(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、40ナノメートル以下の平均一次粒径を有する無機酸化物ナノ粒子と、有機塩基と、を含む、コーティング組成物を提供する。特定の実施形態はまた、界面活性剤も含む。本開示のコーティング組成物の特定の実施形態は、水を含む。本開示のコーティング組成物の特定の実施形態は、8を超える、又は8.5を超える、又は9を超えるpHを有する水性分散液である。かかるコーティング組成物は、様々な用途で様々な物品において有用であるコーティングされた(好ましくは連続コーティングされた)基材を作製する方法において使用され得る。
【0019】
本開示のコーティング組成物は、水、有機溶媒、又はこれらの組み合わせを含み得る。有機溶媒は、通常、水に対して相溶性があるものが選択される。典型的な有機溶媒は、アルコールを含む。特定の実施形態では、コーティング組成物は水性組成物であり、好ましくは水性分散液である。この文脈においては、「水性」組成物又は「水性」分散液は、水及び任意で1つ以上の有機溶媒(例えば、アルコール)を含むものである。かかる有機溶媒は、コーティング組成物中に存在する場合、幅広い量で存在し得る。特定の実施形態において、水性組成物は、水/有機溶媒混合物の重量に対して、10重量%以下の有機溶媒を有する。かかる実施形態において、水/有機溶媒混合物の重量に対して、好ましくは5重量%以下の有機溶媒、より好ましくは2重量%以下の有機溶媒、更により好ましくは1重量%以下の有機溶媒が存在する。
【0020】
本開示のコーティング組成物に使用される塩基は、有機塩基である。本開示のコーティング組成物に使用される界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、双極性、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0021】
有機塩基
本開示のコーティング組成物に使用される塩基は、有機塩基である。基材にコーティング組成物を適用し、乾燥させる際に、濃縮した無機酸化物ナノ粒子コーティングが形成されるのに十分量の有機塩基が使用される。
【0022】
特定の実施形態では、この量は、乾燥無機酸化物ナノ粒子の全重量に対して、好ましくは少なくとも0.1重量%、より好ましくは少なくとも1重量%、及び更により好ましくは2重量%である。特定の実施形態では、この量は、乾燥無機酸化物ナノ粒子の総重量に対して、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下、及び更により好ましくは5重量%以下である。
【0023】
特定の実施形態では、本開示の水性コーティング組成物は、8を超えるpH、好ましくは8.5を超えるpH、及びより好ましくは9を超えるpHをもたらすのに十分な有機塩基を含む。意義深いことに、有機塩基は、無機塩基ほど著しくpHを上昇させず、更に驚くべきことに、コーティング組成物を十分に架橋及び/又は硬化させる。また、典型的には、かかるpH及び効果的な架橋を得るために、非常に少量の有機塩基しか必要としない。
【0024】
コーティング(好ましくは、連続コーティング)は、無機酸化物ナノ粒子の濃縮によって形成される。この濃縮反応は、酸(特に強酸)によって開始することが既知である。しかしながら、強酸の腐食効果によって、工業的なコーティングラインでの実施が制限されている。弱酸を使用する場合、最終的なコーティング性能が損なわれる。あるいは、酸が望ましくない場合、連続コーティングは、高温下(例えば、150℃超)でのみ形成され得る。有機塩基は、酸又は高温を使用する際の欠点を克服する。有機塩基は、強酸のように工業的なコーティングラインにおける腐食がないため、有機塩基を使用することで、製造において優れた柔軟性がもたらされる。
【0025】
望ましくは、有機塩基は、コーティング組成物が低温(例えば、周囲温度程度)及び/又は高速(例えば、数分)で硬化できるほど十分な活性を有している。低温で硬化することで、コーティング速度が向上するだけでなく、有機ポリマー基材上の応力が削減される(基材の多くは、120℃を超える温度において操作が容易でない)。周囲温度で硬化することで、加熱工程を追加することなく、コーティング組成物を適用できる。
【0026】
限定する意図はないが、有機塩基は、触媒として機能すると考えられる。無機酸化物ナノ粒子は、ヒドロキシ基を表面に有するが、これは、濃縮して好ましくは連続コーティングであるコーティングを形成する。この濃縮反応は、塩基が存在しないだけでなく、高温においても起こり得る。触媒量の有機塩基が存在することで濃縮反応がより速くなり、周囲温度で起こり得る。
【0027】
本明細書で開示されるように、有機塩基は、既知の酸と比較される際、以下の利点のうち1つ以上を提供する:コーティング装置に対する腐食がほとんど又は全くない;少量の有機塩基(例えば、1重量%の少ないシリカ)の存在による高効率;安定した水系処方物(例えば、本開示のコーティング組成物は、ポットライフ問題を有さず、いかなる凝集溶剤も加えることなく安定している);基材に対する良好な接着性(例えば、生成されるコーティングは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、セラミック、ガラス、及び金属などの有機材料及び無機材料を含む幅広い基材に対して良好な接着性を有する);及びポリカーボネート上のより高いコーティングの耐久性。
【0028】
本開示の組成物に使用するのに好適な有機塩基としては、アミジン、グアニジン(ビグアニドなどの置換グアニジンを含む)、ホスファゼン、プロアザホスファトラン(Verkade塩基としても既知である)、水酸化アルキルアンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。自己プロトン化可能な形態の塩基(例えば、アルギニンなどのアミノ酸)は、少なくとも部分的に自己中和されやすい形態であるものとして、通常、より好適ではないため、除外される。好ましい塩基としては、アミジン、グアニジン、及びこれらの組み合わせ(より好ましくはアミジン及びこれらの組み合わせ、最も好ましくは環状アミジン及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0029】
有機塩基は、硬化性組成物中で単独で(個別に)又は1つ以上の異なる塩基の混合物(異なる構造種からの塩基を含む)の形態で使用され得る。所望であれば、塩基は、感光性形態で(例えば、放射線又は熱に曝露するとその場で塩基を生じる活性化可能組成物の形態で)存在し得る。
【0030】
有用なアミジンとしては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる:
【0031】
【化1】
式中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又はイオウを含む)、及びこれらの組み合わせから選択され;及び、式中、R1、R2、R3、及びR4のうちの任意の2つ以上は、任意で互いに結合して環構造(好ましくは、5員環、6員環、又は7員環、より好ましくは6員環又は7員環)を形成し得る。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜10個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子)を有する。
【0032】
少なくとも1つの環構造を含むアミジン(すなわち、環式アミジン)が一般的には好ましい。2つの環構造を含む環式アミジン(すなわち、二環式アミジン)がより好ましい。
【0033】
有用なアミジン化合物の代表例としては、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1,2−ジエチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−n−プロピル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−イソプロピル−2−メチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−n−プロピル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、1−エチル−2−イソプロピル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいアミジンとしては、1,2−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、DBU(すなわち、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)、DBN(すなわち、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン)、及びこれらの組み合わせが挙げられ、DBU、DBN、及びこれらの組み合わせがより好ましく、DBUが最も好ましい。
