を図示し、
図1c及び
図1dは、ノズル噴出面3の上流に配置された円錐シャワーノズル4を断面(
図1dは拡大)で図示する。シャワーノズル4は、シャワーアームの長手方向に対して上向きに直交するよう向けられ、すなわち、シャワーアームの作動ポジションにおいて垂直に対し約5°前傾する。その長手方向に付随して、シャワー噴流の主噴出方向が規定される。主噴出方向は
図1dにおいて符号5で示してあり、シャワーアームの長手方向は符号6で示してある。
図1d中のシャワーアームの長手方向6を示す線は、同時に送水管路7の長手方向中心軸線でもあり、
図1dにおいて矢印で示すように、この軸線の方向にシャワー水がシャワーアームを流れ、上方へ向きを変えられて、シャワーノズル4を通り上から出ていく。この後部との間の接続部、及び
図1dに示す送水管路7の部分との間で方向を変えるための手段が、
図1c及び
図1dに断面で示す球形室8であり、この球形室8は、送水管路7の円形流入口(
図1c及び
図1dにおいて右側の端)とシャワーノズル4への接続部分9(
図1c及び
図1dにおいて上側の端)とを除いて、球形である。接続部分9は、約2.5mmの曲率半径をもって丸められている。球形室8の内部半径は2.2mmであり、送水管路7の内部半径は1.25mmである。円錐シャワーノズル4は、内部半径が1.17mmから0.775mmへ先細りになっている。
【0027】
送水管路7は、
図1c及び
図1dの垂直方向においてと図の平面に対し直交する方向(そして
図1bにおいて上下方向)においてとの両者の中心で、球形室へ接続する。
【0028】
送水管路7から球形室8へ水流が流入することにより、主要なスワールを伴って交流の乱流が発生し、そのスワールの回転軸は、主噴出方向5及び円錐
状のシャワーノズル4の長手軸に対しほぼ平行に延びる。この主スワールの方向は、絶えず変化するスワールによって連続的に反転する。これらスワール状態は、流れがシャワーノズル4を通り抜けてノズル噴出面3から出て行くまで流れ中にほぼ維持され、水流は、シャワーノズル4の先細りによって加速される。
【0029】
ノズル噴出面3から上において、スワールに起因する遠心力が有効になり、
図1aに示すように、シャワー噴流を広げる。これはおおよそ球面(天球)を形成し、この球面は、比喩的に言えば、その開口幅、球面の中心部及び縁部の水の部位に関して脈動する。具体的に、顕著なスワール状態が優勢のときに球面の縁部の勢力が強くて球面の開口幅が大きくなり、合間の移行期において中心部の勢力が強くて噴流全体が狭まる。このような脈動は素速く起こるので、ノズル噴出面3と洗浄する使用者の体表面との間の区間で、異なるスワール状態と移行状態とが合間に“頻発”する。したがって、この“球面”は、分断された凝集層をもつか、あるいはもはや凝集層をもたない。使用者は、主噴出方向5を横断する水の明白な速度成分の結果、“柔らか”に思われ且つ洗浄効果の良好な脈動水噴流を感じる。
【0030】
発明者の試行で、目的とする脈動スワールの連鎖にとって、水の流速はあまり重要ではないことが示されている。該流速を上げると、流出するシャワー噴流の開口角度が増加する傾向にあるという意味において、該流速はスワールの強さを決定する。例示する実施形態の場合、1〜1.5リットル/分の程度の流速が好ましく、本件の比較的細い寸法の送水管路7の場合、1リットル/分の比較的低い流速が好適と考えられる。ただし、目的の流れ状態を生成するためには、球形室8の内部半径が送水管路7の直前部分の内部半径よりも大きいことが好都合となる。例示の実施形態において、シャワーノズル4の円錐形ノズル形状、及び球形室8とシャワーノズル4との間の丸めた接続部分は、乱流状態のほとんどの部分を受け入れ、そのほんの少しに“ブレーキ”をかける。
【0031】
図2a〜