【0034】
有用なグアニジンとしては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる:
【0035】
【化2】
式中、R1、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン又はイオウを含む)、及びこれらの組み合わせから選択され;式中、R1、R2、R3、R4、及びR5のうちの任意の2つ以上は、任意で互いに結合して環構造(好ましくは、5員環、6員環、又は7員環、より好ましくは5員環又は6員環、最も好ましくは6員環)を形成する。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜10個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子)を有する。
【0036】
少なくとも1つの環構造を含むグアニジン(すなわち、環式グアニジン)が一般的には好ましい。2つの環構造を含む環式グアニジン(すなわち、二環式グアニジン)がより好ましい。
【0037】
有用なグアニジン化合物の代表例としては、1−メチルグアニジン、1−n−ブチルグアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1−ジエチルグアニジン、1,1,2−トリメチルグアニジン、1,2,3−トリメチルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1,1,2,3,3−ペンタメチルグアニジン、2−エチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチル−2−n−プロピルグアニジン、1,1,3,3−テトラメチル−2−イソプロピルグアニジン、2−n−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、1,2,3−トリシクロヘキシルグアニジン、TBD(すなわち、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、MTBD(すなわち、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、7−エチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−n−プロピル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−イソプロピル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−n−ブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−イソブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−tert−ブチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−シクロヘキシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−n−オクチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−2−エチルヘキシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−デシル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、ビグアニド、1−メチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−(2−エチルヘキシル)ビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−n−ブチル−N2−エチルビグアニド、1,1’−エチレンビスグアニド、1−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]ビグアニド、1−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ビグアニド、N’,N”−ジヘキシル−3,12−ジイミノ−2,4,11,13−テトラアザテトラデカンジアミンなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましいグアニジンとしては、TBD(すなわち、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、MTBD(すなわち、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン)、2−tert−ブチル−1,1,3,3−テトラメチルグアニジン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。TBD、MTBD、及びこれらの組み合わせが最も好ましい。
【0038】
所望であれば、アミジン及びグアニジンは、JIS Z 8802に従って測定したときに13.4未満のpH値を示すもの(例えば、1,3−ジフェニルグアニジン、DBU、DBN、又はこれらの組み合わせ、好ましくはDBU、DBN、又はこれらの組み合わせ)から選択することができる。水溶液のpHを決定するための参照方法JIS Z 8802は、まず、重量比10:3のイソプロピルアルコールと水の混合溶媒100gに5ミリモルの塩基を加えることにより、塩基の水溶液を調製することで実行される。次に、生じた溶液のpHを23℃にてpHメーター(例えば、Horiba Seisakusho Model F−22のpHメーター)を使用して測定する。
【0039】
有用なホスファゼンとしては、以下の一般式によって表すことができるものが挙げられる:
【0040】
【化3】
式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7は、それぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン、又はイオウを含む)、及びこれらの組み合わせから選択され;式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、及びR7のうちの任意の2つ以上は、任意で互いに結合して環構造(好ましくは、5員環、6員環、又は7員環、より好ましくは5員環又は6員環、最も好ましくは6員環)を形成する。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜10個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子)を有する。
【0041】
有用なホスファゼン化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる:
【0044】
【表1-3】
など、及びこれらの組み合わせ。好ましいホスファゼンとしては、2−tert−ブチルイミノ−2−ジエチルアミノ−1,3−ジメチルペルヒドロ−1,3,2−ジアザホスホリン、ホスファゼン塩基P
1−t−Bu−トリス(テトラメチレン)、ホスファゼン塩基P
4−t−Bu、及びこれらの組み合わせが挙げられる。上述の化学構造中、丸印は高分子材料を表す。すなわち、有機塩基は、高分子材料に結合する基であり得る。
【0045】
有用なプロアザホスファトラン塩基(Verkade塩基)としては、以下の一般式により表すことができるものが挙げられる:
【0046】
【化4】
式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を通して結合され、カルボキシル又はスルホンなどの酸官能基を含有しない基又は部分の形態で、窒素、酸素、リン、又はイオウを含む)、及びこれらの組み合わせから選択され;式中、R1、R2、及びR3のうちの任意の2つ以上は、任意で互いに結合して環構造を形成する。有機基及びヘテロ有機基は、好ましくは1〜20個の炭素原子(より好ましくは1〜10個の炭素原子、最も好ましくは1〜6個の炭素原子)を有する。
【0047】
有用なプロアザホスファトラン化合物の代表例としては、以下のものが挙げられる:
【0048】
【表2】
など、及びこれらの組み合わせ。2,8,9−トリイソプロピル−2,5,8,9−テトラアザ−1−ホスファビシクロ[3.3.3]ウンデカンは、特に好ましいプロアザホスファトラン化合物である。
【0049】
アルキルアンモニウム化合物の具体例としては、テトラメチル水酸化アンモニウム(TMAH)、テトラ−エチル水酸化アンモニウム(TEAH)、テトラプロピル水酸化アンモニウム(TPAH)、テトラブチル水酸化アンモニウム(TBAH)、トリブチルメチル水酸化アンモニウム(TBMAH)、などが挙げられる。
【0050】
界面活性剤
いくつかの実施形態では、本開示のコーティング組成物は、1つ以上の界面活性剤を含み得る。水系処方物において、多くの場合、1つ以上の界面活性剤の存在が必要であり、表面張力を削減し、有機ポリマー基材を濡らすのを助ける。あるいは又は加えて、界面活性剤は、コーティング組成物が適用される基材上にコーティングされ得る。有用な界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、又は双極性界面活性剤が挙げられるが、これらは、コーティング組成物の表面張力を削減し、生じたコーティングの均一性を向上させることができる。
【0051】
無機酸化物ナノ粒子の典型的な濃度(例えば、全コーティング組成物に対して0.2〜15重量パーセント)において、ほとんどの界面活性剤は、無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、好ましくは10重量%以下(wt%)、より好ましくは5重量%以下、及び更により好ましくは1重量%以下の量で存在する。好ましくは、無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、少なくとも0.1重量%の界面活性剤がコーティング組成物中に存在する。
【0052】
有用な非イオン性界面活性剤としては、ポリエトキシレート化アルキルアルコール(例えば、BRIJ 30、及びBRIJ 35(ICI Americas,Inc.から市販)、及びTERGITOL TMN−6 Specialty Surfactant(Dow Chemicalから市販)、ポリエトキシレート化アルキルフェノール(例えば、TRITON X−100(Dow Chemical製)、ICONOL NP−70(BASF Corp.製))、及びポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(TETRONIC 1502ブロックコポリマー界面活性剤、TETRONIC 908ブロックコポリマー界面活性剤及びPLURONIC F38ブロックコポリマー界面活性剤として全てBASF,Corp.から市販)などの湿潤剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の市販の非イオン性界面活性剤としては、商品名SURFYNOL 465(1分子当たり10単位のエチレンオキシドを含有するエトキシル化2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール)、SURFYNOL 485W(水中エトキシル化2,4,7,9−テトラメチル5デシン−4,7−ジオール)、及びSURFYNOL 504(水中で25重量%を超えるエトキシル化2,4,7,9−テトラメチル5デシン−4,7−ジオール及び25重量%を超える2−スルホ琥珀酸1,4−ビス(2−エチルヘキシル)2−ナトリウム)で、Air Products & Chemicalsから入手可能なものが挙げられる。
【0053】
有用なアニオン性界面活性剤としては、(1)C
6〜C
20のアルキル、アルキルアリール、及び/又はアルケニル基などの少なくとも1つの疎水性部分、(2)サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ポリオキシエチレンサルフェート、ポリオキシエチレンスルホネート、ポリオキシエチレンホスフェートなどの少なくとも1つのアニオン性基、及び/又は(3)これらのアニオン性基の塩であって、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、第3級アミノ塩などを含むもの、を含む、分子構造を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。有用なアニオン性界面活性剤の代表的な市販の例としては、商品名TEXAPON L−100(Henkel Inc.(Wilmington,DE))、又は商品名POLYSTEP B−3(Stepan Chemical Co(Northfield,IL)から入手可能なラウリル硫酸ナトリウム);商品名POLYSTEP B−12(Stepan Chemical Co.(Northfield,IL)から入手可能なラウリルエーテル硫酸ナトリウム);商品名STANDAPOL A(Henkel Inc.(Wilmington,DE)から入手可能なラウリル硫酸アンモニウム);及び商品名SIPONATE DS−10(Rhone−Poulenc,Inc.(Cranberry,NJ)から入手可能なドデシルベンゼンナトリウム)が挙げられる。
【0054】
有用な双極性イオン界面活性剤としては、Clariant Corporation製のGenagen KB(アルキルメチルベタインの30重量%水溶液)及びGenegen CAB(ココアミドプロピルベタイン)などのベタイン;及びRhone−Poulenc製のMIRATAINE AP−Cなどのココアミノプロピオン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
無機酸化物ナノ粒子
本組成物に使用される無機酸化物ナノ粒子は、サブミクロンサイズの無機酸化物ナノ粒子であり、これは、金属酸化物ナノ粒子又は非金属酸化物ナノ粒子であり得る。好適な無機酸化物ナノ粒子は、40ナノメートル(nm)以下の平均一次粒径を有する。特定の実施形態では、無機酸化物ナノ粒子は、20nm以下の平均一次粒径を有する。特定の実施形態では、無機酸化物ナノ粒子は、10nm以下の平均一次粒径を有する。平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定することができる。ここで、粒径は、粒子の最長寸法であって、球形の粒子においては直径である。
【0056】
粒子は、好ましくは、狭い粒径分布、すなわち2.0以下、好ましくは1.5以下の多分散性を有する。更に、ナノ粒子は、一般的に、約150平方メートル毎グラム(m
2/g)を超え、好ましくは200m
2/gを超え、及びより好ましくは400m
2/gを超える表面積を有する。
【0057】
特定の実施形態では、40nm以下の平均一次粒径(好ましくは、直径)を有する無機酸化物ナノ粒子の濃度は、コーティング組成物の全重量に対して、少なくとも0.1重量%、及び好ましくは少なくとも0.2重量%である。特定の実施形態では、40nm以下の平均一次粒径(好ましくは、直径)を有する無機酸化物ナノ粒子の濃度は、コーティング組成物の全重量に対して、20重量%以下、及び好ましくは15重量%以下である。
【0058】
所望であれば、透過率の値及び/又は防曇特性を低下させない量で、より大きな無機酸化物ナノ粒子を添加してもよい。これらの追加無機酸化物ナノ粒子は、一般的には、40nmを超える、及び好ましくは50nmを超える平均一次粒径(最長寸法)を有する。これらの追加の無機酸化物ナノ粒子は、一般的には、100nm以下の平均一次粒径を有する。これらのより大きな粒子は、40nm以下の無機酸化物ナノ粒子の重量に対して、0.2:99.8〜99.8:0.2の比率で使用され得る。使用する場合、これらのより大きな粒子は、40nm以下の無機酸化物ナノ粒子の重量に対して、1:9〜9:1の比率で使用され得る。
【0059】
特定の実施形態では、組成物中の無機酸化物ナノ粒子の全重量(すなわち、40nm以下及びそれより大きな無機酸化物ナノ粒子の全重量)は、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1重量%、及びより好ましくは少なくとも2重量%である。特定の実施形態では、組成物中の無機酸化物ナノ粒子の全重量は、40重量%以下、好ましくは10重量%以下、及びより好ましくは7重量%以下である。
【0060】
無機酸化物ナノ粒子は、非金属酸化物ナノ粒子、好ましくはシリカナノ粒子を含み得る。水性媒体中の無機シリカゾルは、当該技術分野において周知であり、市販されている。非水性シリカゾル(シリカオルガノゾルとも呼ばれる)を使用してもよく、非水性シリカゾルはシリカゾル分散液であり、液相は有機溶媒であるか、又は有機溶媒を含有する水性混合物である。本開示の実施において、シリカゾルは、液相が分散物と相溶性があり、典型的には水性溶媒であり、任意で有機溶媒を含むように選択される。無機酸化物ナノ粒子は、典型的には、ヒュームドシリカを含まない。
【0061】