図2dは、第2の実施形態としての変形例を示す。同図において、
図1a〜
図1dと対応する要素には対応する符号を、10を加えて(10の位にして)付してある。したがって、
図1cに示す端面2は
図2cでは端面12に相当する。本実施形態において、上述の傾斜角度はさらに大きくて約15°であり、したがってシャワーアーム11はより大きく傾斜する。この端面12も作動状態において垂直に立つ。これに加えて、半径に関する量的具体例も、この第2の実施形態及び第3の実施形態に適用される。
【0032】
例示する第2の実施形態では、
図2cにおいてシャワーアーム11の外側の右端に、図示のシャワーアームヘッドが差し込まれるシャワーアームの残りの部分に対応する管路部分を見ることができる。この部分に、相当するシールのための溝が見られる。
【0033】
上記のより大きな傾斜に加えて、第1の実施形態との違いは、シャワーノズル14が異なる形状をもつことである。シャワーノズル14は同等の縦の長さを超えて延びるものではないが、第1の実施形態に対応する丸めた接続部分19を介して接続するのが、送水管路部分に基本的に相当する直管路部分14aである。さらに、このシャワーノズルは、
図2dに示すように、短区間の領域
であるノズル部分14bにおいて円錐状に先細り、さらに同程度の短区間で再び円筒状に、すなわち真っ直ぐに延びる。ただし、この説明は、
図2bに見られる、外から管路内へ突出する6つのリブの内向き面だけに当てはまる。直管路部分(14aに係る)は、ノズル噴出口13まで、リブの間を何の障害もなく上方へ通っている。
【0034】
事実上のノズル部分14b、つまり、リブ構造に従う噴出面手前の先細りは、流れを加速する(第1の実施形態の円錐構造
のシャワーノズル4よりは少ないが)ように働くだけではない。さらに加えて、全体的に多少滑らかで、より均一で、脈動の少ないシャワー噴流を生むために、スワール状態がいくぶんか抑制される。同時に、ノズル部分14b中のリブとスワール状態との相互作用において空気の追加が生起され、この空気はノズル噴出面13から生じる。これは、従来技術の蛇口におけるいわゆるエアレータに匹敵する。
【0035】
さらに、
図2dは、送水管路17の長手方向中心軸線16と球形室18の中心点との間にある所定の垂直オフセットを示している。このオフセットは、本実施形態で0.4mmであり、送水管路17の半径(1.25mm)の約3分の1である。発明者は、このような垂直差について実験した。それらは、球形室18における目的の双安定スワールを大きく妨げず、いずれの場合でも垂直差は送水管路17と球形室18との間の半径差より大きくはない。個々のケースにおいて、垂直差を伴う場合は、シャワーアーム11内の特定の空間的要因を考慮することが好ましい。しかしながら、中心配列が、流れに好適で作りやすいことから、望ましい。
【0036】
図2dの図の平面に対し直交する方向における中心配列からのほんの少しの差も、基本的に考え得ることであるが、特に大きな接線流(流入)が生じるとき、すなわち、この方向におけるオフセットが半径差と同程度まで大きいとき、回転が一方向だけの不変スワールを導く。しかしながら、比較的小さい(誤差程度の)オフセット部分は、有害ではない。
【0037】
第3の実施形態が
図3a〜
図3dに例示されている。ほとんどの上記説明が再度参照される。したがって、前出の図面と同じ参照符号が21〜29の範囲の番号を使用して引用される。例えば端面(
図3b及び
図3cにおいて左端)は、符号2又は12に代わって符号22で示される。本実施形態では、端面22は、
図3b及び
図3cにおいて垂直に対し、第1の実施形態と同じ約5°の角度である。
【0038】
第3の実施形態は、
送水直管路部分24aが丸めた接続部分29を経て球形室28に続く点で第2の実施形態に相当する。これに続いて、ノズル部分24bが給気通路24cを伴って存在する。