水中又は水−アルコール溶液中のシリカゾルは、LUDOX(E.I.duPont de Nemours and Co.,Inc.(Wilmington,DE)製造)、NYACOL(Nyacol Co.(Ashland,MA)より入手可能)、又はNALCO(Ondea Nalco Chemical Co.(Oak Brook,IL)製造)などの商品名で市販されている。有用なシリカゾルの1つとして、平均粒径が5ナノメートル、pH 10.5、及び固形分が15重量%のシリカゾルとして入手可能なNALCO 2326がある。他の市販のシリカナノ粒子としては、商品名NALCO 1115(球状、4nm、15重量%分散液)、NALCO 1130(球状、8nm、30重量%分散液)、NALCO 1050(球状、20nm、50重量%分散液)、NALCO 2327(球状、20nm、40重量%分散液)、NALCO 8699(球状、2nm、15重量%分散液)、NALCO 1030(球状、13nm、30重量%分散液)、NALCO 1060(球状、60nm、50重量%分散液)、NALCO 2329(球状、75nm、40重量%分散液)、及びDVSZN004(球状、45nm、42重量%分散液)で、Nalco Chemical Co.から入手可能なものが挙げられる。他の市販のシリカナノ粒子としては、次のシリカナノ粒子分散液、商品名ST−OUP(細長状、40〜100nm、15重量%、pH=2〜4)、ST−UP(細長状、40〜100nm、20重量%、pH=9.0〜10.5)、ST−ZL(球状、70〜100nm、40〜41重量%)、及びST−PS−S(100nm、19.2重量%)(Nissan Chemical Industryから入手可能)、並びにREMASOL SP30(Remet Corp.から市販)、及びLUDOX SM(E.I.duPont de Nemours Co.Inc.から市販)、が挙げられる。粒径は、最長寸法の平均粒径である。
【0062】
無機酸化物ナノ粒子としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アンチモン、アンチモンドープ酸化スズ、酸化インジウム、スズドープ酸化インジウム、酸化亜鉛、などの金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。好ましくは、金属酸化物ナノ粒子は、アルミナ(すなわち、酸化アルミニウム)ナノ粒子である。
【0063】
アルミナナノ粒子水性分散液は、商品名VK−L10B(ガンマAl
2O
3、球状、10nm、20重量%分散液、pH=9)で、Hangzhou Wanjing New Materials Co.,Ltd.(China)から市販されている。
【0064】
コーティング方法
本開示の水性コーティング組成物は、好ましくは、バー、ロール、カーテン、輪転グラビア、スプレー、又はディップコーティング技術などの従来の技術を使用して、基材上にコーティングされる。好ましい方法としては、バー及びロールコーティング、又はエアナイフコーティングが挙げられ、厚さを調整する。基材を均一にコーティング及び湿潤するために、コロナ放電法又は火炎処理法を使用して、コーティング前に基材表面を酸化させることが望ましいことがある。物品の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのプライマーの使用が挙げられる。
【0065】
本開示のコーティングは、コーティングにおける可視干渉色の変化を避けるために、200Å未満、より好ましくは100Å未満で変動する均一な平均厚さで適用されることが好ましい。最適な平均乾燥コーティングの厚さは、具体的なコーティング組成物に応じて変動するが、一般的には、コーティングの平均厚さは、Gaertner Scientific Corp Model No.L115Cなどの楕円偏光計を用いて測定される際に、500Å〜2500Å、好ましくは750Å〜2000Å、より好ましくは1000Å〜1500Åである。この範囲を上回る場合及び下回る場合、コーティングの反射防止特性が著しく低下する場合がある。しかしながら、平均コーティングの厚さは均一であることが好ましいが、実際のコーティングの厚さは、コーティング上のある特定の点から別の点までで大幅に変動し得ることに留意すべきである。かかる厚さの変動は、視覚的に区別できる領域と相関関係にある際、コーティングに広帯域の反射防止特性をもたらすことにより、実際は有益である場合もある。
【0066】
コーティングされると、物品は、120℃以下(所望であればより高温も可能であるが、典型的には、本開示のコーティング組成物においては必要がない)、及びより好ましくは20℃〜120℃の温度で乾燥される。これは、例えば、再循環炉において実行され得る。所望であれば、不活性ガスが循環され得る。乾燥プロセスを加速させるために更に温度を上げてよいが、基材への損傷を避けるために注意を払うのが好ましい。
【0067】
コーティングされた基材及び物品
本開示のコーティング組成物から形成されるコーティングは、コーティング上に40ナノメートル以下の平均一次粒径を有する無機酸化物ナノ粒子の凝集体を含む。すなわち、無機酸化物ナノ粒子は、濃縮反応によって互いに結合する。凝集体は、無機酸化物ナノ粒子の3次元の多孔質ネットワークを含み、無機酸化物ナノ粒子は、無機酸化物ナノ粒子の凝集体のネットワークを形成する隣接する無機酸化物ナノ粒子と結合する。好ましくは、このネットワークは連続している。本明細書で使用するとき、「連続」という用語は、ゲル状ネットワークが適用される領域に実質的に不連続又は間隙を有することなく基材の表面を被覆することを指す。用語「ネットワーク」は、濃縮反応又は多孔質3次元ネットワークを形成するための引力又は結合による他の形態によって互いに結合したナノ粒子の凝結体又は凝集体を指す。用語「平均一次粒径」は、ナノ粒子の凝集していない単一粒子の平均寸法を指す。好ましくは、粒子は球状であり、粒径は粒子の直径である。
【0068】
用語「多孔質」は、ナノ粒子が連続コーティングを形成する際に、無機酸化物ナノ粒子間にできる空隙の存在を示す。単層コーティングでは、光学的に透明な基材を通過する空気中の光透過率を最大化し、基材による反射を最小化するために、コーティングの屈折率は、基材の屈折率の平方根にできる限り近くあるべきであり、コーティングの厚さは、入射光線の光学波長の4分の1(1/4)であるべきである。コーティング中の空隙は、屈折率(RI)が空気の屈折率(RI=1)から金属酸化物ナノ粒子の屈折率(例えば、シリカの場合、RI=1.44)に突然変化した場合、ナノ粒子間に多数のサブ波長の隙間をもたらす。多孔性を調整することにより、基材の屈折率の平方根に非常に近い、算出された屈折率を有するコーティング(米国特許第4,816,333号(Langeら)に示される)を作製することができる。最適屈折率を有するコーティングを利用することにより、入射光線の光学波長の約4分の1に等しいコーティングの厚さで、コーティングされた基材を通過する光の透過率パーセントは最大化され、反射は最小化される。
【0069】
好ましくは、ネットワークは、乾燥したとき、25〜45体積パーセント、より好ましくは30〜40体積パーセントの多孔性を有する。いくつかの実施形態では、多孔性はより高くてもよい。多孔性は、W.L.Bragg、A.B.Pippard、Acta Crystallographica,volume 6,page 865(1953)などに公表されている手順に従って、コーティングの屈折率から算出され得る。シリカナノ粒子では、この多孔性は、ポリエステル、ポリカーボネート、又はポリ(メチルメタクリレート)基材の屈折率の平方根におおよそ等しい、1.2〜1.4、好ましくは1.25〜1.36の屈折率を有するコーティングを提供する。例えば、1.25〜1.36の屈折率を有する多孔質シリカナノ粒子コーティングは、ポリエチレンテレフタレート基材(RI=1.64)上に1000〜2000Åの厚さでコーティングされる際、高い反射防止性を表面にもたらすことができる。コーティングの厚さは、反射防止性ではなく、不必要な粒子の易洗浄性又は易除去性などの用途に応じて、数マイクロメートル又は数ミルの厚さで増加され得る。機械的特性は、コーティングの厚さが増加したとき向上すると予測することができる。
【0070】
本開示の物品は、平坦形状、湾曲形状、又は複合した形状を有し、高光沢(20度において90を超える)又は低光沢(20度において10未満)であり、基材上に濃縮した無機酸化物ナノ粒子のネットワーク(好ましくは連続ネットワーク)が形成された、透明から不透明の、ポリマー性、ガラス、セラミック、又は金属である、実質上任意の構造であり得る。
【0071】
代表的な基材は、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、アリルジグリコールカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ホモエポキシポリマー、ポリジアミンとのエポキシ付加ポリマー、ポリジチオール、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレンコポリマー及びポリプロピレンコポリマー、ポリ塩化ビニル、フッ素化表面、アセテート及びブチラートなどのセルロースエステル、ガラス、セラミック、有機及び無機複合材表面など(これらのブレンド及び積層体を含む)から作成される。
【0072】
典型的には、基材は、フィルム、シート、パネル又はシート状材料の形態であり、眼科用レンズ、建築用ガラス、装飾用ガラスフレーム、自動車の窓及びフロントガラス、並びに手術用マスク及び顔面防護器具などの保護メガネなどの物品の一部であってよい。所望により、任意で、コーティングは、物品の一部のみを覆うことができ、例えば、顔面防護器具の目に直接隣接する部分のみをコーティングし得る。基材は、平坦形状、湾曲形状、又は複合形状であり得る。コーティングされる物品はブロー成形、鋳造、押出し成形、又は射出成形によって製造することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、基材は、グラフィック及び標識に使用されるもの及び自動車及び電気通信などに使用される塗装鋼板様ポリウレタン又はポリエステルなどの可撓性フィルムである。可撓性フィルムは、PETなどのポリエステル、PP(ポリプロピレン)及びPE(ポリエチレン)などのポリオレフィン、又はPVC(ポリ塩化ビニル)から作成され得る。基材は、基材樹脂をフィルムに押し出し、任意で、押し出されたフィルムを一軸又は二軸配向するなどの、従来のフィルム作成技術を使用してフィルムに形成され得る。基材とコーティングとの間の接着を向上するために、例えば、化学処理、空気又は窒素コロナなどのコロナ処理、プラズマ、火炎、又は化学放射線を使用して基材が処理され得る。所望であれば、任意の結合層を基材とコーティング組成物との間に適用して、層間接着を向上することもできる。基材の他の側も上記処理を使用して処理し、基材と接着剤との間の接着を向上することもできる。基材は、当該技術分野で既知であるような言葉又は記号等のグラフィックスが提供され得る。
【0074】
特定の実施形態では、本開示のコーティング組成物が適用され得る基材は、好ましくは可視光に対して透明又は半透明である。他の実施形態では、基材は透明である必要はない。用語「透明」は、可視スペクトルの選択された部分(約400〜700nmの波長)において入射光線の少なくとも85%が透過することを意味する。基材は、着色されているか、無色であり得る。
【0075】
光透過率(すなわち、透過率)を高めるためにコーティングを透明な基材に適用する際、コーティングされた物品は、好ましくは、400〜700nmに及ぶ波長の範囲にわたって、コーティングされた基材に応じて、垂直入射光線の透過率において、(コーティングされていない基材に対して)総平均が増加(好ましくは、少なくとも2パーセントから10パーセント以上まで)する。透過率の増加はまた、スペクトルの紫外線及び/又は近赤外領域の波長でも見られる。光透過性基材の少なくとも片側に適用される特定の好ましいコーティング組成物は、550nmで測定したとき、基材の透過率パーセントを少なくとも5パーセント、好ましくは10パーセント増加させる。UV領域及び近赤外領域の透明性も増加し得る。
【0076】
本開示の組成物から生じたコーティングは更に、ガラス及びPET基材などの表面に耐水性及び機械的耐久性親水性表面を提供し、様々な温度及び高湿度条件下で優れた防曇性を提供することができる。
【0077】
コーティングは、物品が直接、人の呼吸に繰り返し曝された及び/又は「蒸気」ジェットの上に物品を保持した後に、十分に透視することができないほど、コーティングされた基材の透明性を著しく低下させるに十分な密度の濃縮した小さな水滴が形成することに、コーティングされた基材が抵抗する場合、防曇であると見なされる。コーティング組成物は、コーティングされた基材の透明性が、容易に透視することができないほど著しく低下していなければ、コーティングされた基材に均一の水膜又は少数の大きな水滴が生じても、防曇であると見なされ得る。多くの場合、基材が「蒸気」ジェットに曝された後に、基材の透明性を著しく低下させない水膜が残る。
【0078】
更に、コーティングは、保護層を提供し、向上した洗浄性を示し、コーティングのナノ多孔性構造がオリゴマー及びポリマー分子による浸透を防ぐ傾向があるため、食用油及び機械油、塗料、ほこり及び汚れなどの有機汚染物質を濯ぎ落として除去し得る。「洗浄可能」とは、コーティング組成物が、硬化したとき、油及び汚れ耐性を提供して、油又は偶発的なほこりなどの汚染物質への曝露による汚れからコーティングされた物品を保護するのを補助することを意味する。特定の実施形態では、本開示のコーティング組成物によるコーティングは、汚れた際にも洗浄しやすいため、汚染物質を除去する必要がある場合も水中で濯ぐのみである。
【0079】
本開示のコーティングは、帯電に曝される高分子フィルム及びシート材料に帯電防止特性も提供し得る。例えば、好ましいコーティングされた基材は、10
12オーム/平方以下の表面抵抗を有する。
【0080】
本開示のコーティングはまた、好ましくは、フィルム及びシート材料などの高分子材料に耐摩耗性及び滑り特性を提供し、それにより取扱性を改善することができる。
【0081】
物品が光散乱又はグレアを引き起こす、又は物品の表面上の曇りの形成によりぼんやりとする傾向が低下し得る場合、光学的に透明な物品の価値が高まる例は多数存在する。例えば、保護メガネ(ゴーグル、顔面防護器具、ヘルメットなど)、眼科用レンズ、建築用ガラス、装飾用ガラスフレーム、自動車の窓、及びフロントガラスは、全て、不快で邪魔なグレアを引き起こす方法で光を散乱させ得る。かかる物品の使用はまた、物品の表面上の水蒸気の曇りの形成によっても有害な影響を受け得る。理想的には、好ましい実施形態では、本開示のコーティングされた物品は、非常に優れた防曇特性を有しながら、別に550nmの光の90パーセント超の透過率を有する。
【0082】
コーティングは、親水性表面又は疎水性表面を提供し得る。
【0083】
本明細書で使用するとき、「親水性」は、コーティングの表面特徴、すなわち、水溶液により湿潤されることを指すためだけに用いられ、コーティングが水溶液を吸収するかどうかを表さない。したがって、コーティングは、コーティングが水溶液に対して非透過性であっても透過性であっても親水性であると言うことができる。50°未満の静的水接触角を示す水滴又は水溶液の滴を有する表面は、「親水性」と呼ばれる。疎水性基材は、50°以上の水接触角を有する。本明細書に記載されるコーティングは、少なくとも10°、好ましくは少なくとも20°、基材の親水性を増加させ得る。
【0084】
好ましくは、親水性コーティングである場合、本開示のコーティングされた基材のコーティングは、30°未満の静的水接触角を有する。好ましくは、疎水性コーティングである場合、本開示のコーティングされた基材のコーティングは、90°を超える静的水接触角を有する。
【0085】
疎水性コーティングは、例えば、コーティング組成物にフルオロシラン又は長鎖アルカンシランを組み込むことで調製され得る。かかる化合物の例としては、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン、(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリメトキシシラン、(3−ヘプタフルオロイソプロポキシ)プロピルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、などが挙げられる。使用する場合、1つ以上のかかる化合物は、無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、少なくとも0.001重量%、及び典型的には20重量%以下の量で使用される。
【0086】
水性系から疎水性基材上に組成物を均一にコーティングするために、基材の表面エネルギーを増加させる及び/又はコーティング組成物の表面張力を低下させることが望ましい場合がある。表面エネルギーは、コロナ放電又は火炎処理法を用いてコーティングする前に、基材表面を酸化させることにより増加させることができる。これらの方法はまた、コーティングの基材への接着を向上させることができる。物品の表面エネルギーを増加させることができる他の方法としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の薄いコーティング等のプライマーの使用が挙げられる。あるいは、コーティング組成物の表面張力は、低級アルコール(C
1〜C
8)を加えることにより低下させることができる。
【0087】
代表的な実施形態
実施形態1は、a)40ナノメートル以下の平均一次粒径を有する無機酸化物ナノ粒子、及びb)有機塩基、を含むコーティング組成物である。
【0088】
実施形態2は、更に水を含む実施形態1に記載のコーティング組成物である。
【0089】
実施形態3は、コーティング組成物が、8を超えるpHを有する水性分散液である、実施形態2に記載のコーティング組成物である。
【0090】
実施形態4は、水性分散液が8.5を超えるpHを有する、実施形態3に記載のコーティング組成物である。
【0091】
実施形態5は、水性分散液が9を超えるpHを有する、実施形態4に記載のコーティング組成物である。
【0092】