図3a及び
図3bは、当該通路24cが三組設けられ、ノズル噴出面23を取り巻く円弧のように集合していることを示す。給気通路24cは、ノズル噴出面23に隣り合ったその開口を通して空気を吸引することができ、該空気を、
図3d中の矢印で示す方向に沿って、対応する反転後にノズル部分24bの水流へ導入する。これには水噴流のポンプ原理が適用される。これに伴う水噴流の容積増加を考慮して、ノズル部分24bの実領域における、すなわち、給気通路の間における、水噴流用の管路断面は、大きくされる。したがって、ノズル噴出面23は、ノズル部分24bと球形室28との間の
直管路部分24aに比べて広い断面をもつ。
【0039】
シャワー噴流中における球形室28からの乱流状態の持続に関し、原則として第1及び第2の実施形態について述べたことが適用される。本実施形態において、第2の実施形態の直流リブノズル部分14bによる場合よりも乱流の抑制は小さいが、第1の実施形態のノズルの滑らかな円錐構造による場合よりも若干大きく妨害される。この変形例において、大量の空気が供給され、より“水量感の増した”優しい感じのシャワー噴流が生成される。
【0040】
分かり易さを目的として、主に肛門洗浄のための単体のシャワーノズルを、3つの実施形態の例示のために示した。当然ながら、本発明は、1つのシャワーアーム内に複数のシャワーノズルを設ける場合などにも基本的に実施可能である。これらシャワーノズルは、シャワーアームの長手方向に1列に配列され得る。例えば、これらの最初に膣ノズルが肛門ノズルと組み合わせられ、傾斜配置に従って、2つのノズル間が比較的小間隔であっても、洗浄する領域間の広い解剖学的範囲を考慮に入れることを確実にすることができる。
【0041】
図4は、シャワー便器30の斜視図を示し、このシャワー便器30は、シャワーアーム31を除いて従来型である。シャワー便器30は便器ボウル33を有し、符号32で包括的に示すシャワー装置のハウジング構造が、便器ボウル33に、
図4中の左手背側で隣接する。シャワー装置は、上述のシャワーアーム31の形式で、ハウジング構造から便器ボウル33の中へ突き出て、その隣に、ドライヤアーム34が引き出される。シャワーアーム31及びドライヤアーム34の両方とも出没可能であり、既知の方式において、シャワー便器30を使用した後の使用者を洗浄し乾かすべく機能する。
【0042】
水加熱装置、具体的には連続流式加熱装置が、ハウジング構造内にシャワー水用として設けられ、ドライヤアーム34の乾燥空気用としてファンヒータを備えた通風装置も設けられる。シャワー装置32は、脱臭システムやその他の既に知られている各種の設備を備えることも可能であり、
図4中左手に示すハウジング構造の側方にある制御パネルによって作動させる。
【0043】
図示のシャワー装置32及びシャワー便器30の全体は、本発明に係るシャワーアーム31を特徴とし、
図4中右下へ向いているシャワーアーム31の先端が、上述のいずれかの実施形態に相当する。対応する送水管路7,17,27は、
図4に示すシャワーアーム31の可視の全長にわたり通っている。
【符号の説明】
【0044】
1,11,21,31 シャワーアーム(シャワーヘッド)
2,12,22 端面
3,13,23 ノズル噴出面(噴出口)
4,14,24 シャワーノズル
14a 直管路部分
24a 送水管路部分
14b,24b ノズル部分
24c 給気通路
5,15,25 主噴出方向(の中心軸線)
6,16,26 長手方向(の中心軸線)
7,17,27 送水管路
8,18,28 球形室(スワール室)
9,19,29 接続部分
30 シャワー便器
31 シャワーアーム
32 シャワー装置
33 便器ボウル
34 ドライヤアーム