実施形態6は、有機塩基が、アミジン、グアニジン、ホスファゼン、プロアザホスファトラン、水酸化アルキルアンモニウム、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態1〜5のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0093】
実施形態7は、更に界面活性剤を含む、実施形態1〜6のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0094】
実施形態8は、界面活性剤が、無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、少なくとも0.1重量%で存在する、実施形態7に記載のコーティング組成物である。
【0095】
実施形態9は、界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態7又は実施形態8に記載のコーティング組成物である。
【0096】
実施形態10は、無機酸化物ナノ粒子が、コーティング組成物の全重量に対して、少なくとも0.1重量%で存在する、実施形態1〜9のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0097】
実施形態11は、無機酸化物ナノ粒子が、20ナノメートル以下の平均一次粒径を有する、実施形態1〜10のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0098】
実施形態12は、無機酸化物ナノ粒子が、10ナノメートル以下の平均一次粒径を有する、実施形態11に記載のコーティング組成物である。
【0099】
実施形態13は、無機酸化物ナノ粒子が非金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態1〜12のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0100】
実施形態14は、非金属酸化物ナノ粒子がシリカナノ粒子を含む、実施形態13に記載のコーティング組成物である。
【0101】
実施形態15は、無機酸化物ナノ粒子が金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態1〜12のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0102】
実施形態16は、金属酸化物ナノ粒子がアルミナナノ粒子を含む、実施形態15に記載のコーティング組成物である。
【0103】
実施形態17は、有機塩基が、乾燥無機酸化物ナノ粒子の全重量に対して、少なくとも0.1重量%の量で存在する、実施形態1〜16のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0104】
実施形態18は、
組成物の全重量に対して、0.5〜99重量%の水と、
組成物の全重量に対して、40nm以下の平均一次粒径を有する0.1〜20重量%の無機酸化物ナノ粒子と、
40nm以上の平均一次粒径を有する、0〜20重量%の無機酸化物ナノ粒子
(無機酸化物の全量は、組成物の全重量に対して、0.1〜40重量%である)と、
乾燥無機酸化物ナノ粒子の全重量に対して、0.1重量%〜20重量%有機塩基と、
無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、0.1重量%〜10重量%の界面活性剤と、を含む、実施形態1〜17のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0105】
実施形態19は、コーティング組成物のpHが8を超える、実施形態18に記載のコーティング組成物である。
【0106】
実施形態20は、
組成物の全重量に対して、0.5〜99重量%の水と、
組成物の全重量に対して、40nm以下の平均一次粒径を有する0.1〜20重量%の無機酸化物ナノ粒子と、
乾燥無機酸化物ナノ粒子の全重量に対して、0.1重量%〜20重量%の有機塩基と、
無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、0〜10重量%の界面活性剤と、を含む、実施形態1〜18のいずれか一項に記載のコーティング組成物である。
【0107】
実施形態21は、コーティング組成物のpHが8を超える、実施形態20に記載のコーティング組成物である。
【0108】
実施形態22は、コーティング組成物が、無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、0.1重量%〜10重量%の界面活性剤を含有する、実施形態20又は21に記載のコーティング組成物である。
【0109】
実施形態23は、基材をコーティングする方法であり、この方法は、基材表面とコーティング組成物を接触させ、基材上でコーティング組成物を乾燥して、濃縮した無機酸化物ナノ粒子コーティングを提供する工程を含む。このコーティング組成物は、40nm以下の平均一次粒径を有する無機酸化物ナノ粒子、及び有機塩基を含む。
【0110】
実施形態24は、コーティング組成物が更に水を含む、実施形態23に記載の方法である。
【0111】
実施形態25は、方法が、
基材表面に、
水、
40ナノメートル以下の平均一次粒径を有する無機酸化物ナノ粒子、及び
有機塩基を含む水性コーティング組成物を接触させる工程であって、
コーティング組成物は、8を超えるpHを有する水性分散液であり、
界面活性剤が、水性コーティング組成物中に存在するか、基材を水性コーティング組成物と接触させる前に基材表面上に配置される、又は界面活性剤が水性コーティング組成物中に存在し、かつ基材を水性コーティング組成物と接触する前に基材表面上に配置される、工程と、
水性コーティング組成物を基材上で乾燥させて、濃縮した無機酸化物ナノ粒子コーティングを提供する工程、を含む、実施形態23又は24に記載の方法である。
【0112】
実施形態26は、コーティング組成物が界面活性剤を含む、実施形態25に記載の方法である。
【0113】
実施形態27は、基材が、水性コーティング組成物と接触する前に、表面上に配置される界面活性剤を含む、実施形態25に記載の方法である。
【0114】
実施形態28は、界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、又はこれらの組み合わせを含む、実施形態23〜27のいずれか一項に記載の方法である。
【0115】
実施形態29は、有機塩基が、アミジン、グアニジン、ホスファゼン、プロアザホスファトラン、水酸化アルキルアンモニウム、及びこれらの組み合わせから選択される、実施形態23〜28のいずれか一項に記載の方法である。
【0116】
実施形態30は、無機酸化物ナノ粒子が、コーティング組成物の全重量に対して、少なくとも0.1重量%の量で存在する、実施形態23〜29のいずれか一項に記載の方法である。
【0117】
実施形態31は、無機酸化物ナノ粒子が、20ナノメートル以下の平均一次粒径を有する、実施形態23〜30のいずれか一項に記載の方法である。
【0118】
実施形態32は、無機酸化物ナノ粒子が、10ナノメートル以下の平均一次粒径を有する、実施形態31に記載の方法である。
【0119】
実施形態33は、無機酸化物ナノ粒子が非金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態23〜32のいずれか一項に記載の方法である。
【0120】
実施形態34は、非金属酸化物ナノ粒子がシリカナノ粒子を含む、実施形態33に記載の方法である。
【0121】
実施形態35は、無機酸化物ナノ粒子が金属酸化物ナノ粒子を含む、実施形態23〜32のいずれか一項に記載の方法である。
【0122】
実施形態36は、金属酸化物ナノ粒子がアルミナナノ粒子を含む、実施形態35に記載の方法である。
【0123】
実施形態37は、コーティング組成物が、
組成物の全重量に対して、0.5〜99重量%の水と、
組成物の全重量に対して、40nm以下の平均一次粒径を有する0.1〜20重量%の無機酸化物ナノ粒子と、
40nm以上の平均一次粒径を有する0〜20重量%の無機酸化物ナノ粒子
(無機酸化物ナノ粒子の全量は、組成物の全重量に対して、0.1〜40重量%である)と、
乾燥無機酸化物ナノ粒子の全重量に対して、少なくとも0.1重量%の有機塩基と、
乾燥無機酸化物ナノ粒子の全量に対して、少なくとも0.1重量%の界面活性剤と、を含む、実施形態20に従属する実施形態23〜36のいずれか一項に記載の方法である。
【0124】
実施形態38は、コーティング組成物のpHが8を超える、実施形態37に記載の方法である。
【0125】
実施形態39は、コーティング組成物が、
組成物の全重量に対して、0.5〜99重量%の水と、
組成物の全重量に対して、40nm以下の平均一次粒径を有する0.1〜20重量%の無機酸化物ナノ粒子と、
乾燥無機酸化物ナノ粒子の全量に対して、0.1重量%〜20重量%の有機塩基と、
無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、0〜10重量%の界面活性剤と、を含む、実施形態23〜36のいずれか一項に記載の方法である。
【0126】
実施形態40は、コーティング組成物のpHが8を超える、実施形態39に記載の方法である。
【0127】
実施形態41は、コーティング組成物が、無機酸化物ナノ粒子の乾燥重量に対して、0.1重量%〜10重量%の界面活性剤を含有する、実施形態39又は40に記載の方法である。
【0128】
実施形態42は、乾燥させ、濃縮した無機酸化物ナノ粒子コーティングを提供する工程は、120℃以下の温度で、水性コーティング組成物を基材上で乾燥させる工程を含む、実施形態23〜41のいずれか一項である。
【0129】
実施形態43は、乾燥させ、濃縮した無機酸化物ナノ粒子コーティングを提供する工程は、20℃〜120℃の温度で、水性コーティング組成物を基材上で乾燥させる工程を含む、実施形態42に記載の方法である。
【0130】
実施形態44は、実施形態23〜43のいずれか一項に記載の方法によって作製されるコーティングされた基材である。
【0131】
実施形態45は、コーティングが30°未満の静的水接触角を有する、実施形態44に記載のコーティングされた基材である。
【0132】
実施形態46は、コーティングが90°を超える静的水接触角を有する、実施形態44に記載のコーティングされた基材である。
【0133】
実施形態47は、濃縮した無機酸化物ナノ粒子が、有機バインダーも塗膜形成剤も含まない、実施形態44〜46のいずれか一項に記載のコーティングされた基材である。
【0134】
実施形態48は、濃縮した無機酸化物ナノ粒子コーティングが、500Å〜2500Åの厚さである、実施形態44〜47のいずれか一項に記載のコーティングされた基材である。
【0135】
実施形態49は、基材が透明である、実施形態44〜48のいずれか一項に記載のコーティングされた基材である。
【0136】
実施形態50は、400〜700nmの波長範囲における垂直入射光線の平均透過率が、コーティングされていない基材よりも高いことを示す、実施形態44〜49のいずれか一項に記載のコーティングされた基材である。
【0137】
実施形態51は、平均透過率が、コーティングされていない基材の平均透過率よりも少なくとも2パーセント高い、実施形態50に記載のコーティングされた基材である。
【0138】
実施形態52は、無機金属酸化物がアルミナを含む、実施形態51に記載のコーティングされた基材である。
【0139】
実施形態53は、10
12オーム/平方以下の表面抵抗を有する、実施形態52に記載のコーティングされた基材である。
【0140】
実施形態54は、実施形態44〜53のいずれか一項に記載のコーティングされた基材を含む物品である。
【実施例】
【0141】
本発明の目的及び利点を、以下の実施例によって更に例示するが、これらの実施例において列挙される特定の材料及びその量、並びに他の諸条件及び詳細によって、本開示を不当に制限するものではないと解釈すべきである。以下の実施例を通して、「N/M」は、測定が行われなかったことを意味する。
【0142】
透過率測定
透過率データは、ASTM D1003に記載される手順に従って、Haze−Gard Plusヘイズ計(BYK−Gardiner(Silver Springs,MD)から入手可能)を使用して測定された。全データは、3回の測定の平均である。この機械の波長範囲は、400〜700ナノメートルである。
【0143】
接触角の測定
接触角は、濾過システム(Millipore Corporation(Billerica,MA)から入手)を通して濾過した脱イオン水を使用して、ビデオ接触角分析計(AST Products(Billerica,MA)から製品番号VCA−2500XEとして入手可能)により測定を行った。
【0144】
防曇特性測定
本開示によるコーティングの防曇特性は、コーティングに息を吹きかけることで判定した。コーティング上の曇りの有無及び量に応じて、コーティングの防曇特性を、不良、良、及び優良と評価した。不良=試験サンプルの外観は乳状であった。良=試験サンプルの外観は若干不明瞭であった。優良=試験サンプルの外観は明瞭であった。
【0145】
ヘイズ測定
本明細書で開示されるヘイズ値は、ASTM D1003で記載される手順に従って、Haze−Gard Plusヘイズ計(BYK−Gardiner(Silver Springs,MD)から入手可能)を使用して測定された。全データは、3回の測定の平均である。
【0146】
層間接着試験(クロス−ハッチ試験)
(プラスチック)基材へのコーティングの接着を、クロスハッチ/テープ接着試験によって判定した。本試験において、カミソリ刃を使用してコーティング上にいくつかのスクライブマークを(3ミリメートル離して)作成した。次に、第2のスクライブセットを第1のセットに対して直角に作成した。接着面を下にして、接着フィルム(「SCOTCH PREMIUM CELLOPHANE TAPE 610」(3M Company(St.Paul,MN))をスクライブフィルム上に載置した後、すぐに取り除いた。フィルム及び接着フィルムを、コーティングに対する損傷に関して試験した。次に、フィルムの損傷率が0〜10%である場合、コーティングを「良好」又は「合格」耐久性と呼び、さもなければ「悪い」又は「不合格」耐久性と呼んだ。
【0147】
テーバー磨耗試験
コーティングされた基材を乾式若しくは湿式(水による)のいずれかで線状研磨試験にかけることで、コーティングの機械的耐久性を判定した。以下で記載するコーティング組成物を使用して作成したコーティングを使用して、研磨媒体としてWYPALL L15工業用クリーンペーパー(Kimberly Clark Corporation(Dallas,TX)から入手)を用い、750グラム/cm
2(7.35N/cm
2)の一定力下でワイピングすることで、テーパー摩耗試験(SDLATLAS CM−5 A.A.T.C.C.Crockmeter(SDLATLAS(Ontario,Canada)から入手))を実行した。摩耗試験を開始し、20、50、100及び200サイクル後に、摩耗したコーティングの水接触角を試験した。試験を停止し、親水性コーティングにおいて、摩耗したコーティングの接触角が30°を超えたとき、読み取り前のサイクル数を記録した。
【0148】
防塵試験
本試験において、ガラスプレートなどの硬表面基材上にコーティングされたサンプルを取り付けた後、ガラスビーズ:汚染物質を500:1の割合で含有する900グラムの汚染物質をコーティングされたサンプル上に載置した。次に、アセンブリを容器中の振とう器(IKA−KS−4000ICモデル(IKAWerke GmbH & Co.KG(Staufen,Germany)から入手))上に載置し、250rpmで1分間振とうした。振とうの完了後、サンプルを容器から取り出し、離れた塵をやさしく叩いて除去した。次に、本明細書に記載の方法に従って、平均ヘイズ及び透過率を測定した。ヘイズが低く透過率が高いものは、防塵特性がより優れていた。
【0149】
帯電防止試験(表面抵抗測定)
コーティングの表面抵抗測定は、ACL Staticide 385モデル抵抗計(Precision International Corporation(Taibei,Taiwan))によって行った。表面抵抗が高いと、帯電防止特性は低い。
【0150】
pH測定
コーティング処方物のpHは、pH測定器(340モデル(Corning Incorporated(Corning,NY 14831,USA)))を使用して、これらの分散液を測定して得た。
【0151】
材料
以下の材料の一覧及びこれらの供給源は、実施例全体を通して使用される。
【0152】
【表3-1】
【0153】
【表3-2】
【0154】
コーティング溶液S1
S1は、20mLのガラスジャー中でNALCO 2326(3.33グラム)を脱イオン(DI)水(6.67グラム)で希釈して、5重量%の水性シリカ分散液を形成することで調製した。この分散液にDBU(0.025グラム)を加え、続けて、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液(0.12グラム)の5重量%水溶液を加えた。S1コーティング溶液は、9.5のpHを有する5重量%の水性シリカ分散液となった。
【0155】
コーティング溶液S2〜S8及び対照溶液CS1〜CS3
S2〜S8コーティング溶液及びCS1〜CS3対照溶液は、塩基の種類及び重量%を以下で記載する表1のように変化させる以外は、S1と同じ方法で調製した。全サンプルを、最終コーティング溶液中、5重量%のシリカ分散液及び1.2重量%のシリカ固形分を有するドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとなるように作成した。
【0156】
【表4】
【0157】
混合シリカコーティング溶液S9
S9コーティング溶液は、20mLのガラスジャー中でST−OUP(9.00グラムの2.8重量%の水性分散液)とNALCO 1115(1.00グラムの2.8重量%の水性分散液)とを混合することで調製した。この混合物に、更にDBU(0.014グラム)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム溶液(0.12グラム)の5重量%水溶液を加えた。S9コーティング溶液のpHは8.9であった。
【0158】
コーティング溶液S10〜S12及び対照溶液CS4
S10〜S12コーティング溶液は、シリカ分散液の重量%及び塩基の種類を以下で記載する表2のように変化させる以外は、上述のS9と同じ方法で調製した。「N/M」は「測定してない」ことを意味することに留意されたい。
【0159】
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を、最終コーティング溶液中のシリカ固形分が常に2.1重量%となるように維持した。塩基の量は、最終コーティング溶液中のシリカ固形分が5重量%となるように維持した。
【0160】
CS4対照溶液は、コーティング溶液のpHを2.3に調整するのに十分なH
3PO
4を使用する以外は、上述のS9と同じ方法で調製した。
【0161】
【表5】
【0162】
コーティング溶液S13
S13コーティング溶液は、まず、20mLのガラスジャー中で、NALCO 1034A(1.47グラム)を脱イオン(DI)水(8.53グラム)で希釈して5重量%の分散液を形成し、続けて、DBU(5重量%水溶液を0.50グラム)及びドデシルベンゼンスルホネートナトリウム(5重量%水溶液を0.20グラム)を加えることで調製した。最終処方物は、pHが11.1の透明溶液であった。
【0163】
コーティング溶液S14〜S16及び対照溶液CS5
S14〜S16コーティング溶液及びCS5対照溶液は、加えるDBU(5重量%水溶液)の量をそれぞれ0.30グラム、0.10グラム、0.20グラム及び0グラムにした以外は、S13と同じ方法で調製した。界面活性剤であるドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの量を、乾燥シリカ固形分が常に2%になるように維持した。生じた溶液のpHは、それぞれ10.3、8.9、9.7、及び6.8であった。
【0164】
コーティング溶液S17
S17コーティング溶液は、20mLのガラスジャー中で、NALCO 8699(2.00グラム)を脱イオン(DI)水(6.67グラム)で希釈して3.5重量%のシリカ分散液を形成することで、S17を調製した。この分散液にDBU(0.015グラム)を加え、続けて、BERESOL EC(1.00グラム)及びBYK−346(0.020グラム)の5重量%水溶液を加えた。
【0165】
コーティング溶液(S1F)
シリカIPA溶液(IPA−ST−MS(Nissan Chemicals製)、30%固形分、10.0g)をIPA(50.0g)で希釈して、IPA中5%のシリカ溶液を調製した。10gの本溶液にN−メチル−N−(トリメトキシシリルプロピル)ペルフルオロオクチルスルファミド(0.100g)を加え、続けてDBU(0.025g)を加えた。この処方物は、透明な溶液であった。
【0166】
【化5】
【0167】
実施例1
実施例1は、上述で調製された溶液S1をポリカーボネートフィルム((Corona PC)、DY−2モデルコロナ処理器、Shanghai Haocui Electronics Technology Co.,Ltd.(Shanghai,China))上に3番(#3)メイヤーバーを用いてコーティングして調製した。1.5kWのパワー設定において2メートル/分の速度で、手でフィルムを処理器に通してフィルムを処理した。厚さ(理論上湿潤厚さ)は、7.7マイクロメートルであった。このコーティングを120℃の炉で5分間硬化して、透明フィルムにした。
【0168】
実施例2〜21及び比較例A〜K
実施例2〜21及び比較例A〜Kサンプルは、以下の表3に示すように、コーティング基材、湿式コーティング基材、及び硬化条件を変更した以外、実施例1と同じ方法で調製した。比較サンプルJ及びKは、コーティングを含まないそのままの基材である。
【0169】
図1は、波長範囲380〜800ナノメートルにおける比較例Kと実施例1との間の透過パーセントの比較である。データは、3回測定した平均である全データを使用して得られたものである。透過スペクトルは、Lamda900 UV/VIS/NIRスペクトロメーター(PerkinElmer(Massachusetts,USA))を使用して得た。
【0170】
表3は、テーパー摩耗及び層間接着のデータを要約している。「N/M」は「測定してない」ことを意味することに留意されたい。
【0171】
以下の表4は、実施例21及び比較例I及びJにおける、テーパー摩耗乾式試験の試験前及び40サイクル後の平均透過率(平均T)及び平均ヘイズを要約している。
【0172】
【表6】
【0173】
【表7】
【0174】
実施例22及び比較例L
実施例22は、コーティング溶液S1Fをガラス基材上にコーティングした以外、実施例1と同じ方法で調製した。コーティングは7.7マイクロメートルの湿潤厚さを有し、120℃で5分間硬化した。比較例Lは、そのままのガラス基材であった。実施例22及び比較例Lの水接触角は、それぞれ115.0°及び49.5°であった。
【0175】
コーティング溶液18、19及び対照溶液CS6〜CS7(S18、S19、CS6及びCS7)
S18は、まず、20mLのガラスジャー中で、2.5グラムのVK−L10Bアルミナゾルを7.5グラムの脱イオン(DI)水で希釈して、5重量%アルミナゾルを形成することで調製した。希釈したアルミナゾルに、0.50グラムの5% DBU水溶液を加えた。DBUは、最終コーティング溶液中で5重量%アルミナ固形分である量で存在していた。生じた溶液のpHは、10.5であった。
【0176】
S19は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(1.2重量%のアルミナ固形分)をコーティング溶液S18に加えることで調製した。CS6〜CS7は、塩基を変更した以外はS18と同じ方法で調製した。CS7は、最終コーティング溶液のpHが2.0になるような量で、H
3PO
4酸を有していた。
【0177】
実施例23〜27及び比較例M〜P
実施例23は、上述で調製した溶液S18を、番号1(#1)のメイヤーロッドを使用して、PVDC−下塗りPET(PVDC−PET)上にコーティングすることで調製した。厚さ(理論的には湿潤厚さ)は6.0マイクロメートルであった。生じたコーティングを120℃の炉で5分間硬化した。
【0178】
実施例24〜27及び比較例M〜Pは、以下の表5で記載されるようにコーティング溶液、コーティングの厚さ、基材及び硬化条件を変更した以外は、実施例23と同じ用法で調製した。以下の表は、実施例及び比較例J及びM〜Pに対応する特性を要約したものでもある。
【0179】
【表8】
【0180】
表5の全サンプルは、10°未満(未満)の水接触角を有する親水性コーティングである。表5のテーパー摩耗データにおいて、「合格」は、100サイクルの摩耗の終了時点の水接触角がまだ30°未満であることを意味する。さもなければ、「不合格」と評価した。「N/M」は、「試験していない」ことを意味する。表6は、実施例1、27、及び比較例Pにおける防塵試験の前後における平均透過パーセント(平均T(%))及びヘイズ、並びに防曇性能を要約したものである。
【0181】
【表9】
【0182】
実施例28
片面をポリエステルでコーティングし、もう片方の面をポリウレタン(Shanghai Yutai Communications Electronics Co.,Ltd.(Shanghai,China))でコーティングした2枚の鋼板を溶液S17でコーティング(カーテンコーティング)した。湿潤コーティングをスポンジでやさしく拭って、コーティングを均一なものとした。室温で48時間、コーティングを乾燥させた。推定平均コーティングの厚さは400nmであった。コーティングした板を30日間埃っぽい環境で屋外に放置した。防塵性能に関して、板を目視し、コーティングのない対照サンプルよりもより明瞭であることを見出した。
【0183】
本明細書中に引用される特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示内容を、あたかもそれぞれが個々に組み込まれたのと同様に、それらの全体を組み込むものである。本開示の範囲及び趣旨を逸脱することなく本開示に対する様々な改変及び変更が可能であることは当業者には明らかであろう。本開示は本明細書に記載される説明的実施形態及び実施例によって不要に限定されるものではない点、更にこうした実施例及び実施形態はあくまで一例として示されるものであって本開示の範囲は以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである点は、理解されるはずである。